説明

カーポート管理システム

【課題】各カーポート間での車両偏在問題を解決するカーポート管理システムを提供する。
【解決手段】本発明のカーポート管理システムは、複数のカーポートにおける車両の在庫台数を管理するカーポート管理システムであって、車両移動における移動元カーポートと、移動先カーポートを選定する移動対象カーポート選定手段(ステップS101)と、前記車両の移動の際の制限時間を設定する制限時間設定手段と、前記車両の移動依頼の通知をユーザーに対して行う移動依頼通知手段(ステップS103)と、前記移動先カーポートに前記車両が移動されたことを確認する確認手段(ステップS108)と、前記確認手段によって前記車両の移動が確認されたとき前記ユーザーとの間で所定対価の決済を行う決済手段(ステップS109)と、有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のユーザーで一つの車両を共用利用するカーシェアリングなどにおける管理、或いはレンタカーなどにおける貸し出しの管理を行うカーポート管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車は社会において必要不可欠と言えるほどに普及している。しかし特に都市部では、駐車スペースの不足や、高額な駐車料金、または自動車を使用する機会が限られている等の理由で、自動車を購入し保有することをためらう人も多い。また自動車台数の増加による大気汚染等の環境への負荷や交通渋滞を削減するため、一台の車を複数の人で使用するカーシェアリングの概念が提唱されている。
【0003】
カーシェアリング、或いはレンタカーといったサービスにおいては、貸し出し可能な車両が所定台数設けられているカーポートなどの営業所を複数点在させることが一般的である。営業所を複数箇所に点在させるとすると、車両を借りた場所から離れた場所で返却する、いわゆる“乗り捨て”の要望がだされる。このような乗り捨てを許容するようなサービスの形態では、返却場所がある特定のカーポートに集中したり、ある特定のカーポートの車の乗り捨てが頻繁に起こったりすることによって、各カーポートの車両の保有台数が均等にならないなどの場合が発生することとなる。
【0004】
そこで、各カーポート間で保有台数を均等化するカーシェアリングのための管理システムがこれまで提案されている。このような管理システムとしては、例えば、特許文献1(特開平2002―245585号公報)には、車両を駐車する複数のポートを設け、ユーザーに貸し出す車両を管理する車両貸出管理システムで用いられる車両貸出管理装置であって、前記ポート毎の前記車両の貸出状況を把握して、該ポートの車両の過不足判断を行う車両過不足判断手段と、前記車両過不足判断手段により前記車両が過剰状態にあると判断された前記ポートからの貸出を行う車両の利用と、前記車両過不足判断手段により前記車両が不足状態にあると判断された前記ポートへの返却を行う車両の利用には、通常のポート間における車両利用料金より低額な料金を設定する利用料金設定手段と、を設けたことを特徴とするが開示されている。
【特許文献1】特開平2002―245585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された管理システムおいては、車両が過剰状態にあると判断されたポートからの貸出を行う車両の利用と、車両が不足状態にあると判断されたポートへの返却を行う車両の利用には、低額な料金を設定することによって、各ポートにおける車両台数の均等化への誘導を図るものである。しかしながら、特許文献1に記載のシステムのように、いくら低額の料金を設定したとしても、利用ニーズのないポートに返却するユーザー数をそれほど期待することはできないために、各ポート間での車両偏在の課題を解決することができず、車両の効率的な利用を促進することができない、という問題があった。
【0006】
上記のような課題に対応するために、車両が過密状態のポートから、過疎状態のポートに車両を移動するための従業者を雇用する方法も考えられるが、このような方法によれば多大なコストを要する、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に係る発明は、複数のカーポートにおける車両の在庫台数を管理するカーポート管理システムであって、車両移動における移動元カーポートと、移動先カーポートを選定する移動対象カーポート選定手段と、前記車両の移動の際の制限時間を設定する制限時間設定手段と、前記車両の移動依頼の通知をユーザーに対して行う移動依頼通知手段と、前記移動先カーポートに前記車両が移動されたことを確認する確認手段と、前記確認手段によって前記車両の移動が確認されたとき前記ユーザーとの間で所定対価の決済を行う決済手段と、有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のカーポート管理システムにおいて、前記決済手段は、前記確認手段によって前記車両の移動が確認されたときに前記制限時間を超過していなければ支払い処理を行うことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載のカーポート管理システムにおいて、前記決済手段は、前記確認手段によって前