説明

ガイドワイヤ

【課題】
ガイドワイヤの先端部の外径を細径化して、狭窄病変部へのガイドワイヤの挿入性を高めると共に、先端の細径部から基端の太径部へ移行する際の外径変化部の変形を利用して、一時的なストッパー機能を付与することで、狭窄部に対してより末梢方向の末梢件への穿孔や血管壁の損傷を防止して、安全性を向上させたガイドワイヤを提供することを課題とする
【解決手段】
ガイドワイヤ1は、コアシャフト2と、そのコアシャフト2の先端部を覆う第1のコイル体3と、第1のコイル体3のコイル外径よりも細いコイル外径を有する第2のコイル体5とを有し、第2のコイル体5の先端は第1のコイル体3の先端よりも先端方向に位置し、第1のコイル体3の先端と第2のコイル体5の基端とは、膨隆部4で固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管、消化管、尿管等の管状器官や体内組織に挿入して、目的部位へ医療デバイス等を案内するために使用される種々のガイドワイヤが提案されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたガイドワイヤは、先端部に扁平断面部を有するコアシャフトと、このコアシャフトを覆い、先端方向に向って緩やかにコイル外径が減少しているコイル体とを有しており、ガイドワイヤの挿入性と柔軟性とを向上させている。
【0004】
また、特許文献2に記載されたガイドワイヤは、コアシャフトと、コアシャフトの先端部を覆い、先端方向に向ってコイル外径が減少する外側コイル体と、外側コイル体のコイル外径が減少する部分よりも基端側に配置され、外側コイル体の内側に位置する放射線不透過性を有する内側コイル体とを有しており、ガイドワイヤの操作性と視認性とを向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5402799号明細書
【特許文献2】米国特許第5345945号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたガイドワイヤは、コイル外径が先端に向って減少しているので、狭窄病変に対する挿入性は向上しているものの、この挿入性の向上によって、ガイドワイヤが狭窄病変部内に一瞬で挿入されてしまった際には、狭窄部より末梢側の末梢血管を穿孔したり、末梢血管内の血管壁を傷つけてしまったりする虞を有していた。
【0007】
また、引用文献2に記載されたガイドワイヤは、外側コイル体のコイル外径の変化が引用文献1に記載のガイドワイヤと比べてより急峻ではあるものの、外側コイル体のコイル外径が変化している部分は柔軟である為、外側コイル体のコイル外径が変化している部分の形状が変形し易い問題を有しており、その結果、外側コイル体が変形することで、外側コイル体の変形による血管壁の損傷や狭窄部への挿入性が低下してしまう虞があった。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、ガイドワイヤの先端部の外径を細径化して、狭窄病変部へのガイドワイヤの挿入性を高めると共に、先端の細径部から基端の太径部へ移行する際の外径変化部の変形を利用して、一時的なストッパー機能を付与することで、狭窄部に対してより末梢方向の末梢血管への穿孔や血管壁の損傷を防止して、安全性を向上させたガイドワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<1>本願請求項1に係る発明は、コアシャフトと、コアシャフトを覆う第1のコイル体と、第1のコイル体よりもコイル外径の細い第2のコイル体とを有し、前記第2のコイル体の先端が、前記第1のコイル体の先端よりも先端方向に位置するように、前記第2のコイル体と前記第1のコイル体の先端とコアシャフトとが、膨隆部を介して固着されている、ガイドワイヤを特徴とする。
【0010】
<2>請求項2に係る発明は、請求項1に記載のガイドワイヤにおいて、前記第2のコイル体のコイル外径は、前記第1のコイル体のコイル内径よりも細く、前記第2のコイル体の基端は、前記第1のコイル体の内部に位置し、固着部を介して前記コアシャフトに固着されている、ガイドワイヤを特徴とする。
【0011】
<3>請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤにおいて、前記第2のコイル体を構成する素線の外径は、前記第1のコイル体を構成する素線の外径よりも細い、ガイドワイヤを特徴とする。
【0012】
