説明

カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子とその製造方法、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体とその製造方法

【課題】従来のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体よりも耐熱性及び黒色度をより改善させたカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の提供。
【解決手段】カーボン含有ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、100〜400質量部のポリスチレン系樹脂を含むカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させたカーボン含有発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を嵩発泡倍数20〜45倍に予備発泡させて得られ、走査型電子顕微鏡を用いて観察された画像から算出した発泡粒子の最表層膜厚が5〜25μmであり、かつ走査型電子顕微鏡を用いて観察された画像から算出した発泡粒子の最表層に接している気泡の平均気泡径が100〜600μmであることを特徴とするカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンを含有したポリプロピレン系樹脂を核にして、スチレンを重合させることで得られるカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させ、さらに予備発泡させて得られたカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子、該発泡粒子を型内発泡成形して得られたカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体、およびこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を型内に充填して加熱、発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体は、剛性、断熱性、軽量性、耐水性および発泡成形性に優れていることが知られている。そのためこの発泡成形体は、緩衝材や建材用断熱材として広く用いられている。しかし、この発泡成形体は、耐薬品性および耐衝撃性に劣るといった問題点があった。
一方、ポリプロピレン系樹脂からなる発泡成形体は、耐薬品性および耐衝撃性に優れていることが知られている。そのためこの発泡成形体は、自動車関連部品に用いられている。しかし、ポリプロピレン系樹脂は発泡ガスの保持性に劣ることから、発泡成形条件を精密に制御する必要があるため、製造コストが高くつくという問題点がある。加えて、ポリスチレン系樹脂発泡成形体に比して剛性が劣る問題点もある。
前記ポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂の問題点を解決するために、剛性および発泡成形性の良好なポリスチレン系樹脂と、耐薬品性および耐衝撃性の良好なポリプロピレン系樹脂とを複合化した発泡成形体が提案されている。
加えて、発泡成形体の用途によっては、黒色で着色されることが望まれる場合があり、黒色の着色剤としては、カーボンが知られている。
本発明に関係する従来技術としては、例えば、特許文献1〜5が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、100〜400質量部のポリスチレン系樹脂が含まれたポリスチレン改質ポリプロピレン系樹脂粒子であって、前記樹脂粒子にトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが主成分である難燃剤が前記樹脂粒子100質量部に対して1.5〜8.0質量部含まれることを特徴とするスチレン改質ポリプロピレン系樹脂粒子が開示されている。
特許文献1の段落0071には、水蒸気圧0.05〜0.40MPaの雰囲気下、発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を加熱することによってカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子(以下、予備発泡粒子ともいう)を得ることが記載されている。しかし、実施例中には「嵩発泡倍数30倍に予備発泡」との記載しかなく、予備発泡時の具体的な水蒸気圧及び温度等の予備発泡に関する記載はない。
また、得られる予備発泡粒子の最表層膜厚及び最表層に接する気泡の平均気泡径に関する記載もない。
【0004】
特許文献2には、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリスチレン系樹脂を100質量部以上400質量部未満含有し、かつ、ATR法赤外分光分析により測定された粒子中心部の赤外線吸収スペクトルから得られる698cm−1および1376cm−1における吸光度比(D698/D1376)より算出される粒子中心部のポリスチレン系樹脂比率が、粒子全体のポリスチレン系樹脂比率に対して1.2倍以上であるカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して、難燃剤を1.5質量部以上6質量部未満含有し、かつ、難燃助剤を0.1質量部以上3質量部未満含有することを特徴とする自己消火性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子が開示されている。
この特許文献2についても、予備発泡時の具体的な水蒸気圧及び温度等の予備発泡に関する記載はない。
また、得られる予備発泡粒子の最表層膜厚及び最表層に接する気泡の平均気泡径に関する記載もない。
【0005】
特許文献3には、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリスチレン系樹脂を100質量部以上400質量部未満含有し、かつ、ATR法赤外分光分析により測定された粒子中心部の赤外線吸収スペクトルから得られる698cm−1および1376cm−1における吸光度比(D698/D1376)より算出される粒子中心部のポリスチレン系樹脂比率が、粒子全体のポリスチレン系樹脂比率に対して1.2倍以上であることを特徴とする改質ポリスチレン系樹脂粒子が開示されている。
この特許文献3についても、予備発泡時の具体的な水蒸気圧及び温度等の予備発泡に関する記載はない。
また、得られる予備発泡粒子の最表層膜厚及び最表層に接する気泡の平均気泡径に関する記載もない。
【0006】
特許文献4には、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂を含有し、前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリスチレン系樹脂を100質量部以上400質量部未満含有し、かつ、ATR法赤外分光分析により測定された粒子中心部の赤外線吸収スペクトルから得られる698cm−1および1376cm−1における吸光度比(D698/D1376)より算出される粒子中心部のポリスチレン系樹脂比率が、粒子全体のポリスチレン系樹脂比率に対して1.2倍以上であるカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子が開示されている。
この特許文献4についても、予備発泡時の具体的な水蒸気圧及び温度等の予備発泡に関する記載はない。
また、得られる予備発泡粒子の最表層膜厚及び最表層に接する気泡の平均気泡径に関する記載もない。
また、特許文献4の実施例中には、カーボンの配合量1.8%未満でL値20以下を満たすものは無く、L値20以下の黒色度を達成するためにはカーボンの配合量を多くする必要がある。
【0007】
特許文献5には、ポリエチレンを1〜10質量%含有するポリプロピレンとポリエチレンとのランダム共重合体粒子20〜70質量%およびビニル芳香族モノマー30〜80質量%を水性媒体中に懸濁せしめ、これに重合触媒を加えて重合せしめて、グラフト重合した熱可塑性樹脂粒子を得、これを水性懸濁液中で発泡剤を圧入して発泡性熱可塑性樹脂粒子を得ることを特徴とする製造方法が開示されている。
この特許文献5には、予備発泡工程に「110℃ないし150℃の水蒸気又はオイルバスにて加熱」との記述があり、実施例の表中にも、発泡蒸気圧についての記述があるが、この特許文献5で製造される樹脂粒子は、前記の特許文献2及び4に開示されるような「カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度で、前記スチレン系単量体の第1の重合を行う工程と、前記第1の重合工程に続いて、スチレン系単量体と、重合開始剤とを加え、かつ、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度とすることにより、前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子への前記スチレン系単量体の含浸および第2の重合を行う工程とを有することを特徴とするカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。」とは異なり「押出機にて1mm〜3mmの径を有するペレット化したポリエチレンを1%含有するポリプロピレンとポリエチレンとのランダム共重合体樹脂40部を水150部、複分解法ピロリン酸マグネシウム0.2部、ドデシルベンゼンスルフォン酸ソーダ0.02部の系に分散させ、系内を85℃に維持しながら、スチレンモノマー60部に過酸化ベンゾイル0.3部、ジクミルパーオキサイド及び架橋助剤を溶解した混合液を7時間を要して滴下せしめ、滴下終了後、更に140℃で4時間反応させた後、重合体粒子を得た」と記述されているため(つまり、製造方法が異なる)、本発明の樹脂粒子とはモルフォロジーで異なるものであるといえる。
また、特許文献2及び4に開示されるような「カーボン含有ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリスチレン系樹脂を100質量部以上400質量部未満含有し、かつ、ATR法赤外分光分析により測定された粒子中心部の赤外線吸収スペクトルから得られる698cm−1および1376cm−1における吸光度比(D698/D1376)より算出される粒子中心部のポリスチレン系樹脂比率が、粒子全体のポリスチレン系樹脂比率に対して1.2倍以上であることを特徴とするカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子」との記載は無く、従って表層にポリプロピレン系樹脂が多く、中心にポリスチレン系樹脂が多い構造とはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−75076号公報
【特許文献2】特開2008−239794号公報
【特許文献3】特開2008−239793号公報
【特許文献4】特開2008−266583号公報
【特許文献5】特開昭54−63195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜4に開示された方法で得られたカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子は、表層にポリプロピレン系樹脂成分が多く、中心部にポリスチレン系樹脂成分が多い構造となる。この樹脂粒子に発泡剤を含浸させ、水蒸気圧0.05〜0.40MPaの水蒸気を導入して加熱することによって予備発泡して得られる予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた発泡成形体は、従来の自動車用内装材などの要求基準を十分に満たし得る黒色度及び耐熱性を有していた。
【0010】
しかしながら、自動車製造等の分野では、使用する内装材等の耐熱性や外観に関して、要求基準が益々厳しくなっており、前述した従来技術により製造されたカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体では、今後の要求基準を十分に満足し得なくなることが予想される。