記車両の移動が確認されたときに前記制限時間を超過していれば課金処理を行うことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のカーポート管理システムにおいて、カーポート毎の車両在庫台数の履歴データを記憶する車両在庫台数履歴記憶手段を有しており、前記制限時間設定手段は、前記車両在庫台数に記憶される履歴データで在庫台数が最小となる時刻と、前記移動先カーポートに到着する予想時刻のいずれか遅い時刻を基に、前記前記制限時間を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るカーポート管理システムによれば、前記車両の移動依頼の通知をユーザーに対して行う移動依頼通知手段と、前記移動先カーポートに前記車両が移動されたことを確認する確認手段と、前記確認手段によって前記車両の移動が確認されたとき前記ユーザーとの間で所定対価の決済を行う決済手段と、を有するので、各カーポート間での車両偏在の課題を解決することができ、車両の効率的な利用を促進することが可能となる。また、上記車両偏在の課題を、人手を雇うことなく低コストで解決することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係るカーポート管理システム概要を模式的に説明する図である。図1において、10は車両、20はカーポート管理システム、21は登録ユーザーデータベース、22はカーポート情報データベース、23は車両在庫台数履歴データベース、24は通信部、25はVICS情報取得部、30はユーザー携帯端末、40はカーポート現地管理部をそれぞれ示している。また、図1における一点鎖線で囲まれた領域は、当該領域内のカーポートから所定の距離内のエリアであることを模式的に示している。
【0013】
本実施形態に係るカーポート管理システムでは、自動車車両10を複数のユーザーで共用利用するカーシェアリングの管理に用いられるものである。なお、本実施形態に係るカーポート管理システムでは、自動車車両10を例にとした場合について説明するが、本発明のカーポート管理システムでは、これに限定されることなく、レンタルサイクルなどの移動手段となるレンタル対象物に対しても適用することが可能である。また、本発明における「対価」とは、現金、電子マネー、ポイントなどの概念を含むものである。
【0014】
ユーザーが車両10を、借り受ける前段に、車両10を保管すると共に、ユーザーが車両10を利用後、車両10を返却する場所をカーポートとして定義する。このようなカーポートにおいては、通常、自動車車両などの車両10を収容することが可能な数は限定されているものである。また、ユーザーが車両10を借り受けてカーポートから持ち出した時を「出庫」として定義し、ユーザーが車両10を借り受け状態から共用利用可能状態とするとき、すなわちカーポートに車両10を返却した時を「入庫」として定義する。また、カーポートに存在し、出庫可能な車両を「在庫車両」として定義する。
【0015】
本実施形態に係るカーポート管理システム20は、上記のようなカーシェアリングにおける自動車車両10の管理を行うことが想定されている。カーシェアリングにおいては、所定のカーポートに自動車車両10が複数台数配され、適宜ユーザーが借り受けて利用できる体制が整えられる。ここで、ユーザーが自動車車両10を利用しようとしたときに、カーポートから全ての自動車車両10が出払っており、当該ユーザーが自動車車両10を利用できない、という事態を可能な限り発生させないようにすることが望ましいことは言うまでもない。このための所定の管理を行うのが、本実施形態に係るカーポート管理システムである。
【0016】
個々のカーポートについてより詳細に説明する。図2は本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおけるカーポート(Cn)での自動車車両10の管理を説明する図である。あるカーポート(Cn)においては、自動車車両10が随時入庫したり、或いは、カーポート(Cn)から自動車車両10が随時出庫したりする。
【0017】
図2に示すようなカーポート(Cn)において、Mnは当該カーポート(Cn)における駐車可能台数の上限である。また、Nnはカーポート(Cn)に現在待機している車両の台数である。また、時刻tにおけるカーポート(Cn)における自動車車両10の在庫車両台数の履歴をRn(t)として定義する。なお、本実施形態では時刻tは1週間を1周期としてカウントするものとする。すなわち、日曜日の0:00から土曜日の24:00までを1周期として計時する。
【0018】
上記のように自動車車両10が複数台数配されたカーポートは、複数の場所に点在しており、例えば、カーポートC1で借り受けた自動車車両10を、カーポートC2に返却することができるような体制となっている。このような体制下で、カーシェアリングを行うときにおいては、多くの台数の利用が予想されるカーポートCjに対して、ユーザーが自動車車両10を返却するように誘導する仕組みを設けておく必要がある。
【0019】
このために、本実施形態に係るカーポート管理システムでは、車両過密状態のカーポートCiから、多くの利用台数が見込まれ車両の過疎状態が予想されるカーポートCjまでの車両10の移動を、登録ユーザーに依頼し、相当の対価を支払う仕組みを導入している。
