説明

カーボンナノ材料担持触媒及びその環状炭酸エステル合成への応用

【課題】カーボンナノ材料担持触媒及びその環状炭酸エステル合成への応用を提供すること。
【解決手段】本発明のカーボンナノ材料担持触媒は、カーボンナノ材料、及び、カーボンナノ材料にグラフトされたポリマーを含み、ポリマーはホスホニウム塩を含む繰り返し単位を有し、その数平均分子量は1,000〜200,000である。本発明による環状炭酸エステルの製造方法では、カーボンナノ材料担持触媒をエポキシ基と二酸化炭素の付加環化反応に応用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状炭酸エステルを製造する触媒に関するものであって、特に、ホスホニウム塩ポリマーを含むカーボンナノ材料担持触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学合成産業において、触媒は重要な役割を果たしている。触媒は反応活性を向上させ、反応時間を短縮するので、製造コストが減少する。触媒は、通常、均一系触媒と不均一系触媒という二つの主要なカテゴリーに分類される。均一系触媒は、高活性、選択性がよいなどの長所があるが、回収が容易ではないので、製造コストが増大する。一方、不均一系触媒は分離回収が容易であるが、活性及び選択性が十分ではない。
【0003】
化学合成産業において、環状炭酸エステルは、リチウム電池の電解質の分野で、重要な部類の化合物である。環状炭酸エステルの環境に優しいプロセスは、適当な触媒を用い、二酸化炭素とエポキシ化合物を付加環化反応するステップを含む。例えば、リチウム電池の電解質の重要な成分であるプロピレンカーボネートは、触媒の存在下で、酸化プロピレンと二酸化炭素の反応により得られる。
【0004】
樹脂産業において、非イソシアネートポリウレタン樹脂(NIPU)は、環状炭酸エステル官能基を有するモノマーから得られる。合成法は、高い毒性のイソシアネートエステルの使用を避けるので、NIPU樹脂は、環境保全に配慮した材料とみなされる。この他、低毒性であるという特徴も、非イソシアネートポリウレタンの生体材料への応用を可能にする。環状炭酸エステル化合物の環境に優しいプロセスは、二酸化炭素とエポキシ化合物を原材料として用いる。環状炭酸エステル化合物は、ルイス塩基、イオン液体、金属錯体、不均一系の金属塩、シリカ担持触媒、多孔質の金属酸化物塩、又は、イオン交換樹脂などの触媒系を用いることにより、二酸化炭素とエポキシ基の付加環化反応から得られる。上記の触媒のうち、塩又はイオン液体の触媒が最も一般的である。しかし、現存の均一系触媒系と不均一系触媒系は幾つかの欠点がある。均一系触媒の場合、触媒と生成物は均一系であり、それらは、分離が容易でない。不均一系触媒の場合、反応の変換率が十分でなく、通常、触媒反応に、更に激しい反応条件、例えば、高いガス圧が必要とされる。
【0005】
特許文献1は、環状炭酸エステルを製造するゼオライト系触媒を提供する。この不均一系触媒は、ルイス塩基の性質を有し、二酸化炭素の存在下で、エポキシ化合物を環状炭酸エステルに変換する。しかし、この反応は、高い二酸化炭素のガス圧と更に激しい反応条件(>0.6MPa(6atm),120℃)下で、維持する必要がある。
【0006】
特許文献2は、ホスホニウム臭化物塩(テトラアルキルホスホニウム臭化物)を均一系触媒として提供する。この触媒は、二酸化炭素の存在下で、プロピレンカーボネートの合成反応を触媒する。このホスホニウム臭化物塩触媒も、同様に、激しい反応条件が必要とされる(>1.9MPa(19atm),180℃)。
【0007】
特許文献3は、ホスホニウムヨード塩化合物を用いて、エポキシ化合物と二酸化炭素の反応を触媒し、環状炭酸エステルを製造する方法を提供する。この均一系触媒を用いた反応は、高いガス圧(>10MPa(100atm))を必要とし、生産設備に対して高い要求があるので、製造コストが増大する。
【0008】
従って、当該技術分野では、均一系触媒のような高い触媒反応性と不均一系触媒のような容易な分離と回収の長所を有する触媒系が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/070724号
