説明

カーボンブラック、カーボンブラックの製造方法およびゴム組成物

【課題】ゴム組成物に配合したときに、補強性および耐摩耗性に優れるとともに、発熱性が低く反発性の高いゴムを提供し得る新規なカーボンブラックを提供する。
【解決手段】平均長さ2〜10nmの微小突起を表面に有する平均径が15〜40nmの一次粒子により構成されてなることを特徴とするカーボンブラックであり、好ましくは、DBP吸収量が40〜150ml/100g、窒素吸着比表面積が50〜150m/gであるカーボンブラックである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラック、カーボンブラックの製造方法およびゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム補強用のカーボンブラックとしては、具備特性に応じた多様な品種があり、これらの具備特性がゴムの諸性能を決定付けるための主要な因子となるため、ゴム組成物への配合に当たっては、部材用途に適合する特性を有するカーボンブラックが選定されている。
【0003】
例えば、タイヤトレッド部のような高度の耐摩耗性が要求されるゴム部材には、従来から、SAF(N110)、ISAF(N220)などの、粒子径が小さく、比表面積が大きい、高ストラクチャーのハード系カーボンブラックが使用されてきたが、これらのカーボンブラックを配合してなるゴム組成物から得られるゴムは、高度の補強性、耐摩耗性が付与される反面、発熱特性が増大し、反発弾性が低下し易いという技術課題を有していた。
【0004】
また、近年、省資源、省エネルギーの社会的要求に対応するため低燃費タイヤの開発要請が強く、低燃費タイヤとして好適な、低発熱で高反発なゴム特性を発揮するゴム組成物の開発が盛んに行われるようになっており、一般に、ゴム組成物に対して粒子径が大きく、比表面積の小さなカーボンブラックを配合することにより低発熱で高反発なゴム特性を達成している。
【0005】
このように、低燃費タイヤのトレッド部には、補強性および耐摩耗性に優れるとともに、発熱性が低く反発性の高いゴムが求められているが、補強性や耐摩耗性を改善するために配合されるカーボンブラックと、発熱性や反発性を改善するために配合されるカーボンブラックでは、その粒子径や比表面積が全く異なり、背反関係にあることから、配合するカーボンブラックの粒子径や比表面積を調整することによって所望のゴム組成物を得ることは困難である。
【0006】
そこで、従来からゴム補強用のカーボンブラックの基本特性として重視されてきた、粒子径、比表面積、ストラクチャーなどの特性要素に加えて、カーボンブラックのコロイダル特性をよりミクロに評価し、特定の物性を有するカーボンブラックをゴム成分に配合することにより、補強性、耐摩耗性、発熱特性、反発弾性などのゴム特性を改善する技術が提案されている(例えば、特許文献1(特開2002−188022号公報)、特許文献2(特開平8−169983号公報)等参照) 。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−188022号公報
【特許文献2】特開平8−169983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況下、本発明は、補強性、耐摩耗性、発熱特性、反発弾性などのゴム特性を改善し得る全く新規なカーボンブラックを提供するとともに、該カーボンブラックを簡便に製造する方法を提供し、さらに、補強性、耐摩耗性、発熱特性、反発弾性などのゴム特性を改善し得るゴム組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術課題を解決するために本発明者等が鋭意検討した結果、ガス流路の上流から下流方向に向かって、燃料燃焼帯域、原料導入帯域、反応停止帯域が順次設けられた反応炉を用いてカーボンブラックを製造する方法であって、前記燃料燃焼帯域に酸素含有ガスと燃料とを導入し混合燃焼させて高温燃焼ガス流を発生させ、前記原料導入帯域に前記高温燃焼ガス流を導入しつつ、その前段で原料炭化水素を導入しその後段で原料炭化水素と酸素含有ガスとを導入して、順次反応させることによりカーボンブラック含有ガスを生成した後、前記反応停止帯域に前記カーボンブラック含有ガスを導入しつつ冷却液を噴霧する方法によって、平均長さ2〜10nmの微小突起を表面に有する平均径が15〜40nmの一次粒子により構成されてなるカーボンブラックを製造することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)平均長さ2〜10nmの微小突起を表面に有する平均径が15〜40nmの一次粒子により構成されてなることを特徴とするカーボンブラック、
(2)DBP吸収量が40〜150ml/100g、窒素吸着比表面積が50〜150m/gである上記(1)に記載のカーボンブラック、
(3)ガス流路の上流から下流方向に向かって、燃料燃焼帯域、原料導入帯域、反応停止帯域が順次設けられた反応炉を用いてカーボンブラックを製造する方法であって、
前記燃料燃焼帯域に酸素含有ガスと燃料とを導入し混合燃焼させて高温燃焼ガス流を発生させ、
前記原料導入帯域に前記高温燃焼ガス流を導入しつつ、その前段で原料炭化水素を導入しその後段で原料炭化水素と酸素含有ガスとを導入して、順次反応させることによりカーボンブラック含有ガスを生成した後、