【0020】
本実施形態に係るカーポート管理システム20では、各DB等を擁するメインシステムの他に、各カーポート毎の管理を行うためのカーポート現地管理部40が設けられており、各カーポートに設置されるカーポート現地管理部40とメインシステムとの間は所定の回線で接続され、相互にデータ交換可能に構成されている。
【0021】
カーポート管理システム20のメインシステムはサーバーなどの一般的な情報処理装置に所定プログラムを動作させ実現することができる。また、カーポート管理システム20には、ユーザーが所有するユーザー携帯端末30(より具体的には、携帯電話、PHSやPDAなどの無線によるデータ通信を行うことが可能な端末装置)との通信を行うための通信部24と、道路交通情報を取得するVICS情報取得部25とを有している。VICSはVehicle Information and Communication Systemの略であり、渋滞情報、所要時間情報、事故情報、工事情報、速度規制情報、車線規制情報、駐車場情報などの情報を提供するものである。カーポート管理システム20では、VICS情報取得部25でこれらの情報を取得することによって、車両10の移動に要する時間を算定したりするのに利用する。
【0022】
カーポート管理システム20のメインシステムには、少なくとも登録ユーザーデータベース21、カーポート情報データベース22、車両在庫台数履歴データベース23のデータベースが設けられており、登録ユーザーに対する車両移動依頼などの管理に利用される。
【0023】
登録ユーザーデータベース21は、カーポート管理システム20が管理するカーシェアリングサービスのユーザーに関する情報を記憶するデータベースである。図3は本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおける登録ユーザーデータベース21のデータ構造例を示す図である。図3に示すように、登録ユーザーデータベース21には、「ユーザーID」、「登録者氏名」、「携帯端末番号」、「携帯端末メールアドレス」、「車両移動受託希望」、「位置情報」などの事項が予め記憶されている。
【0024】
登録ユーザーデータベース21における「ユーザーID」はそれぞれのユーザーに付された固有で唯一無二のIDを記憶するデータ項目であり、「登録者氏名」はユーザーの氏名を記憶するデータ項目であり、「携帯端末番号」はユーザーが所有する携帯電話などの端末装置の番号を記憶するデータ項目であり、「携帯端末メールアドレス」はユーザーが所有する携帯電話などの端末装置のメールアドレスを記憶するデータ項目である。
【0025】
カーポート管理システム20からの依頼を受けて、車両過密状態のカーポートCiから過疎状態のカーポートCjまでの車両10の移動の請負を行うか否かは、予め登録ユーザー毎の希望により設定されており、登録ユーザーデータベース21では「車両移動受託希望」の項目にその希望の有無のデータが反映されている。カーポート管理システム20は、「車両移動受託希望」の項目で「する」となっている登録ユーザーのみを対象として、車両移動の依頼を行うようにしている。
【0026】
また、「位置情報」には当該ユーザーが所在する位置情報を記憶するデータ項目である。このような、ユーザーの位置情報は、当該ユーザーの所有する携帯端末の所在情報に基づき割り出すようにしている。この割り出しのためには、携帯端末のGPS機能を用いたり、携帯端末が通信する基地局のセル情報を用いたりすることができる。
【0027】
カーポート情報データベース22は、それぞれのカーポートにおいて現在どの車両が在庫しているかなどを記憶し管理するデータベースである。図4は本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおけるカーポート情報データベース22のデータ構造例を示す図であり、図示するように、カーポート情報データベース22には、「カーポート」、「車両番号」、「入庫日時」、「最終ユーザーID」、「移動元カーポート」、「車両走行距離」などのデータが記憶されるようになっている。
【0028】
「カーポート」はカーポート管理システム20が管理するカーポート(Cn)を記憶するデータ項目であり、「車両番号」はカーポート(Cn)に在庫している車両番号を記憶するデータ項目である。なお、各車両には、管理のためにそれぞれ固有の車両番号が付されている。
【0029】
カーポート情報データベース22のデータ構造において、「入庫日時」はいつ当該カーポート(Cn)に移動されたのかを記憶するするデータ項目であり、「最終ユーザーID」はどの登録ユーザーによって当該カーポート(Cn)に移動されたのかを記憶するするデータ項目であり、「移動元カーポート」はどのカーポートから移動してきたのかを記憶するデータ項目である。
【0030】
「車両走行距離」は、当該車両の累積の走行距離を記憶するデータ項目である。例えば、車両過密状態のカーポートCiから過疎状態のカーポートCjまでに移動する車両を選択するときにおいて、このような「車両走行距離」のデータ項目を参照し、走行距離がより少ない車両を選択するようにすれば、カーシェアリングサービスで利用する車両の平準的な利用を促進することが可能となる。
