説明

カーボンナノ構造体を含有する熱硬化性樹脂組成物およびその製造方法

【課題】 カーボンナノ構造体が、熱硬化性樹脂組成物に均一に分散してなるカーボンナノ構造体含有熱硬化性樹脂組成物を得る方法を提供する。
【解決手段】 液状の熱硬化性樹脂組成物を攪拌機により攪拌しながら、カーボンナノ構造体を投入し、カーボンナノ構造体を分散させたプレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を得る第一工程と、得られたプレミックス液状熱硬化性樹脂組成物をさらに押出機に投入して分散させる第二工程とを有するカーボンナノ構造体を含有する熱硬化性樹脂組成物の製造方法であって、前記第一工程および第二工程における液状熱硬化性樹脂組成物の温度を10〜70℃に維持しながら分散処理を行うことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンナノ構造体を含有する熱硬化性樹脂組成物の製造方法およびこれにより得られるカーボンナノ構造体を含有する熱硬化性樹脂組成物に関するものである。詳しく述べると、本発明は、カーボンナノチューブ等のカーボンナノ構造体を熱硬化性樹脂組成物中に均一に分散させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも記する。)に代表されるカーボンナノ構造体が、各種の分野において注目を集めている。
【0003】
このカーボンナノ構造体を構成するグラファイト層は、通常では、規則正しい六員環配列構造を有し、その特異な電気的性質とともに、化学的、機械的および熱的に安定した性質を持つ物質である。従って、このCNTは単独で用いる他、例えば、各種ポリマーないしはポリマー溶液等の有機組成物あるいは金属、セラミック、セメント等の無機組成物中に分散配合することにより、前記したような特性を生かした機能性複合材料としての応用が期待される。
【0004】
ところで、一般に、顔料や充填材の樹脂への混合、分散は従来から、ロールやニーダ等の混練機が用いられて
おり、例えば、特許文献1には、常温もしくは100℃以下の加温状態で液体もしくはペースト状であるモノマー中に、高いせん断力が働く攪拌機、例えば、インペラーミキサー、ニーダー、ロールミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル等、特にビーズミルを用いて分散処理を行うことにより導電性樹脂材料を製造することが開示されている。しかしながら、これらの攪拌機を単に用いて分散混合を行おうとすると、過度のせん断力が負荷されることにより、例えば、導電性付与という所期の目的が達せられない虞れがある。また、攪拌機として遊星作動攪拌機、いわゆるプラネタリミキサを用いて、攪拌混合することもよく行われているが、CNTのように樹脂に混合したときにチクソトロピック性を付与するような材料では、1軸では混合不十分となり、2軸または3軸の羽根を持つプラネタリミキサで、限られた回転数で少量づつ連続投入して、過度のせん断力が負荷されない条件にて攪拌混合する必要がある。
【0005】
すなわち、CNTは添加していくに従いチクソトロピック性が上昇していくために、しだいにせん断力が負荷されず、ついには回転羽根に樹脂が付着した状態となり、攪拌、分散が不十分となる。このため、得られる樹脂組成物におけるCNTの分散の均一性に問題が生じ、所期の電気的特性等の諸特性が得られなくものであった。
【特許文献1】特開2003−308734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、カーボンナノ構造体が、熱硬化性樹脂組成物に均一に分散してなるカーボンナノ構造体含有熱硬化性樹脂組成物を得る方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討の結果、CNT等のカーボンナノ構造体を破断させないような熱硬化性樹脂組成物との攪拌混合条件として、まず攪拌機によりプレミックス体を形成し、さらにプレミックス状態では分散の均一性に欠けるため、これを押出機を通過させて流動体の均一性を調整するという2段階の混合方法を用い、さらに、攪拌混合に適した樹脂粘度を得る上で、攪拌混合時の樹脂温度を所定範囲のものに維持することで、カーボンナノ構造体を均一分散性高く熱硬化性樹脂組成物中に配合し得ることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち、上記課題を解決する本発明は、液状の熱硬化性樹脂組成物を攪拌機により攪拌しながら、カーボンナノ構造体を投入し、カーボンナノ構造体を分散させたプレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を得る第一工程と、得られたプレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を押出機に投入して分散させる第二工程とを有するカーボンナノ構造体を含有する熱硬化性樹脂組成物の製造方法であって、前記第一工程および第二工程における液状熱硬化性樹脂組成物の温度を10〜70℃に維持することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物の製造方法である。
【0009】
本発明はまた、前記カーボンナノ構造体が、カーボンナノチューブ上記製造方法を示すものである。
【0010】
本発明はまた、前記カーボンナノチューブが、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した構造を有し、軸直交断面が多角形状である上記製造方法を示すものである。
