説明

カーボンナノチューブのエアロゲル

本発明は、孤立カーボンナノチューブのエアロゲルを調製する方法およびその応用、特に複合エアロゲルおよび電気化学的化合物の製造に関する。本発明の方法は、不活性雰囲気中で実施される、(a)アルカリ金属を使用してカーボンナノチューブを還元し、カーボンナノチューブの高分子電解質塩を得る工程と、(b)カーボンナノチューブの前記高分子電解質塩を非プロトン性極性溶媒に曝露して、孤立還元カーボンナノチューブの溶液を得る工程と、(c)孤立ナノチューブの前記溶液を凍結する工程と、(d)溶媒を昇華する工程とからなることを特徴とする。本発明は、特に、前記方法によって得られた孤立カーボンナノチューブのエアロゲルに関し、また前記エアロゲルの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孤立カーボンナノチューブのエアロゲルを調製する方法およびその応用、特に複合エアロゲルおよび電気化学的化合物の製造の方法に関する。
本発明は、特に、前記方法によって得られた孤立カーボンナノチューブのエアロゲルに関し、またそれらのエアロゲルの使用にも関する。
【0002】
このようなカーボンナノチューブエアロゲルを構成することは、特にカーボンナノチューブの固有な特性、および前述のエアロゲルの非常に低いかさ密度と高い比表面積を考えると、その工業的応用に関してたいへん重要である。
【0003】
以下の説明では、角括弧([])の中に記載されている参考文献は、実施例の後に提示される参考文献の一覧に言及するものである。
【背景技術】
【0004】
「カーボンエアロゲル」と一般に称される材料は、本質的に(また一般的にはもっぱら)、極めて多孔性の構造を有する炭素からなる巨視的材料であり、その結果、かさ密度が非常に小さいものとなる。カーボンエアロゲル型の構造に関する詳細については特に非特許文献1[ref1]を参照することができる。
【0005】
カーボンエアロゲルは、「鋳型成形」として知られている方法によって一般的に得られる。概略を述べると、これらの方法では、固体構造または液晶型の分子組織を所望の構造の「型」として使用することによって炭素または炭素前駆体の多孔性3次元構造が形成される。この「型」は、鋳型として知られ、使用される方法に応じてさまざまな形態をとり得る。この文脈において、カーボンエアロゲルが得られる鋳型成形法の3つの主要なファミリーは、(1)微小孔性またはメソ多孔性固形物の固体鋳型として使用[例えば、非特許文献2[ref2]および非特許文献3[ref3]参照]、(2)液体またはゲル媒質中の炭素の鋳型成形[例えば、非特許文献4[ref4]または非特許文献5[ref5]参照]、および(3)液体またはゲル媒質中の炭素系前駆体の鋳型成形[例えば、非特許文献6[ref6]または非特許文献7[ref7]参照]である。
【0006】
しかし、これらの方法はどれも、カーボンナノチューブエアロゲルに関係していない。しかし、カーボンナノチューブエアロゲルを製造することが可能であるということは、明らかに、カーボンナノチューブの固有な機械的特性、電気的特性、および化学的特性に関して、工業的および科学的な関心を集めている。実際、これらは、複合材料(例えば、非特許文献8[ref8]参照)、ウルトラキャパシタ(例えば、非特許文献9[ref10]および非特許文献10[ref11]参照)、触媒(例えば、非特許文献11[ref12]および非特許文献12[ref13]参照)、およびナノメートルサイズの電子部品またはシステム(例えば、非特許文献13[ref14]および非特許文献14[ref15]参照)において一般に使用されている。したがって、カーボンナノチューブに基づくエアロゲル材料を開発することが重要である。
【0007】
このような材料を製造する2つの方法が参考文献において現在までに報告されている(例えば、(1)非特許文献15[ref16]および(2)バッコフ(Backov)らの特許文献1[ref17]参照)。しかし、両方の場合において、この方法は、界面活性剤の存在下でのカーボンナノチューブの分散および分散を最適化するための超音波処理工程を使用する。これには、いくつかの短所がある。その一方、カーボンナノチューブは超音波処理によって短くされる。したがって、エアロゲル中のカーボンナノチューブの直
径/長さ比は、最適でない。このため、最終的なエアロゲル中のナノチューブ間に電気的接触問題が生じる可能性もある。他方、界面活性剤化合物を除去することを目的とする工程をこの方法に用意していない場合には、得られたエアロゲル中に、界面活性剤化合物が含まれる。界面活性剤が存在すると、エアロゲルの品質が損なわれるおそれがあり、また想定されている用途によってはその使用が妨げられることがある。さらに、界面活性剤は、生体分解能力が低いという問題に関わることが多い。したがって、これらの方法は、界面活性剤を除去する追加工程を用意しなければならないという欠点をもつ。
【0008】
さらに、上述の2つの方法はそれぞれ、カーボンナノチューブを束の形で使用する(つまり、これらは孤立化していない)。したがって、こうして得られたエアロゲルの比表面積は、これにより悪影響を受ける。とにかく、現在知られているエアロゲルの比表面積は、最適というにはほど遠い。
【0009】
したがって、従来技術のこれらの欠陥、欠点、および障害を克服するカーボンナノチューブエアロゲルを調製する方法が切実に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】仏国特許出願第06/11143号(公開番号FR 2 910 458)
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“Les aerogels et le structure alveolaires:deux exemples de mousses de carbone(Aerogels and the cellular structure:two examples of carbon foams)”、エル ココン(L.Kocon)およびティー ピケロ(T.Piquero),L’actualite Chimique,No.245−246,pp.119−123(March−April 2006)
【非特許文献2】“Nouveaux concepts d’elaboration de materiaux carbones poreux(Novel concepts for producing porous carbon−based materials)”、シー ビクス−グテール(C.Vix−Guterl),ジェー パルメンチエ(J.Parmentier),ピー デルハエス(P.Delhaes),L’actualite chimique,No.245−246,pp.124−128(March−April 2006)
【非特許文献3】“Synthesis of highly ordered carbon molecular sieves via template−mediated structural transformation”、アール リョー(R.Ryoo),エス エイチ スー(S.−H.Soo),エス ジュン(S.Jun),The Journal of Physical chemistry B,103、(37),pp.7743−7746(1999)
【非特許文献4】“High thermal conductivity,mesophase pitch−derived carbon foams:effect of precursors on structure and properties”、ジェー クレット(J.Klett)ら,Carbon,38,pp.153−173(2000)
【非特許文献5】“Novel high strength graphitic foams”,ティー ビーケム(T.Beechem),ケー ラフジ(K.Lafdi),Carbon,44,pp.1548−1549(2002)
【非特許文献6】“Fabrication of nano−structure control of carbon aerogels via microemulsion templated sol−gel polymerization method”,ディー ウー(D.Wu),アール フー(R.Fu),エム エス ドレッセルハウス(M.S.Dresselhaus),ジー ドレッセルハウス(G.Dresselhaus),Carbon,44,pp.675−680(2005)
【非特許文献7】“Preparation and properties of resorcinol formaldehyde organic and carbon gels”,エス エー アル ムスツァベブ(S.A.Al−Muthtsabeb),ジェー エー リッター(J.A.Ritter),Adv.Mater.,15(2),pp.101−104(2003)
【非特許文献8】シャファー エム エス ピー(Schaffer,M.S.P.),ウィンドル エー エイチ(Windle,A.H.),“Fabrication and Characterization of Carbon Nanotube/poly(vinyl alcohol) Composites”,Adv.Mater.,11,pp.937−941(1999)
【非特許文献9】アルジシ エム(Aldissi,M.);シュミッツ ビー(Schmitz,B.);ラザロ イー(Lazaro,E.);バーミジパチ エム(Bhamidipati,M.);ディクソン ビー(Dixon,B.),“Conducting Polymers In Ultracapacitor Applications”,56.sup.th Annu.Tech.Conf.−Soc.Plast.Eng.,(Vol.2),pp.1197−1201(1998)
【非特許文献10】アン ケイ エイチ(An,K.H.);キム ダブリュー エス(Kim,W.S.);パーク ワイ エス(Park,Y.S.);ムーン ジェイ エム(Moon,J.−M.);バエ ディー ジェー(Bae,D.J.);リム エス シー(Lim,S.C.);リー ワイ エス(Lee,Y.S.);リー ワイ エイチ(Lee,Y.H.)、“Electrochemical Properties of High−Power Supercapacitors Using Single−Walled Carbon Nanotube Electrodes”,Adv.Funct.Mater.11,pp.387−392(2001)
【非特許文献11】ユー アール(Yu,R.),チェン エル(Chen,L.),リウ キュー(Liu,Q.),リン ジェー(Lin,J.),タン ケイ エル(Tan,K.−L.),ウン エス シー(Ng,S.C.),チャン エイチ エス オー(Chan,H.S.O.),シュイ ジー キュー(Xu,G.−Q.),ホル ティー エス エー(Hor,T.S.A.)、“Platinum Deposition On Carbon Nanotubes Via Chemical Modification”,Chem.Mater.、10,pp.718−722(1998)
