説明

カートレインの車両積込み積卸し装置

【課題】短時間で貨車への車両の積み込み、積み卸しができるようにする。
【解決手段】車両3を走行可能にしたプラットホーム5を、カートレインIの停車位置に対して並列に配置して設けると共に、プラットホーム5とカートレインIの停車位置との間に、カートレインIに沿って延びるレール19と該レール19上を走行可能にした台車9aとを備える特殊ホーム9を設ける。車両3を積載するトレー14を、カートレインIの貨車1に設け、該トレー14を貨車1と台車9aとの間で移動させるトレー移送装置21を設ける。プラットホーム5を走行した車両3を、台車9a上に移動させたトレー14に乗入れて停車させた後、該トレー14を貨車1に積込むようにしたり、貨車1上のトレー14を台車9a上に移動させた後、トレー14上の車両3をプラットホーム5へ走行させて積卸しをさせるようにして、貨車1への車両3の積込み、積卸しを短時間で行えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車(以下、車両という。)を列車に載せて鉄道で輸送するカートレインにおける貨車に車両を積み込んだり貨車から車両を積み卸したりするために用いるカートレインの車両積込み積卸し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1つの鉄道駅から別の離れた鉄道駅まで車両を列車に積み込んで、鉄道輸送する、いわゆるカートレインは、車両を積載して輸送する複数の専用の貨車と、車両に乗車する利用者を運ぶ複数の客車とを備え、貨車同士間、客車同士間、貨車と客車との間をそれぞれ連結装置で連結し、先端の牽引車としての機関車により軌道上を走行し、多数の車両と多数の人を同時に目的地まで輸送するものとして従来より知られている。
【0003】
近年、地球温暖化の問題が大きく取り上げられており、将来の低炭素社会を目指して電気自動車の多用化が予想されている。しかし、電気自動車は、1回の充電で走行できる距離が短く、遠距離への走行移動には大きな難点がある。そのため、電気自動車を列車に積み込んで遠方の目的地まで鉄道輸送することは、エネルギー効率の点から好ましいことであり、電気自動車による遠方への移動難点が解消できる。
【0004】
又、電気自動車以外の一般の車両においても、遠方の目的地まで鉄道輸送することは、時間と燃費の節約、COの排出削減が図れて有利である。
【0005】
このような観点から、カートレインは今後重要な輸送手段となることが予想される。
【0006】
かかるカートレインを利用する場合、停車駅では、鉄道輸送使用とする車両をホームから貨車に積み込む積み込み作業と、貨車に積み込まれて輸送された車両を貨車から積み卸す積卸し作業が行われる。
【0007】
従来、カートレインとしての列車の貨車に車両の積込み積卸し作業を行うものとして、図11(イ)(ロ)に一例を示すような車両積込み積卸し設備が提案されている。
【0008】
すなわち、図11(イ)(ロ)に示す車両の積込み積卸し設備は、駐車装置101と、積込台車102と、地下搬送台車103と、昇降装置104とからなる構成としてある。駐車装置101は、中央にエレベータ105、その左右に車両106を積載したパレット107を収納するための駐車室108が設けられている立体駐車装置としてあり、1階の入出庫口109でパレット107上に車両106を積載すると、パレット107ごと駐車室108に収納するようにし、停車中の列車110に車両106を積み込むときは、駐車室108から車両106をパレット107と一緒にエレベータ105で地下搬送装置103のところへ取り出すようにしてある。上記積込台車102は、列車110が走行する軌道111の左右両側に設けられた積込用プラットホーム112上に、列車110に沿って前後方向へ移動可能に配置されていて、パレット107を横方向へ移送する装置が装備されている。積込用プラットホーム112の前端部において、積込台車102と軌道111との間に位置している昇降装置104のうち、左側の昇降装置104は、地下2階から積込用プラットホーム112上の積込台車102の上下2段の移送装置の高さまでパレット107を昇降させ、右側の昇降装置104は、地下1階から積込用プラットホーム112上の積込台車102の上下2段の移送装置の高さまでパレット107を昇降させるようにしてある。又、地下搬送装置103は、左側の昇降装置104と駐車装置101との間における地下2階のレベルと、地下1階のレベルに、それぞれ設置された構成のものとしてある。
【0009】
したがって、利用者が出発地付近の駅で車両106を列車110に積み込もうとするときは、車両106を駐車装置101に入出庫口109から乗り入れてエレベータ105上のパレット107に積載させた後、車両106から下車し、次いで、車両106を積載したパレット107を一旦駐車装置101の駐車室108に収納しておくようにする。駅に列車110が到着して、車両106を列車110に積み込むときになると、上記車両106を積載したパレット107を、駐車装置101の駐車室108から取り出し、エレベータ105で地下まで下ろすようにし、次いで、地下搬送装置103で積込用プラットホーム112下まで搬送した後、昇降装置104によってパレット107を積込用プラットホーム112上まで上昇させ、そこで積込台車102へ受渡すようにする。パレット107を受け取った積込台車102は、列車110に沿って所定の位置まで移動し、パレット107をパレット移送装置で横方向へ移送して列車110に積み込むようにしている。
【0010】
一方、列車110から車両106を積み卸すときは、車両106を積載したパレット107を、列車110から積込台車102へ取り出した後、積込台車102を昇降装置104の位置まで列車110に沿って移動させ、積込台車102上から昇降装置104へのパレット107の受渡しを行うようにし、以後、積込み作業とは逆の動作を行って駐車装置101の駐車装置108に収納するようにするものである(たとえば、特許文献1参照)。
【0011】