【特許文献2】米国特許第7,728,164号
【特許文献3】米国特許第6,933,394号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、カーボンナノ材料担持触媒及びその環状炭酸エステル合成への応用を提供し、上述の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、カーボンナノ材料担持触媒を提供する。このカーボンナノ材料担持触媒は、(a)カーボンナノ材料、及び、(b)カーボンナノ材料にグラフトされたポリマーを含み、ポリマーはホスホニウム塩を含む繰り返し単位を有し、ポリマーは数平均分子量1,000〜200,000を有する。
【0012】
また、本発明は、環状炭酸エステルの製造方法を提供する。この製造方法では、上記のカーボンナノ材料担持触媒の存在下で、二酸化炭素とエポキシ化合物との間の付加環化反応を実施し、環状炭酸エステルを形成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の触媒は、高い触媒反応性、及び、容易な分離と回収の長所を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、カーボンナノ材料担持触媒に関し、この触媒はキャリアと活性中心を含む。キャリアは、単層カーボンナノチューブ、多層ナノチューブ、カーボンナノファイバ、カーボンナノカプセル、活性炭、カーボンブラック、又は、それらの組み合わせなどのカーボンナノ材料である。カーボンナノ材料は、高い表面積、高い機械強度により特徴付けられ、不均一系触媒のような、分離が容易である特性を有するカーボンナノ材料担持触媒を提供する。活性中心は、ホスホニウム塩を含むポリマーである。リン酸塩のカチオンはホスホニウムカチオンであり、リン酸塩のアニオンはハロゲン化物イオンである。ホスホニウム含有ポリマーがカーボンナノ材料の表面にグラフトされており、ホスホニウムリガンドを有するポリマーがカーボンナノ材料の表面上に分布している。ポリマーは、ホスホニウム塩を含む繰り返し単位を有し、且つ、数平均分子量は、1,000〜200,000、好ましくは2,000〜100,000である。カーボンナノ材料にグラフトされているホスホニウム基の比率は、1グラムのカーボンナノ材料あたり、0.001〜150mmolである。ポリマーは、一般の有機溶媒に対する良好な溶解特性を有する。ホスホニウム基が、カーボンナノ材料の表面にグラフトされているので、本発明のカーボンナノ材料は、容易に、有機溶媒中に分散する。これにより、本発明の触媒は、均一系触媒の高い選択性と活性を維持することができ、同時に、反応系から容易に分離、回収することができる。本発明の触媒は、二酸化炭素とエポキシ化合物の付加環化反応に応用され、環状炭酸エステルを形成することができる。
【0015】
ポリマーは、ホスホニウム塩を含む繰り返し単位を有し、好ましくは、式Iの一般構造を有する:
【0016】
【化1】

【0017】
は、C−C10アルキレン、C−Cシクロオレフィン、エステル基、C−Cシクロアルケン、又は、C−C12アリーレンを示し、リンに結合する炭素原子は、ヘテロ原子、ハロゲン置換C−C12アリーレン、縮合C−C12アリーレンにより置換され、炭素に結合する水素原子は、C−C12アリール、又は、シクロアルキレンをリガンドとする金属錯体により置換され、金属錯体のシクロアルキレンは、ポリマーとリンの主鎖に結合している。
【0018】
,R及びRは、独立して、C−C10アルキル、C−Cシクロアルキル、又は、C−C10アリールであり;Pはリンを示し;Xはハロゲンを示し;nは、1より大きく、1,500より小さい整数である。
【0019】
ポリマーは、更に、不活性な繰り返し単位を含むことがある。この不活性な繰り返し単位は、例えば、重合可能なビニル単量体からなる。
【0020】
ポリマーは、必要に応じて、更に、式IIのビニル単量体からなる不活性の繰り返し単位を含む。
【0021】
【化2】

【0022】
