説明

カーボンナノチューブコントロールを用いる分子特性解析

【課題】ナノ細孔を通って移動する分子のモノマーを配向させる特性解析デバイス及び特性解析方法を提供することにより従来の分子特性解析技術の速度コトロール及び配向コントロールの問題を解決する。
【解決手段】ナノ細孔を通る電気的に荷電した分子の移動をコントロールするための方法であって、以下のステップ:ナノ細孔12の分子入口とナノ細孔の分子出口との間にナノ細孔を横切って分子移動電圧を印加し;分子入口と分子出口との間での、ナノ細孔を通る分子の遅い前進のために、ナノ細孔に配置された少なくとも1つの電気プローブに、移動電圧に対し第1の電圧バイアスを印加し;及び分子を、分子入口と分子出口との間で、ナノ細孔を通って分子を前進させるために、ナノ細孔に配置された少なくとも1つの電気プローブに、移動電圧に対し第2の電圧バイアスを印加すること、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には分子の検出及び同定に関し、より具体的にはポリヌクレオチドのようなバイオポリマーを含めたポリマーを特性解析(characterization)及び配列決定するための分子分析技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生体分子、例えばバイオポリマー核酸分子DNA、RNA及びペプチド核酸(PNA)のようなポリヌクレオチド及びタンパク質、並びに他の生物学的分子を含めた分子の検出、特性解析、同定及び配列決定は重要で広がりつつある研究の分野である。現在、ポリマー分子のハイブリダイゼーション状態、立体配置、モノマースタッキング及び配列を迅速に、信頼性をもって安価な方法で調べることができる方法が非常に要望されている。ポリマー合成及び作成の進歩及び生物学的開発及び医薬の進歩、特に遺伝子治療、新しい医薬品の開発及び適切な治療の患者へのマッチングの分野での進歩が前記方法にかなり依存している。
【0003】
分子分析のための1つの方法では、分子(例えば、核酸及びタンパク質)が天然または合成のナノスケールの細孔、すなわちナノ細孔を通って輸送され得ること及び分子の同定、ハイブリダイゼーション状態、他の分子との相互作用、配列(すなわち、ポリマーを構成するモノマーのポリマー鎖上の順序)を含めた分子の特性解析は、ナノ細孔を通過する輸送により、その輸送中に識別され得ることが判明した。分子のナノ細孔を通過しての輸送は、例えば電気泳動または他の移動(トランスロケーション(translocation))メカニズムにより達成され得る。
【0004】
ナノ細孔の寸法が伸びた核酸分子が移動中ナノ細孔の断面積の大部分を占めているようであるならば、ポリマー分子は少なくとも2つのメカニズムによって、ナノ細孔を通過する輸送により、その輸送中に特性解析され得る。前記したメカニズムの第1では、移動分子は、ナノ細孔の各端部に接触している2つの仕切られた液体イオン含有溶液間に電圧を印加することにより発生するイオン電流を一時的に減らしたり遮断する。前記したメカニズムの第2では、移動分子は、ナノスケールの空隙を生ずるように配置されている2つの近接した局所プローブ間にバイアスを印加することにより発生するトンネル電子電流を含めた電子電流を、ナノ細孔の外周の並置点または非常に短いナノ細孔の対向する端部で一時的に変化させる。ナノ細孔を通過中にポリマー中の各ヌクレオチドがイオン電流または電子電流の特性解析上明確な変調をもたらすならば、その得られたイオン電流または電子電流の変調シーケンスが移動ポリマー分子の特性を反映し得る。
【0005】
理想的には、すでに提案されている他の技術と同様に上記した分子分析技術は1回のモノマー分割で分子特性解析できなければならない。生体分子の配列決定用途のような信頼できる用途のためには個々のモノマー特性の明白な解明が重要である。しかしながら、分子検出及び分析のアスペクトは通常幾つかあるために、上記した可能性は実際達成困難である。
【0006】
第1に、分子配向に関して、分子を特性解析する速度(例えば、ヌクレオチドの配列を検出する速度)は有用な分子特性解析シグナルの発生に影響を及ぼす恐れがある。1つのモノマーから次のモノマーへの特性解析シグナルまたは他の指標の変化を識別する能力はヌクレオチドを特性解析する速度に対して非常に敏感であり得る。例えば、ヌクレオチドがナノ細孔を通って輸送される速度は該ヌクレオチドに起因するイオン電流遮断または電子電流変調の程度に影響を与える恐れがあり、またはナノ細孔でのイオン電流測定またはトンネル電流測定に典型的な非常に小さいピコ−またはナノアンペア電流を検出するように製作され得る測定機器のバンド幅を超える恐れがある。
【0007】
第2に、特性解析するときの所与のヌクレオチドの物理的配向は該ヌクレオチドの特性の検出に影響を及ぼす恐れがある。この問題は、ナノスケールの空隙を生ずるように配向された2つの近接する局所プローブ間の電子電流の変調を検知しようとするときに特に深刻である。2つの近接するプローブ間のトンネル電流を含めた電子電流の変調は2つのプローブ間の距離の原子スケールの変化または2つのプローブ間の分子の正確な配向に対して特に敏感であることが公知である。よって、例えばDNA鎖内のそれぞれ互い違いのヌクレオチド配向は異なる検出及び特性解析シグナルまたは他の指標が発生し得、前記シグナルは複数のヌクレオチドまたは複数の分子特徴にとって曖昧なことがある。例えば、位置特異的限界アスペリティ(location-specific limiting asperity)を有するナノ細孔を通過するときのヌクレオチドの配向は、アスペリティの位置での該ヌクレオチドに起因する電子電流変調を変更させ得る。各種ヌクレオチド及び各種分子属性により、ナノ細孔を通って輸送されるときのその配向に応じて類似または区別不能な電子電流変調が生じ得る。これらの例は、概して、速度コントロール及びナノスケールの空間配向という難問により正確で高解像度の分子特性解析(例えば、バイオポリマー配列決定)を達成する能力が制限されることを示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ナノ細孔を通って移動する分子のモノマーを配向させる特性解析デバイス及び特性解析方法を提供することにより従来の分子特性解析技術の速度コトロール及び配向コントロールの問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の分子特性解析デバイスの1例では、特性解析しようとする分子を含む液体溶液を収容している第1リザーバー及び特性解析済みの分子を含む液体溶液を収容するための第2リザーバーが設けられている。第1リザーバーに対して流体接続(fluidic connection)を与える分子入口及び第2リザーバーに対して流体接続を与える分子出口を有するアパーチャ(aperture)を含む固体状態支持構造物が設けられている。
【0010】
分子特性解析デバイスには、第1及び第2電子輸送プローブが設けられている。プローブの少なくとも1つはフラーレン構造物(例えば、カーボンナノチューブ)からなり、両プローブをカーボンナノチューブとして設けてもよい。プローブの各々は支持構造物上に配置されており、アパーチャの外周(perimeter)に接する表面を有している。電圧源は、電圧バイアスをアパーチャを横切って印加するためにプローブ間に接続されている。電流モニターは、アパーチャを通過する分子の移動に対応するプローブ間の電子輸送の変化をモニターするためにプローブ間に接続されている。
【発明の効果】
【0011】
この分子特性解析デバイス及び特性解析技術により、広範囲の分子及び分子立体配置を迅速に、信頼性をもって且つ再現可能で単純に特性解析することができる。本発明の他の特徴及び作用効果は以下の説明及び添付図面、請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】端部配向カーボンナノチューブプローブと連節されている本発明が提供する分子特性解析デバイスの第1実施形態の概略断面図である。
【図1B】ナノチューブの端部及び側面を同定するカーボンナノチューブの概略側面図である。
【図1C】ssDNA分子を特性解析するときssDNA分子が配向されていることを示している図1Aのデバイスの概略断面図である。
【図2A】1つの端部配向ナノチューブプローブ及び1つの側面配向ナノチューブプローブと連節されている本発明が提供する分子特性解析デバイスの実施形態の更なる例の概略断面図である。
【図2B】図2Aの実施形態の概略平面図である。
【図2C】ssDNA分子を特性解析するときssDNA分子が配向されていることを示す図2Aの実施形態の概略断面図である。
【図3A】端部配向カーボンナノチューブプローブ及び側面配向移動コントロールカーボンナノチューブと連節されている本発明が提供する分子特性解析デバイスの実施形態の更なる例の概略断面図である。
【図3B】図3Aの実施形態の概略平面図である。
【図3C】ssDNA分子を特性解析するときの移動スピードがコントロールされ、ssDNA分子が配向されていることを示す図3Aの実施形態の概略断面図である。
【図4A】1つの端部配向カーボンナノチューブプローブ、1つの側面配向ナノチューブプローブ及び側面配向移動コントロールカーボンナノチューブと連節されている本発明が提供する分子特性解析デバイスの実施形態の更なる例の概略断面図である。
【図4B】1つの端部配向カーボンナノチューブプローブ及びナノ細孔の長さを貫いて延びている1つの側面配向ナノチューブプローブと連節されている本発明が提供する分子特性解析デバイスの実施形態の更なる例の概略断面図である。
【図5A】端部配向カーボンナノチューブプローブと連節されており、ナノ細孔を通過するDNA−ナノチューブ複合体の移動及び特性解析のために構成されている本発明が提供する分子特性解析デバイスの実施形態の更なる例の概略断面図である。
【図5B】端部配向カーボンナノチューブプローブと連節されており、ナノ細孔を通過するアクチュエータチップ載置したDNA−ナノチューブ複合体の移動のために構成されている本発明が提供する分子特性解析デバイスの実施形態の更なる例の概略断面図である。
【図5C】DNA−ナノチューブ複合体を検知するためのアクチュエータチップ載置したカーボンナノチューブプローブを有して構成されている本発明が提供する分子特性解析デバイスの実施形態の更なる例の概略断面図である。
【図6】ケイ素支持フレーム上の窒化ケイ素膜中にナノ細孔を有して構成されている本発明が提供する分子特性解析デバイスの概略断面図である。
【図7】流体リザーバー及びチャネルを含む本発明が提供する包装分子特性解析デバイスの概略図である。
【図8】分子特性解析デバイスの製造方法の1例における製作ステップを示す概略断面図である。
【図9】分子特性解析デバイスの製造方法の更なる例における製作ステップを示す概略断面図である。
【図10】分子特性解析デバイスの製造方法の更なる例における製作ステップを示す概略断面図である。
【図11−1】図11A〜Hは、分子特性解析デバイスの製造方法の更なる例における製作ステップを示す概略断面図である。
【図11−2】図11I〜Mは、分子特性解析デバイスの製造方法の更なる例における製作ステップを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1Aを参照すると、本発明が提供する分子特性解析デバイス10の実施形態の第1例を概略的に示す。論議を明瞭とするために、図1に示すデバイスの形状構成は一定の縮尺で示されていない。図1Aに示すように、デバイスでは支持構造物14中にナノスケールのアパーチャ、すなわちナノ細孔12が設けられている。支持構造物の第1側に特性解析しようとする分子を含む液体溶液を収容している第1液体区画16、すなわちリザーバーがあり、支持構造物の反対側に特性解析済みの分子をナノ細孔を通って移動することにより輸送させる第2液体区画18、すなわちリザーバーがある。アパーチャへの入口の分子入口は第1リザーバー16とアパーチャ間の流体連通(fluidic communication)を与え、アパーチャの出口の分子出口はアパーチャと第2リザーバー18間の流体連通を与える。
【0014】
本発明の分析デバイスにより可能な分子特性解析には、例えば配列決定、ハイブリダイゼーション検出、分子相互作用検出及び分析、立体配置検出及び他の分子特性解析を含めた広範囲の分析が含まれる。特性解析しようとする分子は一般的には任意の分子であり、この中にはポリマー及び生体分子(例えば、タンパク質、ポリヌクレオチドDNAやRNAのような核酸、糖ポリマー及び他の生体分子)が含まれる。この図に示す1つの用途において、特性解析しようとする分子は、例えば各一本鎖DNA分子(ssDNA)骨格に沿った塩基の配列の同一性を調べることにより特性解析しようとする、ヌクレオシド塩基22の配列を有するssDNA20を含む。論議を明瞭とするために、この配列決定の例を以下の説明で使用するが、これが本発明の分子特性解析デバイスの排他的用途ではない。加えて、下記する配列決定操作はDNAの例に限定されない。ポリヌクレオチドRNAも同様に特性解析され得る。従って以下の論議は特定の実行例に限定することを意図せず、分子特性解析のための広範囲の実施形態の1例の詳細を与えているにすぎない。
【0015】
図1Aの分子特性解析デバイスの操作において、2つの液体区画16,18に図中に「−」及び「+」と付した電圧バイアスを印加すると、第1区画16中に含まれる分子(例えば、ssDNA分子)は一つずつ電気泳動的にナノ細孔に入り、細孔を通って第2区画18に追いやられる。これは、溶液中ではDNA骨格が負に荷電しているからである。この電圧バイアスは、例えば2つの区画16,18の溶液中にそれぞれに浸漬させた塩化銀電極17,19及び各溶液の電圧をコントロールするための対応の電圧源21,23を設けることにより加えられ得る。ナノ細孔を通して輸送させる前に第1区画16中のDNA鎖を構造化されていない一本鎖形態で維持するためには、以下に詳細に説明するように高pHまたは特定の変性剤を含む電解溶液を使用する。
【0016】
支持構造物14中のナノ細孔12の位置に、移動DNA分子中のヌクレオシドを局所電子輸送測定法により直接電子的に特性解析するために電気接触しているプローブ24,26が設けられている。プローブ24,26は、ナノ細孔の外周上の任意の点(例えば、ナノ細孔外周の対向する点)でナノ細孔12と接している2つのナノスケールの電極として役立つ。プローブ24,26は、プローブ間の選択電圧バイアスをナノ細孔12を横切って加えるために外部電気回路28において電圧源30と接続している。分子を含有する電解溶液がプローブ間のナノ細孔を通過することを考慮すると、支持構造物が電気絶縁性構造物として設けられており、図1Aに示すようにナノ細孔12の外周に接しているプローブの先端部または非常に小さな局所領域を除いてプローブを電気的に絶縁させるために電気絶縁層15すなわち支持構造物領域が設けられていることが好ましい。こうした電気絶縁条件により、プローブ間に選択した電圧バイアスを印加することができる。