<4>請求項4に係る発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、前記第2のコイル体は、複数の素線から形成された多条コイル体である、ガイドワイヤを特徴とする。
【0013】
<5>請求項5に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、前記コアシャフトの先端は、前記第2コイル体の先端に固着されている、ガイドワイヤを特徴とする。
【0014】
<6>請求項6に係る発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、前記第2のコイル体は、先端から基端方向に向ってコイル外径が増加するテーパー形状を有しているガイドワイヤを特徴とする。
【0015】
<7>請求項7に係る発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、前記膨隆部は、金を主成分とする金属ハンダによって形成されている、ガイドワイヤを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
<1>請求項1に記載のガイドワイヤは、第1のコイル体のコイル外径よりも細いコイル外径を有する第2のコイル体の先端が、第1のコイル体の先端よりも先端方向に位置しているので、細径の第2のコイル体によりガイドワイヤ挿入性を向上させると共に、膨隆部による一時的なストッパー機能によって狭窄部より末梢方向の末梢血管への血管穿孔や血管壁の損傷を防止して、ガイドワイヤ安全性を向上させる効果を奏する。
【0017】
<2>請求項2に記載のガイドワイヤは、第2のコイル体のコイル外径が、第1のコイル体のコイル内径よりも細いので、狭窄部へのガイドワイヤの挿入性を向上させると共に、第2のコイル体の基端が、第1のコイル体の内部に位置した状態でコアシャフトに固着されているので、第2のコイル体がガイドワイヤから離脱することを防止し、さらに、第1のコイル体のコイル外径と第2のコイル体のコイル外径に差を設けることができるので、膨隆部でのストッパーの機能をさらに高めることができ、延いては、ガイドワイヤの安全性をさらに向上させることができる。
【0018】
<3>請求項3に記載のガイドワイヤは、第2のコイル体を構成する素線の外径が、第1のコイル体を構成する素線の外径よりも細いので、第1のコイル体のコイル外径よりも細いコイル外形を有するコイル体を形成し易くすると共に、第2コイル体のコイル外径をより細くできるので、狭窄部へのガイドワイヤの挿入性を向上させる効果を奏する。
【0019】
<4>請求項4に記載のガイドワイヤは、第2のコイル体が多条コイル体で構成されているので、第2のコイル体の破断や離脱をさらに防止して、ガイドワイヤの安全性をさらに向上させる効果を奏する。
【0020】
<5>請求項5に記載のガイドワイヤは、コアシャフトの先端と第2のコイル体の先端とが、固着されているので、ガイドワイヤ先端部の操作性が向上して、ガイドワイヤの挿入性を向上させると共に、第2のコイル体の離脱を防止して、ガイドワイヤの安全性をさらに向上させる効果を奏する。
【0021】
<6>請求項6に記載のガイドワイヤは、第2のコイル体がテーパー形状を有しているので、狭窄病変へのガイドワイヤの挿入性が大幅に向上する効果を奏する。
【0022】
<7>請求項7に記載のガイドワイヤは、第1のコイル体と第2のコイル体とを固着する膨隆部が、剛性の高い金を主成分とする金属ハンダによって形成されているので、膨隆部の変形を防止して、一時的なストッパー機能を向上させると共に、ガイドワイヤの第2のコイル体の離脱をさらに防止して、ガイドワイヤの安全性を大幅に向上させる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態を示すガイドワイヤの全体図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示すガイドワイヤの全体図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示すガイドワイヤの全体図である。
【図4】本発明の第4実施形態を示すガイドワイヤの全体図である。
【図5】本発明の第5実施形態を示すガイドワイヤの全体図である。
【0024】
以下、本発明のガイドワイヤを図面に示す好適実施形態に基づいて説明する。
【0025】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態のガイドワイヤを示す全体図である。
