説明

カード

【課題】本発明は、カード製造時における問題点である、熱ラミネート時のインキの割れや歪み、またエンボス印字加工時におけるインキの割れが発生しないカードを提供しようとするものである。
【解決手段】カード基材と、カード基材上に形成された絵柄層を有するカードであって、該絵柄層が電離放射線硬化型樹脂バインダーと柔軟性補助剤を含むインキを用いて形成されていることを特徴とし、さらに前記インキがポリエステル樹脂または合成ゴム材料からなる柔軟性補助剤を1〜20wt%含むことを特徴とするカードである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレジットカード、キャッシュカード等に用いられる磁気カード、接触ICカード、非接触ICカード等の情報記録媒体カードに関わる。
【背景技術】
【0002】
クレジットカード、キャッシュカード等に用いられる磁気カード、ICカード等のカードは、カード表面を構成する外装シートに所定の絵柄を印刷し、コアとなるシートと熱ラミネートして一体化する工程によって製造されるのが、一般的である。印刷は、通常オフセット印刷法によって行われるが、従来のオフセットインキは、インキ被膜の柔軟性に欠けるため、熱ラミネート工程においてインキ被膜の割れや歪みを生じることがあった。またカードの最終工程であるカード発行工程において、カード番号や氏名等をエンボス印字する際にも、インキ被膜の割れを生じることがあった。近年は、印刷加工時の生産性向上を目的として、紫外線硬化型のオフセットインキが使用される傾向にあるが、これらのインキにおいては、特に上記の問題が生じやすいため、その改善が求められていた。
【0003】
エンボス印字時の文字割れを防止する手段として、エンボス文字を施す部分の隠蔽層を、バインダー樹脂中に粒径が4μm〜20μmの金属微粒子を分散した、厚みが0.5μm〜15μmの層とした磁気記録媒体が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また特許文献2には、ICカード用の紫外線硬化型インキが開示されている。この紫外線硬化型インキは、カードの外観の耐久性や、搬送系などでの滑り性、無黄変性などの特性を附与し、さらには、ホログラムや磁気ストライプ、サインパネルなどの接着性が良好なカードの表面塗布用インキである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-103860号公報
【特許文献2】特開2003-132319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された磁気記録媒体は、特定の粒径の金属微粒子を分散した隠蔽層を用いたことにより、エンボス文字割れを防止したものであるが、金属微粒子を用いる関係上、文字の色調が限定されてしまうという基本的な問題がある。
【0007】
特許文献2に記載されたICカード用インキは、エンボス印字加工時の文字割れに関する評価がなされていないところから見ても、平面状のカードを前提としたインキとみられるが、熱ラミネート加工時における加工適性については、離型性以外にはなんら記載されていない。
【0008】
本発明は、カード製造時における問題点である、熱ラミネート時のインキの割れや歪み、またエンボス印字加工時におけるインキの割れが発生しないカードを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、カード基材と、カード基材上に形成された絵柄層を有するカードであって、該絵柄層が電離放射線硬化型樹脂バインダーと柔軟性補助剤を含むインキを用いて形成されていることを特徴とするカードである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記インキが柔軟性補助剤を1〜20wt%含むことを特徴とする請求項1に記載のカードである。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、前記柔軟性補助剤がポリエステル樹脂または合成ゴム材料からなることを特徴とする請求項1または2に記載のカードである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るカードは、カード基材上に形成された絵柄層が電離放射線硬化型樹脂バインダーと柔軟性補助剤を含むインキを用いて形成されているため、硬化後のインキ被膜は強靱かつ柔軟であり、従って熱ラミネート加工時あるいは、エンボス印字加工時において、インキ被膜の割れや、歪みが発生しない。
【0013】
前記柔軟性補助剤がインキに対して1〜20wt%含まれている場合においては、良好な結果を与えるものであり、前記柔軟性補助剤がポリエステル樹脂または合成ゴム材料からなるものである場合には、さらに良好な結果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る情報記録媒体カードの一実施態様における断面構成を示した説明図である。
【図2】本発明に係る情報記録媒体カードの他の実施態様において、製造時の途中工程における多面付け外装シートの状態を示した模式図である。
【図3】図2に示した外装シートを用いた、情報記録媒体カードの断面構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るカードは、クレジットカードやキャッシュカード、交通系前払いカード等に用いられる情報記録媒体カードであり、カードの形態としては、磁気カード、接触型ICカード、非接触型ICカード、およびこれらの併用型であるハイブリッドカード等に分類される。これらのカードは、種類、規格等によってそれぞれ製造工程が異なるが、概略共通した製造工程としては、絵柄の印刷工程、ラミネート工程、打ち抜き工程、エンコード工程、カード発行工程(パーソナライズ工程)等の工程が含まれる。