【0017】
ナノ細孔がナノスケールの空隙であるならば、プローブ24,26間に電圧バイアスを印加すると電子が2つのプローブ間のナノ細孔を横切って輸送されてプローブ回路28が完成する。分子(例えば、ssDNAヌクレオシド塩基32)がプローブ24,26間のナノ細孔12中に位置していると、前記塩基の原子構造がナノ細孔を横切る電子輸送に影響を与える。ヌクレオチドに関連する電流を測定するために電流計34または他の電流測定デバイスが回路28中に設けられている。このようにして、ナノスケールのアパーチャを通って移動する分子が特性解析され得る。この例では、ssDNA分子に沿ったヌクレオチドの各々が明白に特性解析(例えば、同定)され得る。
【0018】
ナノスケールのアパーチャ(例えば、ナノ細孔12)の場合、ナノ細孔における絶縁DNA分子または他の分子及び局所電解液環境を用いる主たる電子輸送メカニズムは多くの用途で量子力学的電子トンネリングであると理解される。本明細書中、用語「トンネリング」は、ナノ細孔中の分子の存在により変調されるナノ細孔を横切るあらゆるタイプの電子輸送(例えば、電子状態から電子状態への「ホッピング」)及び他の輸送を指す。電子輸送は局所原子構造に対して非常に感受性であることは公知であり、従って明白に特性解析するため(例えば、ヌクレオシド塩基を同定するために)うまく適合している。しかし、ナノ細孔を横切る電子トンネルの代わりにまたはそれに加えて他の電子輸送メカニズムが存在し得、分子特性解析(例えば、DNA配列決定操作)のために利用され得る。例えば、誘起電荷効果、非弾性電子輸送またはDNA分子骨格の長さの一部に沿った輸送に関連するメカニズムも使用され得、ヌクレオシド塩基がナノ細孔を通って輸送されるとき異なるヌクレオチド原子構造物を識別するために十分な感度を与えると理解される。
【0019】
どんな電子輸送メカニズムが起ころうとも、外部回路28により検知される電流はssDNA分子20がナノ細孔12を通って移動するとき個々のヌクレオシド塩基22により変調される。この個々のヌクレオチドの特性解析は、ナノ細孔の幾何学的構造により可能となり、これにより、ヌクレオチドが、プロープ24,26間のナノスケールのアパーチャを厳密に逐次的に一列で通ることになる。走査トンネル顕微鏡チップと表面間の電子流が表面上の原子を同定できるので、プローブ間の電子流を測定するとヌクレオチドが同定される。よって、プローブ間に電圧バイアスを印加すると移動分子のトランスバース電気伝導度を動的に検知することができる。
【0020】
このトランスバース電気伝導度は、上記した電子トンネリングまたは他の電子輸送メカニズムにより本発明に従って検知することができる。本発明は、特定の電子輸送メカニズムに限定されない。以下の論議において、電子トンネリングの電子輸送メカニズムを言及しているが、本発明はこれに限定されない。トンネル顕微鏡での典型的な電子電流はナノアンペアである。こうした比較的高い電子電流及び付随する比較的大きい信号/雑音比はプローブが接続されている外部回路28を用いて生じ得る。
【0021】
ここでプローブ24,26の詳細に転ずると、プローブの少なくとも1つはフラーレン構造物(例えば、カーボンナノチューブ)として設けられている。本明細書中、用語「フラーレン構造物」は炭素原子の規則的な六角形(hexagonal)及び五角形(pentagonal)群(groups)から構成されるケージ様中空分子構造物を指す。プローブの1つを金属導体として設けてもよいが、多くの用途でプローブ24,26の両方をフラーレン構造物(例えば、カーボンナノチューブ)として設置することが好ましい。カーボンナノチューブは主に炭素原子の六角形群から構成される中空管である。単層カーボンナノチューブ(SWNT)は、結晶性の六方晶系フラーレン原子構造を有するグラファイトを筒状に巻いた一層のシートから構成される一次元のチューブである。7Åほどの小さい直径及びサブミクロン〜ミリメートルの長さを有するカーボンナノチューブが合成され得る。カーボンナノチューブは極度に高い機械的強さと化学的安定性を特徴とし、グラファイトの高い電気伝導性または半導体のバンドギャップを持った電子構造を示すように選択され得る。よって、カーボンナノチューブの結晶性構造により、水性環境およびナノ細孔の高い局所的電場条件に耐えることができる明確で所定の規則的な強いモルホロジーが得られる。多くの用途に対して、金属導体はそのようにすると予想されないこともある。
【0022】
加えて、カーボンナノチューブの電気的特性が原子スケールの摂動に対して非常に感受性であるので、ナノチューブは、ナノ細孔を通って移動する4つの異なるDNAヌクレオシド塩基を電子的に区別するための好ましいナノスケールのプローブである。具体的には、ナノチューブにカップリングしているDNAまたはRNAヌクレオシドのファンデルワールス相互作用及びDNAまたはRNAヌクレオシドの電気的特性は、ナノチューブの自由電荷キャリア濃度及び電荷キャリアエネルギーレベルの位置並びに対応する導電率に影響を及ぼすことによりナノチューブの電子的特性に大きく影響を与え得る。従って、カップリングさせたDNA塩基−ナノチューブハイブリッドのナノチューブ部分の電子特性は、分析されたDNA塩基間の測定可能なコントラストを測定する際に配列決定しようとする分子、分子−ナノチューブハイブリッドの付近の局所環境、及びナノチューブプローブ及びssDNA電解溶液に印加される電圧により確立される電気条件くらい重要な役割を果たす。
【0023】
図1Aのナノチューブプローブ配置の例では、ナノ細孔は、ナノチューブ端部がナノ細孔を横切る電子輸送のための電子源及びシンクとして役立ち得るように単一ナノチューブの切断端部間または2つのナノチューブ間の端部間で安定な電子輸送空隙を与える。この配置では、個別のヌクレオシド塩基構造のナノスケールの分割が直接達成され得、その電気特性により配列を含めたポリヌクレオチドの多くのアスペクトを検出し、特性解析することができる。ナノチューブを合成し、ナノチューブプローブ配置を製作するための技術の例を以下に詳記する。
【0024】
ナノチューブプローブは金属性または半導体構造物として設けられ得るが、多くの用途のためには合理的なプローブ電圧バイアスで測定可能な電子輸送電流が生じ得るように小空隙の半導体ナノチューブプローブが好ましい。単層ナノチューブプローブ構造物も好ましいこともある。本発明ではナノ細孔プローブとして使用される広範囲のフラーレン構造物が意図されている。例えば、バッキーボールフラーレン球体を電気伝導性媒体中に組み込んだものがナノ細孔プローブとして使用され得る。半導体ナノワイヤー構造物もナノ細孔プローブとして使用され得る。以下の論議において、ナノチューブの例が使用されているが、これに限定されると意図されない。
【0025】
本発明によれば、塩基がナノ細孔を通って移動すると同時に移動塩基の指標である直接電子シグナルを発生するので、塩基を特性解析するためにヌクレオシド塩基を物理的に配向させるようにナノチューブプローブ24,26が使用され得ることが見出された。この物理的配向は、カーボンナノチューブの表面と密接にカップリングさせるためにDNA鎖のアフィニティーを利用することにより本発明に従って達成される。フラーレン構造物(例えば、カーボンナノチューブ)の存在下では、DNA分子の各ヌクレオシド塩基はナノチューブフラーレン構造物とπ−スタッキング相互作用を形成する傾向にある。例えば、Zhengら,Nature Materials,2:338−342(2003年5月)を参照されたい。DNA分子は糖−ホスフェート骨格内での結合ねじれがかなり柔軟であると理解されており、この柔軟性がヌクレオシド塩基−ナノチューブカップリングを適合させる。カップリングでは、DNA分子の平面塩基は個々に塩基の平面がナノチューブ表面に対してフラット(flat)に並べられるような条件で非共有結合性の吸着プロセスによりナノチューブ表面に会合またはカップリングされ得る。その結果として、この配置で、DNAヌクレオシド塩基はナノチューブ表面配向に対応する配向に対してナノチューブ表面により物理的に整列される。
【0026】
このDNA−ナノチューブカップリングの現象は、自由エネルギーの考察、電荷状態、DNA塩基とカーボンナノチューブ間の相補的疎水性/親水性特性及びDNA骨格により、一部はヌクレオシド塩基とナノチューブの表面構造間のファンデルワールス相互作用により引き起こされると理解される。ヌクレオシド塩基をナノチューブ表面にカップリングできるように特定の条件を付与する必要はない。実際、DNAまたはRNAがそれ自体凝集するのではなくナノチューブ表面に優先的にカップリングすることが示唆された。
【0027】
本発明によれば、図1Aの構成の例では、DNA塩基がナノ細孔を通って移動するときDNA塩基がナノチューブの表面と整列しやすいようにナノ細孔の長さに沿った点に近接ナノチューブプローブが設けられている。図1Bは、塩基にカップリングさせるのに有効な各種ナノチューブ表面及び前記表面に対して本発明で使用される用語を明確とするナノチューブ24の概略図である。ナノチューブ24は塩基がカップリングし得る側面27を含み、塩基がカップリングし得る端部29及び31を含む。前記端部は端部29の場合のようにグラファイト表面の連続延長部として設けられていても、端部31の場合のように切断面端部であってもよい。
【0028】
図1Cは図1Aの分子特性解析デバイスの概略図であり、ここでは塩基がナノ細孔を通って移動するときナノチューブプローブ24がヌクレオシド塩基32を物理的に整列させている時点を示す。ヌクレオシド塩基32は、ssDNA20がナノ細孔12を通って移動するときナノチューブプローブの1つ24の端部にカップリングしている。先に説明したように、平面ヌクレオシド塩基32はナノチューブに対してフラットに並ぶ傾向を有している。この構成により、塩基を明確に表す電子輸送電流を検出するためにナノ細孔中に塩基を正確に配向させることができる。図1Cに示す塩基とナノチューブ端部のカップリングは概要にすぎず、ナノチューブ24に対する塩基配向の具体的詳細を表すものではない。
【0029】
図1Cに示す移動及びカップリングを可能とするためには、ヌクレオシド塩基32をナノチューブ端部に沿ってスライドさせることができるようにナノ細孔を横切る電気泳動力がコントロールされ、電気泳動力はある時間経過後塩基をナノチューブ端部から脱カップリングさせるのに十分に強い。この電気泳動力コントロールは、図1A及び1C中の電圧源21,23のコントロールからそれぞれ2つの液体区画16,18間の相対電圧をコントロールすることにより実行される。
【0030】
ssDNAとナノチューブ間の結合エネルギーは約−1.0eV/nmであると推定された。例えば、Zhengら,“DNA−assisted dispersion and separation of carbon nanotubes”,Nature Materials,2:338−342(2003)を参照されたい。従って、ヌクレオシドを非バイアスナノチューブから除去するために必要な対応力は約3〜約6pNであり、これはほぼナノ細孔を横切る約100mV〜200mVの電圧バイアスを有するナノ細孔を移動するssDNAに対して印加される電気泳動力である。例えば、Sauer−Budgeら,“Unzipping kinetics of double−stranded DNA in a nanopore”,Phys.Rev.Lett.,90:2381011−2381014(2003)を参照されたい。この場合、ナノ細孔を横切って200mVバイアスを印加することは、ナノチューブプローブにバイアスが存在せず、図1Cに示すようにヌクレオシドをナノチューブ端部を横切ってスライドさせる。従って、分子とカーボンナノチューブ間で生ずるカップリングは非共有結合性で、非永久的なものであり、表面にカップリングさせながら分子をナノチューブ表面に沿ってスライドさせることができる性質のものであると理解される。
【0031】
図1Cに示すように、塩基32がカップリングしているナノチューブ24は第2ナノチューブ26に対して正にバイアスされている。ナノチューブ24の電圧によりナノ細孔中の電解溶液に対して前記ナノチューブの正バイアスが生ずるならば、ナノチューブ26の正バイアスが短時間減るかまたは2つの液体区画間のナノ細孔を横切るバイアスが、ヌクレオチドがナノチューブを横切ってスライドするのに十分に上昇するまで、負に荷電したヌクレオチドがナノチューブを横切ってスライドするのが防止される。従って、本発明は、ヌクレオチドがナノ細孔を通って移動するときのヌクレオチドの移動速度及びヌクレオチドの配向をコントロールすることができる。
【0032】
図1A及び1Cの配置の例において、ナノチューブプローブ24,26は、ナノチューブの端部がナノ細孔の外周(perimeter)に接する(abutting)向きに置かれるように示されている。ナノチューブの端部はナノチューブの側面と同様な六角形炭素表面構造または他のより複雑な幾何特性を有し、従ってナノチューブの側面によって示されるのと同一のヌクレオチド配向影響を与え得ると理解される。所与の用途または構成でナノチューブの端部が十分な配向影響を与えないことが分かった場合には、ナノチューブ端部を以下に記載されている方法で官能化または他の方法で処理することにより、必要なヌクレオチド配向特性を有する末端表面を付与することができる。
【0033】
この例で、ナノチューブプローブにより直接的分子特性解析及び分子配向コントロールが可能であり、以下に記載されているように分子移動速度をコントロールすることができることが判明した。従って、ナノチューブプローブは従来の金属製プローブの単なる代替ではなく、その代わりに本発明の知見に基づいて分子特性解析の正確なコントロールを可能とするために使用され得る。
【0034】
図2Aを参照すると、本発明が提供する更なる実施形態では、ナノチューブプローブの1つの分子配向表面はナノチューブ端部ではなくナノチューブの側面として設けられている。図2Aに示すように、第1ナノチューブプローブ24は、上記したように端部がナノ細孔12の長さに沿った点に配置されるように設けられている。他のナノチューブプローブ50は、このプローブ50の側面がナノ細孔12の外周と接するように第1プローブ24に対して直交して配置されている。