【0011】
本発明はまた、前記カーボンナノチューブの外径が、軸方向に沿って変化するものである上記製造方法を示すものである。
【0012】
本発明はまた、前記カーボンナノチューブが、ラマン分光分析で測定されるID/IG比が0.2以下である上記製造方法を示すものである。
【0013】
本発明はまた、前記熱硬化性樹脂100質量部に対し、カーボンナノ構造体0.1〜30質量部を配合するものである上記製造方法を示すものである。
【0014】
本発明はさらに、前記熱硬化性樹脂には、金属粉末およびカーボン粉末からなる群から選択されてなる少なくとも1種の導電性フィラーが予め攪拌混合されているものであることを特徴とする上記製造方法を示すものである。
【0015】
本発明はまた、上記製造方法により得られたことを特徴とするカーボンナノ構造体を含有する熱硬化性樹脂組成物を示すものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、樹脂温度条件を維持しつつ、カーボンナノ構造体を液状の熱硬化性樹脂組成物に攪拌機を用いて分散させてプレミックス体とした後、得られたプレミックス体を、同様に樹脂温度条件を維持しつつ、押出機を通過させて流動体の均一性を調整することにより、添加されたカーボンナノ構造体が均一分散性高く配合された熱硬化性樹脂組成物を調製することができるものである。そして、このようにカーボンナノ構造体が均一分散性高く配合された熱硬化性樹脂組成物は、所期の電気的特性等の諸特性を発揮し得るものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0018】
本発明に係るカーボンナノ構造体を含有する熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、上記したように二段階の攪拌混合工程を連続的に用いることにより、カーボンナノ構造体を高い分散性をもって、熱硬化性樹脂組成物中に配合するものである。
【0019】
本発明の製造方法においては、まず第1工程として、攪拌機を有する槽内に、液状の熱硬化性樹脂組成物を投入し、これを攪拌しながら、カーボンナノ構造体を投入して混合してプレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を調製する。
【0020】
この第一工程において用いられる、攪拌機としては、後述する熱硬化性樹脂組成物とカーボンナノ構造体とを予備混合させてプレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を得るのにおいて、過度のせん断力が負荷されない条件にて攪拌混合を行えるものであれば特に限定されず、スクリューないしプロペラ、パドル、リボン等の各種攪拌子を備えた単軸ないしは多軸の回転軸を有する各種の攪拌機を用いることができる。好ましくは、攪拌時に撹拌槽内において静的領域を設けることなく系全体で均一な撹拌を行う上から多軸、代表的には2軸ないし3軸の攪拌機を用いることが望ましい。多軸の攪拌機としては、特に、2軸ないし3軸の遊星作動攪拌機であることが好ましい。遊星作動攪拌機は、一般に、プラネタリミキサとも称され、例えば、円筒形攪拌槽の軸心を中心として公転する遊星枠に取付けられた矩形枠状の回転羽根を有し、この回転羽根に攪拌槽内を公転しながら自転する遊星運動をさせることによって、攪拌槽内の粘性材料を攪拌するものである。
【0021】
図1は、このような遊星作動攪拌機の一例としての2軸プラネタリミキサの構造を示すものである。
【0022】
図1に示すプレネタリミキサ10は、支持フレーム11に対し、ハンドル12を回転させることによって内部の油圧ユニット等の昇降手段(図示せず)を作動させ、上下架自在組み付けられたアーム13を有している。そしてこのアーム13の先端には、攪拌ヘッド14が設けられている。一方、プラネタリミキサの下部側の攪拌槽台15上には、攪拌槽16が配置されており、前記昇降手段を作動させることによって、攪拌ヘッド14を、攪拌槽14内に配置することができるようになっている。
【0023】
そして、この攪拌ヘッド14には、回転駆動軸(図示せず)が、その軸心を攪拌槽16の軸心に合わせて、攪拌ヘッド14に固定筒(図示せず)を介して下向きに設けられており、この回転駆動軸には、プラネタリ型に接続された遊星歯車列、例えば、固定太陽歯車、遊星枠、及び第1、第2の遊星歯車によって構成される歯車列が組みつけられている。ここで、回転駆動軸が回転すると、遊星枠が回転駆動軸と一体的に回転し、遊星枠に支持された第1、第2の回転軸が回転駆動軸の回りを旋回(公転)する。第1、第2の回転軸が公転すると、第1、第2の回転軸にそれぞれ取り付けられた第1、第2の遊星歯車が、固定太陽歯車に噛合した状態で固定太陽歯車の回りを転動し、第1、第2の回転軸は、その軸心回りに回転(自転)する。かかる構成によって、第1、第2の回転軸は、回転駆動軸の回転によってタンク11内をタンク11の軸心を中心として公転しながら自転する遊星運動を行うものである。なお、図中符号17a、17bはそれぞれ、前記第1、第2の回転軸の先端に取り付けられた攪拌ブレードを示すものである。
【0024】
本発明の製造方法において用いられ得る2軸ないし3軸の遊星作動攪拌機の構造としては、もちろん図1に例示されるようなものに何ら限定されるものではなく、各種の態様のものを用いることが可能であり、さらに前記したように本発明の製造方法において用いられ得る攪拌機としては、これら遊星作動攪拌機に限定されるものではない。
【0025】