【0026】
なお、図1では、説明の都合上、左側を「基端」、右側を「先端」として説明する。
また、図1では、理解を容易にするため、ガイドワイヤ1の長さ方向を短縮し、全体的に模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0027】
図1において、ガイドワイヤ1は、コアシャフト2と、コアシャフト2の先端部を覆う第1のコイル体3と、第1のコイル体3のコイル外径よりも細いコイル外径を有する第2のコイル体5とから構成されている。
【0028】
また、コアシャフト2は、太径部2aと、太径部2aの先端に位置して、先端方向に向って外径が減少するテーパー部2bと、テーパー部2bの先端に位置する細径部2cとを有している。
【0029】
また、第1のコイル体3の基端は、コアシャフト2の太径部2aにロウ付け9によって固着されており、第1のコイル体3の先端は、コアシャフト2の細径部2cの先端と、第2のコイル体5の基端と共に、膨隆部4によって固着されている。
また、第2のコイル体5の先端には、最先端部6が形成されている。
【0030】
このように、ガイドワイヤ1は、第1のコイル体3よりもコイル外径の細いコイル外径を有する第2のコイル体5を先端に設け、第1のコイル体3の先端と第2のコイル体5の基端とを膨隆部4で固着しているので、コイル外径の細い第2のコイル体5によるガイドワイヤの挿入性が向上する。さらに、第2コイル体5のコイル外径から第1コイル体3のコイル外径へと外径が増加する膨隆部4を設けているので、ガイドワイヤ1が狭窄部へ勢いよく挿入された場合でも、膨隆部4が一時的なストッパーとして機能する為、狭窄部に対してより末梢方向の末梢血管への血管穿孔と末梢血管の血管壁の損傷とを防止して、ガイドワイヤ1の安全性を向上させることができる。
【0031】
また、第1のコイル体3のコイル外径は、第2のコイル体5のコイル外径よりも太い為、ガイドワイヤ1で与えられたトルク力が、第1のコイル体3を伝わり、膨隆部4を介してコイル外径の細い第2のコイル体5へ伝達される為、第2のコイル体の回転伝達性を向上させ、延いては、ガイドワイヤ1の挿入性を向上させる効果も奏する。
【0032】
尚、第1のコイル体3の先端と第2のコイル体5の基端とを固着する膨隆部4の縦断面における外周4aは、膨隆部4の先端から基端にかけて直線的に外径が増加する形態を有していても良いが、図1のように、膨隆部4先端から基端方向にかけて外周4aが急激に増加した形態を有することが好ましい。
このように、膨隆部4の縦断面における外周4aが、膨隆部4の先端から基端方向にかけて急激に増加しているので、膨隆部4が狭窄部に衝突した際に、ガイドワイヤ1の一時的なストッパーとしての機能をさらに高めることができ、ガイドワイヤ1の安全性をさらに向上させることができる。
【0033】
本実施形態のガイドワイヤ1は、次の方法で作製することができる。
まず、コアシャフト2の先端部に第1のコイル体3の基端を挿入して、第1のコイル体3の基端と、コアシャフト2の太径部2aとをロウ付け9により固着する。
次に、コアシャフト2の細径部2cの先端と第1コイル体3の先端とを固着部材で仮止めし、その後、第2のコイル体5の基端をこの仮止めした部分に当接して、固着部材により固着することで膨隆部4を形成して、第1のコイル体3の先端と第2のコイルの基端とを固着することが出来る。
前述した様に、膨隆部4の縦断面における外周4aに、図1のような膨隆部4が先端から基端方向にかけて、その外径が急激に増加した形態を設ける場合には、膨隆部4を略球状に形成した後、膨隆部4をリューター等の工具を用いて研磨することで作製することができる。
そして、最後に、第2のコイル体5の先端を固着部材で覆い、最先端部6を形成する。
尚、ガイドワイヤ1は、この製造方法に限らず、公知の方法及び手段を用いて作製しても良い。
【0034】
また、第1のコイル体3と第2のコイル体5とを膨隆部4を介して固着する場合には、図1に記載した様に、第1のコイル体3の先端を構成する素線の素線間と第2のコイル体5の基端を構成する素線の素線間とに間隙を設けて、膨隆部4を形成する材料が、第1のコイル体3の先端の内部と第2のコイル体5の基端の内部へ入り込み易くすることが望ましい。
また、図示していないが、ロウ付け9と最先端部6を形成する際にも、固着される部分の第1のコイル体3と第2のコイル体5を形成する素線の素線間に間隙を設けることが望ましい。
【0035】