【0016】
印刷工程においては、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法等の印刷方式が主として用いられる。通常の絵柄に関しては、オフセット印刷法が最も一般的に用いられる。特に隠蔽性や質感を必要とする場合には、スクリーン印刷法が用いられる。ラミネート工程は、主として平面プレス機による熱ラミネート法によるのが一般的である。この時、既に説明したように、印刷絵柄の割れや歪みといった問題が生じる可能性があった。最終工程であるカード発行工程においては、カード番号や氏名等のユニーク情報をカード基材にエンボス印字する場合がある。この時も、印刷絵柄の割れが発生する可能性があった。
【0017】
図1は、本発明に係る情報記録媒体カードの一実施態様における断面構成を示した説明図である。図1は、接触型ICカードの例である。カードの中央部には、コアシート2aがあり、カードの裏面を形成する透明外装シート1bの裏面には絵柄層3bが形成されている。カードの表面を形成する透明外装シート1aには、磁気テープ7が一体化されてお
り、これらはカード基材12を形成する。カード基材12の表面には、隠蔽層4a、絵柄層3a、さらに保護層5が設けられ、これらの印刷やラミネートが完了したカード基材をカードサイズに打ち抜いた後、ICモジュール6をはめ込むためのざぐり穴が切削される。この穴にICモジュール6を嵌め込んで接着することにより、ICカードのブランクスが完成する。
【0018】
絵柄層3a、3bは、オフセット印刷法、スクリーン印刷法等によって形成される。本発明に係るカードに用いるオフセットインキは、電離放射線硬化型樹脂バインダーと柔軟性補助剤を含むことを特徴としている。電離放射線硬化型樹脂バインダーは、電子線、紫外線等の電離放射線によって硬化する性質を持った樹脂である。本発明に係るカードに用いるオフセットインキは、顔料と電離放射線硬化型樹脂バインダーである電離放射線硬化型樹脂プレポリマーと柔軟性補助剤を主成分とする。これらに必要に応じて、電離放射線硬化型モノマー(反応性モノマー)、乾性油、安定剤、タッキファイヤー、ミスチング防止剤、ワックス、添加剤等を配合する。紫外線硬化型インキの場合には、光重合開始剤が必須となる。
【0019】
電離放射線硬化型プレポリマーの例としては、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリオールアクリレートなどのアクリレートオリゴマーを使用することができる。電離放射線硬化型モノマーの例としては、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(HEMA)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)等の反応性モノマーが挙げられる。光重合開始剤としては、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等、公知の光重合開始材が用いられる。
【0020】
柔軟性補助剤は、硬化後のインキ被膜に柔軟性を与えるものであり、Tgが30℃〜80℃で分子量が1000〜15000のポリエステル樹脂、またはブタジエン系、アクリロニトリルブタジエン系、イソプレン系などの合成ゴムを用いることができる。柔軟性補助剤の配合量としては、インキ全体の1〜20%が適当である。これらの成分は、前記電離放射線硬化型プレポリマーと相溶性があってもなくても良い。ない場合は、分散された形で、存在する。これらの成分を、混合、分散後、3本ロール等で混練してオフセットインキとする。ポリエステル樹脂としては、溶剤可溶型の非結晶性共重合ポリエステル樹脂が好ましく使用できる。
【0021】
カード基材12を構成するコアシート2a、透明外装シート1a、1bとしては、通常ポリ塩化ビニル樹脂や、エチレングリコールとテレフタル酸およびシクロヘキサンジオールの共重合体(PETG)や、PETGとポリカーボネート(PC)のブレンド樹脂等が使用される。これらに、顔料(酸化チタン、カーボンブラック、着色顔料)、充填剤(炭酸カルシウム、シリカ)、ワックス、場合によっては改質剤としてブタジエン系、スチレンブタジエン系、イソプレン系に代表される合成ゴム系の添加剤等を適宜添加してなる樹脂組成物をカレンダーや押出し成形法によってシート状に成形したものが使用される。
【0022】
カードの中央に位置するコアシート2a(センターコアシート)としては、前記成分からなる白色の熱可塑性材料が使用される。コアシートの材質としては、80℃〜150℃で軟化するものを使用する。
【0023】
図2は、本発明に係る情報記録媒体カードの他の実施態様において、製造時の途中工程における多面付け外装シートの状態を示した模式図である。この実施態様においては、多面付け外装シート10と、磁気テープ7を熱圧ラミネートによって一体化して段差のない状態とした後、個別絵柄11を設けたものである。なお個別絵柄11には、隠蔽層、絵柄層が含まれる。
【0024】
図3は、図2に示した外装シートを用いた、情報記録媒体カードの断面構成を示した説明図である。アンテナ基板フィルム8とICチップを内蔵したインレット9を中心に、コアシート2b、2c、透明外装シート1a、1b、絵柄層3b、磁気テープ7からなるカード基材12に、隠蔽層4b、絵柄層3a、保護層5が設けられた構成となっている。このカードは、非接触型ICカードと呼ばれるものである。
以下実施例に基づいて、本発明に係るカードについてさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0025】
