説明

カートリッジ情報検出装置

【課題】カートリッジに関する情報を検出する光学式センサの劣化を抑制することができるカートリッジ情報検出装置を提供する。
【解決手段】 カートリッジ情報検出装置300は、カートリッジ10に関する情報を検出可能な状態から所定時間の経過を計測する間、第1光学式センサ230を、カートリッジ10に関する情報を検出可能な定常的なアクティブ状態である定常モードで動作させる一方、所定時間経過後は、カートリッジ10の着脱のみを検出可能な間欠的なアクティブ状態である間欠モードで動作させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジ装着部へカートリッジを装着するに際してカートリッジの着脱状態を示す情報を含む該カートリッジに関する情報を検出することのできるカートリッジ情報検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録ヘッドからインクを吐出して記録用紙に画像を形成するインクジェット記録装置が広く知られている。このインクジェット記録装置には、インクが収容されたカートリッジを装着可能になっており、このカートリッジから供給されたインクが記録ヘッドから吐出される。そして、カートリッジ内のインク残量が少なくなった場合には、このカートリッジを抜き出して、インクがフルに充填された新たなカートリッジを改めて装着することにより、引き続いて画像形成を行えるようになっている。
【0003】
また、インクジェット記録装置には、装着されたカートリッジ内のインク残量を検出するための光学式センサを備えるものもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に光学式センサには、発光素子としての発光ダイオードと受光素子としてのフォトダイオードとが用いられており、特に発光ダイオードは駆動時間の経過に伴って劣化し、駆動時の輝度が低下するという特性がある。そして、上記のようにしてインク残量を検出する場合、例えば、オペレータがインク残量が少なくなったカートリッジをインクジェット記録装置から抜き出した後、新たなカートリッジを装着することなく本体カバーが開いた状態のままで放置されると、光学式センサが駆動し続け、発光ダイオードの劣化が早まってしまう。
【0005】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、カートリッジに関する情報を検出する光学式センサの劣化を抑制することができるカートリッジ情報検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るカートリッジ情報検出装置は、インクが収容されたカートリッジを着脱可能なカートリッジ装着部と、該カートリッジ装着部へ前記カートリッジを装着するに際して、少なくとも該カートリッジの着脱状態を示す情報を含む該カートリッジに関する情報を検出する光学式センサと、時間を計測するタイマ手段を有して前記光学式センサの動作を制御すると共に前記カートリッジに関する情報を検出可能な状態か否かを判断する制御部とを備え、該制御部は、前記カートリッジに関する情報を検出可能な状態から前記タイマ手段によって所定時間の経過を計測する間、前記光学式センサを、前記カートリッジに関する情報を検出可能な定常的なアクティブ状態である定常モードで動作させる一方、前記所定時間経過後は、前記カートリッジの着脱のみを検出可能な間欠的なアクティブ状態である間欠モードで動作させるように構成されている。
【0007】
このような構成とすることにより、カートリッジに関する情報を検出可能な状態から所定時間を経過した後は、間欠モードで光学式センサを動作させるため、光学式センサの長時間の駆動による劣化を防止することができる。また、この所定時間を経過するまでの間は定常モードで光学式センサが動作しているため、この間にカートリッジが装着されれば、カートリッジに関する情報を適切に検出することが可能である。
【0008】
また、前記制御部からの指示に基づいてオペレータが認識可能なように情報を出力する出力部を更に備え、前記制御部は、前記間欠モードで動作する前記光学式センサによって前記カートリッジの装着を検出した場合に、該カートリッジの再装着を促す情報を前記出力部にて出力させるよう構成されていてもよい。このような構成とすることにより、カートリッジ装着部へカートリッジが装着される過程から該カートリッジに関する情報を検出すべく光学式センサを用いる場合に、間欠モードでの動作中では検出できない可能性がある上記情報を、再装着を促してオペレータにカートリッジを再装着させることにより、確実に検出することができる。
【0009】
また、前記制御部は、前記間欠モードで動作する前記光学式センサによって前記カートリッジの装着を検出した場合に、前記光学式センサを前記間欠モードに換えて前記定常モードで動作させるよう構成されていてもよい。このような構成とすることにより、カートリッジの再装着時には光学式センサは定常モードで動作しているため、カートリッジの装着過程から得られる情報を、より確実に検出することができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記出力部がカートリッジの再装着を促す情報を出力した後に、前記光学式センサが前記装着部からの前記カートリッジの離脱を検出した場合に、前記光学式センサを前記間欠モードに換えて前記定常モードで動作させるよう構成されていてもよい。このような構成とすることにより、カートリッジの再装着時には光学式センサは定常モードで動作しているため、カートリッジの装着過程から得られる情報を、より確実に検出することができる。また、再装着を促す情報を出力した後に、カートリッジの離脱が所定時間以上なされない場合においても、光学式センサの劣化を防止することができる。
【0011】
また、前記制御部は、前記間欠モードで動作する前記光学式センサによって前記カートリッジの離脱を検出した場合に、前記光学式センサを前記間欠モードに換えて前記定常モードで動作させるよう構成されていてもよい。このような構成とすることにより、これまで使用していたカートリッジがカートリッジ装着部に装着された状態で光学式センサが間欠モードになっている場合に、このカートリッジの離脱(即ち、取り外し)をトリガとして定常モードに切り換えることができるため、新たなカートリッジを装着するときには、定常モードで動作する光学式センサによって、新たなカートリッジに関する情報を検出することができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記光学式センサを前記間欠モードに換えて前記定常モードで動作させるときに、前記タイマ手段をリセットさせるよう構成されていてもよい。このような構成とすることにより、間欠モードから定常モードに切り換わって光学式センサが動作する場合に、定常モードに切り換わってから所定時間の経過を計測することができる。従って、定常モードに切り換わってから所定時間経過後には、光学式センサの劣化を抑制すべく、再び間欠モードへ切り換えることができる。
【0013】
また、前記カートリッジ装着部への前記カートリッジの装着が可能な状態を検出する装着可否センサを更に備え、前記制御部は、前記カートリッジの装着可能状態を示す前記装着可否センサからの信号に基づき、前記カートリッジに関する情報を検出可能な状態であると判断するよう構成されていてもよい。このような構成とすることにより、例えばカートリッジ装着部への開口を開閉するカバーが開いた状態を、カートリッジの装着が可能な状態として検出することにより、この検出後からの経過時間をタイマ手段によって計測すればよい。
【0014】
また、前記光学式センサは、前記カートリッジ装着部への前記カートリッジの着脱状態を検出する第1センサと、前記カートリッジ装着部への前記カートリッジの装着過程から該カートリッジに関する他の情報を検出するための第2センサとを有し、前記制御部は、前記第1センサの前記カートリッジに関する情報の検出から所定時間経過する間、前記第1センサ及び前記第2センサを共に前記定常モードで動作させる一方、前記所定時間経過後は、前記第1センサを前記間欠モードで動作させるよう構成されていてもよい。このような構成とすることにより、カートリッジの着脱状態を検出可能としつつも、2つのセンサのうち少なくとも第1センサの劣化を抑制することができる。また、第1センサを間欠モードで動作させる間、第2センサを定常モードで動作させた場合には、第1センサが検出対象とするカートリッジの着脱状態と、第2センサが検出対象とするカートリッジに関する他の情報とを夫々検出可能としつつ、第1センサの劣化を抑制することができる。なお、第2センサは、カートリッジの装着過程から該カートリッジに関する情報を単独で検出するものの他、カートリッジの装着過程から第1センサと協働して該カートリッジに関する情報を検出可能なものであってもよい。
【0015】
また、前記制御部は、前記所定時間経過後に前記第1センサを前記間欠モードで動作させると共に、前記第2センサを、前記カートリッジに関する情報を検出不能な非アクティブ状態とするよう構成されていてもよい。このような構成とすることにより、所定時間を経過した後は、カートリッジの着脱状態を検出可能としつつも、第1センサ及び第2センサの双方の劣化を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カートリッジに関する情報を検出する光学式センサの劣化を抑制することができるカートリッジ情報検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係るカートリッジ情報検出装置について、これを搭載したインクジェット記録装置(以下、「記録装置」と称する)を例にとって図面を参照しつつ説明する。
【0018】
[記録装置全体の概要]
図1は、本発明を適用した記録装置1の外観構成を示す斜視図であり、本実施の形態では記録装置1としてプリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、及びファクシミリ機能等を備える所謂複合機を図示している。図1に示すように記録装置1は、インクジェット方式によって画像を記録するプリンタ部2を、略直方体形状の筐体1aの下部に備え、且つスキャナ部3を筐体1aの上部に備えて構成されている。
【0019】
記録装置1のプリンタ部2は、筐体1aの正面(前側)に開口4を有しており、この開口4の内側には、下側の給紙トレイ5と上側の排紙トレイ6とが2段にして設けられている。給紙トレイ5には被記録体として複数枚の記録用紙を収容でき、例えば、A4サイズ以下の各種サイズの記録用紙が複数枚収容できるようになっている。
【0020】
プリンタ部2の正面の右下部分には扉7が開閉自在に設けられ、該扉7の内方にはカートリッジ装着部8(図2参照)が設けられている。従って、扉7が開かれるとカートリッジ装着部8が正面側に露出し、カートリッジ10(図2参照)が水平方向から着脱可能になっている。カートリッジ装着部8には、使用されるインク色に対応したカートリッジ10の収容ケース9(図2参照)が備えられており、本プリンタ部2では、例えば5色のカラーインク、即ち、染料インクであるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、フォトブラック(PBk)と、顔料インクであるブラック(Bk)とが使用される。したがって、カートリッジ装着部8には内部が5つに区分けされた収容ケース9が設けられており、区分けされた各スペースに、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、フォトブラック(PBk)、ブラック(Bk)の各色インクを貯留するカートリッジ10が収容される。
【0021】
記録装置1の上部に設けられたスキャナ部3は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。即ち、図1に示されるように記録装置1の上面には、該記録装置1の天板として開閉自在に設けられた原稿カバー1bが備えられている。そして、原稿カバー1bの下側に、原稿が載置されるプラテンガラスや原稿の画像を読み取るイメージセンサなどが配設されている。
【0022】
