説明

ガイドシース

【課題】ダイレータを抜去した後にも、所望の形状および位置を維持して、挿入部を適切な位置に誘導することができるガイドシースを提供する。
【解決手段】体腔内に挿入される医療器具の挿入部を誘導する筒状のガイドシース1であって、ガイドシース本体10の基端側に設けられ、挿入部が挿入される基端側開口部11と、ガイドシース本体10の先端側に設けられ、挿入部が導出される先端側開口部12と、ガイドシース本体10の内面側において軸線方向に設けられ、光によって硬化する光硬化性樹脂を有する形状保持部13とを備えるガイドシース1を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具の挿入部を体腔内に誘導するガイドシースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野において用いられ、例えば内視鏡等の医療器具の挿入部を体腔内に挿入する際に、前記挿入部を体腔内に誘導するためのガイドシースが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このようなガイドシースを心膜腔内に留置する際、一般的には、心膜穿刺の後、ガイドワイヤを心膜内へ挿通させる。そして、ガイドワイヤに沿ってガイドシースおよびダイレータを挿入した後、ガイドシースからダイレータを抜去することにより、ガイドシースを心膜腔内に留置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−102843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているガイドシースは、可撓性を有しているため、ダイレータ抜去後には心臓の拍動によって意図しない形状に変形したり、当初の位置から移動してしまい、挿入部を適切な位置に誘導することができなくなるという不都合がある。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、ダイレータを抜去した後にも、所望の形状および位置を維持して、挿入部を適切な位置に誘導することができるガイドシースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、体腔内に挿入される医療器具の挿入部を誘導する筒状のガイドシースであって、該ガイドシースの基端側に設けられ、前記挿入部が挿入される基端側開口部と、前記ガイドシースの先端側に設けられ、前記挿入部が導出される先端側開口部と、前記ガイドシースの内面側において軸線方向に設けられ、光によって硬化する光硬化性樹脂を有する形状保持部とを備えるガイドシースを採用する。
【0008】
本発明に係るガイドシースを用いて、例えば内視鏡等の医療器具の挿入部を心膜腔内等の体腔内に挿入するには、皮膚表面から穿刺針を心膜に突き刺し、次に、ガイドワイヤを心膜腔内に挿入し、続いて、ガイドワイヤに沿って、ガイドシースとダイレータとを一体化して心膜腔内に挿入する。その後、ダイレータを引き抜き、ガイドシースの先端部を心膜腔内に配置するとともに、ガイドシースの基端部を体腔外に配置する。この状態において、ガイドシースの基端側開口部から挿入部を挿入することで、ガイドシース内を通って挿入部が先端側開口部から導出され、挿入部が心膜腔内に挿入される。
【0009】
そして、内視鏡操作により挿入部を湾曲させ、ガイドシースを観察対象部位の観察が可能な形状に変形させる。この状態で、挿入部から照明光を照射しながら、挿入部をガイドシースから抜き取る。その時、ガイドシースの内面側に設けられた光硬化樹脂を有する形状保持部は、照明光により光硬化反応が誘発されて硬化する。ガイドシースの内面側に設けられた形状保持部が硬化することにより、所望の形状にてガイドシースが固定される。これにより、ガイドシースを、観察対象部位の観察が可能な形状に維持することができ、心臓の拍動等によって意図しない形状に変形したり、意図しない方向に移動することを防止して、観察又は処置対象に適切に近接させることができる。これにより、対象位置の観察および処置を適切に行うことができる。
【0010】
上記発明において、前記形状保持部が、前記光硬化性樹脂を含有する多孔質材料で構成されていることとしてもよい。