【0031】
車両在庫台数履歴データベース23は、それぞれのカーポート(Cn)における自動車車両10の在庫車両台数の履歴をRn(t)が記憶されるデータベースである。このような自動車車両10の在庫車両台数の履歴をRn(t)は、一般的に周期的なパターンを有している。
【0032】
このことを、時刻tにおける出庫数の履歴情報を例に説明する。図5は各カーポート(Cn)に依る出庫数履歴情報の例を示す図である。
【0033】
先にも説明したとおり、時刻tは1週間を1周期として周期的にカウントしており、日曜日の0:00から土曜日の24:00までを繰り返し周期的に計時しつつ、自動車車両10出庫数のカウントをとることによって、出庫台数の履歴が求められている。このような時刻の計時に求められた出庫台数の履歴によれば、例えば、日曜日の10:00における自動車車両10の出庫数の傾向を把握することが可能となる。
【0034】
図5は、カーポートC1乃至C4における出庫台数履歴H1(t)乃至H4(t)のヒストグラムを示している。このような出庫台数履歴のヒストグラムによれば、例えば、カーポートC1では週末における出庫数(利用数)が多い傾向であり、カーポートC2では平日における出庫数(利用数)が多い傾向であり、カーポートC3では夕刻における出庫数(利用数)が多い傾向であり、カーポートC4では週末における出庫数(利用数)が多い傾向である、などを把握することが可能となる。なお、ここでは周期を1週間としているが、例えば、1ヶ月、1年間、1日というようなシステムに合わせて適切な周期を設定すれば良く、この例に限定されるものではない。さらに、個々のヒストグラムの幅に相当する時間単位tは幅を持たせて設定しても良く、例えば、1時間毎の単位であっても良い。
【0035】
カーポート現地管理部40は、パーソナルコンピュータなどの一般的な情報処理装置と、管理するカーポートに出入庫する車両10の確認する装置とから構成されている。後者の出入庫車両確認装置としては、当該カーポートの駐車スペースを撮影する撮像装置を設けて、これにより撮像された画像を画像解析処理によって出入庫を確認するようにしてもよいし、また、駐車スペース毎に自動車車両10の存否を検出するセンサを設けて、このセンサからの出力によって出入庫を確認するようにしてもよい。カーポート現地管理部40で取得された出入庫確認情報は、カーポート管理システム20のメインシステム側に送信されるようになっている。カーポート現地管理部40から出入庫確認情報を受信したメインシステムは、この情報に基づいてカーポート情報データベース22のデータを更新したりする。
【0036】
次に、以上のように構成されるカーポート管理システム20での車両10の処理について説明する。図6は本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおけるメイン処理のフローチャートを示す図である。なお、図6に示すメイン処理のフローチャートは、人為的なトリガーで実行開始されるようにしてもよいし、定期的に実行開始されるようにしてもよいし、或いはカーポート間の過密・過疎のばらつきが著しくなったときに実行開始されるようにしてもよい。
【0037】
図6に示すフローチャートにおいて、ステップS100で主処理を開始すると、続いてステップS101に進み、移動対象カーポート選定処理のサブルーチンが実行される。図7を参照し、このサブルーチンの詳細について説明する。図7は本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおける移動対象カーポート選定処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。図7において、ステップS200で移動対象カーポート選定処理のサブルーチンが開始されると、次にステップS201に進み、カーポート情報データベース22を参照して、各カーポートにおける在庫している車両台数の情報を取得する。
【0038】
続くステップS202では、各カーポートにおけるN/M(現在車両台数/最大駐車駐車可能台数)の値を算出して、この値が最大のカーポートを選択する。以降、ここのステップで選択されたカーポートをカーポートCiとする。このステップは移動元となるカーポートを特定する処理を行うものである。また、このステップにおいては、カーポートCiにおける車両1台を移動対象車両として決定する。ここで、本実施形態においては、簡単のために移動対象車両が1台の例について説明するが、複数の移動対象車両を決定するようにしても構わない。
【0039】
次のステップS203では、「カーポートCiからの距離が所定値以内」であり、かつ、「N/M(現在車両台数/最大駐車駐車可能台数)が所定値以下」であるカーポート(このカーポートを以下においては、カーポートCjとする)を選択する。このステップは移動先となるカーポートを特定する処理を行うものである。
【0040】