及びRは、独立して、水素、エステル基、C−C10アルキル、C−Cアルケニル、C−Cシクロアルキル、4〜8員の複素環アルキル、又は、C−C10アリールであり;Rは水素又はC−C10アルキルであり;mは、0より大きく、1,500より小さい整数、更に好ましくは10〜600の整数である。
【0023】
ポリマーは、遊離ラジカル重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)、開環重付加(ROP)、アニオン/カチオン重合、又は、縮合、又は、それらの組み合わせにより、カーボンナノ材料にグラフトされる。遊離ラジカル重合により合成されるホスホニウム含有ポリマーの場合、末端遊離ラジカルを有するポリマー鎖が適当な条件下で形成され、ポリマーが不均一系キャリアにグラフトされる際に、ポリマー配位型触媒の構造と組成、及び、ポリマー鎖の極性の制御が容易になる。遊離ラジカル重合を用いて、ランダム共重合体とブロック共重合体を合成してもよい。本発明のある実施形態では、ポリマーは、ホスホニウム塩を含む繰り返し単位を有し、数平均分子量が好ましくは1,000〜200,000、より好ましくは2,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜80,000である。配位型触媒の数量は、配位機能を有する機能性単量体のタイプと数量の選択により制御される。この他、反応溶液中の配位型ポリマーの溶解度は、極性モノマー(式I)と非極性モノマー(式II)の比率の調整により制御される。このような設計により、本発明は、有機溶媒中への不均一系触媒の乏しい分散性の問題を解決し、均一系触媒のような高い触媒反応性、及び、不均一系触媒のような容易な分離と回収の長所を提供し、触媒の効率を向上させる。
【0024】
一例として、一般式IIIのランダム共重合体は、ビフェニル(4−ビニルベンゼン)ホスフィン(DPVP)モノマー、スチレン単量体、過酸化ベンゾイル(BPO)、及び、テトラメチルピペリジニルオキシル(TEMPO)の共重合により得られる。
【0025】
【化3】

【0026】
その後、得られたポリマーがカーボンナノ材料の表面にグラフトされ、ハロゲン化アルキル化合物と反応し、ホスホニウム塩ポリマーを有するカーボンナノ材料担持触媒を提供する(式Iと式II)。式IIIにおいて、nは、1より大きく、1,500より小さい整数であり、mは、0より大きく、1,500より小さい整数、更に好ましくは10〜600の整数である。
【0027】
また、一例として、式IVで示されるランダム共重合体は、銅触媒の存在下で、原子移動ラジカル重合(ATRP)、MMAモノマー、及び、ホスフィンモノマー(例えば、DPVP)により得られる。式IVにおいて、mは、1より大きく、1,500より小さい整数であり、nは、0より大きく、1,500より小さい整数、更に好ましくは10〜600の整数である。
【0028】
【化4】

【0029】
その後、得られたポリマーは、原子移動ラジカル重合(ATRP)により、カーボンナノ材料の表面にグラフトされ、ハロゲン化アルキル化合物と反応し、ホスホニウム塩ポリマーを有するカーボンナノ材料担持触媒を提供する。
【0030】
本発明のカーボンナノ材料担持触媒は、特に、二酸化炭素とエポキシ化合物の付加環化反応に適用し、環状炭酸エステルを形成するのに好適である。ある実施形態では、反応は以下のように実施される。触媒とエポキシ化合物を高圧リアクターに入れる。その後、リアクターをパージし、二酸化炭素を充填する。その後、リアクターに、CO雰囲気下で、反応物を導入する。リアクターの圧力は10kg/cm以下に制御され、リアクター中の反応物を加熱、攪拌する。その後、リアクターを冷却し、圧力をリアクターから解放する。反応生成物をテトラヒドロフラン(THF)で抽出し、ろ過する。ろ液を真空下で濃縮して、生成物を得る。好ましい実施形態では、カーボンナノ材料担持触媒の添加量は、エポキシ化合物の全添加量に対して1質量%以上、更に好ましくは3質量%〜40質量%である。付加環化反応は、15MPa(150atm)以下、好ましくは0.2〜1MPa(2〜10atm)の圧力下で実施される。この他、付加環化反応は、200℃以下、好ましくは50〜120℃の温度で実行される。好ましい実施形態では、反応の収率は、少なくとも80%以上に達する。最後に、反応完了後、付加環化反応からの混合物をろ過する。ろ液を生成物として濃縮し、固形物をカーボンナノ材料担持触媒として回収する。