又、従来の列車に車両の積込み、積卸しをする装置としては、図示してないが、自走でき且つジャッキにより高さを調整できるようにしてある積載台車の上面に、車両を積載させるパレットを、横方向へシリンダにより移動できるように備えると共に、積載台車の前後両端部に、上面のパレット上への車両の乗入れを行わせるための進入路を、上下方向に移動可能に取り付けた構成のものを用いるようにしたものがある。
【0012】
かかる構成の車両の積込み積卸し装置を用いる場合は、移載台車を、列車の貨車に横付けした後、ジャッキにより移載台車と貨車との高さを合わせ、積載台車の進入路を降ろして傾斜進入路とするようにする。積込む車両は進入路から積載台車上のパレット上に積載させた後、パレットを横方向へ移動させて貨車に積み込むようにする。一方、貨車にパレットごと積み込まれている車両を積卸す場合は、貨車に横付けされて高さを貨車に合わせられた積載台車上に、パレットを貨車から引き出すことにより車両を積載台車の上へ移動させた後、車両を傾斜させた進入路を通して地上へ走行させるようにして積卸しを行うようにしている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−211878号公報
【特許文献2】特開平4−345431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、上記した図11(イ)(ロ)に示すような列車への車両の積込み積卸し設備の場合には、積込台車102、昇降装置104、地下搬送装置103を使用し、地下搬送装置103により搬送されて昇降装置104により上昇させられた車両106を、パレット107ととともに積込台車102上に受渡し、積込台車102を、積込用プラットホーム112上を列車110に沿い積込み位置まで移動させ、積込台車102上からパレット107を列車内に横移動させて車両106を積み込むようにし、又、その逆の動作により、列車110内から車両106積載のパレット107を横移動させて積込台車102上に移し、積込台車102を昇降装置104の位置まで積込用プラットホーム112上を移動させるようにして積み卸すようにするものであり、同時に複数台の車両106を積込用プラットホーム112から列車110内に積み込んだり、複数台の車両を列車110内から積み卸したりすることができないものである。又、駐車装置101に一旦収納するようにしてあるものであるため、列車への車両の積込み積卸しを行う駅の近傍位置に駐車装置を必要とする等、大掛かりな設置を必要とするものである。
【0015】
又、特許文献2に示すような移載台車を用いようとしたものでは、貨車に横付けした移載台車上のパレットに積載させた車両のみを貨車に積み込むことができるようにしてあるものであり、1台の積載台車を利用して複数の車両を同時に積み込んだり、積み卸したりすることはできないものである。又、積載台車上と地面との間の車両の移動は、移載台車の前後両端部に取り付けた進入路を傾斜させて、その上を走行させることにより行わせるものであるため、貨車への円滑な積込み積卸しはできないものである。
【0016】
そこで、本発明は、カートレイン貨車への車両の積込み積卸しの荷役作業を迅速且つ容易、確実に行うようにすると共に同時に複数の車両を積込み積卸しが容易にできるようにし、更に、複数の駅に停車するカートレインの運行において各駅で任意の車両の荷役を容易に実現できるようなカートレインの車両積込み積卸し装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、カートレインが停車する駅に、車両を走行させて乗入れ乗出しさせる走行部と乗入れられた車両をカートレインに積み込むまで待機させておく待機部とカートレインの利用者の歩行部とを有するプラットホームを、カートレインの軌道と平行に構築すると共に、該プラットホームの上記カートレイン軌道側に、カートレインの停車時におけるカートレインの各貨車に対応させた台車をカートレインの軌道と平行に移動できるようにしてなる特殊ホームを設け、且つ該特殊ホームの各台車に、上記カートレインの各貨車内に備えられる車両積載用のトレーを貨車内から該台車上に引き出したり、該台車上から貨車内に移動させるためのトレー移送装置を備えてなり、上記プラットホームの待機部の車両を、特殊ホームの台車上に引き出したトレー上に乗り入れることによりトレー移送装置で貨車への積み込みを行い、貨車からトレーに積載した車両をトレーと共に特殊ホームの台車上に引き出すことにより積み卸しを行うことができるようにした構成とする。
【0018】
又、請求項2に対応して、上記構成において、カートレインの各貨車の床面に、前後方向に所要間隔を隔てて複数のトレー設置部を設けて、該各トレー設置部でそれぞれトレーが前後方向と直交する特殊ホーム側へ横移動できるようにし、且つ特殊ホームの各台車上に、上記トレーを受け入れるトレーピットを、貨車内のトレー設置部に対応させて設けて、該各トレーピット上に、貨車内から引き出したトレーを移動できるようにすると共に、上記各台車の各トレーピットに、トレーを貨車と台車との間に移動させるためのトレー移送装置をそれぞれ備えた構成とする。
【0019】
更に、請求項3に対応して、上記構成において、トレー移送装置を、各台車のトレーピットにカートレイン軌道側に延びるように敷設したレールと、該レール上を移動できるように駆動機構部を備えて自走できるようにしたトレー移送台車とからなる構成とし、且つ上記トレー移送台車のカートレイン軌道側の端部に、トレーと連結するための連結装置を備えた構成とする。
【0020】
更に又、請求項4に対応して、上記構成において、トレーを、中央部分に設置した円形テーブルと、該円形テーブルを回転させる駆動部とを備える構成とする。
【0021】
又、請求項5に対応して、上記構成において、トレーを連結するためトレー移送台車に備えた連結装置を、トレーに取り付けた連結棒の上面側に接触したまま該連結棒と相対変位することにより上方向へ持ち上げられるガイド面と、該ガイド面が上記連結棒から外れると該連結棒に係止できる係止部を先端側に有するフック金物とし、且つ上記フック金物の回転軸に、フック金物の係止部をトレー側の連結棒から離脱させるように操作するハンドルを取り付けてなる構成とする。
【0022】