前記反応停止帯域に前記カーボンブラック含有ガスを導入しつつ冷却液を噴霧する
ことを特徴とするカーボンブラックの製造方法、
(4)前記原料導入帯域後段における原料炭化水素と酸素含有ガスとの導入が2流体ノズルにより行われる上記(3)に記載のカーボンブラックの製造方法、
(5)ゴム成分100質量部に対し、上記(1)もしくは(2)に記載のカーボンブラックまたは上記(3)もしくは(4)に記載の方法で得られたカーボンブラックを20〜150質量部含むことを特徴とするゴム組成物、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゴム組成物の配合成分として用いたときに、得られるゴムの補強性や耐摩耗性を向上させるとともに、得られるゴムの発熱特性や反発弾性を向上させることができるカーボンブラックを提供することができる。
また、本発明によれば、上記カーボンブラックを簡便に製造する方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、補強性、耐摩耗性、発熱性や反発弾性等のゴム特性が向上したゴム組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るカーボンブラックの製造に使用する反応炉の概略断面図である。
【図2】本発明の実施例で得られたカーボンブラックを示す図である。
【図3】本発明の比較例で得られたカーボンブラックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<カーボンブラック>
先ず、本発明のカーボンブラックについて説明する。
本発明のカーボンブラックは、平均長さ2〜10nmの微小突起を表面に有する平均径が15〜40nmの一次粒子により構成されてなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明のカーボンブラックは、一次粒子により構成されてなる。
カーボンブラックは、一次粒子、すなわち球状カーボンの基本粒子が凝集して不規則な鎖状に枝分かれした複雑な構造を有しており、この凝集構造の最小単位はアグリゲートと称されている。
【0015】
本発明のカーボンブラックにおいて、上記一次粒子の平均径は15〜40nmであり、18〜38nmであることが好適であり、21〜35nmであることがより好適である。
【0016】
本発明のカーボンブラックにおいては、カーボンブラックを構成する一次粒子の平均径が15〜40nmであることにより、ゴム組成物に配合したときに、低発熱で高反発なゴムを得ることができる。上記一次粒子の平均径が15nmを下回るとカーボンブラックを構成する基本粒子が小さくなり過ぎ、ゴム組成物に配合したときに得られるゴムの発熱性が増大する場合があり、上記一次粒子の平均径が40nmを超えると、ゴム組成物に配合したときに得られるゴムの補強性能、特に耐摩耗性が低下する場合がある。
【0017】
なお、本出願書類において、上記一次粒子の平均径は、透過型電子顕微鏡を用いて、1000個の一次粒子の粒子径を測定したときの平均値を意味する。
【0018】
本発明のカーボンブラックにおいて、カーボンブラックを構成する一次粒子の表面には、平均長さ2〜10nmの微小突起が形成されている。
上記微小突起の平均長さは3〜9nmであることが好適であり、4〜8nmであることがより好適である。
【0019】
上記微小突起の平均長さが2〜10nmであることにより、カーボンブラックをゴム組成物に配合したときに、カーボンブラックとゴム成分との物理的な引っ掛かりが増加して、得られるゴムの補強性が向上し、さらにカーボンブラックのゴム成分からの脱落が抑制されるため、得られるゴムに所望の耐摩耗性を付与することがきる。また、カーボンブラックとゴム成分とが引っ掛かることで、ゴムに繰り返し負荷が掛ってもカーボンブラックが動きにくくなり、カーボンブラック同士の摩擦が軽減され、内部摩擦に起因する発熱を抑制することもできる。
【0020】
上記微小突起の平均長さが2nmを下回ると、ゴム組成物に配合したときにゴム成分との引っ掛かりが少なくなって、得られるゴムの補強性が低下する。また、上記微小突起の平均長さが10nmを超えると、微小突起の長さと一次粒子の粒径との差が小さくなって、上記引っ掛かりによるゴムの補強性向上効果が得られにくくなる。
【0021】
なお、本出願書類において、微小突起の平均長さは、透過型電子顕微鏡で300個の微小突起の長さを測定したときの平均値を意味する。
【0022】
本発明のカーボンブラックにおいては、一次粒子の平均径が15〜40nmであることにより、ゴム組成物に配合した際に、得られるゴムに低発熱性と高反発性を付与することができ、一次粒子表面に平均長さ2〜10nmの微小突起が設けられていることにより、ゴム組成物に配合した際に、得られるゴムに補強性、耐摩耗性、低発熱性を付与することができる。
【0023】