まず以下の処方よりなるオフセット印刷インキを作成した。
<オフセットインキの処方>
電離放射線硬化型アクリル樹脂(ウレタンアクリレートオリゴマー) 70部電離放射線硬化型モノマー(エチルカルビトールアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート1:1) 23部光重合開始材(ベンジルジメチルケタール) 5部カルナバワックス 2部柔軟性補助剤(溶剤可溶型ポリエステル樹脂、分子量3000、Tg53℃) 11部乾性油(亜麻仁油) 44部n−パラフィン 22部ナフテン 22部α−オレフィン 22部上記混合物を200℃に加熱して溶解して得られた樹脂組成物100部に顔料を2部加えて3本ロールで分散し、オフセットインキとした。
【0026】
上記オフセットインキを用いて、下記工程に従い、図1に示した断面構成を有する接触型ICカードを作成した。なお透明外装シート1a、1bおよびコアシート2aの材質としては、PETG/PCブレンド樹脂を使用した。
<ICカードの製造工程>
1.透明外装シート1a(厚さ0.1mm)に磁気テープ7を転写し、コアシート2a(厚さ0.6mm、白色)と、予め裏面の絵柄層3bを印刷した透明外装シート1bとを熱ラミネートして、磁気テープを埋め込み、一体化してカード基材12とした。熱ラミネートの条件は、150℃、20分である。こうして得られたカード基材12の端部を断裁して形状を整えた。
2.カード基材12の透明外装シート1a面に上記オフセットインキを用いて、隠蔽層4aと所定の絵柄層3aを印刷し、紫外線(UV)照射炉を通過させてインキを硬化させ、次いで転写箔を熱ラミネートして保護層5を形成した。熱ラミネートの条件は、140℃、5分である。
3.打ち抜き工程により、所定のカードサイズに打ち抜いた。
4.個別になったカードに、ミリング加工によってICモジュール6を埋設するためのざぐり穴加工を行った。
5.ICモジュール6の裏面にポリエステル系接着シートを熱により仮貼りした。
6.接着シートが仮貼りされたICモジュール6をカードのざぐり穴に入れ、熱プレスによって本接着して、接触型ICカードを得た。熱プレスの条件は、190℃、2秒である。
7.以上によって得られたカードブランクスに対してエンコードを行い、さらに個人データを入力して、パーソナライズを実施し、カード発行を行った。
【0027】
上記ICカードの製造工程においては、オフセットインキ被膜に対して、複数回の熱圧が加わる他、カード発行段階においてカード番号、氏名等のエンボス印字が行われたが、インキの割れや歪みは発生しなかった。
【実施例2】
【0028】
図2に示された多面付け外装シートを用いて、図3に示された断面構成を有する非接触型ICカードを作成した。カード基材を形成する透明外装シートにはPETG/PCブレンド樹脂を、コアシートには、PETGを使用した。またオフセットインキとしては、実施例1に使用したものと同じものを使用した。
<ICカードの製造工程>
1.透明外装シート1a(厚さ0.1mm)に磁気テープ7を転写し、熱圧によるラミネートを行って透明外装シート1aと磁気テープ7を一体化するとともに、磁気テープ7の段差をなくして表面を面いちの平面とした。
2.この透明外装シート1aに隠蔽層(銀)4b、絵柄層3aを印刷した。絵柄層3aには、オフセット印刷による絵柄とスクリーン印刷による絵柄が含まれる。また裏面用として透明外装シート1bには、裏面用の絵柄層3bを印刷した。
3.アンテナ基板フィルム8とICチップが搭載されたインレット9をコアシート2b(厚さ0.175mm)とコアシート2c(厚さ0.1mm)で挟み、熱ラミネートによって熱融着させた。熱ラミネートの条件は、125℃、20分である。
4.ICインレットが埋設されたコアシートの表裏に絵柄が印刷された透明外装シート1a、1bを積層し、熱ラミネートにより一体化した。熱ラミネートの条件は、140℃、5分である。
5.所定の単体サイズに打ち抜いて、ICカードのブランクスとし、これにエンコードを行い、さらに個人データを入力して、パーソナライズを実施し、カード発行を行った。
【0029】
上記非接触ICカードの製造工程においても、オフセットインキ被膜に対して、複数回の熱圧が加わる他、カード発行段階においてカード番号、氏名等のエンボス印字が行われたが、インキの割れや歪みは発生しなかった。
【符号の説明】
【0030】
1a、1b、1c・・・透明外装シート
2a、2b・・・コアシート
3a、3b・・・絵柄層
4a・・・隠蔽層
4b・・・隠蔽層(銀)
5・・・保護層
6・・・ICモジュール
7・・・磁気テープ
8・・・アンテナ基板フィルム
9・・・インレット
10・・・多面付け外装シート
11・・・個別絵柄
12・・・カード基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード基材と、カード基材上に形成された絵柄層を有するカードであって、該絵柄層が電離放射線硬化型樹脂バインダーと柔軟性補助剤を含むインキを用いて形成されていることを特徴とするカード。
【請求項2】
前記インキが柔軟性補助剤を1〜20wt%含むことを特徴とする請求項1に記載のカード。
【請求項3】
前記柔軟性補助剤がポリエステル樹脂または合成ゴム材料からなることを特徴とする請求項1または2に記載のカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−253679(P2010−253679A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102782(P2009−102782)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】