又、請求項6に対応して、上記構成において、トレーを連結するためトレー移送台車に備えた連結装置を、トレーに取り付けた吸着部材を吸着させるようにする電磁石として、トレー移送台車のカートレイン軌道側の端面より僅かに突出させて取り付け、且つトレーに取り付けた吸着部材を、横方向に首振りできるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明のカートレインの車両積込み積卸し装置によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
【0024】
(1)カートレインが停車する駅に、車両を走行させて乗入れ乗出しさせる走行部と乗入れられた車両をカートレインに積み込むまで待機させておく待機部とカートレインの利用者の歩行部とを有するプラットホームを、カートレインの軌道と平行に構築すると共に、該プラットホームの上記カートレイン軌道側に、カートレインの停車時におけるカートレインの各貨車に対応させた台車をカートレインの軌道と平行に移動できるようにしてなる特殊ホームを設け、且つ該特殊ホームの各台車に、上記カートレインの各貨車内に備えられる車両積載用のトレーを貨車内から該台車上に引き出したり、該台車上から貨車内に移動させるためのトレー移送装置を備えてなり、上記プラットホームの待機部の車両を、特殊ホームの台車上に引き出したトレー上に乗り入れることによりトレー移送装置で貨車への積み込みを行い、貨車からトレーに積載した車両をトレーと共に特殊ホームの台車上に引き出すことにより積み卸しを行うことができるようにしたことを特徴とするカートレインの車両積込み積卸し装置とし、具体的には、カートレインの各貨車の床面に、前後方向に所要間隔を隔てて複数のトレー設置部を設けて、該各トレー設置部でそれぞれトレーが前後方向と直交する特殊ホーム側へ横移動できるようにし、且つ特殊ホームの各台車上に、上記トレーを受け入れるトレーピットを、貨車内のトレー設置部に対応させて設けて、該各トレーピット上に、貨車内から引き出したトレーを移動できるようにすると共に、上記各台車の各トレーピットに、トレーを貨車と台車との間に移動させるためのトレー移送装置をそれぞれ備えた構成としてあるので、同時に複数台の車両を特殊ホームの台車上から貨車へ移動させて積込むことができると共に、貨車に積み込まれている複数の車両を同時に貨車から特殊ホームの台車上に移動させて積卸を行うことができる。これにより1つの駅で多数の車両の積込み積卸しを短時間に行わせることができる。
【0025】
(2)駅にプラットホームを設け、該プラットホームに特殊ホームを設けるだけでカートレインの停車駅として車両の積込み積卸しができるようにすることができるので、大掛かりな設備を設けることなく任意の駅で容易に車両の積込み積卸しができるものとすることができる。
【0026】
(3)特殊ホームの台車がカートレインの軌道と平行な方向へ走行移動できるようにしてあることから、カートレインの停車位置がずれる等してカートレインの各貨車のトレー中心線と各台車のトレーピットの中心線がずれた状態になったとしても、特殊ホームが台車形式としてあってカートレインの貨車の停止位置に確実に合わせることができて、貨車と台車との間でトレーの移送を円滑に行わせることが可能となる。
【0027】
(4)トレー移送装置を、各台車のトレーピットにカートレイン軌道側に延びるように敷設したレールと、該レール上を移動できるように駆動機構部を備えて自走できるようにしたトレー移送台車とからなる構成とし、且つ上記トレー移送台車のカートレイン軌道側の端部に、トレーと連結するための連結装置を備えた構成としてあるので、各台車のトレーピット上へのトレーの受け入れやトレーピット上から貨車へのトレーの移動を円滑に行わせることができて、特殊ホームでの台車を利用した貨車への車両の積込み積卸しを容易且つ短時間に行うことができる。
【0028】
(5)更に、トレーに、該トレーを台車上に移動させたときにカートレインに沿う向きに車両を回転させる円形テーブルを設けるようにした構成としてあるので、トレー上での車両の停車向きが如何なる方向であったとしても、車両を貨車に積み込むのに最適な向き、たとえば、カートレインに沿う向き、に容易に変更することができる。又、トレーを台車上に移動させたときに車両を回転させるようにしてあるので、屋根のある貨車に車両を積み込む場合でも、該車両を容易に積み込むことができる。
【0029】
(6)更に又、トレー移送台車と貨車上のトレーとの連結を、該トレーに設けられる連結棒に、該連結棒にガイドされて上方向に回転させられるフック金物の係止部を係合させることにより行うようにした構成としてあるので、トレー移送装置と貨車上のトレーとの連結を特別な工具を用いることなく短時間で行うことができる。
【0030】
(7)又、トレー移送台車と貨車上のトレーとの連結を、該トレーに設けられる首振り可能な吸着部材を、上記トレー移送台車に設けられる電磁石に吸着させることにより行うようにした構成とすることにより、該電磁石を励磁させることにより、簡単に且つ短時間にトレーとの連結を行うことができ、又、トレーに吸着部材を水平方向に回動可能に設けるようにしてあることから、トレー移送台車とトレーとの間に位置のずれがあったとしても、電磁石の磁力により首振り連結部材を該電磁石の方向に向かせられて、上記トレー移送台車と貨車のトレーとの連結を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のカートレインの車両積込み積卸し装置の実施の一形態を一部切除して示す概略平面図である。
【図2】図1のA部の拡大図である。
【図3】図2のB−B方向より見た概略側面図である。
【図4】本発明のカートレインの車両積込み積卸し装置の実施の一形態における特殊ホームに装備するトレー移送装置の概要を示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は駆動機構部の概略正面図、(ハ)は(ロ)のC−C矢視図、(ニ)はトレー移送装置の移動方向左右側端部の概略切断正面図である。
【図5】図4に示すトレー移送装置とトレーとの連結部について示すもので、(イ)はトレー移送装置側のフック金物がトレー側の連結棒に係止する過程を示す概略側面図、(ロ)は(イ)の状態からフック金物が連結棒に係止した状態と、係止を解除させる状態を示す概略側面図である。