ゴム組成物中に粒径の大きなカーボンブラックと粒径の小さなカーボンブラックを配合して、大粒のカーボンブラックによって得られるゴムに低発熱性と高反発性を付与するとともに、小粒のカーボンブラックによって得られるゴムに補強性と耐摩耗性を付与することも考えられるが、本発明者等の検討によれば、上記粒径の異なるカーボンブラックの配合による対応では、上述した引っ掛かりによる効果が得られないことから、得られるゴムに十分な補強性、耐摩耗性、低発熱性を付与することができなかった。また、小粒のカーボンブラックとして粒径が10nm未満のカーボンブラックを利用する場合、このようなカーボンブラックは製造が困難であることから、工業的な実用化が困難である。
【0024】
本発明のカーボンブラックは、DBP吸収量が40〜150ml/100gであることが好ましく、50〜140ml/100gであることがより好ましく、60〜130ml/100gであることがさらに好ましい。
【0025】
DBP吸収量が40ml/100g未満であると、ゴム組成物に配合した際にカーボンブラックの分散性が悪化して得られるゴムの補強性が低下する場合があり、150ml/100gを超えるとゴム組成物に配合した際に加工性が低下する場合がある。
【0026】
なお、本出願書類において、DBP吸収量は、JISK6217−4「ゴム用カーボンブラック−基本特性−第4部、DBP吸収量の求め方」に規定された方法により測定したときの値を意味する。
【0027】
本発明のカーボンブラックは、窒素吸着比表面積が50〜150m/gであることが好ましく、60〜140m/gであることがより好ましく、70〜130m/gであることがさらに好ましい。
【0028】
窒素吸着比表面積が50m/g未満では、ゴム組成物に配合したときに得られるゴムに十分な補強性を付与することができない場合があり、150m/gを超えると、ゴム組成物に配合したときに得られるゴムの発熱性が増大する場合がある。
【0029】
なお、本出願書類において、窒素吸着比表面積は、JISK6217−2「ゴム用カーボンブラック−基本特性−第2部、比表面積の求め方−窒素吸着法、単点法」に規定された方法により測定したときの値を意味する。
【0030】
本発明のカーボンブラックは、ゴム組成物の配合成分として用いたときに、得られるゴムの補強性や耐摩耗性を向上させるとともに、ゴムの発熱特性や反発弾性を向上させることができる。本発明のカーボンブラックは、タイヤトレッド用のゴム組成物の配合成分として好適に用いることができる。
【0031】
本発明のカーボンブラックを製造する方法としては、以下に詳述する本発明のカーボンブラックの製造方法を挙げることができる。
【0032】
<カーボンブラックの製造方法>
次に、本発明のカーボンブラックの製造方法について説明する。
本発明のカーボンブラックの製造方法は、ガス流路の上流から下流方向に向かって、燃料燃焼帯域、原料導入帯域、反応停止帯域が順次設けられた反応炉を用いてカーボンブラックを製造する方法であって、前記燃料燃焼帯域に酸素含有ガスと燃料とを導入し混合燃焼させて高温燃焼ガス流を発生させ、前記原料導入帯域に前記高温燃焼ガス流を導入しつつ、その前段で原料炭化水素を導入しその後段で原料炭化水素と酸素含有ガスとを導入して、順次反応させることによりカーボンブラック含有ガスを生成した後、前記反応停止帯域に前記カーボンブラック含有ガスを導入しつつ冷却液を噴霧することを特徴とするものである。
【0033】
本発明のカーボンブラックの製造方法において、使用する反応炉としては、例えば、図1に模式的に示すような広径円筒反応炉を挙げることができる。
以下、本発明のカーボンブラックの製造方法を、図1に示す反応炉を適宜例にとって説明する。
【0034】
図1に示す反応炉には、炉内に形成されたガス流路の上流から下流方向に向かって連通する、燃料燃焼帯域3、原料導入帯域4、反応帯域7および反応停止帯域9が順次設けられている。
【0035】
すなわち、図1に示す反応炉において、燃料燃焼帯域3は、炉軸方向に垂直な方向から空気等の酸素含有ガスを導入する酸素含有ガス導入口1と、炉軸方向に燃料を供給する燃焼用バーナー2とを備えている。また、原料導入帯域4は、炉軸方向に垂直な方向から原料炭化水素を供給する前段原料導入ノズル5と同じく炉軸方向に垂直な方向から原料炭化水素と酸素含有ガスとを供給する後段原料導入ノズル6とを備え、燃料燃焼帯域3と同軸的に連通して設けられている。さらに、反応帯域7は、原料導入帯域4に同軸的に連通して設けられ、反応停止帯域9は、炉軸方向に垂直な方向から冷却液を供給する冷却装置8を備え、反応帯域7に同軸的に連通して設けられている。
【0036】
図1に示す反応炉は、燃料燃焼帯域3から原料導入帯域4に向かって縮管するとともに、原料導入帯域4から反応部7に向かって拡管する鼓状絞り形状を有しているが、反応炉形状はこのような形状に限定されず、種々の形状を採ることができる。
【0037】
本発明のカーボンブラックの製造方法においては、燃料燃焼帯域3に酸素含有ガスと燃料を導入し混合燃焼させて高温燃焼ガス流を発生させる。
酸素含有ガスとしては、酸素、空気またはこれらの混合物からなるガスを挙げることができ、燃料としては、水素、一酸化炭素、天然ガス、石油ガス、FCC残渣油等、重油等の石油系液体燃料、クレオソート油等の石炭系液体燃料を挙げることができる。
【0038】
燃料燃焼帯域3における酸素含有ガスの供給量は、2000〜5000Nm/hであることが好ましく、2500〜4500Nm/hであることがより好ましく、3000〜4000Nm/hであることがさらに好ましい。また、燃料燃焼帯域3における燃料の供給量は、50〜400kg/hであることが好ましく、100〜300kg/hであることがより好ましく、150〜200kg/hであることがさらに好ましい。