第一工程においては、このような攪拌機を用いて、熱硬化性樹脂組成物を攪拌しながら、急激に粘性が高くならないように、液状熱硬化性樹脂組成物の温度を所定温度範囲に維持しながら、カーボンナノ構造体を連続的あるいは分割的徐々に投入して混合を行う。この場合、液状熱硬化性樹脂組成物の温度を10〜70℃、より好ましくは、30〜70℃、さらに好ましくは50〜70℃に維持することが望ましい。70℃よりも高い温度となると、熱硬化性樹脂組成物は一般に反応が進み、急激な粘度上昇が起こり、得られるカーボンナノ構造体含有熱硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性に影響を及ぼす虞れが高い。また、使用時における作業性や物性にも影響を与えるため70℃以下に維持する必要がある。一方、樹脂組成物の温度が10℃よりも低い温度となっても、低温化による樹脂粘度の上昇が起こり、所期の撹拌混合が行えない虞れが高い。なお、このように攪拌槽内温度を70℃以下に維持するためは、以下に述べるように攪拌軸の回転速度を適度なものに制御する他、必要に応じて、攪拌槽に水冷ジャケット等の冷却ジャケット、その他の冷却装置を設けることも可能である。
【0026】
また、攪拌軸の回転速度としては、攪拌羽根の形状、大きさ等、さらに、使用する熱硬化性樹脂組成物の粘度、カーボンナノ構造体の添加量等にも左右されるが、一般に、10〜80rpm、より好ましくは20〜60rpmに制御して攪拌を行うことが好ましい。回転が10rpm未満であると、プレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を調製上での処理時間が長くなり、生産効率が低下する虞れがある。一方、回転数が80rpmより速くなると、プレミックス液状熱硬化性樹脂組成物に一時に過剰のせん断力が加わるため、プレミックス液状熱硬化性樹脂組成物の温度上昇を生じさせる結果、急激な粘度上昇が起こり、得られるカーボンナノ構造体含有熱硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性に影響を及ぼす虞れがある。
【0027】
また、第一工程における攪拌時間としては、カーボンナノ構造体の投入後、3〜10分間程度の攪拌混合が好ましい。3分より短い時間での攪拌は、混合が不十分となり、カーボンナノ構造体の濃度に誤差が生じやすくなり、一方10分以上攪拌を加えると、プレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を調製上での処理時間が長くなり、生産効率が低下する虞れがあるためである。
【0028】
本発明の製造方法においては、上記第一工程において、プレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を調製した後、このプレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を、第二工程として、上記第一工程におけると同様に液状熱硬化性樹脂組成物の温度を10〜70℃に維持しつつ、単軸または2軸の押出機を通過させて、最終的に、カーボンナノ構造体を分散配合させてなる熱硬化性樹脂組成物を製造する。
【0029】
前記したように攪拌機を用いて混合することにより、熱硬化性樹脂組成物マトリックス中にカーボンナノ構造体をある程度分散させたプレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を、押出機のスクリュー間を通過させることによって均一化を図り、カーボンナノ構造体を当該マトリックス中に微分散させるものである。
【0030】
この場合、押出機内における樹脂組成物の温度を10〜70℃に制御するのは以下の理由による。すなわち、押出機はカーボンナノ構造体の均一分散性を発現させるために用いるものであり、カーボンナノ構造体および熱硬化性樹脂組成物についてはプレミックス状態を維持する必要がある。70℃以下であればこの要件は維持されるが、70℃より高い温度では、熱硬化性樹脂の反応を促進させ、所期の性能を有するカーボンナノ構造体含有熱硬化性樹脂組成物を得ることが困難となるためである。一方、樹脂組成物の温度が10℃よりも低い温度となると、低温化による樹脂粘度の上昇が起こり、押出機による均一分散化が十分に行えない虞れが高い。押出機内における樹脂組成物の温度としては、より好ましくは、30〜70℃、さらに好ましくは50〜70℃に維持することが望ましい。なお、このように押出内における樹脂組成物の温度を70℃以下に維持するためは、以下に述べるように押出機のスクリューセグメントの回転速度を適度なものに制御する他、必要に応じて、スクリューバレルの外周に水冷ジャケット等の冷却ジャケット、その他の冷却装置を設けることも可能である。
【0031】
また、この押出機の回転速度としては、押出機のスクリューセグメントの形状、ピッチ等、さらに、使用する熱硬化性樹脂組成物の粘度、カーボンナノ構造体の添加量等にも左右されるが、一般に、80rpm以下、より好ましくは10〜70rpmに制御して攪拌を行うことが好ましい。回転が80rpmより速くなると、プレミックス液状熱硬化性樹脂組成物に一時に過剰のせん断力が加わるため、プレミックス液状熱硬化性樹脂組成物の温度上昇を生じさせる結果、急激な粘度上昇が起こり、得られるカーボンナノ構造体含有熱硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性に影響を及ぼす虞れがある。
【0032】