【図6】本発明のカートレインの車両積込み積卸し装置の実施の一形態におけるトレーの概要を示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は円形テーブルの側面図、(ハ)は円形テーブル外周面に取り付けたリング状の歯とチェーンの関係を示す部分図である。
【図7】図6と同様にトレーについて示すもので、(イ)は図6(イ)のD部の拡大図、(ロ)は(イ)のE−E矢視図、(ハ)は図6(イ)に示す円形テーブル駆動部の切断側面図である。
【図8】(イ)〜(チ)は本発明のカートレインの車両積込み積卸し装置の実施の一形態により複数の車両を貨車に同時に積み込むときの動作手順を示す概略平面図である。
【図9】(イ)〜(チ)は本発明のカートレインの車両積込み積卸し装置の実施の一形態により複数の車両を貨車から同時に積み卸すときの動作手順を示す概略平面図である。
【図10】本発明のカートレインの車両積込み積卸し装置の実施の他の形態を示すもので、(イ)は特殊ホームに装備するトレー移送装置とトレーとを連結した状態を示す概略平面図、(ロ)は(イ)のF−F方向から見た拡大側面図である。
【図11】従来の列車への車両の積込み設備の一例を示すもので、(イ)は全体配置を示す平面図、(ロ)は(イ)の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0033】
図1乃至図7は本発明のカートレインの車両積込み積卸し装置の実施の一形態を示すもので、複数の車両3を積載できるように前後方向(長手方向)の複数個所の床面上に、車両積載用のトレー14を各々左右方向の一側方へ出入できるように移動可能に設置した複数の貨車1と、利用者である旅客を乗せる客車2とをそれぞれ連結し、図示してない牽引車としての機関車により牽引して貨車1に積み込んだ車両3と客車2に乗車した利用者とを輸送するようにしたカートレインIを開発して、軌道4上を走行できるようにする。
【0034】
上記カートレインIが停車する駅ごとに、停車駅の軌道4に沿う駅領域の範囲にわたり車両3の進入時と退出時の走行路となる走行車線部6と、進入してきた車両3をカートレインIの貨車1に積み込むまでの間に待機させておく待機部となる待機車線部7と、待機車線部7の外側に利用者が歩行する歩道部8とを有するプラットホーム5を構築すると共に、上記カートレインIの各貨車1の停止位置に合わせて、上記カートレインIの軌道4とプラットホーム5の走行車線部6との間に、本発明の特徴をなすトレー移送装置付き台車形式の特殊ホーム9を、カートレインIに沿い移動できるようにした構成とする。
【0035】
詳述すると、上記カートレインIは、図1に概略を示す如く、遊び(ガタ)が、たとえば、10cm程度あるようにしてある連結装置10で互いに連結されている複数の貨車1における各床11の複数個所、すなわち、軌道4と平行な前後方向に所要間隔隔てた複数個所(図1では5個所の場合を示す)に、前後方向に所要の幅寸法を有し且つ所要深さを有するトレー収納用凹部12を、幅方向(前後方向と直交する方向)へほぼ全長にわたり設けるようにして、特殊ホーム9側に開放させるようにする。上記各トレー収納用凹部12には、それぞれ貨車1の前後方向となる両側部に、貨車1の幅方向に平行に延びるガイドレール13を相対向させて設け、各トレー収納用凹部12ごとに収納させたトレー14を、車輪15を介してそれぞれ上記ガイドレール13に支持させて、ガイドレール13に沿いトレー14を横方向に出入させることができるようにしてある。更に、貨車1内の各トレー設置個所には、図示してないが、電気自動車積載の場合の充電設備が設置してある。
【0036】
又、上記特殊ホーム9は、カートレインIの各貨車1の前後方向の長さ寸法と同一又はほぼ同一の前後方向長さとしてある台車9aを、カートレインIの貨車1の数に合わせた台数用意し、各台車9a同士を、カートレインIの各貨車1や客車2同士の連結装置10と同様に連結装置16で連結し、且つ台車9aを図示しない駆動装置により自走できるようにして、カートレインIの各駅での停止時における各貨車1の停止位置に合わせて各台車9aを前後方向に移動させ、各台車9aをカートレインIの各貨車1に合わせて停止させることができるようにする。
【0037】
そのために、上記特殊ホーム9は、図3に示す如く、プラットホーム5のカートレイン軌道4側を切り欠いて所要深さの段差部17を形成し、該段差部17の床18面に、上記軌道4と平行に延びるレール19を敷設し、該レール19上に、上記各台車9aを載置させて、特殊ホーム9自体がカートレインIの側方を前後方向に移動できるようにすると共に、各台車9a同士を連結する連結装置16は、遊び(ガタ)を貨車1の連結装置10の遊びの約2倍位にして、各台車9aが独立して前後方向へ移動できる量を許容して貨車1の位置に合わせられるようにする。
【0038】
上記特殊ホーム9の各台車9aの上面には、カートレインIの貨車1内に設置されたトレー14に対応させた位置に、各々図3に示す如きトレー14の厚みに対応する深さのトレーピット20を形成し、各トレーピット20毎にトレー移送装置21を設置し、該トレー移送装置21でトレー14が前記貨車1内のガイドレールに沿い台車9aのトレーピット20に引き出されたときに、図1に示すプラットホーム5の待機車線部7で待機中の車両3が走行車線部6を横切って台車9a上のトレー14に乗り入れることができるように、トレー移送装置21とトレー14の上面のレベルが走行車線部6と等しくなるようにしてある。
【0039】
上記トレー移送装置21は、特殊ホーム9を構成する各台車9aにおける各トレーピット20に設置した左右方向(レール19と直行する方向)に延びる2本のラックレール22と、該ラックレール22と平行に延びるように上記トレーピット20の両側壁部に形成したガイドレール23とを備え、更に、上記ラックレール22に噛合して回転するピニオンギア25と、上記2本のラックレール22に噛合するピニオンギア25を両端部に有している駆動軸26を介してピニオンギア25に回転駆動力を付与させるようにする駆動機構部27を有するトレー移送台車28を装備してなる構成としてあり、トレー移送台車28を台車9aのトレーピット20の上方部で貨車1に対して近接、離反する方向へ移動させることができるようにしてある。
【0040】
