説明

ガイドベーン装置

【課題】曲げ荷重に対する弱点部の強度を高めることができるガイドベーン装置を提供する。
【解決手段】ガイドベーン装置のリンク機構5は、ガイドリング3に第1リンクピン7を介し一方側端部が回動可能に連結されたリンク8と、リンク8の他方側端部に第2リンクピン9を介し一方側端部が回動可能に連結され、ガイドベーン2の回転軸4に他方側端部が固定されたレバー10とを備えている。第1リンクピン7は、弱点部7aを有する。弱点部7aの径方向断面は、真円形状である場合より断面係数が大きくなるように、操作力作用線L方向の幅寸法が、操作力作用線L方向に対し直交する方向の幅寸法より大きい形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水車、ポンプ、若しくはポンプ水車等の水力機械に係わり、特に、水車のランナ流入側若しくはポンプのランナ流出側の開口面積を調整するガイドベーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水力機械のガイドベーン装置は、例えば、ガイドリングと、ランナ外周側に環状に配置された複数のガイドベーンと、ガイドリングと複数のガイドベーンの回転軸との間でそれぞれ連結された複数のリンク機構とを備えている。そして、サーボモータによってガイドリングが回転すると、このガイドリングの回転力(トルク)が各リンク機構を介し各ガイドベーンの回転軸に伝達されて、複数のガイドベーンが同期して回転する。これにより、隣接するガイドベーンの間の開口を開閉して、水(作動流体)の流量を調整するようになっている。
【0003】
ところで、例えば隣接するガイドベーンの間に水中の異物(木片等)が挟まった場合、ガイドベーンの閉操作が阻止されて過大な力が発生し、ガイドベーンやリンク機構を破損させる可能性がある。そこで、リンク機構の一部に弱点部を設けた構造が提唱されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のリンク機構は、ガイドリングに第1リンクピンを介し一方側端部が回動可能に連結されたリンクと、このリンクの他方側端部に第2リンクピンを介し一方側端部が回動可能に連結され、ガイドベーンの回転軸に他方側端部が固定されたレバー(ガイドベーンアーム)とを備えている。第1リンクピンは、いわゆる弱点ピンであって、軸方向の一部分に他の部分と比較して剪断強度が低い弱点部を有している。そして、第1リンクピンの弱点部に設定値以上の操作力が作用した場合には、第1リンクピンの弱点部が剪断破壊され、リンク機構が切り離される。これにより、過大な力が発生せず、ガイドベーン等の破損を防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−128382号公報(図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では明確に記載されていないものの、第1リンクピンの弱点部の径方向断面は、真円形状であり、その断面積は、ガイドベーン等の破損を防止するための剪断荷重の上限値に基づいて設定されている。
【0007】
ところで、サーボモータによるガイドリングの操作時にガイドリングの変形等が生じることがあり、第1リンクピンには、第1リンクピンの軸心と第2リンクピンの軸心とを結ぶ操作力作用線上の断面において曲げ荷重が作用する。そのため、この曲げ荷重に対する弱点部の強度を高めたいという要望がある。しかし、上述した理由によって弱点部の断面積が設定されていることから、曲げ荷重に対する強度を高めるために弱点部の断面積を大きくすることはできない。
【0008】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、曲げ荷重に対する弱点部の強度を高めることができるガイドベーン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、ランナ流入側若しくはランナ流出側に環状に配置された複数のガイドベーンと、ガイドリングと、前記ガイドリングと前記複数のガイドベーンの回転軸との間でそれぞれ連結され、前記ガイドリングの回転力を前記複数のガイドベーンの回転軸にそれぞれ伝達する複数のリンク機構とを備え、前記リンク機構は、前記ガイドリングに第1リンクピンを介し一方側端部が回動可能に連結されたリンクと、前記リンクの他方側端部に第2リンクピンを介し一方側端部が回動可能に連結され、前記ガイドベーンの回転軸に他方側端部が固定されたレバーとを備え、前記第1リンクピンは、軸方向の一部分に他の部分と比較して剪断強度が低い弱点部を有するガイドベーン装置において、前記第1リンクピンの径方向における前記弱点部の断面は、真円形状である場合より断面係数が大きくなるように、前記第1リンクピンの軸心と前記第2リンクピンの軸心とを結ぶ操作力作用線方向の幅寸法が、前記操作力作用線方向に対し直交する方向の幅寸法より大きい形状である。
【0010】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記第1リンクピンの径方向における前記弱点部の断面は、真円形状である場合より断面係数が大きくなるように、前記第1リンクピンの軸心と前記第2リンクピンの軸心とを結ぶ操作力作用線方向の幅寸法が、前記操作力作用線方向に対し直交する方向の幅寸法より大きい略長方形状である。
【0011】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記第1リンクピンの径方向における前記弱点部の断面は、真円形状である場合より断面係数が大きくなるように、前記第1リンクピンの軸心と前記第2リンクピンの軸心とを結ぶ操作力作用線方向の幅寸法が、前記操作力作用線方向に対し直交する方向の幅寸法より大きい略多角形状である。