【非特許文献12】プラネクス ジェー エム(Planeix,J.M.);クステル エヌ(Coustel,N.);コック ビー(Coq,B.);ブロトン ヴィー(Brotons,V.);クンバール ピー エス(Kumbhar,P.S.);デュタルトル アール(Dutartre,R.);ゲネステ ピー(Geneste,P.);ベルニエ ピー(Bernier,P.);アジャヤン ピー エム(Ajayan,P.M.),“Application Of Carbon Nanotubes As Supports in Heterogeneous Catalysis”,J.Am.Chem.Soc.、116,pp.7935−7936(1994)
【非特許文献13】タンス エス ジェー(Tans,S.J.),フェルシューレン エー アール エム(Verschueren,A.R.M.),デッカー シー(Dekker,C.),“Room−Temperature Transistor Based On A Single Carbon Nanotube”,Nature、393,pp.49−52(1998)
【非特許文献14】バックトールド エー(Bachtold,A.);ハドリー ピー(Hadley,P.);ナカニシ ティー(Nakanishi,T.);デッカー シー(Dekker,C.),“Logic Circuits With Carbon Nanotube Transistors”、Science、294、pp.1317−1320(2001)
【非特許文献15】ヨッド(Yodh)ら,“Carbon nanotube aerogels”,Advanced Materials,2007,19,pp.661−664
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、カーボンナノチューブエアロゲルを調製するための方法であって、不活性雰囲気下において、 (a)アルカリ金属によりカーボンナノチューブを還元して、カーボンナノチューブの高分子電解質塩を得る工程と、
(b)該カーボンナノチューブの高分子電解質塩を非プロトン性の極性溶媒に曝露して、孤立型の還元カーボンナノチューブの溶液を得る工程と、
(c)該孤立ナノチューブの溶液を凍結する工程と、
(d)溶媒を昇華させる工程と、
の実行を含むことを特徴とする方法を提供することによって、このような要求に特に応えることである。
【0013】
この方法の工程a)およびb)は、不活性雰囲気下で常に行われる。「不活性雰囲気」という表現は、ここでは、中性のナノチューブに還元されたカーボンナノチューブの再酸化を促進しないガスまたは混合ガスを指すものと理解される。例えば、この方法は、無酸素の気体雰囲気下で実施される。特に、この方法は、アルゴンまたは窒素雰囲気下で実施され得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施形態では、アルカリ金属は、本発明の実施を可能にするアルカリ金属であればどのようなものでもよい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムからなる群から選択することができる。より具体的には、アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、またはカリウムとしてもよい。いくつかの特定の実施形態では、アルカリ金属は、リチウムまたはナトリウムである。他の特定の実施形態では、アルカリ金属は、カリウムである。
【0015】
「アルカリ金属による還元」という表現は、ここでは、アルカリ金属が関与する還元を指すものと理解される。したがって、還元は、アルカリ金属の存在下で、例えば、気相中で直接生じ得る。アルカリ金属の存在下での還元法は、当技術分野において周知である。当業者であれば、アルカリ金属の存在下で、例えば、気相中で還元法を実行するのに適している動作条件を識別することができる。特に、当業者は、カーボンナノチューブに直接適用可能である、例えば、“Synthesis of graphite intercalation compounds”,エー ヘロルド(A.Herold)、Chemical Physics of Intercalation,エー ピー レグランド(A.P.Legrand)およびエス フランドロワ(S.Flandrois)Eds,NATO ASI Series,series B,Vol.172,pp.3−45(1987)[ref18]において説明されている方法からヒントを得ることが可能である。
【0016】
他の実施形態では、アルカリ金属から与えられるアルカリ金属塩の存在下で還元が行わ
れる。例えば、還元は、式Aのアルカリ金属ポリアリール塩の存在下で行うことができ、式中、Aは、アルカリ金属のカチオンを表し、Bは、多環芳香族化合物のアニオンを表す。このようなアルカリ金属ポリアリール塩およびその製造方法は、例えば、シー ステイン(C.Stein),ジェイ プールナード(J.Poulenard),エル ボヌタン(L.Bonnetain),ジェイ ゴール(J.Gole),C.R.Acad.Sci.Paris 260,4503(1965)[ref19]、“Synthesis of graphite intercalation compounds”,エー ヘロルド(A.Herold)、Chemical Physics
of Intercalation,エー ピー レグランド(A.P.Legrand)およびエス フランドロワ(S.Flandrois)Eds,NATO ASI Series,series B,Vol.172,pp.3−45(1987)[ref20]、エフ ベギン(F.Beguin)およびアール セットン(R.Setton),New ternary lamellar compounds of graphite,Carbon 13,293−295(1975)[ref21]、ペニコー(Penicaud)ら,“Spontaneous dissolution of
a single−wall carbon nanotube salt”,J.Am.Chem.Soc.,127,8−9,(2005)[ref34]において説明されている。
【0017】
一実施形態によれば、多環芳香族化合物は、ナフタレン、フェナントレン、ビフェニル、アントラセン、ペリレン、ベンゾフェノン、フルオレノン、ベンゾキノン、およびアントラキノンからなる群から選択される。特定の一実施形態では、多環芳香族化合物は、ナフタレンである。特定の一実施形態では、アルカリ金属ポリアリール塩は、カリウムのポリアリール塩である(つまり、式Aの塩であり、式中、AはKを表す)。有利には、式Aのアルカリ金属ポリアリール塩は、ナフタレンのカリウム塩である(Naph)。
【0018】
「孤立還元カーボンナノチューブ」という表現は、本出願では、負に帯電しており、極性非プロトン性溶媒の溶液中のアルカリ金属の対カチオンによって中和された、少なくとも2つの孤立カーボンナノチューブからなる化合物を指すものと理解される。カーボンナノチューブは、一般的に、ナノチューブの束の形で存在する(つまり、ナノチューブは、孤立ではなく、束に「凝集」されている)。本出願では、「孤立還元カーボンナノチューブ」という表現は、部分的に非凝集化されているカーボンナノチューブの束、つまり、(本発明の方法の工程a)およびb)を行う前の)最初の束の比表面積と比べて比表面積が増大しているカーボンナノチューブの束を指す。したがって、「孤立還元カーボンナノチューブ」という表現は、負に帯電しており、アルカリ金属の対カチオンによって中和された、孤立カーボンナノチューブと部分的に非凝集化された束の混合物を表すものとすることができる。好ましくは、「孤立還元カーボンナノチューブ」は、負に帯電しており、アルカリ金属の対カチオンによって中和された孤立カーボンナノチューブをもっぱら含む。好ましくは、前記カーボンナノチューブは、束の形をとらないが、孤立ナノチューブの形をもっぱらとる。
【0019】
ナノチューブの束は、カーボンナノチューブの高分子電解質塩を形成するようにアルカリ金属によって最初に還元される(本発明の方法の工程a))。カーボンナノチューブの孤立化(部分的な、および好ましくは完全な)は、還元されたカーボンナノチューブを溶媒和し、それによりこれらを互いに分離する、極性非プロトン性溶媒に曝露することでこの方法の工程b)において行われる。
【0020】
孤立還元カーボンナノチューブは、式MCの2成分化合物の形をとることができ、式中、Mは、アルカリ金属の陽対イオン(M)を表し、xは、6から200までの間の整
数を表す。特に、アルカリ金属は、カリウム、リチウム、またはナトリウムとすることができる。
【0021】
孤立還元カーボンナノチューブは、式M(Solv)の3成分化合物の形をとることができ、式中、Mは、アルカリ金属イオン(M)であり、Solvは、非プロトン性溶媒の分子であり、xは、6から200までの間の整数を表し、yは、0から8までの間の数を表す。溶媒の分子は、芳香族溶媒(例えば、ベンゼンもしくはトルエン)または求核溶媒(例えば、構造がTHFなどの少なくとも1つの酸素原子を含む溶媒)の分子とすることができる。例えば、溶媒は、THFであり、カーボンナノチューブの高分子電解質塩は、構造Na(THF)、Li(THF)、またはK(THF)の3成分化合物であり、式中、xは6から200までの間の整数を表し、yは、0から8までの間の数を表す。例えば、3成分化合物は、式:K(THF)C10、Na(THF)C10、Li(THF)C10、またはLi(THF)Cに対応し得る。数yは、必ずしも整数でなくてよい。特に、これは、アルカリ金属カチオンに対する溶媒Solvの配位数の平均を表すことができる。例えば、変数yが0.8に等しいと測定された場合に、3成分化合物M(Solv)が調製され、分離されている。本出願では、書き表しやすくするため、数yを、上にもしくは下に最も近い整数に切り上げるか、または切り捨てる。例えば、上記の式Na(THF)C10またはLi(THF)C10の3成分化合物は、元素分析で式Na(THF)0.810またはLi(THF)0.810の化合物であることが明らかになった化合物を含む。したがって、本出願で参照されている任意の式M(Solv)は、式M(Solv)y±0.5の化合物を表すものと理解される。
【0022】
特定の一実施形態によれば、還元工程a)は、溶媒の存在下で行われる。例えば、溶媒は、求核溶媒であってもよい。例えば、求核溶媒は、その構造が少なくとも1つの酸素原子を含む非プロトン性溶媒、特にTHFとすることができる。
【0023】
特定の一実施形態によれば、還元工程は、気相中のアルカリ金属による還元の後の非プロトン性溶媒への曝露、電気化学的還元、および非プロトン性溶媒中のアルカリ金属ポリアリール塩による還元からなる群から選択される。例えば、溶媒は、ベンゼンまたはトルエンなどの芳香族溶媒であってもよい。溶媒は、THFなどのその構造が少なくとも1つの酸素原子を含む非プロトン性溶媒とすることができる。
【0024】
特定の一実施形態によれば、還元工程a)は、不活性雰囲気下で、カーボンナノチューブに式Aのアルカリ金属ポリアリール塩を加えることからなり、式中、
は、アルカリ金属イオンのカチオンを表し
は、多環芳香族化合物のアニオンを表す。
【0025】