続く、ステップS204では、車両在庫台数履歴データベース23におけるカーポートCjの履歴を参照し、在庫台数が最小となる最小在庫数時刻を取得する。そして、ステップS205では、カーポートCiとカーポートCjとの間の距離から予想到着時刻を算出する。続く、ステップS206では、前記最小在庫数時刻と前記予想到着時刻とを比較し、より遅い時刻と現在時刻との間の時間を制限時間Toとして設定し、ステップS207で、メイン処理のルーチンにリターンする。制限時間Toは、車両過密状態のカーポートCiから過疎状態のカーポートCjまでの車両10の移動の請け負った登録ユーザーが、カーポートCjに車両10を移動させるために許された時間として定義されるものである。
【0041】
ここで、ステップS204乃至ステップS206における処理で行っている事項について図8を参照して説明する。図8は最小在庫数時刻と到着予想時刻とから制限時間Toの求め方を説明する図である。図8(A)、図8(B)はいずれも、カーポート(Cj)における自動車車両10の在庫車両台数の履歴Rj(t)のグラフを示している。図8に示される通り、最小在庫数時刻は現在からみて、在庫台数が極小となる時刻である。また、図8(A)、図8(B)のいずれにも、カーポートCiとカーポートCjとの間の距離から求められる予想到着時刻が示されている。ステップS206では、このような最小在庫数時刻と予想到着時刻とを比較し、より遅い時刻と現在時刻との間の時間を制限時間Toとして設定しているが、図8(A)の場合には、到着予想時刻が遅い場合であるので、(制限時間To)=(到着予想時刻)−(現在時刻)によって制限時間を決定する。これに対して、図8(B)の場合には、最小在庫数時刻が遅い場合であるので、(制限時間To)=(最小在庫数時刻)−(現在時刻)によって制限時間を決定する。本実施形態においては、このように制限時間Toが決められているので、移動を請け負った登録ユーザーは余裕をもって車両移動を行うことができる。
【0042】
再び図6に戻る。ステップS101の移動対象カーポート選定処理サブルーチンからリターンすると、続いてステップS102において、支払額決定処理サブルーチンが実行される。この支払額決定処理サブルーチンでは、車両過密状態のカーポートCiから過疎状態のカーポートCjまでの車両10の移動を受託した登録ユーザーが、車両移動を規定通り完了したときに、当該登録ユーザーに対して支払う対価の額を決定する処理を行う。この支払額決定処理サブルーチンについて図9を参照して説明する。図9は本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおける支払額決定処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【0043】
図9において、ステップS300で、支払額決定処理のサブルーチンが開始されると、続いてステップS301では、車両在庫台数履歴データベース23を用いて、過密状態で移動元のカーポートとなっているカーポートCiの履歴を取得し、在庫数の変化率ΔRを算出する。
【0044】
ステップS302では、ΔR>0であるか否かが判定される。ステップS302の判定結果がYESであるときには、カーポートが過密状態であるにも関わらず、車両在庫台数が増加することが予想されるので、ステップS303に進み、支払額Yを増額する処理を行う。ここで、Y=Yo+αによって計算する。ただし、Yoは所定額であり、αは支払額の増額分である。
【0045】
ステップS302の判定結果がNOであるときには、ステップS304に進みΔR<0であるか否かが判定される。ステップS304の判定がYESであるときには、カーポートが過密状態であるが、車両在庫台数が減少することが予想されるので、ステップS305に進み、支払額Yを減額する処理を行う。このときの計算方法としては、例えば、Y=Yo−βによって計算を行う。ただし、Yoは所定額であり、βは支払額の減額分である。
【0046】
ステップS304の判定がNOであるときには、車両在庫台数が増減はないものと予想されるので、ステップS306に進み、支払額YをY=Yoによって計算する。すなわち、支払額Yは所定額Yoと同じとする。ステップS307では、メインの処理ルーチンにリターンする。このように本実施形態では、支払額決定処理のサブルーチンで、移動元となるカーポートにおける車両在庫台数の増減予測から妥当な支払額を決定するようにしている。
【0047】
再び図6に戻る。ステップS102の支払額決定処理サブルーチンからリターンすると、続いてステップS103において、車両移動依頼メール配信処理サブルーチンが実行される。このサブルーチンでは、車両移動受託希望している登録ユーザーに対して、カーポートCiからカーポートCjまでの車両移動を依頼するメールを配信する処理を実行するものである。図10を参照して、このサブルーチンについて説明する。図10は本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおける車両移動依頼メール配信処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【0048】
図10において、ステップS400で、車両移動依頼メール配信処理のサブルーチンが開始されると続いて、ステップS401に進む。ステップS405乃至ステップ406は、車両移動の依頼を行うユーザーを選定するループである。このループでは、全ての登録ユーザーについて選定のためのチェックが行われ、このチェックが完了した後に、ステップS407へと抜けるようになっている。
【0049】