燃料燃焼帯域3においては、例えば、400〜500℃に予熱した酸素含有ガスを供給しつつ燃料を供給することにより、両者を混合燃焼させて高温燃焼ガス流を発生させることができる。
【0039】
本発明のカーボンブラックの製造方法においては、上記高温燃焼ガス流を原料導入帯域4に導入し、該原料導入帯域4の前段で原料炭化水素を導入しつつ、原料導入帯域4の後段で原料炭化水素と酸素含有ガスとを導入する。
【0040】
原料導入帯域4の前段および後段で供給する原料炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アントラセン等の芳香族炭化水素、クレオソート油、カルボン酸油等の石炭系炭化水素、エチレンヘビーエンドオイル、FCC残渣油等の石油系重質油、アセチレン系不飽和炭化水素、エチレン系炭化水素、ペンタンやヘキサン等の脂肪族飽和炭化水素などを挙げることができる。また、原料導入帯域4の後段で供給する酸素含有ガスとしては、上記燃料燃焼帯域に導入する酸素含有ガスと同様のものを挙げることができる。
【0041】
原料導入帯域の前段と後段で供給する原料炭化水素量は、原料導入帯域の後段で供給する原料炭化水素量が、全原料炭化水素量の35質量%以下であることが好ましく、10〜35質量%であることがより好ましく、20〜35質量%であることがさらに好ましい。原料導入帯域の後段で供給する原料炭化水素量が、全原料炭化水素量の35質量%以下であることにより、カーボンブラックの一次粒子の粒径を所望範囲に制御しつつ、カーボンブラックをゴム組成物に配合したときに、所望の補強性を発揮するゴムを得ることができる。
【0042】
また、原料導入帯域4の後段で供給する、一定重量の原料炭化水素に対する酸素含有ガスの流量比(酸素含有ガス流量/原料炭化水素重量)は、0.5(Nm/h)/1(kg/h)〜4(Nm/h)/1(kg/h)であることが好ましく、1(Nm/h)/1(kg/h)〜3.5(Nm/h)/1(kg/h)であることがより好ましく、1.5(Nm/h)/1(kg/h)〜3(Nm/h)/1(kg/h)であることがさらに好ましい。
【0043】
図1に示す反応炉を使用する場合、前段原料導入ノズル5から原料炭化水素が供給されるとともに、後段原料導入ノズル6から原料炭化水素と酸素含有ガスが同時に供給される。
本発明のカーボンブラックの製造方法において、前段原料ノズルとしては1流体ノズルを挙げることができ、後段原料ノズルとしては、2流体ノズルを挙げることができる。2流体ノズルとしては、10〜100μm程度の粒径を有する液滴を噴霧し得る能力を備えたものが好ましい。
【0044】
このように、本発明のカーボンブラックの製造方法においては、原料炭化水素を2段階に分けて供給するとともに、後段において原料炭化水素とともに酸素含有ガスを供給する。原料炭化水素の全量を1段階で供給した場合、原料導入帯域に供給される高温燃焼ガス流の有する熱がカーボンブラックの生成に使用され、炉内の熱量が急激に低下してしまうことから、表面に微小突起を有する一次粒子を形成することができなくなる。また、原料炭化水素を2段階に分けて供給した場合も、前段でカーボンブラックの生成に熱量が使用されるため、後段では炉内の熱量が低下してしまい、同様に表面に微小突起を有する一次粒子を形成することができなくなる。一方、原料導入帯域の前段で原料炭化水素を導入しつつ、後段で原料炭化水素と酸素含有ガスとを導入することによって、前段において一次粒子を形成しつつ、後段において原料炭化水素を効率的に霧化して原料炭化水素液滴を微細化し、燃焼による局部的な高温域を形成することができる。そして、上記微細化された液滴によってカーボンブラック微粒子が生成し、前段で生成したカーボンブラック一次粒子の表面に融着することにより微小突起を形成し、これ等微小突起を有する一次粒子が凝集して、表面に微小突起を有する一次粒子により構成されてなるカーボンブラックを製造し得ると考えられる。
【0045】
本発明のカーボンブラックの製造方法において、図1に示す反応炉を用いた場合には、原料導入帯域4で生成したカーボンブラック含有ガスを反応帯域7に導入してさらに十分に反応させることができる。本発明のカーボンブラックの製造方法においては、反応帯域7を有さない反応炉を用いてもよい。
【0046】
本発明のカーボンブラックの製造方法において、上記カーボンブラック含有ガスは反応停止帯域に導入され、冷却液が噴霧される。
冷却液としては水等を挙げることができ、冷却液を噴霧することにより、高温燃焼ガス中に浮遊懸濁したカーボンブラック粒子が冷却される。冷却液の噴霧は、例えば図1に示す冷却装置8等により行うことができる。
【0047】
次いで、冷却されたカーボンブラック粒子は、図1に示す煙道10等を経て、
サイクロンやバッグフィルター等の分離捕集装置により分離捕集することにより、目的とするカーボンブラックを回収することができる。
【0048】
本発明の製造方法により得られるカーボンブラックとしては、本発明のカーボンブラックの説明で詳述したものと同様のものを挙げることができる。
【0049】