一実施形態によれば、多環芳香族化合物は、ナフタレン、フェナントレン、ビフェニル、アントラセン、ペリレン、ベンゾフェノン、フルオレノン、ベンゾキノン、およびアントラキノンからなる群から選択される。
【0026】
特定の一実施形態によれば、曝露工程b)で使用される極性非プロトン性溶媒は、25から200の誘電率を有する。例えば、極性非プロトン性溶媒は、スルホラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、またはN−メチルホルムアミドとすることができる。特定の一実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、DMSOである。他の特定の実施形態では、極性非プロトン性溶媒は、N−メチルピロリドンである。
【0027】
したがって、本発明の方法は、先行技術に用いられた界面活性剤ドープ水溶液(ヨッド
(Yodh)ら、およびバッコフ(Backov)ら)とは対照的に、有機極性溶液からカーボンナノチューブエアロゲルを調製することを可能にする。
【0028】
このことは決してささいなことではなく、先行技術からは明らかになっていない。
具体的には、スルホラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)またはN−メチルホルムアミドなどの極性非プロトン性溶媒は、水よりもはるかに低い蒸気圧を有する。例えば、DMSOの蒸気圧は、0℃付近で大きさが水よりも一桁低い(例として、Pvap(水)=0℃で6ミリバール対Pvap(DMSO)=6℃で0.2ミリバール)。
【0029】
さらに、本発明者の知る限り、生物学において凍結乾燥は、もっぱら水性溶液またはDMSOなどの有機溶媒を小比率で含有する溶液に対して使用されることが多いため、市販の凍結乾燥機は水に対して較正されている。この理由で、凍結乾燥機は、有機溶液、特に前記溶媒などの極めて低い蒸気圧を有する極性溶媒の凍結乾燥に対しては不適である。
【0030】
したがって、当業者は、処理されているものが水溶液でない限り、本発明の方法に関与するもののような極性非プロトン性溶媒中でも孤立還元カーボンナノチューブ溶液の凍結乾燥を探求することは奨励されなかった。
【0031】
このように前記の技術的な難しさおよび極性非プロトン性溶媒の物理化学的特徴(特にそれらの蒸気圧)を考慮すると、本発明前の極性非プロトン性有機溶液の凍結乾燥は、当業者にとって明らかではなかった。
【0032】
極めて驚くべきことに、DMSO溶液などの極性非プロトン性有機溶液、特に孤立カーボンナノチューブを含有する極性非プロトン性有機溶液を凍結乾燥することが可能であることを本発明者は発見した。
【0033】
困難の1つは、上記に示されたように、水溶液に対して較正されている市販の凍結乾燥機を避けることでる。
NMP(蒸気圧=−30℃で2×10−3ミリバール(Tfreezing=−25℃))などのより御し難い溶媒に関しては、この凍結乾燥は特に、ターボ分子ポンプ、またはさらに一連の幾つかの(少なくとも2つ)ターボ分子ポンプなど、強力な真空ポンプで実行され得る。
【0034】
特定の一実施形態によれば、曝露工程b)を、−60℃から285℃の温度で実行する。例えば、曝露工程b)を、0℃から35℃、好ましくは20℃から25℃の温度で実行する。
【0035】
一般に、本発明の方法、特に曝露工程b)は、撹拌しながらでも撹拌なしでも実行され得る。撹拌システムを用いる場合、これは、機械的撹拌システムでも、磁気撹拌システムでも、超音波処理浴による撹拌システムでもよい。一般に超音波処理による撹拌は、カーボンナノチューブを損傷し得るため回避するべきである。しかしながら、より穏やかな方法である超音波処理浴(超音波処理プローブと対比して)は、やや難しい場合における工程b)のカーボンナノチューブの可溶化を促進し得る。特定の一実施形態において、この方法は機械的撹拌により実施される。別の実施形態において、この方法は磁気撹拌により実施される。
【0036】
本発明の方法の特定の一実施様式によれば、工程(a)の後および工程(b)の前にろ過工程(a1)を適用することが可能である。例えば、本法の工程(a)が、アルカリ金属から得られたアルカリ金属塩の存在下での還元を含む場合、カーボンナノチューブ、場
合によっては、非還元カーボンナノチューブの高分子電解質塩を含む固相から液相(例えば、KNaphのTHF溶液)を分離することがろ過によって可能になり得る。このようにして得られたカーボンナノチューブの高分子電解質塩は、好適な溶媒で1回以上すすぐことができる。例えば、ろ過工程(a1)後、カーボンナノチューブの高分子電解質塩を、工程(a)の際に用いられたのと同じ溶媒、特にTHFによりすすぐことができる。このようにすすがれたカーボンナノチューブの高分子電解質塩を、場合によっては工程(b)の前に乾燥することができる。
【0037】
特定の一実施形態によれば、本法はまた、遠心分離工程(b1)を含み、これにより、工程(b)後に孤立された還元カーボンナノチューブ溶液の不溶性画分を分離することができる。当業者は、孤立された還元カーボンナノチューブの透明溶液、すなわち、検出可能な凝集体を含まない透明溶液を得るのに好適な遠心分離条件を決定する方法を認識している。例えば、遠心分離は、10gから200000gの間で0.1時間から24時間実行することができる。特定の一実施形態において、遠心分離工程は、2800gで1時間実行する。
【0038】
一実施形態によれば、遠心分離の際に溶液中に存在する凝集体は、肉眼により確かめられる。したがってこの遠心分離が、透明溶液(すなわち、肉眼に見える凝集体の無い)を得ることをいつ可能にするかを判定するために、遠心分離工程における種々の間隔で溶液サンプルを取り出すことができる。肉眼検査により、十分の一ミリメートル(100マイクロメートル)程度の最小サイズを有する可能性のある凝集体を検出することができる。
【0039】
一実施形態によれば、遠心分離の際に溶液中に存在する凝集体は、光学顕微鏡を用いて確かめられる。したがって、この遠心分離が、透明溶液(すなわち、光学顕微鏡で見える凝集体の無い)を得ることをいつ可能にするかを判定するために、遠心分離工程における種々の間隔で溶液サンプルを取り出すことができる。光学顕微鏡検査により、1マイクロメートル程度の最小サイズを有する可能性のある凝集体を検出することができる。特定の一実施形態において、溶液サンプルは、倍率20〜100、またはさらに倍率400の光学顕微鏡を用いて分析することができる。
【0040】
本説明の文脈内で用語の「ナノチューブ」とは、0.5nmから200nmの間の直径を有する管状の炭素系構造のことであることがわかる。これらの化合物は、ナノメートル程度の少なくとも1つの特徴的寸法を有する「ナノ構造材料」として知られているファミリーに属する。これらの材料およびそれらの合成様式に関するさらなる詳細については、特にピー エム アジャヤン(P.M.Ajayan)による論文“Nanotubes
from carbon”(Chem.Rev.,vol.99,p.1787,1999)[ref9]を参照することができる。
【0041】
本発明の方法は、極めて多方面に亘り、単一層ナノチューブおよびより安価な多層ナノチューブの双方から出発して使用することができる利点を有する。
本法の工程(a)において、0.5nmから100nmの間の平均直径を有する単一層ナノチューブまたは多層ナノチューブを使用することが有利である。
【0042】
特定の一実施形態において、本法の工程(a)に使用されるカーボンナノチューブは、0.7nmから2.0nmの間、好ましくは、0.8nmから1.4nmの間の平均直径を有する単一層ナノチューブである。
【0043】
別の特定の実施形態において、本法の工程(a)に使用されるカーボンナノチューブは、2nmから20nmの間、好ましくは、10nmから15nmの間の平均直径を有する多層ナノチューブである。
【0044】
さらに、工程(a)に使用されるナノチューブの平均長は、一般に0.05マイクロメートルから1000マイクロメートルの間である。
工程(b)で調製された孤立カーボンナノチューブ溶液は、溶液1リットル当たり0.1gから10gの間のナノチューブを含むことが有利である。好ましい一実施形態において、工程(b)で調製された孤立カーボンナノチューブ溶液は、溶液1リットル当たり0.1gから2gの間のナノチューブを含む。
【0045】
本発明によれば、エアロゲル構造は、本法の工程(b)の最後に得られた孤立還元カーボンナノチューブ溶液の緩徐凍結または急速凍結により得ることができる。
特定の一実施形態によれば、エアロゲルの構造は、本法の工程(b)の最後に得られた孤立還元カーボンナノチューブ溶液の急速凍結により得られる。この目的のために、工程(b)で得られた前記溶液を、−50℃未満の温度、または例えば、−80℃未満、他に例えば、−100℃未満、または他に例えば、−150℃未満、または他に例えば、−180℃未満、または他に例えば、−190℃未満に置くことにより、凍結工程(c)を実行することができる。特定の一実施形態において、孤立カーボンナノチューブ溶液を液体窒素中に急速浸漬することによって凍結工程を実行する。
【0046】
特定の一実施形態において、工程(b)の最後に得られた孤立カーボンナノチューブ溶液はDMSO溶液である。カーボンナノチューブのDMSO溶液の凍結は、DMSOの凍結温度より十分低い温度に曝露することにより(特に液体窒素中での浸漬により)急速凍結することができる。カーボンナノチューブのDMSO溶液の凍結は、緩徐に、すなわち、より緩やかな(急速凍結を含まない)方法、例えば、DMSOの凍結温度未満の温度でサーモスタット制御された媒体中の浸漬によっても得ることができる。例えば、凍結工程は、工程(b)で得られたカーボンナノチューブ溶液を、18℃未満の温度でサーモスタット制御された浴中に浸漬することによって実行することができる。
【0047】
特定の一実施形態によれば、エアロゲルの構造は、本法の工程(b)の最後に得られた孤立還元カーボンナノチューブ溶液の緩徐な凍結によって得られる。この目的のために、工程(b)で得られた孤立カーボンナノチューブ溶液を、工程(b)で用いられた非極性非プロトン性溶媒の凍結温度未満の温度でサーモスタット制御された媒体中へ浸漬することにより、凍結工程(c)を実行することが有利である。
【0048】
特定の一実施形態によれば、サーモスタット制御浴を用いて、または用いずにナノチューブの凍結液の低温凍結乾燥により、昇華工程(d)を実行する。サーモスタット制御浴を使用する場合、工程(b)で用いられた非極性非プロトン性溶媒の凍結温度より十分低い温度で孤立カーボンナノチューブ溶液をサーモスタット制御により昇華工程を実行することが有利である。特定の一実施形態において、サーモスタット制御浴の温度は、極性非プロトン性溶媒の凍結温度より1℃以上低く、好ましくは、極性非プロトン性溶媒の凍結温度より5℃以上低い。
【0049】
特定の一実施形態において、10−2ミリバール以下の圧力、好ましくは、10−3ミリバール以下の圧力、好ましくは、10−4ミリバール以下の圧力、より有利には、10−5ミリバール以下の圧力で昇華工程(d)を実行する。特定の一実施形態において、10−6ミリバールの圧力で昇華工程(d)を実行する。昇華を実行するのに好適な圧力を得るために、強力な真空ポンプを使用することができる。水溶液用に設計された凍結乾燥機は、エアロゲルを得るには十分でない。例えば、冷凍温度(凍結された有機溶液を維持するための冷却浴の選択)、および適用される真空度(充分な真空度を得るのに好適な真空ポンプの選択、凍結乾燥機にしばしば用いられるゴム接続を除去する必要性(すなわち、凍結乾燥される溶液を含有するチャンバと真空ポンプとの間の「直接」接続の使用)、