このような構成にすることで、光硬化性樹脂を多孔質材料により保持することができ、ガイドシースの内面側において光硬化性樹脂を均一に分布させることができる。これにより、ガイドシースを効果的に固定することができ、ガイドシースを観察対象部位の観察が可能な形状に維持することができる。
【0011】
上記発明において、前記形状保持部が、前記光硬化性樹脂を流通させる中空の透過性部材で構成されていることとしてもよい。
このような構成にすることで、光硬化性樹脂を中空の透過性部材に外部から注入することにより、該中空の透過性部材に光硬化性樹脂を充填することができる。これにより、ガイドシースを所望の形状にした後に、ガイドシース内に光硬化性樹脂を充填することができ、意図しない光(例えば、ガイドシースの保管中における外光や体腔内への挿入中における外光)による光硬化性樹脂の硬化を防止することができる。すなわち、ガイドシースの保管や体腔内への挿入作業を容易なものとすることができる。
【0012】
上記発明において、前記形状保持部が、前記ガイドシースの軸線方向に部分的に配置されていることとしてもよい。
このような構成にすることで、体腔内の形状等に応じて、ガイドシースを軸線方向において部分的に硬化させることができる。これにより、ガイドシース内に内視鏡の挿入部を挿入する際の作業性を向上することができる。また、例えば、心膜との接触部や心臓との接触部については形状保持部のない構成(すなわち硬化しない構成)とすることで、人体への負担を軽減することができる。
【0013】
上記発明において、前記光硬化性樹脂が、380nmから700nmの波長領域の光により硬化することとしてもよい。
このようにすることで、一般的に内視鏡の照明光として用いられる可視光(380nmから700nmの波長領域の光)で光硬化性樹脂を硬化させることができる。これにより、光硬化性樹脂の硬化用の光源を新たに設ける必要性を排除することができる。
【0014】
上記発明において、前記ガイドシースの内面側に設けられ、前記ガイドシースの基端側から入射した光を前記ガイドシースの軸線方向に導く導光部と、前記ガイドシースの内面側に設けられ、前記導光部により導かれた光を前記形状保持部の全面にわたって配光する配光部とを備えることとしてもよい。
【0015】
このような構成にすることで、ガイドシースの基端側からガイドシースの内面側に設けられた導光部に光を入射させると、該光は導光部によりガイドシースの軸線方向に導かれる。ガイドシースの軸線方向に導かれた光は、配光部により、形状保持部の全面にわたって均一的に配光される。このようにすることで、ガイドシースから内視鏡の挿入部を抜くことなく、光硬化樹脂を有する形状保持部を硬化させて、所望の形状にてガイドシースを固定することができる。これにより、内視鏡の挿入部を抜く際のガイドシースの変形や位置ずれを防止することができ、より適切な位置にガイドシースを固定することができる。
【0016】
上記発明において、前記ガイドシースの基端側に設けられ、前記導光部に照明光を射出する光源を備えることとしてもよい。
このような構成にすることで、光源からの照明光を導光部によってガイドシースの軸線方向に導くことができ、光硬化樹脂を有する形状保持部を効率的に硬化させて、所望の形状にてガイドシースを固定することができる。
【0017】
上記発明において、前記導光部および前記配光部が、前記ガイドシースの内面全周にわたって設けられ、前記光源が、前記ガイドシースの内面周方向に間隔をあけて複数設けられていることとしてもよい。
このような構成にすることで、ガイドシースの内面周方向に間隔をあけて設けられた複数の光源から照明光を射出させ、これら照明光を、ガイドシースの内面全周にわたって設けられた導光部および配光部により、形状保持部に導くことができる。これにより、光硬化樹脂を有する形状保持部を効率的に硬化させて、所望の形状にてガイドシースを固定することができる。
【0018】
上記発明において、前記ガイドシースの内面と前記形状保持部との間に設けられ、粘着層を有するシート状の剥離部と、前記ガイドシースの先端側において前記剥離部に接続され、前記ガイドシース内を挿通し、前記ガイドシースの基端側まで延びる剥離操作部とを備えることとしてもよい。