記録装置1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル11が設けられている。操作パネル11は、各種操作ボタンや情報を出力する出力部としての液晶ディスプレイ11a等から構成されており、記録装置1は、オペレータによる操作パネル11の操作の結果、該操作パネル11から出力される指示に基づいて動作可能になっている。また、記録装置1が外部のコンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても記録装置1は動作可能になっている。
【0023】
記録装置1の正面左上部分にはスロット部12が設けられている。スロット部12には、記憶媒体である各種小型メモリカードが装填可能であり、操作パネル11において所定の操作を行うことにより、スロット部12に装填された小型メモリカードに記憶されたデータが読み出し可能となっている。読み出されたデータは、操作パネル11の液晶ディスプレイに表示させることも可能であり、この表示に基づいて任意に選択された画像をプリンタ部2により記録用紙に記録させることができる。
【0024】
図2は、記録装置1が有するプリンタ部2の構成を示す模式的断面図である。図2に示すように、記録装置1の底部近傍には給紙トレイ5が設けられており、該給紙トレイ5の上方には、図1の左右方向に長寸を成す平坦な板状のプラテン14が設けられている。このプラテン14の更に上方には画像記録ユニット17が設けられており、この画像記録ユニット17は、図示しないノズル孔からインクを吐出するヘッドユニット15a、該ヘッドユニット15aへインクを供給するサブタンク15b、及びヘッドユニット15aと電気的に接続されたアクチュエータへの駆動信号をヘッドユニット15aに出力するヘッド制御基板15c(例えばCOF:Chip on Film)等から構成されている。この画像記録ユニット17が有するサブタンク15bは、記録装置1のカートリッジ装着部8へ装着されたカートリッジ10との間で、可撓性のチューブ22を介して連通するようになっており、カートリッジ10から供給されたインクを一時的に貯留し、更にこれをヘッドユニット15aへと供給する。
【0025】
また、給紙トレイ5の後方からは用紙搬送路18が延設されている。この用紙搬送路18は、給紙トレイ5の後方から上方へ向かい更に前方へ向かうように湾曲した湾曲パス18aと、該湾曲パス18aの終点から更に前方へ延びるストレートパス18bとから成り、画像記録ユニット17の配設箇所以外の部分では、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とで構成されている。
【0026】
給紙トレイ5の直上には、該給紙トレイ5内の記録用紙を用紙搬送路18へ供給する給紙ローラ19が設けられている。また、用紙搬送路18における湾曲パス18aの下流部分近傍には、搬送ローラ及びピンチローラから成る一対の搬送ローラ対20が、両ローラによって用紙搬送路18を上下から挟むようにして設けられている。更に、用紙搬送路18におけるストレートパス18bの下流部分近傍には、排紙ローラ及びピンチローラから成る一対の排紙ローラ対21が、両ローラによって用紙搬送路18を上下から挟むようにして設けられている。上述した画像記録ユニット17とプラテン14とは、搬送ローラ対20と排紙ローラ対21との間にて、ストレートパス18bを上下から挟むようにして設けられている。
【0027】
また、画像記録ユニット17は、図1の左右方向(プラテン14の長手方向)へ延びる図示しないガイドロッドにより、図1の左右方向へのスライド移動可能なように支持されており、更に画像記録ユニット17は、プーリ及びベルト等から成る図示しないヘッド駆動機構に連結されている。従って、該ヘッド駆動機構が駆動することにより、前記ガイドロッドに沿って図1の左右方向へ所定範囲内で走査可能になっている。
【0028】
このようなプリンタ部2によれば、給紙トレイ5内の記録用紙が、給紙ローラ19によって用紙搬送路18へ供給され、続いて搬送ローラ対20によって用紙搬送路18上を湾曲パス18aからストレートパス18bへと搬送される。ストレートパス18bに到達した記録用紙は、ここで対向配置された画像記録ユニット17が有するヘッドユニット15aから吐出されるインクにより画像が記録され、記録が完了すると排紙ローラ対21によってストレートパス18bから排出されて排紙トレイ6へ収容されるようになっている。
【0029】
ところで、同じ色のインクを収容するカートリッジ10であっても、市場においてインク容量の異なる2種類のカートリッジ10(カートリッジ10a,10b(図3,図12参照))が流通しているものもある。本実施形態に係る記録装置1は、カートリッジ装着部8に設けられた一つの収容ケース9に2種類のカートリッジ10a,10bのいずれも装着可能なように構成されている。
【0030】
[一方のカートリッジの構成]
次に、図3〜図11を参照して、一方のカートリッジ10aの構成について説明する。図3は、カートリッジ10aの外観構成を示す斜視図であり、図4は、図3に示すカートリッジ10aの側面図である。なお、本実施の形態に係るカートリッジ10aは、伸縮可能な構成となっており、図3(a)及び図4(a)は収縮したときの構成、図3(b)及び図4(b)は伸長したときの構成をそれぞれ示している。なお、以降の説明では、図3におけるカートリッジ10の手前側を前部または前方とし、奥側を後部または後方として説明する。
【0031】
図3及び図4に示すように、カートリッジ10aは、ここに図示された起立姿勢で扁平形状の略六面体に構成されており、幅方向(Z方向)の寸法が小さく、高さ方向(Y方向)及び奥行き方向(Z方向)の各寸法が幅方向の寸法よりも大きい直方体形状となっている。そして、このような起立姿勢のまま、X方向へ向かって運ばれてカートリッジ装着部8へ装着される。このようなカートリッジ10aは、内部のインク室100(図5参照)にインクを収容するカートリッジ本体30(図4参照)と、該カートリッジ本体30の前部30aをカバーする前側カバー31と、カートリッジ本体30の後部30bをカバーする後側カバー32とから構成されている。本実施の形態では、これらカートリッジ本体30、前側カバー31、及び後側カバー32は、何れもナイロン、ポリエチレン、又はポリプロピレン等の樹脂材料によって形成されている。以下、カートリッジ10aが有するカートリッジ本体30、前側カバー31、及び後側カバー32について順に説明する。
【0032】
[カートリッジ本体]
図5は、カートリッジ本体30の外観形状を示す斜視図であり、(a)は斜め前方から見たときの構成、(b)は斜め後方から見たときの構成をそれぞれ示している。また、図6は、図5に示すカートリッジ本体30の側面図、図7は、図5におけるVII-VII線でカートリッジ本体30を切断したときの断面図、図8は、カートリッジ本体30の前部30aの構成を拡大して示す拡大断面図である。
【0033】
図5、図6に示すように、カートリッジ本体30はカートリッジ10aと同様の扁平形状の略六面体として構成されており、上下方向に長寸を成してカートリッジ10aの挿入方向(X方向)の前側に位置する前面41および後側に位置する後面42と、カートリッジ10aの挿入方向へ長寸を成す上面43及び下面44と、挿入方向の左右に位置して正方形状を成し、後面42から見て左側が左側面45で、右側が右側面46とを有している。そして、このカートリッジ本体30は、その筐体を成すフレーム50と、インクの残量を検出するためのアーム70と、大気連通バルブ80と、インク供給バルブ90と、フレーム50と共にインク室100を形成する図示しない透明なフィルムとによって主に構成されている。
【0034】
このうちフレーム50は、上記の通りカートリッジ本体30の筐体を成すものであって、上述した各面41〜46を形成する。また、フレーム50は透光性のある透明又は半透明の樹脂材料で構成されており、例えば、ポリアセタール、ナイロン、ポリエチレン、又はポリプロピレンなどの樹脂材料を射出成形することによって形成されている。
【0035】
図5及び図6に示すように、フレーム50は、カートリッジ本体30の前面41、上面43、後面42、下面44に沿うように側面視で環状に形成された外周壁51と該外周壁51の内側に設けられた内壁52とを有し、これら外周壁51及び内壁52は一体的に形成されている。また、外周壁51の上面43には下方へ窪んだ凹部59が形成され、下面44には上方へ窪んだ凹部60が形成されている。そして、このように環状を成す外周壁51の左右の周縁部(側面45、46側)には、透明な樹脂で構成された薄肉状のフィルムが溶着されて左右の開口57a,57bが閉塞され、これによって外周壁51とフィルムとで囲まれる空間がインク室100として区画される。
【0036】
外周壁51内に設けられた内壁52は、外周壁51と略同様の幅方向寸法を有し、その左右の縁部(側面45、46側)にも上記フィルムが溶着される。従って、フィルムの弛みを抑制できると共に、前側カバー31及び後側カバー32に対してカートリッジ本体30側への外力が加えられても、これらのカバー31,32を内側から支持し、その変形を規制している。
【0037】
一方、図5に示すように、フレーム50の後側下部にはインク注入部150が一体的に形成されている。インク注入部150は、フレーム50の後面42からインク室100へ向かって穿設された孔を有する筒状体であって、インク室100にインクを注入する際に該インクの注入路を成す。
【0038】
また、フレーム50の前部であって上下方向の略中央部分には、フレーム50と一体的に形成された検知窓140が、前面41から前方へ突出するようにして設けられている。この検知窓140は、インク室100に収容されているインク残量を視覚的又は光学的に検知するためのものであり、フレーム50と同様に透光性のある透明又は半透明の樹脂材料で構成されている。検知窓140には、記録装置1のカートリッジ装着部8に取り付けられた後述するフォトインタラプタなどの光学式センサ230から出射された光が側方(Z方向)から照射される。図5に示すように検知窓140は、左右の側面140a,140aを有する中空のボックス形状を成しており、その内部空間142はインク室100に連通している。
【0039】
次に、アーム70は、図7に示すようにフレーム50内にあって前方へ延びるインジケータ部72と後方へ延びるフロート部73とを有し、これらの中間部分に位置する支持軸77が、外周壁51の内面に突設されたリブ74によって揺動可能に支持されている。このうちインジケータ部72は、アーム70が揺動することによって上記検知窓140に対して進入又は退出し、進入している状態では外側方からの入射光が検知窓140を透過できず、退出している状態では透過可能になる。また、フロート部73は中空に形成されており、インク室100に収容されるインクに対して浮力体の役割を担う。
【0040】
このようなアーム70は、インク室100にインクが満載された状態では、フロート部73が上方に位置し、インジケータ部72は反対に下方に位置して検知窓140の内部空間142に進入した状態となっている。この状態からインクが所定量を超えて減少していくと、フロート部73が下降しはじめ、これに伴ってアーム70が支持軸77を中心に揺動する。すると、インジケータ部72は検知窓140から上昇し、最終的には検知窓140から退出することとなる。そして、インジケータ部72が検知窓140から退出した状態では、外側方からの入射光は検知窓140を透過可能になる。従って、後述するように検知窓140を光が透過可能か否かを光学式センサで検知することにより、インク室100内のインク残量を検出することができる。
【0041】
次に、大気連通バルブ80は、図7に示すように検知窓140の上方であってフレーム50の前面41の上部に形成された第1バルブ収容室54に収容されている。図8に拡大して示すように、第1バルブ収容室54はインク室100に連通する開口82を有し、大気連通バルブ80はこの開口82に装着されて該開口82を開閉するバルブ機構を成している。
【0042】
より詳しく説明すると、大気連通バルブ80は、バルブ本体87、バネ86、シール部材83、及びキャップ85等の部材で構成されている。バルブ本体87は棒状を成し、その前端が開口82から前方へ突出するようにして配設されている。シール部材83及びキャップ85は共に円筒状を成し、シール部材83にキャップ85が外嵌した状態で該キャップ85が第1バルブ収容室54の開口82に装着され、上記バルブ本体87はシール部材83の内側を挿通して且つ前後方向(X方向)へスライド可能に設けられている。更に、バネ86は第1バルブ収容室54内に配設されて、バルブ本体87を後方から前方へ向けて付勢している。