上記トレー移送台車28のカートレインI側の端部寄りの位置には、上記駆動軸26と平行に延びるように水平軸29を配置して、該水平軸29の両端部を、トレー移送台車28の車輪24取付け側の側壁に貫通させて回転自在に支持させると共に、水平軸29の途中位置を支持部材30にて回転自在に支持させるようにしてある。上記水平軸29の両端側位置には、図5に示す如く、先端部に係止部32と斜め下向きに傾斜するガイド面33を有する連結用フック金物31の末端側を一体的に取り付けて、該連結用フック金物31の先端部を突出させ、該先端部が水平軸29を中心に該水平軸とともに下向きに回動できるようにし、該連結用フック金物31は、トレー移送台車28の底板28a上に立てた保持部材34にて水平状態に保持され、且つ水平軸29の一端部に取り付けたハンドル35の操作で先端部の係止部32側を上方へ回動できるようにしてある。
【0041】
又、上記駆動機構部27は、駆動装置としてのモータ36と、該モータ36の出力軸37に取り付けた小径ギア38と、該小径ギア38と噛合する大径ギア39と、該大径ギア39の軸40に取り付けられた小径ギア41と、駆動軸26に取り付けられて上記小径ギア41と噛合するギア42とからなる構成としてある。
【0042】
一方前記したカートレインIの各貨車1内の床面11のトレー収納用凹部12に設置されて、ガイドレール13に沿い特殊ホーム9側へ出し入れできるようにしてある各トレー14には、特殊ホーム9側の端部寄り位置に、前記トレー移送台車28の連結用フック金物31に対応させて、該連結用フック金物31を係止させるための連結棒43が支持部材44により水平状態に取り付けてあり、トレー移送台車28をトレー14に接近させて連結用フック金物31の先端部のガイド面33を、トレー14側の連結棒43に当接させ、更に、トレー移送台車28をトレー14に接近させることにより、連結用フック金物31が図5(イ)に二点鎖線で示す如く先端部が上方へ押し上げられ、ガイド面33が連結棒43を通過した時点で、図5(ロ)に示す如く連結用フック金物31の先端部が下降して係止部32に連結棒が係止させられるようにしてある。この状態でトレー移送台車28を特殊ホーム9側へ移動させることにより、トレー14を貨車1のガイドレール13から台車9aのガイドレール23に乗り移らせて、台車9a上に引き出すことができるようにしてある。
【0043】
又、上記各トレー14の上面中央部分には、図6(イ)に拡大して示す如く、車両3を載置できる大きさの円形テーブル45を設置するための円形開口部46を形成し、該円形開口部46に、上面に車載板47が取り付けてある円形テーブル45を配置し、該円形テーブル45の外周面部に取り付けた周方向複数個のローラ48を、円形開口部46の周辺部に沿うようにトレー14に取り付けられた垂直面49aとレール面49bを有してなるガイドレール49の該レール面49bに載せて、円形テーブル45を回転可能に支持させるようにする。
【0044】
上記ガイドレール49に沿い回転可能な円形テーブル45は、トレー14に内装されている駆動装置50によりチェーン51を介して回転させられるように、外周面にチェーン51を掛けるための歯52をリング状に設けた構成としてあり、上記駆動装置50により回転させられるスプロケットホイール53と円形テーブル45の外周の歯52にかけられた無端のチェーン51に、スプロケットホイール53を介して動力を伝達することにより、円形テーブル45が回転させられるようにしてある。
【0045】
なお、上記ガイドレール49の所要個所、すなわち、円形テーブル45より上記スプロケットホイール53側に位置するガイドレール49の垂直面49aに、チェーン51を通す開口部54が2個所形成してあると共に、チェーン51と円形テーブル45外周面のローラ48とは互いに干渉しないようにしてある。
【0046】
55は円形テーブル45が芯ぶれすることなくトレー14の中央部を中心に回転できるように支持する側方支持装置で、図7(イ)(ロ)に示すように、円形テーブル45の外周面に接触させるようにするローラ56と、該ローラ56を一端側に垂直の回転軸57により回転自在に取り付けて保持させると共に、水平方向に延びる他端側を前記ガイドレール49の垂直面49aに突設させたブラケット59にピン60により連結させて、該ピン60を中心として一端側とローラ56が水平方向へ揺動できるようにしてある保持枠58と、上記ガイドレール49の垂直面49aに上記ブラケット59に隣接させて周方向所要個所に突設したブラケット61と上記保持枠58の一端側との間に介装させて常時保持枠58の一端側とローラ56を円形テーブル45側へ付勢させるようにするスプリング62とからなる構成としてあり、ガイドレール49の周方向複数個所に設置してある。
【0047】
63は前記駆動装置50としてのモータの出力軸のウォーム歯車、64は前記スプロケットホイール53の回転軸65に取り付けられて上記ウォーム歯車63に噛合されているウォームホイールであり、駆動装置50の駆動によりウォーム歯車63、ウォームホイール64、スプロケットホイール53に動力が伝えられてチェーン51を介し円形テーブル45が回転させられるようにしてある。図7(ハ)中、66は駆動装置50をトレー14に固定設置するためのフレーム、67は回転軸65の軸受である。
【0048】
本発明のカートレインの車両積込み積卸し装置は、上記構成としてあるので、カートレインIの利用者が車両3をカートレインIの貨車1に積み込もうとするときには、カートレインIを駅に入線して特殊ホーム9に沿い停車させるようにすると共に、利用者が車両3を特殊ホーム9に隣接するプラットホーム5に走行車線部6を走行させて乗り入れた後、順次待機車線部7に車線変更させて待機させておくようにする。
【0049】
カートレインIは、停車駅で運転士の操縦により所定の停止位置に停止させられることにより、各貨車1が特殊ホーム9の各台車9aに対応した位置に停止させられることになるが、カートレインIの運転士の操作により停止位置が進行方向の前後方向に多少ずれが生じることがある。又、カートレインIの貨車1同士の連結装置10のガタによりカートレインIの貨車1と特殊ホーム9の台車9aとの位置の多少のずれが発生するおそれがある。
【0050】