使用される1軸または2軸の押出機におけるスクリューセグメントの形状は、使用される熱硬化性樹脂組成物の性状に応じて、より低いせん断力で分散効率の高いものを選択することが好ましいが、特に、そのスクリューセグメントが、螺旋状フライト部の途中にニーディングディスク部を備え、混練効果を高めたものであるものが、望ましい。
【0033】
図2は、本発明の製造方法において用いられる押出機として、好ましい一例の構造を模式的に示す図面である。図2に示す押出機50においては、上記したように、そのスクリューセグメント51が、螺旋状フライト部52a、52bの途中にニーディングディスク部53を有してなるものであり、かつ当該スクリューセグメント51が収容されたスクリューバレル54よりも供給口55側に予備混合室56を有している。そして、この予備混合室56には、図示するように二本ロール57が備えられており、この二本ロール57を低速、例えば10〜50rpmにて回転させることによって、前記したように第一工程で調製したプレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を再度攪拌しながら、スクリュー部へと圧送することができる。
【0034】
なお、スクリューセグメント51において、供給口55側の螺旋状フライト部52aの長さは、供給された液状熱硬化性樹脂組成物に巻き込み同伴された空気を逆流させて原料供給口55から系外に放出する効果、樹脂組成物の押出量等に関係する。該部分の長さが短いと、同伴された空気が系外に充分に放出され難く、押出量が低下する。その結果、ニーディングディスク部53における混練が不充分となる虞れがある。このような観点から、螺旋状フライト部52aの長さは、特に限定されるものではないが、スクリューバレルの内径Dの10〜40倍程度であることが好ましい。また、ニーディングディスク部53の長さは、プレミックス液状熱硬化性樹脂組成物の混練に影響する。均一分散性を高める上から、その長さは、スクリューバレルの内径Dの1〜15倍程度であることが好ましい。また、2段目の螺旋状フライト部52bの長さは、押出機の吐出ダイへの液状熱硬化性樹脂組成物の供給圧力に関係するので、スクリューバレルの内径Dの5〜40倍程度であることが好ましい。なお、図2に示す例においては、ニーディングディスク部が1段のものであるが、螺旋状フライト部およびニーディングディスク部が、2〜3段の対になった多段式のものであってもよい。
【0035】
次に、本発明のカーボンナノ構造体含有熱硬化性樹脂組成物の製造方法において用いられる原料について説明する。
【0036】
本発明において用いられるカーボンナノ構造体とは、主として、炭素の六員環配列構造を有する構造体であって、この構造体の三次元のディメンションのうち少なくとも1つの寸法がナノメートルの領域にある、たとえば、数〜数100nm程度のオーダーを有する、ものである。
【0037】
この炭素の六員環配列構造としては、代表的には、シート状のグラファイト(グラフェンシート)を例示することができ、さらには、たとえば、炭素の六員環に五員環もしくは七員環が組み合わされた構造等をも含むことができる。
【0038】
より具体的には、カーボンナノ構造体としては、たとえば、一枚のグラフェンシートが筒状に丸まってできる直径数nm程度の単層カーボンナノチューブや、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した多層カーボンナノチューブ(多壁カーボンナノチューブ)、単層カーボンナノチューブの端部が円錐状で閉じたカーボンナノホーン、このカーボンナノホーンが直径100nm程度の球状の集合体となったカーボンナノホーン集合体等を例示することができる。さらに、炭素の六員環配列構造を有するカーボンオニオン等や、炭素の六員環配列構造中に五員環が導入されたフラーレンやナノカプセル等が包含される。なお、本発明においてこれらのカーボンナノ構造体は、上記したような種類の単独体とすることも、あるいは、2種以上の混合体とすることも可能である。
【0039】
これらのカーボンナノ構造体のうち、特に、筒状のグラフェンシートの軸直交断面が多角形状であるカーボンナノチューブを用いることが、本発明の製造方法により得られるカーボンナノ構造体含有熱硬化性樹脂組成物において、カーボンナノ構造体の熱硬化性樹脂中における分散性を高める上から好ましいものである。図3に示すように、カーボンナノチューブの軸直交断面が多角形状であることは、2400℃以上の温度にて熱処理を施すことに起因するものであるが、この熱処理により、カーボンナノチューブを積層方向およびグラフェンシートの面方向の両方において緻密で欠陥の少ないものとし、曲げ剛性(EI)を向上させることができる。この結果、曲がりにくく、弾性、すなわち変形後も元の形状に戻ろうとする性質を付与することができるので、絡み合った構造をとり難く熱硬化性樹脂に容易に分散させることができるためである。なお、カーボンナノチューブは、グラフェンシートが軸直角方向に積層したものを用いることが、曲げ剛性を向上させる上で好ましいものである。
【0040】
また、図4に示すように、カーボンナノチューブの外径は、軸方向に沿って変化するものであることが、本発明の製造方法により得られるカーボンナノ構造体含有熱硬化性樹脂組成物において、カーボンナノ構造体の熱硬化性樹脂中における軸方向への移動を防止し、分散の安定性を向上させる上から好ましいものである。
【0041】
また、カーボンナノチューブは、ラマン分光分析で測定されるID/IG比が0.2以下であるもの、つまりグラフェンシート内の欠陥が少ないカーボンナノチューブを用いることが、本発明の製造方法により得られるカーボンナノ構造体含有熱硬化性樹脂において、カーボンナノ構造体の熱硬化性樹脂組成物中における導電性を向上させる上から好ましいものである。