【0043】
このような大気連通バルブ80は、バルブ本体87がバネ86に付勢されて前方に位置する状態(図8の状態)では、第1バルブ収容室54の開口82を閉塞する一方、バルブ本体87がバネ86の付勢力に抗って後方へ位置すると、開口82とバルブ本体87との隙間に大気連通口81が形成され、インク室100はこの大気連通口81を介して大気に開放された状態となる。
【0044】
次に、インク供給バルブ90は、図7に示すように検知窓140の下方であってフレーム50の前面41の下部に形成された第2バルブ収容室55に収容されている。図8に拡大して示すように、第2バルブ収容室55はインク室100に連通する開口92を有し、インク供給バルブ90はこの開口92に装着されて該開口92を開閉するバルブ機構を成している。
【0045】
より詳しく説明すると、インク供給バルブ90は、バルブ本体97、バネ96、シール部材93、キャップ95等の部材で構成されている。バルブ本体97は、軸芯を前後方向へ向けた円筒状を成し、第2バルブ収容室55の開口92内に配設されている。シール部材93及びキャップ95は共に前後方向への貫通孔を有する略円筒状を成し、シール部材93にキャップ95が外嵌した状態で該キャップ95が開口92に装着されており、上記バルブ本体97はシール部材93よりも開口92の内方(即ち、第2バルブ収容室55の内方)にて前後方向へスライド可能に設けられている。更に、バネ96は第2バルブ収容室55内に配設されて、バルブ本体97を後方から前方へ向けて付勢している。
【0046】
このようなインク供給バルブ90は、バルブ本体97がバネ96に付勢されて前方に位置する状態(図8の状態)では、第2バルブ収容室55の開口92を閉塞している。一方で、カートリッジ装着部8には、これにカートリッジ10が装着されたときのインク供給バルブ90に対応する位置にインクニードル(図示せず)が備えられており、該インクニードルは、カートリッジ10が装着されたときにバルブ本体97を後方へ押動する。そして、インクニードルに押動されたバルブ本体97が、バネ96の付勢力に抗って後方へ位置すると、開口92とバルブ本体97との隙間にインク供給口91が形成される。その結果、インク室100はカートリッジ装着部8に接続されたチューブ22にインク供給口91を介して連通し、インク室100内のインクがチューブ22を通じてサブタンク15b(図2参照)へ供給される。
【0047】
ところで、図7に示すように、フレーム50における第1バルブ収容室54の上方には第1バネ収容室110が形成され、第2バルブ収容室55の下方には第2バネ収容室111が形成されている。これらのバネ収容室110,111は、フレーム50の前面41から後方(インク室100側)へ穿設された有底の孔であり、カートリッジ本体30の前部に装着される前側カバー31を前方へ付勢するためのコイルバネ23,24が収容されるようになっている(図9参照)。
【0048】
更に、フレーム50の上面43の前端部には第1カバー支持部材115が形成され、下面44の前端部には第2カバー支持部材116が形成されている。これらのカバー支持部材115,116は、前方へ延びる棒状部材の前端にかぎ爪状の突起115a,116aを設けた如くに形成されており、次に説明する前側カバー31をスライド可能に支持しつつ、該前側カバー31がカートリッジ本体30から脱落しないように規制する。
【0049】
[前側カバー]
図9は、図3(a)に示すカートリッジ10aをIX-IX線で切断したときの構成を示す断面図であり、図10は、図3(b)に示すカートリッジ10aをX-X線で切断したときの構成を示す断面図である。また、図11は、図9に示すカートリッジ10aの部分的な拡大図であり、(a)は図9にて二点鎖線XIaで囲んだ上部を拡大して示し、(b)は図9にて二点鎖線XIbで囲んだ下部を拡大して示している。
【0050】
図9に示すように、前側カバー31は、カートリッジ本体30の前部30aを収容可能な容器形状に形成されており、カートリッジ本体30の前部30aの形状に対応して扁平に形成されている。そして、カートリッジ本体30の前面41に対応する前壁161と、上面43に対応する上壁163と、下面に対応する下壁164と、左側面45に対応する左側壁165と、右側面46に対応する右側壁166とを有し、これらに囲まれて後方に開いた空間に、カートリッジ本体30の前部30aを収容可能になっている。また、前側カバー31には、後述する光学式センサ230,235による検知対象となる第1被検知部185及び第2被検知部186が設けられ、更に、切欠部187を形成されている。
【0051】
図3及び図4に示すように、切欠部187は、前側カバー31の前壁161における上下方向の略中央位置にて、前壁161が後方へ窪むようにして形成されており、前側カバー31の左右の空間を連通している。そして、前側カバー31がカートリッジ本体30に装着された状態で、カートリッジ10aがカートリッジ装着部9へ装着されると、該切欠部187を介して検知窓140が外部へ露出されるようになっている。
【0052】
第1被検知部185は、切欠部187の前方の位置に設けられており、切欠部187の上下の前壁161から前方へ突出したブリッジ部189を有している。このブリッジ部189は、光を透過させない樹脂部材によって前後方向の厚み寸法が小さい平板状に構成されており、ブリッジ部189と切欠部187との間(即ち、切欠部187の前方)には隙間190(図3参照)が形成されている。この隙間190は、切欠部187と同様に、前側カバー31の左右の空間を連通している。
【0053】
第2被検知部186は、前壁161の上部から前方へ突出するように設けられている。この第2被検知部186は、左右方向(X方向)へ面を向けた平板状を成し、上記第1被検知部185と同様に光を透過させない樹脂部材によって形成されている。
【0054】
また、前側カバー31には、カートリッジ10aをカートリッジ装着部9へ装着する過程で、該カートリッジ装着部9の奥面に対して最初に当接する突出部181と、前側カバー31のカートリッジ本体30に対するスライド動作を案内するガイドロッド168,169とが設けられている。このうち、突出部181は、前側カバー31の前壁161の下部から前方へ突出するようにして、前側カバー31と一体的に形成されている。
【0055】
ガイドロッド168,169は、前壁161の裏面(即ち、カートリッジ本体30の前面41に対向する後面)の上部及び下部から後方へ向かって棒状に延びている。上側のガイドロッド168は、カートリッジ本体30の第1バネ収容室110内のコイルバネ23の内孔に前方から挿通され、下側のガイドロッド169は、第2バネ収容室111内のコイルバネ24の内孔に前方から挿通されている。
【0056】
また、前側カバー31には、上記ガイドロッド168,169と同様に、前側カバー31のカートリッジ本体30に対するスライド動作を案内する摺動溝171,172が、上壁163の前部および下壁164の前部に夫々設けられている。このうち上側の摺動溝171は、前側カバー31の上壁163が正面視で逆向きの略U字形状に形成されることで構成されており、下側の摺動溝172は、前側カバー31の下壁164が正面視でU字形状に形成されることで構成されている。これらの摺動溝171,172の奥部(即ち、後方)には、摺動溝171,172の溝面から突出した突起片171a,172aが設けられている。
【0057】
更に、図9及び図10に示すように、前側カバー31には、第1被検知部185とその上方の第2被検知部186との間に押圧部174が設けられ、また、第1被検知部185と突出部181との間には開口180が形成されている。このうち押圧部174は、前側カバー31が有する前壁161の裏面にて、カートリッジ本体30の大気連通バルブ80に対応する位置に設けられており、前側カバー31とカートリッジ本体30とが近接したときに、大気連通バルブ80が有するバルブ本体87の前端を後方へ押圧する。また、開口180は、前側カバー31の前壁161にてインク供給バルブ90に対応する位置に設けられている。
【0058】
次に、このような前側カバー31をカートリッジ本体30に装着する場合について説明する。前側カバー31の後方にカートリッジ本体30を位置させた状態から、両者を接近させて装着するに際し、まず、第1カバー支持部材115を上側の摺動溝171に挿入し、同時に第2カバー支持部材116を下側の摺動溝172に挿入する。すると、第1カバー支持部材115の前端に設けられた突起115aが、突起片171aを超えて摺動溝171の奥へ進入し、第2カバー支持部材116の前端に設けられた突起116aが、突起片172aを超えて摺動溝172の奥へ進入する。これにより、前側カバー31をカートリッジ本体30から前方へ引き抜こうとしても、突起115a,116aと突起片171a,172aとが引っ掛かり、引き抜けないようになっている。
【0059】
このように前側カバー31をカートリッジ本体30に装着すると、前側カバー31に設けられた2つのガイドロッド168,169が、カートリッジ本体30に設けられた第1バネ収容室110内のバネ23の内孔と第2バネ収容室111内のバネ24の内孔とに挿通される。そして、前側カバー31は、ガイドロッド168,169によってカートリッジ本体30に対するスライド方向が前後方向に規制されつつ、バネ23,24によって前方へと付勢される。従って、外力が付与されていないときには、前側カバー31はカートリッジ本体30から前方へ離隔した状態(図10に示す状態:以下、「第1位置」と称する)で維持される。一方、前側カバー31をカートリッジ本体30へ接近させるように外力が付与されると、前側カバー31はカートリッジ本体30に近接した状態(図9に示す状態:以下、「第2位置」と称する)になる。
【0060】
また、前側カバー31が第1位置から第2位置へスライドすると、前側カバー31が有する押圧部174が大気連通バルブ80のバルブ本体87を後方へ押圧する。これにより、バルブ本体87はバネ86の付勢力に抗って第1バルブ収容室54へ埋没し、インク室100内が大気開放される。他方、このときカートリッジ本体30が有するインク供給バルブ90は、前側カバー31が有する開口180を通じて前方へ突出する。これにより、インク供給バルブ90のバルブ本体97は、カートリッジ装着部8に設けられたインクニードル(図示せず)によってバネ96の付勢力に抗って後方へ押動され、インク室100内のインクがインク供給口91及びチューブ22を経てサブタンク15b(図2参照)へと供給される。
【0061】
[後側カバー]
図9に示すように、後側カバー32は、カートリッジ本体30の後部30bを収容可能な容器形状に形成されており、カートリッジ本体30の後部30bの形状に対応して扁平に形成されている。そして、カートリッジ本体30の後面42に対応する後壁212と、上面43に対応する上壁213と、下面44に対応する下壁214と、左側面に対応する左側壁215と、右側面46に対応する右側壁216とを有し、これらに囲まれて前方に開いた空間に、カートリッジ本体30の後部を収容可能になっている。
【0062】
この後側カバー32における上壁213及び下壁214の内面には突起片210,211が夫々設けられている。この突起片210,211は、カートリッジ本体30が有するフレーム50の上面43及び下面44に夫々設けられた凹部59,60に対応して設けられている。そして、カートリッジ本体30の後部30bに後側カバー32が装着されると、上記突起片210,211が凹部59,60に嵌合することとなり、カートリッジ本体30と後側カバー32とが確実に係合されるようになっている。
【0063】
[他方のカートリッジの構成]
次に、上記カートリッジ10aと同様にカートリッジ装着部8へ装着される、他方のカートリッジ10bの構成について説明する。図12は、他方のカートリッジ10bの構成を示す図面であり、(a)は前側カバー31を実線としその他の外形状を破線とした斜視図を示し、(b)は前側カバー31の側面図を示している。なお、カートリッジ10bは、前側カバー31において、既に説明したカートリッジ10aの第1被検知部185とは異なる形態の第1被検知部195を有する点でカートリッジ10aと相違する。従って、以下では、この第1被検知部195の構成について説明し、その他のカートリッジ10aと共通する構成については説明を省略する。また、カートリッジ10bの前側カバー31においても、カートリッジ10aの前側カバー31と同様の構成については、同一の符号を付すこととしてその一部の説明は省略する。
