説明

カーボンナノチューブフィルム複合構造体、カーボンナノチューブフィルム複合構造体を利用した透過型電子顕微鏡グリッド及びその製造方法

【課題】カーボンナノチューブフィルム複合構造体及びその製造方法、透過型電子顕微鏡グリッドを提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブフィルム複合構造体120は、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体122及び複数のグラフェンシート124、を含み、前記カーボンナノチューブ構造体122は、複数の微孔126を有し、少なくとも一つの前記微孔は、一つの前記グラフェンシート124で被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブフィルム複合構造体、カーボンナノチューブフィルム複合構造体を利用した透過型電子顕微鏡グリッド及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
観察に用いる顕微鏡としては、光学式顕微鏡、電子顕微鏡、または電子分析装置を用いることができる。電子顕微鏡には、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等があり、より微細な観察が可能である。TEMで観察される試料は、様々な方法で作製される。試料はメッシュまたはグリッドと呼ばれる網の上に直接、またはカーボン蒸着膜などを介して載せられる。一つの例として、メッシュの外形は通常、直径3mm(または2.3mm)の円形であり、外側のリムで囲まれた部分に複数の開口部が形成されている。
【0003】
開口部の形状や配置、あるいは密度の異なる多様なメッシュが市販されており、単一の開口部(スロット)が形成されているものもある。メッシュの材料としては銅が用いられることが多いが、ニッケル、金、モリブデン等の他の材料も用いられる。試料はメッシュにより支持され、電子線が開口部上の試料を透過することにより、TEM像が得られる。
【0004】
試料が開口部より大きければ、試料がメッシュにより支持されるが、メッシュの開口部より小さいナノパーティクルなどの粉末試料は、メッシュで支持できない。また、開口部より大きい試料であっても、極めて薄く撓みやすいフィルム状の試料なども、メッシュで安定に支持することができない。このような粉末試料などのTEM観察には、有機膜あるいはカーボン膜などの無機膜で被覆されたメッシュが用いられる。このような有機膜あるいは無機膜が、粉末試料などの支持膜として用いられる。
【0005】
有機膜としては例えば、ポリビニルホルムアルデヒドを用いて形成されるホルムバール(Formvar)膜が用いられる。カーボン膜としては、例えば真空蒸着により形成されたアモルファスカーボン膜が用いられる。カーボン膜以外に、酸化シリコン層や窒化シリコン層も支持膜として用いられる。また、例えばホルムバール膜とカーボン膜の積層膜が支持膜として用いられることもある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の真空蒸着により形成されたアモルファスカーボン膜の、厚さが厚く、ノイズが大きいので、ナノ粒子に対してTEM像の解像度が低いという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、前記課題を解決するために、本発明はナノ粒子に対してTEM像の解像度を高めることができるカーボンナノチューブフィルム複合構造体、カーボンナノチューブフィルム複合構造体を利用した透過型電子顕微鏡グリッド及びその製造方法を提供する。
【0009】
本発明のカーボンナノチューブフィルム複合構造体は、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体及び複数のグラフェンシート、を含む。前記カーボンナノチューブ構造体は、複数の微孔を有する。少なくとも一つの前記微孔は、一つの前記グラフェンシートで被覆されている。
【0010】
本発明のカーボンナノチューブフィルム複合構造体の製造方法は、複数の微孔を備えた少なくとも一枚のカーボンナノチューブ構造体、及びグラフェンシートの分散溶液を提供する第一ステップと、前記グラフェンシートの分散溶液で前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬させる第二ステップと、前記分散溶液で浸漬された前記カーボンナノチューブ構造体を乾燥して、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成させる第三ステップと、を含む。
【0011】
本発明の透過型電子顕微鏡グリッドは、格子板と、該格子板に被覆されたグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体と、を含む。前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体は、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体及び複数のグラフェンシート、を含む。前記カーボンナノチューブ構造体は、複数の微孔を有する。少なくとも一つの前記微孔は、一つの前記グラフェンシートで被覆されている。
【発明の効果】
【0012】
従来の技術と比べて、本発明のカーボンナノチューブフィルム複合構造体及びその製造方法、透過型電子顕微鏡グリッドは、超配列カーボンナノチューブアレイから引き出して得られた微孔を有するカーボンナノチューブ構造体を支持体として、少なくとも一つの微孔が一つのグラフェンシートで被覆されることにより、測定試料がグラフェンシートの空間にかかることを実現する。前記グラフェンシートの厚さは薄いので、TEMで観察する場合に生じるバックグラウンドノイズが小さい。従って、ナノ粒子に対してTEM像の解像度を高める。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1の透過型電子顕微鏡グリッドの構造を示す図である。