本発明の製造方法により得られるカーボンブラックにおいて、一次粒子の平均径は、燃料燃焼帯域に導入する酸素含有ガス量を調整したり、原料導入帯域で導入する原料炭化水素全量に占める原料導入帯域の前段で供給する原料炭化水素量を調整したりすることにより制御することができる。
【0050】
また、本発明の製造方法により得られるカーボンブラックにおいて、一次粒子表面に形成される微小突起の平均長さは、原料導入帯域で導入する原料炭化水素全量に占める原料導入帯域の後段で供給する原料炭化水素量を調整したり、原料導入帯域の後段で供給する酸素含有ガス量を調整することにより制御することができる。
【0051】
本発明の製造方法により得られるカーボンブラックにおいて、そのDBPは、例えば、燃料にアルカリ金属塩を混合し、その混合量を調整することにより制御することができる。具体的には、図1に示す燃焼用バーナー2から燃料とともにアルカリ金属塩を供給することにより、得られるカーボンブラックのDBPを制御することができる。アルカリ金属塩としては、炭酸カリウム(KCO)が好ましい。
【0052】
本発明の製造方法により得られるカーボンブラックにおいて、その窒素吸着比表面積は、燃料燃焼帯域に導入する酸素含有ガス量を調整したり、原料導入帯域に導入する原料炭化水素全量に占める原料導入帯域の前段で供給する原料炭化水素量を調整したりすることにより制御することができる。
【0053】
本発明のカーボンブラックの製造方法によれば、ゴム組成物の配合成分として用いたときに、得られるゴムの補強性や耐摩耗性を向上させるとともに、発熱特性や反発弾性を向上させることができるカーボンブラックを簡便に製造することができる。
【0054】
<ゴム組成物>
次に、本発明のゴム組成物について説明する。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、本発明のカーボンブラックまたは本発明の製造方法で得られたカーボンブラックを20〜150質量部含むことを特徴とするものである。
【0055】
本発明のゴム組成物において、ゴム成分としては、例えば、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムなどのジエン系ゴムから選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。
【0056】
本発明のゴム組成物は、本発明のカーボンブラックまたは本発明の製造方法で得られたカーボンブラックを含むものであり、ゴム組成物中に含まれるカーボンブラックの詳細については上述したとおりである。
【0057】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、本発明のカーボンブラックまたは本発明の製造方法で得られたカーボンブラックを20〜150質量部含み、30〜100質量部含むことがより好ましく、40〜80質量部含むことがさらに好ましい。
【0058】
本発明のゴム組成物において、本発明のカーボンブラックまたは本発明の製造方法で得られたカーボンブラックの含有割合が、ゴム成分100質量部に対して20〜150質量部であることにより、補強性、耐摩耗性、発熱性や反発弾性等に優れたゴムを得ることができる。
【0059】
また、本発明のゴム組成物において、ゴム成分およびカーボンブラック以外に含み得る成分としては、無機補強材を挙げることができる。
無機補強材としては、例えば、乾式法シリカ、湿式法シリカ(含水ケイ酸、沈降シリカ)、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、クレー、水酸化マグネシウム、タルク、マイカおよびこれらとカーボンブラックの複合物などから選ばれる1種以上を挙げることができる。
【0060】
無機補強材の含有割合は、ゴム成分100質量部に対して20〜150質量部であることが好ましく、30〜100質量部であることがより好ましく、40〜80質量部であることがさらに好ましい。
本発明のゴム組成物において、無機補強材の含有割合が、ゴム成分100質量部に対して20〜150質量部であると、後述するゴム組成物製造時における粘度上昇を抑制し製造効率を向上させることができ、得られるゴムの補強性向上効果や発熱性低減効果を効率的に発揮することができる。
【0061】
本発明のゴム組成物が、無機補強材としてシリカを含有する場合には、さらにシランカップリング剤を含んでもよい。シランカップリング剤の含有割合は、無機補強材100質量部に対して3〜20質量部であることが好ましい。シランカップリング剤の含有割合が上記範囲内であることにより、ゴム組成物中の無機補強材の分散性を向上させたり無機補強材による補強性を充分に向上させることができる。
【0062】
また、本発明のゴム組成物は、常用される加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、加硫助剤、軟化剤、可塑剤などの必要成分を含んでもよい。
【0063】
本発明のゴム組成物は、上記カーボンブラックの所望量と、必要に応じ、無機補強材、シランカップリング剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、加硫助剤、軟化剤、可塑剤等の所望量とを、ゴム成分と混練することにより得ることができる。上記混練は、公知のミキサーやミル等の混練機を用いて行うことができる。