【0064】
図12に示すように、カートリッジ10bが有する第1被検知部195は、既に説明した第1被検知部185と同様に、光を透過させない樹脂材料で形成されており、前側カバー31の前壁161における上下方向の略中央位置に設けられている。この第1被検知部195は、切欠部187の上下の前壁161から前方へ突出したブリッジ部199を有している。このブリッジ部199は、カートリッジ10aのブリッジ部189とは異なり、左右方向の端部に側壁198が設けられている。従って、カートリッジ10aの第1被検知部185のように、ブリッジ部189と切欠部187との間に光を透過させる隙間190は形成されておらず、この隙間190に換わって光を透過させない側壁198が存在している。
【0065】
[カートリッジ装着部の構成]
図13は、カートリッジ装着部8の構成を示す模式的断面図である。図13に示すように、カートリッジ装着部8は、本実施の形態においては既に説明した5色のインクを収容するカートリッジ10(カートリッジ10a,10b)が装着されるべく、5つの収容室9aに区分けされた収容ケース9と、該収容ケース9の開口9bを開閉するロックレバー220とを備えている。収容ケース9は、後方(図13で右側)に前記開口9bを有する略直方体形状を成しており、その上壁221の後端部にて、ロックレバー220の基端部が回動自在に枢支され、収容ケース9の開口9bを覆う矩形状の蓋体となっている。。従って、ロックレバー220をその基端部を中心に上方へ回動させ、開口9bを開いた状態にすると、該開口9bを通じて収容室9aへカートリッジ10を装着可能となる。そして、各収容室9aに装着されるカートリッジ10に関する情報を検出すべく、各収容室9aの奥側(図13で左側)には、第1光学式センサ230と第2光学式センサ235とがそれぞれ設けられている。
【0066】
図14は、第1光学式センサ230の構成を示す図面であり、(a)はその模式的断面図を示し、(b)はその回路図を示している。なお、第1光学式センサ230と第2光学式センサ235とは同様の構成となっているため、図14に示す第1光学式センサ230において第2光学式センサ235の構成に対応する部分には、第2光学式センサ235に対応する符号を括弧内に記載している。
【0067】
この図14(a)に示すように、本実施の形態では、第1光学式センサ230としてフォトインタラプタが採用されており、平行に延びてペアを成す2本の樹脂製中空アーム232を有している。これらの中空アーム232の基部232bは同じく樹脂製部材によって連結されており、第1光学式センサ230は全体的に略U字状の外観形状となっている。2本の中空アーム232のうち、一方の中空アーム232の先端内には発光ダイオード(図14(b)参照)から成る発光素子233が配設され、他方の中空アーム232の先端内にはフォトダイオード(図14(b)参照)から成る受光素子234が配設されている。そして、これら2本の中空アーム232は、互いに所定間隔を空けて設けられており、両方の中空アーム232の先端部の対向部分には、内外を貫通するスリット232aが形成されている。従って、発光素子233が駆動して光を照射すると、その光はスリット232aを介して射出され、他方の中空アーム232のスリット232aを通じて受光素子234へ入射される。なお、第1光学式センサ230は、その発光素子233および受光素子234の軸部が、センサ基板240にハンダ付けされることで、基部232bがセンサ基板240に固定されるとともに、センサ基板240を介して本体側と電気的に接続されている。
【0068】
また、図14(b)の回路図から分かるように、第1光学式センサ230の出力は、受光素子234を成すフォトダイオードへ光が入射していない状態では、該フォトダイオードがOFFとなって相対的にHIGHレベルの信号を出力し、光が入射している状態では前記フォトダイオードがONとなって相対的にLOWレベルの信号を出力するようになっている。
【0069】
図13に示すように、このような第1光学式センサ230を備えたセンサ基板240は、略長方形状で収容ケース9の外側の奥壁面222における上下方向の略中央位置に設けられている。センサ基板240は、その長手方向に各インクカートリッジごとの5つの第1光学式センサ230が一列に並設されている。また、収容ケース9の外側奥壁面222には、奥壁面222側から開口9bの方向(即ち、後方)に貫通する開口222aが、5つの第1光学式センサの配置位置に対応して形成されていて、その開口222aを介して各中空アーム231が開口9bの方向へ向かって伸びた状態で、且つ発光素子233及び受光素子234が左右に位置するようにして取り付けられている。そして、これら発光素子233と受光素子234との間には、発光素子233が駆動することによって発光素子233から受光素子234へ向かう光の光路となる領域231が形成されている。
【0070】
また、第2光学式センサ235は、上述したように第1光学式センサ230と同様の構成を備え、所定間隔を空けて平行に配設された2本の中空アーム237,237と、その先端内に設けられた発光素子238及び受光素子239と、連結する基部237bを有し、2本の中空アーム237には、先端部において互いに対向する部分にスリット237aが形成されている(図14参照)。また、発光素子238および受光素子239の軸部が、センサ基板241にハンダ付けされ、基部237bがセンサ基板241に固定されるとともに、センサ基板241を介して本体側と電気的に接続されている。
【0071】
図13に示すように、このような第2光学式センサ235を備えたセンサ基板241は、略長方形状で収容ケース9の外側の上壁面221における奥側の部分に設けられている。センサ基板241は、その長手方向に各インクカートリッジごとの5つの第2光学式センサ235が一列に並設されている。また、収容ケース9の外側上壁面221には、上壁面221側から下方へ向かって貫通する開口221aが5つの第2光学式センサ235の配置位置に対応して形成されていて、その開口221aを介して各中空アーム237が下方へ向って伸びた状態で、且つ発光素子238及び受光素子239が左右に位置するようにして取り付けられている。そして、これら発光素子238と受光素子239との間には、発光素子238が駆動することによって発光素子238から受光素子239へ向かう光の光路となる領域236が形成されている。
【0072】
なお、図13に示されるように、検出するインクカートリッジ10の被検知部の配置位置と対応するように、第2光学式センサの発光素子および受光素子は、第1光学式センサの発光素子および受光素子の配置位置よりも奥側(図13の左手側)に配置されている。
【0073】
また、詳細は後に説明するが、このような第1光学式センサ230は、カートリッジ10がカートリッジ装着部8へ装着されたときに、このカートリッジ10の種類を検知する役割と、カートリッジ10内のインク残量を検知する役割とを担う。また、第2光学式センサ235は、カートリッジ10がカートリッジ装着部8へ装着される過程で、カートリッジ10が装着過程にあるか否かを検知する役割を担う。
【0074】
一方、収容ケース9の奥壁面222の下部には、カートリッジ10のインク供給口91と連結する連結部223が設けられている。この連結部223は円筒形状を成し、奥壁面222から開口9b側(即ち、後方)へ突出しており、その内孔223aを通じて収容ケース9の内外を連通している。この内孔223aには、サブタンク15b(図2参照)に一端が接続されたチューブ22の他端が接続される。また、この連結部223の内孔223aの内側には図示しないインクニードルが設けられており、カートリッジ10が装着されると、このインクニードルがカートリッジ10のインク供給バルブ90のバルブ本体97を押し込む。その結果、インク供給口91と連結部223の内孔223aとが連通し、インク室100内のインクがチューブ22を通じてサブタンク15bへ供給可能となる。
【0075】
また、収容ケース9の奥壁面222の上部と下部とには、それぞれ当接部225,226が設けられている。このうち上側の当接部225は、カートリッジ10の上側の第2被検知部186(図10参照)に対応して設けられており、該カートリッジ10が装着される過程で第2被検知部186の前端を受け止める。下側の当接部226は、カートリッジ10の下側に設けられた突出部181(図10参照)に対応して設けられており、該カートリッジ10が装着される過程で突出部181の前端を受け止める。
【0076】
また、収容ケース9に枢支されたロックレバー220は、上述したように収容ケース9の開口9bの蓋体として開閉するだけでなく、収容室9a内にカートリッジ10を確実に装着し固定する役割も果たす。より詳しく説明すると、ロックレバー220の先端部には、オペレータが把持すべく外方へ突設されたグリップ220aと、収容ケース9に係合すべく内方へ突設された係合爪220bとが設けられている。一方、収容ケース9の開口9bの下方の縁部には、前記係合爪220bと係合するための係合溝227が形成されている。そして、グリップ220aを把持してロックレバー220を回動して開口9bを閉じると、係合爪220bと係合溝227とが互いに係合し、ロックレバー220は収容ケース9の開口9bを確実に閉鎖する。また、ロックレバー220の枢支箇所には開閉センサ(装着可否センサ)228が設けられており、ロックカバー220の開閉状態が検知可能になっている。
【0077】
[カートリッジの装着]
次に、図15〜図17を参照しつつ、カートリッジ10aをカートリッジ装着部8に装着する場合の動作について説明する。ここで、図15〜図17は何れもカートリッジ10aがカートリッジ装着部8へ装着される過程を示す模式的断面図であり、図15は、第2被検知部186が第2光学式センサ235によって検知された状態を示し、図16は、第2被検知部186及び突出部181の前端が収容ケース9の奥壁面222に当接した状態を示し、図17は、収容ケース9にカートリッジ10aが完全に装着された状態を示している。
【0078】
まず、図15に示すように、カートリッジ10aが後端部を除いてその大部分が収容ケース9内に挿入されると、第1被検知部185のブリッジ部189が第1光学式センサ230の領域231に進入する。その後、更にカートリッジ10aが奥へ挿入されることにより、第2被検知部186が第2光学式センサ235の領域236へ進入する。そして、このとき、第1光学式センサ230の発光素子233からの光は、第1被検知部185が有する隙間190(図3参照)を通過して受光素子234へ到達する状態となっている。
【0079】
次に、図16に示すように、カートリッジ10aが、前側カバー31がカートリッジ本体30から離隔した第1位置にある状態で、収容ケース9の最奥部まで挿入されると、カートリッジ10aの突出部181が当接部225に当接すると共に、第2被検知部186の前端が当接部226に当接し、前側カバー31はそれ以上は前方へ進入できない状態となる。このとき、第1被検知部185は、第1光学式センサ230の領域231よりも前方へ位置し、隙間190に換わって切欠部187が領域231に進入している。
【0080】
図16に示す状態から、ロックレバー220を開口9bが閉じられる方向へ回動させると、ロックレバー220の内面がカートリッジ10aの後端に当接し、これを前方へと押圧する。すると、コイルバネ23,24が収縮して前側カバー31に対して接近するように、カートリッジ本体30及び後側カバー32が前方へ更に進入する。この進入過程で、カートリッジ10aのインク供給口91が連結部223に連結され、他方では、カートリッジ本体30の検知窓140が前進して切欠部187から露出し、この検知窓140が第1光学式センサ230の領域231に進入する。
【0081】
図17に示すように、ロックレバー220が開口9bに対して完全に閉じられて、係合爪220bが係合溝227に嵌め込まれると、開口9bに対してロックレバー220がロックされると共に、開口9bはロックレバー220によって完全に閉塞される。このとき、前側カバー31に対してカートリッジ本体30は、最も近接する第2位置に到達しており、前側カバー31の押圧部174によって大気連通バルブ80のバルブ本体87が後方へ押動され、インク室100内は大気開放される。その結果、インク室100内のインクは、背圧が大気圧と等しくなり、インク供給口91からインクを供給可能な状態となる。