【0019】
このような構成にすることで、形状保持部が硬化された後、ガイドシースを心膜腔内から抜去する際に、ガイドシースの基端部まで延びた剥離操作部を引張ることで、形状保持部を剥離することができる。これにより、剥離部の表層に設けられている形状保持部も同時にガイドシース内面から剥離される。このようにすることで、ガイドシースに再び可撓性を持たせることができるので、ガイドシースを心膜腔内から抜去する際の人体(心膜等)への負担を軽減することができ、ガイドシース抜去時の作業性および安全性を向上することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ダイレータを抜去した後にも、所望の形状および位置を維持して、挿入部を適切な位置に誘導することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るガイドシースの概略構成図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図2】図1のガイドシースを心膜腔内に挿入する際の状態を示す図である。
【図3】図1のガイドシースを心膜腔内において固定する際の状態を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るガイドシースの概略構成図であり、(a)は先端側から見た正面図、(b)はA−A’断面図、(c)は縦断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るガイドシースの概略構成図であり、(a)は先端側から見た正面図、(b)はB−B’断面図、(c)は縦断面図である。
【図6】図5のガイドシースに示す領域Dの部分拡大図である。
【図7】図5の変形例に係るガイドシースの概略構成図であり、(a)はC−C’断面図、(b)は先端側から見た正面図、(c)は縦断面図、(d)は基端側から見た正面図である。
【図8】図7のガイドシースにおける基板の部分拡大図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るガイドシースの概略構成図であり、(a)は先端側から見た正面図、(b)はD−D’断面図、(c)は縦断面図である。
【図10】図9のガイドシースにおいて形状保持部をガイドシース本体から剥離する際の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るガイドシース1について図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るガイドシース1は、図1(a)および図1(b)に示されるように、体腔内に挿入される医療器具の挿入部等を誘導する筒状のガイドシースである。以降では、図2(a)から図2(d)に示されるように、本実施形態に係るガイドシース1を用いて、心臓Aと心膜Bとの間に形成される心膜腔内Cに内視鏡の挿入部20(図3参照)を挿入する場合を例に挙げて説明する。なお、後述するように、ガイドシース1を心膜腔内Cに挿入するにあたっては、ガイドシース1内に挿入されるダイレータ23およびガイドワイヤ25を用いる。
【0023】
本実施形態に係るガイドシース1は、図1(a)および図1(b)に示されるように、筒状のガイドシース本体10と、ガイドシース本体10の内面に設けられた形状保持部13と、形状保持部13の表面に設けられた保護カバー14とを備えている。
【0024】
ガイドシース本体10は、図1(b)に示されるように、例えば樹脂等で構成され、可撓性を有するチューブ状の円筒部材である。ガイドシース本体10には、ガイドシース本体10の基端側に設けられた基端側開口部11と、ガイドシース本体10の先端側に設けられた先端側開口部12とが設けられている。
【0025】
基端側開口部11は、ガイドシース本体10の基端側に設けられた開口である。基端側開口部11には、図2(a)から図2(d)に示されるように、内視鏡の挿入部20やダイレータ23やガイドワイヤ25が挿入されるようになっている。
【0026】
先端側開口部12は、ガイドシース本体10の先端側に設けられた開口である。先端側開口部12には、図2(a)から図2(d)に示されるように、ガイドシース本体10内を挿通してきた、内視鏡の挿入部20やダイレータ23やガイドワイヤ25が導出されるようになっている。