本発明のゴム組成物を、適宜、130〜180℃で加温して硬化することにより、所望のゴムを得ることができる。
【0064】
本発明のゴム組成物は、得られるゴムの補強性、耐摩耗性、発熱性や反発弾性等の特性が向上させることができ、補強性および発熱性がバランスよく改良されていることから、タイヤトレッド用のゴム組成物として好適である。
【実施例】
【0065】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0066】
(実施例1)(カーボンブラックの製造例)
図1に示すような概略円筒形状を有する反応炉を用いてカーボンブラックを作製した。
図1に示す反応炉には、炉内に形成されたガス流路の上流から下流方向に向かって連通する、燃料燃焼帯域3、原料導入帯域4、反応帯域7および反応停止帯域9が順次設けられている。
【0067】
図1に示す反応炉において、燃料燃焼帯域3(内径500mm、長さ1200mm)は、炉軸方向に垂直な方向から空気等の酸素含有ガスを導入する酸素含有ガス導入口1と、炉軸方向に燃料を供給する燃焼用バーナー2とを備えている。また、原料導入帯域4(内径200mm、長さ700mm)は、炉軸方向に垂直な方向から原料炭化水素を供給する前段原料導入ノズル5である1流体ノズルを備え、同じく炉軸方向に垂直な方向から原料炭化水素と空気を供給する後段原料導入ノズル6である2流体ノズル(例えばスプレーイングシステムス社製2流体アトマイジングノズル1/4JBC)を備え、燃料燃焼帯域3と同軸的に連通して設けられている。さらに、反応帯域7(内径700mm、長さ10,000mm)は、原料導入帯域4に同軸的に連通して設けられ、反応停止帯域9は、炉軸方向に垂直な方向から冷却水を供給する図の上下方向に位置変更可能な冷却装置8(水冷クエンチ)を備え、反応帯域7に同軸的に連通して設けられている。
【0068】
図1に示すように、上記反応炉は、原料導入帯域4の前後において、燃料燃焼帯域3から原料導入帯域4に向かって緩やかに縮管するとともに、原料導入帯域4から反応部7に向かってテーパー状に拡管する鼓状絞り形状を成している。
【0069】
また、原料導入帯域4に備えられた後段原料導入ノズル6である2流体ノズルは、10〜100μm程度の粒径を有する液滴を噴霧し得る能力を備えたものである。
【0070】
燃料燃焼帯域3においては、酸素含有ガス導入口1から、450℃に予熱した空気2820Nm/hを供給するとともに、燃焼用バーナー2から表1に示す性状を有するFCC残渣油(石油系残渣油)183kg/hと燃料霧化空気380Nm/hと、Kイオン量700g/hの炭酸カリウム(KCO)とを同時に噴射供給し、混合燃焼させて、炉軸方向に流通する高温燃焼ガス流を形成した。
【0071】
原料供給帯域4に上記高温燃焼ガス流を導入しつつ、前段原料導入ノズル5である1流体ノズルから、下記表1に示す性状を有するクレオソート油950kg/hを供給するとともに、後段原料導入ノズル6である2流体ノズルから、下記表1に示す性状を有するクレオソート油150kg/hと空気423Nm/hとを同時供給して、順次反応させることにより、カーボンブラック含有ガスを生成した。
【0072】
次いで、原料導入帯域4で生成したカーボンブラック含有ガスを反応帯域7に導入してさらに十分に反応させた後、反応停止帯域9に導入して、冷却装置8から冷却水を噴霧した。冷却されたカーボンブラック粒子は、図1に示す煙道10等を経て、図示しない分離捕集装置により捕集され、目的とするカーボンブラックを回収した。
【0073】
【表1】

【0074】
本実施例において、反応炉内における原料油および燃料油の合計量に対する空気量の割合を示す全燃焼率を、以下の式により算出した。
なお、以下の算出式において、全空気量とは、燃料燃焼帯域に供給した空気量(燃焼用空気量+燃料霧化空気量)および原料供給帯域に供給した空気量の和を意味し、反応炉内の空気量全量を意味する。また、原料供給量とは、反応炉に供給した原料の全量を意味し、本実施例では、原料供給帯域において前段と後段で供給した原料の総量を意味する。
全燃焼率[%]={全空気量[Nm/h]/(原料供給量[kg/h]+燃料供給量[kg/h])×10}×100
【0075】
得られた全燃焼率を、燃料燃焼帯域に供給した空気量(燃焼用空気量+燃料霧化空気量)および燃料供給量、原料供給帯域に供給した前段原料供給量、後段原料供給量および後段空気供給量とともに、表2に示す。
【0076】
また、得られたカーボンブラックを透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM−2000FX)により観察した。得られた電子顕微鏡写真を図2(a)として示すとともに、図2(b)として、図2(a)の画像内容の説明図を示す。図2より、得られたカーボンブラックは、表面に微小突起22が形成された球状の一次粒子21により構成されてなるものであることが分かる。
透過型電子顕微鏡観察により算出したカーボンブラックの一次粒子の平均径は28nmであり、一次粒子の表面に形成された微小突起の平均長さは6nmであった。
【0077】
さらに、得られたカーボンブラックのDBP吸収量を、JIS K 6217−4「ゴム用カーボンブラック−基本特性−第4部、DBP吸収量の求め方」に規定された方法により測定するとともに、窒素吸着比表面積を、JIS K 6217−2「ゴム用カーボンブラック−基本特性−第2部、比表面積の求め方−窒素吸着法、単点法」に規定された方法により測定した。結果を表2に示す。