【0082】
[記録装置の機能的構成]
図18は、記録装置1が備える主な機能を示すブロック図である。図18に示すように、記録装置1は、その全ての動作を制御するための制御部200を備えており、該制御部200は、プロセッサ201、ROM202、RAM203、EEPROM204、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)205から主として構成されている。
【0083】
ROM202には、プロセッサ201が記録装置1の各種の動作を実行するために必要なプログラムが格納されており、例えば、時間を計測するためのタイマ手段実行プログラム202aが格納されている。RAM203は、プロセッサ201が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域として、又は上記プログラムを実行する際の作業領域として使用される。EEPROM204には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0084】
また、ASIC205には、制御部200の外部に設けられたヘッド制御基板15c、第1光学式センサ230、第2光学式センサ235、開閉センサ228、及び液晶ディスプレイ11a等が接続されている。なお、図18には示していないが、これらの他にも給紙ローラ19、搬送ローラ対20、排紙ローラ対21などを駆動させる駆動回路などもASIC205に接続されている。
【0085】
ヘッド制御基板15cは、ヘッドユニット15aと電気的に接続され、ASIC205から入力された信号に基づいてヘッドユニット15aを駆動する。これにより、ヘッドユニット15aのノズルから、所定のタイミングで所定の色のインクが選択的に吐出され、記録用紙に画像が形成される。
【0086】
第1光学式センサ230は、受光素子で受けた光の輝度(受光量)に応じた信号(以下「受光信号」と称する)を出力する。詳細には、第1光学式センサ230の発光素子233で出射されて受光素子で受けた光の輝度に応じたアナログの電気信号(電圧信号又は電流信号)が、受光信号として第1光学式センサ230から出力される。出力された受光信号は、制御部200に入力され、該主制御部200において、その電気的レベル(電圧値又は電流値)が所定の閾値以上の場合にHIGHレベル信号と判定され、所定の閾値未満の場合にLOWレベル信号と判定される。本実施の形態では、上記受光信号は、第1光学式センサ230の領域231において光が遮蔽されている場合にHIGHレベル信号と判定され、遮蔽されていない場合にLOWレベル信号と判定される。
【0087】
第2光学式センサ235は、上述の第1光学式センサ230と同じ原理に基づいて動作し、受光素子で受けた光の輝度(受光量)に応じた受光信号を出力するものである。従って、ここでの詳細な説明は省略する。
【0088】
開閉センサ228は、ロックレバー220が所定の開度にまで開かれたときに所定の信号を出力する。この信号は制御部200へ入力され、制御部200はこの信号に基づいてロックレバー220が開いた状態であることを判別する。また、液晶ディスプレイ装置11aは、ASIC205から入力された信号に基づいて文字列やシンボルマーク等のオペレータによって認識可能な情報を出力する。
【0089】
本実施の形態では、このような記録装置1における制御部200、第1光学式センサ230、第2光学式センサ235、開閉センサ228、及び液晶ディスプレイ装置11a等により、カートリッジ10に関する情報を検出するカートリッジ情報検出装置300が構成されている。
【0090】
[光学式センサの出力波形]
図19は、上記第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235から制御部200へ入力される受光信号の信号レベルを示す図面であり、時系列的に波形の変化を示している。また、(a),(b)はカートリッジ10aが装着されたときの波形変化を示しており、このうち(a)は第2光学式センサ235からの受光信号の波形変化を、(b)は第1光学式センサ230からの受光信号の波形変化を示している。また、(c),(d)はカートリッジ10bが装着されたときに波形変化を示しており、このうち(c)は第2光学式センサ235からの受光信号の波形変化を、(d)は第1光学式センサ230からの受光信号の波形変化を示している。
【0091】
この図19に示されるように、カートリッジ装着部8にカートリッジ10a,10bのいずれが装着された場合であっても、第2光学式センサ235は同じ波形の受光信号を出力する。つまり、第2光学式センサ235の領域236に第2被検知部186が進入して光を遮蔽すると、時刻T1において、信号レベルがLOWからHIGHに変化し、その後、カートリッジ10a,10bが完全に装着されるまでこの状態が維持される。なお、制御部200では、第2光学式センサ235からの受光信号の信号レベルがLOWからHIGHに変化したことをもって、後述する判定処理(図20参照)を開始するトリガ信号としている。
【0092】
これに対し、カートリッジ装着部8にカートリッジ10aが装着される場合とカートリッジ10bが装着される場合とでは、第1光学式センサ230から出力される受光信号の波形変化は相違する。
【0093】
まず、カートリッジ装着部8にカートリッジ10aが装着された場合は、その装着過程において、ブリッジ部189が領域231に進入して光を遮蔽する(図19(b)の時刻T0)。このとき、第1光学式センサ230の信号レベルがLOWからHIGHに変化する。しかしながら、ブリッジ部189は平板部材で形成されていて光を遮蔽する時間は短いため、本実施形態では少なくとも時刻T1に達するまでにブリッジ部189が領域231を外れ、そして、時刻T1の時点では、隙間190(図3参照)が領域231に進入した状態となる。従って、時刻T1では、第1光学式センサ230の信号レベルはHIGHからLOWに復帰している(図19(b)参照)。
【0094】
その後、インクカートリッジ10aが更に奥部まで挿入されると、領域231に切り欠き187が進入する。そして、カートリッジ10aがカートリッジ装着部8に完全に装着されると(図17の状態)、領域231に、切り欠き187及び検知窓140が進入した状態となる(図19(b)の時刻T3参照)。この状態のときに、つまり、時刻T3のときに、検知窓140に対して進退するインジケータ部72の動きを検知することができる。なお、図19(b)では、領域231にインジケータ部72が進入して光を遮蔽している場合の信号レベルが実線(HIGHレベル)で示され、領域231からインジケータ部72が退出している場合の信号レベルが破線(LOWレベル)で示されている。
【0095】
一方、カートリッジ装着部8にカートリッジ10bが装着された場合は、その装着過程において、ブリッジ部199が領域231に進入して光を遮蔽する(図19(d)の時刻T0)。このとき、第1光学式センサ230の信号レベルがLOWからHIGHに変化する。ここで、カートリッジ10bの場合は、ブリッジ部199が側壁198を有するため、光を遮蔽する時間はカートリッジ10aのブリッジ部189の場合に比べて長くなる。そして、本実施形態では、時刻T0を過ぎて時刻T1になっても、側壁198が領域231に進入した状態で維持されている。従って、時刻T1においても、第1光学式センサ230の信号レベルはHIGHを維持している(図19(d)参照)。
【0096】
その後、カートリッジ10aが更に奥部まで挿入されると、時刻T2の時点で、側壁198は領域231を外れ、代わりに、領域231に切り欠き187が進入する。このとき、第1光学式センサ230の信号レベルがHIGHからLOWに復帰する。そして、カートリッジ10bがカートリッジ装着部8に完全に装着されると、領域231に、切り欠き187及び検知窓140が進入した状態となる(図19(d)の時刻T3参照)。この状態のときに、つまり、時刻T3のときに、検知窓140に対して進退するインジケータ部72の動きを検知することができる。なお、図19(d)では、領域231にインジケータ部72が進入して光を遮蔽している場合の信号レベルが実線(HIGHレベル)で示され、領域231からインジケータ部72が退出している場合の信号レベルが破線(LOWレベル)で示されている。
【0097】
このように、カートリッジ10a,10bでは、第1光学式センサ230にて出力される受光信号の信号レベルが、第2光学式センサ235からの受光信号がLOWからHIGHへと変化する時刻T1より以前にHIGHからLOWへ復帰するか、又はこの時刻T1以降に復帰するかという違いがある。
【0098】
[カートリッジの種類判別]
本実施の形態に係る記録装置1では、第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235からの夫々の受光信号に基づき、カートリッジ装着部8に装着されたカートリッジ10の種類を判別することが可能である。図20は、制御部200によって行われる種類判別処理の手順の一例を示すフローチャートであり、以下では、これを参照しつつカートリッジ10の種類判別を実行する処理手順について説明する。
【0099】
まず、ステップS1において、第1光学式センサ230の領域231が遮光されたかどうかが制御部200によって判断される。具体的には、第1光学式センサ230の信号レベルがLOWからHIGHに変化したかどうかによって判断する(図19(b),(d)参照)。ここで、領域231が遮光されたと判断されると(S1のYES)、次のステップS2の判断処理が行われる。なお、本実施形態では、このステップS1において領域231の遮光が判断されない限り、カートリッジ10の種類判別処理は実行されない。
【0100】
次のステップS2では、上述したトリガ信号の有無が制御部200によって判断される。即ち、第2光学式センサ235の信号レベルがLOWからHIGHに変化したかどうかが判断される。ステップS2においてこのようなトリガ信号が検知されると、ステップS3では、このトリガ信号が検知された時点(図19の時刻T1)における第1光学式センサ230の信号レベルがLOWであるかHIGHであるかが判断される。例えば、図19を参照すると、時刻T1における信号レベルがLOWである場合は、カートリッジ10aがカートリッジ装着部8に挿入されていると判定できる。また、時刻T1における信号レベルがHIGHである場合は、カートリッジ10bがカートリッジ装着部8に挿入されていると判定できる。
【0101】
ステップS3において、第1光学式センサ230の信号レベルがLOWであると判断された場合は、カートリッジ10aを示すビットフラグがプロセッサ201のレジスタ等にセットされる。一方、ステップS3において、第1光学式センサ230の信号レベルがHIGHであると判断された場合は、カートリッジ10bを示すビットフラグがプロセッサ201のレジスタ等にセットされる。なお、セットされたビットフラグは、例えば、記録装置1にネットワーク接続された情報処理装置(パーソナルコンピュータ)や、記録装置1が具備する表示部などに出力される。
【0102】
このように、本実施の形態に係る記録装置1では、カートリッジ10が装着される過程において上記トリガ信号を検知したときに、第1光学式センサ230の信号レベル及び第2光学式センサ235の信号レベルの変化のタイミングに基づいてカートリッジ10の種類が判定される。従って、カートリッジ装着部8に対するカートリッジ10の装着時の作業速度にかかわらず、カートリッジ10の種類を確実に且つ正確に判定することができる。
【0103】
[光学式センサの間欠制御]
ところで、カートリッジ10の種類判別を実行する場合、第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235は、本実施の形態では開閉センサ228によってカートリッジ装着部8が有するロックレバー220が開かれたことを検出した時点から駆動する。駆動した第1光学式センサ230は、カートリッジ10の装着の有無およびインク残量に関する情報を定常的に検出可能なアクティブ状態である「定常モード」で動作する。そして、本実施の形態では、このような定常モードでの第1光学式センサ230の駆動が、所定時間だけ継続して行われたと判断した場合、カートリッジ10の装着の有無のみを検出可能な間欠的なアクティブ状態である「間欠モード」によって第1光学式センサ230を駆動することとしている。これにより、第1光学式センサ230の劣化、特にこれが有する発光素子233の劣化を抑制している。