【0042】
なお、これらのカーボンナノチューブの製法としては、遷移金属超微粒子を触媒として炭化水素等の有機化合物をCVD法で化学熱分解することにより生成する方法を採用する。より具体的には、触媒の遷移金属もしくは遷移金属化合物と、硫黄もしくは硫黄化合物と、原料炭化水素とを雰囲気ガスとともに300℃以上に加熱してガス化して生成炉に導入し、800〜1300℃の範囲の一定温度で加熱して触媒金属を微粒子化させるとともに炭化水素を分解させることにより微細炭素繊維を合成生成させる。こうして生成した炭素繊維は、未反応原料、非繊維状炭化物、タール分および触媒金属を含んでおり、純度が低く、また結晶性も低い。そこで、800〜900℃の範囲の温度に保持された熱処理炉にて未反応原料やタール分などの揮発分を気化して除き、かつその後に2400〜3000℃の範囲の温度でアニール処理することによって炭素繊維の多層構造の形成を改善するとともに繊維に含まれる触媒金属を蒸発させることが好ましい。
【0043】
なお、原料となる有機化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素、一酸化炭素(CO)、エタノール等のアルコール類などが使用できる。雰囲気ガスには、アルゴン、ヘリオム、キセノン等のアルコール類などが使用できる。また、触媒としては、鉄、コバルト、モリブデンなどの遷移金属あるいはフェロセン、酢酸金属塩などの遷移金属化合物と硫黄あるいはチオフェン、硫化鉄などの硫黄化合物の混合物を使用する。
【0044】
一方、本発明において用いられる液状の熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、フタル酸樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、特にフタル酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの液状の熱硬化性樹脂組成物が好適に使用できる。なお、常温にて固形タイプの熱硬化性樹脂もあるが、前記したように70℃以下の温度で攪拌、押出し処理する必要があり、熱硬化性樹脂においては、固形タイプのものより液状タイプのもののほうがより優れた特性を得る上から好ましいものである。
【0045】
なお、本発明においては、上記したように攪拌機を用いた第1工程および押出機を用いた第2工程において液状の熱硬化性樹脂組成物の温度を10〜70℃に維持するが、この温度範囲において、液状の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、0.01〜80Pa・s程度の粘度を示すことが望ましい。粘度が0.01Pa・s未満であると、攪拌、押出しにおける回転数を高めても、カーボンナノ構造体の分散が悪くなるためである。これは、カーボンナノ構造体は、ある程度の粘度の樹脂の流動によって分散されるためである。一方、粘度が80Pa・sを超えるものであると、攪拌、押出時においてカーボンナノ構造体に加わる応力が高くなり、熱硬化性樹脂組成物の温度上昇を生じさせる結果、急激な粘度上昇が起こり、得られるカーボンナノ構造体含有熱硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性に影響を及ぼす虞れがあるためである。
【0046】
本発明の製造方法において、このような熱硬化性樹脂組成物に対する上記カーボンナノ構造体の配合量としては、特に限定されるわけではなく、得ようとするカーボンナノ構造体含有熱硬化性樹脂組成物の物性等に応じて適宜選択されるが、例えば、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対し、カーボンナノ構造体0.1〜30質量部程度配合することができる。このような配合割合のいずれの範囲においても、本発明の製造方法により、カーボンナノ構造体が均一に分散された組成物を得ることができる。
【0047】
なお、本発明において用いられる熱硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で公知の種々の添加剤、例えば、充填剤、補強剤、各種安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、滑剤、可塑剤、溶剤等を配合することが可能である。
【0048】
特に、本発明において導電性樹脂組成物を調製しようとする場合には、金属粉末、カーボン粉末等の導電性フィラーを配合することが可能である。なお、本発明に係るカーボンナノ構造体含有熱硬化性樹脂組成物が、このような金属粉末、カーボン粉末等の導電性フィラーを、前記したカーボンナノ構造体と共に含有している場合、比較的少量のカーボンナノ構造体を含有することによって、これら導電性フィラーの配合量を低減させても、従来多量の導電性フィラーを配合することによってしか得られなかった高い導電性が発揮され、導電性フィラーの配合量の増大によって生じていた硬化皮膜強度の低下、易剥離性といった問題が解消されるとともに、高価な金属の添加量を低減することによるコスト的な利点が得られる。このように高い導電性が発現する作用機序として正確なところは明らかではないが、樹脂マトリックス中において金属またはカーボン粉末といった比較的大きな導電性フィラーとより小さなカーボンナノ構造体とが接触することにより生じるものであると推定される。詳しくは、導電性フィラー同士の接触の際に生じる空隙にカーボンナノ構造体が充填されることにより電気的な連鎖が形成されて高い導電性が発現されると推定されるものである。