また、第2のコイル体5は、1本の素線で形成された単線コイル体であっても良いが、複数の素線から形成された多条コイル体で構成することが好ましい。多条コイル体は、単線コイルと比較して、破断強度等の機械的特性が優れている為、第2のコイル体の断裂や、ガイドワイヤ1からの離脱を防止することができ、ガイドワイヤ1の安全性を向上させることができる。
【0036】
以下、本実施の形態における各要素の材料について記述する。コアシャフト2を形成する材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス鋼(SUS304)、Ni−Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線等の材料を使用することができる。
【0037】
コアシャフト2の細径部2cの先端と第1のコイル体3の先端と第2のコイル体5とを固着する膨隆部4と、第2のコイル体5の先端に設けられた最先端部6、及びロウ付け9の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム合金ロウ、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn−Pb合金、Pb−Ag合金、Sn−Ag、Au−Sn合金等の金属ハンダを使用することができる。
【0038】
特に、膨隆部4においては、金を主成分とした、例えば、Au−Sn合金のような金属ハンダを用いることが好ましい。このようなAu−Sn合金のような金属ハンダは剛性が高いことで知られており、Au−Sn合金で膨隆部4を形成した場合には、膨隆部4の変形を防止することができるので、一時的なストッパーとしての機能をさらに向上させることができる。
また、膨隆部4が金を主成分とする金属ハンダで形成されることで、コアシャフト2の細径部2cの先端と第1のコイル体3の先端と第2のコイル体5の基端との固着強度を高めることができ、第2のコイル体5の離脱を防止することもできる。
このように、膨隆部4が金を主成分とする金属ハンダで形成されることで、ガイドワイヤの安全性を大幅に向上させることができる。
【0039】
また、最先端部6においては、金を主成分とした、例えば、Au−Sn合金のような金属ハンダを用いることが好ましい。このようなAu−Sn合金のような金属ハンダは剛性が高く被固着部同士の固着強度を向上させることができるので、Au−Sn合金で最先端部6を形成した場合には、第2コイル体の先端からの最先端部6の離脱を防止でき、ガイドワイヤ1の安全性を向上させることができる。
さらに、Au−Sn合金のような金属ハンダは、放射線不透過性を有しており、Au−Sn合金で最先端部6を形成した場合には、ガイドワイヤ1の最先端部6の放射線透視画像下での視認性を向上させることができるので、術者がこのガイドワイヤ1を操作して、膨隆部4が狭窄部に衝突した際には、ガイドワイヤ1の最先端部6の位置を把握しながら、ガイドワイヤ1の操作を行うことができる。
これにより、その後の操作を慎重に行なえるので、ガイドワイヤ1の最先端部6による、狭窄部より末梢方向の末梢血管の血管穿孔と末梢血管の血管壁の損傷を防止することができ、ガイドワイヤ1の安全性を向上させることができる。
【0040】
また、金属ハンダを用いて、各部品を組み付ける際には、固着を行なう位置に予めフラックスを塗布しておくことが好ましい。これにより、金属ハンダと各部品との濡れ性が良好となり、固着強度が増加する。
【0041】
また、第1のコイル体3及び第2のコイル体5を形成する材料としては、放射線不透過性を有する素線、又は放射線透過性を有する素線を用いることができる。
放射線不透過性を有する素線の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、金、白金、タングステン、又はこれらの元素を含む合金(例えば、白金−ニッケル合金)等を使用することができる。
また、放射線透過性を有する素線の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス鋼(SUS304やSUS316等)、Ni−Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線等を使用することができる。
【0042】
また、第2のコイル体5が放射線不透過材を有する素線で形成され、ガイドワイヤ1の先端部に放射線不透過性を付与しても良い。このようにすることで、第2のコイル体5の位置を放射線透視画像下で確認することができる。