【図2】図1に示す透過型電子顕微鏡グリッドの一つのグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の構造を示す図である。
【図3】図1に示す透過型電子顕微鏡グリッドのグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図2に示すグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体のカーボンナノチューブ構造体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】図5中のカーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図7】図1に示す透過型電子顕微鏡グリッドのもう一つのグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の構造を示す図である。
【図8】図1に示す透過型電子顕微鏡グリッドに測定試料を設置した構造を示す図である。
【図9】図1に示す透過型電子顕微鏡グリッドを採用した透過型電子顕微鏡によってナノ金粒子を観測した異なる解像度の透過型電子顕微鏡写真である。
【図10】図1に示す透過型電子顕微鏡グリッドを採用した透過型電子顕微鏡によってナノ金粒子を観測した異なる解像度の透過型電子顕微鏡写真である。
【図11】図1に示す透過型電子顕微鏡グリッド製造工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0015】
図1を参照すると、本実施例は、透過型電子顕微鏡グリッド100を提供する。前記透過型電子顕微鏡グリッド100は、格子板110と、該格子板110に被覆されたグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120と、を含む。
【0016】
図2及び図3を参照すると、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120は、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体122、及び前記カーボンナノチューブ構造体122の一つ表面に配置された複数のグラフェンシート124を含む。前記カーボンナノチューブ構造体122は、複数の微孔126を備える。少なくとも一つの前記微孔126には、一つのグラフェンシート124が被覆されている。
【0017】
図4を参照すると、前記カーボンナノチューブ構造体122は、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルムを含む。この場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルムは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが90°の角度で交差することが好ましい。本実施例において、前記カーボンナノチューブ構造体122における前記カーボンナノチューブフィルムの層数が2〜4層である。
【0018】
前記カーボンナノチューブフィルムは、ドローン構造カーボンナノチューブフィルム(drawn carbon nanotube film)である。ここで、該ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、カーボンナノチューブアレイから引き出して得られるものであることから、「ドローン(drawn)構造カーボンナノチューブフィルム」というものである。前記カーボンナノチューブフィルムは、超配列カーボンナノチューブアレイ(非特許文献1を参照)から引き出して得られたものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されている。即ち、単一の前記カーボンナノチューブフィルムは、分子間力で長さ方向に沿って端部同士が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。図5及び図6を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さが同じである。前記カーボンナノチューブセグメント143bには、隣接するカーボンナノチューブ145の間に間隙があり、従って前記カーボンナノチューブフィルムには、隣接するカーボンナノチューブ145の間に間隙がある。前記カーボンナノチューブフィルムの幅は100μm〜10cmに設けられ、厚さは0.5nm〜100μmに設けられる。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5nm〜50nmに設定される。
【0019】
前記カーボンナノチューブフィルムは、分子間力で緊密に接続した複数のカーボンナノチューブを含む。前記カーボンナノチューブフィルムは、自立構造の薄膜の形状に形成されている。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブフィルムを独立して利用することができるという形態のことである。すなわち、前記カーボンナノチューブフィルムを対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブフィルムの構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブフィルムを懸架させることができることを意味する。
【0020】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、カーボンナノチューブアレイを提供する第一ステップと、前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも、一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす第二ステップと、を含む。