【0027】
形状保持部13は、ガイドシース本体10の内面側において全周にわたって軸線方向に連続的に設けられており、光によって硬化する光硬化性樹脂を含有している。具体的には、形状保持部13は、ガイドシース本体10の半径方向に厚みを有する多孔質材料(例えばスポンジ状の部材)で構成されている。このような構成を有することで、形状保持部13内において光硬化樹脂を均一に分布させることができる。
【0028】
光硬化性樹脂は、例えばエポキシ系光硬化樹脂やアクリル系光硬化樹脂などであり、無色透明な樹脂が好適である。
また、光硬化性樹脂は、可視光(例えば380nmから700nmの波長領域の光)により硬化する性質を有しており、内視鏡の挿入部20の先端から照射される照明光により硬化する。
【0029】
保護カバー14は、透過性を有する透明のフィルムであり、ガイドシース1内に内視鏡の挿入部20やダイレータ23やガイドワイヤ25を挿入した際に、これら挿入物から形状保持部13を保護するようになっている。
【0030】
ダイレータ23は、基端側開口部11からガイドシース1内に挿入される棒状部材である。ダイレータ23は、予めガイドシース1内に留置されているガイドワイヤ25に沿ってガイドシース1内に挿入される。ダイレータ23の先端は、テーパ状になっており、心膜の穴を広げながら進入することができるようになっている。なお、ダイレータ23は、体腔内の組織に対する侵襲を抑えるために生体適合性を有する樹脂で形成されていることが望ましい。
【0031】
ガイドワイヤ25は、基端側開口部11からガイドシース1内に挿入され、先端側開口部12から導出されて、心膜腔内Cに挿入されるワイヤである。ガイドワイヤ25は、ダイレータ23を、ガイドシース1の基端側開口部11から先端側開口部12まで誘導するようになっている。また、ガイドワイヤ25は、ダイレータ23およびガイドシース1を、心膜腔内Cに誘導するようになっている。
【0032】
上記構成を有するガイドシース1を用いて、内視鏡の挿入部20を心膜腔内に挿入する際の動作について以下に説明する。
内視鏡の挿入部20を、図2(a)から図2(d)に示す心膜腔内Cに挿入するには、まず、皮膚表面から穿刺針を心膜Bに突き刺し、次に、穿刺針からガイドワイヤ25を心膜腔内Cに挿入する。
【0033】
次に、ガイドワイヤ25を心膜腔内Cにさらに挿入して、ガイドワイヤ25の先端を心膜腔内Cの観察対象位置近傍に配置する。そして、穿刺針を心膜Bから抜き取る。
次に、図2(a)に示されるように、ガイドワイヤ25に沿って、ガイドシース1とダイレータ23とを一体化して心膜腔内Cに挿入する。この場合において、可撓性を有するガイドシース1は、基端側開口部11から先端側開口部12まで棒状のダイレータ23が挿入されることで、ダイレータ23に沿って直線形状に規制される。
【0034】
これにより、ガイドワイヤ25に沿って、ガイドシース1とダイレータ23とを容易に心膜腔内Cに挿入することができる。このようにすることで、図2(b)に示されるように、ガイドシース1およびダイレータ23の先端部を、心膜腔内Cの観察対象位置近傍に配置する。
【0035】
次に、ガイドシース1からダイレータ23を引き抜き、ガイドシース1の先端部を心膜腔内Cの観察対象位置近傍に配置するとともに、ガイドシース1の基端部を体腔外に配置する。これにより、体腔外から心膜腔内に内視鏡の挿入部20を誘導することができる。
【0036】
この状態において、図2(c)に示されるように、ガイドシース1の基端側開口部11から内視鏡の挿入部20を挿入することで、内視鏡の挿入部20がガイドシース1内を通って先端側開口部12から導出され、内視鏡の挿入部20が心膜腔内Cに挿入される。
【0037】
次に、内視鏡が有している湾曲機構により挿入部20を湾曲させ、ガイドシース本体10を観察対象部位の観察が可能な形状に変形させる。これにより、内視鏡の挿入部20を心膜腔内Cにおける観察対象部位近傍に誘導して、該観察対象部位の観察および処置を行うことができる。
【0038】