【0011】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、従来のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体よりも耐熱性及び黒色度をより改善させたカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、100〜400質量部のポリスチレン系樹脂を含むカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させたカーボン含有発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を嵩発泡倍数20〜45倍に予備発泡させて得られ、走査型電子顕微鏡を用いて観察された画像から算出した発泡粒子の最表層膜厚が5〜25μmであり、かつ走査型電子顕微鏡を用いて観察された画像から算出した発泡粒子の最表層に接している気泡の平均気泡径が100〜600μmであることを特徴とするカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子を提供する。
【0013】
本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子において、前記カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子は、ATR法赤外分光分析により測定された粒子表面の赤外線吸収スペクトルから得られる698cm−1および1376cm−1における吸光度比(D698/D1376)より算出される粒子表面のポリスチレン系樹脂比率が、粒子全体のポリスチレン系樹脂比率に対して0.5倍以下であることが好ましい。
【0014】
本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子において、前記カーボン含有発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子をゲージ圧力0.005〜0.09MPaの水蒸気を導入して加熱することによって予備発泡して得られたものであることが好ましい。
【0015】
本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子において、前記カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子のカーボン含有量が1.0〜3.2%の範囲であることが好ましい。
【0016】
本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子において、前記カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、難燃剤を1.5質量部以上6質量部未満含有することが好ましい。
前記難燃剤としてはトリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネートが好ましい。
本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子において、前記カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、難燃助剤を0.1〜3質量部有することが好ましい。
前記難燃助剤としては2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンが好ましい。
【0017】
また本発明は、前記カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子を型内に充填し発泡成形させてなるカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を提供する。
【0018】
また本発明は、分散剤を含む水性懸濁中に、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系単量体100質量部以上400質量部未満と、重合開始剤とを分散させる工程と、
得られた分散液を前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して前記スチレン系単量体を前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる工程と、
前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度で、前記スチレン系単量体の第1の重合を行う工程と、
前記第1の重合工程に続いて、スチレン系単量体と、重合開始剤とを加え、かつ、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度とすることにより、前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子への前記スチレン系単量体の含浸および第2の重合を行ってカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程と、
次いで、得られたカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程と、
次いで、得られた発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を、ゲージ圧力0.005〜0.09MPaの水蒸気を導入して加熱することによって予備発泡させて前述した本発明に係るカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子を得ることを特徴とするカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子の製造方法を提供する。
【0019】
本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子の製造方法において、前記第2の重合中の樹脂粒子、もしくは、前記第2の重合終了後の樹脂粒子に、難燃剤を含浸させる工程を有することが好ましい。
【0020】
本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子の製造方法において、前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点が120℃〜145℃であることが好ましい。
また、前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂中のポリプロピレン系樹脂が、プロピレン−エチレン共重合体であることが好ましい。
【0021】
また本発明は、前記製造方法により得られたカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し、次いで型内発泡成形し、次いで成形体を成形型から離型するカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子は、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、100〜400質量部のポリスチレン系樹脂を含むカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させたカーボン含有発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を嵩発泡倍数20〜45倍に予備発泡させて得られ、走査型電子顕微鏡を用いて観察された画像から算出した発泡粒子の最表層膜厚が5〜25μmであり、かつ走査型電子顕微鏡を用いて観察された画像から算出した発泡粒子の最表層に接している気泡の平均気泡径が100〜600μmである構成としたことにより、これを型内発泡成形して得られる発泡成形体は、従来品と比べて耐熱性及び黒色度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1で作製した予備発泡粒子の表層の電子顕微鏡画像である。
【図2】実施例1で作製した予備発泡粒子全体の電子顕微鏡画像である。
【図3】実施例2で作製した予備発泡粒子の表層の電子顕微鏡画像である。
【図4】実施例2で作製した予備発泡粒子全体の電子顕微鏡画像である。
【図5】比較例2で作製した予備発泡粒子の表層の電子顕微鏡画像である。
【図6】比較例2で作製した予備発泡粒子全体の電子顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子は、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、100〜400質量部のポリスチレン系樹脂を含むカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させたカーボン含有発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を嵩発泡倍数20〜45倍に予備発泡させて得られ、走査型電子顕微鏡を用いて観察された画像から算出した発泡粒子の最表層膜厚が5〜25μmであり、かつ走査型電子顕微鏡を用いて観察された画像から算出した発泡粒子の最表層に接している気泡の平均気泡径が100〜600μmであることを特徴としている。
【0025】
本発明の改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子の樹脂材料の一つである、ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されず、公知の重合方法で得られた樹脂を使用できるが、例えば、プロピレン−エチレン共重合体が用いられる。このプロピレン−エチレン共重合体は、エチレンとプロピレンの共重合体を主成分とするものであるが、エチレンまたはプロピレンと共重合し得る他の単量体を分子内に含有するものであってもよい。そのような単量体としては、α−オレフィン、環状オレフィン、ジエン系単量体から選択された一種または二種以上のものが挙げられる。
【0026】
本発明の好適な実施形態において、ポリプロピレン系樹脂として、120℃〜145℃の範囲の融点を有するものが用いられる。ポリプロピレン系樹脂の融点が、120℃より低いと耐熱性が乏しく、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を用いて製造されるカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の耐熱性が低くなってしまう。また、融点が145℃より高いと、重合温度が高くなり、良好な重合ができなくなる。
【0027】
本発明の好適な実施形態において、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂発泡粒子中のカーボンは、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維などが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂に含有させる前において、カーボン(原料カーボン)は、粒子状であることが好ましく、原料カーボンの平均粒径は、通常、5nm〜100nmが好適であり、さらに好ましくは、15nm〜35nmである。なお、原料カーボンの粒径は、平均粒子径を意味し、平均粒子径は、電子顕微鏡による算術平均である。本発明に用いられるカーボンブラックを特徴づける平均粒子径は、カーボンブラックの集合体を構成する小さな球状(微結晶による輪郭を有し、分離できない)成分を電子顕微鏡写真にて測定、算出した粒子の直径の平均のことである。
【0028】
また、本発明においてカーボンは、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子中に1.2〜3.2質量%含まれていることが好ましい。
カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子中のカーボンの配合量が1.2質量%未満であれば、得られる発泡成形体が十分な黒色を呈することができないため好ましくない。一方、カーボンの配合量が3.2質量%を超えると、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子から得られる発泡成形体の燃焼速度が大きくなるため好ましくない。
【0029】
本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子は、嵩密度0.022〜0.050g/cmを有する。嵩密度が0.022g/cmより小さいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の黒色度が低下するため好ましくない。一方、嵩密度が0.050g/cmより大きいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の質量が増加するので好ましくない。
また、この嵩密度を嵩発泡倍数で表すと、嵩発泡倍数(倍)=1/嵩密度(g/cm)であることから、この予備発泡粒子は20〜45(倍)の嵩発泡倍数を有する。
【0030】
前記ポリプロピレン系樹脂には、必要に応じて、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤などの添加物が含まれていてもよい。
【0031】
本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子において、難燃剤としては、有機系難燃剤及び無機系難燃剤の中から適宜選択して使用でき、例えば、トリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネートが挙げられる。この難燃剤は、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、難燃剤を1.5質量部以上6質量部未満含有することが好ましく、2.0質量部以上5質量部未満含有することが更に好ましい。カーボン含有ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、難燃剤を1.5質量部以上6質量部未満含有させることで、本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子の効果、すなわち、ポリスチレン系樹脂発泡体とポリプロピレン系樹脂発泡成形体のそれぞれの長所が生かされ、剛性、発泡成形性、耐薬品性、耐熱性および黒色度に優れた発泡成形体を得ることができるという効果を損なうことなく、発泡成形体に難燃性を付与することができる。
【0032】
本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子において、難燃助剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドの有機過酸化物の群から選択された1種または2種以上が挙げられる。
難燃剤助は、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して、0.1〜3質量部の範囲とされる。好ましい難燃助剤の配合量は、0.5〜2.5質量部であり、1〜2質量部がより好ましい。難燃助剤の配合量が0.1質量部より少ないと、予備発泡粒子を二次発泡させて得られる発泡成形体の自己消火性が低下するため好ましくない。一方、難燃助剤の配合量が3質量部より多いと、予備発泡粒子を二次発泡させて得られる発泡成形体の加熱寸法変化が大きくなるため好ましくない。
【0033】
また、本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子において、難燃剤および難燃助剤を添加する場合は、粒子表面に多く存在していることが好ましいが、粒子中心部に偏在していてもよい。
【0034】
本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子において、カーボン以外にも着色剤を加えることができ、このような着色剤は、無機系の顔料であっても、有機系の顔料であってもよい。
無機系の顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄などのクロム酸塩、紺青などのフェロシアン化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッドなどの硫化物、鉄黒、紅殻などの酸化物、群青などのケイ酸塩、酸化チタンなどが挙げられる。
また、有機系の顔料としては、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アゾレーキ、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの多環式顔料などが挙げられる。
【0035】
本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子のもう一つの樹脂材料である、ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレンなどのスチレン系単量体を重合させて得られる樹脂が挙げられる。さらに、ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体と、該スチレン系単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。他の単量体としては、ジビニルベンゼンのような多官能性単量体や、(メタ)アクリル酸ブチルのような構造中にベンゼン環を含まない(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが例示される。これら他の単量体は、実質的にポリスチレン系樹脂に対して5質量%を超えない範囲で使用してもよい。なお、本明細書では、スチレンおよびスチレンと共重合可能な単量体もスチレン系単量体と称している。
【0036】
ポリスチレン系樹脂は、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して100〜400質量部の範囲の量とされる。好ましいポリスチレン系樹脂の配合量は、120〜300質量部であり、150〜250質量部がより好ましい。
このポリスチレン系の樹脂の比率が400質量部より多いと、予備発泡粒子を二次発泡させて得られる発泡成形体の耐薬品性および耐熱性が低下するため好ましくない。一方、配合量が100質量部より少ないと、予備発泡粒子を二次発泡させて得られる発泡成形体の剛性が低下するため好ましくない。
【0037】
本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子は、ATR法赤外分光分析により測定された粒子表面の赤外線吸収スペクトルから得られる698cm−1および1376cm−1における吸光度比(D698/D1376)より算出される粒子表面のポリスチレン系樹脂比率が、粒子全体のポリスチレン系樹脂比率に対して0.5倍以下であることが好ましい。
なお、「粒子表面」とは、表面から深さ数μmまでの領域を含む「表層」のことである。
【0038】
粒子表面のポリスチレン系樹脂比率が、粒子全体のポリスチレン系樹脂比率に対して0.5倍以下であれば、表層にポリプロピレン系樹脂が多くなっており、得られる発泡成形体の加熱寸法変化率、耐薬品性および黒色度がより向上する。
【0039】
さらに、本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子は、ATR法赤外分光分析により測定された粒子表面の赤外線吸収スペクトルから得られる698cm−1および1376cm−1における吸光度比(D698/D1376)が0.1〜2.5の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.8〜2.0の範囲であり、特に好ましくは1.0〜1.5の範囲である。
なお、粒子の表面とは、表面から深さ数μmまでの領域を含む「表層」のことである。
【0040】
吸光度比が2.5より高いと、予備発泡粒子の表面におけるポリオレフィン系樹脂の比率が低下する。その結果、予備発泡粒子を発泡成形して得られる発泡成形体の耐薬品性および耐衝撃性が低下するので好ましくない。一方、吸光度比が0.1より低いと、予備発泡粒子表面からの発泡剤の散逸が顕著になることにより、型内での成形において粒子同士の融着が悪くなって耐衝撃性が逆に低下したり、収縮などによる発泡成形体の外観の仕上がり状態が悪くなったりする傾向があるので好ましくない。加えて、予備発泡粒子を製造する際に、スチレン系単量体のポリオレフィン系樹脂粒子への含浸、重合に要する時間が長くなって製造効率が低下するので好ましくない。
【0041】
さらに、本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子は、発泡前の樹脂粒子の状態でATR法赤外分光分析により測定された粒子中心部の赤外線吸収スペクトルから得られる698cm−1および1376cm−1における吸光度比(D698/D1376)より算出される粒子中心部のポリスチレン系樹脂比率が、粒子全体のポリスチレン系樹脂比率に対して1.2倍以上であり、好ましくは1.35倍以上であり、特に好ましくは1.4倍以上である。
ここで「粒子中心部」とは、粒子の中心を通る断面において、粒子の中心から、その粒子の直径(粒径)の1/4までの範囲の部分のことであり、例えば、粒径が1mmの球状の粒子における粒子中心部とは、この粒子の中心から、半径125μmの範囲の部分のことである。
算出された粒子中心部のポリスチレン系樹脂比率が、粒子全体のポリスチレン系樹脂比率に対して1.2倍以下の場合、表層から内部にかけてポリスチレン系樹脂比率の傾斜の勾配が小さくなる。その結果、予備発泡粒子を発泡成形して得られる発泡成形体の発泡倍数および耐熱性が低下するので好ましくない。また、粒子中心部のポリスチレン系樹脂比率が、粒子全体のポリスチレン系樹脂比率に対して1.2倍以下の場合、粒子表面におけるポリスチレン系樹脂比率が高くなり、予備発泡粒子を発泡成形して得られる発泡成形体は十分な黒色度が得られなくなる。
【0042】
ここで、本発明におけるATR(Attenuated Total Reflectance)法赤外分光分析とは、全反射吸収(Attenuated Total Reflectance)を利用する一回反射型ATR法により赤外吸収スペクトルを測定する分析方法である。この分析方法は、高い屈折率を持つATRプリズムを試料に密着させ、ATRプリズムを通して赤外線を試料に照射し、ATRプリズムからの反射光を分光分析する方法である。
【0043】
ATR法赤外分光分析は、試料とATRプリズムとを密着させるだけでスペクトルを測定できるという簡便さ、深さ数μmまでの表面分析が可能であるなどの理由で高分子材料などの有機物をはじめ、種々の物質の表面分析に広く利用されている。
なお、赤外吸収スペクトルから得られる698cm−1における吸光度D698は、ポリスチレン系樹脂に主に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来する698cm−1付近に現われるピークの高さをいう。
また、赤外吸収スペクトルから得られる1376cm−1における吸光度D1376は、ポリプロピレン系樹脂に含まれる−C−CH炭化水素のCHの対称変角振動に由来する1376cm−1付近に現われるピークの高さをいう。
【0044】