【0035】
図2Aは、明瞭とするために支持構造物14中のナノ細孔及びナノチューブプローブのみを示す構成の破断側面図であるが、図1Aのような液体区画、広がった支持構造物及び電気接続が含まれていると理解されたい。加えて、図2Aに示すように、ナノ細孔外周と接しているところを除いて2つのナノチューブを電気絶縁するために支持構造物及び電気絶縁領域15が設けられている。
【0036】
上記アセンブリの上から見た概略平面図である図2Bには、この構成のための電気接続が示されている。ここには支持構造物14中のナノ細孔12が示されており、T形プローブ配置が生ずるように2つのナノチューブプローブ24,50が直交して配置されている。明瞭とするために、ナノチューブプローブの上部に位置する電気絶縁支持構造物及び被覆材料は図2Bには示されておらず、ナノチューブプローブの位置を直接見ることができる。図2Bの配置では、ナノチューブプローブ24,50間に選択した電圧バイアス30を印加するために、図1A〜1Bの実施形態を参照して上記したように第1外部回路28が設けられている。この電気バイアスは、DNA分子のヌクレオシド塩基が上記したようにナノ細孔を通って輸送されるとき、ナノ細孔を横切る電子輸送を刺激するためにナノ細孔のアパーチャを横切って選択した電圧を付与する。
【0037】
図2Cも参照すると、ssDNA20がナノ細孔を通って移動するときヌクレオシド塩基32がナノチューブプローブの一方50の側面にカップリングされる状態が示されている。この構成により、塩基を明確に表す電子輸送電流を検出するためにナノ細孔中で塩基を正確に配向させることができる。塩基は、塩基を特性解析するときナノチューブ50の側面に沿ってスライドすることができる。図2Cにおいても、図2Bに示す電圧源30の極性によって側面配向(side-oriented)ナノチューブプローブ50が端部配向(end-oriented)ナノチューブプローブ24に対して電気的に正にバイアスされていることに注目されたい。この正のバイアスが電解溶液に対しても正であるならば、結果としてヌクレオシド塩基32がナノ細孔12を通って引き出されるとき、負に荷電したDNA骨格は側面配向プローブ50に電気的に引き寄せられる。ヌクレオシド塩基32はプローブ50の側面と相互作用し、カップリングし、バイアスが逆転するまでカップリングされたままである。
【0038】
結果として、側面配向ナノチューブプローブ50は更に、塩基がナノ細孔を通って輸送されるときヌクレオシド塩基移動速度のコントロールを可能とするためにコントロールされ得る。再び図2Bを参照すると、側面配向ナノチューブプローブ50の端部58,60は、縦方向ナノチューブプローブ50の電圧を別にコントロールするために電圧源54を備えている第2外部回路52において接続されている。第2外部回路52には電流計または他の電流制御及び測定デバイス56も含め得る。
【0039】
先に説明したように、DNA鎖とナノチューブ表面のカップリングは、前記鎖とナノチューブ表面の相対的電気電荷により少なくとも部分的にコントロールされ得る。溶液中にあるときDNA骨格は本質的に負に荷電しているので、溶液に対して正に荷電しているナノチューブ表面はDNA骨格をナノチューブ表面に引き寄せる傾向にある。逆に、負に荷電しているナノチューブ表面はDNA骨格をナノチューブ表面からはね返す傾向にある。これらの条件は、本発明に従ってヌクレオシド塩基と側面配向ナノチューブプローブのカップリングの持続時間をコントロールするために利用される。
【0040】
再び図2Cを参照すると、側面配向ナノチューブプローブ50が電解溶液に対して電気的に正にバイアスされているとき、DNA骨格は側面配向ナノチューブプローブ50に引き寄せられる傾向にあり、ヌクレオシド塩基32は側面配向ナノチューブプローブ50とカップリングする。このカップリングの間、DNA塩基を通ってナノ細孔を横断してナノチューブプローブ間で起こる電子輸送が塩基を同定するために測定され得る。
【0041】
この塩基同定測定が完了したら、電圧源54及び側面配向ナノチューブプローブ50の対応する電気バイアスを調節するために第2外部回路52をコントロールする。ここで、電圧バイアスは、側面配向ナノチューブプローブ50が電解溶液に対して負にバイアスされ、よってDNA骨格が側面配向ナノチューブプローブ50からはね返される傾向にあるように選択される。反発力が生じ始めると、ヌクレオシド塩基32は側面配向ナノチューブプローブ50から脱カップリングし、これにより図2Aの構成が生じ、電気泳動力によりナノ細孔を通って更に下方に輸送される。同定しようとする次に続くヌクレオシド塩基は、次の塩基同定サイクルのために同様にしてナノチューブプローブの位置に輸送される。
【0042】
この塩基同定サイクルを可能とすることにより、図2A〜2Cの実施形態は、DNA鎖に対してヌクレオチドがナノ細孔を通って移動するとき該鎖のヌクレオチドに対する移動速度コントロール及び物理的配向コントロールの両方を与える。図2A〜2Cの実行の例は、側面配向ナノチューブプローブ50がナノ細孔から離れたナノチューブ端部58,60を備え、端部58,60で外部回路52に対する電気接続を形成し得る点で特に有利である。しかし、所与の実行のために必要に応じてまたは所望により、代わりに、端部配向ナノチューブプローブ24を第2外部回路52にて別個にコントロールして、側面配向ナノチューブプローブ50ではなく端部配向ナノチューブプローブ24に対してDNAヌクレオチドをコントロール下でカップリング及び脱カップリングさせてもよい。
【0043】
先に説明したように、DNAヌクレオチドはナノチューブの端部及びナノチューブの側面の両方にカップリングする傾向にあると理解されたい。DNAカップリングのためにナノチューブ端部が使用されるとしても側面が使用されるとしても、本発明は、すべてのヌクレオシド塩基がナノチューブ表面により同一に配向されることを必要としない。その代わり、共通するタイプのすべてのヌクレオシド塩基が実質的に同様に配向されること、すなわちすべてのT塩基が同様に配向される、すべてのG塩基が同様に配向される、等々が好ましい。この条件を満たすと、所与の塩基タイプの各例において予想された配向または限定されたクラスの配向が生じ、よって4種のDNA塩基間の対比を助け、配列決定の正確さが促進されるであろう。
【0044】
更に、本発明はヌクレオシド塩基をナノチューブ表面に対してカップリングさせるための特定の配向を必要としない。多くの条件下で、ヌクレオシド塩基の面が先に説明したようにナノチューブ表面に対してフラットに並ぶ傾向にあると理解されたい。しかしながら、このことが本発明において普遍的に必要とされるわけではない。ヌクレオシド塩基は、ナノチューブ表面に対してある角度をもって配置されていても、表面から効果的に離れていても(stick off)、または同一性の電子検出を可能にする適当な様式で配向していてもよい。先に説明したように、所与の塩基タイプの各例は塩基コントラストの精度を増強させるために同様に配向させることが好ましいが、特定の配向であることは必要とされない。
【0045】
本発明が提供する更なる実施形態では、分子移動コントロールは電子輸送ナノチューブプローブ構成とは別に実行され得る。図3Aは前記配置の例の概略断面図(正確な縮尺ではない)である。上の図2A及びCのように、液体区画及び関連する電圧源が図1Aのように含まれており、両ナノチューブプローブは電気絶縁されており、ただしナノ細孔に接するナノチューブの端部のみが絶縁されていないことを理解されたい。
【0046】
図3Aには、図1Aのように、ナノ細孔12を横切って支持構造物14中に2つのナノチューブプローブ24,26が示されている。この例のナノチューブプローブはナノ細孔外周に端部配向して配置されている。DNA鎖20がナノ細孔12に進入する支持構造物表面63には、ナノ細孔12の外周に側面配向した(側面が位置決めされた(side-positioned))ナノチューブ65が設けられている。この表面に位置決めされたナノチューブ65の電気バイアスは、ナノ細孔12を通って輸送されるDNA鎖の移動速度をコントロールしてナノチューブプローブ24,26の位置で塩基を同定するために、図2A〜2Cにおける側面配向ナノチューブプローブ50のようにコントロールされる。
【0047】
図3Bは図3Aの構成を上から見た平面図であり、ここには構成のための外部回路接続が含まれている。この図では、ナノチューブプローブ24,26は、ナノ細孔12の長さに沿った点で支持構造物14の表面の下にあるものとしてドット付クロスハッチングで示されている。表面に位置するナノチューブ65は、その位置が支持構造物14の表面上のナノチューブプローブ24,26の上にあることを示すために普通にクロスハッチングされている。図1Aと同様の第1外部回路28が2つのナノチューブプローブ24,26に対して設けられている。回路28中の電圧源30によりナノチューブプローブ24,26間に選択した電圧バイアスを印加することが可能となり、先に説明したように、ナノ細孔を横切る電子輸送を生じさせ、ヌクレオシド塩基同定のための電流測定を可能にする。
【0048】
図2Bと同様に、表面に位置するナノチューブ65を電気的にバイアスするために第2外部回路52が設けられている。表面に位置するナノチューブ65の端部66,68は、表面に位置するナノチューブ65の電圧をコントロールするために電圧源54が設けられている第2外部回路52に接続されている。第2外部回路52には電流計または他の電流コントロール及び測定デバイス56も含まれ得る。
【0049】
図3Cをも参照すると、表面に位置するナノチューブ65が電解溶液に対して電気的に正にバイアスされると、DNA骨格は表面に位置するナノチューブ65に引き寄せられる傾向にあり、ヌクレオシド塩基32は表面に位置するナノチューブ65とカップリングする。これは、ナノ細孔を通るDNA鎖の前進移動速度をコントロールするように作用する。塩基32が表面に位置するナノチューブ65にカップリングすると、塩基がナノチューブ表面上に配向されることにより塩基が空間的に配向する。同時に、第1外部回路28はナノチューブプローブ24,26間に電圧バイアスを与える。ナノチューブプローブ24,26の位置にあるDNA塩基によってナノ細孔を横切ってナノチューブプローブ24,26間で生ずる電子輸送をこの時点で測定することにより、ナノチューブプローブ24,26の位置の塩基を同定することができる。
【0050】
この塩基同定測定が完了したら、表面に位置するナノチューブ65の電圧源54及び対応する電気バイアスを調節するために第2外部回路52をコントロールする。この場合、電圧バイアスは、表面に位置するナノチューブ65が電解溶液に対して負にバイアスされ、それによりDNA骨格が表面に位置するナノチューブ65からはね返されやすくなるように選択される。この反発力が生じ始めると、ヌクレオシド塩基32は表面に位置するナノチューブ65から脱カップリングして、図3Aの構成が生じ、電気泳動力によりナノ細孔内に輸送される。同定しようとする次に続くヌクレオシド塩基は、同様に次の塩基同定サイクルのためにナノチューブプローブの位置に輸送される。表面に位置するナノチューブ65で実施したヌクレオシド塩基配向は、塩基がナノ細孔の長さに応じてナノ細孔に進入し、ナノチューブプローブに近づくときその塩基とともにそのままであってもよい。この場合、この配向コントロールは、塩基がナノ細孔の長さに沿ってナノチューブプローブの位置に達したときナノチューブプローブの1つに塩基がカップリングすることにより強められる。
【0051】
別の実行例では、表面に位置するナノチューブ65をナノ細孔12の外周で側面配向させるのではなくナノ細孔12の外周で端部配向させてもよい。表面に位置するナノチューブの端部配向では、上記した端部配向ナノチューブプローブ24,26と同様にナノ細孔の縁に端部が配置される。この実行例は、ナノチューブに接触させるためにナノ細孔外周から離れた位置に2つのナノチューブ端部を設けていない点であまり好ましくないことがある。しかしながら、所与の用途が表面に位置するナノチューブの端面に配向している表面への接触を認めるならば、前記構成は可能な場合に使用され得る。
【0052】
本発明の更なる実施形態では、図1及び3の実行の例に示す第1外部回路28は、端部配向ナノチューブトンネルプローブ24,26(図1及び3)に一時的にバイアスをかけるために図2B及び3Bに示す第2外部回路52のようにコントロールされ得る。一時的なナノチューブプローブバイアスは、図2Bの実行の例のように第2外部回路52により達成される移動コントロールを1つの回路のみで可能とすべく加えられる。本発明に従って、先に説明したように、2つのナノチューブプローブの電荷により負に荷電したDNA骨格は電解溶液に対して最も正にバイアスされているナノチューブプローブに引き寄せられると理解される。電圧バイアスをナノチューブプローブ間に印加すると、DNA骨格は正に荷電しているナノチューブプローブに引き寄せられ、この位置のヌクレオシド塩基は正に荷電しているナノチューブプローブとカップリングする。このカップリングは、鎖がナノ細孔を通って前進するのを遅らすかまたは停止させるように作用する。電圧バイアスが電解溶液に対して反転すると、DNA骨格は塩基がカップリングしているナノチューブからはね返され、DNA鎖はナノ細孔を通って前進し得る。こうして、DNA鎖移動がコントロールされる。
【0053】
図1の実行例で一時的なナノチューブプローブシナリオを用いることにより、2つのナノチューブプローブ24,26は空間的分子配向コントロール及び分子移動速度コントロールを実施することができる。図3の実行例では、この一時的なナノチューブプローブバイアスコントロールにより、表面に位置するナノチューブ66及びナノチューブプローブ24,26により与えられる二重の移動速度コントロールが可能である。この2つの移動コントロールは、ナノ細孔を通過してのDNA鎖のラチェット様の移動を生じさせるように同期的に操作され得る。
【0054】