【0021】
前記グラフェンシート124は、単層グラフェン又は多層グラフェンからなる。前記グラフェンシートは、多層グラフェンからなる場合、グラフェンの層数が2〜3層である。前記グラフェンシートの寸法が2nm〜10μmであるが、2nm〜1μmであることが好ましい。前記グラフェンシートの寸法は、一つの前記カーボンナノチューブ構造体122における微孔126の寸法より大きく設けられるので、前記グラフェンシートによって一つの前記微孔126を完全に覆うことができる。ここで、前記グラフェンシート124及び微孔126は、長方形又は不規則の多角形の構造を有するので、前記グラフェンシート124又は微孔126の寸法(以下に同じ)とするものは、前記グラフェンシート124又は微孔126の縁部の一点から他点までの距離が最大となる時の距離である。
【0022】
図7を参照し、一つの例として、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120は、積層されて配置された複数のカーボンナノチューブ構造体122を含み、各々の隣接する前記カーボンナノチューブ構造体122の間に複数のグラフェンシート124が配置されている。この場合、一層の前記グラフェンシート124は、二つの前記カーボンナノチューブ構造体122によって挟まれているので、前記グラフェンシート124は該グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120に安定的に固定されることができる。
【0023】
前記格子板110は、一つ又は複数の穿孔112を有する金属片(例えば、銅片)である。前記格子板110は、透過型電子顕微鏡に用いられる格子板である。前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120の一部は前記格子板110に付けられ、その他の部分は、前記穿孔112に懸架されている。本実施例において、前記格子板110及び前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120は、同じ寸法と形状を有する。前記格子板110の穿孔112の寸法は、前記カーボンナノチューブ構造体122の微孔126の寸法より大きく、また前記グラフェンシート124の寸法よりも大きい。本実施例において、前記格子板110の穿孔112は、円柱形を有し、その直径が10μm〜2mmである。
【0024】
図8及び図9を参照すると、本実施例の透過型電子顕微鏡グリッド100を利用した場合、測定試料200は、前記カーボンナノチューブ構造体122の微孔126を覆ったグラフェンシート124の表面に配置される。該測定試料200は、例えばナノワイヤ、ナノ球、ナノチューブなどのナノ粒子である。前記測定試料200の寸法は、1μmより小さく、10nmより小さいことが好ましい。図9及び図10は、ナノサイズの金粉の分散溶液を、前記透過型電子顕微鏡グリッド100に滴下し、乾燥させて透過型電子顕微鏡で観測した異なる解像度の透過型電子顕微鏡写真である。図9及び図10に示された黒色粒子は、測定物のナノ金粒子である。
【0025】
図11を参照すると、本実施例の透過型電子顕微鏡グリッド100の製造方法は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブ構造体122及びグラフェンシート124の分散溶液を提供するステップS11と、前記グラフェンシート124の分散溶液で前記カーボンナノチューブ構造体122を浸漬させるステップS12と、前記分散溶液で浸漬された前記カーボンナノチューブ構造体122を乾燥して、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120を形成させるステップS13と、一つの格子板110を提供して、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120を前記格子板110に付着させるステップS14と、を含む。
【0026】
前記ステップS11において、前記カーボンナノチューブ構造体122を有機溶剤に浸漬させて、前記カーボンナノチューブ構造体122に複数の微孔126を形成させる。前記有機溶剤は、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン、クロロホルムなどのいずれか一種の揮発性有機溶剤である。本実施例において、前記有機溶剤は、エタノールである。該有機溶剤は、前記カーボンナノチューブ構造体122に対して良好な浸潤性を有する。具体的には、有機溶剤を前記カーボンナノチューブ構造体122の表面に滴下し、該有機溶剤で前記カーボンナノチューブ構造体122を浸漬させる。図3及び図4を参照すると、この場合、前記有機溶剤の表面張力によって、前記カーボンナノチューブ構造体122の各々のカーボンナノチューブフィルムに、隣接して配列されたカーボンナノチューブの間の間隙がなくなり、前記複数のカーボンナノチューブは複数のカーボンナノチューブワイヤ128に形成される。前記カーボンナノチューブ構造体122は複数のカーボンナノチューブフィルムが積層して形成され、隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが0°〜90°の角度で交差しているので、前記カーボンナノチューブ構造体122を有機溶剤によって処理すると、隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブワイヤ128が0°〜90°の角度で交差して、前記カーボンナノチューブ構造体122に複数の微孔126が形成される。前記カーボンナノチューブ構造体122を有機溶剤によって処理すると、その接着性が低くなる。前記カーボンナノチューブ構造体122における微孔126の寸法は、1nm〜10μmであるが、1nm〜900nmであることが好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体122における前記カーボンナノチューブフィルムの層数が4層である場合、該カーボンナノチューブ構造体122に、ナノサイズの微孔126の数量比が60%より大きい。前記カーボンナノチューブ構造体122における前記カーボンナノチューブフィルムの層数が多くなるほど、前記カーボンナノチューブ構造体122における微孔126の寸法はより小さくなる。従って、前記カーボンナノチューブ構造体122における前記カーボンナノチューブフィルムの層数を調整することによって、必要な寸法の微孔126を得ることができる。