ただし、このままの状態では、図2(d)に示されるように、ガイドシース1は、可撓性を有しているため、心臓Aの拍動によって意図しない形状に変形したり、当初の位置から移動してしまい、観察対象部位からずれてしまう場合がある。
【0039】
そこで、本実施形態に係るガイドシース1は、図3(a)に示されるように、心膜腔内Cにガイドシース1および内視鏡の挿入部20が挿入された状態から、図3(b)から図3(e)に示されるように、挿入部20から照明光を照射しながら、挿入部20をガイドシース1から抜き取る。この際、ガイドシース本体10の内面側に設けられた光硬化樹脂を有する形状保持部13は、挿入部20からの照明光により光硬化反応が誘発されて硬化する。
【0040】
ガイドシース本体10の内面側に設けられた形状保持部13が硬化することにより、所望の形状にてガイドシース1が固定される。これにより、ガイドシース1を、観察対象部位の観察が可能な形状に維持することができ、心臓Aの拍動により意図しない形状に変形したり、意図しない方向に移動することを防止して、内視鏡の挿入部20を適切な位置に誘導することができる。これにより、観察対象部位の観察および処置を適切に行うことができる。
【0041】
また、本実施形態に係るガイドシース1によれば、形状保持部13が、光硬化性樹脂を含有する多孔質材料で構成されているため、光硬化性樹脂を多孔質材料により保持することができ、ガイドシース1をどのような角度に配置・変形させた場合にも、ガイドシース本体10の内面側において光硬化性樹脂を均一に分布させることができる。これにより、ガイドシース1を効果的に固定することができ、ガイドシース1を観察対象部位の観察が可能な形状に維持することができる。
【0042】
また、光硬化性樹脂として、可視光(例えば380nmから700nmの波長領域の光)により硬化するものを採用することで、一般的な内視鏡の照明光で光硬化性樹脂を硬化させることができる。これにより、光硬化性樹脂の硬化用の光源を新たに設ける必要性を排除することができる。
【0043】
なお、本実施形態において、形状保持部13は、ガイドシース本体10の内面側において全周にわたって軸線方向に連続的に設けられていることとして説明したが、ガイドシース本体10の軸線方向または周方向に部分的に配置することとしてもよい。
【0044】
このような構成にすることで、体腔内の形状等に応じて、ガイドシース1を軸線方向において部分的に硬化させることができる。これにより、ガイドシース1内に内視鏡の挿入部20を挿入する際の作業性を向上することができる。また、例えば、心膜Bとの接触部や心臓Aとの接触部については形状保持部13のない構成(すなわち硬化しない構成)とすることで、人体への負担を軽減することができる。
【0045】
[第2の実施形態]
以下に、第2の実施形態に係るガイドシース2について、図面を参照して説明する。以降では、本実施形態に係るガイドシースについて、第1の実施形態に係るガイドシース1と共通する点については同一の符号を付して説明を省略し、第1の実施形態に係るガイドシース1と異なる点について主に説明する。
【0046】
本実施形態に係るガイドシース2は、図4(a)から図4(c)に示されるように、体腔内に挿入される医療器具の挿入部等を誘導する筒状のガイドシースであり、筒状のガイドシース本体10と、ガイドシース本体10の内面に設けられた形状保持部15と、形状保持部15に接続された管路16、バルブ17、および光硬化性樹脂注入口18とを備えている。
【0047】
形状保持部15は、例えば透明樹脂等の、可撓性を有する透過性部材で構成された中空の管路であり、ガイドシース本体10の内面側において螺旋状に形成されている。
形状保持部15は、ガイドシース本体10の外部(基端側)に設けられた管路16およびバルブ17を介して、光硬化性樹脂注入口18に接続されている。このような構成を有することで、バルブ17を開いて光硬化性樹脂注入口18から注射器等を用いて光硬化性樹脂を注入することで、形状保持部15に光硬化性樹脂が充填されるようになっている。
【0048】