本発明によれば、図1〜3の構成の例に組み込まれる各種形状構成及びコントロール技術は、広範囲の代替配置において所与の分子特性解析用途に対して所望通りに選択され得る。例えば、図4Aの破断断面図に示すように、ナノチューブトンネルプローブは端部配向プローブ24及び側面配向ナノチューブプローブ50として設けられ得る。追加の分子移動速度コントロールを付与するために表面に位置するナノチューブ65が更に設けられ得る。ナノチューブはいずれもナノ細孔に接しているナノチューブの端部または側面を除いて電気絶縁されている。図4Bに示すように、ナノチューブプローブは更に、例えば端部配向プローブ24と、ナノ細孔の内側長さに沿って支持構造物の厚さを貫いて水平に延びている側面配向ナノチューブプローブ67として設けられていてもよい。この配置で、ヌクレオシド塩基は十分にコントロールされた配向でナノ細孔の全長を貫いて側面配向ナノチューブ67に沿ってスライドすることができる。この条件を可能とするために、側面配向プローブは、以下の例において説明しているようにナノ細孔内の露出したプローブ領域に沿って絶縁されていない。認識され得るように、端部配向プローブ24は、図4Aに示す側面配向プローブ50のように側面配向プローブとしても設けられ得る。
【0055】
これらのデバイス配置の各々は、時間依存的配向及び移動速度コントロールを与えるために1つ以上の選択した外部バイアス回路によりコントロールされ得る。例えば、図1Aの外部回路28のような第1バイアス回路はナノチューブプローブ24,50間に使用され得、図2Bの外部回路のような第2バイアス回路は縦方向ナノチューブプローブ50のバイアスを別にコントロールするために使用され得る。更に、図3Bの外部回路52のような追加コントロール回路が表面配向ナノチューブ65のバイアスをコントロールするために使用され得る。
【0056】
上で検討したデバイス構成の例は、ナノ細孔中の分子による電子輸送をナノチューブプローブ間で測定することにより操作するものとして記載されている。しかしながら、本発明はデバイス構成を前記操作に限定するものではない。ナノチューブへの分子の近接は、上記したようにナノチューブの長さに沿った電子輸送に利用可能なナノチューブ電子キャリアの濃度を変化させることにより及び/または電子キャリアの電気輸送度を変調することによりナノチューブのコンダクタンスをナノチューブの長さに沿って変化させることができるとも認識され得る。従って、分子とカーボンナノチューブの側面との相互作用に適合するデバイス構成のすべてが「FETモード」と称され得るように操作され得る。前記構成の例は図2A〜C(ナノチューブプローブ50)、図3A〜3C(ナノチューブ65)及び図4A(ナノチューブ50及び65)に示されているものである。
【0057】
FETモードの操作では、分子接触及び配向表面を形成する側面を有するナノチューブ(例えば、図2〜4のナノチューブ50及び65)の対向端部を横切って電気バイアス電圧が印加される。このバイアスは、ナノチューブ50及び65に接続している図2B及び3Bの回路52に印加され得る。これらのナノチューブのコンダクタンスはナノ細孔中の分子の接近及び特性に対して感受性である。よって、分子がナノ細孔を通って移動するときにナノチューブ50または65を通る電流を回路52において測定することにより、分子を側面配向ナノチューブをベースとする特性解析デバイスを用いて電子的に特性解析するための代替方法が提供される。よって、本発明は、本発明の分子特性解析デバイスの特定モードの操作に限定されない。
【0058】
加えて、図1〜4の実行例のすべてにおいて2つの液体区画中の各溶液の電圧バイアスは、先に説明したように分子−ナノチューブカップリング力に対するナノ細孔を通って分子を推進させる電気泳動力をコントロールするために時間依存的に調節され得る。例えば、第1液体区画16及び第2液体区画18中の電極17,19(図1A)はそれぞれ経時的に、例えば適切なナノチューブプローブバイアスコントロール及び移動速度バイアスコントロールと同期的に選択的にバイアスされ得る。前記した液体バイアスは電解溶液に対するナノチューブプローブのバイアスに対して更なるコントロールレベルを与え、よって分子移動コントロールの精度を高める。この精度は測定エレクトロニクスの感度及びバンド幅に比例する移動速度を達成することが望ましい。例えば約10塩基/秒の移動速度で、連続塩基に対する明確な電子輸送シグナルの測定を分離することができる。よって、ナノチューブ及び外部回路の選択配置に電気バイアスコントロールを加えると、異なるヌクレオシド塩基間の明確な電子識別に適合する様式でDNA移動の速度及びDNAヌクレオシド塩基の物理的配向をコントロールし得る。
【0059】
上記可能性の結果として、本発明の分子分析デバイスは、ナノ細孔が単一の分子検出器として動作するとしても非常に高い処理量配列決定デバイスとして機能する。本発明の分子分析デバイスを用いると、数千の異なる分子または数千の同一分子を数分以内に探査することができる。ナノ細孔デバイスの操作方法は移動分子の特徴を電気シグナルに直接変換するので、変換及び認識は分子単位基準でリアルタイムでなされ得る。更に、長さの長いDNAがこのリアルタイム様式で探査され得る。サンプル調製または特定の用途を実際に考慮すると、DNA鎖がナノ細孔を通って移動するとき分析され得るDNA鎖の長さが制限されるが、分析される鎖の長さは理論的に限定されない。
【0060】
本発明の分子分析技術の別の実施形態に転ずると、図5Aを参照すると、本発明の別の分子分析技術において、DNA配列決定は自由ナノチューブにカップリングしたDNA鎖の複合体がナノチューブ連節(articulated)ナノ細孔を通って移動することにより実施される。この方法を実施するための図5Aに示すような本発明が提供するデバイスでは、第1液体区画16中にナノチューブ102にカップリングしたssDNA分子100が別のナノチューブ102にカップリングしている少なくとも1つのDNA鎖100と共に溶解している。DNA−ナノチューブ複合体の溶液は、参照により組み込まれるJagotaらの米国特許出願公開第2005/0009039号“Dispersion of Carbon Nanotubes by Nucleic Acids”に教示されているように所望の分子−ナノチューブ複合体を提供するべく例えばゲル電気泳動により形成され、加工され得る。
【0061】
第1液体区画は、上記したように支持構造物14中に設けられているナノ細孔12と連通している。ナノ細孔の長さに沿った点にナノチューブプローブ24,26が配置されている。ナノチューブプローブは図5Aに示すように端部配向プローブとして設けられ得、図2Aに示すように側面配向されていてもよい。
【0062】
図に「−」及び「+」で示す電圧バイアスを2つの液体区画16,18間に印加すると、第1区画16中のDNA−ナノチューブ複合体は一度にナノ細孔12を通って第2区画18に電気泳動的に推進する。この電圧バイアスは、例えば塩化銀電極17,19をそれぞれ2つの区画16,18の溶液中に浸漬させて設け、各溶液の電圧をコントロールするために対応の電圧源21,23を設けることにより与えられ得る。
【0063】
電圧バイアスは、コントロール可能な電圧源30を有する外部回路28によりナノ細孔を横切ってナノチューブプローブ24,26間に印加される。DNA−ナノチューブ複合体104がナノ細孔に移動し、ナノチューブプローブ24,26間に移動すると、ナノチューブプローブ24,26間の電子輸送はDNA−ナノチューブ複合体104の存在により影響される。DNA−ナノチューブ複合体の塩基を同定すべく生じた電流をモニターするために電流計34または他の電流測定エレメントが外部回路に設けられている。DNA分子の各ヌクレオシド塩基がDNA−ナノチューブ複合体中のナノチューブの縦方向側壁にカップリングするならば、DNA−ナノチューブ複合体がナノ細孔12を通って移動したときカップリングしたDNA鎖の各ヌクレオシド塩基はナノチューブプローブ間の電子輸送の変化により別々に且つ明確に同定される。DNA分子がカーボンナノチューブにカップリングすると、ナノチューブの存在に起因したナノ細孔近くの流体の付加粘性抵抗のためにカップリングしていないDNA鎖に比してナノ細孔を通る分子輸送速度が減少が生じ得ることが認識されている。しかしながら、ブラウン運動のためのDNA鎖運動のゆらぎは、ナノチューブの大きな質量及び剛性のためにナノチューブへのDNA鎖のカップリングにより減少する。
【0064】
この移動DNA−ナノチューブ複合体の電子分析に加えて、上記したようにナノ細孔を通って第1液体区画16から第2液体区画18への溶液中を流れるイオン電流の変化は移動DNA−ナノチューブ複合体の位置を確認するためにモニターされ得る。複合体が移動中ナノ細孔の断面積の大部分を占めるようにナノ細孔の寸法がDNA−ナノチューブ複合体の寸法に相当するならば、前記複合体は上記したように第1及び第2液体区画に印加された電圧から生ずるイオン電流を一時的に減少または遮断する。その結果、第1及び第2液体区画間のイオン電流の測定は、DNA−ナノチューブ複合体がナノ細孔内にあるかどうかの指標とするために使用され得る。DNA−ナノチューブ複合体がナノ細孔中に存在することが確認されたら、前記指標は電子輸送電流の測定を開始するために外部回路のコントロールと同期され得る。
【0065】
DNAカーボンナノチューブハイブリッド複合体の減速及び配向効果はイオン電流または電子電流分子特性解析デバイスを用いる分子特性解析のために有利に使用され得る。本発明は、上記したナノチューブプローブ構成での電子電流またはイオン電流測定技術によりDNA−ナノチューブ複合体を特性解析することを意図している。第1及び第2液体区画間のイオン電流の測定は、ナノチューブと複合体を形成しているDNA分子の各種特徴を示すために使用され得る。例えば、ポリヌクレオチド鎖内で「ヘアピン」ループを形成するモノマーの相補的塩基対配列はナノチューブ上に明確に配向され、非相補的配列のものとは異なるイオン電流の変調が生ずる。よって、DNA−ナノチューブ複合体は、電子電流変調の検出を含めることなく適当な方法で(例えば、イオン電流のモニター)特性解析され得る。
【0066】
図5Aの実施形態の例では、自由ナノチューブ102の各々は該ナノチューブにカップリングしたDNA鎖100のヌクレオチドを物理的に配向させる。DNA−ナノチューブ複合体104がナノ細孔12を通って移動すると、ナノチューブプローブ24,26により上記したように追加の配向コントロールが付与され得る。例えば、ナノチューブプローブ24,26間の電圧バイアスは、負に荷電しているDNA骨格及びそこにカップリングしているナノチューブを正に荷電しているナノチューブプローブ24に引き寄せるようにコントロールされ得る。これにより、ナノ細孔内でDNA−ナノチューブ複合体の空間的配向をナノチューブプローブ間でコントロールすることができる。
【0067】
所与の用途に対して所望ならば、図1〜4の例の各種ナノチューブ構成が、DNA−ナノチューブ複合体がナノ細孔を通って移動するとき前記複合体の配向及び移動速度をコントロールするように実行され得る。加えて、先に説明したように、2つの液体区画間の電気泳動力は、DNA−ナノチューブ複合体移動速度を更にコントロールするために2つの液体区画の電圧バイアスを調節することによりコントロールされ得る。
【0068】
図5Bに転ずると、本発明の更なる実施形態では、DNA−ナノチューブ複合体のナノ細孔通過移動が外部からコマンドされる作動素子により厳密にコントロールされ得る。本発明が提供するこの配置で、分析しようとするDNA−ナノチューブ複合体104はコントロールメカニズム112により作動され得るカンチレバー110または他の移動可能な素子のチップ108上に載置される。実施形態の1例では、マウンティングチップ108は原子間力顕微鏡(AFM)のカンチレバー110の末端に置かれている。適当な作動・移動可能なチップ構造物がマウンティングチップとして使用され得る。DNA−ナノチューブ複合体マウンティングチップに対して走査トンネル顕微鏡チップ、微小電気機械(MEM)構造物(例えば、作動微小機械加工したカンチバレービーム及びブリッジ)、及び他のシステム装置または特注の機械配置が使用され得る。
【0069】
どのようなチップ構成を使用しても、チップ載置したDNA−ナノチューブ複合体は支持構造物14中のナノ細孔12を通って移動し、2つのナノチューブプローブ24,26間を動く。チップ108及びカンチレバー110を正確にコントロールすると、チップ載置したDNA−ナノチューブ複合体はナノ細孔12を通ってゆっくり、例えば約1ヌクレオシド塩基/秒ほどの遅い移動速度で前進し得る。ナノチューブプローブ24,26の位置で、DNA−ナノチューブ複合体を介してナノ細孔を横切る電子輸送はDNA−ナノチューブ複合体の存在により影響される。上記した方法で、DNA−ナノチューブ複合体中のDNA分子のヌクレオシド塩基を識別すべく電子輸送を測定するために外部回路が使用され得る。外部回路測定バンド幅が制限され得る用途のために、この配置は回路バンド幅を適合させる様式で移動速度を正確にコントロールするために便利であり得る。
【0070】
検討を明確にするために図5Bに示されていないが、図5Aの外部バイアス及び測定回路28はナノチューブプローブバイアス及び電子輸送測定を可能とするために図5Bの構成にも含まれると理解されたい。更に、多くの用途のために、DNA−ナノチューブ分子がナノ細孔を通って容易に移動され得る媒体を提供し、追加のバイアスコントロールを可能とするために更に図5Aの液体区画16,18をこの構成に含めることが好ましい。
【0071】
更なるコントロール技術では、ナノ細孔を通って移動するDNA−ナノチューブ複合体104を電気的にバイアスするために追加の電圧源114をも設けてもよい。慣用のトランジスターのゲートまたはベースをバイアスするのと同様に、DNA−ナノチューブ複合体のバイアスはナノチューブプローブ間の電子輸送に影響を及ぼす。DNA−ナノチューブ複合体に印加される電圧により、ナノチューブへのDNAカップリングの空間的近密関係が変化し、対応してナノチューブプローブ間で輸送された電子に利用されるDNA−ナノチューブ複合体のエネルギーレベルが調節される。従って、DNA−ナノチューブ複合体に印加される電圧は、ヌクレオシド塩基同定のための電子輸送測定の解像度及びコントラストを調節し、強化するためにコントロール可能に変更され得る。DNA−ナノチューブ複合体が移動する液体溶液の静電ポテンシャルも電子輸送を更にチューニングするために上記したように調節され得る。
【0072】
電圧をDNA−ナノチューブ複合体に印加すると、複合体のナノチューブはそれ自体ナノチューブプローブ24,26のように電子輸送プローブとして使用され得る。このシナリオでは、ナノチューブプローブ24,26の1つは、ヌクレオチド分析のための電子輸送が1つのナノチューブプローブ(例えば、プローブ24)とDNA−ナノチューブ複合体104のナノチューブ間で生ずるように排除され得る。この場合、電流を測定するための外部回路(例えば、図5Aの回路28)は1つのナノチューブプローブ24とカンチレバーアクチュエーター112間を接続されている。
【0073】