【0031】
下記の実施例は、本発明の触媒が、二酸化炭素とエポキシ化合物の付加環化反応において、高い触媒反応性を有し、回収が容易であるという特性を有することを証明する。この反応は、生産設備に対して要求が低く、未反応の二酸化炭素の排出を減少させ、これにより、環境に優しく、又、経済的に有利である。
【0032】
本発明の実施形態では、環状炭酸エステルの合成法が提供される。環状炭酸エステルは、リチウムイオンバッテリーの電解質の混合溶媒に用いられる。有機炭酸エステル化合物は、プロピレンカーボネート(PC)のように、これらの溶媒に用いられる。この他、本発明の方法は、化学合成産業に応用され、炭酸エステル樹脂を製造する。炭酸エステル樹脂は、幅広く、エンジニアリングプラスチックとして、例えば、自動車、電気部品、電子部品などに応用される。この他、炭酸エステル樹脂の製造法は、高い毒性のイソシアネートエステルの使用を回避するので、非イソシアネートポリウレタン樹脂用の環境に優しい材料になり、生体材料にも用いることができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により、本発明のカーボンナノ材料担持触媒を詳細に説明する。他に特に規定がなければ、%は質量%である。
【0034】
実施例1
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO,0.56g,3.6mmol)、過酸化ベンゾイル(BPO,0.73g,3mmol)及びジフェニル(4−ビニルフェニル)ホスフィン(DPVP,22g,76.3mmol)を500mLの丸底反応フラスコに入れ、スチレン(8.76mL,7.96g,76.4mmol)及びキシレン(50mL,予め脱酸素化)を窒素雰囲気下で加えて、橙赤色溶液を得た。得られた溶液を、温度95℃で、3時間、激しく攪拌した。その後、溶液を連続して攪拌しながら、温度130℃まで加熱したところ、溶液の色が徐々に暗褐色になった。16時間後、反応物を冷却し、メチルアルコール(MeOH,1,000mL,脱酸素化)を添加して、ポリマーを沈殿させた。固形物をろ過し、温度45℃で、16時間真空乾燥して、16.3gの薄黄色粉末として、PDPVP50を得た(添字「50」は、DPVPとスチレンのモル比が約1:1であることを示し、リン含有量に関するPDPVP50のICP−MS分析は、リンモノマーがポリマー構造の46%を構成することを示した)(収率54%)。ランダム共重合体は、数平均分子量が12,800、多分散性指標(PDI)が1.69であった。
【0035】
実施例2
多層カーボンナノチューブ(MWNT,1.5g,CTube−100,CTube−200,CTube−300,CNTCo.,Ltd.KOREA製)及びPDPVP50(15.2g)を反応フラスコに入れた。キシレン(500mL)をシリンジにより反応フラスコに入れ、窒素雰囲気下、高温130℃で、48時間、連続的に、溶液を攪拌した。混合物を室温まで冷却した後、テトラヒドロフラン(THF;100mL)を加えて溶液を希釈した。その後、溶液をろ過し、残留固形物をTHF(50mL)で3回洗浄し、真空乾燥して、黒色粉末(MWNT−PDPVP50;1.4g)を得た。XPSスペクトルの結果は、P3p(133eV)シグナルを示し、カーボンナノチューブの表面がリン含有ポリマーでグラフトされていることを示す。生成物(MWNT−PDPVP50)の熱重量分析(TGA)の結果は、カーボンナノチューブのポリマーグラフト量が31.7%であることを示した。
【0036】
実施例3
MWNT−PDPVP50(0.262g)を、コンデンサーを備えた50mLの反応フラスコに入れ、反応フラスコを窒素でパージした(5回)。臭化N−プロピル(270mg,200μL,2.20mmol)及びアセトニトリル(10mL,予め脱酸素化)を、窒素雰囲気下で、シリンジにより注入した。混合物をオイルバスで加熱還流した。18時間後、反応混合物を室温まで冷却した後、ろ過した。その後、フィルター上の残留固形物をTHF(15mL)で3回洗浄し、真空乾燥した後、黒色粉末(MWNT−PDPVP50−n−PrBr;0.225g;収率86%)を得た。