【0043】
また、第2コイル体5が放射線不透過性を有する素線で形成され、さらに、膨隆部4が金を主成分とする金属ハンダで形成された場合には、膨隆部4も放射線不透過性を有しているので、ガイドワイヤ1の先端部及び膨隆部4の位置の確認を行い易くなる。
術者がこのガイドワイヤ1を操作して、膨隆部4が狭窄部に衝突した際には、狭窄部の位置とガイドワイヤ1の位置を把握できる。
これにより、その後の操作を慎重に行なえるので、ガイドワイヤ1による狭窄部より末梢方向の末梢血管の血管穿孔と末梢血管の血管壁の損傷を防止することができ、ガイドワイヤ1の安全性を向上させることができる。
【0044】
また、図1には、図示していないが、ガイドワイヤ1と、カテーテル及び人体組織との滑り性を向上させる為に、滑性向上剤が第1のコイル体3と第2のコイル体5の外周に被覆されていても良い。尚、滑性向上剤の形成部分は、第1のコイル体3と第2のコイル体5の全長に亘って形成しても良いし、長さ方向の一部に形成しても良い。
ただし、膨隆部4には、滑性向上剤を塗布しないことが好ましい。これにより、ガイドワイヤ1の挿入性を高めたまま、膨隆部4による一時的なストッパー機能を維持することができる。
【0045】
この滑性向上剤の材料としては、特に限定されるものではないが、シリコーンオイルやフッ素樹脂等の疎水性の滑性向上剤、又は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、ヒアルロン酸等の親水性の滑性向上剤を使用することができ、これにより、ガイドワイヤ1の操作性が向上して、その結果、血管選択性を向上させることができる。
【0046】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態のガイドワイヤ11について、図2を用いて、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。第1実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図2は、理解を容易にするため、ガイドワイヤ11の長さ方向を短縮し、ガイドワイヤ11の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0047】
図2において、ガイドワイヤ11は、コアシャフト2と、コアシャフト2の先端部を覆う第1のコイル体3と、第1のコイル体3のコイル内径よりも細いコイル外径を有する第2のコイル体15とから構成されている。
【0048】
第1のコイル体3は、第1実施形態と同じ配置とされている。また、第2のコイル体15の基端は、第1のコイル体3の内部に位置しており、第2のコイル体15の基端とコアシャフト2の細径部2cとは、固着部材によって形成された固着部7を介して固着されている。また、第2コイル体15の先端が、第1コイル体3の先端よりもさらに先端方向に位置する様に、第2のコイル体15の中間部とコアシャフト2の細径部2cの先端と第1コイル体3の先端とが、膨隆部4を介して固着されている。
【0049】
また、図2では、膨隆部4は、第2のコイル体15の中間部に設けているが、これに限定されることなく、第2のコイル体15の基端が第1のコイル体の先端と基端との間に位置し、第2のコイル体15の先端が第1のコイル体3の先端よりも先端方向に位置している配置形態を有していれば、第2のコイル体15に対する膨隆部4の位置は、第2のコイル体15の先端側、又は基端側に位置していても良い。
【0050】
このようなガイドワイヤ11は、第2のコイル体15のコイル外径が、第1のコイル体3のコイル内径よりも細いので、狭窄部へのガイドワイヤ11の挿入性を向上させると共に、第2のコイル体15の基端が、第1のコイル体3の内部に位置した状態でコアシャフト2に固着されているので、第2のコイル体15がガイドワイヤ11から離脱することを防止し、さらに、第1のコイル体3のコイル外径と第2のコイル体15のコイル外径に差を設けることができるので、膨隆部4での一時的なストッパーの機能をさらに高めることができ、延いては、ガイドワイヤ11の安全性をさらに向上させることができる。
【0051】
このようなガイドワイヤ11は、以下の方法で作製することができる。
まず、コアシャフト2の細径部2cの先端を第2のコイル体15の基端側から所定の位置まで挿入し、第2のコイル体15の基端とコアシャフト2の細径部2cとを固着部7によって固着する。