吸光度比からポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂の組成割合を求める方法としては、ポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを所定の組成割合に均一に混合してなる複数種類の標準試料を後述の要領で作製し、各標準試料についてATR法赤外分光分析により粒子表面分析を行なって赤外線吸収スペクトルを得る。得られた赤外吸収スペクトルのそれぞれから吸光度比を算出する。そして、縦軸に組成割合(標準試料中のポリスチレン系樹脂比率(質量%))を、横軸に吸光度比(D698/D1376)をとることで、検量線を描く。この検量線に基づいて、本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子の吸光度比から、本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子におけるポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂の組成割合を求めることができる。
なお、前記検量線の作成に関しては、例えば、特許文献2〜4にも記載されている通り、従来周知である。
【0045】
本発明のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子は、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、100〜400質量部のポリスチレン系樹脂を含むカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させたカーボン含有発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を嵩発泡倍数20〜45倍に予備発泡させて得られ、走査型電子顕微鏡を用いて観察された画像から算出した発泡粒子の最表層膜厚が5〜25μmであり、かつ走査型電子顕微鏡を用いて観察された画像から算出した発泡粒子の最表層に接している気泡の平均気泡径が100〜600μmである構成としたことにより、これを型内発泡成形して得られる発泡成形体は、従来品と比べて耐熱性及び黒色度を高めることができる。
【0046】
本発明に係るカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子は、次の(A)〜(F)の各工程を備えた、本発明に係るカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子の製造方法により、効率よく、また歩留まりよく製造することができる。
(A)分散剤を含む水性懸濁中に、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系単量体100質量部以上400質量部未満と、重合開始剤とを分散させる工程、
(B)得られた分散液を前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して前記スチレン系単量体を前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる工程、
(C)前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度で、前記スチレン系単量体の第1の重合を行う工程、
(D)前記第1の重合工程に続いて、スチレン系単量体と、重合開始剤とを加え、かつ、前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点をT℃としたとき、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度とすることにより、前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子への前記スチレン系単量体の含浸および第2の重合を行って、発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程、
(E)次いで、得られたカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程、
(F)次いで、得られた発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を、ゲージ圧0.005MPa〜0.09MPaの範囲の圧力の水蒸気で加熱し予備発泡させて、前述した本発明に係るカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子を得る工程。
なお、この(A)〜(D)の各工程は、スチレン系単量体を原料としてビーズ状のポリスチレン系樹脂粒子を製造するポリスチレン系樹脂の懸濁重合法またはシード重合法などの周知の重合方法を実施する際に用いられるオートクレーブ重合装置などを用いて実施できるが、使用する製造装置はこれに限定されない。
【0047】
前記(A)工程において、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子は、例えば、前記のカーボン含有ポリプロピレン系樹脂を押出機で溶融し、ストランドカット、水中カット、ホットカットなどにより造粒ペレット化したり、また粉砕機にて直接樹脂粒子を粉砕しペレット化することにより得られる。また、その形状は、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状などが挙げられる。このカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子の好ましい樹脂粒径は、0.5mm〜1.5mmの範囲であり、より好ましくは、0.6mm〜1.0mmの範囲がより好ましい。
また、前記(A)工程において、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂中のポリプロピレン系樹脂としては、融点が120℃〜145℃であるものが好適である。
【0048】
前記(A)工程で用いられる分散剤としては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの有機系分散剤、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどの無機系分散剤が挙げられる。この内、無機系分散剤が好ましい。無機系分散剤を用いる場合、界面活性剤を併用することが好ましい。このような界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダなどが挙げられる。
【0049】
また、重合開始剤としては、スチレン系単量体の重合に汎用されている従来周知の重合開始剤を使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−アミルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は、単独で用いられても併用されてもよい。
【0050】
また、架橋剤を添加する場合、その添加方法としては、例えば、架橋剤をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂に直接添加する方法、溶剤、可塑剤またはスチレン系単量体に架橋剤を溶解させた上で添加する方法、架橋剤を水に分散させた上で添加する方法などが挙げられる。この内、スチレン系単量体に架橋剤を溶解させた上で添加する方法が好ましい。
【0051】
スチレン系単量体は、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させるために、水性媒体に、連続的にあるいは断続的に添加できる。スチレン系単量体は、水性媒体中に徐々に添加していくのが好ましい。水性媒体としては、水、水と水溶性媒体(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。
【0052】
前記(B)工程において、(A)工程で得られた分散液を、スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱し、スチレン系単量体をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる際の温度は、45℃〜70℃の範囲、好ましくは50℃〜65℃の範囲とする。
この含浸温度が前記範囲未満であると、スチレン系単量体の含浸が不十分となってポリスチレンの重合粉末が生成されるので、好ましくない。一方、含浸温度が前記範囲を超えると、スチレン系単量体がカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子に十分含浸される前に重合してしまうので、好ましくない。
【0053】
前記(C)工程、および(D)工程において、重合温度は重要な要因であり、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂中のポリプロピレン系樹脂の融点をT℃としたとき、(C)工程(第1の重合)では、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度範囲とし、(D)工程(第2の重合)では、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度範囲とする。
前記温度範囲で重合を行うことにより、樹脂粒子中心部は、ポリスチレン系樹脂の存在量が多く(つまり、表層にカーボン含有ポリプロピレン系樹脂の存在量が多い)、その結果として、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂のそれぞれの長所が生かされ、剛性、発泡成形性、耐薬品性、耐熱性および黒色度に優れたカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を提供することができる。
重合温度が前記温度範囲より低くなると、得られる樹脂粒子中心部にポリスチレン系樹脂の存在量が少なく、良好な物性を示す樹脂粒子や発泡成形体が得られない。また、重合温度が前記温度範囲より高くなると、スチレン系単量体がカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子に十分含浸される前に重合が開始してしまうので、良好な物性を示す樹脂粒子や発泡成形体が得られない。また、耐熱性に優れた高価格の重合設備が必要になる。
【0054】
また、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させたスチレン系単量体の重合する工程を、(C)工程(第1の重合)と、(D)工程(第2の重合)との二段階に分ける理由は、一度に多くのスチレン系単量体をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂に含浸させようとすると、スチレン系単量体がカーボン含有ポリプロピレン系樹脂に十分に含浸されず、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂の表面に残るからである。そこで、本発明に係る改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子の製造方法のように、(C)工程と、(D)工程との二段階に分けることにより、(C)工程においてスチレン系単量体が確実にカーボン含有ポリプロピレン系樹脂の中心部に含浸され、(D)工程においてもスチレン系単量体がカーボン含有ポリプロピレン系樹脂の中心部に向かって含浸される。
また、前記(D)工程(第2の重合)において、前記第2の重合中の樹脂粒子、もしくは、前記第2の重合終了後の樹脂粒子に、難燃剤を含浸させることが好ましい。難燃剤を投入する際の投入温度は、30℃〜90℃の範囲が好ましく、50℃〜70℃の範囲がより好ましい。投入した後、難燃剤を含浸させる際の含浸温度は、難燃剤の融点をt℃としたとき、t℃〜(t+30)℃の範囲が好ましい。t℃より低いと難燃剤がカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子に十分含浸されないおそれがあり、(t+30)℃より高いと耐熱性に優れた高価格の重合設備が必要となる。
【0055】