【0037】
実施例4
MWNT−PDPVP50(0.251g)を、コンデンサーを備えた50mLの反応フラスコに入れ、反応フラスコを窒素でパージした(5回)。臭化ベンジル(248mg,172μL,1.45mmol)及びアセトニトリル(10mL,予め脱酸素化)は、窒素雰囲気下で、シリンジにより注入した。混合物をオイルバスで加熱還流した。18時間後、反応混合物を室温まで冷却した後、ろ過した。その後、フィルター上の残留固形物をTHF(15mL)で3回洗浄し、真空乾燥した後、黒色粉末(MWNT−PDPVP50−BzBr;0.235g;収率94%)を得た。XPSスペクトルの結果は、P3p(133eV)シグナルを示し、カーボンナノチューブの表面がリン含有ポリマーでグラフトされていることを示す。
【0038】
実施例5
MWNT−PDPVP50(0.205g)を、コンデンサーを備えた50mLの反応フラスコに入れ、反応フラスコを窒素でパージした(5回)。N−塩化ブチル(n−BuCl,177mg,200μL,1.86mmol)及びアセトニトリル(10mL,予め脱酸素化)を、窒素雰囲気下で、シリンジにより注入した。混合物をオイルバスで加熱還流した。26時間後、反応混合物を室温まで冷却した後、ろ過した。その後、フィルター上の残留固形物をTHF(15mL)で3回洗浄し、真空乾燥した後、黒色粉末(MWNT−PDPVP50−BuCl;0.195g;収率95%)を得た。
【0039】
実施例6
MWNT−PDPVP50(0.210g)を、コンデンサーを備えた50mLの反応フラスコに入れ、反応フラスコを窒素でパージした(5回)。ヨウ化N−ブチル(n−BuI,404mg,250μL,2.20mmol)及びアセトニトリル(10mL,予め脱酸素化)を、窒素雰囲気下で、シリンジにより注入した。混合物をオイルバスで加熱還流した。26時間後、反応混合物を室温まで冷却した後、ろ過した。その後、フィルター上の残留固形物をTHF(15mL)で3回洗浄し、真空乾燥した後、黒色粉末(MWNT−PDPVP50−BuI;0.193g;収率92%)を得た。
【0040】
実施例7〜15
(典型的な方法A)
リアクターを二酸化炭素で5回パージした。リアクター圧力を、二酸化炭素で5回パージした際に、3kg/cmに制御した。リアクターの圧力を解放し、リアクターを二酸化炭素の雰囲気下で維持した。合成された触媒(200mg;実施例3〜6)及びエポキシ化合物(10mmol)を、CO雰囲気下で、リアクターに導入した。混合物を、温度90℃で、所定の反応時間(表1を参照)、加熱攪拌した後、リアクターを氷水中で速やかに冷却した。冷却されたリアクターの圧力を解放した後、生成物をテトラヒドロフラン(THF)で抽出し、ろ過した。ろ液を真空下で濃縮して、黄色液体を得た(実施例7,9〜15)。生成物のGC−MS又はNMR分析の結果を表1に示す。
【0041】
(典型的な方法B)
合成された触媒(200mg;実施例4)及びエポキシ化合物(10mmol)を高圧リアクターに入れた。その後、リアクターを二酸化炭素で5回パージした。その後、リアクターを3kg/cmの圧力に制御した。混合物を温度90℃で所定の反応時間(表1を参照)、加熱攪拌し、その後、リアクターを氷水中で速やかに冷却し、冷却されたリアクターの圧力を解放し、生成物をテトラヒドロフラン(THF)で抽出し、ろ過した。ろ液を真空下で濃縮して、灰白色の固形物を得た(実施例8)。生成物のGC−MS又はNMR分析の結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
エポキシ化合物の変換率は、H−NMRにより決定した。
【0044】
本発明では、好ましい実施例を上記の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を逸脱しない範囲内で様々な変更や修正を加えることができ、従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カーボンナノ材料と、