【0027】
前記ステップS11において、前記グラフェンシート124の分散溶液は、グラフェンシート124を溶媒に分散させて形成したものである。本実施例において、前記グラフェンシート124の分散溶液の製造方法は、以下の階段を含む。第一階段は、所定量のグラフェンシート124を提供する。第二階段は、前記グラフェンシート124を溶媒に入れて、混合物を形成する。第三階段は、超音波で前記混合物を攪拌し、前記グラフェンシート124を溶媒に均一的に分散させて、グラフェンシートの分散溶液を形成する。本実施例において、超音波で処理する時間は15minである。前記第三階段は、例えば、前記グラフェンシート124と溶媒の混合物を機械的に攪拌することができる。
【0028】
前記溶媒は、グラフェンシート124が簡単に分散され、且つ揮発性を有する低分子量の溶媒であり、例えば、水、エタノール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン及びクロロホルムの一種又は数種からなる。前記グラフェンシート124は、単層グラフェン又は多層グラフェンからなる。前記グラフェンシート124の分散溶液におけるグラフェンシート124の層数が1〜3層であることが好ましい。従って、それを採用した透過型電子顕微鏡グリッド100は、よりよい対比度のTEM画像を得ることができる。前記グラフェンシート124の寸法が0μm(0は含まず)〜10μmであるが、0μm(0は含まず)〜1μmであればよい。前記分散溶液における前記グラフェンシートの体積比は5%である。
【0029】
前記ステップS12において、試験管又は滴瓶を利用して、前記グラフェンシート124の分散溶液を前記カーボンナノチューブ構造体122の一つの表面に滴下し、前記グラフェンシート124の分散溶液で前記カーボンナノチューブ構造体122を浸漬させる。前記カーボンナノチューブ構造体122の面積が大きい場合、前記カーボンナノチューブ構造体122を、前記グラフェンシート124の分散溶液を有する容器内に浸漬させた後、前記カーボンナノチューブ構造体122を前記グラフェンシート124の分散溶液から分離させる。本実施例において、フレームに付けたカーボンナノチューブ構造体122の表面に、前記グラフェンシート124の分散溶液を滴下することにより、前記グラフェンシート124の分散溶液に浸漬された前記カーボンナノチューブ構造体122を形成する。該方法によって、前記グラフェンシート124の分散溶液を前記カーボンナノチューブ構造体122の二つの表面に順次的に滴下して、前記グラフェンシート124の分散溶液で前記カーボンナノチューブ構造体122を浸漬させることができる。この場合、前記カーボンナノチューブ構造体122の二つの表面にグラフェンシート124が形成される。該ステップにおいて、二つの表面にグラフェンシート124が形成された複数の前記カーボンナノチューブ構造体122を積層させることができる。または、二つの表面にグラフェンシート124が形成された前記カーボンナノチューブ構造体122を、前記カーボンナノチューブ構造体122に積層させることができる。
【0030】
前記ステップS13において、前記グラフェンシート124の分散溶液に浸漬された前記カーボンナノチューブ構造体122を乾燥すると、前記カーボンナノチューブ構造体122の表面にグラフェンシート124が形成されて、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120を得る。前記カーボンナノチューブ構造体122の表面に形成されたグラフェンシート124は、連続的に又は分離して配列される。前記カーボンナノチューブ構造体122の表面に形成された前記グラフェンシート124の配列状態は、前記グラフェンシート124の分散溶液を前記カーボンナノチューブ構造体122の表面に滴下した回数及び濃度によって決定される。図7を参照すると、前記ステップによって得られたグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120において、少なくとも一つのグラフェンシート124は、前記カーボンナノチューブ構造体122の少なくとも一つの微孔126を覆っている。二つの表面にグラフェンシート124が形成された前記カーボンナノチューブ構造体122を、前記カーボンナノチューブ構造体122に積層させる場合、グラフェンシート124は、二つのカーボンナノチューブ構造体122によって挟まれているので、前記グラフェンシート124は該グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120に安定的に固定されることができる。
【0031】
更に、前記ステップS13で得られたグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120を化学的方法で処理して、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120におけるグラフェンシート124及びカーボンナノチューブ構造体122の炭素原子同士を結び付ける。前記化学的方法は、レーザー又はUV光によってグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120を照射すること、又は高エネルギー粒子をグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120に衝突させることである。これにより、グラフェンシート124の炭素原子及びカーボンナノチューブの炭素原子は、SP混成軌道によって共有結合を形成して接続されるので、前記グラフェンシートは、該グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120に更に安定的に固定されることができる。