【0104】
以下では、制御部200によって第1光学式センサ230が間欠モードにより駆動される場合の態様について説明する。なお、以下の態様は記録装置1において、制御部200を備えるカートリッジ情報検出装置300(図18)によって実行される。また、「定常モード」においては、第1光学式センサ230への連続的な通電状態を含むのは言うまでもないことであるが、その他、オペレータによる通常の装着作業であれば、図20に示した処理(特に、図19に示す時刻T1での第1光学式センサ230の信号レベルの判定)を正確に実行できる程度の間欠的な通電状態であれば、これも含まれる。また、開閉センサ228によってロックレバー220が開かれたことを検出した際に、各5つのインクカートリッジごとに設けられた5つの第1光学式センサ230および第2光学式センサ235は駆動状態(発光素子がON状態)となっている。
【0105】
図21は、制御部200によって第1光学式センサ230を間欠モードで動作制御する場合の手順を示すフローチャートである。また、図22は、図21のフローチャートに沿って制御される第1光学式センサ230の動作の一例を示すタイミングチャートであり、図23〜図26は夫々他の一例を示すタイミングチャートである。
【0106】
(実施例1)
はじめに、図21のフローチャートと図22のタイミングチャートとを参照しつつ、第1光学式センサ230が間欠モードで駆動する一態様を説明する。ここでは、ロックレバー220の開放によって第1光学式センサ230がONとなって定常モードで駆動し始めた後、所定時間内にカートリッジ10が抜き出されなかったときに間欠モードへ移行する場合を説明する。
【0107】
図21に示すように、開閉センサ228によってロックレバー220の開放を検出すると(S10)、制御部200はタイマとしても動作し、計測時間tをゼロ値にリセットして(t=0)経過時間の計測を開始し(S11)、これと同時に第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235を定常モードにより駆動する(S12,図22の時刻T11)。このとき、本実施例1ではカートリッジ10が引き抜かれていない状態であるため、第1光学式センサ230からの信号はHIGHレベルとなっている(図22参照)。
【0108】
その後、予め設定した所定の時間が経過したか否か、例えば、計測時間がt=10(分)に到達したか否かを判断する(S13)。その結果、所定時間が経過したと判断した場合(S13:YES)には、定常モードに換えて間欠モードによって第1光学式センサ230を動作させる(S14,図22の時刻T12)。この間欠モードで動作している間に、第1光学式センサ230からの信号に変化があるか否かを判別する(S15)。即ち、ここでは、カートリッジ10が引き抜かれて信号レベルがHIGHからLOWへ変化したか否かを判別する。そして、このような変化がない場合(S15:NO)は、更にロックレバー220が閉じられたか否かを判別する(S16)。その結果、ロックレバー220が閉じられたと判別した場合(S16:YES)には、第1光学式センサ230の駆動を停止させる(図22の時刻T13)。
【0109】
このような動作を実行することにより、ロックレバー220が開いたときから所定時間(t=10)を経過すると、定常モードから切り換えて間欠モードによって第1光学式センサ230を動作させることができる。従って、第1光学式センサ230の劣化を抑制することができる。
【0110】
なお、ステップ13において所定時間(t=10)を経過する前に(S13:NO)カートリッジ10が引き抜かれた場合は、間欠モードに移行せず、定常モードにおいて信号レベルがHIGHからLOWへ変化したか否かを第1光学式センサ230からの信号に変化があるか否かに基づいて判別し(S20)、変化があったと判別した場合(S20:YES)には、その信号レベルに基づいてカートリッジ10の有無を確認(S21)する。そしてカートリッジ10が装着されている場合(S21:YES)には、その装着される過程において、定常モードで動作している第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235によってカートリッジ10の情報が検出される(S22)。この検出手順は、図19及び図20を用いて既に説明した通りである。そして、カートリッジ10の情報検出が終了した後、又はステップ23にて出力信号に変化がないと判別した場合(S20:NO)は、ロックレバー220の開閉を判別し(S23)、ロックレバー220が閉じられたことにより出力信号が変化したと判別した場合(S23:YES)には、この時点で第1光学式センサ230の駆動を停止させ、ロックレバー220が閉じられていないと判別した場合(S23:NO)は、改めてステップ13の動作以降の動作を行う。一方、ステップ21にてカートリッジ10が装着されていないと判別した場合(S21:NO)、即ち、定常モードで動作中(S12)に第1光学式センサ230からの出力信号に変化があって(S20:YES)、カートリッジ10が装着されていないと判別した場合(S21:NO)には、オペレータにカートリッジ10の装着指示を行う(S24)ようにすればよい。
【0111】
また、本実施例及び以下に説明する実施例において、第1光学式センサ230が間欠モードにより動作している間、第2光学式センサ235は定常モードにより動作していてもよいが、これに換えて間欠モードにより動作するか停止していてもよく、このようにすることによって、所定時間を経過した後は、カートリッジの着脱状態を検出可能としつつも、第1光学式センサ230だけでなく、第2光学式センサ235の劣化をも抑制することができる。この場合、第2光学式センサ235は第1光学式センサ230と共通の構成を持って成すことができるため、説明は省略する。
【0112】
(実施例2)
次に、図21のフローチャートと図23のタイミングチャートとを参照しつつ、第1光学式センサ230が間欠モードで駆動する他の態様を説明する。ここでは、図21のステップ14を経て間欠モードにより第1光学式センサ230が動作している間に、カートリッジ10が引き抜かれて(S17:NO)、その後、定常モード(S12)での動作中(S13:NO)に新たなカートリッジ10が装着(S21:YES)される場合を説明する。
【0113】
図23に示すように、時刻T12に至るまでは上述した実施例1と同様に動作し、この時刻T12において第1光学式センサ230は、定常モードに換えて間欠モードによる動作を開始する(S14)。この間欠モードによる動作中に、第1光学式センサ230の出力信号に変化があったか否かを判別する(S15)。即ち、ここでは、カートリッジ10が引き抜かれて信号レベルがHIGHからLOWへ変化したか否かを判別する。そして、このような変化があったと判別した場合(S15:YES,図23の時刻T21)には、その信号レベルに基づいてカートリッジ10の有無を確認する(S17)。その結果、カートリッジ10が抜き出されていると判別すると(S17:NO)、新たなカートリッジ10の装着を指示し(S18)、間欠モードによる動作を終了して、計測時間tをゼロ値にリセット(t=0)して時刻T21の時点から改めて計測を開始する(S11)と共に、再び定常モードによって第1光学式センサ230を動作させる(S12)。
【0114】
その後、時刻T21の時点からの経過時間がt=10に至るまで(S13:NO)、新たなカートリッジ10が装着されて信号レベルがLOWからHIGHへ変化したか否かを判別する(S20)。図23に示すように、t=10に達する前の時刻T22に新たなカートリッジ10が装着されて信号レベルがLOWからHIGHへ変化したと判別した場合(S20:YES)は、その信号レベルに基づいてカートリッジ10が装着されていると判別する(S21:YES)。そして、定常モードにより動作している第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235によって、カートリッジ10に関する情報の検出が行われる(S22:図23の時刻T22)。この検出手順は、図19及び図20を用いて既に説明した通りである。そして、カートリッジ10に関する情報の検出後であって、経過時間がt=10に至る前の時刻T23に、ロックレバー220が閉じられると(S23:YES)、第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235は停止される。
【0115】
このような動作を実行することにより、ロックレバー220が開いてから所定時間を経過すると、定常モードから間欠モードに切り換えて第1光学式センサ230を動作させるため、その劣化を抑制することができる。また、このように間欠モードで第1光学式センサ230を動作させている間に、カートリッジ10が引き抜かれて新たなカートリッジ10が装着された場合であっても、新たなカートリッジ10の装着時には第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235が定常モードにより動作しているため、カートリッジ10に関する情報を適切に検出することができる。
【0116】
(実施例3)
次に、図21のフローチャートと図24のタイミングチャートとを参照しつつ、第1光学式センサ230が間欠モードで駆動する更に他の態様を説明する。ここでは、間欠モード(S14)により第1光学式センサ230が動作している間にカートリッジ10が引き抜かれ(S17:NO)て定常モード(S12)へ移行し、この引き抜かれた状態のまま長時間を経て(S13:YES)、定常モード(S12)から再び間欠モード(S14)へ移行した状態で新たなカートリッジ10が装着(S17:YES)される場合を説明する。
【0117】
図24に示すように、時刻T21に至るまでは上述した実施例2と同様に動作し、この時刻T21からは、カートリッジ10が引き抜かれた状態で第1光学式センサ230が定常モードによって動作する(S12)。その後、カートリッジ10が引き抜かれた状態のまま、時刻T21からの経過時間がt=10に達すると(S13:YES)、再び第1光学式センサ230は定常モードから切り換わって間欠モードにより動作する(S14,図24のT31)。次に、間欠モードの状態で新たなカートリッジ10が装着されると(図24の時刻T32)、第1光学式センサ230からの信号レベルの変化が検知されるため(S15:YES)、その信号レベルに基づいてカートリッジ10の有無を判別する(S17)。ここでは、カートリッジ10が装着されているので、信号レベルがHIGHに変化していることからカートリッジ10の装着を認識する(S17:YES)。
【0118】
このように、カートリッジ10が装着されていると判別すると、新たなカートリッジ10の適切な情報検出のために、装着されている新たなカートリッジ10をオペレータに一旦引き抜いて装着させるべく、再装着を促す情報を液晶ディスプレイ装置11aにて表示する(S19)。これと同時に、図21に示すルート1を経てステップ19からステップ11へ移行し、計測時間tをゼロ値にリセット(t=0)して時刻T32の時点から改めて経過時間tを計測する(S11)。更に、間欠モードを終了させて、再び定常モードによって第1光学センサ230を動作させる(S12)。そして、時刻T32の時点から経過時間がt=10に達する前(S13:NO)の時刻T33にて、第1光学式センサ230の信号レベルのHIGHからLOWへ変化したか(S20)でカートリッジ10が引き抜かれたと判別する(S21:NO)。その後、カートリッジ10の装着指示を出力し(S24)、再び時刻T32の時点から経過時間がt=10に達するまでの間(S13:NO)、カートリッジ10の装着の有無を判別する(S20,S21)。
【0119】
次に、図24に示すように、時刻T32の時点からの経過時間がt=10に達する前の時刻T34にカートリッジ10が再装着されると(S20:YES,S21:YES)、定常モードにより動作している第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235によって、新たなカートリッジ10に関する情報の検出が行われる(S22)。この検出手順は、図19及び図20を用いて既に説明した通りである。そして、新たなカートリッジ10に関する情報の検出後であって、経過時間がt=10に至る前の時刻T35にロックレバー220が閉じられると(S23:YES)、第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235は停止される。