前記(D)工程の重合を行った後、反応槽を冷却し、形成されたカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を水性媒体と分離することで、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリスチレン系樹脂を100質量部以上400質量部未満含有し、ATR法赤外分光分析により測定された粒子表面の赤外線吸収スペクトルから得られる698cm−1および1376cm−1における吸光度比(D698/D1376)より算出される粒子表面のポリスチレン系樹脂比率が、粒子全体のポリスチレン系樹脂比率に対して0.5倍以下であるカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子が得られる。
【0056】
次に、(E)工程を行って発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得る。
前記(E)工程において、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子に含浸させる発泡剤、好ましくは易揮発性発泡剤としては、沸点が重合体の軟化温度以下であり易揮発性を有するもの、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタン、炭酸ガス、窒素が挙げられ、これらの発泡剤は、単独もしくは2種以上を併用して用いることができる。易揮発性発泡剤の使用量は、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して5〜25質量部の範囲とすることが好ましい。
【0057】
さらに、発泡助剤を発泡剤と共に用いてもよい。このような発泡助剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、D−リモネンなどの溶剤、ジイソブチルアジペート、ジアセチル化モノラウレート、やし油などの可塑剤(高沸点溶剤)が挙げられる。なお、発泡助剤の添加量としては、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して0.1〜2.5質量部が好ましい。
【0058】
また、発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子には、結合防止剤、融着促進剤、帯電防止剤、展着剤などの表面処理剤を添加してもよい。
【0059】
結合防止剤は、発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させる際の予備発泡粒子同士の合着を防止する役割を果たす。ここで、合着とは、予備発泡粒子の複数個が合一して一体化することをいう。具体例としては、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0060】
融着促進剤は、予備発泡粒子を二次発泡成形する際の予備発泡粒子同士の融着を促進させる役割を果たす。具体例としては、ステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステルなどが挙げられる。
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリドなどが挙げられる。展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイルなどが挙げられる。なお、前記表面処理剤の総添加量は、改質ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して0.01〜2.0質量部が好ましい。
【0061】
カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子中に発泡剤を含浸させる方法は、発泡剤の種類に応じて適宜変更可能である。例えば、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子が分散している水性媒体中に発泡剤を圧入して、該樹脂中に発泡剤を含浸させる方法、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を回転混合機に供給し、この回転混合機内に発泡剤を圧入して該樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法などが挙げられる。なお、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる温度は、通常、50℃〜140℃とすることが好ましい。
【0062】
次に、(F)工程において、発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を、予備発泡機缶内にゲージ圧0.005MPa〜0.09MPaの範囲の水蒸気を導入して加熱することによって予備発泡させて、本発明に係るカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子を得る。
【0063】
本発明の製造方法では、この予備発泡において、ゲージ圧力0.005〜0.09MPaの蒸気圧で加熱し、嵩発泡倍数20〜45倍に予備発泡させて前述した本発明に係る予備発泡粒子を得ることを特徴とする。
この予備発泡に用いる装置は、従来のポリスチレン系樹脂予備発泡粒子の製造の場合と異なり、高圧予備発泡機(例えば、笠原工業株式会社製、PSX40予備発泡機)などを用いる。
【0064】
この予備発泡において、ゲージ圧力0.005〜0.09MPaの蒸気圧で加熱し嵩発泡倍数20〜45倍に予備発泡させることで、前述したように、走査型電子顕微鏡を用いて観察された画像から算出した発泡粒子の最表層膜厚が5〜25μmであり、かつ走査型電子顕微鏡を用いて観察された画像から算出した発泡粒子の最表層に接している気泡の平均気泡径が100〜600μmである構造の予備発泡粒子が得られる。加熱時間は一般に20〜120秒程度である。
【0065】
この予備発泡粒子は、嵩密度0.022〜0.050g/cm(嵩発泡倍数で20倍〜45倍)を有する。嵩密度が0.022g/cmより小さいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の黒色度が低下するため好ましくない。一方、嵩密度が0.050g/cmより大きいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の質量が増加するので好ましくない。
予備発泡粒子の形態は、その後の型内発泡成形に影響を与えないものであれば、特に限定されない。例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状などが挙げられる。この内、成形型のキャビティ内への充填が容易である真球状、楕円球状が好ましい。
【0066】
本発明は、前述した予備発泡粒子を型内発泡成形して得られたカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体(以下、発泡成形体ともいう。)とその製造方法を提供する。
前述した予備発泡粒子を発泡成形体とするには、前述した予備発泡粒子を通常24時間程度保持して熟成させ、その後、予備発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し、加熱して型内発泡成形させ、該発泡粒子同士を融着一体化させることによって所望形状を有する発泡成形体を得ることができる。この型内発泡成形は、例えば、蒸気圧0.5〜4.5kg/cmG程度(約0.05〜0.45MPa)の水蒸気を成形型内に導入することによって行うことができる。
【0067】
本発明の発泡成形体は、密度が0.022〜0.05g/cmの範囲である。
該発泡成形体の密度が0.022g/cmより小さいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の黒色度が低下するため好ましくない。一方、発泡成形体の密度が0.05g/cmより大きいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の質量が増加するので好ましくない。また、この密度を発泡倍数で示すと、発泡倍数(倍)=1/密度(g/cm)であることから、この発泡成形体は20〜45(倍)の発泡倍数を有する。
【0068】
また、本発明の発泡成形体は、JIS K 6767に準拠した85℃の条件下にて寸法変化測定における発泡成形体の加熱寸法変化率が絶対値で(以下、単に加熱寸法変化率と記す。)1.0%以下であることが望ましい。この加熱寸法変化率が1.0%を超えると、寸法の安定性に欠け好ましくない。
なお、加熱寸法変化率は小さい程望ましいので、その下限値を特に設ける必要はない。例えば、加熱寸法変化率の下限値は0であることが望ましい。
【0069】
本発明の発泡成形体は、前述した予備発泡粒子を型内発泡成形したものなので、剛性、発泡成形性、耐薬品性に優れ、特に耐熱性および黒色度に優れた発泡成形体を提供することができる。
【0070】
前述のように得られた発泡成形体は、自動車内装材(ツールボックス)、車輛用バンパーの芯材、ドア内装緩衝材などの車輛用緩衝材、電子部品、各種工業資材、食品などの搬送容器などの各種用途に用いることができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例における融点、嵩密度、密度、加熱寸法変化率、耐薬品性、黒色度、吸光度比、燃焼速度、予備発泡粒子の発泡性評価、予備発泡粒子の最表層膜厚の測定、予備発泡粒子最表層の気泡径の測定及びカーボンの配合量の測定法を下記する。
【0072】
<融点>
JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」記載の方法により測定した。すなわち、示差走査熱量計装置DSC220型(セイコー電子工業社製)を用い、測定容器に試料を7mg充填して、窒素ガス流量30ml/minのもと、室温から220℃の間で10℃/minの昇・降温スピードにより昇温、降温、昇温を繰り返し、2回目の昇温時のDSC曲線の融解ピーク温度を融点とした。また、融解ピークが2つ以上ある場合は、低い側のピーク温度を融点とした。
【0073】
<嵩密度>
予備発泡粒子の嵩密度は下記の要領で測定した。
まず、予備発泡粒子を500cm、メスシリンダ内に500cmの目盛りまで充填した。なお、メスシリンダを水平方向から目視し、予備発泡粒子が一粒でも500cmの目盛りに達しているものがあれば、その時点で予備発泡粒子のメスシリンダ内への充填を終了した。
次に、メスシリンダ内に充填した予備発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とした。
そして、下記の式により予備発泡粒子の嵩密度を算出した。
嵩密度(g/cm)=W/500
<嵩発泡倍数>
予備発泡粒子の嵩発泡倍数は、次式により算出した。
嵩発泡倍数(倍)=1/密度(g/cm
【0074】
<密度>
発泡成形体の密度は下記の要領で測定した。
JIS K7122:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定した。
50cm以上(半硬質および軟質材料の場合は100cm以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出した。
密度(g/cm)=試験片質量(g)/試験片体積(cm
試験片状態調節、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃×50%±5%または27℃±2℃×65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
<発泡倍数>
発泡成形体の発泡倍数は、次式により算出した。
発泡倍数(倍)=1/密度(g/cm
【0075】
<加熱寸法変化率>
加熱寸法変化率はJIS K 6767:1999K「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」記載のB法にて測定した。
試験片は150×150×原厚み(mm)として、その中央部に縦および横方向にそれぞれ互いに平行に3本の直線を50mm間隔になるよう記入し、85℃の熱風循環式乾燥機の中に168時間置いた後に取出し、標準状態の場所に1時間放置後、縦および横線の寸法を下記式によって測定した。