今、たとえば、カートレインIの貨車1が図8(イ)に示す如く停止位置よりも多少前側に停車したような場合は、特殊ホーム9の台車9aを、図8(イ)において矢印で示す方向に移動させて、カートレインIの貨車1上のトレー14の位置と台車9a上のトレー移送台車28との位置を合わせるようにする。この際、各台車9aは、連結装置16のガタが大きくとってあるため、このガタの分だけ独立させて台車9aを移動させることができる。又、車両3をプラットホーム5に乗り入れさせて走行車線部6から待機車線部7に車線変更させて停車させると、該待機車線部7で車両の同乗者を降ろしておく。次に、トレー14を貨車1に固定している図示してない固定装置を外した後に、図8(ロ)に示す如く、トレー移送装置21の移送台車28を貨車1側に自走させて、図8(ハ)に示す如く、トレー移送台車28を貨車1内のトレー14に近接させるようにする。この際、トレー移送台車28がトレー14に近接させられるときに、トレー移送台車28に取り付けてある連結用フック金物31の先端部のガイド面33が図5(イ)に示す如くトレー14側の連結棒43に当接して押し上げられながら連結棒43から外れることにより、自動的に連結用フック金物31の係止部32がトレー14側に連結棒43に係止させられることになる。このように、図8(ハ)に示す如く、トレー移送台車28をトレー14に近接させることによりトレー移送台車28とトレー14が連結用フック金物31と連結棒43を介してワンタッチで連結されることになるので、トレー移送台車28をトレー14に近接させた後は、該トレー移送台車28を特殊ホーム9の台車9a上を貨車1から離れる方向へ移動させる。これにより、図8(ニ)に示す如く、トレー14がトレー移送台車28に牽引されて台車9a上に移動させられる。次いで、プラットホーム5の待機車線部7で待機している車両3を、図8(ニ)に矢印で示す如く、車両3を待機車線部7から台車9a上のトレー14に移動させて、図8(ホ)に示す如く、該トレー14中央部の円形テーブル45上面の車載板47上に車両3を停車させた後に降車する。次いで、該車両3を台車9a上で円形テーブル45を回転させることにより、図8(ヘ)に示す如く、車両3をカートレインIに沿う方向に向けるようにする。円形テーブル45を回転させるときは、駆動装置50の電源を入れて該駆動装置50の出力軸に取り付けられたウォーム歯車63を回転させて、該ウォーム歯車63のねじれ方向に合わせてウォームホール64を回転させるようにする。これにより、上記スプロケットホイール53も回転させられることから、該スプロケットホイール53と円形テーブル45に掛けたチェーン51により円形テーブル45はガイドレール49にガイドされ、且つ側方支持装置55のローラ56に支持されながら回転させられる。図示の如く円形テーブル45を90度回転させて停止させると、図示してない車両止めで車両3をトレー14に固定しておくようにする。一方、運転者は車両3から下車した後、客車2に移動する。しかる後、図8(ヘ)に示す如く、トレー移送台車28の貨車1側端面をトレー14の特殊ホーム9側端面に当接させた状態にして、トレー移送台車28を貨車1側に移動させることによりトレー14を貨車1側に移動させて、図8(ト)に示す如く、トレー14を貨車1内に収納させ、図示してない固定装置によりトレー14を貨車1に固定する。次に、トレー移送台車28の幅方向両端部から突出する連結用フック金物31の軸29を、図5(ロ)に示す如く、ハンドル35を用いて回転させることにより連結用フック金物31の先端側を上方向に回転させて該連結フック揺金物31をトレー14の連結棒43から取り外した状態にして、図8(チ)に示す如く、トレー移送台車28をプラットホーム5側に移動させ、台車9aに設けられるトレーピット20端部にトレー移送台車28を待機させて、車両3の貨車1への積み込みを完了するようにしてある。
【0051】
一方、カートレインIの利用者の車両3を貨車1から積み卸す場合は、先ず、カートレインIを貨車1が特殊ホーム9と並列になるように停車させるようにする。この際も、図9(イ)に示す如く、たとえば、特殊ホーム9の台車9aの位置よりずれた位置にカートレインIが停車させられたときには、特殊ホーム9のレール19上の台車9aを、図9(イ)において矢印で示す方向に移動させて、カートレインIの貨車1上のトレー14の位置と台車9a上のトレー移送台車28との位置を合わせるようにする。次に、トレー14を貨車1に固定している図示してない固定装置を外した後に、図9(ロ)に示す如く、積み卸す車両3を積載しているトレー14に対応した位置のトレー移送台車28を、貨車1側に自走させて、図9(ハ)に示す如く、トレー移送台車28をトレー14側に突出させてある連結用フック金物31を貨車1に収納されているトレー14の連結棒43に係止させることによりトレー14に連結させた後、該トレー14をトレー移送台車28により牽引させて図9(ニ)に示す如く、台車9a上に移動させる。次いで、台車9a上に移動させたトレー14上の車両3を、図9(二)に示す状態から図9(ホ)に示す状態に、円形テーブル45を回転させることにより、車両3をプラットホーム5の走行車線部6に略直交する方向に向け、図示してない車両止めを外してから利用者が車両3に乗車し、該車両3を特殊ホーム9の台車9a上からプラットホーム5上の走行車線部6を経由させてから一般道に出るようにする。しかる後、図9(ヘ)に示す如く、トレー移送台車28の貨車1側端面をトレー14の特殊ホーム9側端面に当接させた状態にして、トレー移送台車28を貨車1側に移動させることによりトレー14を貨車1側に移動させて、図9(ト)に示す如く、トレー14を貨車1内に収納し、図示してない固定装置によりトレー14を貨車1に固定する。次に、トレー移送台車28の連結用フック金物31に固定してある軸29を、図5(ロ)に示す如く、ハンドル35の操作で先端側を上方へ持ち上げるように回転させることにより、連結用フック金物31の先端側を上方向に回転させて該連結用フック金物31の係止部32をトレー14の連結棒43から取り外した状態にして、図9(ト)に示す状態から図9(チ)に示す如く、トレー移送台車28をプラットホーム5側に移動させた後、台車9aにトレー移送台車28を待機させて、車両3の貨車1からの積み卸しを完了するようにする。
【0052】