【0012】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記第1リンクピンの径方向における前記弱点部の断面は、真円形状である場合より断面係数が大きくなるように、前記第1リンクピンの軸心と前記第2リンクピンの軸心とを結ぶ操作力作用線方向の幅寸法が、前記操作力作用線方向に対し直交する方向の幅寸法より大きい長円形状若しくは楕円形状である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弱点部は、真円形状である場合より断面係数が大きくなり、曲げ荷重に対する強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の適用対象であるガイドベーン装置の構造を表す断面図である。
【図2】本発明の適用対象であるガイドベーン装置の概略構造を表す上面図である。
【図3】本発明の適用対象であるガイドベーン装置のリンク機構の構造を表す上面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による弱点部の断面形状を表す図である。
【図5】本発明の第1の変形例による弱点部の断面形状を表す図である。
【図6】本発明の第2の変形例による弱点部の断面形状を表す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態による弱点部の断面形状を表す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態による弱点部の断面形状を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の適用対象であるガイドベーン装置の構造を表す断面図である。図2は、本発明の適用対象であるガイドベーン装置の概略構造を表す上面図であり、図3は、リンク機構の構造を表す上面図である。
【0016】
これら図1〜図3において、ガイドベーン装置は、例えばフランシス型水車等の水車(言い換えれば、水の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する水力機械)、ポンプ(言い換えれば、電気エネルギーを水の運動エネルギーに変換する水力機械)、若しくはポンプ水車(言い換えれば、水車の機能及びポンプの機能を併せ持つ水力機械)に用いられるものである。そして、水車においてはランナ流入側の開口面積を調整し、ポンプにおいてはランナ流出側の開口面積を調整するものである。
【0017】
このガイドベーン装置は、ランナ1(羽根車)の外周側に環状に配置された複数(図2では代表して2つのみ示す)のガイドベーン2と、ガイドリング3と、このガイドリング3と複数のガイドベーン2の回転軸4との間で連結された複数のリンク機構5とを備えている。そして、サーボモータ6によってガイドリング3が回転すると、このガイドリング3の回転力(トルク)が各リンク機構5を介し各ガイドベーン2の回転軸4に伝達されて、複数のガイドベーン2が同期して回転する。これにより、隣接するガイドベーン2の間の開口を開閉して、水(作動流体)の流量を調整するようになっている。
【0018】
リンク機構5は、ガイドリング3に第1リンクピン7を介し一方側(図1中左側)端部が回動可能に連結されたリンク8と、このリンク8の他方側(図1中右側)端部に第2リンクピン9を介し一方側(図1中左側)端部が回動可能に連結され、ガイドベーン2の回転軸4に他方側(図1中右側)端部が固定されたたレバー10とを備えている。なお、第1リンクピン7はリンク8に固着されており、第1リンクピン7及びリンク8がガイドリング3に対し相対的に回動するようになっている。
【0019】
第1リンクピン7は、いわゆる弱点ピンであって、軸方向の一部分に他の部分と比較して径方向断面積が小さく剪断強度が低い弱点部7aを有している。これにより、隣接するガイドベーン2の間に水中の異物が挟まった状態でガイドベーン2を閉方向に操作したときに、大きな力が発生しても、第1リンクピン7の弱点部7aが優先的に破断するようになっている。そのため、第1リンクピン7の弱点部7aの径方向断面積は、ガイドベーン2等の破損を防止するための剪断荷重の上限値に基づいて設定されている。
【0020】
ところで、サーボモータ6によるガイドリング3の操作時にガイドリング3の変形等が生じることがあり、第1リンクピン7には、第1リンクピン7の軸心と第2リンクピン9の軸心とを結ぶ操作力作用線L上の断面において曲げ荷重(図1中矢印で示す)が作用する。そのため、この曲げ荷重に対する弱点部7aの強度を高めたいという要望がある。しかし、上述した理由によって弱点部7aの断面積が設定されていることから、曲げ荷重に対する強度を高めるために弱点部の断面積を大きくすることはできない。そこで、本発明では、第1リンクピン7の弱点部7aの径方向断面は、真円形状である場合より断面係数が大きくなる形状を採用する。このような本発明の実施形態を、以下説明する。
【0021】
本発明の第1の実施形態を図4により説明する。図4は、本発明の第1の実施形態による第1リンクピン7の弱点部7aの径方向断面を表す図である。
【0022】
本実施形態では、第1リンクピン7の弱点部7aの径方向断面は、操作力作用線L方向(図4中上下方向)を長辺、操作力作用線L方向に対し直交する方向(図4中左右方向)を短辺とした略長方形状である。すなわち、操作力作用線L方向の幅寸法A1が、操作力作用線L方向に対し直交する方向の幅寸法B1より大きい形状である。これにより、弱点部7aは、真円形状である場合より断面係数が大きくなり、曲げ荷重に対する強度を高めることができる。なお、「略長方形状」とは、応力集中を低減するために角部に適度な丸み(R)をつけた長方形状を意味する。