【0049】
金属粉末としては特に限定されるものではないが、例えば、銀、白金、パラジウム、銅、ニッケルなどの金属を1種あるいは混合物として用いることができる。これらの金属粉末の形状は、フレーク状、球状、樹枝状、樹塊状、不定形など導電フィラーとして使用されるものであれば特に限定されることなく使用することができる。このような金属粉末の粒径としては、特に限定されるものではないが、例えば、0.5〜15μm程度が好ましい。平均粒径が0.5μmより小さいと、金属の表面積が増加し、酸化し易くなってしまい導電性が十分に得られなくなってしまうからである。一方、平均粒径が15μmよりも大きいと、粒子同士が接触したときに多数の空隙が生じてしまい導電性が十分に得られなくなってしまう虞れがあるからである。
【0050】
また導電性フィラーとなるカーボン粉末としては、特に限定されるものではないが、一般に、カーボンブラックを用いることが好ましい。カーボンブラックとしては、各種製法により得られるいずれのものも使用することは可能であるが、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック等を好適なものとして例示することができる。また、原料の相違により分類されるガスブラック、オイルブラック、アセチレンブラック等もまた好適な例として例示することができる。これらの中で、特に、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックが好ましい。
【0051】
本発明に係る製造方法において、導電性樹脂組成物を調製するために、上記したような金属粉末、カーボン粉末等の導電性フィラーを熱硬化性樹脂組成物に配合する場合において、その配合量としては、金属粉末の場合、例えば、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して、金属粉末100〜500質量部程度が望ましい。100質量部より少ないと、金属粒子同士の接触箇所が少ないために、十分な導電性が得られなくなってしまう虞れがあるためであり、一方、500質量部よりも多いと、相対的に樹脂成分の含有量が少なくなり、この導電性樹脂組成物で例えば、導電路等を形成しても、この導電路が剥離しやすい等の不具合が発生する虞れが高くなるためである。また、カーボンブラックの場合は、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して、カーボンブラック5〜50質量部程度が望ましい。5質量部より少ないと、十分な導電性が得られなくなってしまう虞れがあるためであり、一方、50質量部よりも多いと、相対的に樹脂成分や、後述するカーボンナノ構造体の含有量が少なくなり、導電性が十分に発揮されなくなったり、この導電性樹脂組成物で例えば、導電路等を形成してもこの導電路が剥離しやすい等の不具合が発生する虞れが高くなるためである。なお、このように導電性フィラーを配合する場合におけるカーボンナノ構造体の配合量は、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対し、カーボンナノ構造体0.1〜30質量部程度配合することが適当である。
【0052】
また、本発明の製造方法において、熱硬化性樹脂組成物に対し、上記したような導電性フィラー、その他の充填剤等を配合する場合には、先に述べた第一工程における、熱硬化性樹脂組成物へのカーボンナノ構造体の添加攪拌に先立ち、これらの導電性フィラー、その他の充填剤等を熱硬化性樹脂組成物に予め各種攪拌装置、混練機等を用いて分散配合しておくことが望ましい。すなわち、これらの導電性フィラー、その他の充填剤等を、先に述べたような比較的せん断力の弱い第一工程および第二工程において、樹脂マトリックス中に十分に分散配合することは難しく、逆に前記第一工程および第二工程において、これらのこれらの導電性フィラー、その他の充填剤等を均一に分散させようとすると、熱硬化性樹脂組成物へ与えるせん断力が高くなりすぎ、得られるカーボンナノ構造体含有熱硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性に影響を及ぼす虞れがある。
【0053】
本発明に係るカーボンナノ構造体含有熱硬化性樹脂組成物は、上記したような製造方法により得られるものであり、樹脂組成物中に配合されたカーボンナノ構造体が、均一に分散されているものである。従って、このようなカーボンナノ構造体含有熱硬化性樹脂組成物を施工することにより形成されるフィルム、あるいは各種成形体は、その電気的特性、あるいは被膜強度、剛性等の力学特性等に優れるとともに、寸法安定性にも優れたものとなる。従って、特に限定されるものではないが、例えば、導電性塗料や導電性コーティング剤、導電性インキ、導電性接着剤等の各種用途において、好適に応用され得るものである。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。
【0055】
実施例1
表1に示すようにビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭電化工業(株)製、アデカレジン EP4100E、エポキシ当量190)90質量部、ジシアンジアミド(旭電化工業(株)製、アデカハードナー EH3636−AS)7.2質量部を予め混合してなる熱硬化性樹脂組成物を、プラネタリミキサ(特殊機化工業(株)製、TKハイビスミックス)に投入し、40rpmの回転数で攪拌しながら、カーボンナノチューブ(多層カーボンナノチューブ、直径20〜70nm)10質量部を連続的に投入した後、槽内温度を表1に示すようにそれぞれ10〜70℃の範囲内の所定温度に制御して、10分間混合を行い、プレミックスを行った。なお、投入されるCNTは、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した構造を有し軸直交断面が多角形状であり、カーボンナノチューブの外径が軸方向に沿って変化し、ラマン分光分析で測定されるID/IG比が0.2以下であるものとする。