ならびに蒸発させる溶液の容量に比して真空チャンバの容量が大き過ぎないことを確認すること)などのパラメータの賢明な制御が必要である。一実施形態において、0.1ミリバール未満の圧力を生じ得る真空ポンプにより、凍結乾燥を実行する。溶媒の特性、特にその蒸気圧に依って、ターボ分子ポンプを使用することができる。
【0050】
要件に依って、エアロゲルは、昇華(または凍結乾燥)の前後に成形することができる。例えば、凍結溶液を昇華させる(または凍結乾燥させる)容器の適切な形状を選択することによってエアロゲルを「成型」することができる。エアロゲルは、昇華後(または凍結乾燥後)にエアロゲルの圧縮によって薄膜に成形することもできる。
【0051】
特定の一実施形態において、上記凍結溶液を溶媒の飽和蒸気圧未満の圧力を得るために十分に強力なポンプにより昇華させる工程(d)を実行する。さらに、その真空度を最適化するために、凍結乾燥されるナノチューブとポンプとの間に直接接続するように昇華装置を設計することができる。このような装置によって、「脱気」の欠点を有し、昇華、特にDMSOなどの極性有機溶媒に必要な真空度を得ることをできなくさせるゴムチューブの使用を避けることができる。さらに、この直接接続によって、溶液を空気に曝露させること(ナノチューブの酸化、したがって再凝集をもたらすと考えられる)なく、カーボンナノチューブ溶液の調製に使用される不活性雰囲気下、チャンバから真空ポンプへの流通が可能になる。
【0052】
特定の一実施形態において、工程(b)に用いられた極性非プロトン性溶媒はDMSOであり、18℃(DMSOの凍結温度)未満の温度、例えば、6℃にカーボンナノチューブのDMSO溶液をサーモスタット制御することにより昇華工程を実行する。この特定の実施形態において、10−2ミリバール以下の圧力、好ましくは、10−3ミリバール以下の圧力、好ましくは、10−4ミリバール以下の圧力、より有利には、10−5ミリバール以下の圧力で昇華工程(d)を実行する。特定の一実施形態において、極性非プロトン性溶媒はDMSOであり、昇華工程(d)を10−5ミリバールの圧力で実行する。
【0053】
別の態様によれば、本発明はまた、本発明による方法によって得ることができるカーボンナノチューブエアロゲルを提供する。例えば、エアロゲルをそれ自体で使用することができるか、または基材上に堆積させるか、あるいは別の材料と混合することができる。
【0054】
本発明の方法の最後に、一般にモノリシックである孤立カーボンナノチューブに基づいた材料が得られる。得られた材料は、凍結溶液の形状を有するが、孤立カーボンナノチューブの浸出(接触)網状構造だけが残る。
【0055】
さらに本発明のエアロゲルは、極めて低いかさ密度、特に現在知られているカーボンナノチューブエアロゲルよりもはるかに低いかさ密度を有する。例えば、ヨッド(Yodh)ら[ref16]は、10mg/cmから30mg/cmの間の密度を有するエアロゲルを報告している。バッコフ(Backov)ら[ref17]は、「典型的には0.2g/cc(すなわち、200mg/cm)近傍」のかさ密度を報告している。このように一般に、本発明により得られたエアロゲルは、通常、10mg/cm以下、一般に5mg/cm以下、好ましくは、2±0.5mg/cmのかさ密度を有する。本発明により得られたエアロゲルは、0.1mg/cmから10mg/cmの間、一般に0.1mg/cmから5mg/cmの間、好ましくは、0.1mg/cmから2±0.5mg/cmの間のかさ密度を有する。
【0056】
この極めて低いかさ密度により、本発明のエアロゲルでは極めて高い空隙体積がもたらされ、通常、空隙の占める体積は、エアロゲルの全体積の少なくとも99%、一般に少なくとも99.5%、またはさらに少なくとも99.8%である。当業者にとって容易に明
らかであろうが、空隙体積は、工程(b)で得られた孤立カーボンナノチューブ溶液の濃度により影響を受け得る。したがって、より低濃度の孤立カーボンナノチューブ溶液を用いることにより、エアロゲルの空隙体積を増加させることができると考えられる。しかしながら、最終エアロゲルの機械的強度は、恐らくより低くなることが認識されるであろう。したがって、の意図される用途に関連して孤立カーボンナノチューブ溶液の濃度を適合させることが勧められるであろう。
【0057】
一般に、孤立カーボンナノチューブ溶液の濃度は、0.01mg/gから10mg/gの間または0.001%v/vから1%v/vの間、有利には0.1mg/gから4mg/gの間または0.01%v/vから0.4%v/vの間、より有利には、1mg/gから2mg/gの間または0.1%v/vから0.2%v/vの間である。一般に、孤立カーボンナノチューブ溶液の濃度は、1mg/gまたは0.1%v/v程度である。
【0058】
一般に、このようにして得られたカーボンエアロゲルは、空隙率の高い構造を有する。これらは開放および閉鎖の空隙であり、後者は恐らく無視できると考えられる。開放空隙を有する材料は、空隙のすべてが材料表面と連絡している材料のことであると理解される。閉鎖空隙は、カーボンナノチューブの内部体積に相当する。
【0059】
本発明の方法により得られたエアロゲルはまた、今日までに知られたカーボンナノチューブエアロゲルよりも大きな比表面積を有する(当該エアロゲルにおいてカーボンナノチューブが孤立されているという事実のため)。したがって、本発明のエアロゲルは、通常高い比表面積、一般に100m/gから2000m/gの間の比表面積を有し、この比表面積は、有利には200m/gよりも大きく、好ましくは250m/gよりも大きく、また好ましくは300m/gよりも大きい。本説明の意味の範囲内で、語句の「比表面積」とは、The Journal of the American Chemical Society,volume 60,page 309(1938)に記載されている、ブルナウエル−エメット−テラー(Brunauer−Emmet−Teller)法として知られている周知の方法に従い、ISO5794/1に対応する窒素吸着により決定されたBET比表面積のことである。
【0060】
2000m/gの高い比表面積は、特に一定割合のチューブが開放されている場合に見ることができる。
さらに、電気的接触の提供に加えて、エアロゲルのモノリシック性(一体型ピース)は、一定の機械的強度を可能にする。
【0061】
本発明のエアロゲルの特定の構造は、特に電界効果走査型電子顕微鏡により得られた材料の画像でハイライト表示することができ、その例は、添付の図面に示されている。そこでは特に、2つの型の開放空隙:20マイクロメートル程度の直径を有する空隙体積および10ナノメートルから100ナノメートルの直径を有する二次元空隙(第一の空隙の壁における穴)が見られる。
【0062】
本発明により得られたエアロゲルは導電性である。この理由により、電気化学部品の調製にエアロゲルを有利に使用することができる。例えば、エアロゲルは、それらの高い比表面積のため、燃料電池における炭素電極、バイオセンサおよび/またはウルトラキャパシタの代替となることができるであろう。従来の炭素電極と比較して空隙率が増加していることから、エネルギー用途(燃料電池、バイオセンサ、ウルトラキャパシタ)の定量的な性能について、飛躍的な上昇を提供するはずである。
【0063】
本発明により得られたカーボンエアロゲルの特定の構造によって、カーボンエアロゲルが分離材料、特に液体/液体型の分離を行うための分離材料として特に好適になる。特に
本発明のエアロゲルは疎水性分子、特に水性媒体に存在する疎水性分子の吸着に好適である。したがって、本発明のエアロゲルの用途の1つは、例えば、炭化水素などの疎水性汚染物質を含有する水性媒体の除染に関する。
【0064】
本文脈において、エアロゲルの高い空隙率により、化学種の良好な分散を得ることが可能になり、したがって、高い分離速度が得られることになる。本文脈において、例えば、ろ過材料またはろ過膜、特に廃水の浄化用ろ過などのためのろ過材料またはろ過膜を調製するために本発明のエアロゲルを使用することができる。
【0065】
この目的で、本発明のエアロゲルを用いる汚染防止装置を実施するために、仏国特許出願第2881362号[ref22]の教示を適合させることができる。当該エアロゲルと前記特許出願の炭素系のナノ構造材料との間のよく知られた相違は、それらのかさ密度が釣り合わないことである。したがってこの目的に関して、水性媒体の疎水性化学種を保持するために、本出願のエアロゲルは、仏国特許出願第2881362号に記載された材料のより有利でかつより有効な代替物となる。
【0066】
前記エアロゲルの圧縮による膜の形態でエアロゲルを使用することができる。したがって、ろ過膜および/または汚染防止膜として、特に流出した石油を浄化するためのろ過膜および/または汚染防止膜としてエアロゲルを使用することができる。本発明によるエアロゲルの高い比表面積、またそれらの疎水性により、油/水混液中での油の優先的な吸着が可能になる。このように、前記エアロゲルは、水性媒体に存在する炭化水素の吸着により汚染物質、特に水処理または流出した石油の処理に関する汚染問題の解決を想定することを可能にするが、現在、これらの汚染問題を解決するための高性能の手段はない。
【0067】
本発明のエアロゲルの特殊な構造を考慮すると、これらはまた、他の用途にも十分に適合する。特に炭素の生体適合性により、生体材料の調製、特に細胞増殖用、骨増殖用または軟骨置換用の支持体を調製するために特にエアロゲルを使用することができる。エアロゲルは、骨細胞または神経細胞の増殖用の生体適合性支持体の調製の用途を特に見ることができる。この型の用途において、この材料の特殊な空隙により、最適なコロニー化が保証される。一方、この空隙により、この材料の実質的に全表面に到達し得る細胞分散が保証され、他方、エアロゲルに対する細胞の良好な固定化の保証に好適な材料表面の不規則性が保証される。
【0068】
一定の実施形態において、細胞増殖に対する最適なトポロジーを保証するために、工程(b)で得られた孤立還元カーボンナノチューブ溶液は、当該の極性非プロトン性溶媒に不溶性であるビーズで充填することができる。凍結乾燥後、これらビーズの周囲にエアロゲルが形成される。したがって、本発明の方法はまた、工程(b)の極性非プロトン性溶媒に不溶性である材料のビーズを添加する工程(b1)を含むことができる。前記ビーズは、10マイクロメートルから1mmの間の直径、好ましくは、50マイクロメートルから100マイクロメートルの間の直径を有し得る。
【0069】
次いでこれらのビーズを溶解または酸による攻撃により除去し、制御された空隙を有するエアロゲルを残すことができる。「テンプレート」としてのこのような球状粒子の使用は、科学文献により広く普及しており、当業者は、この技術を本明細書に記載された還元カーボンナノチューブ溶液に容易に適用すること、および/または適合させることができる。
【0070】