当該ループ中のステップS402では、登録ユーザーデータベース21のユーザーの「位置情報」のデータ項目欄が参照されて、それぞれのユーザーの位置情報が取得される。ステップS403では、当該ユーザーがカーポートCiから所定距離内であるか否かが判定される。なお、このような判定を行うことによって、カーポートCiに赴き、車両移動を行い得る登録ユーザーのみを選定するようにしている。すなわち、図1の一点鎖線内に示される携帯端末を所有するユーザーのみにメールを配信するような処理を行うものである。
【0050】
ステップS403における判定の結果がYESであるときには、ステップS404に進み、当該ユーザーをメール配信対象として選定し、判定結果がNOであるときには、ステップS405に進み、当該ユーザーをメール配信対象として選定しないようにする。
【0051】
ステップS406で依頼ユーザー選定ループを抜けると、ステップS407に進み、ループで選定された登録ユーザーの携帯端末に対して、車両移動依頼のメールを通知する。このステップで配信するメールの記載内容は、移動元カーポートCiから移動先カーポートCjまでの車両移動依頼、その際の制限時間To及び支払額(移動の対価の額)である。ステップS408に進むと、メイン処理のルーチンにリターンする。本実施形態においては、このようなサブルーチンの処理によって、送信先として妥当な登録ユーザーのみを選定した上で、メールを配信するようにしているので、不要なメールの送受信を避けることが可能となる。
【0052】
再び図6のメイン処理のフローチャートに戻り説明を続ける。ステップS103における車両移動依頼メール配信処理からリターンすると、続いてステップS104に進み、ユーザーから車両移動を受託する旨の通知を受信したか否かが判定される。このステップの判定がYESであるときにはステップS105に進む。
【0053】
ステップS104における判定がNOであるときにはステップS110に進み、所定時間Taが経過したか否かが判定される。ステップS110の判定がNOであるときにはステップS104に進む。一方、所定時間Taが経過し、ステップS110の判定がYESとなったときにはステップS111では、支払額を増額して、ステップS103に戻り再びメール配信処理を行うことで、再度の依頼を行うようにする。本実施形態では、このような支払額の増額処理によって、より確実に移動依頼の受託がなされるようにしている。
【0054】
ステップS104における判定がYESであるときに進むステップS105では、ユーザーと移動対象車両を移動元カーポートCiから移動先カーポートCjまで車両移動する契約を成立させる。ステップS105に続く、ステップS106では、契約成立メール配信処理サブルーチンを実行する。
【0055】
この支契約成立メール配信処理のサブルーチンでは、車両移動契約が成立した登録ユーザーに対して契約成立の旨のメールを送信すると共に、それ以外の登録ユーザーに対しては、既に他で契約が成立したので車両移動者の募集を締め切った旨のメールを送信する処理を実行する。この契約成立メール配信処理サブルーチンについて図11を参照して説明する。図11は本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおける契約成立メール配信処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【0056】
図11において、ステップS500で、契約成立メール配信処理のサブルーチンが開始されると、続いてステップS501に進む。ステップS501乃至ステップS505は、契約成立メール配信処理を行うループが実行される。このループでは、先の車両移動依頼メール配信処理サブルーチンでメールを送信した全ての登録ユーザーを対象に、逐一処理される。全ての前記ユーザーに対する処理が終了したときに、このループを抜けて、次のステップに進む。
【0057】
このループにおけるステップS502では、処理対象ユーザーが、車両移動契約成立ユーザーであるか否かが判定される。ステップS502の判定結果がYESであるときには、ステップS503で、当該ユーザーと契約が成立した旨のメールを送信する。また、判定結果がNOであるときには、ステップS504に進み、他のユーザーとの契約が成立したので、当該ユーザーに対しては、車両移動の依頼を取り下げる旨のメールを送信する。ステップS505では、全ての処理対象ユーザーに対して、契約成立メール配信処理ループの適用が終了したときには、ステップS506に進み、元のルーチンにリターンする。以上のような、契約成立メール配信処理サブルーチンによれば、車両移動契約成立ユーザーに加えて、全ての車両移動依頼メールを配信したユーザーに、当該依頼案件での契約が完了した旨を報知することが可能となる。
【0058】
ここで、以上のようなメールの送受信に関連してカーポート管理システム20と登録ユーザーの携帯端末(30a、30b、30c・・・)との間のトランザクションの一例について図12を参照して説明する。図12は本発明の実施形態に係るカーポート管理システムと登録ユーザー携帯端末との間のデータ通信の流れを示す図である。
【0059】
