説明

カード型標的物質検出装置

【課題】 カード型標的物質検出装置における電極の配置手段の提供。
【解決手段】 (A)カード型基板上に、(1)1又は2以上の試料載置用凹部、及び(2)標的物質を電気化学的に検出するための電極を有し、当該(1)凹部及び(2)電極が毛細管力を有する流路で連結されてなるカードと、(B)カード挿入口を有し、当該カード上で生じた電気化学的変化を表示するための表示部とからなるカード型標的物質検出装置であって、当該カード型基板上の電極として作用電極及び対電極が配置され、表示部におけるカードとの接触部に参照電極が、標的物質を介して作用電極及び対電極と接触可能なように配置されていることを特徴とするカード型標的物質検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的手段により標的物質を検出するカード型標的物質検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシーニングにより化学分析システムを小型化する研究が盛んに行われている。これは、システムの小型化により、無効体積の減少、サンプルや試薬量の低減、システムの低価格化、使用時の低消費電力化が図れるためである。システムの小型化の手段として、そのシステムを構成する個々の要素を小型化することが行われており、例えば、心電位測定用の体表面装着型マイクロシステムといったものが知られている。また、ポイント・オブ・ケア(POC)検査のために電極反応物と電極との電極反応を利用した電気化学的検出技術を導入したマイクロシステム(特許文献1)が研究され、小型化・低価格化が実現可能な段階にまで来ている。これらの電気化学的手法を用いたマイクロシステムは反応物質の濃度変化を電流値として示すものである。
【特許文献1】特開2003−98171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような反応物質の濃度変化を電流値として示すマイクロシステムにおいては、電極として作用電極、対電極及び参照電極が用いられる。これらの電極は、標的物質を介して相互に連結している必要があることから、全てをカード基板上に配置して設計されている。
しかしながら、カード基板上へ3つの電極を配置することは、製造技術的に困難であり、特に作用電極との異常接触は測定値に誤差を生じるため特に慎重を期す必要があった。
従って、カード型標的物質検出装置における3つの電極の配置手段の改良が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明者は、当該カード型標的物質検出装置における電極の配置について種々検討した結果、カード基板上に3つの電極を全て配置するのでなく、参照電極を表示部のカード挿入口に配置し、かつ作用電極と対電極をカード上の表示部との接触部に配置すれば、測定時に3つの電極が標的物質を介して連結され、安定にカード上で生じた電気化学的変化を測定できることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、(A)カード型基板上に、(1)1又は2以上の試料載置用凹部、及び(2)標的物質を電気化学的に検出するための電極を有し、当該(1)凹部及び(2)電極が毛細管力を有する流路で連結されてなるカードと、(B)カード挿入口を有し、当該カード上で生じた電気化学的変化を表示するための表示部とからなるカード型標的物質検出装置であって、当該カード型基板上の電極として作用電極及び対電極が配置され、表示部におけるカードとの接触部に参照電極が、標的物質を介して作用電極及び対電極と接触可能なように配置されていることを特徴とするカード型標的物質検出装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の装置を用いれば、安価かつ安定してカードが製造でき、かつ安定した電流値が測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のカード型標的物質検出装置は、(A)カード型基板上に、(1)1又は2以上の試料載置用凹部、及び(2)標的物質を電気化学的に検出するための電極を有し、該(1)凹部及び(2)電極が毛細管力を有する流路で連結されてなるカードと、(B)カード挿入口を有し、当該カード上で生じた電気化学的変化を表示するための表示部とからなるカード型標的物質検出装置である。当該カード型基板上には、さらに1又は2以上の試料移動用液体載置用凹部が設けられていてもよい。図1には、本発明カード型標的物質検出装置のカードの一例である、(1)試料載置用凹部が1個、(2)液体載置用凹部が2個の場合の概念図を示してある。
【0008】
カード型基板は、合成樹脂製であるのが好ましく、当該合成樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、特にポリメチル(メタ)アクリレートが好ましい。カード型基板は、例えば縦30〜80mm、横60〜150mm、厚さ1〜3mm程度の板状物であるのが好ましい。
【0009】
(1)試料載置用凹部は1個でもよく、2個以上あってもよい。当該凹部は、試料が、反応に必要な量載置できる大きさであればよい。なお、試料移動用液体載置用凹部は、試料が液体、例えば試料含有溶液である場合には、特に必要とされない。試料や試料移動用液体は、通常、当該凹部にピペットにより滴下することにより載置される。なお、試料移動用液体としては、反応溶媒、緩衝液、水等が用いられる。
【0010】
(2)電極は、標的物質を電気化学的に検出できる構成であればよいが、電気化学的な方法による反応液の測定は、サイクリックボルタンメトリー(CV)がよく利用される。本法は反応液中にある3電極(参照電極、作用電極、対電極)において参照電極に対する作用電極の電位を変化させることで得られる酸化電流、還元電流の変化を読み取るものである。そして、本発明では、カード型基板上に作用電極と対電極を配置し、表示部に参照電極を配置する。図2に、カード型基板上に作用電極及び対電極を配置した例を示す。
【0011】
ここで、作用電極としては、白金、金、銀、カーボン等が用いられる。また対電極としては、金、白金等が用いられる。