本発明は、図5A〜5Bのデバイスにより分析しようとするDNA−ナノチューブ複合体の種類及び特性を確認するための実験的構成を提供する。この実験的構成の実行の1例を図5Cに示す。図5Cに示すように、DNA−ナノチューブ複合体104が2つの電気的に接触している電極120,122間に懸架されている。電極120,122は適当な導体(例えば、金属性電極またはナノチューブ)として設けられ得る。電極120,122は、懸架されているDNA−ナノチューブ複合体104を電気的にバイアスするために回路において電圧源124と接続している。
【0074】
電気的に接触しているプロービングナノチューブ116は、例えばAFM112により設けられているカンチレバー110のチップ108上に載置されている。電圧源114は、チップ載置されているプロービングナノチューブ116を電気的にバイアスするために設けられている。この構成で、AFMはまず、チップ載置されているプロービングナノチューブ116が懸架されているDNA−ナノチューブ複合体104を配置できるように一般的なAFMモードで操作される。次いで、AFMは、プロービングナノチューブ116を懸架されている複合体104に沿ってスキャンしているとき、DNA−ナノチューブ複合体の電子像を記録するために走査トンネル顕微鏡モード(STM)で操作される。生じた像は、カップリングしたDNA鎖の骨格に沿って各塩基を幾何学的に表している。
【0075】
所要により、懸架されているDNA−ナノチューブ複合体の走査は乾燥状態の複合体を用いて実施され得る。この場合、例えば揮発性塩(例えば、酢酸アンモニウム)及び表面張力を乾燥過程で複合体構造を破壊する値以下に低下させるのに十分な量のメタノールを含む溶液から複合体を乾燥させることが好ましい。多くの用途のために、図5A〜5Bの配列決定構成で使用される液体溶液をシミュレートする液体環境でスキャンを実施することが好ましい。
【0076】
どんなスキャン環境でも、スキャンが進行するにつれて、DNA鎖に沿った各ヌクレオシド塩基に達したら該塩基の電子輸送特性を調べるためにプロービングナノチューブ116のトンネルバイアス電圧を調節することができる。次いで、この情報を、本発明に従って4つの異なるDNA塩基間のコントラストを高めるべく、図5A〜5Bの構成中のナノチューブプローブに印加されるバイアスを最適とするために使用する。
【0077】
上記した分子特性解析デバイスの例は、一般的には固体状態支持構造物、例えば参照により本明細書に組み入れるBrantonらの米国特許第6,627,067号“Molecular and Atomic Scale Evaluation of Biopolymers”に教示されている材料及び配置を用いて超小型電子材料から形成される構造物中で構成され得る。
【0078】
分子特性解析デバイス製作要件の特定の態様に転ずると、ナノ細孔が設けられている固体状態支持構造物は通常超小型電子材料、例えばシリコーンベース材料(例:単結晶ケイ素、窒化ケイ素またはポリシリコーン)を用いて形成されている。1つの特に適した配置で、ナノ細孔が設けられている支持構造物は支持構造物上に膜が形成されている(例えば、シリコン支持フレーム上に形成された窒化ケイ素膜)。この構成は図6に示されている。ここで、慣用方法で製作されたシリコン支持フレーム162上には懸架された窒化ケイ素膜160が設けられている。窒化ケイ素は、概して電気絶縁性であり、広範囲の液体による分解に対して耐性があるために特に適した材料である。しかしながら、ナノ細孔が設けられている膜に対して広範囲の他の材料が使用され得る。膜材料は通常化学的に不活性及び/または耐性であることが好ましい。材料の例にはシリカ、アルミナ、プラスチック、ポリマー、エラストマー、ガラスまたは他の適当な材料が含まれる。
【0079】
カーボンナノチューブ24,26は膜160上に下記する様式で設けられており、膜の中央にナノ細孔がある。ナノ細孔外周と接しているナノチューブの表面を除いて、電解分子を含む溶液と接触するデバイスの表面はすべて電気絶縁されている。電気絶縁状態の窒化ケイ素膜は本質的にナノ細孔壁を絶縁するために設けられている。ナノチューブ24,26及びケイ素支持フレーム162に電気絶縁材料(例えば、アルミナ、酸化ハフニウムまたは他の特定の絶縁材料)の層15を被覆することが好ましい。
【0080】
膜及び支持構造物中のナノ細孔としてサイジングされ得るアパーチャの形成の詳細を以下に検討する。通常、ナノ細孔は対象分子との相互作用のためにサイジングされる。すなわち、ナノ細孔は対象分子の原子幅に類似の直径を有している。例えば一本鎖ポリヌクレオチドをナノ細孔を通って移動させる用途のためには、約1〜20nmのナノ細孔直径が好ましい。ナノ細孔幾何構造に特別な拘束はなく一度にたった1個のポリマー分子しかナノ細孔を横断できないようにするのに十分であり且つ分子が拡張コンホメーションで、例えば二次構造なしに移動するものであればよい。一般的な円形幾何構造が好ましいが必須ではなく、非円形ナノ細孔プロフィールも使用され得る。
【0081】
更に、ナノ細孔の長さに特別の要件はない。例えば約0.1〜800nmのナノ細孔の長さが使用され得、例えば窒化ケイ素膜で加工処理することにより作成され得る。先に説明したように、ナノ細孔を横切る電子輸送に適合させるために、ナノ細孔の壁は電気絶縁性である。膜それ自体が絶縁材料であるならば、下記する考慮は別として追加のナノ細孔壁加工処理は必要でない。膜が電気導電性であるならば、ナノ細孔の壁を選択した絶縁層で下記するように被覆してもよい。
【0082】
図7は、図6のような微細加工した分子特性解析デバイスシステムを包装し、前記デバイスシステムを必要な回路に接続させるためのハウジング構成例130の概略図である。図7に示すように、ハウジング構成の例は、分子を有する電解液をナノ細孔を通って移動させる液体区画を提供するために例えばシリコーンゴム(PDMS)チップホルダー137中に液体チャネル136,138と一緒に液体リザーバー132,134を含む。微細加工した構造物(例えば、シリコーンフレーム140)が、例えばナノ細孔142が設けられている膜を支持するために設けられている。外部バイアス、測定回路154及びナノチューブプローブを電気的に接触させるためにナノチューブプローブ接触パッド接続150,152が設けられている。最後に液体が2つの液体区画から漏れることなく前記液体区間を電気的にバイアスすべく外部回路158を適用できるために密封接続156が設けられている。
【0083】
この配置で、システムのキャパシタンスを最小限とすべく支持構造物のシス(すなわち、上部)側面に対する液体の接触面積をできるだけ小さく(例えば、約1,000μm未満)なければならない。液体をナノ細孔のシス側面にデリバリーするためのチャネル136がナノ細孔の約300μm未満内にデリバリーされるように構成されることが好ましい。チャネルは、好ましくは約200μm未満の直径を有し、気泡なしに液体区画を満たすのに必要なサンプル容量を最小とするために好ましくは約200μm未満の直径を有するチューブに接続している。
【0084】
本発明の分子特性解析デバイスの製作方法のより詳細に転ずると、ナノ細孔を適当な方法で支持構造物中に形成し得る。支持構造物が膜として設けられている場合、膜は慣用の方法により、例えば参照により組み入れる米国特許第6,627,067号に教示されているように形成される。次いで、最初のアパーチャを膜に形成し、その後ナノ細孔の直径を最終的により小さくするために膜を加工処理する。本発明に従う1つの技術では、最初のアパーチャを膜に例えばイオンビームミリング、電子ビームエッチング、プラズマエッチング、ウェットエッチング、または膜の厚さを貫いてアパーチャを形成するための他の選択技術により形成する。次いで、最初のアパーチャ直径を選択されたプロセスにより縮小させる。その技術の1例では、アパーチャ直径を参照により組み入れるGolovchenkoらの米国特許出願公開第2005/0006224号“Pulsed Ion Beam Control of Solid State Features”に教示されているようにイオンビーム彫刻の方法によりナノ細孔の直径に縮小する。
【0085】
ナノ細孔を形成する方法において、ナノ細孔の長さに沿ったナノ細孔の表面は、ssDNAがナノ細孔を通って移動するときssDNAがナノ細孔表面に吸着するのを最小限にするかまたは抑制すべく加工され得る。各種生体分子(例えば、ssDNA)が鎖のアニオン性骨格を通って親水性及びカチオン性表面のいずれかに結合する傾向があったり、ヌクレオチドを通って疎水性表面に結合する傾向があることは公知である。従って、ナノチューブ連節ナノ細孔構成の製作方法においてナノ細孔が形成されている支持構造物を対象分子(例えば、ssDNA)に不活性な材料から作成するか、またはナノ細孔及び支持構造物を対象分子に対して不活性な材料層で被覆することが好ましい。よって、分子を有する電解溶液と接触するとき中性の表面電荷を有する絶縁表面層をナノ細孔上に設けることが好ましい。分子を有する電解溶液がpH7またはその近くにあるならば、酸化アルミニウムが理想的な被覆材料である。分子を有する電解溶液がpH≧9であるならば、分解することなく高pH環境に無限に耐えるので代わりに酸化ハフニウムが好ましい。
【0086】
ナノ細孔を選択材料層で被覆しようとするときには、原子層堆積(ALD)の方法が堆積技術として好ましい。ALDは、正確な1回のオングストローム厚さコントロールで高いアスペクト比の構造物でも多くの異なる材料の高い絶縁保護段差被覆(conformal step coverage)を与えながら、電荷及び表面の材料特性を変化させることができるので、ナノ細孔製作と併せて特に好ましい。加えて、ALD方法は、以下に詳記するように孔径をコントロールするため及びナノチューブ電極を分子検出領域から絶縁させるために使用され得る。
【0087】
酸化アルミニウムが選択被覆層材料であるとき、それは、例えば原子層堆積(ALD)により、例えば参照により組み入れるBrantonらの米国特許出願公開第2005/0241933号“Material Deposition Techniques for Control of Solid State Aperture Surface Properties”に教示されているような単相堆積をコントロールできる方法で堆積され得る。
【0088】
ナノ細孔上にフィルムをALDにより作成する方法の1例において、第1方法ステップではフィルムを堆積させようとする構造物の表面を、1つ以上の選択分子前駆体と反応するように作成する。多くの用途のために、ALD方法用に金属前駆体が使用される。例えば、ALD金属前駆体はML(ここで、MはAl、Ha、Mg、W、Ta、Siまたは他の金属であり、LはCH、Cl、F、C、または揮発性分子を生成する他の原子または分子リガンドである)として用意され得る。例えば、ナノ細孔上にAl層を堆積するためには、アルミナ層を形成するための金属前駆体に対して高い反応性であるヒドロキシル化表面を形成すべくALD堆積の直前に構造物をまず例えばUV/オゾンに曝す。
【0089】
ヒドロキシ基が構造物の表面上に生成したら、表面上で生成したヒドロキシと反応させるために前駆体(例えば、アルミナを堆積させるためには金属前駆体トリメチルアルミニウム[Al(CH](TMA))が使用され得る。すなわち、Al(CH分子を含むガス状前駆体を表面−OH部位と反応させるために用意する。この反応により、揮発性CH4ガス分子が生じ、最初の表面−OH部位でAl(OH)、(CH)またはAl(OH)(CHが形成される。そのようなアルミナ形成方法のための適当な反応ゾーン温度は約200〜約300℃である。
【0090】
Al(CHとヒドロキシ基の反応は、反応中最初の表面リガンド−OHが消費され、表面に金属前駆体と更に反応できないLリガンドが占めるようになる点で自己終結性である。この自己限定性反応プロセスにより、構造物及び細孔表面上に材料の単層未満またはそれ以上の堆積が生ずる。次のALD方法ステップで、残存する未反応のAl(CH前駆体及び生じたCHガスを反応チャンバから、例えば乾燥窒素または他の適当なキャリアガスを用いてフラッシュさせる。次の方法ステップで、堆積した層の表面を選択前駆体と反応性とすべく水蒸気を反応チャンバに導入する。このアルミナ堆積例では、水蒸気を露出CH基と反応させるために用意する。水蒸気と有効CH基との反応によりCHガスが遊離し、各−CH部位で−OH基が結合し、こうして新しくヒドロキシル化された表面が生ずる。このヒドロキシル化プロセスは、すべての−CH部位が水蒸気と反応したら自己終結する。このプロセス中、隣接するAl(OH)部位は架橋して水分子及び連結したAl−O−Alネットワークが生成する。
【0091】
次の方法ステップで、残存する水蒸気及び遊離したCH基を例えば上記したように窒素フラッシングステップを用いて排出させる。これにより1つのALD反応サイクルが完了し、構造物並びに細孔の表面及び側壁上にアルミナ層が生成される。次いで、堆積した層を次のサイクルの水蒸気と反応させた後、Al(CHを反応のために反応チャンバに導入する。1つのALD反応サイクルにおける各方法ステップの期間は、過剰の前駆体または排出物を与えることなく十分な反応時間を得ることができるように選択する。例えば、アルミナ堆積方法の例では、1つのALDサイクルは金属前駆体蒸気を1秒間反応チャンバに流した後、5秒間窒素をパージし、次いで水蒸気を1秒間流し、その後窒素を5秒間パージするとして使用され得る。例えば単層の厚さの約1/3であり得るアルミナ層が前記した各サイクル後形成される。
【0092】
アルミナ層のALDに対する上記方法条件で、サイクル回数の総数に関係なくAlの堆積速度は0.99±0.12Å/反応サイクルであることが実験的に決定された。この堆積速度は20〜500サイクルで確証された。よって、2nm直径のナノ細孔から出発して、ナノ細孔直径は5サイクルのAl堆積プロセスでたった約±1.2Åの誤差で1nmに縮小され得る。
【0093】
本発明が提供する代替技術では、例えば参照により組み入れるGleasonらの米国特許第5,888,591号“Chemical Vapor Deposition of Fluorocarbon Polymer Thin Films”に教示されているようにテフロン(登録商標)様層をナノ細孔及び支持構造物の表面に堆積し得る。
【0094】
固体状態ナノ細孔にナノチューブプローブを連節するためには、選択された支持構造物においてナノチューブをナノ細孔と一体化させることが好ましい。1つの製作技術では、カーボンナノチューブを参照により組み入れるGolovchenkoらの米国特許出願公開第2005/0007002号“Carbon Nanotube Device Fabrication”に教示されているように対象支持構造物上で直接合成する。