【0023】
なお、上記第1の実施形態においては、第1リンクピン7の弱点部7aの径方向断面は、略長方形状である場合を例にとって説明したが、これに限られず、操作力作用線L方向の幅寸法が、操作力作用線L方向に対し直交する方向の幅寸法より大きい形状であれば、他の略多角形状であってもよい。具体的には、例えば図5で示す第1の変形例のように、略六角形状(言い換えれば、角部に適度な丸み(R)をつけた六角形状)であって、操作力作用線L方向(図5中上下方向)の幅寸法A2が、操作力作用線L方向に対し直交する方向(図5中左右方向)の幅寸法B2より大きい形状としてもよい。また、例えば図6で示す第2の変形例のように、略H形状(言い換えれば、角部に適度な丸み(R)をつけたH形状)であって、操作力作用線L方向(図6中上下方向)の幅寸法A2が、操作力作用線L方向に対し直交する方向(図6中左右方向)の幅寸法B2より大きい形状としてもよい。これらの変形例においても、弱点部7aは、真円形状である場合より断面係数が大きくなり、曲げ荷重に対する強度を高めることができる。
【0024】
本発明の第2の実施形態を図7により説明する。図7は、本発明の第2の実施形態による第1リンクピン7の弱点部7aの径方向断面を表す図である。
【0025】
本実施形態では、第1リンクピン7の弱点部7aの径方向断面は、操作力作用線L方向(図7中上下方向)を長軸、操作力作用線L方向に対し直交する方向(図7中左右方向)を短軸とした長円形状である。すなわち、操作力作用線L方向の幅寸法A4が、操作力作用線L方向に対し直交する方向の幅寸法B4より大きい形状である。これにより、弱点部7aは、真円形状である場合より断面係数が大きくなり、曲げ荷重に対する強度を高めることができる。なお、「長円形状」とは、2つの直線とそれらをつなぐ2つの円弧とで輪郭が形成された形状を意味する。
【0026】
本発明の第3の実施形態を図8により説明する。図8は、本発明の第3の実施形態における弱点部の径方向断面を表す図である。
【0027】
本実施形態では、第1リンクピン7の弱点部7aの径方向断面は、操作力作用線L方向(図8中上下方向)を長軸、操作力作用線L方向に対し直交する方向(図8中左右方向)を短軸とした楕円形状である。すなわち、操作力作用線L方向の幅寸法A5が、操作力作用線L方向に対し直交する方向の幅寸法B5より大きい形状である。これにより、弱点部7aは、真円形状である場合より断面係数が大きくなり、曲げ荷重に対する強度を高めることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ランナ
2 ガイドベーン
3 ガイドリング
4 回転軸
5 リンク機構
6 サーボモータ
7 第1リンクピン
7a 弱点部
8 リンク
9 第2リンクピン
10 レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランナ流入側若しくはランナ流出側に環状に配置された複数のガイドベーンと、
ガイドリングと、
前記ガイドリングと前記複数のガイドベーンの回転軸との間でそれぞれ連結され、前記ガイドリングの回転力を前記複数のガイドベーンの回転軸にそれぞれ伝達する複数のリンク機構とを備え、
前記リンク機構は、
前記ガイドリングに第1リンクピンを介し一方側端部が回動可能に連結されたリンクと、
前記リンクの他方側端部に第2リンクピンを介し一方側端部が回動可能に連結され、前記ガイドベーンの回転軸に他方側端部が固定されたレバーとを備え、
前記第1リンクピンは、軸方向の一部分に他の部分と比較して剪断強度が低い弱点部を有するガイドベーン装置において、
前記第1リンクピンの径方向における前記弱点部の断面は、真円形状である場合より断面係数が大きくなるように、前記第1リンクピンの軸心と前記第2リンクピンの軸心とを結ぶ操作力作用線方向の幅寸法が、前記操作力作用線方向に対し直交する方向の幅寸法より大きい形状であることを特徴とするガイドベーン装置。
【請求項2】
請求項1記載のガイドベーン装置において、
前記第1リンクピンの径方向における前記弱点部の断面は、真円形状である場合より断面係数が大きくなるように、前記第1リンクピンの軸心と前記第2リンクピンの軸心とを結ぶ操作力作用線方向の幅寸法が、前記操作力作用線方向に対し直交する方向の幅寸法より大きい略長方形状であることを特徴とするガイドベーン装置。
【請求項3】
請求項1記載のガイドベーン装置において、
前記第1リンクピンの径方向における前記弱点部の断面は、真円形状である場合より断面係数が大きくなるように、前記第1リンクピンの軸心と前記第2リンクピンの軸心とを結ぶ操作力作用線方向の幅寸法が、前記操作力作用線方向に対し直交する方向の幅寸法より大きい略多角形状であることを特徴とするガイドベーン装置。
【請求項4】
請求項1記載のガイドベーン装置において、
前記第1リンクピンの径方向における前記弱点部の断面は、真円形状である場合より断面係数が大きくなるように、前記第1リンクピンの軸心と前記第2リンクピンの軸心とを結ぶ操作力作用線方向の幅寸法が、前記操作力作用線方向に対し直交する方向の幅寸法より大きい長円形状若しくは楕円形状であることを特徴とするガイドベーン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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