前記エアロゲルの圧縮により膜形態のエアロゲルを使用することができる。これら膜の弾性(空隙の存在のため)、また優れた耐摩耗性ならびに生体適合性により、これらの材料は軟骨置換の分野の用途で特に有利な候補となる。
【0071】
先行技術のエアロゲルは、生体非適合性の界面活性剤の存在下でカーボンナノチューブの水性懸濁液から調製されるため(ヨッド(Yodh)ら、およびバッコフ(Backov)らの研究を参照)、それらは実際、生体医療用用途には適してはいないことに留意されたい。ヨッド(Yodh)らが、使用された界面活性剤を除去する工程を、たとえ記載しているとしても、界面活性剤の残渣が存在する可能性についての不確実性が残されている。さらに、このことによって、実施が必ずしも容易ではないか、またはさらに産業的観点から有利とはならない界面活性剤除去の追加工程が必要となる。したがって、本発明のエアロゲルは、新規な生体適合性材料の製造にとってかなりの技術的長所を有する。
【0072】
より一般的には、本発明のエアロゲルは、これら材料の特殊な利点、特に化学的に非常に不活性であること、特に還元剤に対し化学的に非常に不活性であること、2000℃超まで(非酸化媒体中)の熱的安定性の高さ、また極めて良好な熱伝導性ならびに導電性を有する限りにおいて、炭素系エアロゲルの大抵の既知用途に使用することができる。
【0073】
したがって、触媒種、例えば、還元媒体、特に高温での還元媒体中の反応触媒のための触媒種用支持体を調製するのに、本発明のエアロゲルを特に使用することができる。したがって一定の用途に関して、例えば、触媒種により含浸させるために、得られたエアロゲルを後処理することができる。特定の一実施形態において、エアロゲルは、不均一系触媒用の触媒支持体調製のために使用される。
【0074】
例えば、シリコン、樹脂またはポリマーで含浸させたエアロゲルはまた、それらの浸出(接触)網状構造のため、伝導性複合材料を得ることを可能にする。このように本発明はまた、複合材料の調製のために本発明の方法により得ることができるエアロゲルの使用に関する。
【0075】
本明細書における用語の「含浸させた」とは、以下のいずれかによるエアロゲルへの材料の含浸のことであることがわかる:
(i)液体形態または溶液中でエアロゲルの多孔質に浸透する別の材料にエアロゲルを浸すことによる含浸。したがって、この特定の実施形態によれば、本発明の方法はまた、(e)液体形態または溶液中で前記エアロゲルを別の材料に浸すことからなる工程を含む。これは、例えば、液体形態もしくは溶液中のポリマー、ポリマー類混合物または樹脂、あるいは溶融シリコンであり得る。このように、液体形態もしくは溶液中で前記材料にエアロゲルを浸漬する;または
(ii)本発明の方法の工程(b)の最後に得られた孤立カーボンナノチューブ溶液と材料溶液とを混合することによる含浸。この材料は、例えば、ポリマー、ポリマー類混合物または樹脂であり得る。したがって、この特定の実施形態によれば、本発明の方法はまた、凍結工程(c)の前に、工程(b)で得られた孤立還元カーボンナノチューブ溶液と材料溶液(例えば、ポリマー溶液、ポリマー類混合物溶液または樹脂溶液)とを混合する工程(b2)を含む。次に複合エアロゲルを形成するために、本方法の工程(c)および(d)に従って、この混合物を凍結し、昇華させる。
【0076】
使用される樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂(例えば、ガラス繊維強化プラスチックに用いられる)、エポキシ樹脂(例えば、接着剤およびプラスチックの製造に用いられる)、フェノール性樹脂またはポリイミド樹脂であり得る。
【0077】
本発明によれば、ポリマーは、本発明を実施することを可能にする任意のポリマーであり得る。ポリマーは、例えば、ポリスチレン;ポリオレフィン類、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(α−オレフィン)類、ポリイソブテンおよびポリプロピレン;ポリエーテル類;ポリエステル類;ポリアミド類;ポリアクリルアミド類;ポリアクリレー
ト類(例えば、ポリメチルメタクリレート、すなわち、「PMMA」);ポリシラン類;ポリシロキサン類からなる群から選択できる。
【0078】
本発明によれば、ポリマーは、直鎖ブロックコポリマーまたはランダムコポリマーであり得る。当業者は、必要/所望の特性を有する複合体を製造するために、使用される好適な操作条件およびポリマー(類)を特定する方法を認識しているであろう。特に、カーボンナノチューブおよびポリマー類またはポリマー類混合物からの複合体の調製を記載している、仏国特許出願第04/05120号[ref29]および/または国際公開第2006/136715号[ref30]に記載された方法から、当業者は着想することができるであろう。本出願の方法により得ることができるエアロゲルから複合エアロゲルの調製を実施するために、これらの文献に記載された方法を適合させる方法を、当業者は認識しているであろう。ポリマー/カーボンナノチューブ表面の相互作用を最適化するために、ポリマー(類)を選択することができる。
【0079】
本出願における語句「ブロックコポリマー」とは、2つ以上のモノマー種を含んでなる連続ポリマーのことであることがわかる。ブロックコポリマーでは、同一のモノマーが一団となっている。このようなポリマー類およびそれらの製造法は、例えば、マッチャゼウスキー ケイ(Matyjaszewski,K.);Eds.;Advances、Controlled/Living Radical Polymerization,(American Chemical Society 2003)[ref23]またはシェイ エイチ エル(Hsieh,H.L.);クワーク アール ピー(Quirk,R.P.);Eds.;Anionic Polymerization Principles and Practical Applications,Marcel Dekker 1996)[ref24]に記載されている。
【0080】
本出願における語句「ランダムコポリマー」とは、種々のモノマー類が、モノマーの反応性および濃度に応じて混合されているポリマーのことであることがわかる。このようなポリマー類およびそれらの製造法は、例えば、マッチャゼウスキー ケイ(Matyjaszewski,K.);デイビス ティー ピー(Davies,T.P.);Eds.;Handbook of Radical Polymerization,Wiley−Interscience 2002)[ref25]またはフォンテーヌ エル(Fontaine,L.);Initiation a la Chimie et a la Physico−Chimie Macromoleculaires[Introduction to macromolecular chemistry and physical chemistry](Groupe Francais d’Etudes et d’Applications des Polymeres[French Group of Polymer Studies and Applications](Chapter 3))[ref26]に記載されている。
【0081】
本発明によれば、当該のブロックコポリマーである場合、例えば、制御ラジカル重合またはリビングアニオン性重合あるいはリビングカチオン性重合により合成された、例えば、ジブロックコポリマーであってもよく、または制御ラジカル重合もしくは無制御ラジカル重合により合成されたランダムコポリマーであってもよい。
【0082】
制御ラジカル重合(CRP)は、調節可能な分子量を有し、多分散度の低い十分に規定されたポリマーおよびコポリマーを調製するための選択方法である。本発明に使用できる技法は、例えば、マッチャゼウスキー ケイ(Matyjaszewski,K.);デイビス ティー ピー(Davies,T.P.);Eds.;Handbook of
Radical Polymerization,Wiley−Interscience 2002)[ref25]に記載されている。
【0083】
語句「リビング重合」とは、停止反応も移動反応もなく、ポリマー鎖に付加するモノマー分子が残っている限り、そのポリマー鎖が成長し続ける重合のことであることがわかる。本発明によれば、リビング重合は、カチオン性であってもアニオン性であってもよい。このような方法は、例えば、マッチャゼウスキー ケイ(Matyjaszewski,K.);Eds.;Cationic Polymerizations Mechanisms,Synthesis,and Applications,Marcel Dekker 1996)[ref31]またはシェイ エイチ エル(Hsieh,H.L.);クワーク アール ピー(Quirk,R.P.);Eds.;Anionic
Polymerization Principles and Practical
Applications,Marcel Dekker 1996)[ref24]に記載されている。
【0084】
重合工程時、モノマー類は、それら全部を導入することができる。モノマー類はまた、個別にまたは混合物として、連続式またはバッチ式で導入することができる。所望のポリマー組成物を得るために、重合の最後に追加のモノマーを導入することもできる。
【0085】
場合によっては、従来の重合方法の際に組み込まれる補助剤は、本発明の方法に従って使用することができる。したがって、当業者に知られている開始剤、連鎖移動剤、触媒、抗酸化剤および滑剤を使用することができる。
(i)他の材料にエアロゲルを浸すことによる含浸
一実施形態によれば、複合材料は、本発明によって得られるエアロゲルに、液体形態または溶液中の他の材料、例えば、シリコン、ポリマーもしくはポリマーのブレンド、または樹脂を含浸させることによって得られる。
【0086】
「含浸」という用語は、本明細書では、上の実施形態(i)に従ってエアロゲルを浸すことによるエアロゲルの含浸を指すものと理解される。
したがって、特定の一実施形態では、この方法は、本発明のエアロゲルを他の材料(例えば、液体形態の、またはその溶液としてのポリマー、ポリマーのブレンド、または樹脂、あるいは溶融シリコン)を浸すことからなる追加の工程(e)をさらに含み、前記材料は液体形態または溶液中にある。例えば、エアロゲルをPMMAまたはPMMAの溶液に浸すことができる。例えば、PMMAは、工程(b)の還元されたナノチューブと同じ溶媒に溶解するものとすることができる。例えば、この溶媒は、スルホラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、またはN−メチルホルムアミドとすることができる。特定の一実施形態では、溶媒は、DMSOである。他の特定の実施形態では、溶媒は、N−メチルピロリドンである。
【0087】
前記工程(e)の後に、溶媒を除去するために乾燥する、例えば、任意選択で減圧下で含浸エアロゲルを加熱してエアロゲルの孔隙から溶媒を蒸発させることによって複合エアロゲルの固化を行う工程を続けることができる。
【0088】
本発明のエアロゲルにシリコンを含浸させることに関して、これにより、一方では、エアロゲルの高密度化を行うことを可能とし、他方では、炭化ケイ素の特性(硬度および高温安定性)とエアロゲルの多孔性とを組み合わせることを可能とし得る。
【0089】