なお、図示してないが、車両3を積み卸した直後のトレー14に、別の車両3を積み込む場合には、図9(ホ)に示す、トレー14が台車9a上に移動させられた状態において、貨車1に積み込む車両3を待機車線部7に停車させて待機させておき、上記トレー14上から車両3が矢印で示す如く自走して走行車線部6より一般道路に出た後に、図8(二)に示したのと同様に、車両3を待機車線部7から台車9a上のトレー14に乗り入れさせて、以後上記した図8(ホ)乃至図8(チ)に示した手順により、車両3の貨車1への積み込みを行うようにすればよい。
【0053】
このように、図1乃至図7に示した本発明の実施の形態によれば、プラットホーム5を走行させた車両3を、特殊ホーム9の台車9aに装備させてあるトレー移送台車28により台車9a上に移動させたトレー14上に停車させた後、該トレー14を上記トレー移送台車28により貨車1に積み込むようにすると共に、貨車1に積み込んだトレー14を、トレー移送台車28により台車9a上に移動させ、該トレー14上に積載させてある車両3を自走させてプラットホーム5を走行させることにより積み卸しをするようにしてあるので、貨車1への車両3の積み込み、積み卸しを短時間で行うことができ、又、立体駐車場の如き他の大型の設備を設ける必要がなく、該他の設備からカートレインIの利用者が移動する手間を省くことができる。更に、プラットホーム5とカートレインIの停車位置との間に特殊ホーム9を設けて、カートレインIに沿う方向に延びるレール19上を、台車9aが走行できるようにしてあるので、カートレインIの停車位置がずれて貨車1の位置と台車9aの位置とずれたとしも、貨車1と台車9aの位置を確実に合わせることができる。更に又、車両3を積載するためのトレー14を、カートレインIに備えられる貨車1に設けるようにしてあるので、貨車1に車両3を積み込む位置に1つのトレー14だけを出入可能とすることができ、既にトレー14に載せた車両3が積み込んである位置に、誤って車両3を積み込むようなことは防止できる。
【0054】
又、トレー14に円形テーブル45を設けて、該トレー14が台車9a上に移動したときに車両3を回転させてカートレインIに沿う向きに車両3の向きを合わせるようにしてあるので、カートレインIの利用者の車両3のトレー14上での停車向きが、図8(ホ)に示すようにばらばらであったとしても、車両3を貨車1に積み込むのに最適な向き、たとえば、カートレインIに沿う向きに容易に変更することができ、又、屋根のある貨車1に車両3を積み込む場合でも、該車両3を貨車1内で自由に回転させることができる。
【0055】
更に、トレー14に設けられる連結棒43にトレー移送台車28に設けられる連結用フック金物31のガイド面33をガイドさせて該連結用フック金物31の先端側を上方向に回転させた後、係止部32に上記連結棒43を係止するようにしてあるので、トレー移送台車28と貨車1上のトレー14との連結を、特別な工具を用いることなく短時間で行うことができる。
【0056】
次に、図10(イ)(ロ)は本発明のカートレインの車両積込み積卸し装置の実施の他の形態を示すもので、図1乃至図7に示したのと同様な構成としてある特殊ホーム9の台車9aに備えたトレー移送装置21におけるトレー移送台車28と貨車1上のトレー14との連結を、トレー移送台車28に設けた連結用フック金物31をトレー14に設けた連結棒43に連結させることにより行うようにしてあることに代えて、トレー移送台車28の貨車1側に設けた電磁石68をトレー14に設けた吸着部材69に吸着させることにより行うようにしたものである。
【0057】
すなわち、図10(イ)(ロ)に示す如く、トレー移送台車28の貨車1側端面のほぼ中央部位置に、電磁石68を、貨車1側の端面から所要寸法突出させた状態で水平状態に配置して、該電磁石68を電磁石支持部材70を介してトレー移送台車28に固定するようにする。又、該電磁石68には、図示してない電源から電流が供給できるようにしてある。
【0058】
又、トレー14の特殊ホーム9側の端部には、上記電磁石68に吸着可能な材質の吸着板71を平板状の支持板72により側面から見てT字状となるようにしてある吸着部材69の水平支持板72の端部に、トレー14に上下両端部を軸受73により回転自在に支持させた回転軸74を貫通させて取り付けて固定し、回転軸74とともに吸着部材69が横方向に首振りできるようにする。更に、上記首振りする吸着部材71の支持用金物75を、トレー14の座板上に設置し、吸着部材9の吸着板71が支持用金物75上を滑動できるようにしてある。
【0059】
その他の構成は、図1乃至図7に示したのと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0060】
この実施の形態によれば、トレー移送台車28により貨車1内のトレー14を貨車1内から特殊ホーム9側へ牽引して引き出すときは、上記トレー移送台車28をラックレール22上を自走させて貨車1側に移動させてトレー14に接近させると、電磁石68を励磁させ、該電磁石68にトレー14に設けられる首振り式の吸着部材69を吸着させるようにする。これにより、トレー移送台車28と貨車1内のトレー14とを連結させることができる。一方、トレー移送台車28と貨車1内のトレー14との連結を解除する場合には、電磁石68を消磁させることにより簡単にトレー14を切り離すことができる。
【0061】
上記において、トレー14側の吸着部材69は、軸76を中心に水平方向に首振り可能としてあるので、トレー移送台車28とトレー14との間に位置のずれが多少あったとしても、電磁石68の磁力により吸着部材69の向きを変更させられるので、トレー移送台車28と貨車1内のトレー14との連結を容易に行うことができる。