【0095】
この技術では、触媒特性が正確にコンロールでき、それに対応してナノチューブ成長を正確にコントロールできるので、ナノチューブプローブを構成するために水平方向に配向し、支持体表面に対して平行な単層ナノチューブが選択的に合成される。この方法で、固体触媒材料の蒸着、スパッタリング、分子ビームエピタキシー、ゾルゲル形成、電子ビーム蒸着、熱蒸着または他の選択蒸着方法により触媒層を支持構造物上に形成する。どんな蒸着方法を選択しても、選択した触媒材料の幾つかの単層しか膜または支持基板上に堆積されないように蒸着フィルムの被覆率を非常に低くできるようにコントロールすることが好ましい。
【0096】
蒸着方法の1例では、選択厚さのFe触媒層を形成するために、Feホイルを溶接したタングステンボートスポットを用いたFeの熱蒸着を真空条件下で(例えば、約10−5または10−6トールの圧力下で)実施し得る。どんな触媒材料及び蒸着方法を使用しても、生ずる触媒層の厚さが約2nm未満であることが好ましく、または触媒層が約8×1015原子/cm以下の層被覆率を特徴とすることが好ましい。触媒層が厚くなると触媒層から水平に合成されるナノチューブの直径が対応して大きくなり、触媒層厚さの閾値を超えると単層よりも多層の水平ナノチューブが形成される。例えば2nm以下の厚さの薄い触媒層でも単層ナノチューブを予測可能に、信頼可能に形成するために十分であると理解される。
【0097】
製作シーケンスの1例では、まず接触パッドを選択支持構造物上に慣用方法で、例えばナノチューブプローブとのオーム接点を形成するためのパラジウム層として形成する。接触パッドは、ナノ細孔を配置しようとする場所の近くに形成する。次いで、ナノチューブ触媒層を一層以上の金属接触パッド層の上に形成する。次いで、パターン化フォトレジスト層を慣用のリフトオフ技術を用いて除去すると、パターン化触媒/電極領域が生ずる。この技術は、ナノチューブプローブ接触パッド及び触媒層を1ステップでパターン化することができるので特に有利であり得る。従って、触媒領域の範囲をナノチューブプローブ接触パッドの範囲と一致させることが許容され得る用途のためにはこの方法が好ましい。
【0098】
所与の用途のために触媒領域が接触パッドを完全に被覆しないことが好ましいならば、その場合接触層の一部から触媒材料を除去するために追加のリソグラフィー及びエッチングシーケンスを実施し得る。方法の1例では、触媒層を例えばパターン化フォトレジスト層でマスキングし、除去しようとする触媒層の領域を露出させる。次いで、ドライエッチング方法(例えば、プラズマエッチング、イオンビームエッチングまたは他の技術)を使用して望ましくない触媒層領域を除去する。多くの触媒層エッチング方法が下にある金属電極材料の上の触媒材料をエッチングする際に余り選択的でないこともあることが認識されている。従って、金属接触パッド材料の完全性の維持を確保するために触媒エッチング方法をタイムドプロセス(timed process)としてまたは他のコントロールを用いてコントロールすることが好ましい。
【0099】
代替方法では、ナノチューブプローブ接触パッド層のために使用したものとは別のステップのシーケンスで触媒層をパターン化し、エッチングし得る。例えば、接触パッド層を例えば上記した慣用のリフトオフ法によりパターン化した後、触媒層を第2の別のリフトオフ法により堆積し、パターン化し得る。このシナリオで、フォトレジスト層を生成した接触パッド上に形成し、パターン化して、ナノチューブ触媒層の領域を与えたいところに接触パッドの領域を露出させる。次いで、触媒層を、好ましくは上記したような選択蒸着法によりブランケット堆積させる。次いで、フォトレジスト層のリフトオフを実施して触媒層の一部を除去して、接触パッドの頂上にパターン化触媒領域を生じさせる。
【0100】
触媒層をリフトオフ法によりパターン化することは必須ではない。その代わりに、触媒層を接触パッド上にブランケット堆積させ、その後例えば触媒層の上に適用されているフォトレジスト層をリソグラフィックパターン化することによりエッチングし、パターン化して、別個の触媒アイランドを規定する。次いで、フォトレジストパターンにより露出した触媒領域のエッチングを慣用方法で実施し得る。触媒リフトオフアプローチのようにこのアプローチは、必ずしも電極接触パッド全体を横切って広がっておらず、従ってナノチューブ合成の位置をより正確に規定する触媒アイランドを正確に形成することができるという作用効果を有している。
【0101】
接触パッド及び触媒領域を生成するためにどんな方法シーケンスを使用しても、本発明によれば、意図するアパーチャ位置を横切って接触パッド及び触媒領域を広げることにより、接触パッド及び触媒領域を貫いてアパーチャを生成させて接触パッド及び触媒領域をアパーチャの端部と自己整列させることが好ましい。こうすると、アパーチャにより分離されている2つの接触パッドが生ずる。触媒層領域もアパーチャ端部に隣接し得、接触パッドの広い部分に広がっていなくてもよい。前記条件は、上記した各種触媒層エッチングシーケンスにより生じ得る。どんな触媒パターンが望ましくても、触媒領域の位置及び範囲を正確に規定できるリソグラフィック方法により作成することが好ましい。このリソグラフィック触媒規定と薄い触媒層の蒸着の組み合わせでナノチューブを正確に合成することができる。
【0102】
この触媒領域のリソグラフィック規定は触媒層をエッチングする必要がない。例えば、触媒層のブランケット堆積を上記したように実施し、その後キャッピング層を堆積し、パターン化し得る。キャッピング層パターンによりナノチューブを合成したいところに触媒層の領域を露出させ、触媒層の残りはナノチューブ合成を抑制するために被覆されている。この構成で、触媒層それ自体はエッチングされないが、リソグラフィーによりナノチューブ合成のための触媒露出を正確に位置づけることができる。
【0103】
触媒層領域を接触パッド上の選択部位に形成したら、その上にナノチューブを設けたい膜または他の支持構造物を貫いてアパーチャを形成する。方法の1例では、各種層をアパーチャと自己整列できるように触媒、接触パッド及び膜材料の集束イオンビームミリングを上記した方法で直接実施する。生じた構造物により、アパーチャは接触パッド及び触媒領域と整列している。或いは、エッチングしようとする各層のリソグラフィックパターン化は連続して実施され、1つ以上の層を所与のエッチング方法によりできるだけ一緒にエッチングする。更に、所与の用途に適した配列または他の構成で所与の基板、膜または他の支持構造物に複数のアパーチャを形成してもよい。
【0104】
1つ以上の選択アパーチャが生成したら、ナノチューブ合成を基板または膜上で実施し得る。ナノチューブ合成は、アパーチャの端部または接触パッドと接続するために各アパーチャを橋掛けする1つ以上のナノチューブを生成させるべく特に実施される。合成方法の1例では、ナノチューブ成長を適当なシステム(例えば、電気炉システム)で実施する。ナノチューブを成長させたい基板を電気炉システムに入れ、システムの温度を所望の成長温度まで上昇させる。成長温度は例えば約600〜1500℃、好ましくは約900℃であり得る。この温度上昇中、接触パッド材料、触媒材料、膜及び/または基板材料、及び構成中に含まれる他の材料の酸化を抑えるために不活性ガス(例えば、アルゴン)を流すことが好ましい。
【0105】
所望の合成温度に達したら、ガス流を炭化水素ガス流(例えば、メタンガス流)に切り替える。メタンガス流を約100〜約400sccm、好ましくは約200sccmの流速に維持することが好ましい。本発明によれば、この比較的遅いガス流で、合成したナノチューブ及び基板域の上及びその周りでの非晶質炭素形成が実質的に抑制されることが見出されている。その結果、本発明によれば、非晶質炭素形成を抑制するためにメタンに加えて水素ガスまたは他のガス流を配合する必要はない。本発明によれば、合成したときのナノチューブの配向に対するガス流の方向の影響は無視でき、従って基板をガス流に対して特別に配向させる必要はないと理解される。
【0106】
触媒材料のメタンガス流暴露は、選択直径及び量を有するナノチューブを生成するために所与の用途に必要な時間実施し得る。多くの用途のために、単層ナノチューブを反復合成するためにはメタンガス流暴露を10分以下実施することが好ましい。こうしたことが必須ではない場合、ガス流は所望のナノチューブ壁厚さに対応する選択期間継続させ得る。しかしながら、ナノチューブ及び周りの構造物上での非晶質炭素の生成を減らす点でナノチューブ合成時間を最小限とすることが好ましいことが見出された。
【0107】
この方法で、ナノチューブは、以下の方法でナノ細孔中に形成したいアパーチャの場所またはその近くの支持構造物の表面上で選択的に合成され得る。合成したナノチューブの電気的特徴は、選択ナノチューブがプローブとして機能するために必要な電気的特性を備えていることを確保するために好ましいものであると認識される。ナノチューブを所望するナノ細孔の場所の近くで合成した所望の直径及び電気的特性を有するナノチューブをその後例えばAFMカンチレバーチップにより手動で所定位置に押し入れることもできる。
【0108】
チップ載置したDNA−ナノ細孔複合体をナノ細孔を通って移動させるためにナノチューブをアクチュエーター構造物のチップ(例えば、AFMカンチレバービームのチップ)に載置させたい用途の場合、本発明は、参照により組み入れるGolovchenkoらの米国特許出願第11/008,402号“Patterning by Energetically−Stimulated Local Removal of Solid−Condensed−Gas Layers and Solid State Chemical Reactions Produced With Such Layers”(WO2007/044035に対応)に教示されているように載置チップ上に選択ナノチューブ長さを生成する技術を提供する。この技術は、ナノチューブプローブとしてまたはDNA−ナノチューブハイブリッド複合体中で作動させるために所望のナノチューブ長さを生じさせるためにも適用され得る。
【0109】
前記した方法シーケンスの第1ステップでは、構造物の電気的及び熱的状態をコントロールするために、電気的及び熱的な接続を可能にする構造物ホルダー上に設けられ得るナノチューブホルダーにナノチューブを設ける。好ましくは、ナノチューブに熱的及び電気的接続を与え得るようにナノチューブホルダーを構造物ホルダーと組み合わせてもよい。ナノチューブホルダーは、意図する用途に応じてナノ細孔を通ってコントロールして移動させるためにナノチューブを載置し、作動させ得る例えばAFMチップとして、または別の適当な機械的に剛性な構造物(例えば、カンチレバー構造物)として設けられ得る。
【0110】
ナノチューブはいろいろな方法でナノチューブホルダーに配置され得る。多くの用途で、ナノチューブをその場で上記した技術に従ってホルダー上で成長させることが好ましい。しかし、ナノチューブを成長させるときカーボンナノチューブをナノチューブホルダー上に配置させるために適当なカーボンナノチューブ合成技術が使用され得る。或いは、カーボンナノチューブをナノチューブホルダー以外の位置で合成した後ホルダーに移動または堆積させてもよい。或いは、ナノチューブを慣用の方法で基板から垂直方向に成長させた後、チューブの長さに沿った点でホルダーをナノチューブと接触させることによりホルダー上に直接ピックアップさせてもよい。ナノチューブのホルダーへの固定付着は、例えばホルダーとナノチューブ間の接着メカニズムとして作用し得るカーボン残渣を蓄積させるべくホルダーに電子ビームを当てることにより生じさせ得る。この付着技術は挑戦的である場合があると認識されている。従って、ナノチューブを直接当該ホルダー上で現場成長させることが好ましい。
【0111】
ナノチューブをナノチューブホルダー上に配置したら、ナノチューブ及びホルダーを加工チャンバ中の構造物ホルダー上に置く。次いで、ナノチューブを約130K未満のナノチューブ温度及び約10−4T未満の局所圧力下で水蒸気に曝すことにより固体氷凝縮物層をナノチューブ上に形成する。こうした条件下で、1μmくらいの厚さを有する固体氷凝縮物マスキング層をナノチューブ上にコントロール可能に堆積させることができる。固体氷凝縮物マスキング層の形成はナノチューブのような3次元構造物に対してかなり指向性であり得、従ってプロセスチャンバ上の部位の蒸気インジェクタをナノチューブホルダー位置に近接させることが好ましいと考えられることを見出した。マスキング層の形成はその場で、例えば蒸気凝縮プロセスが進行するときナノチューブをSEMイメージングすることによりモニターされ得る。
【0112】
マスキング層をナノチューブ上に形成したら、ナノチューブを短くするために切断しようとするナノチューブに沿った点に相当するマスキング層の位置にエネルギービームを当てる。出発長さを測定し、チューブの長さを短くするために切断しようとするチューブの点を同定するためにナノチューブをイメージングすべくSEMまたは他のイメージングシステム及び技術が使用され得る。次いで、ナノチューブ切断のために望ましい位置ぴったりにと固体凝縮物マスキング層を局所的に除去するためにエネルギービーム、例えば3KeV,50pA電子ビームまたはイオンビーをその点に当てる。
【0113】
固体凝縮物マスキング層の局所除去が完了し、その下のナノチューブの場所が露出したら、ナノチューブそれ自体を切断する。固体凝縮物層を局所除去することにより露出したナノチューブの長さに沿った断面でナノチューブにエネルギービームを当てて、ナノチューブを所望の長さに切断する。ナノチューブを切断するために使用するエネルギービームは、固体凝縮物マスキング層を局所的に除去するために使用したエネルギービームと同じであっても異なっていてもよい。ナノチューブ切断ビーム種がいずれであっても、固体凝縮物マスキング層はナノチューブを保護するように作用し、或いはまがったり、または切断ビーム種を露出したナノチューブ断面に当てた後、露出した断面に焦点を合わせるときエネルギービームから外れるのを防止するように作用する。更に、固体凝縮物マスキング層はナノチューブを露出断面で切断するときナノチューブ剛性を保護し、維持するように作用する。その結果、高度に集束する切断ビーム種は必要としない。局所的に除去された固体凝縮物マスキング層の線幅を使用することによりナノチューブ切断プロセスの分解能を設定することができる。
【0114】