上記構成を有する本実施形態に係るガイドシース2によれば、光硬化性樹脂を中空の透過性部材(形状保持部15)に外部から注入することにより、中空の透過性部材に光硬化性樹脂を充填することができる。これにより、ガイドシース2を所望の形状にした後に、ガイドシース2内に光硬化性樹脂を充填することができ、意図しない光(例えば、ガイドガイドシース2の保管中における外光や体腔内への挿入中における外光)による光硬化性樹脂の硬化を防止することができる。すなわち、ガイドシース2の保管や体腔内への挿入作業を容易なものとすることができる。
【0049】
なお、本実施形態において、形状保持部15は、螺旋状の管路であるとして説明したが、光硬化樹脂が充填できる形状であればよい。したがって、形状保持部15として、上記の形状に代えて、ガイドシース2の軸線方向に延在する矩形形状や楕円形状の管路、あるいは光硬化樹脂を充填することにより拡張する袋を採用してもよい。
【0050】
[第3の実施形態]
以下に、第3の実施形態に係るガイドシース3について、図面を参照して説明する。以降では、本実施形態に係るガイドシース3について、前述の各実施形態に係るガイドシースと共通する点については同一の符号を付して説明を省略し、前述の各実施形態に係るガイドシースと異なる点について主に説明する。
【0051】
本実施形態に係るガイドシース3は、図5(a)から図5(c)に示されるように、体腔内に挿入される医療器具の挿入部等を誘導する筒状のガイドシースであり、筒状のガイドシース本体10と、ガイドシース本体10の内面に設けられた形状保持部13と、形状保持部13の表面に設けられた導光ユニット30とを備えている。
【0052】
図5(c)の領域Dの部分拡大図が図6に示されている。
図6に示されるように、導光ユニット30は、形状保持部13の表面から近い順に、拡散フィルム31と、配光制御シート(配光部)32と、導光層(導光部)33と、ミラーフィルム34とが積層されて形成されている。
【0053】
導光層33は、例えば透明樹脂で構成されており、ガイドシース3の基端側から入射した光を、内面反射させながら、ガイドシース3の軸線方向先端側に向けて導くようになっている。
ミラーフィルム34は、導光層33からの光を反射して、再び導光層33に入射させるようになっている。
【0054】
配光制御シート32は、導光層33により導かれた光を形状保持部13の全面にわたって均一的に配光するようになっている。
拡散フィルム31は、配光制御シート32を透過してきた光を拡散させて、形状保持部13に照射するようになっている。
【0055】
上記構成を有する本実施形態に係るガイドシース3の作用について以下に説明する。
まず、ガイドシース3の基端側に設けられた導光ユニット30の入射面(基端側端部)に照明光を照射する。導光ユニット30の入射面に照射された照明光は、ミラーフィルム34と配光制御シート32との間に設けられた導光層33内を、反射屈折を繰り返しながらガイドシース3の軸線方向先端側に導かれる。
【0056】
導光層33内を導かれる光のうちミラーフィルム34側(半径方向内方)に進む光は、ミラーフィルム34により形状保持部13側(半径方向外方)へ反射される。一方、形状保持部13側(半径方向外方)へ進む光は、配光制御シート32により、積極的に形状保持部13に導かれる。
【0057】
以上のように、本実施形態に係るガイドシース3によれば、導光ユニット30に入射した光が導光層33によりガイドシース3の軸線方向先端側に導かれるとともに、導光層33に導かれる光の一部が、ガイドシース3の軸線に直交する方向(半径方向外方)に照射されることで、形状保持部13の全面にわたって均一的に照明光を導くことができる。
【0058】
このようにすることで、ガイドシース3から内視鏡の挿入部20を抜くことなく、光硬化樹脂を有する形状保持部13を硬化させて、所望の形状にてガイドシース3を固定することができる。これにより、内視鏡の挿入部20を抜く際のガイドシース3の変形や位置ずれを防止することができ、より適切な位置にガイドシース3を固定することができる。
【0059】
[変形例]
本実施形態に係るガイドシース3の変形例として、図7(a)から図7(d)に示されるように、ガイドシースの基端側に光源ユニット40を備えることとしてもよい。以降では、本変形例に係るガイドシース4について、前述の実施形態に係るガイドシース3と共通する点については同一の符号を付して説明を省略し、前述の実施形態に係るガイドシース3と異なる点について主に説明する。
【0060】