【0062】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、たとえば、1つの貨車1に5つのトレー収納用凹部12を設けて、各トレー収納用凹部12にトレー14を設置して5台の車両3を積載できるようにした場合を例示したが、車両3の大きさの関係で1つの貨車1に、たとえば、4台の車両3を積載できるようにした貨車1を複数連結したカートレインIとすることができること、又、上記5台の車両3を積載できるようにした貨車1を連結させた列車と、4台の車両3を積載できるようにした貨車1を連結させた列車の如く、異なる台数の車両3を積載できるようにした貨車1毎に編成されている、たとえば、2つの列車が運行される場合には、車両3の積載台数が異なる貨車1に対応させた台車9aを有する2つの特殊ホーム9を用意して列車運行に合わせて使用するようにすればよく、この場合は、プラットホーム5とカートレイン用軌道4との間に敷設するレール19を長くして、1つの特殊ホーム9の長さに相当する直線状の引込み線を敷設して、2つの特殊ホーム9が交互に引込まれるようにすればよい。この場合には、特殊ホーム9の各台車9aは、カートレインIの機関車の如き牽引車で牽引するようにすれば有利であること、トレー移送台車28は貨車1と台車9aとの間でトレー14を移動させることができれば如何なる構成のものを用いてもよいこと、プラットホーム5と特殊ホーム9とをカートレインIの停車位置の片側に設けるだけでなく、カートレインIの停車位置の両側に設けるようにして、車両3の積み込みを行う専用のホームと、車両3の積み卸しを行う専用のホームとに分けるようにしてもよいこと、トレー移送台車28の駆動機部27は、図示した構成に限定されるものではなく、駆動軸26からピニオンギア25に動力が伝えられるものであればどのようなものでもよいこと、円形テーブル45をチェーン51の駆動で回転させる場合を示したが、ベルトで回転させるようにしてもよいこと、プラットホーム5の各車線部6,7、歩道部8の配置は図示したものに限られず、たとえば、特殊ホーム9側から、歩道部8、待機車線部7、走行車線部6としてもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
I カートレイン
1 貨車
2 客車
3 車両
4 軌道
5 プラットホーム
9 特殊ホーム
9a 台車
13 ガイドレール
14 トレー
19 レール
20 トレーピット
21 トレー移送装置
22 ラックレール
23 ガイドレール
25 ピニオンギア
26 駆動軸
27 駆動機構部
28 トレー移送台車
31 連結用フック金物
43 連結棒
45 円形テーブル
48 ローラ
49 ガイドレール
50 駆動装置
55 側方支持装置
68 電磁石
69 吸着部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートレインが停車する駅に、車両を走行させて乗入れ乗出しさせる走行部と乗入れられた車両をカートレインに積み込むまで待機させておく待機部とカートレインの利用者の歩行部とを有するプラットホームを、カートレインの軌道と平行に構築すると共に、該プラットホームの上記カートレイン軌道側に、カートレインの停車時におけるカートレインの各貨車に対応させた台車をカートレインの軌道と平行に移動できるようにしてなる特殊ホームを設け、且つ該特殊ホームの各台車に、上記カートレインの各貨車内に備えられる車両積載用のトレーを貨車内から該台車上に引き出したり、該台車上から貨車内に移動させるためのトレー移送装置を備えてなり、上記プラットホームの待機部の車両を、特殊ホームの台車上に引き出したトレー上に乗り入れることによりトレー移送装置で貨車への積み込みを行い、貨車からトレーに積載した車両をトレーと共に特殊ホームの台車上に引き出すことにより積み卸しを行うことができるようにしたことを特徴とするカートレインの車両積込み積卸し装置。
【請求項2】
カートレインの各貨車の床面に、前後方向に所要間隔を隔てて複数のトレー設置部を設けて、該各トレー設置部でそれぞれトレーが前後方向と直交する特殊ホーム側へ横移動できるようにし、且つ特殊ホームの各台車上に、上記トレーを受け入れるトレーピットを、貨車内のトレー設置部に対応させて設けて、該各トレーピット上に、貨車内から引き出したトレーを移動できるようにすると共に、上記各台車の各トレーピットに、トレーを貨車と台車との間に移動させるためのトレー移送装置をそれぞれ備えた請求項1記載のカートレインの車両積込み積卸し装置。
【請求項3】
トレー移送装置を、各台車のトレーピットにカートレイン軌道側に延びるように敷設したレールと、該レール上を移動できるように駆動機構部を備えて自走できるようにしたトレー移送台車とからなる構成とし、且つ上記トレー移送台車のカートレイン軌道側の端部に、トレーと連結するための連結装置を備えた請求項1又は2記載のカートレインの車両積込み積卸し装置。
【請求項4】
トレーを、中央部分に設置した円形テーブルと、該円形テーブルを回転させる駆動部とを備える構成とした請求項1,2又は3記載のカートレインの車両積込み積卸し装置。
【請求項5】
トレーを連結するためトレー移送台車に備えた連結装置を、トレーに取り付けた連結棒の上面側に接触したまま該連結棒と相対変位することにより上方向へ持ち上げられるガイド面と、該ガイド面が上記連結棒から外れると該連結棒に係止できる係止部を先端側に有するフック金物とし、且つ上記フック金物の回転軸に、フック金物の係止部をトレー側の連結棒から離脱させるように操作するハンドルを取り付けてなる構成とした請求項3又は4記載のカートレインの車両積込み積卸し装置。
【請求項6】
トレーを連結するためトレー移送台車に備えた連結装置を、トレーに取り付けた吸着部材を吸着させるようにする電磁石として、トレー移送台車のカートレイン軌道側の端面より僅かに突出させて取り付け、且つトレーに取り付けた吸着部材を、横方向に首振りできるようにした請求項3又は4記載のカートレインの車両積込み積卸し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−102159(P2011−102159A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256814(P2009−256814)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【特許番号】特許第4515537号(P4515537)
【特許公報発行日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(397018084)
【出願人】(509311115)
【Fターム(参考)】