【0120】
このような動作を実行することにより、ロックレバー220が開いてから所定時間を経過した後に間欠モードへ移行するのはもとより、古いカートリッジ10が引き抜かれた状態のままで、引き抜かれた時点から所定時間を経過した後にも間欠モードへ移行することとなる。従って、カートリッジ10の装着状態に応じて定常モードと間欠モードとを柔軟に切り換えて実行しており、第1光学式センサ230の劣化を抑制することができる。更に、新たなカートリッジ10が再装着されたとき(時刻T33)には、第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235が定常モードにより動作しているため、新しいカートリッジ10に関する情報を適切に検出することができる。なお、カートリッジ10を再装着をさせるための表示後に、カートリッジ10が引き抜かれたと判別されたときに、計測時間tをゼロ値にリセット(t=0)としてもよい。
【0121】
(実施例4)
次に、図21のフローチャートと図25のタイミングチャートとを参照しつつ、第1光学式センサ230が間欠モードで駆動する更に他の態様を説明する。ここでは、実施例3と同様に間欠モード(S14)により第1光学式センサ230が動作している間にカートリッジ10が引き抜かれ(S17:NO)て定常モード(S12)へ移行し、この引き抜かれた状態のまま長時間を経て、定常モード(S12)から再び間欠モード(S14)へ移行した状態で新たなカートリッジ10が装着(S17:YES)される場合の他の態様を説明する。なお、この実施例4の態様では、後述するように、間欠モード(S14)の状態でカートリッジ10が装着された場合(S17:YES)に、実施例3のように定常モード(S12)へ移行することなく、再装着の指示(S19)に従ってカートリッジ10が一旦引き抜かれる(S17:NO)まで、間欠モードを維持するようになっている。以下、具体的に説明する。
【0122】
図25に示すように、時刻T32に至るまでは上述した実施例3と同様に動作し、カートリッジ10が引き抜かれた状態で時刻T21からの経過時間がt=10に達しているので、第1光学式センサ230は間欠モードにより動作している(S14,図25のT31)。次に、この間欠モードの状態で新たなカートリッジ10が装着されると(図25の時刻T32)、第1光学式センサ230からの信号レベルの変化が検知されるため(S15:YES)、その信号レベルに基づいてカートリッジ10の有無を判別する(S17)。ここでは、カートリッジ10が装着されているので、信号レベルがHIGHに変化していることからこれを認識する(S17:YES)。
【0123】
このとき、カートリッジ10が装着されていると判別すると、適切な情報検出のために、装着されているカートリッジ10をオペレータに一旦引き抜いて装着させるべく、再装着を促す情報を液晶ディスプレイ装置11aにて表示する(S19)。その後、図21に破線で示すルート2を経てステップ19からステップ15へ移行し、間欠モードのまま、時刻T33にて、第1光学式センサ230の信号レベルのLOWへの変化(S15:YES)からカートリッジ10が一旦引き抜かれたと判別すると(S17:NO)、計測時間tをゼロ値にリセット(t=0)し、時刻T33の時点から改めて経過時間tを計測し(S11)、これと同時に間欠モードを終了させて再び定常モードによって第1光学式センサ230を動作させる(S12)。
【0124】
その後、図25に示すように、時刻T33の時点からの経過時間がt=10に達する前(S13:NO)の時刻T34にカートリッジ10が再装着されると(S20:YES,S21:YES)、定常モードにより動作している第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235によって、新たなカートリッジ10に関する情報の検出が行われる。この検出手順は、図19及び図20を用いて既に説明した通りである。そして、新たなカートリッジ10に関する情報の検出後であって、経過時間がt=10に至る前の時刻T35にロックレバー220が閉じられると(S23:YES)、第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235は停止される。
【0125】
このような動作を実行することにより、実施例3と同様の効果を見出すことができると共に、新たなカートリッジ10が装着された状態のときも第1光学式センサ230は間欠モードで動作されているので、再装着を促す情報が液晶ディスプレイ装置11aにて表示されているにもかかわらずカートリッジ10が引き抜かれない状態のまま放置されるような場合でも、これが引き抜かれる時点(時刻T33)まで、間欠モードが継続されて第1光学式センサ230の劣化を抑制することができる。
【0126】
(実施例5)
次に、図21のフローチャートと図26のタイミングチャートとを参照しつつ、第1光学式センサ230が間欠モードで駆動する更に他の態様を説明する。ここでは、上記実施例4においてカートリッジ10の再装着を促す情報の出力(S19)に応じてカートリッジ10を引き抜いた後(S17:NO,時刻T33)、この時点からt=10以上の長時間を経た後にカートリッジ10が再装着される場合を説明する。
【0127】
図26に示すように、時刻T33に至るまでは上述した実施例4と同様に動作し、この時点T33からは、経過時間tがリセットされて(t=0)時刻T33からの経過時間が改めて計測される(S11)と共に、カートリッジ10が引き抜かれた状態で第1光学式センサ230が定常モードによって動作する(S12)。その後、カートリッジ10が再装着されないまま経過時間がt=10に達すると(S13:YES,図25の時刻T41)、定常モードから間欠モードへ移行する(S14)。次に、間欠モードの状態でカートリッジ10が再装着されると(図25の時刻T42)、第1光学式センサ230からの信号レベルに変化があったか否かの判別の結果(S15)、第1光学式センサ230からの信号レベルの変化が検知されるため(S15:YES)、その信号レベルに基づいてカートリッジ10の有無を判別する(S17)。ここでは、カートリッジ10が装着されているので、信号レベルがHIGHに変化していることからこれを認識する(S17:YES)。
【0128】
以下、実施例4における時刻T32以降と同様に、カートリッジ10の再装着を促す情報を液晶ディスプレイ装置11aにて表示する(S19)。そして間欠モードの状態である時刻T43にてカートリッジ10が引き抜かれたことを確認すると(S17:NO)、間欠モードを終了させて、計測時間tをゼロ値にリセット(t=0)し、時刻T43の時点から改めて経過時間tを計測し(S11)、再び定常モードによって第1光学式センサ230を動作させる(S12)。
【0129】
その後、図25に示すように、時刻T43の時点からの経過時間がt=10に達する前(S13:NO)の時刻T44にカートリッジ10が再装着されると(S20:YES,S21:YES)、定常モードにより動作している第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235によって、カートリッジ10に関する情報の検出が行われる(S22)。この検出手順は、図19及び図20を用いて既に説明した通りである。そして、カートリッジ10に関する情報の検出後であって、経過時間がt=10に至る前の時刻T45にロックレバー220が閉じられると(S23)、第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235は停止される。なお、時刻T42以降の動作は、実施例3における時刻T32以降と同様に、第1光学式センサ230は間欠モードを終了して定常モードに戻って動作されてもよい。
【0130】
このような動作を実行することにより、間欠モード中に新たなカートリッジ10を装着し、再装着を促す情報に従ってこのカートリッジ10を抜き出して定常モードに移行した後、再装着されるまでに所定時間を超える長時間を経過したときにであっても、再び間欠モードへ移行することによって第1光学式センサ230の劣化を抑制することができる。更に、カートリッジ10が再装着されたとき(時刻T44)には、第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235が定常モードにより動作しているため、カートリッジ10に関する情報を適切に検出することができる。
【0131】
(実施例6)
次に、図21のフローチャートと図27のタイミングチャートとを参照しつつ、第1光学式センサ230が間欠モードで駆動する更に他の態様を説明する。ここでは、はじめにロックレバー220が開いて(S10:YES)、第1光学式センサ230が定常モード(S12)によって動作している間(S13:NO)にカートリッジ10が引き抜かれた後(S21:NO)、新たなカートリッジ10を装着する前に経過時間がt=10を超え、間欠モード(S14)へ移行する場合について説明する。
【0132】
図27に示すように、開閉センサ228によってロックレバー220の開放を検出すると(S10)、制御部200は計測時間tをゼロ値にリセットして(t=0)経過時間の計測を開始し(S11)、これと同時に第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235を定常モードにより駆動する(S12,図27の時刻T11)。このとき、本実施例6ではカートリッジ10が引き抜かれていない状態であるため、第1光学式センサ230からの信号はHIGHレベルとなっている(図27参照)。
【0133】
次に、この定常モードの間(S13:NO)の時刻T51の時点でカートリッジ10が引き抜かれると(S20:YES,S21NO)、第1光学式センサ230からの信号レベルは、HIGHからLOWへと変化する(図27参照)。その後、ステップ13へ移行し、時刻T52において、時刻T11からの経過時間がt=10に達したと判断した場合(S13:YES)は、定常モードから間欠モードへ切り換えられる(S14)。このように、カートリッジ10が引き抜かれた状態で間欠モードとなる時刻T52以降は、実施例4において同様の状態となる時刻T31以降と同様に動作する(図25参照)。
【0134】
即ち、間欠モードの状態で新たなカートリッジ10が装着されると(図27の時刻T53)、第1光学式センサ230からの信号レベルの変化が検知されるため(S15:YES)、その信号レベルに基づいてカートリッジ10が装着されていることを判別し(S17:YES)、更に、再装着を促す情報を液晶ディスプレイ装置11aにて表示する(S19)。その後、図21に破線で示すルート2を経てステップ15へ移行し、時刻T54にて、第1光学式センサ230の信号レベルの変化からカートリッジ10が引き抜かれたと判別すると(S15:YES,S17:NO)、計測時間tをゼロ値にリセット(t=0)し、時刻T54の時点から改めて経過時間tを計測(S11)すると同時に、間欠モードを終了させて再び定常モードによって第1光学式センサ230を動作させる(S12)。
【0135】
その後、図27に示すように、時刻T54の時点からの経過時間がt=10に達する前(S13:NO)の時刻T55にカートリッジ10が再装着されると(S20:YES,S21:YES)、定常モードにより動作している第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235によって、カートリッジ10に関する情報の検出が行われる(S22)。この検出手順は、図19及び図20を用いて既に説明した通りである。そして、カートリッジ10に関する情報の検出後であって、経過時間がt=10に至る前の時刻T56にロックレバー220が閉じられると(S23:YES)、第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235は停止される。なお、時刻T53以降の動作は、実施例3における時刻T32以降と同様に、第1光学式センサ230は間欠モードを終了して定常モードに戻って動作されてもよい。
【0136】