次に、第2のコイル体15の先端及びコシャフト2を第1のコイル体3の基端側から挿入し、第2のコイル体15の先端が、第1のコイル体3の先端よりも先端方向に位置した状態で、第1のコイル体3の基端とコアシャフト2の太径部2aとをロウ付け9によって固着する。尚、第1のコイル体3を組み付ける際には、第1のコイル体3の先端が、軸方向に対して、コアシャフト2の細径部2cの先端と略同じ位置になる様に、第1のコイル体3を配置している。
次に、第2のコイル体15の中間部と、コアシャフト2の細径部2cの先端と、第1のコイル体3の先端とを膨隆部4によって固着する。
そして、最後に、第2のコイル体15の先端に最先端部6を形成する。
尚、ガイドワイヤ11は、この製造方法に限らず、公知の方法及び手段を用いて作製しても良い。
【0052】
尚、図2では、第1のコイル体3の先端を形成する素線の素線間と第2のコイル体15の中間部を形成する素線の素線間に間隙を設けて、膨隆部4の材料を入り込み易くしている。
また、第2のコイル体15を多条コイル体で形成した場合には、電解研磨して所定個所の素線の外径を減少させることにより、素線の間に間隙を形成することができる。
【0053】
尚、固着部7の材料としては、特に限定されるものではないが、合成樹脂や、膨隆部4、最先端部6及びロウ付け9と同じ材料を用いることができる。
【0054】
固着部7に用いる合成樹脂は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、各種エラストマー材料、又はエポキシ樹脂等の接着剤を採用することができる。
【0055】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態のガイドワイヤ21について、図3を用いて、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。第1実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図3は、理解を容易にするため、ガイドワイヤ21の長さ方向を短縮し、ガイドワイヤ21の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0056】
図3において、ガイドワイヤ21は、コアシャフト2と、コアシャフト2の先端部を覆う第1のコイル体3と、第1のコイル体3のコイル内径よりも細いコイル外径を有した第2のコイル体25とから構成されている。
【0057】
また、第2のコイル体25は、第1のコイル体3を構成する素線の外径よりも細い素線径を有した素線で構成されている。
また、第2のコイル体25の基端は、第1のコイル体3の先端と基端との間に配置された状態で、コアシャフト2のテーパー部2bと固着部7を介して固着されている。
また、第2のコイル体25の先端が、第1のコイル体3の先端よりも先端方向に位置する様に、第2のコイル体25の先端部分とコアシャフト2の細径部2cの先端と第1のコイル体3の先端とが、膨隆部4によって固着され、さらに、第2のコイル体25の先端には、最先端部6が形成されている。
また、第2のコイル体25と第1のコイル体3とは、コアシャフト2の長軸方向における、膨隆部4と固着部7との間で固着部8によって固着されている。
【0058】
このようなガイドワイヤ21は、第2のコイル体25を構成する素線の外径が、第1のコイル体3を構成する素線の外径よりも細いので、第1のコイル体3のコイル外径よりも細いコイル体を形成し易くすると共に、第2コイル体25のコイル外径を細くできるので、狭窄部へのガイドワイヤ21の挿入性を向上させることができる。
【0059】
また、第2のコイル体25の基端が、コアシャフト2のテーパー部2bに固着されているので、コアシャフト2の破断による第2コイル体25の離脱を防止して、ガイドワイヤ21の安全性をさらに向上させることができる。
【0060】
さらに、固着部7と膨隆部4との間に第2のコイル体25と第1のコイル体3とを固着する固着部8を設けているので、第2のコイル体25のガイドワイヤ21の離脱をさらに防止して、ガイドワイヤ21の安全性を大幅に向上させることができる。
【0061】
このようなガイドワイヤ21は、以下の方法で作製することができる。
まず、コアシャフト2の細径部2cの先端を第2のコイル体25の基端側から所定の位置まで挿入し、第2のコイル体25の基端とコアシャフト2の細径部2cとを固着部7によって固着する。