本変形例に係るガイドシース4は、図7(a)から図7(d)に示されるように、体腔内に挿入される医療器具の挿入部等を誘導する筒状のガイドシースであり、筒状のガイドシース本体10と、ガイドシース本体10の内面に設けられた形状保持部13と、形状保持部13の表面に設けられた導光ユニット30と、ガイドシースの基端側に設けられた光源ユニット40とを備えている。
【0061】
導光ユニット30は、ガイドシース本体10の内面全周にわたって設けられている。
光源ユニット40は、複数のLED(光源)41と、基板42と、バッテリー43と、スイッチ44と、光源ユニット本体44とを備えている。
【0062】
光源ユニット本体44は、ガイドシースの基端側に接続される円筒部材である。
基板42は、図8に示すように、湾曲可能なフレキシブル材料で構成され、複数のLED41が配設される基板である。基板42は、光源ユニット本体44の内周面に接合されるようになっている。
【0063】
このような構成とすることで、複数のLED41は、図7(d)に示されるように、ガイドシース本体10の内面周方向に間隔をあけて配置される。また、複数のLED41は、導光ユニット30に光軸を向けて配置されている。
【0064】
バッテリー43は、複数のLED41に接続されており、これらLED41に電力を供給するようになっている。
スイッチ44は、バッテリー43からLED41への電力の供給をON/OFFするようになっている。
【0065】
上記構成を有する本変形例に係るガイドシース4によれば、ガイドシース本体10の内面周方向に間隔をあけて設けられた複数のLED41から照明光を射出させ、これら照明光を導光ユニット30の入射させることができる。ここで、導光ユニット30は、ガイドシース本体10の内面全周にわたって設けられているため、該導光ユニット30(導光層33および配光制御シート32)により、光源ユニット40からの照明光を、形状保持部13全体に均一的に導くことができる。これにより、光硬化樹脂を有する形状保持部13を効率的に硬化させて、所望の形状にガイドシース4を固定することができる。
【0066】
[第4の実施形態]
以下に、第4の実施形態に係るガイドシース5について、図面を参照して説明する。以降では、本実施形態に係るガイドシース5について、前述の各実施形態に係るガイドシースと共通する点については同一の符号を付して説明を省略し、前述の各実施形態に係るガイドシースと異なる点について主に説明する。
【0067】
本実施形態に係るガイドシース5は、図9(a)から図9(c)に示されるように、ガイドシース本体10の内面と形状保持部13との間に設けられた剥離部51と、ガイドシース本体10の先端側において剥離部51に接続された剥離操作部(剥離操作部)52とを備えている。
【0068】
剥離部51は、粘着層を有するシート状の剥離部である。剥離部51の一面は、粘着層の粘着力によって、ガイドシース本体10の内面に接合されている。また、剥離部51の他面は、粘着層の粘着力によって、形状保持部13に接合されている。
【0069】
紐状の剥離操作部52は、ガイドシース本体10の先端側において剥離部51に接続されており、ガイドシース本体10内を挿通して、ガイドシース本体10の基端側まで延びている。
【0070】
なお、本実施形態においては、剥離部51およびその表面に接合された形状保持部13の剥離を容易に行うために、形状保持部13は、ガイドシース本体10の内面側において、その周方向および軸線方向に部分的に設けられている。ただし、形状保持部13は、ガイドシース本体10の軸線方向に連続的に設けられていてもよい。また、形状保持部13は、ガイドシース本体10の周方向に間隔をあけて複数設けられていてもよい。
【0071】
上記構成を有する本変形例に係るガイドシース5において、ガイドシース5を心膜腔内Cから抜去する際の動作について以下に説明する。
本変形例に係るガイドシース5によれば、図10(a)に示されるように、内視鏡の挿入部20を照明光を照射しながらガイドシース5から抜き出すことで、光硬化性樹脂を有する形状保持部13を硬化する。
【0072】