カーポート管理システム20側において、ステップS11で、移動対象カーポート選定処理が実行されて、移動元カーポートCi、移動先カーポートCj、移動対象車両が決定すると、続いてステップS12で、支払額決定処理されて車両移動の対価が決められる。次のステップS13では、車両移動依頼メール配信処理のサブルーチンによってメールを配信する登録ユーザーが選定されて、ステップS21に示すように、それぞれの登録ユーザーの携帯端末(30a、30b、30c・・・)に車両移動の依頼メールが配信される。
【0060】
このような車両移動依頼メールの配信を受け、例えば、携帯端末30aを所有する登録ユーザーがステップS31で車両移動依頼の受託を決意し、受託の旨の通知を発信すると、ステップS22で、受託メールがカーポート管理システム20に返信される。
【0061】
カーポート管理システム20では、このような受託メールを受信すると、ステップS14において契約成立メール配信処理が実行され、ステップS23に示すように、携帯端末30aの登録ユーザーに対しては、契約成立メールが送信され、ステップS24に示すように、それ以外のユーザー派には、他ユーザーとの契約が完了した旨を通知するメールが配信される。
【0062】
再び図6に示す主処理のフローチャートに戻り説明を続ける。ステップS106における契約成立メール配信処理のサブルーチンが完了すると、次にステップS107で、移動元となるカーポートCiでの出庫を確認するサブルーチン処理が実行される。このようなサブルーチン処理にあたっては、カーポートCiのカーポート現地管理部40からの情報が活用される。図13は本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおける出庫確認処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【0063】
図13において、ステップS600で、出庫確認処理のサブルーチンが開始されると、次にステップS601に進み、カーポート現地管理部40で移動対象車両(契約車)の出庫が確認されたか否かが判定される。ステップS601の判定がYESであれば、ステップS605に進み、メインルーチンにリターンする。
【0064】
ステップS602では、車両移動開始までの制限時間である所定時間Tbが経過したか否かが判定される。判定結果がNOであるときにはステップS601に戻るが、YESであるときにはステップS603に進み、契約を行ったユーザーとの車両移動契約を破棄する。そして、ステップS604では、当該ユーザーに契約破棄の旨のメールを送信し、メインルーチンのステップS103に戻り、再び車両移動依頼メール配信処理サブルーチンを実行して、一から車両移動依頼の募集を行うようにする。
【0065】
以上のような出庫確認処理サブルーチンからメインルーチンにリターンすると、続いてステップS108で、移動先となるカーポートCjで入庫を確認するサブルーチン処理が実行される。このようなサブルーチン処理にあたっては、カーポートCjのカーポート現地管理部40からの情報が活用される。図14は本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおける入庫確認処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【0066】
図14において、ステップS700で、入庫確認処理サブルーチンが開始されると、続いてステップS701に進み、カーポートCjのカーポート現地管理部40からの情報に基づき、移動契約車の入庫が確認されたか否かが判定される。ステップS701における判定結果がYESであるときにはステップS708に進み、ステップS708で、ユーザーとの決済方法を、支払い処理として、ステップS709でメインルーチンにリターンする。
【0067】
ステップS701における判定結果がNOであるときにはステップS702に進み、ステップS702では、VICS情報取得部25によってカーポートCiとカーポートCj間の渋滞情報を取得する。続く、ステップS703では、所定規模以上の渋滞があるか否かが判定される。ステップS703の判定結果がYESであるときにはステップS704に進み、制限時間To=に、渋滞を考慮した時間分Tαを追加して、契約ユーザーに対する配慮を行うこととする。判定結果がNOであるときにはステップS7045に進む。
【0068】
ステップS705では制限時間Toを超過したか否かが判定され、ステップS705の判定がNOであるとステップS701に戻り、判定がYESであるとステップS706に進む。ステップS706では、カーポートCjで移動対象車両(契約車)の入庫を確認したか否かが判定される。ステップS706の判定結果がYESであるときに、ステップS707に進み、契約ユーザーとの決済方法としては、課金処理とする。ステップS709に進み、メインルーチンにリターンする。
【0069】
図6のフローチャートにおいて、ステップS108の入庫確認処理のサブルーチンからリターンすると、次に、ステップS109に進み、ステップS708又はステップS707のいずれかの決済方法での決済処理が行われる。すなわち、制限時間Toで車両移動を完了した登録ユーザーに対しては支払い処理を行うように、完了しなかった登録ユーザーに対しては逆に課金処理を行うようにする。ステップS112では、カーポート管理システム20のメイン処理を終了する。