【0056】
次に、得られたプレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を、2軸押出機(Brabender製、PLASTI-CORDER、L/D=25)を使用して、軸回転数を50rpmに制御し、装置内温度を表1に示すようにそれぞれ10〜70℃の範囲内の所定温度に保ち、押出して、カーボンナノチューブを分散配合してなる一成分熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0057】
攪拌および押出時における温度の影響性を調べるために、得られた一成分熱硬化性樹脂組成物を使用して、ガラス板上に50×50mmの硬化塗膜を作製し、四探針式低抵抗率計(三菱化学(株)製、ロレスタGP)を用いて塗膜表面9箇所の抵抗(Ω)を測定した。そして同抵抗計により体積抵抗(Ω・cm)に換算し、平均値を算出した。また、併せて、この塗膜を形成する際の一成分熱硬化性樹脂組成物の塗布性について、塗布性良好(○)、塗布不可(×)の二段階にて評価した。これらの結果を表1に示す。
【0058】
実施例2
表1に示すようにビスフェノールF型エポキシ樹脂(旭電化工業(株)製、アデカレジン EP4901E、エポキシ当量170)90質量部、ジシアンジアミド(旭電化工業(株)製、アデカハードナー EH3636−AS)7.2質量部を予め混合してなる熱硬化性樹脂組成物を、プラネタリミキサ(特殊機化工業(株)製、TKハイビスミックス)に投入し、40rpmの回転数で攪拌しながら、カーボンナノチューブ(多層カーボンナノチューブ、直径20〜70nm)10質量部を連続的に投入した後、槽内温度を表2に示すようにそれぞれ10〜70℃の範囲内の所定温度に制御して、10分間混合を行い、プレミックスを行った。次に、得られたプレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を、2軸押出機(Brabender製、PLASTI-CORDER、L/D=25)を使用して、軸回転数を50rpmに制御し、装置内温度を表1に示すようにそれぞれ10〜70℃の範囲内の所定温度に保ち、押出して、カーボンナノチューブを分散配合してなる一成分熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0059】
得られた一成分熱硬化性樹脂組成物を使用して、実施例1と同様にして硬化塗膜を作製し、同様の測定を行って、体積抵抗値(Ω・cm)を算出し、攪拌および押出時における温度の影響性を調べた。得られた結果を表2に示す。また、併せて、この塗膜を形成する際の一成分熱硬化性樹脂組成物の塗布性について実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0060】
実施例3
表3に示すように、1官能反応タイプ エポキシ希釈剤(旭電化工業株式会社製、アデカグリシロール ED509S)90質量部にジシアンジアミド(旭電化工業株式会社製、アデカハードナー EH3636−AS)7.2質量部を予め混合してなる熱硬化性樹脂組成物を、プラネタリミキサ(特殊機化工業(株)製、TKハイビスミックス)に投入し、50rpmの回転数で攪拌しながら、カーボンナノチューブ(多層カーボンナノチューブ、直径20〜70nm)10質量部を少量づつ添加した後、槽内温度を表3に示すようにそれぞれ10〜70℃の範囲内の所定温度に制御して、10分間混合を行い、プレミックスを行い、次に、得られたプレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を、2軸押出機(Brabender製、PLASTI-CORDER、L/D=25)を使用して、軸回転数を60rpmに制御し、装置内温度を表3に示すようにそれぞれ10〜70℃の範囲内の所定温度に保ち、押出して、カーボンナノチューブを分散配合してなる一成分熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0061】
得られた一成分熱硬化性樹脂組成物を使用して、実施例1と同様にして硬化塗膜を作製し、同様の測定を行って、体積抵抗値(Ω・cm)を算出し、攪拌および押出時における温度の影響性を調べた。得られた結果を表3に示す。また、併せて、この塗膜を形成する際の一成分熱硬化性樹脂組成物の塗布性について実施例1と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0062】
実施例4
表4に示すように、ウレタン変性エポキシ樹脂(旭電化工業株式会社製、アデカレジン EPU6)90質量部にジシアンジアミド(旭電化工業株式会社製、アデカハードナー EH3636−AS)7.2質量部を予め混合してなる熱硬化性樹脂組成物を、プラネタリミキサ(特殊機化工業(株)製、TKハイビスミックス)に投入し、20rpmの回転数で攪拌しながら、カーボンナノチューブ(多層カーボンナノチューブ、直径20〜70nm)10質量部を少量づつ添加した後、槽内温度を表3に示すようにそれぞれ10〜70℃の範囲内の所定温度に制御して、10分間混合を行い、プレミックスを行い、次に、得られたプレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を、2軸押出機(Brabender製、PLASTI-CORDER、L/D=25)を使用して、軸回転数を70rpmに制御し、装置内温度を表3に示すようにそれぞれ10〜70℃の範囲内の所定温度に保ち、押出して、カーボンナノチューブを分散配合してなる一成分熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0063】