そこで、特定の一実施形態では、本発明のエアロゲルに溶融シリコンを含浸させることができる。エアロゲルは、カーボンナノチューブで構成されているため、シリコンのこの含浸は、この場合、反応性含浸である、つまり、その後、シリコンが炭素と反応して炭化ケイ素を形成するということである。
【0090】
「シリコンの含浸」という用語は、本明細書では、エアロゲルの孔隙中に浸透する溶融シリコン型の相をエアロゲルに含浸させることを指すものと理解される。
溶融シリコンは、流動性が高く、また特に炭素でできている表面に関して湿潤力が高い。したがって、本発明によるエアロゲルに、液体状態のシリコンを含浸させると、このシリコンが、孔隙の表面に従って材料の孔隙網内に入り込む。
【0091】
他の特定の実施形態では、エアロゲルに、溶液中に有機シリコン化合物を含む組成物、例えば、ポリカルボシランなどの炭化ケイ素の前駆体である有機シリコン化合物を含浸させることができる。
【0092】
他の特定の実施形態では、本発明のエアロゲルに、シリコンおよび/またはゲルマニウムを含浸させることができる(つまり、シリコンだけ、ゲルマニウムだけ、または何らかの割合のシリコン/ゲルマニウム混合物を含浸させることができる)。
【0093】
他の特定の実施形態では、本発明のエアロゲルに、シリコンおよび/またはゲルマニウムと少なくとも1つの金属または他の半金属との合金をもっぱら含浸させることができる。後者の場合、金属または他の半金属は、シリコンを含浸した後にエアロゲルに付与される特定の特性に応じて、特に、鉄、コバルト、チタン、ジルコニウム、モリブデン、バナジウム、炭素、またはホウ素から選択され得る。
【0094】
当業者であれば、本発明のエアロゲルに、少なくとも1つの金属または他の半金属と任意選択で合金化された、シリコンおよび/またはゲルマニウムを含浸させるための方法を実施するのに好適な動作条件を識別する方法を理解する。例えば、国際特許出願第2004/076381号[ref36]を参照するとよい。
(ii)工程(b)の終わりに得られた孤立カーボンナノチューブの溶液と材料の溶液との混合液による含浸
他の実施形態によれば、複合材料は、材料の溶液と工程(b)で得られた孤立カーボンナノチューブの溶液とを混合する工程(b2)からなる方法によって得られる。前記材料は、例えば、ポリマー、ポリマーのブレンド、または樹脂とすることができる。材料は、工程(b)で得られた孤立カーボンナノチューブの溶液を生成するために使用されたのと同じ溶媒に溶解することができる。例えば、この溶媒は、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、またはN−メチルホルムアミドとすることができる。特定の一実施形態では、溶媒は、DMSOである。他の特定の実施形態では、溶媒は、N−メチルピロリドンである。
【0095】
そこで、この特定の実施形態によれば、本発明の方法は、凍結工程(c)の前の、材料の溶液と工程(b)で得られた孤立カーボンナノチューブの溶液とを混合する工程(b2)も含む。次いで、方法の工程(c)および(d)に従って混合液を凍結し、昇華させて、複合エアロゲルを形成する。本明細書で説明されている工程(c)および(d)のさまざまな実施形態は、上述の実施形態(ii)による複合エアロゲルの含浸にも応用することも可能であることは理解される。
【0096】
実施形態(ii)のいくつかの変更形態を実施することができる。
そこで、一実施形態によれば、実施形態(ii)による方法は、孤立カーボンナノチューブの前記溶液中でモノマーまたはモノマーのブレンドのその場(in situ)重合の工程からなる。このようなポリマーおよびその製造法は、例えば、マッチャゼウスキー
ケイ(Matyjaszewski,K.);Eds.;Advances in Controlled/Living Radical Polymerization,(American Chemical Society 2003)[ref23]、シェイ エイチ エル(Hsieh,H.L.);クワーク アール ピー(Quirk
,R.P.);Eds.;Anionic Polymerization Principles and Practical Applications,(Marcel
Dekker 1996)[ref24]、マッチャゼウスキー ケイ(Matyjaszewski,K.);デイビス ティー ピー(Davies,T.P.);Eds.;Handbook of Radical Polymerization,(Wiley−Interscience 2002)[ref25]、またはフォンテーヌ エル(Fontaine,L.);Initiation a la Chimie et a la Physico−Chimie Macromoleculaires[Introduction to macromolecular chemistry
and physical chemistry](Groupe Francais
d’Etudes et d’Applications des Polymeres[French Group of Polymer Studies and Applications]volume 12(Chapter 3))[ref26]において説明されている。
【0097】
一実施形態によれば、実施形態(ii)による方法は、1つまたは複数のモノマーを1つまたは複数の孤立カーボンナノチューブに重合/グラフト重合する工程からなる。重合/グラフト重合法は、当技術分野で周知である。当業者であれば、モノマーを1つまたは複数の孤立カーボンナノチューブに重合/グラフト重合する方法を実施するための好適な動作条件を識別する方法を理解する。
【0098】
特定の一実施形態によれば、孤立カーボンナノチューブは、ポリマーとの会合の前に官能基の1つまたは複数のグラフトで官能化される。この文脈において、「会合」という用語は、単純混合することにより、またはグラフト重合カーボンナノチューブの溶液中でモノマーまたはモノマーのブレンドをその場重合することにより、または1つまたは複数のモノマーを重合/グラフト重合して1つまたは複数のグラフト重合カーボンナノチューブにすることによりグラフト重合カーボンナノチューブとポリマーとを組み合わせることを指すと理解される。前記官能基のカーボンナノチューブへの結合は、当業者に公知の好適な任意の有機化学的方法によって実行され得る。例えば、カーボンナノチューブを官能化する方法の概要は、“Chemistry of Carbon Nanotubes”、ディミトリオス タシス(Dimitrios Tasis),ニコス タグマタルチス(Nikos Tagmatarchis),アルベルト ビアンコ(Alberto
Bianco)およびマウリツィオ プラト(Maurizio Prato),Chem.Rev.2006,106,1105−1136[ref33]に見られる。これらは、例えば、ポリエチレングリコール基または酸性基のグラフトとすることができる。これらのグラフトは、(i)孤立カーボンナノチューブの官能化を可能にし、(ii)孤立カーボンナノチューブ間の相互作用を高め(ファンデルワールス型の結合、疎水結合、水素結合)、および/または(iii)孤立カーボンナノチューブと孤立カーボンナノチューブが会合するポリマーの間の相互作用を高めることが可能であり、これらの孤立カーボンナノチューブを含む複合エアロゲルを増強するという利点を有する場合がある。
【0099】
特定の一実施形態によれば、複合材料は、孤立カーボンナノチューブの溶液とPMMA、例えば、DMSOの溶液とから得られる。そこで、この特定の実施形態によれば、PMMA/カーボンナノチューブ複合エアロゲルは、凍結工程(c)の前に、PMMAの溶液(例えば、DMSOの)と工程(b)で得られた孤立還元カーボンナノチューブの溶液とを混合する工程を導入することによって形成することができる。次いで、この混合物を凍結し、昇華させて、PMMA/カーボンナノチューブ複合エアロゲルを形成する。
【0100】
本発明による複合エアロゲルは、本発明のエアロゲルに関して提示されるすべての用途において使用することが可能であり、しかも機械的強度が改善される。例えば、これらの
複合エアロゲルは、分離材料(例えば、濾過膜、炭化水素を吸収するために水面上に広げられる汚染防止膜)として、または不均一系触媒用の担体として、または生体材料(生体適合性ポリマーの場合)として使用することができる。
【0101】
複合エアロゲルの調製のための本発明の方法を使用する特定の一実施形態によれば、複合エアロゲルは、カーボンナノチューブに加えて、複合材料で従来から使用されている他の材料を含むものとすることができる。
【0102】
前記複合エアロゲルの組成物中に組み込まれている充填剤は、ナノメートルおよび/またはマイクロメートルサイズのものとすることができる。
本出願では、「ナノメートルサイズの材料」という表現は、サイズが空間次元の少なくとも1つにおいて数ナノメートルである材料を指すものと理解される。例えば、空間次元の少なくとも1つにおける材料のサイズは、1から20nmまで、好ましくは1から2nmまでである。
【0103】
本出願では、「マイクロメートルサイズの材料」という表現は、1から100マイクロメートルまでのサイズを有する材料を指すものと理解される。
この複合材料は、マイクロメートルサイズのみの充填剤、またはナノメートルサイズのみの充填剤、またはマイクロメートルサイズの充填剤とナノメートルサイズの充填剤の混合物からなるものとすることができる(例えば、同じ材料中にナノメートルサイズの充填剤とマイクロメートルサイズの充填剤とを含む複合材料が説明されている仏語特許第2873381号[ref32]参照)。
【0104】
本発明のエアロゲルのこれらのさまざまな使用は、本発明の特定の1つの主題の構成要素でもある。
予想外にも、本発明のカーボンナノチューブエアロゲルおよびその特定の利点は、本発明の方法の工程(a)から(d)を連続実行することによって非常に単純に得られる。
【0105】
本発明の方法は、とりわけ、使用が単純であり、安価であるという利点を有する。
次に、本発明の方法のさまざまな特徴および各種の有利な実施形態について、さらに詳しく説明する。
【0106】
本発明で説明されている方法により、カーボンナノチューブエアロゲルの開発に関する現在の大きな問題点が解決される。その一方、本発明の方法は、極性非プロトン性溶媒中のカーボンナノチューブ溶液の凍結乾燥を伴う。水分散液の凍結乾燥に基づく従来技術の方法と比較した場合に、この方法の利点は、有機溶媒を使用することで、凍結乾燥すべき溶液の均質性を高め、複合材料を調製することを目的とする相補的成分、例えば、ポリマーまたはポリマーのブレンドの混和に関する柔軟性を高めることができるという点である。
【0107】
他方、本発明の方法は、界面活性剤の使用を必要としない。また、カーボンナノチューブを損傷する、あるいは少なくともそれらのカーボンナノチューブを短縮する、超音波処理の使用も必要としない。したがって、得られたエアロゲル中のカーボンナノチューブの長さ/直径比は、最大である。
【0108】
実際、多くの刊行物によって立証されているように、超音波による処置(超音波処理)が、カーボンナノチューブの構造的完全性に影響を及ぼすことが広く知られている。特に、超音波処理は、カーボンナノチューブの破損を引き起こし、また炭素系構造内に座屈または曲がりおよび/または転位などの欠陥の出現をもたらし得る。