S=(L1−L0)/L0×100
式中、Sは加熱寸法変化率(%)、L1は加熱後の平均寸法(mm)、L0は初めの平均寸法(mm)をそれぞれ表す。
加熱寸法変化率Sの評価基準は、絶対値で1%以下が○、1%より大きい場合を×とする。
【0076】
<耐薬品性>
発泡成形体から縦100mm×横100mm×厚み20mmの平面長方形状の板状試験片を切り出し、23℃、湿度50%の条件下で24時間放置した。なお、試験片の上面全面が発泡成形体の表面から形成されるように試験片を発泡成形体から切り出した。
次に、薬品としてガソリン1gを均一に塗布し、23℃、湿度50%の条件で60分放置した。
その後、試験片の上面から薬品を拭き取り、試験片の上面を目視観察して下記基準に基づいて判断した。
○:良好 変化なし
△:やや悪い 表面軟化
×:悪い 表面陥没(収縮)
【0077】
<黒色度>
色合いの評価として、成形体表面層のL値を、JIS Z8722「色の測定方法‐反射及び透過物体色」に準拠した反射法にて、分光式色彩計(日本電色工業社製)を用いて測定した。
なお、測定面積を30mmφ(JISは50mmΦ)とした。
上記L値の測定結果より、黒色度の評価を以下のようにして行った。
○:L値が0以上20以下である。
△:L値が20を超え25以下である。
×:L値が25を超え100以下である。
【0078】
<粒子中心部または表層の吸光度比とポリスチレン系樹脂比率>
吸光度比(D698/D1376)は下記の要領で測定した。
すなわち、無作為に選択した10個の各予備発泡粒子の粒子中心部または表面を、ATR法赤外分光分析を行なって赤外線吸収スペクトルを得た。
ここで、粒子中心部の測定では、各予備発泡粒子を二等分(例えば、粒径5mmの予備発泡粒子を2.5±0.5mmに切断する。)し、さらにその切断面の中心(少なくとも円の中心から1/4より内側)にATRプリズムを密着させて測定した。
また、表面の測定では、各予備発泡粒子の表面にATRプリズムを密着させて測定する。
各赤外線吸収スペクトルから吸光度比(D698/D1376)をそれぞれ算出し、最小の吸光度比と最大の吸光度比を除外した。そして、残余の8個の吸光度比の相加平均を吸光度比(D698/D1376)とした。なお、吸光度比(D698/D1376)は、例えば、Nicolet社(現在の社名:Thermofisher社)から商品名「フーリエ変換赤外分光光度計 MAGMA560」で販売されている測定装置を用いて測定した。
ポリスチレン系樹脂比率(質量%)は、既知混合比の標準品を用いて予め作成した検量線に基づいて、吸光度比(D698/D1376)から算出した。
【0079】
<粒子全体の吸光度比とポリスチレン系樹脂比率>
吸光度比(D698/D1376)は下記の要領で測定した。
すなわち、予備発泡粒子を加熱温度200℃〜250℃で加熱減容し、冷却した後に粉砕し、粉砕物を2g精秤した。
この粉砕物を小型射出成形機にて下記条件下に加熱混練して、直径が25mmでかつ高さが2mmの円柱状に成形することによって測定試料を得た。
なお、小型射出成形機としては、例えば、CSI社から商品名「CS−183」で販売されているものを用いた。
射出成形条件:加熱温度200℃〜250℃、混練時間10分
測定試料の表面を、ATR法赤外分光分析を行なって赤外吸収スペクトルを得た。
各赤外吸収スペクトルから吸光度比(D698/D1376)を算出した。なお、吸光度比(D698/D1376)は、例えば、Nicolet社(現在の社名:Thermofisher社)から商品名「フーリエ変換赤外分光光度計 MAGMA560」で販売されている測定装置を用いて測定した。
ポリスチレン系樹脂比率(質量%)は、既知混合比の標準品を用いて予め作成した検量線に基づいて、吸光度比(D698/D1376)から算出した。
【0080】
<燃焼速度>
燃焼速度は、米国自動車安全基準FMVSS 302に準拠した方法で測定した。
試験片は、発泡倍数30倍、350mm×100mm×12mm(厚み)とし、少なくとも350mm×100mmの二面には表皮が存在するものとした。
発泡倍数30倍の発泡成形体において燃焼速度が80mm/min以下であれば自動車室内の構造部材として良好に用いることができるので、燃焼速度は、以下の基準で評価した。
○:燃焼速度80mm/min以下であり良好である。
×:燃焼速度80mm/minを超えており不良である。
【0081】
<予備発泡粒子の発泡性評価>
予備発泡工程において嵩発泡倍数30倍に予備発泡するまでの加熱時間から、予備発泡機缶内に導入する水蒸気のゲージ圧力における予備発泡粒子の発泡性の評価を行った。発泡性は以下の基準で評価した。
○:予備発泡工程における加熱時間:20〜180秒以下
×:予備発泡工程における加熱時間:180秒より長い、または嵩発泡倍数30倍まで発泡しない
【0082】
<予備発泡粒子の最表層膜厚の測定>
測定装置として走査電子顕微鏡JSM−6360LV(日本電気社製)を用いた。
予備発泡粒子の中から任意に選択した10個について、剃刀刃を用いて、それぞれ粒子の中心を通る平面で二等分し、その一方の切断面の最表層部を走査型電子顕微鏡を用いて、500倍に拡大した画像を作成した(図1、図3及び図5参照)。その後、測長機能を用いて最外にある非発泡層に任意に15点線を引き、厚みを測定した。各画像について、同様に測定し、計10画像分の平均値を最表層膜厚とした。
【0083】
<予備発泡粒子最表層の気泡径の測定>
測定装置として走査電子顕微鏡JSM−6360LV(日本電気社製)を用いた。
予備発泡粒子の中から任意に選択した10個について、剃刀刃を用いて、それぞれ粒子の中心を通る平面で二等分し、その一方の切断面の表層部を走査型電子顕微鏡を用いて、20倍(場合により100倍)に拡大した画像を撮影した。
次に、撮影した画像をA4用紙上に1画像づつ印刷した。印刷された画像から、最表層に接している気泡を通る曲線の長さ(線長)と最表層に接している気泡数を計測した。
計測結果から下記式により気泡の平均弦長(t)を算出した。
平均弦長 t=線長/(気泡数×写真の倍率)
また、20倍に拡大した写真から気泡数を計測することが困難な場合は、前記と同様に予備発泡粒子を二等分し、その一方の切断面を切断面の中心を通る直線で等しく四分割(場合により八分割)した箇所で100倍にした画像を撮影し、前記と同様にそれぞれ最表層に接している気泡を通る曲線の長さ(線長)と最表層に接している気泡数を計測し、計四分割(場合により八分割)分の画像の平均値を算出した。そして、前記と同様に気泡の平均弦長(t)を算出した。
そして平均弦長(t)を用いて、次式により予備発泡粒子の断面の最表層に接している気泡の気泡径(D)を算出した。
D=t/0.616
さらにそれらの算術平均を予備発泡粒子の断面の最表層に接している気泡の平均気泡径とした。
【0084】
<カーボンの配合量>
測定装置として、示差熱・熱量同時測定装置 TG/DTA6200型(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用い、JIS K7075「炭素繊維強化プラスチックの繊維含有率及び空洞率試験方法(燃焼法)」に準拠して測定を行った。
測定試料量を15mgとして、520℃〜800℃昇温時(加熱速度10℃/min)の減量分をカーボン量として算術計算した。
【0085】
[実施例1]
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃)1920gと、ファーネスブラック(三菱化学社製、商品名「#900」)80gを混合し、この混合物を押出機に供給して溶融混練してストランドカットにより造粒ペレット化することにより、ポリプロピレン系樹脂に、ファーネスブラックを4質量%含有させた球状(卵状)のカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
このときのカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を100粒あたり80mg、平均粒子径約1mmに調整した。
次に、撹拌機付5Lオートクレーブに、前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子800gを入れ、水性媒体として純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5gを加え、撹拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温して水系懸濁液とした。
次に、この懸濁液中にジクミルパーオキサイド0.7gを溶解させたスチレン単量体340gを30分で滴下した。滴下後30分保持し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
次に、反応系の温度をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点と同じ140℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
次に、第1の重合の反応液をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点より20℃低い120℃にして、この懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.5gを加えた後、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド3.6gを溶解したスチレン単量体860gを4時間かけて滴下し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合(第2の重合)を行った。
この滴下終了後、120℃で1時間保持した後に140℃に昇温し3時間保持して重合を完結し、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、難燃剤としてトリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネート(日本化成社製)60gと、難燃助剤として2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(化薬アクゾ社製)30gとを投入し、投入後、反応系の温度を140℃に昇温し、4時間攪拌を続け、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
次に、常温まで冷却し、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を5Lオートクレーブから取り出した。取り出し後のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子2kgと水2Lを再び撹拌機付5Lオートクレーブに投入し、発泡剤としてブタン300gを撹拌機付5Lオートクレーブに注入した。注入後、70℃に昇温し、4時間撹拌を続けた。
その後、常温まで冷却して5Lオートクレーブから取り出し、脱水乾燥した後に発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
次に、得られた発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を笠原工業株式会社製PSX40予備発泡機に1000g投入し、PSX40予備発泡機缶内にゲージ圧力0.005MPaの水蒸気を導入して加熱し、嵩発泡倍数30倍に予備発泡させ、予備発泡粒子を得た。
そして、得られた予備発泡粒子を用いて、吸光度の測定を行い、ポリスチレン系樹脂比率を算出した。また、得られた予備発泡粒子を用いて、走査型電子顕微鏡にて最表層の平均膜厚および最表層の平均気泡径の測定を行った。
さらに、得られた予備発泡粒子を1日間室温に放置した後、400mm×300mm×50mmの大きさのキャビティを有する成形型の該キャビティ内に充填し、成形型に0.25MPaの水蒸気を50秒間導入して加熱し、その後、発泡成形体の最高面圧が0.001MPaに低下するまで冷却して、発泡成形体を得た。