【0078】
(実施例2〜実施例4)(カーボンブラックの製造例)
実施例1において、前段原料供給量や後段原料供給量を表2に記載されているように変更した以外は、実施例1と同様にしてカーボンブラックを作製した。実施例3および実施例4においては、燃焼用バーナー2から燃料燃焼帯域3に炭酸カリウム(KCO)を供給しなかった。
各実施例における全燃焼率を実施例1と同様に算出した。燃料燃焼帯域に供給した空気量(燃焼用空気量+燃料霧化空気量)および燃料供給量、原料供給帯域に供給した前段原料供給量、後段原料供給量および後段空気供給量とともに、表2に示す。
【0079】
また、得られた各カーボンブラックを実施例1と同様にして透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM−2000FX)により観察したところ、実施例1で得られたカーボンブラックと同様に、表面に微小突起が形成された一次粒子により構成されてなるものであった。
透過型電子顕微鏡観察により算出したカーボンブラックの一次粒子の平均径と、一次粒子の表面に形成された微小突起の平均長さを表2に示す。
【0080】
さらに、得られた各カーボンブラックにおいて、実施例1と同様にして、DBP吸収量と窒素吸着比表面積を測定した。結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
(比較例1〜比較例4)(カーボンブラックの製造例)
実施例1において、前段原料供給量や後段原料供給量を表2に記載されている供給量とし、後段で空気を供給しなかった以外は、実施例1と同様にしてカーボンブラックを作製した。比較例3においては、燃料燃焼帯域3に対し燃料炭酸カリウム(KCO)も供給しなかった。
各実施例における全燃焼率を実施例1と同様に算出した。燃料燃焼帯域に供給した空気量(燃焼用空気量+燃料霧化空気量)および燃料供給量、原料供給帯域に供給した前段原料供給量、後段原料供給量および後段空気供給量とともに、表3に示す。
【0083】
また、得られた各カーボンブラックを実施例1と同様にして透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM−2000FX)により観察した。
比較例1で得られたカーボンブラックの透過型電子顕微鏡写真を図3(a)として示すとともに、図3(b)として、図3(a)の画像内容の説明図を示す。図3より、得られたカーボンブラックは、球状の一次粒子21により構成されてなるものであるが、一次粒子表面に微小突起が形成されていないものであることが分かる。
また、比較例2〜比較例4で得られたカーボンブラックにおいても、カーボンブラックを構成する一次粒子の表面に微小突起は形成されていなかった。
透過型電子顕微鏡観察により算出したカーボンブラックの一次粒子の平均径を表3に示す。
【0084】
さらに、得られた各カーボンブラックにおいて、実施例1と同様にして、DBP吸収量と窒素吸着比表面積を測定した。結果を表3に示す。
【0085】
【表3】

【0086】
表1および表2より、実施例1〜実施例4と比較例1〜比較例4とを対比すると、原料導入帯域の前段で原料炭化水素を供給するとともに、原料導入帯域の後段で原料炭化水素と酸素含有ガスとを供給することにより、表面に微小突起が形成された一次粒子により構成されてなるカーボンブラックが生成することが分かる。
また、表1および表2より、実施例1と比較例2とを対比したり、実施例3と比較例4とを対比すると、上記微小突起生成の有無は、全燃焼率(反応炉内における油分と空気の割合)ではなく、特に原料の供給方法の相違に起因することが分かる。
さらに、表1および表2より、実施例1〜実施例4で得られたカーボンブラックの窒素吸着比表面積は、比較例1〜比較例4で得られたカーボンブラックの窒素吸着比表面積よりも大きいことが分かる。
【0087】
(実施例5)(ゴム組成物の製造例)
実施例1で得られたカーボンブラック70質量部と、ゴム成分であるスチレンブタジエンゴム(日本ゼオン株式会社製、Nipol NS116R)80質量部およびポリブタジエンゴム(JSR株式会社製、JSR BR01)20質量部と、ステアリン酸2質量部と、オイル(共同石油株式会社製ソニックX140)30質量部と、亜鉛華3質量部とを、密閉型ミキサー(神戸製鋼株式会社製MIXTRON BB−2)で4分間混練した後、得られた混練物に対し、加硫促進剤(川口化学工業株式会社製アクセルCZ)2質量部と、硫黄2質量部とをオープンロールで混練することにより、表4に示す組成を有するゴム組成物を得た。
【0088】
【表4】

【0089】
上記ゴム組成物を、160℃の温度条件下、15cm×15cm×0.2cmの金型中で、20分間加硫して加硫ゴムを形成した。また、下記摩耗量の試験用に6.3cm×33cm×0.5cmの金型を使用し、同条件で加硫して加硫ゴムを形成した。
【0090】
得られた加硫ゴムを用い、以下に示す方法により、摩耗量、損失係数(tanδ) 、引張応力を測定した。結果を表5に示す。
【0091】
<摩耗量>
ランボーン摩耗試験機(機械式スリップ機構)を用いて、以下の条件で摩耗量(ml/5min)を測定した。なお、摩耗量が少ないほど耐摩耗性に優れていることを示している。