【0109】
超音波処理は、多層チューブの場合に、グラファイトシートの上層の引き裂きも引き起こし、その結果、酸化によってもたらされる損傷と同様の形でナノチューブが間引かれる。例えば、ラゴ(Lago)ら,“Mechanical damage of carbon nanotubes by ultrasound”,Carbon,34(6) 814−816,(1996)[ref37]、バデーレ(Badaire)ら,“In situ measurement of nanotube dimensions in suspensions by depolarized dynamic
light scattering”,Langmuir,20:10367−10370(2004)[ref38]、ヘラー(Heller)ら,“Concomitant length and diameter separation of single−walled carbon nanotubes”,J.Am.Chem.Soc.,126:14567−14573(2004)[ref39]、ヘンリッヒ(Hennrich)ら,“The mechanism of cavitation−induced scission of single−walled carbon nanotubes”,J.Phys.Chem.B,111:1932−1937(2007)[ref40]を参照するとよい。
【0110】
また、超音波処理を行うと、前述の構造損傷により、カーボンナノチューブの性能、特に電気的性能も損なわれる可能性がある。例えば、バデーレ(Badaire)ら[ref38]を参照されたい。
【0111】
ヨッド(Yodh)ら[ref16]およびバッコフ(Backov)ら[ref17]による研究は、界面活性剤を含むカーボンナノチューブの、すでに超音波処理が施されている水性懸濁液の凍結乾燥または臨界点乾燥、カーボンナノチューブの構造を損なう機械的処理、およびその電気的特性によりエアロゲルを得ることに関係している。
【0112】
対照的に、本発明の方法では、カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブをアルカリ金属で還元することと、極性非プロトン性溶媒中に得られた高分子電解質塩を溶解することとからなる「穏やかな溶解」として知られている化学的方法によって孤立化される。したがって、本発明の方法では、エアロゲル中で不変であることがわかっているカーボンナノチューブの構造を考慮する。例えば、未処理のカーボンナノチューブと本発明のエアロゲルのラマンスペクトルを示す図3を参照されたい。図3に示されているように、2つの曲線(未処理のナノチューブおよびエアロゲル)は、区別できない。特に、1300cm−1の「D」バンド、無秩序の特徴、およびチューブの環境に敏感な200cm−1を中心とする「RBM」バンドは、区別できない。この観察結果は、ラマンレーザの2つの異なる波長で検証済みである。
【0113】
さらに、超音波処理では、カーボンナノチューブの分断が発生するが、このことは炭素微粒子および破片が最終生成物中に存在することを暗示する。このような欠点は、本発明のエアロゲルには見られない。
【0114】
したがって、本発明のエアロゲルは、超音波処理法による前述の欠点をもたないという点で従来技術のエアロゲルに勝っている。
さらに、界面活性剤の存在下での分散液の凍結乾燥に基づく従来技術の方法と比べた本発明の方法の一利点は、有機極性非プロトン性溶媒中のナノチューブの溶解により、均質性の良好な溶液を凍結乾燥できるという点である。実際、図4に示されているように、本発明の方法に従って溶解させた後、チューブは、大きな束として残る、エタノール中に分散されている未処理のチューブと異なり、すべて引き剥がされている。したがって、分散液と界面活性剤によって得られるエアロゲル中において、あまり超音波処理を行わないときにはナノチューブのサイズ分布は大きく、十分に超音波処理を行ったときには非常に小
さな長さとなる。イスラム(Islam)らによる論文“High weight fraction surfactant solubilization of single−wall carbon nanotubes in water”,Nanoletters,Vol.3(2):269−273(2003)[ref41]を参照されたい。
【0115】
したがって、本発明の方法を使用すると、孤立カーボンナノチューブから、つまり、ナノチューブの束を完全に引き剥がすことによってエアロゲルを得ることが可能である。
さらに、本発明によるエアロゲルは、生体適合性を有する。したがって、カーボンナノチューブの従来の応用(複合材料、電子部品など)のほかに、本発明のエアロゲルは、生物医学的応用における生体材料として、例えば、細胞、特に骨細胞の増殖の支持材として、使用され得る。
【0116】
それに加えて、本発明の方法を使用すると、すべての生物学的応用に極めて有利な、生体適合性カーボンナノチューブエアロゲルを調製することが可能になる。
最後に、この方法は、多層ナノチューブと同様に、単層カーボンナノチューブとも非常にうまくゆく。
【0117】
本明細書の説明を読んだ後、当業者には明らかであるように、本発明の主な利点の1つは、細胞増殖に特に適している生体適合性材料を得ることを可能にすることである。他の利点としては、この方法を簡単に実施できること、また非常に低いかさ密度のカーボンナノチューブエアロゲルを形成することができることも挙げられる。
【0118】
他の利点も、例として与えられている付属の図に示された下記の実施例を読んだ後であれば、当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1A】本発明の方法により得られるエアロゲルサンプルの×1000倍の走査電子顕微鏡法(電界効果顕微鏡)像を示す図。
【図1B】本発明の方法により得られるエアロゲルサンプルの×3000倍の走査電子顕微鏡法(電界効果顕微鏡)像を示す図。
【図1C】本発明の方法により得られるエアロゲルサンプルの×60000倍の走査電子顕微鏡法(電界効果顕微鏡)像を示す図。
【図2】本発明の方法により得られるエアロゲルの写真を示す図。
【図3】未処理のカーボンナノチューブおよび本発明のエアロゲルのラマンスペクトルを示す図。
【図4】束の未処理のカーボンナノチューブ(広い右側曲線)と比較する、本発明の方法の工程(b)の最後で得られる、孤立還元カーボンナノチューブ(狭い左側曲線)の溶液の乾燥後に観察されるカーボンナノチューブの直径の分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0120】
[実施例]
別途指示されない限り、すべての実験は、不活性雰囲気下、例えば、アルゴンまたは窒素下で実行された。特に、操作は、乾燥アルゴン雰囲気下において(O含有量<10ppm、HO含有量<10ppm)、グローブボックス中で実行された。
【0121】
[実施例1]
カーボンナノチューブの高分子電解質塩のDMSO溶液からのカーボンナノチューブのエアロゲルの調製
カーボンナノチューブの高分子電解質塩の溶液の調製は、国際公開第2005/073
127号[ref35]に記載された方法によって実施することができる。この方法の変形は、以下に記載される。
【0122】
ナフタレンのカリウム塩(Naph)の調製
100mgのナフタレンを、250cmの丸底フラスコに入れ、これに、光沢のある表面(使用直前に外科用メスで剥がした)を有する小片の30mgのカリウムを添加し、次いで、約100cmのTHFを添加した。丸底フラスコを、溶液が、非常に暗い緑色になるまで、還流で加熱し、数時間、還流で放置した。
【0123】
カーボンナノチューブの還元
次いで、上記で得られた溶液を、55mgの未処理のナノチューブ(電弧方法を使用して合成された)上に注いで、過剰の固体カリウムを濾過して除いた。混合物全体を、周囲温度で、約15時間、磁気撹拌下に置いた。あるいは、Naph濃度における還元は、UV/可視分光法で監視できた。反応混合物を、Millipore(登録商標)型(孔隙率0.45マイクロメートル)の膜上で濾過した。フィルターを通した後に、THFが無色となるまで、固体を、THF(カリウム/ナフタレン混合物上で蒸留した)で数回清浄にした。次いで、固体を、周囲温度で、真空下で乾燥した。固体は、調節された雰囲気下で、少なくとも数カ月の貯蔵中、良好な安定性を有した。
【0124】
孤立還元カーボンナノチューブのDMSO溶液の調製
40mgの、上記で得られたナノチューブの塩を、16cmのDMSO中、周囲温度で、約15時間、磁気撹拌に掛けた。得られた溶液を、4000rpmで、1時間、遠心分離に掛け、次いで、デカンテーションを行った。孤立カーボンナノチューブの均質溶液は、すなわち、光学顕微鏡(倍率=400)を使用して目に見える凝集体を含んでいなかった。前記溶液は、DMSOの1g当たり2mgの還元カーボンナノチューブを含有していた。
【0125】
孤立還元カーボンナノチューブのDMSO溶液の凍結乾燥
1〜6gの先の溶液を、(i)試験管の内容物を、密閉して封印することができ、(ii)真空ポンプ(例えば、スウェージロック型)への接続手段をもった、バルブを装着したガラス試験管に入れた。この試験管を、不活性雰囲気下、溶液で充たし、バルブを閉じ、次いで、試験管を、不活性雰囲気室から取り出すことができた。試験管を、溶液を急速に凍結するために、液体窒素中に、任意選択で沈めた。次いで、試験管を、溶媒の凍結温度(例えば、DMSOで6℃)より低い温度でサーモスタット制御された浴中に置き、バルブの別の側面を真空ポンプへ接続した。次いで、試験管の内容物を、バルブを開いて真空下(10−5mbar)に置いた。約15時間後に(1gの溶液に対して)、または約60時間後に(4〜6gの溶液)、(通常は、一晩または一週末)、透明な乾燥固体が、溶液に代わって観察された(図2を参照されたい)。次いで、これは、試験管を開封することによって回収できた。あるいは、不活性雰囲気下でエアロゲルを保持することが望まれる場合は、その後にそれに対してそうすることが望ましいとされた場合に応じて、バルブを閉じ、試験管を、バルブを閉じたまま、制御された雰囲気のグローブボックス中に戻して、試験管を、不活性雰囲気下で開口した。
【0126】
電弧方法を使用して合成された、単層カーボンナノチューブから出発して実行された上記実施例1の手順を、また、同じ結果を伴う、HiPCO方法(高圧一酸化炭素方法)で製造された単層カーボンナノチューブ、スワン(Swan)ナノチューブ(2〜4の層を伴う多層ナノチューブ)、およびアルケマ(Arkema)の多層ナノチューブで実行した。
【0127】
[実施例2]
実施例1のエアロゲルのかさ密度の測定
エアロゲルの体積の測定
エアロゲルを、電弧方法を使用して合成された単層ナノチューブのナトリウム塩から、実施例1によって調製した。4mLの、孤立還元カーボンナノチューブのDMSO溶液を、試験管中で凍結乾燥した。エアロゲルの上部表面の水準で、試験管の壁上に印を付けた。
【0128】
エアロゲルを、試験管から取り出した後に、液体を、前述の印の水準まで、その中に導入した。次いで、液体の体積を、メスシリンダーで測定した:2.5mL。あるいは、液体の重量を計量し、その体積を、その密度から決定することができた。