得られた一成分熱硬化性樹脂組成物を使用して、実施例1と同様にして硬化塗膜を作製し、同様の測定を行って、体積抵抗値(Ω・cm)を算出し、攪拌および押出時における温度の影響性を調べた。得られた結果を表4に示す。また、併せて、この塗膜を形成する際の一成分熱硬化性樹脂組成物の塗布性について実施例1と同様にして評価した。結果を表4に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
表1〜4に示す結果から明らかなように、70℃という所定の温度範囲内において攪拌、押出しされた本発明に係る実施例においては、いずれも塗布性および体積抵抗値共に優れた特性を有する組成物が得られた。なお、実施例1、2、3において使用した熱硬化性樹脂においては攪拌時の温度が低温になるほど粘度が高くなる傾向があるため、せん断力がかかりやくなって低温側ほど抵抗値が高くなる傾向が見られた。一方、実施例4において使用した熱硬化性樹脂においては、使用した攪拌温度範囲内においてはあまり粘度差がないため、温度変化による温度変化があまり見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の製造方法の第1工程において用いられる攪拌機の一例の構造を示す図面である。
【図2】本発明の製造方法の第2工程において用いられる押出機の一例の構造を模式的に示す図面である。
【図3】本発明の製造方法において用いられるカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明の製造方法において用いられるカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0070】
10 プレネタリミキサ
11 支持フレーム
12 昇降ハンドル
13 アーム
14 攪拌ヘッド
16 攪拌槽
17a、17b 攪拌ブレード
50 押出機
51 スクリューセグメント
52a、52b 螺旋状フライト部
53 ニーディングディスク部
54 スクリューバレル
55 供給口
56 予備混合室
57 二本ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の熱硬化性樹脂組成物を攪拌機により攪拌しながら、カーボンナノ構造体を投入し、カーボンナノ構造体を分散させたプレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を得る第一工程と、得られたプレミックス液状熱硬化性樹脂組成物を押出機に投入して分散させる第二工程とを有するカーボンナノ構造体を含有する熱硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
前記第一工程および第二工程における液状熱硬化性樹脂組成物の温度を10〜70℃に維持することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記カーボンナノ構造体は、カーボンナノチューブである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブは、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した構造を有し、軸直交断面が多角形状であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブの外径が、軸方向に沿って変化することを特徴とする請求項2または3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブは、ラマン分光分析で測定されるID/IG比が0.2以下であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂組成物100質量部に対し、カーボンナノ構造体0.1〜30質量部を配合するものである請求項1〜5のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂組成物には、金属粉末およびカーボン粉末からなる群から選択されてなる少なくとも1種の導電性フィラーが予め攪拌混合されているものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の製造方法により得られたことを特徴とするカーボンナノ構造体を含有する熱硬化性樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−57057(P2006−57057A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242933(P2004−242933)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(502205145)株式会社物産ナノテク研究所 (101)
【出願人】(391013106)株式会社パーカーコーポレーション (27)
【Fターム(参考)】