【0032】
前記ステップS14において、前記ステップS13からのグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120を格子板110に付着させる。該格子板110は、少なくとも一つの穿孔112及び支持部(図示せず)を含む。前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120の一部を前記支持部に付けて、その他の部分は、前記穿孔112に懸架されている。前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120の面積が大きい場合、複数の前記格子板110を間隔をおいて一つの金属板として集成し、前記大きい面積のグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120を該金属板に覆わせることができる。この場合、隣接する格子板110の間に対応した位置で、前記金属板を覆うグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120をカットする。従って、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120が覆われた複数の格子板110を形成することができる。前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120をカットする方式は、レーザーによって前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120を照射して焼き切る。前記レーザーの照射能率は5W〜30Wであり、18Wであることが好ましい。
【0033】
更に、前記ステップS14からなるグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120が覆われた格子板110を有機溶剤によって処理して、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120と格子板110とを、更に緊密的に接続させる。前記有機溶剤は、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン、クロロホルムなどの揮発性有機溶剤である。本実施例において、前記有機溶剤は、エタノールである。前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体120が覆われた格子板110を、有機溶剤が用意された容器内に浸漬させる。
【符号の説明】
【0034】
100 透過型電子顕微鏡グリッド
110 カーボンナノチューブ構造体
112 穿孔
120 グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体
122 カーボンナノチューブ構造体
124 グラフェンシート
126 微孔
128 カーボンナノチューブワイヤ
200 測定試料
143a カーボンナノチューブフィルム
143b カーボンナノチューブセグメント
145 カーボンナノチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体及び複数のグラフェンシート、を含むグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体であって、
前記カーボンナノチューブ構造体は、複数の微孔を有し、
少なくとも一つの前記微孔は、一つの前記グラフェンシートで被覆されていることを特徴とするグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体。
【請求項2】
複数の微孔を備えた少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体、及びグラフェンシートの分散溶液を提供する第一ステップと、
前記グラフェンシートの分散溶液で前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬させる第二ステップと、
前記分散溶液で浸漬された前記カーボンナノチューブ構造体を乾燥させて、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第三ステップと、
を含むことを特徴とするグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法。
【請求項3】
格子板と、該格子板に被覆されたグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体と、を含む透過型電子顕微鏡グリッドであって、
前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体は、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体及び複数のグラフェンシート、を含み、
前記カーボンナノチューブ構造体は、複数の微孔を有し、
少なくとも一つの前記微孔は、一つの前記グラフェンシートで被覆されていることを特徴とする透過型電子顕微鏡グリッド。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−26194(P2011−26194A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165907(P2010−165907)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】