このような動作を実行することにより、ロックレバー220が開いて定常モードで動作している間にカートリッジ10が引き抜かれ、その後、新たなカートリッジ10が装着されるまでに所定時間が経過した場合であっても、定常モードから間欠モードへ切り換えることにより、第1光学式センサ230の劣化を抑制することができる。更に、カートリッジ10が再装着されたとき(時刻T55)には、第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235が定常モードにより動作しているため、カートリッジ10に関する情報を適切に検出することができる。
【0137】
以上に説明したように、本実施の形態に係る記録装置1が備えるカートリッジ装着装置300によれば、カートリッジ10の装着状態に応じて、第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235の動作モードを、定常モードと間欠モードとの間で柔軟に切り換えて動作させることが可能である。従って、これらのセンサ230,235の長時間に及ぶ定常的な駆動による劣化を抑制することができる。
【0138】
なお、上述した説明では、最初に経過時間tの計測を開始するタイミングとして、ロックレバー220が開いたことを検出した時点を採用しているが、この態様に限定されない。例えば、ロックレバー220の開閉状態に拘わらず、第1光学式センサ230又は第2光学式センサ235が定常モードにより動作しはじめた時点を、経過時間tの計測開始時点としてもよいし、ロックレバー220の開閉状態やセンサ230,235の動作状態に拘わらず、他のタイミングに同期して、経過時間tの計測を開始するようにしてもよい。要は、装着されるカートリッジ10に関する情報を検出可能な状態で、経過時間tの計測を開始することができればよい。
【0139】
また、上述の記載では、ロックレバー220が、収容ケース9aに対する1つの蓋体で、開閉センサ228が1つ取り付けられ、その開閉センサ228により、複数個のインクカートリッジごとの複数個のセンサ230、235が、全て同時に駆動されるように構成されているが、このような構成に限らず、ロックレバー220が、複数個のインクカートリッジごとに複数個別々に設けられていて、それぞれのロックレバー220には各開閉センサが設けられ、各インクカートリッジごとに設けられたセンサ230、235がそれぞれ対応する開閉センサに対応して上述のような劣化防止制御されていてもよい。また、ロックレバー220が、複数個のインクカートリッジごとに複数設けられ、さらにロックレバー220を外側から覆う1つの外蓋を設けた二重蓋構造でもよく、その場合、外蓋に開閉センサを設ける。
【0140】
また、本実施の形態では、光学式センサとして第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235の2つを備える態様について説明したが、1つのみ、或いは3つ以上の光学式センサを備える場合であっても、本発明を適用して定常モードと間欠モードとを適宜切り換えて光学式センサの劣化を抑制することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、記録装置などに搭載されて、カートリッジに関する情報を検出する光学式センサの劣化を抑制することができるカートリッジ情報検出装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明を適用した記録装置の外観構成を示す斜視図であり、本実施の形態では記録装置としてプリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、及びファクシミリ機能等を備える所謂複合機を図示している。
【図2】記録装置が有するプリンタ部の構成を示す模式的断面図である。
【図3】カートリッジの外観構成を示す斜視図である。
【図4】図3に示すカートリッジの側面図である。
【図5】カートリッジ本体の外観形状を示す斜視図であり、(a)は斜め前方から見たときの構成、(b)は斜め後方から見たときの構成をそれぞれ示している。
【図6】図5に示すカートリッジ本体の側面図である。
【図7】図5におけるVII-VII線でカートリッジ本体を切断したときの断面図である。
【図8】カートリッジ本体の前部の構成を拡大して示す拡大断面図である。
【図9】図3(a)に示すカートリッジをIX-IX線で切断したときの構成を示す断面図である。
【図10】図3(b)に示すカートリッジをX-X線で切断したときの構成を示す断面図である。
【図11】図9に示すカートリッジの部分的な拡大図であり、(a)は図9にて二点鎖線XIaで囲んだ上部を拡大して示し、(b)は図9にて二点鎖線XIbで囲んだ下部を拡大して示している。
【図12】他方のカートリッジの構成を示す図面であり、(a)は前側カバーを実線としその他の外形状を破線とした斜視図を示し、(b)は前側カバーの側面図を示している。
【図13】カートリッジ装着部の構成を示す模式的断面図である。
【図14】第1光学式センサの構成を示す図面であり、(a)はその模式的断面図を示し、(b)はその回路図を示している。
【図15】カートリッジがカートリッジ装着部へ装着される過程を示す模式的断面図であり、第2被検知部が第2光学式センサによって検知された状態を示している。
【図16】カートリッジがカートリッジ装着部へ装着される過程を示す模式的断面図であり、第2被検知部及び突出部の前端が収容ケースの奥壁面に当接した状態を示している。
【図17】カートリッジがカートリッジ装着部へ装着される過程を示す模式的断面図であり、収容ケースにカートリッジが完全に装着された状態を示している。
【図18】記録装置が備える主な機能を示すブロック図である。
【図19】第1光学式センサ及び第2光学式センサから制御部へ入力される受光信号の信号レベルを示す図面であり、時系列的に波形の変化を示している。
【図20】制御部によって行われる種類判別処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図21】制御部によって第1光学式センサを間欠モードで動作制御する場合の手順を示すフローチャートである。
【図22】図21のフローチャートに沿って制御される第1光学式センサの動作の一例(実施例1)を示すタイミングチャートである。
【図23】図21のフローチャートに沿って制御される第1光学式センサの他の動作の一例(実施例2)を示すタイミングチャートである。
【図24】図21のフローチャートに沿って制御される第1光学式センサの他の動作の一例(実施例3)を示すタイミングチャートである。
【図25】図21のフローチャートに沿って制御される第1光学式センサの他の動作の一例(実施例4)を示すタイミングチャートである。
【図26】図21のフローチャートに沿って制御される第1光学式センサの他の動作の一例(実施例5)を示すタイミングチャートである。
【図27】図21のフローチャートに沿って制御される第1光学式センサの他の動作の一例(実施例6)を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0143】
8 カートリッジ装着部
10,10a,10b カートリッジ
11a 液晶ディスプレイ装置
200 制御部
228 開閉センサ(装着可否センサ)
230 第1光学式センサ
235 第2光学式センサ
300 カートリッジ情報検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが収容されたカートリッジを着脱可能なカートリッジ装着部と、
該カートリッジ装着部へ前記カートリッジを装着するに際して、少なくとも該カートリッジの着脱状態を示す情報を含む該カートリッジに関する情報を検出する光学式センサと、
時間を計測するタイマ手段を有して前記光学式センサの動作を制御すると共に前記カートリッジに関する情報を検出可能な状態か否かを判断する制御部とを備え、
該制御部は、
前記カートリッジに関する情報を検出可能な状態から前記タイマ手段によって所定時間の経過を計測する間、前記光学式センサを、前記カートリッジに関する情報を検出可能な定常的なアクティブ状態である定常モードで動作させる一方、
前記所定時間経過後は、前記カートリッジの着脱のみを検出可能な間欠的なアクティブ状態である間欠モードで動作させるように構成されていることを特徴とするカートリッジ情報検出装置。
【請求項2】
前記制御部からの指示に基づいてオペレータが認識可能なように情報を出力する出力部を更に備え、前記制御部は、前記間欠モードで動作する前記光学式センサによって前記カートリッジの装着を検出した場合に、該カートリッジの再装着を促す情報を前記出力部にて出力させるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ情報検出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記間欠モードで動作する前記光学式センサによって前記カートリッジの装着を検出した場合に、前記光学式センサを前記間欠モードに換えて前記定常モードで動作させるよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載のカートリッジ情報検出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記出力部がカートリッジの再装着を促す情報を出力した後に、前記光学式センサが前記装着部からの前記カートリッジの離脱を検出した場合に、前記光学式センサを前記間欠モードに換えて前記定常モードで動作させるよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載のカートリッジ情報検出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記間欠モードで動作する前記光学式センサによって前記カートリッジの離脱を検出した場合に、前記光学式センサを前記間欠モードに換えて前記定常モードで動作させるよう構成されていることを特徴とする請求項1記載のカートリッジ情報検出装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記光学式センサを前記間欠モードに換えて前記定常モードで動作させるときに、前記タイマ手段をリセットさせるよう構成されていることを特徴とする請求項3乃至5の何れかに記載のカートリッジ情報検出装置。
【請求項7】
前記カートリッジ装着部への前記カートリッジの装着が可能な状態を検出する装着可否センサを更に備え、
前記制御部は、前記カートリッジの装着可能状態を示す前記装着可否センサからの信号に基づき、前記カートリッジに関する情報を検出可能な状態であると判断するよう構成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のカートリッジ情報検出装置。
【請求項8】
前記光学式センサは、前記カートリッジ装着部への前記カートリッジの着脱状態を検出する第1センサと、前記カートリッジ装着部への前記カートリッジの装着過程から該カートリッジに関する他の情報を検出するための第2センサとを有し、
前記制御部は、
前記第1センサの前記カートリッジに関する情報の検出から所定時間経過する間、前記第1センサ及び前記第2センサを共に前記定常モードで動作させる一方、
前記所定時間経過後は、前記第1センサを前記間欠モードで動作させるよう構成されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のカートリッジ情報検出装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記所定時間経過後に前記第1センサを前記間欠モードで動作させると共に、前記第2センサを、前記カートリッジに関する情報を検出不能な非アクティブ状態とするよう構成されていることを特徴とする請求項8に記載のカートリッジ情報検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2009−173028(P2009−173028A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330773(P2008−330773)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】