この成形条件により外観、融着とも良好な発泡成形体を得た。
そして、得られたカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を用いて、発泡倍数、加熱寸法変化率、耐薬品性、黒色度の測定を行った。
【0086】
[実施例2]
実施例1と同様にして形成した発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を、ゲージ圧力0.04MPaの水蒸気で予備発泡したこと以外は実施例1と同様にして、発泡成形体を作製した。
【0087】
[実施例3]
実施例1と同様にして形成した発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を、ゲージ圧力0.09MPaの水蒸気で予備発泡したこと以外は実施例1と同様にして、発泡成形体を作製した。
【0088】
[実施例4]
難燃剤としてトリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネート(日本化成社製)50gと、難燃助剤として2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(化薬アクゾ社製)10gとを投入したこと以外は、実施例2と同様にして、発泡成形体を作製した。
【0089】
[実施例5]
嵩発泡倍数20倍の予備発泡粒子を得たこと以外は、実施例4と同様にして、発泡成形体を作製した。
【0090】
[実施例6]
嵩発泡倍数40倍の予備発泡粒子を得たこと以外は、実施例4と同様にして、発泡成形体を作製した。
【0091】
[実施例7]
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃)1894gと、ファーネスブラック(三菱化学社製、商品名「#900」)106gを混合し、この混合物を押出機に供給して溶融混練してストランドカットにより造粒ペレット化することにより、ポリプロピレン系樹脂に、ファーネスブラックを5.3質量%含有させた球状(卵状)のカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
このときのカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を100粒あたり80mg、平均粒子径約1mmに調整した。
前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子600gを攪拌機付5Lオートクレーブに入れ、水性媒体として純水2kg、前記分散剤20g、前記界面活性剤0.5gを加え、攪拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温して水系懸濁液とした。
この懸濁液中に、前記重合開始剤0.5gを溶解させたスチレン単量体250gを30分で滴下した。滴下後30分保持し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
次に、反応系の温度をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点と同じ140℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
第1重合段階の反応液をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点より20℃低い120℃にして、この懸濁液中に、前記界面活性剤1.5gを加えた後、重合開始剤4.2gを溶解したスチレン単量体1150gを5.5時間かけて滴下し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合を行った。
この滴下終了後、120℃で1時間保持した後に140℃に昇温し3時間保持して重合を完結し(第2重合段階)、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、前記難燃剤60gと、前記難燃助剤30gを投入し、投入後、反応系の温度を140℃に昇温し、4時間攪拌を続け、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
このカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、発泡成形体を作製した。
【0092】
[実施例8]
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃)1936gと、ファーネスブラック(三菱化学社製、商品名「#900」)64gを混合し、この混合物を押出機に供給して溶融混練してストランドカットにより造粒ペレット化することにより、ポリプロピレン系樹脂に、ファーネスブラックを3.2質量%含有させた球状(卵状)のカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
このときのカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を100粒あたり80mg、平均粒子径約1mmに調整した。
前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子1000gを攪拌機付5Lオートクレーブに入れ、水性媒体として純水2kg、前記分散剤20g、前記界面活性剤0.5gを加え、攪拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温して水系懸濁液とした。
この懸濁液中に、前記重合開始剤0.8gを溶解させたスチレン単量体420gを30分で滴下した。滴下後30分保持し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
次に、反応系の温度をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点と同じ140℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
第1重合段階の反応液をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点より20℃低い120℃にして、この懸濁液中に、前記界面活性剤1.5gを加えた後、重合開始剤3gを溶解したスチレン単量体580gを2.75時間かけて滴下し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合を行った。
この滴下終了後、120℃で1時間保持した後に140℃に昇温し3時間保持して重合を完結し(第2重合段階)、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、前記難燃剤60gと、前記難燃助剤30gを投入し、投入後、反応系の温度を140℃に昇温し、4時間攪拌を続け、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
このカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、発泡成形体を作製した。
【0093】
[実施例9]
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃)1940gと、ファーネスブラック(三菱化学社製、商品名「#900」)60gを混合し、この混合物を押出機に供給して溶融混練してストランドカットにより造粒ペレット化することにより、ポリプロピレン系樹脂に、ファーネスブラックを3質量%含有させた球状(卵状)のカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得たこと以外は、実施例2と同様にして、発泡成形体を作製した。
【0094】
[実施例10]
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃)1840gと、ファーネスブラック(三菱化学社製、商品名「#900」)160gを混合し、この混合物を押出機に供給して溶融混練してストランドカットにより造粒ペレット化することにより、ポリプロピレン系樹脂に、ファーネスブラックを8質量%含有させた球状(卵状)のカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得たこと以外は、実施例2と同様にして、発泡成形体を作製した。
【0095】
[比較例1]
実施例1と同様にして形成した発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を、ゲージ圧力0.001MPaの水蒸気で予備発泡し、嵩発泡倍数15倍の予備発泡粒子を得たこと以外は実施例1と同様にして、発泡成形体を作製した。
【0096】
[比較例2]
実施例1と同様にして形成した発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を、ゲージ圧力0.11MPaの水蒸気で予備発泡したこと以外は実施例1と同様にして、発泡成形体を作製した。
【0097】
[比較例3]
嵩発泡倍数50倍の予備発泡粒子を得たこと以外は、実施例4と同様にして、発泡成形体を作製した。
【0098】
[比較例4]
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃)1680gと、ファーネスブラック(三菱化学社製、商品名「#900」)320gを混合し、この混合物を押出機に供給して溶融混練してストランドカットにより造粒ペレット化することにより、ポリプロピレン系樹脂に、ファーネスブラックを16質量%含有させた球状(卵状)のカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得た。このときのカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を100粒あたり80mg、平均粒子径約1mmに調整した。
前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子200gを攪拌機付5Lオートクレーブに入れ、水性媒体として純水2kg、前記分散剤20g、前記界面活性剤0.5gを加え、攪拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温して水系懸濁液とした。
この懸濁液中に、前記重合開始剤0.2gを溶解させたスチレン単量体80gを30分で滴下した。滴下後30分保持し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
次に、反応系の温度をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点と同じ140℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
第1重合段階の反応液をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点より20℃低い120℃にして、この懸濁液中に、前記界面活性剤1.5gを加えた後、重合開始剤5.4gを溶解したスチレン単量体1720gを8時間かけて滴下し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合を行った。
この滴下終了後、120℃で1時間保持した後に140℃に昇温し3時間保持して重合を完結し(第2重合段階)、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、前記難燃剤60gと、前記難燃助剤30gを投入し、投入後、反応系の温度を140℃に昇温し、4時間攪拌を続け、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
このカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、発泡成形体を作製した。
【0099】
[比較例5]