【0012】
これらの作用電極及び対電極は、カード基板上の、表示部との接触部に配置されるのが好ましい。
【0013】
また、カード型基板上の少なくとも作用電極及び対電極配置部は、針又は釘が侵入可能な柔軟性を有する樹脂で被覆されているのが好ましい。このような樹脂としては、ポリジメチルシロキサン樹脂(シリコーン樹脂)、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。このうち、シリコーン樹脂は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリルプレートなどのフラットな面に対して、自己接着する性質があり、かつ柔軟性を有しており、特に好ましい。
【0014】
前記(1)試料載置用凹部、(2)電極及び必要に応じて試料移動用液体装置凹部は、毛細管力を有する流路で連結されている。流路は、例えば、カード型基板上に溝を掘ることによって形成することができ、流路の毛細管力は、溝の大きさ(幅)によって調整することができる。これは、溝の幅を小さくすれば毛細管力は大きくなり、溝の幅を大きくすれば毛細管力は小さくなる。流路のパターンは特に制限されない。
【0015】
このように試料載置用凹部と電極とが毛細管力を有する流路で連結されることにより、試料載置用凹部に滴下された試料液は流路を移動し、流路中で必要な反応を生起し、電極により標的物質の量が電気化学的に、電流として検出される。得られた電流値を用い、予め作成された検量線などから、標的物質の量を定量できる。
【0016】
表示部は、カード挿入口を有し、カード上で生じた電気化学的変化、例えば電流を表示するための表示部である。図3に表示部の例を示す。この表示部は、電流値を直接、又は電流値から算出された標的物質の濃度を表示するものである。
【0017】
本発明においては、表示部におけるカードとの接触部に参照電極が、標的物質を介して作用電極及び対電極と接触可能なように配置されている。ここで、参照電極としては、銀・塩化銀電極が用いられる。
【0018】
例えば、カード型基板上に作用電極、対電極及び参照電極の3つ電極を設け、その1つを銀・塩化銀電極にする場合、参照電極部位をシアン化銀カリウム水溶液のような電気メッキ液にて参照電極表面上に銀を析出させ、塩化銀メッキ液にて表面をAg/AgClに変化させたり、例えば0.1Mの塩酸でアノード酸化したりしてAg/AgClにし参照電極にしなければならない。この際メッキ液に作用極がふれたりし、特に金属等の異物が付着するとCV測定において試料液の変化と作用極の表面の変化と見分けがつかなくなってしまう。そこで参照極を作製するために電極のプロテクト等に費用がかかり実用性に問題がある。そこで、本発明では、参照電極だけを電極基板からはずし、表示部に配置する構造とした。
【0019】
表示部内に設置される参照電極の形態は、カード上の作用電極及び対電極と標的物質を介して接触可能な形態であればよいが、針状又は釘状とするのが好ましい。このような形態とすることにより、カードが表示部に挿入されたとき、参照電極をカード上に刺すことにより容易に作用電極及び対電極に標的物質を介して接触させることができる。針状参照電極の形態の例を図4及び5に示す。図4の形態はバネによりクランプを介して針状参照電極を、カードに刺すことができるようにしたものである。図5の形態は、直動システムを有する針状参照電極の例である。
【0020】
図6は、表示部中の針状参照電極が、カード上の作用電極及び対電極に標的物質を介して接触した状態を示す図である。
【実施例】
【0021】
実施例1
図1及び2のカードを用い、図3のようにカードを表示部に挿入した。表示部内には、図4の形態の参照電極を設置した。ここで、作用電極としては、金を用い、対電極としては金を用いた。参照電極は、銀ワイヤを、塩化銀メッキ液にて表面をAg/AgClに変化させて作製した。なおカード基板上はシリコーン樹脂で被覆した。また試料としては、フェロセンを用い、緩衝液としてはマロネート緩衝液を用いた。
その結果、参照電極が容易にカード上に刺さり、安定した電流値測定が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】カード型標的物質検出装置の一例を示す概念図である。
【図2】電極の配置の一例を示す(斜線部は、コネクタとの接触部を示す)。
【図3】表示部の例を示す図である。
【図4】参照電極の一例を示す図である。
【図5】参照電極の一例を示す図である。
【図6】表示部中の参照電極が、カード上の作用電極及び対電極に標的物質を介して接触した状態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カード型基板上に、(1)1又は2以上の試料載置用凹部、及び(2)標的物質を電気化学的に検出するための電極を有し、当該(1)凹部及び(2)電極が毛細管力を有する流路で連結されてなるカードと、(B)カード挿入口を有し、当該カード上で生じた電気化学的変化を表示するための表示部とからなるカード型標的物質検出装置であって、当該カード型基板上の電極として作用電極及び対電極が配置され、表示部におけるカードとの接触部に参照電極が、標的物質を介して作用電極及び対電極と接触可能なように配置されていることを特徴とするカード型標的物質検出装置。
【請求項2】
参照電極が針状又は釘状である請求項1記載のカード型標的物質検出装置。
【請求項3】
カード型基板上の少なくとも作用電極及び対電極配置部が、針及び釘が侵入可能な柔軟性を有する樹脂で被覆されている請求項1又は2記載のカード型標的物質検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−3220(P2006−3220A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179908(P2004−179908)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(801000072)農工大ティー・エル・オー株式会社 (83)
【Fターム(参考)】