この状態において、図10(b)から図10(d)に示されるように、ガイドシース本体10の基端部まで延びた剥離操作部52を基端側に引張ることで、形状保持部13を剥離することができる。具体的には、ガイドシース本体10と剥離部51との間の粘着層により作用する接着力よりも、剥離操作部52を引張ることにより及ぼされる張力の方が強くなった際に、ガイドシース本体10内面から剥離部51の粘着層が剥離される。これにより、剥離部51の表層に接合されている形状保持部13も、同時にガイドシース本体10内面から剥離される。
【0073】
このようにすることで、ガイドシース5に再び可撓性を持たせることができるので、ガイドシース5を心膜腔内Cから抜去する際の人体(心膜B等)への負担を軽減することができ、ガイドシース5抜去時の作業性および安全性を向上することができる。
【0074】
以上、本発明の各実施形態および変形例について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の各実施形態および変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよい。
【0075】
また、各実施形態において、本発明に係るガイドシースを用いて、心膜腔内に内視鏡の挿入部を挿入する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、本発明に係るガイドシースを他の体腔内に挿入することとしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
A 心臓
B 心膜
C 心膜腔内
1,2,3,4,5 ガイドシース
10 ガイドシース本体
11 基端側開口部
12 先端側開口部
13 形状保持部
14 保護カバー
15 形状保持部
20 挿入部
23 ダイレータ
25 ガイドワイヤ
30 導光ユニット
31 拡散フィルム
32 配光制御シート(配光部)
33 導光層(導光部)
34 ミラーフィルム
40 光源ユニット
41 LED(光源)
42 基板
51 剥離部
52 剥離操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内に挿入される医療器具の挿入部を誘導する筒状のガイドシースであって、
該ガイドシースの基端側に設けられ、前記挿入部が挿入される基端側開口部と、
前記ガイドシースの先端側に設けられ、前記挿入部が導出される先端側開口部と、
前記ガイドシースの内面側において軸線方向に設けられ、光によって硬化する光硬化性樹脂を有する形状保持部とを備えるガイドシース。
【請求項2】
前記形状保持部が、前記光硬化性樹脂を含有する多孔質材料で構成されている請求項1に記載のガイドシース。
【請求項3】
前記形状保持部が、前記光硬化性樹脂を流通させる中空の透過性部材で構成されている請求項1に記載のガイドシース。
【請求項4】
前記形状保持部が、前記ガイドシースの軸線方向に部分的に配置されている請求項1に記載のガイドシース。
【請求項5】
前記光硬化性樹脂が、380nmから700nmの波長領域の光により硬化する請求項1に記載のガイドシース。
【請求項6】
前記ガイドシースの内面側に設けられ、前記ガイドシースの基端側から入射した光を前記ガイドシースの軸線方向に導く導光部と、
前記ガイドシースの内面側に設けられ、前記導光部により導かれた光を前記形状保持部の全面にわたって配光する配光部とを備える請求項1に記載のガイドシース。
【請求項7】
前記ガイドシースの基端側に設けられ、前記導光部に照明光を射出する光源を備える請求項6に記載のガイドシース。
【請求項8】
前記導光部および前記配光部が、前記ガイドシースの内面全周にわたって設けられ、
前記光源が、前記ガイドシースの内面周方向に間隔をあけて複数設けられている請求項7に記載のガイドシース。
【請求項9】
前記ガイドシースの内面と前記形状保持部との間に設けられ、粘着層を有するシート状の剥離部と、
前記ガイドシースの先端側において前記剥離部に接続され、前記ガイドシース内を挿通し、前記ガイドシースの基端側まで延びる剥離操作部とを備える請求項1に記載のガイドシース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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