【0129】
エアロゲルの質量の測定
上記の試験管から取り出したエアロゲルの重量を計量した:6.0mg。
かさ密度
エアロゲルのかさ密度を、質量/体積(上で決定された)比:6.0/2.5=2.4mg/cmから計算した。
【0130】
[実施例3]
実施例2のエアロゲルの孔隙で占められる体積の測定
単層ナノチューブの密度は、1.4g/cmであり、6.0mgの質量は、体積V=m/d=6.0×10−3/1.4=4.3×10−3cmとなる。
【0131】
次いで、孔隙の体積の割合は、次の通り、簡単に推論された:(Voverall−Vnt)/Voverall、Voverallは、実施例2で決定された、エアロゲルの体積を表す。
【0132】
したがって、実施例2のエアロゲルに対する孔隙の体積の%は、(2.5−0.0043)/2.5=99.8%であった。
[実施例4]
実施例2のエアロゲルの比表面積の測定
比表面積の測定を、クリプトン吸着およびBET法で実行した。
【0133】
クリプトン吸着で決定された比表面積は、311m/gであった。
BET法で決定された比表面積は、345m/gであった。
2つの方法は、同一の値を与えることが理解される。
【0134】
[実施例5]
実施例1のエアロゲルの電気抵抗率の測定
接触抵抗の問題を除去するために、エアロゲルの電気抵抗率測定を、「4点法」として知られている方法で実行した。
【0135】
カーボンナノチューブエアロゲルを、3つの異なるナノチューブ源から、実施例1によって調製した:トーマススワン(Thomas Swan)から市販されている、「Elicarb」として知られているナノチューブ、電弧方法で合成されたナノチューブおよび「HiPCOナノチューブ」として知られているナノチューブ。
【0136】
円筒形状のサンプルの周りに、4つの環を、力線の良好な幾何学を確実にするために、銀ラッカーで形成した。抵抗測定は、「Elicarb」ナノチューブのエアロゲルに対して5.0S/cmの導電率を示し、電弧方法で合成されたナノチューブに対して0.3S/cmを示し、「HiPCO」ナノチューブに対して0.03S/cmを示した。
【0137】
[実施例6]
カーボンナノチューブの高分子電解質塩およびPMMAのDMSO溶液から、カーボンナノチューブエアロゲルの調製
孤立還元カーボンナノチューブのDMSO溶液を、トーマススワン(Thomas Swan)から市販されている「Elicarb」カーボンナノチューブから、実施例1に記載されているプロトコルによって調製した。6重量%(カーボンナノチューブに関して)のポリメチルメタクリレート(PMMA)を、溶液へ添加した。次いで、得られた混合物を、実施例1に記載されているプロトコルによって、凍結乾燥した。
【0138】
[実施例7]
実施例6のエアロゲルの電気抵抗率の測定
実施例6のエアロゲルの抵抗率を、実施例5のプロトコルにより決定した。
【0139】
PMMAおよびカーボンナノチューブの塩を含む溶液から得られたエアロゲルは、実施例5のエアロゲルに対して観察されたものよりも低い導電率を有していた。この場合、6重量%のPMMAを含むエアロゲルは、5S/cmに代わる、0.05S/cmの導電率を有していた。
【0140】
[実施例8]
本発明のエアロゲルの生体適合性の証明
実験的原理は、エアロゲルと接触して培養される細胞と、エアロゲルなしの「対照」細胞の挙動を比較することにある(細胞増殖にとって好適な基質、例えば、実験室の培養プレート)。
【0141】
時間T0で、同量の細胞を、エアロゲルとの接触または接触なしで培養する(それぞれに、テストサンプルおよび対照サンプル)。次いで、時間T1、T2等(例えば、7日、14日、等)で、細胞増殖を、各サンプルに対して測定する。
【0142】
材料は、テストサンプルに対して得られる値が、対照サンプルの値の75%以上であるときには、生体適合性であることおよび/または、細胞毒性は存在しないものと見なされる。
【0143】
細胞増殖を定量化するために、MTSテスト(Promega’s Cell Titer 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay、promega)を使用することができる。このテストの原理は、生きた細胞によって、テトラゾリウム塩の、着色ホルマザン生成物への生体内還元性を測定することである。
【0144】
定量化は、直接、細胞を数えるか、または間接的に、基質の変化を発現する比色変化(光学密度測定)によって行うことができる。
(参考文献)
【0145】
【表1】

【0146】

【0147】

【0148】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
孤立カーボンナノチューブのエアロゲルを調製するための方法であって、不活性雰囲気下において、
(a)カーボンナノチューブの高分子電解質塩を得るために、アルカリ金属によりカーボンナノチューブを還元する還元工程と、
(b)孤立還元カーボンナノチューブの溶液を得るために、前記カーボンナノチューブの高分子電解質塩を非プロトン性の極性溶媒に曝露する曝露工程と、
(c)前記孤立ナノチューブの溶液を凍結する凍結工程と、
(d)前記溶媒を昇華させる昇華工程と、
を実行する方法。
【請求項2】
前記還元工程a)は、1つ以上の酸素原子を含む構造の、求核性の非プロトン性溶媒の存在下において実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非プロトン性溶媒はTHFである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属は、ナトリウム、リチウム、またはカリウムであり、前記溶媒は、THFであり、カーボンナノチューブの前記高分子電解質塩が、構造Na(THF)、Li(THF)、またはK(THF)の3成分化合物であり、式中、xは6から200までの間の整数を表し、yは0から8までの間の数を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記還元工程a)は、不活性雰囲気下において、式Aのアルカリ金属ポリアリール塩をカーボンナノチューブに加えることを含み、式中、
は、アルカリ金属イオンのカチオンを表し、
は、多環芳香族化合物のアニオンを表す、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記多環芳香族化合物は、ナフタレン、フェナントレン、ビフェニル、アントラセン、ペリレン、ベンゾフェノン、フルオレノン、ベンゾキノン、およびアントラキノンからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非プロトン性の極性溶媒は、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、またはN−メチルホルムアミドである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程a)において使用される前記ナノチューブは、単層または多層カーボンナノチューブである、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記凍結工程は、工程b)において使用される前記非プロトン性の非極性溶媒の凍結温度未満の温度にサーモスタットによって制御されている媒体中に前記孤立カーボンナノチューブの溶液を浸漬することによって緩徐に実行されるか、液体窒素中に前記孤立カーボンナノチューブの溶液を浸漬することによって急速に実行される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)において使用される前記非プロトン性の極性溶媒はDMSOであり、前記昇華工程は、前記カーボンナノチューブのDMSO溶液を18℃未満の温度にサーモスタットによって制御することによって実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法によって得られる孤立カーボンナノチューブのエアロゲル。
【請求項12】
エアロゲルの全体積の99%以上を孔隙が占める、請求項11に記載のカーボンナノチューブのエアロゲル。
【請求項13】
前記エアロゲルは、0.1から10mg/cmの間のかさ密度を有する、請求項11に記載のカーボンナノチューブのエアロゲル。
【請求項14】
前記エアロゲルは、100から2000m/gの間の比表面積を有する、請求項11に記載のカーボンナノチューブのエアロゲル。
【請求項15】
複合材料を調製するための、請求項11に記載のエアロゲルの使用。
【請求項16】
前記複合材料は、(e)前記エアロゲルにポリマー、ポリマーのブレンド、もしくは樹脂、または溶融シリコンを、液体の形態または溶液によって含浸させる工程を含む方法によって得られる、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記複合材料は、(b2)ポリマー溶液、ポリマーのブレンド、または樹脂を、工程b)において得られた前記孤立還元カーボンナノチューブの溶液と混合する工程を含む方法によって得られる、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
前記ポリマーは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
電気化学部品を調製するための、請求項11に記載のエアロゲルの使用。
【請求項20】
電気化学部品は、ウルトラキャパシタ、バイオセンサ、または燃料電池電極である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
濾過材料、汚染防止材料、またはその両方を調製するための、請求項11に記載のエアロゲルの使用。
【請求項22】
汚染防止材料は、水処理または流出した石油の処理用の膜である、請求項21に記載のカーボンエアロゲルの使用。
【請求項23】
生体材料を調製するための、請求項11に記載のエアロゲルの使用。
【請求項24】
生体材料は、細胞増殖、骨増殖、または軟骨置換用の支持材である、請求項23に記載のカーボンエアロゲルの使用。
【請求項25】
不均一系触媒用の触媒担体を調製するための、請求項11に記載のエアロゲルの使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−504446(P2011−504446A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534517(P2010−534517)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001627
【国際公開番号】WO2009/101271
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(505045610)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ スィヤンティフィック(セーエヌエルエス) (41)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
【Fターム(参考)】