【0070】
以上のように、本発明の実施形態に係るカーポート管理システムによれば、各カーポート間での車両偏在の課題を解決することができ、車両の効率的な利用を促進することが可能となる。また、上記車両偏在の課題を、人手を雇うことなく低コストで解決することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態に係るカーポート管理システム概要を模式的に説明する図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおけるカーポート(Cn)での自動車車両10の管理を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおける登録ユーザーデータベース21のデータ構造例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおけるカーポート情報データベース22のデータ構造例を示す図である。
【図5】各カーポート(Cn)に依る出庫数履歴情報の例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおけるメイン処理のフローチャートを示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおける移動対象カーポート選定処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図8】最小在庫数時刻と到着予想時刻とから制限時間Toの求め方を説明する図である。
【図9】本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおける支払額決定処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおける車両移動依頼メール配信処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおける契約成立メール配信処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係るカーポート管理システムと登録ユーザー携帯端末との間のデータ通信の流れを示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおける出庫確認処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図14】本発明の実施形態に係るカーポート管理システムにおける入庫確認処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0072】
10・・・車両、20・・・カーポート管理システム、21・・・登録ユーザーデータベース、22・・・カーポート情報データベース、23・・・車両在庫台数履歴データベース、24・・・通信部、25・・・VICS情報取得部、30・・・ユーザー携帯端末、40・・・カーポート現地管理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカーポートにおける車両の在庫台数を管理するカーポート管理システムであって、
車両移動における移動元カーポートと、移動先カーポートを選定する移動対象カーポート選定手段と、
前記車両の移動の際の制限時間を設定する制限時間設定手段と、
前記車両の移動依頼の通知をユーザーに対して行う移動依頼通知手段と、
前記移動先カーポートに前記車両が移動されたことを確認する確認手段と、
前記確認手段によって前記車両の移動が確認されたとき前記ユーザーとの間で所定対価の決済を行う決済手段と、
有することを特徴とするカーポート管理システム。
【請求項2】
前記決済手段は、前記確認手段によって前記車両の移動が確認されたときに前記制限時間を超過していなければ支払い処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のカーポート管理システム。
【請求項3】
前記決済手段は、前記確認手段によって前記車両の移動が確認されたときに前記制限時間を超過していれば課金処理を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカーポート管理システム。
【請求項4】
カーポート毎の車両在庫台数の履歴データを記憶する車両在庫台数履歴記憶手段を有しており、
前記制限時間設定手段は、前記車両在庫台数に記憶される履歴データで在庫台数が最小となる時刻と、前記移動先カーポートに到着する予想時刻のいずれか遅い時刻を基に、前記前記制限時間を設定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のカーポート管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−170293(P2010−170293A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11586(P2009−11586)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】