(b)前記カーボンナノ材料にグラフトされ、ホスホニウム塩を含む繰り返し単位を有し、数平均分子量が1,000〜200,000であるポリマーと、
からなることを特徴とするカーボンナノ材料担持触媒。
【請求項2】
前記カーボンナノ材料が、単層カーボンナノチューブ、多層ナノチューブ、カーボンナノファイバ、カーボンナノカプセル、活性炭、カーボンブラック、又は、それらの組み合わせを含む請求項1に記載のカーボンナノ材料担持触媒。
【請求項3】
前記ポリマーが、遊離ラジカル重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)、開環重付加(ROP)、アニオン/カチオン重合、若しくは、縮合、又は、それらの組み合わせにより、前記カーボンナノ材料にグラフトされる請求項1または2に記載のカーボンナノ材料担持触媒。
【請求項4】
ホスホニウム塩を含む前記繰り返し単位が式Iの構造を有し、
【化1】

は、C−C10アルキレン、C−Cシクロオレフィン、エステル基、C−Cシクロアルケン、又は、C−C12アリーレンを示し、リンに結合する炭素原子は、ヘテロ原子、ハロゲン置換C−C12アリーレン、縮合C−C12アリーレンにより置換され、炭素に結合する水素原子は、C−C12アリール、又は、シクロアルキレンをリガンドとする金属錯体により置換され、前記金属錯体の前記シクロアルキレンは、前記ポリマーとリンの主鎖に結合しており;
、R及びRは、独立して、C−C10アルキル、C−Cシクロアルキル、又は、C−C10アリールであり;
Pは、リンを示し;
Xは、ハロゲンを示し;
nは、1より大きく、1,500より小さい整数である請求項1〜3のいずれか1項に記載のカーボンナノ材料担持触媒。
【請求項5】
前記ポリマーが、更に、不活性な繰り返し単位を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーボンナノ材料担持触媒。
【請求項6】
前記不活性な繰り返し単位が重合可能なビニル単量体からなる請求項5に記載のカーボンナノ材料担持触媒。
【請求項7】
前記不活性な繰り返し単位が、式IIの構造を有し、
【化2】

及びRは、独立して、水素、エステル基、C−C10アルキル、C−Cアルケニル、C−Cシクロアルキル、4〜8員の複素環アルキル、又は、C−C10アリールであり;
は、水素、又は、C−C10アルキルであり;
mは、0より大きく、1,500より小さい整数である請求項5または6に記載のカーボンナノ材料担持触媒。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のカーボンナノ材料担持触媒の存在下で、二酸化炭素とエポキシ化合物との間の付加環化反応を実施し、環状炭酸エステルを形成するステップを含むことを特徴とする環状炭酸エステルの製造方法。
【請求項9】
前記付加環化反応が15MPa(150atm)以下の圧力下で実施される請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記付加環化反応が200℃以下の温度で実施される請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記カーボンナノ材料担持触媒の添加量がエポキシ化合物の全添加量に対して1質量%以上である請求項8〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
更に、前記付加環化反応から得られる生成物をろ過して、前記カーボンナノ材料担持触媒を回収及び再利用するステップを含む請求項8〜11のいずれか1項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−130904(P2012−130904A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242432(P2011−242432)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】