次に、第2のコイル体25の先端及びシャフト2を第1のコイル体3の基端側から挿入し、第2のコイル体25の先端が、第1のコイル体3の先端よりも先端方向に位置した状態で、第1のコイル体3の基端とコアシャフト2の太径部2aとをロウ付け9によって固着する。尚、第1のコイル体3を組み付ける際には、第1のコイル体3の先端が、軸方向に対してコアシャフト2の細径部2cの先端と略同じ位置になる様に、第1のコイル体3が配置されている。
次に、第2のコイル体25と第1のコイル体3とを固着部8によって固着する。
次に、第2のコイル体25の先端部分と、コアシャフト2の細径部2cの先端と、第1のコイル体3の先端とを膨隆部4によって固着する。
そして、最後に、第2のコイル体25の先端に最先端部6を形成する。
尚、ガイドワイヤ21は、この製造方法に限らず、公知の方法及び手段を用いて作製しても良い。
【0062】
固着部8の材料は、固着部7、膨隆部4、最先端部6、及びロウ付け9と同じ材料を用いることができる。
【0063】
また、図3では、固着部8を設ける際に、第1コイル体3を構成する素線の素線間に間隙を設けて、固着部材を入り込み易くしている。
【0064】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態のガイドワイヤ31について、図4を用いて、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。第1実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図4は、理解を容易にするため、ガイドワイヤ31の長さ方向を短縮し、ガイドワイヤ31の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0065】
図4において、ガイドワイヤ31は、コアシャフト2の先端と第2のコイル体25の先端とが最先端部6にて固着されている点を除けば、第3実施形態と同じ構造を有している。
【0066】
コアシャフト2は、太径部2aと、太径部2aの先端に位置するテーパー部2bと、テーパー部2bの先端に位置する細径部2cと、及び細径部2cの先端に位置する先端細径部2dとを有しており、先端細径部2dの先端は、第2のコイル体25の先端と最先端部6を介して固着されている。
【0067】
このようにガイドワイヤ31は、コアシャフト2の先端細径部2dの先端と第2コイル体25の先端とが最先端部6にて固着されているので、ガイドワイヤ31の先端の操作性が向上し、その結果、狭窄病変へのガイドワイヤ31の挿入性を向上させることができ、また、コアシャフト2の先端細径部2dの先端と第2のコイル体25の先端とが、最先端部6にて固着されているので、第2のコイル体25のガイドワイヤ31からの離脱を防止し、ガイドワイヤ31の安全性をさらに向上させることができる。
【0068】
このようなガイドワイヤ31は、第2のコイル体25の先端とコアシャフト2の先端細径部2dの先端とを固着して、最先端部6を形成した点を除けば、第3実施形態と同じ方法を用いて作製することができる。
【0069】
尚、図3では、先端細径部2dは、細径部2cと同じ外径を有しているが、これに限定されることなく、細径化しても良く、或いは、平つぶし形状を設けても良い。
また、図3では、細径部2cと先端細径部2dとを区別して記載しているが、これに限定されることなく、細径部2cをコアシャフト2の先端まで延長しても良い。
【0070】
また、細径部2c(太径部2aとテーパー部2bを含む)と先端細径部2dとは、異なる材質を用いて形成することができる。細径部2cより基端方向は、ガイドワイヤ31のトルク伝達性と操作性を向上させる為にステンレス鋼を用いることが好ましい。また、先端細径部2dは、狭窄部に挿入される為、変形を受け易いことから、塑性変形を受け難い材質であるNi−Ti合金等の超弾性合金や、変形を受け難い構造である複数の素線から形成されたロープ構造を用いることが好ましい。
これにより、ガイドワイヤ31は、先端部2cより基端のコアシャフト2がステンレス合金で形成されていることから操作性が向上し、結果として、ガイドワイヤ31の挿入性を向上させ、さらに、先端細径部2dが超弾性合金で形成されているので、第2のコイル体25の膨隆部4より先端側が狭窄部に衝突して折れた状態となっても、コアシャフト2の先端細径部2dが変形を受け難い為、ガイドワイヤ31の先端の変形を防止することができる為、ガイドワイヤ31の挿入性を維持と安全性を向上させることができる。
【0071】
尚、先端細径部2dに超弾性合金を用いる場合には、血管の選択性を確保する為、熱処理による形状付けを予め行うこともできる。