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃)1800gと、ファーネスブラック(三菱化学社製、商品名「#900」)200gを混合し、この混合物を押出機に供給して溶融混練してストランドカットにより造粒ペレット化することにより、ポリプロピレン系樹脂に、ファーネスブラックを10質量%含有させた球状(卵状)のカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得たこと以外は、実施例2と同様にして、発泡成形体を作製した。
【0100】
実施例1〜10及び比較例1〜5の製造条件と得られたカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子の各部のポリスチレン樹脂の比率(以下、PS比率と記す)の測定結果とを表1にまとめて記す。
【0101】
【表1】

【0102】
[試験1]
予備発泡工程における水蒸気のゲージ圧力が異なる予備発泡粒子を用いた発泡成形体(実施例1〜3及び比較例1,2)について、予備発泡粒子の発泡性評価、予備発泡粒子の最表層平均膜厚、予備発泡粒子の最表層の平均気泡径、カーボンの配合量、発泡成形体の黒色度及び加熱寸法変化率を測定した。結果を表2に示す。
【0103】
【表2】

【0104】
表2に記した結果から、予備発泡時にゲージ圧力0.005〜0.090MPaの範囲で蒸気加熱した本発明に係る実施例1〜3は、良好な発泡成形体を得ることができ、得られた発泡成形体の黒色度及び加熱寸法変化率ともに良好な結果が得られた。
一方、予備発泡時のゲージ圧力を低くした比較例1は、発泡倍数15倍以上の予備発泡粒子を得られず、またゲージ圧力を高くした比較例2は、予備発泡粒子の最表層の平均膜厚が薄く、かつ最表層の平均気泡径が小さくなり、得られた発泡成形体の黒色度が劣り、加熱寸法変化率も大きくなった。
また、本発明における所定の範囲より予備発泡粒子の最表層平均膜厚および予備発泡粒子最表層の平均気泡径が大きいものは、現段階では作製できなかった。
【0105】
図1は、実施例1で作製した予備発泡粒子の表層の電子顕微鏡画像である。
図2は、実施例1で作製した予備発泡粒子全体の電子顕微鏡画像である。
図3は、実施例2で作製した予備発泡粒子の表層の電子顕微鏡画像である。
図4は、実施例2で作製した予備発泡粒子全体の電子顕微鏡画像である。
図5は、比較例2で作製した予備発泡粒子の表層の電子顕微鏡画像である。
図6は、比較例2で作製した予備発泡粒子全体の電子顕微鏡画像である。
これらの図1〜図6から分かるように、本発明に係る実施例1,2で作製した予備発泡粒子は、最表層の平均膜厚が5〜25μmの範囲に入っており、かつ最表層に接している気泡の平均気泡径が100〜600μmの範囲に入っている。
一方、比較例2の予備発泡粒子は、最表層の平均膜厚が4.0μm程度と薄くなり、また最表層に接している気泡が小さい(平均気泡径84μm)構造になっていることが分かる。
【0106】
[試験2]
予備発泡粒子の嵩密度の違いにおける、発泡成形体の評価試験の結果を表3に示す。
【0107】
【表3】

【0108】
表3に記した通り、密度0.024〜0.050g/cmの範囲とした実施例4〜6は、黒色度及び加熱寸法変化率について良好な発泡成形体が得られた。
一方、密度0.019g/cm(発泡倍数52.6倍)とした比較例3は、良好な発泡成形体が得られなかった。
さらに、本発明の所定の範囲(嵩発泡倍数20〜45倍)より小さい発泡倍数では、自動車内装材用途(例えば、ツールボックス、ティビアパッド)において、コスト面で受け入れられない。
【0109】
[試験3]
カーボンとポリポリプロピレン系樹脂(PP)との合計量100質量部に対するポリスチレン系樹脂(PS)の量の違いにおける、発泡成形体の評価試験の結果を表4に示す。
【0110】
【表4】

【0111】
表4に記した通り、PP樹脂/PS樹脂の割合が本発明の範囲内である実施例2,7及び8は、黒色度、加熱寸法変化率及び耐薬品性について良好な発泡成形体が得られた。
一方、PP樹脂/PS樹脂の割合が本発明の範囲外である比較例4は、黒色度、加熱寸法変化率及び耐薬品性の良好な発泡成形体が得られなかった。
【0112】
[試験4]
予備発泡粒子に対するカーボンの含有率の違いにおける、発泡成形体の評価試験結果を表5に示す。
【0113】
【表5】

【0114】
表5に記した通り、本発明に係る実施例2,9,10は黒色度、加熱寸法変化率及び燃焼速度(遅燃性)について良好な発泡成形体が得られた。また、実施例2では、カーボン配合量1.6質量%と低い配合量で良好な黒色度が得られた。
一方、予備発泡粒子のカーボン配合量が本発明の範囲外である比較例5は、燃焼速度が80mm/minより大きくなり遅燃性の良好な発泡成形体が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の予備発泡粒子は、型内発泡成形して耐熱性及び黒色度に優れた発泡成形体を製造することができる。この発泡成形体は、自動車内装材(ツールボックス)、車輛用バンパーの芯材、ドア内装緩衝材などの車輛用緩衝材、電子部品、各種工業資材、食品などの搬送容器などの各種用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン含有ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、100〜400質量部のポリスチレン系樹脂を含むカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させたカーボン含有発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を嵩発泡倍数20〜45倍に予備発泡させて得られ、走査型電子顕微鏡を用いて観察された画像から算出した発泡粒子の最表層膜厚が5〜25μmであり、かつ走査型電子顕微鏡を用いて観察された画像から算出した発泡粒子の最表層に接している気泡の平均気泡径が100〜600μmであることを特徴とするカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
ATR法赤外分光分析により測定された粒子表面の赤外線吸収スペクトルから得られる698cm−1および1376cm−1における吸光度比(D698/D1376)より算出される粒子表面のポリスチレン系樹脂比率が、粒子全体のポリスチレン系樹脂比率に対して0.5倍以下である請求項1に記載のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
前記カーボン含有発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡機缶内でゲージ圧力0.005〜0.09MPaの水蒸気を導入して加熱することによって予備発泡して得られたものである請求項1又は2に記載のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
前記カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子のカーボン含有量が1.0〜3.2%の範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
前記カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、難燃剤を1.5質量部以上6質量部未満含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項6】
前記難燃剤がトリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネートである請求項5に記載のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項7】
前記カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、難燃助剤を0.1〜3質量部含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項8】
前記難燃助剤が2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンである請求項7に記載のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子を型内に充填し発泡成形させてなるカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体。
【請求項10】
分散剤を含む水性懸濁中に、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系単量体100質量部以上400質量部未満と、重合開始剤とを分散させる工程と、
得られた分散液を前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して前記スチレン系単量体を前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる工程と、
前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度で、前記スチレン系単量体の第1の重合を行う工程と、
前記第1の重合工程に続いて、スチレン系単量体と、重合開始剤とを加え、かつ、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度とすることにより、前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子への前記スチレン系単量体の含浸および第2の重合を行ってカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程と、
次いで、得られたカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程と、
次いで、得られた発泡性カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を、ゲージ圧力0.005〜0.09MPaの水蒸気を導入して加熱することによって予備発泡させて請求項1〜8のいずれか1項に記載のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子を得ることを特徴とするカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項11】
前記第2の重合中の樹脂粒子、もしくは、前記第2の重合終了後の樹脂粒子に、難燃剤を含浸させる工程を有する請求項10に記載のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項12】
前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点が120℃〜145℃である請求項10又は11に記載のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項13】
前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂中のポリプロピレン系樹脂が、プロピレン−エチレン共重合体である請求項10〜12のいずれか1項に記載のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載の製造方法により得られたカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し、次いで型内発泡成形し、次いで成形体を成形型から離型するカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−222546(P2010−222546A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74679(P2009−74679)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】