試験片;厚さ5mm、外径48mm
エメリーホイール;GCタイプ、粒度#80、硬度H
添加カーボランダム粉;粒度80♯、添加量約9g/min
エメリーホイール面と試験片の相対スリップ率;18%
試験片回転数;480rpm
試験過重;3kg
【0092】
<損失係数(tanδ)>
粘弾性スペクトロメータ((株)上島製作所製VR−7110)を用いて、下記の条件で損失係数(tanδ)を測定した。なお、60℃のtanδは小さいほど発熱性が低いことを示している。
試験片;厚さ2mm、長さ35mm、幅5mm
周波数;50Hz
動的歪率;1.2%
測定温度;60℃
【0093】
<引張応力>
(株)東洋精機製作所製ストログラフARを用い、試験片;JIS3号、引張速度500±25mm/分の条件で引張応力(MPa)を測定した。
【0094】
(実施例6〜実施例8、比較例5〜比較例8)(ゴム組成物の製造例)
カーボンブラックとして、それぞれ実施例2〜実施例4、比較例1〜比較例4で得られたカーボンブラックを配合した以外は、実施例5と同様にしてゴム組成物を作製した。
得られた各ゴム組成物を、実施例5と同様に加硫処理して加硫ゴムを得、実施例5と同様にして、得られた加硫ゴムの摩耗量、損失係数(tanδ) 、引張応力を測定した。結果を表5および表6に示す。
【0095】
なお、理解を容易にするために、表5の各欄においては、比較例5で得られた各測定値を100%としたときの相対割合(%)をそれぞれ示すとともに、括弧内に各測定値(実測値)を示すものとし、表6の各欄においては、比較例7で得られた各測定値を100%としたときの相対割合(%)をそれぞれ示すとともに、括弧内に各測定値(実測値)を示すものとする。表5および表6において、摩耗量、損失係数(tanδ)、引張強度が、5%以上改善されている場合には、一般に各物性が改良されたとみなすことができる。
【0096】
【表5】

【0097】
【表6】

【0098】
表5および表6より、実施例5〜実施例8で得られたゴム組成物は、比較例5〜比較例8で得られたゴム組成物に比べ、全体的に、摩耗量が少なく、損失係数(tanδ)が小さく、引張強度が大きいゴムが得られることから、補強性および耐摩耗性に優れるとともに、発熱性が低く反発性の高いゴムを提供し得ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明によれば、ゴム組成物の配合成分として用いたときに、得られるゴムの補強性や耐摩耗性を向上させるとともに、得られるゴムの発熱特性や反発弾性を向上させることができるカーボンブラックを提供することができる。
また、本発明によれば、上記カーボンブラックを簡便に製造する方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、補強性、耐摩耗性、発熱性や反発弾性等のゴム特性が向上したゴム組成物を提供することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 酸素含有ガス導入口
2 燃焼用バーナー
3 燃料燃焼帯域
4 原料導入帯域
5 前段原料導入ノズル
6 後段原料導入ノズル
7 反応帯域
8 冷却装置
9 反応停止帯域
10 煙道
21 一次粒子
22 微小突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均長さ2〜10nmの微小突起を表面に有する平均径が15〜40nmの一次粒子により構成されてなることを特徴とするカーボンブラック。
【請求項2】
DBP吸収量が40〜150ml/100g、窒素吸着比表面積が50〜150m/gである請求項1に記載のカーボンブラック。
【請求項3】
ガス流路の上流から下流方向に向かって、燃料燃焼帯域、原料導入帯域、反応停止帯域が順次設けられた反応炉を用いてカーボンブラックを製造する方法であって、
前記燃料燃焼帯域に酸素含有ガスと燃料とを導入し混合燃焼させて高温燃焼ガス流を発生させ、
前記原料導入帯域に前記高温燃焼ガス流を導入しつつ、その前段で原料炭化水素を導入しその後段で原料炭化水素と酸素含有ガスとを導入して、順次反応させることによりカーボンブラック含有ガスを生成した後、
前記反応停止帯域に前記カーボンブラック含有ガスを導入しつつ冷却液を噴霧する
ことを特徴とするカーボンブラックの製造方法。
【請求項4】
前記原料導入帯域後段における原料炭化水素と酸素含有ガスとの導入が2流体ノズルにより行われる請求項3に記載のカーボンブラックの製造方法。
【請求項5】
ゴム成分100質量部に対し、請求項1もしくは請求項2に記載のカーボンブラックまたは請求項3もしくは請求項4に記載の方法で得られたカーボンブラックを20〜150質量部含むことを特徴とするゴム組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−162596(P2011−162596A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24055(P2010−24055)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000219576)東海カーボン株式会社 (155)
【Fターム(参考)】