上記シナリオの1例では、カーボンナノチューブ上の固体氷凝縮物マスキング層の領域を局所的に除去するために電子ビームが使用され得る。例えば、ナノチューブ上に128Kの温度及び10−4Tの圧力で形成された氷マスキング層を局所的に除去するためには上記した3KeV,50pAビームが使用され得る。次いで、氷マスキング層を局所的に除去したナノチューブの位置でナノチューブを切断するためにイオンビームが使用され得る。例えば、30KeVのエネルギー及び10pAのアンペア数を有するGaイオンビームがナノチューブを切断するために使用され得る。ここで、固体氷凝縮物層でナノチューブを保護しながらナノチューブを切断するために余り集束されないイオンビームが使用される。
【0115】
ナノチューブを切断したら、固体凝縮物マスキング層を除去し得る。多くの用途のために、マスキング層を固相から蒸気相に逆変換することにより除去することが好ましい。前記蒸発により、ナノチューブ上の残渣の形成及びナノチューブに対する起こり得る損傷が最小限となる。方法の1例では、ナノチューブの温度を当該プロセス圧力で昇華させるのに十分な温度に上昇させることにより氷凝縮物マスキング層を昇華させる。例えば、約10−4Tの圧力では、少なくとも約180Kの温度で氷凝縮物層を昇華させることができる。このようにして容易に曲げられまたは損傷を受けるナノチューブに対して実質的に残渣または害を与えることなく氷凝縮物層が蒸気相に完全に除去される。凝縮物マスキング層は、湿潤化学並びにプラズマまたは他の蒸気方法を含めた先に説明した適当な方法により除去され得る。この除去ステップで、選択した長さのナノチューブが生ずる。
【0116】
選択した分子分析デバイス構成を製造するために上記した各種製作方法が所要により使用され得る。下記実施例は広範囲のデバイス構成を製造するための製作技術を説明する。
【実施例】
【0117】
(実施例1)
図8A〜8Bを参照すると、本発明に従う電子分子分析デバイスを製造するための製作シーケンスの第1例では、支持構造物200(例えば、厚さが約200nmの窒化ケイ素膜)を慣用の方法で、Golovchenkoらの米国特許出願公開第2005/0006224号“Pulsed Ion Beam Control of Solid State Features”に教示されているように用意する。図8Aのトップダウン平面図に示すように膜には例えば電子ビームエッチング、イオンビームミリング、ウエットエッチング、プラズマエッチング、イオンビーム彫刻または他の適当な方法により出発アパーチャ205が設けられている。
【0118】
1例では、出発アパーチャは通常約例えば50〜100nmの直径を有する円形である。図8Aの平面図及び図8Bの側面図に示すように、支持構造物200には構造物の上面に上部トレンチ、すなわち溝208、構造物の底面に下部トレンチ210が設けられている。上部及び下部トレンチ208,210は相互に直交しており、アパーチャ205は2つのトレンチの交点に形成されている。この配向により、以下に説明するようにナノチューブプローブ配置のために自己整列が可能である。
【0119】
上部及び下部トレンチは、集束イオンビーム方法を用いてまたは標準パターン化マスキング及びエッチング手順により生成され得る。多くの用途のために、トレンチは約100nm未満の幅、支持構造物膜の厚さの約1/2の深さとして形成され得る。所与の手順で生成されるトレンチの正確な深さは、所与のバッチの窒化ケイ素膜に対する手順を検定するために、一連の段階的に深くなるトレンチ(例えば、200nm厚さの膜の場合50nm、70nm、90nm、110nm等のトレンチ深さ)を試験することにより決定され得る。次いで、所望の直径(例えば、約50〜約100nm)の出発ナノ細孔を生成するトレンチの深さはその後の製作のために開ループ様式でルーチンに使用され得る。
【0120】
この支持構造物の構成が完了したら、ナノチューブ212をアパーチャ205を横切って上部トレンチ208に設ける。ナノチューブ212は、アパーチャでナノチューブを現場合成することにより、またはアパーチャに自由ナノチューブを配置することによりトレンチのアパーチャ位置に配置し得る。ナノチューブの現場合成は上記した方法で実施され得、例えば上部トレンチに触媒堆積し、パターン化した後CVDナノチューブ合成をする。或いは、非水性溶液中で用意した予備合成ナノチューブを支持構造物の表面上に分配し、選択したナノチューブをトレンチに機械的に輸送させる。
【0121】
この選択したナノチューブの機械的輸送は、予め特定した位置に正確に輸送及び配置できるように実験的に実証されている。前記した輸送及び配置のための1つの技術では、ナノチューブを表面を横切ってトレンチに下向きにアパーチャの位置にローリングさせるためにAFMチップを使用する。明瞭とするために、図8の構成要素は縮尺どおりに示されていないことに留意されたい。ナノチューブ直径は典型的にはトレンチの直径及び幅よりも何倍も小さい。加えて、ファンデルワールス力のような表面引力作用により、ナノチューブが表面上の適所に保持される傾向にある。その結果として、ナノチューブはAFMチップによりうまくコントロールされ、表面を横切って、トレンチの壁を下方にアパーチャの位置の所望の場所にローリングされ得る。
【0122】
選択したナノチューブは、上記したように合成前に形成した接触パッドにより電気的に接触され得、またはその後例えばA.Javeyら,Nature,424:654(2003)及びA.Javeyら,Nano Letters,4:447(2004)に記載されているように例えばパラジウム接触パッドを形成した後、これを慣用の方法によりオフチップ回路に接続したより大きな金接触パッドに接続することにより電気接触させ得る。この方法では、パラジウムをマスクを介してアパーチャ外周の近くの所望位置でナノチューブ上で蒸発させる。
【0123】
図8C〜8Dを参照すると、次の方法ステップで、ナノチューブ−支持構造物アセンブリ上に選択したコーティングを堆積させる。特に適した堆積技術は上記した原子層堆積(ALD)方法である。材料の堆積がコーティングを堆積させようとする材料の表面に近づきやすいヒドロキシまたは他の官能基と気相分子間の化学的相互作用に厳密に依存しているので、ALD方法が特に適している。前記官能基が存在しないと、気相分子は堆積しない。合成したばかりのカーボンナノチューブは一般的には気相材料を堆積させるために必要なヒドロキシまたは他の官能基を有する官能化表面を持っていない。よって、絶縁材料(例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウム)をシリコーン、窒化ケイ素及びナノチューブを含むデバイス構成上にALDにより堆積するならば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムは新しく形成された酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウム表面を含めた構造物のすべての表面での化学反応により均一に成長するが、成長させるときその表面にヒドロキシ基のような官能基を有していないカーボンナノチューブからは成長しない。この条件を利用して、非支持ナノチューブ上にまたは前記チューブから直接ではなく(例えば、細孔またはボイド上に懸垂しているナノチューブの領域上ではなく)、支持構造物上に材料を部位特異的に堆積させることができる。材料がナノチューブ上に堆積したとしても、以下の製作シーケンスが使用され得る。
【0124】
1つの上記シナリオで、選択した数のALDサイクルを上記したように実施し、アパーチャの壁及びトレンチ210を含めた支持構造物200のすべての表面上に材料を堆積させる。選択材料の堆積は広がり、窒化ケイ素または新たに成長したALD材料により支持されているかまたはその近くのナノチューブの領域を被覆し得るが、それ自体ナノチューブ表面から生じない。材料堆積を継続させると、アパーチャでの堆積材料の蓄積によりアパーチャの範囲が縮小する。従って、選択した最終ナノ細孔直径(例えば、約2〜約10nmの直径)が生ずるまで堆積プロセスを継続させる。ALD法の非常に正確な特性のために、各ALDサイクルにより生ずる材料厚さは所与の支持構造物及びナノチューブ配置及び寸法に対して正確に特徴づけられ、ナノチューブの上面が被覆され、選択した最終ナノ細孔直径を達成するようにコントロールされ得る。例えば、50nmの出発アパーチャから、各サイクルで層1Åの層厚さを付加して220ALDサイクルを実施すると、直径6nmの最終細孔が生ずる。
【0125】
ALD法により最終ナノ細孔直径が得られたら、ナノ細孔の外周にナノチューブプローブ構成を設ける。図8E〜8Fを参照すると、この構成は、ナノ細孔外周に接している2つのナノチューブ端部216,218を生成するように最終ナノ細孔を横切って露出しているナノチューブを切り開くことにより得られる。ナノチューブ切断技術の1例では、エネルギービーム220(例えば、高エネルギー電子ビーム、または好ましくはイオンビーム)を支持構造物の底部または上部からナノ細孔を通して当てる。エネルギービームにより、ナノ細孔から露出している非保護ナノチューブ材料が除去され、酸化アルミニウムまたは他のALDコーティングはナノチューブ及び支持構造物のALD被覆領域をビームから保護する。よって、ナノ細孔は、ナノ細孔を横切ってナノ細孔から除去しようとする裸のナノチューブを露出させるエッチマスクとして作用し、構造物の残りは最終ナノ細孔の直径内に存在しないALDコーティングにより保護される。裸のナノチューブが最終ナノ細孔を横切って最終ナノ細孔から除去されたら、ナノ細孔外周に接するナノチューブプローブの端部を有する図1Aのような機能的分子特性解析デバイスが得られる。
【0126】
(実施例2)
図9A〜9Cを参照すると、電子分子分析デバイスを製造するための別の製作シーケンスでは、支持構造物200(例えば、窒化ケイ素膜)に実施例1のようにアパーチャ205を設ける。直交トレンチ208,210のそれぞれが支持構造物の上面及び底面に設けられており、アパーチャは実施例1のようにトレンチの交差点に位置している。
【0127】
この構成を適所に設けたら、ナノチューブ225を実施例1のように下部トレンチ225に配置する。図9Aはアパーチャを横切ったナノチューブを示している構造物の上部平面を描いており、図9Cはアパーチャを横切った底部トレンチにおけるナノチューブを示している構造物の底部平面を描いている。
【0128】
図9Bの端面図に示されているように、次の方法ステップで、エネルギービーム226(例えば、イオンビーム)を、アパーチャを通して膜の上側面から、製作シーケンスの最後に最終ナノ細孔外周に接して残る位置でナノチューブを切断するように選択された角度で、例えば図示した特定幾何構造の場合約64度の角度で向ける。所与の幾何構造に対して対応の角度が決められる。この角度をつけたビームを入射させ、ビームの経路にあるアパーチャ中のナノチューブの部分を除去する。生じた構造を図9D〜Fに示す。イオンビームの経路になかったアパーチャ中のナノチューブ225の部分228はアパーチャに突出して残っている。
【0129】
図9G〜Iを参照すると、次の方法ステップで、アパーチャを横切って中心から外れて延びるように上部トレンチ208に第2ナノチューブ230が設けられる。この第2ナノチューブ230は、上記実施例1のようにトレンチの部位で現場合成しても、またはトレンチに機械的に配置してもよく、所望によりアパーチャを横切って中心から外してもよい。いずれの場合も、所望により第2ナノチューブ230はアパーチャの中心に配置されておらず、その代わりに図9G〜Iに示されているように側面が最終ナノ細孔の外周にちょうど接するようなトレンチの点に配置されている。
【0130】
第2ナノチューブを適所に設けたら、図9J〜Lに示すように支持構造物上に上記したように例えばALDにより選択材料を堆積させる。上記実施例1のように、堆積した材料が非支持ナノチューブの表面を除くすべての表面に層232を形成し、図9Jに示す構造物が生ずる。
【0131】
図9Kに示すように、材料堆積が進むと、アパーチャ直径は堆積材料により縮小する。堆積材料が蓄積すると、第1ナノチューブ225の突出部分228及び第2ナノチューブ230の上面が徐々に被覆される。選択したナノ細孔直径に達するまで材料堆積を継続し、突出ナノチューブ部分228の端部及び第2ナノチューブ230を最終ナノ細孔外周に位置している。この状態を可能とするために、図9Lに示されているようにちょうどナノ細孔外周の領域を除いて突出ナノチューブ部分228及び第2ナノチューブ230が材料で被覆されている点で所望のナノ細孔直径が確実に得られるように所与の支持体及びナノチューブ配置に対して選択した堆積方法(例えば、ALD)が特徴づけられる。
【0132】
この堆積が完了したら、図2A〜2Cの配置を有する完全に機能性の分子特性解析デバイスが製造される。図9Iに戻って参照すると、突出部分228に対向する第1ナノチューブ225のナノチューブ部分234は電気的に接続されておらず、図2Bに示す回路28,52の一部を形成していない。突出ナノチューブ部分228及び第2ナノチューブ230は、端部配向及び側部配向でナノ細孔を通って移動されるDNAのコントロール及び分析のために2つの回路に接続されている2つのナノチューブプローブを構成している。
【0133】
(実施例3)
実施例2の製作シーケンスは、上記した図3A〜C及び図4Aの分子分析デバイスを製造するために敷衍され得る。図10A〜Cを参照すると、この敷衍プロセスでは、図9A〜Cに示すように底部トレンチ210と上部トレンチ208の交差点にアパーチャ205を有する支持膜200の底部トレンチ210にナノチューブ225が設けられている。次いで、実施例2及び図9Bのようにエネルギービームを使用してナノチューブ225の一部を除去すると、図10A〜Cに示すようにアパーチャにナノチューブの突出部228が生ずる。次いで、図9G〜I及び10D〜Fに示すように第2ナノチューブ230を所望によりアパーチャの外周に、支持構造物の上部トレンチ208に配置する。
【0134】
図10G〜Iを参照すると、第3ナノチューブ234が、支持構造物200の上面上に、上部トレンチ208中の第2ナノチューブ230と直交するように、アパーチャの外周の位置に配置されている。いずれも上記されているように、この第3ナノチューブ234を現場合成しても、または選択位置に手動で配置してもよい。
【0135】
図10J〜Lを参照すると、最終方法ステップで、選択材料を支持構造物上に例えばALDにより上記したように堆積させる。堆積材料は支持構造物の上面及び上部トレンチ上に層236を形成するが、図9Jに示すように第2ナノチューブ230を起点としない。第3ナノチューブ234は、ナノチューブ表面が官能化されておらず、アパーチャ中の第3ナノチューブの周りに膜材料がないためにアパーチャの領域は被覆されていないままである。その結果、第3ナノチューブはアパーチャの外周で露出されたままである。
【0136】
堆積材料層232は、図10Lに示されているように支持構造物の底面も覆っている。図10Kに示されているように、材料堆積が進むにつれてアパーチャ直径は堆積材料により縮小する。堆積材料の蓄積により、第1ナノチューブ225の突出部分228及び第2ナノチューブ230の上面が徐々に被覆される。選択したナノ細孔直径に達するまで材料堆積は続けられ、突出ナノチューブ部分228の端部及び第2ナノチューブ230は最終ナノ細孔外周に位置している。この状態を可能とするために、図10Lに示されているように、堆積過程でちょうどナノ細孔外周の領域を除く突出ナノチューブ部分228及び第2ナノチューブ230が材料で被覆されている点で所望のナノ細孔直径が確実に得られるように所与の支持体及びナノチューブ配置に対して選択した堆積方法(例えば、ALD)が特徴づけられる。
【0137】
堆積が完了すると、側面配向移動コントロールナノチューブ234、端部配向ナノチューブプローブ228及び側面配向ナノチューブプローブ230を有するナノ細孔が設けられる。この例の製作シーケンスにより、側面配向ナノチューブプローブ230に直交している移動コントロールナノチューブ234が生ずる。図4Aには、移動コントロールナノチューブ65が側面配向ナノチューブプローブ50と平行しているデバイス配置が示されている。いずれの配置も本発明に従って使用され得、この例は各種構成が選択した製作シーケンスを用いて得られ得ることを立証している。
【0138】
図3A〜3Cの配置のように移動コントロールナノチューブと共に2つの端部配向ナノチューブプローブを使用したいならば、実施例1及び3の製作シーケンスを組み合わせ得る。図8C〜8Fの堆積及びナノチューブ除去ステップの前に、図10G〜Iの第3ナノチューブ234を支持構造物の上面に設けてもよい。その後、堆積及びエッチングステップを実施すると、図3A〜3Cの構造物が製造され得る。
【0139】
(実施例4)
本発明に従って分子分析デバイスを製造するための別の製作シーケンスでは、図4Bの配置のようにナノ細孔の長さに沿って配置されている端部配向ナノチューブプローブ及び側面配向ナノチューブプローブが設けられている。図11A〜Bを参照すると、この製作シーケンスの第1ステップでは、比較的に厚い支持構造物(例えば、厚い窒化ケイ素膜)が用意される。ここでは、例えば約800nmの厚さを有する窒化物膜が使用され得る。一連のアパーチャを上記したように膜に設ける。図11Aは2つのアパーチャ242,244が設けられている厚い膜240の領域のトップダウン平面図である。図11Bは図11Aの膜構造物の側面図である。
【0140】
図11C〜Dに示されている次の方法ステップで、エネルギービーム246(例えば、イオンビームまたは一般的なリソグラフィック加工処理)を使用して、元の膜表面に対して直交している新しい膜表面が元の膜アパーチャの直径と交差するように膜材料を膜の上部から例えば約1/3除去する。次いで、このプロセスを膜の底部で繰り返して、膜材料を膜の底部から例えば約1/3除去する。こうして、元の膜表面に直交し、元の膜アパーチャの直径と交差する新しい膜表面が生成する。その結果、元の膜の一部は元の膜の厚さのたった1/3であり、元の膜の他の部分は元の厚さのままである。上面及び底面から膜の除去された部分の端部は元のアパーチャの直径を超えて延びているので、縦方向溝248,250が元の膜表面に対して直交している新しく生成された膜表面の長さに沿って曝されている。これらの溝は、元の膜表面に平行な表面を有する残留膜の厚さを貫いてアパーチャとして延びている。
【0141】
図11E〜Fを参照すると、次の方法ステップで、ナノチューブを上記したように膜構造物上で現場合成する。触媒材料を、新しく生成した直交膜表面の1つ及び元の膜表面に平行な表面を有する残留膜上の溝に隣接し、その溝の中に、アパーチャに隣接する位置で堆積させ、パターン化する。次いで、ナノチューブを膜構造物上で合成する。図11E〜Fは膜支持構造物上の多数の合成ナノチューブ、例えば252、254、256、258を示している。多数のアパーチャが膜構造物に設けられているとすると、少なくとも1つの合成ナノチューブが図11Eにおける膜のアパーチャ242に示すナノチューブ256のように、溝に沿って且つ元の膜表面に平行な表面を有する残留膜の厚さを貫くアパーチャを通って成長すると予想され得ると認識される。
【0142】
アパーチャ242を通ってナノチューブ256が合成されていることを同定したら、図11G〜Hに示す次の方法ステップで、選択した第2ナノチューブ260の端部262がアパーチャ242に十分に突出しているように第2ナノチューブ260をアパーチャ242に対して手動で配置する。或いは、この第2ナノチューブは、ナノチューブの長い側面が上記実施例1のように中心を外してアパーチャを横切って延びるように配置され得る。この場合、第2ナノチューブはアパーチャの中心に配置されておらず、その代わりに実施例2に側面が接しているナノチューブについて示されているように側面が最終ナノ細孔の外周にちょうど接するように膜表面上の位置にある。図11I〜Jを参照すると、次の方法ステップで、露出している膜構造物のすべてを被覆し、アパーチャを最終所望ナノ細孔サイズ(例えば、直径約2〜約10nm)に縮小させるために材料の層265を例えばALDにより堆積させる。
【0143】
ナノチューブ260の端部が最終ナノ細孔の外周に正確に接するようにナノチューブ260の端部を手動で配置することは困難であるので、まず第2ナノチューブ260を配置して、その端部をアパーチャ242に、その直径を横切って十分に突出させる。この突出ナノチューブ端部262は最終ナノ細孔直径をALDにより生成させたとき新しく堆積したALD材料により未保護のままであるので、支持構造物の底部または上部からナノ細孔を通って向けられる電子ビーム、イオンビームまたは他のエネルギービームを用いて除去され得る。実施例1の場合のように、エネルギービームにより露出されている非保護ナノチューブ材料はナノ細孔から除去され、酸化アルミニウムまたは他のALD被覆はナノチューブ及び支持構造物のALD被覆領域をビーム種から保護する。
【0144】
また膜構造物の左側端面図を図示している図11Mを参照すると、図11I〜11Lに示す材料堆積の前にナノ細孔242中の垂直ナノチューブ256の端部上に金属接触パッドを設けることが好ましい。前記金属接触領域により、垂直ナノチューブ256の端部が堆積される材料により被覆されるのが防止され、金属接続を適所に置く。材料堆積が完了したら、ナノ細孔の長さを通って垂直に配向している第1ナノチューブプローブ及び第2端部配向ナノチューブプローブを有する図4Bのような分子特性解析デバイスが製造される。
【0145】
この製作例は、多くの代替分子特性解析デバイス構成を製造するために使用され得る各種方法を立証している。本発明は特定の製作方法を必要としない。しかしながら、所望の分子特性解析デバイス配置を製造するのに適した製作方法が使用され得る。
【0146】
この論議で、本発明のナノ細孔をベースとする分子特性解析装置が広範囲の分子特性解析用途に適用され得ることが判明した。分子特性解析デバイスは、装置が、DNA塩基の配列を異なる物理的及び電気的特性に基づいて直接電子シグナルに変換し得るため、そして装置によりQ20塩基の約7.7倍の配列適用範囲(sequence coverage)または約6.5倍の適用範囲を、<10の標的ゲノムからのDNAを用いるサンプリングにわたって達成できる単一分子分析技術を可能にするため、1,000ドル/哺乳動物ゲノムアッセイの要件を満たすことができる。これは約2ナノグラムのヒトゲノム材料に相当し、標準サンプリング方法を用いて増幅させることなく直接得られ得る。塩基を約10塩基/秒の速度でナノ細孔中を通過させるとき塩基配列中の各DNAヌクレオシド塩基の正体が明らかになれば、100個のナノ細孔を有するアレーを有する装置は1つの哺乳動物ゲノムの高品質ドラフト配列を約20時間で生じ得る。
【0147】
ナノ細孔配置により可能となる高処理量及び空間閉じ込めとナノチューブプローブ構成により可能となる直接電子分析、分子配向コントロール及び分子移動速度コントロールの組合せにより、広範囲の生物学的及び医学的用途に必要な迅速、信頼可能且つ安価な分子分析及び特性解析を達成する高帯幅分子特性解析方法が得られる。当業者は本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく上記した実施形態に各種の修飾及び付加を加えることができることを認識している。従って、本発明により与えられる保護は本発明の主題及びまさしく本発明の範囲内のその均等物に及ぶと見なされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ細孔を通る電気的に荷電した分子の移動をコントロールするための方法であって、以下のステップ:
ナノ細孔の分子入口とナノ細孔の分子出口との間にナノ細孔を横切って分子移動電圧を印加し;
分子入口と分子出口との間での、ナノ細孔を通る分子の遅い前進のために、ナノ細孔に配置された少なくとも1つの電気プローブに、移動電圧に対し第1の電圧バイアスを印加し;及び
分子を、分子入口と分子出口との間で、ナノ細孔を通って分子を前進させるために、ナノ細孔に配置された少なくとも1つの電気プローブに、移動電圧に対し第2の電圧バイアスを印加すること
を含む前記方法。
【請求項2】
分子が、電解液中に提供され、移動電圧が、ナノ細孔分子出口電圧に対するナノ細孔分子入口電圧をコントロールすることによって印加され、溶液中の分子を分子入口と分子出口との間でナノ細孔を通り電気泳動的に移動させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
移動電圧に対し第1の電圧バイアスを印加することが、電解液の電圧に対し第1の電圧バイアスを印加することを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
移動電圧に対し第2の電圧バイアスを印加することが、電解液の電圧に対し第2の電圧バイアスを印加することを含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第2の電圧バイアスを印加することが、第1の電圧バイアスを逆転することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ナノ細孔を通って進む分子が、タンパク質、ポリ核酸、DNA及びRNAからなる群から選択されるポリマー生体分子からなる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ナノ細孔を通って進む分子が、DNAからなる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ナノ細孔を通ってDNAが進む間、第1及び第2の電圧バイアスの印加を繰り返すことをさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
塩基がナノ細孔を通って進む際に、DNAの連続塩基を検出することをさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項10】
第1の電圧バイアスの印加が、ナノ細孔を通る分子の前進を実質的に停止させることによって、分子の前進を遅くする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第1の電圧バイアスを印加しながら、ナノ細孔で分子を電気的に検出することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
分子を検出することが、ナノ細孔を通るイオン電流の減少を検出することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
分子を検出することが、ナノ細孔に配置された2つの電子輸送プローブ間での電子輸送の変化、プローブ間での電子トンネリングの変調を検出することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
分子を検出することが、ナノ細孔に配置された2つの電子プローブ間での電子トンネリングの変調を検出することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項15】
分子を検出することが、ナノ細孔に配置されたカーボンナノチューブのコンダクタンスの変化を検出することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項16】
ナノ細孔が、一度にたった1個の分子をナノ細孔を通って前進させるのに十分な小さい径を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの電気プローブが、カーボンナノチューブからなる請求項1に記載の方法。
【請求項18】
ナノ細孔の分子入口と分子出口との間でナノ細孔を横切る分子移動電圧を印加することが、ナノ細孔が配置される膜を横切って分子移動電圧を印加することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項19】
膜に配置されたナノ細孔が、電気絶縁材料層のコーティングを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
膜が窒化ケイ素膜からなる請求項18に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【公開番号】特開2012−21996(P2012−21996A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174714(P2011−174714)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【分割の表示】特願2008−505513(P2008−505513)の分割
【原出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(503064338)ザ プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (5)
【Fターム(参考)】