【0072】
また、コアシャフト2の細径部2cと先端細径部2dとが異なる材質や材料で形成されている場合には、細径部2cの先端と先端細径部2dの基端とを溶接やロウ接等の手段を用いて接続することで作製することができる。
【0073】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態のガイドワイヤ41について、図5を用いて、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。第1実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図5は、理解を容易にするため、ガイドワイヤ41の長さ方向を短縮し、ガイドワイヤ41の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0074】
図5において、ガイドワイヤ41は、第2のコイル体35が先端から基端方向にかけてコイル外径が増大するテーパー形状部35aを有し、テーパー形状部35aの基端が固着部8に位置している点を除けば、第4実施形態と同じ構造を有している。
【0075】
このようなガイドワイヤ41は、第2のコイル体35がテーパー形状35aを有しているので、狭窄部へのガイドワイヤ41の挿入性を大幅に向上させることができる。
【0076】
テーパー形状35aを有する第2のコイル体35は、外径が減少している芯金にコイル素線を巻きつけることで作製することができる。
また、ガイドワイヤ41の製造方法は、第4実施形態のガイドワイヤ31の製造方法と同じ方法を採用することができる。
【0077】
尚、第2のコイル体35のテーパー形状35aは、第2のコイル体35の先端方向から基端方向にかけて設けられていれば良く、例えば、第2のコイル体の35から膨隆部4の先端にテーパー形状部35aを設けても良いが、図5のように、テーパー形状35aの基端が、固着部8に位置しているように、第1のコイル体3の先端より基端方向に設けることが好ましい。
このようにすることで、膨隆部4の外径と、膨隆部4の先端に位置するテーパー形状部35aとの外径に差を設けやすくできる為、ガイドワイヤ41の挿入性を向上させると共に、膨隆部4による一時的なストッパー機能を高めて、ガイドワイヤ41の安全性を向上させることができる。
【0078】
また、テーパー形状35aの角度を設ける為に、コアシャフト2の先端細径部2dの形状を、細径部2cより細くしても良い。このようにすることで、ガイドワイヤ41の最先端部の外径を細くして、狭窄部へのガイドワイヤ41の挿入性を向上させることができる。
【0079】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想内において、当業者による種々の変更が可能である。
【0080】
例えば、図1〜図5に記載しているガイドワイヤの第2のコイル体は、ガイドワイヤの横断面の中心に対して同心円状に設けられているが、これに限定されることなく、ガイドワイヤの第2のコイル体は、ガイドワイヤの横断面の中心に対して、偏心して設けても良い。
【0081】
また、図2に記載している第2実施形態のガイドワイヤ11において、第2のコイル体15のコイル内径よりも細いコイル外径を有する第3のコイル体を第2コイル体15の先端よりも先端方向に位置する様に設けて、第2のコイル体5と第3のコイル体とを第2の膨隆部にて固着しても良い。このようにすることで、ガイドワイヤ11のコイルの挿入性を確保するとともに、一時的なストッパー機能を有する膨隆部を複数設けることができ、ガイドワイヤ11の安全性を向上させることがきる。
【0082】
また、図2に記載している第2実施形態のガイドワイヤ11において、第1のコイル体3の先端よりも先端方向に位置する第2のコイル体15の内部に、第3のコイル体を設けて、第3のコイル体の基端を膨隆部4で固着し、第3のコイル体の先端を最先端部6で固着しても良い。このようにすることで、第2のコイル体15のガイドワイヤ11の離脱を防止することができる。
【0083】
また、図5に記載している第5実施形態のガイドワイヤ41において、第2のコイル体35を、先端側に位置するテーパー形状35aを有するコイル体とその後端側に位置する等径のコイル体とに別体で形成しても良い。
【符号の説明】
【0084】
1、11、21、31、41 ガイドワイヤ
2 コアシャフト
2a 太径部(コアシャフト)
2b テーパー部(コアシャフト)
2c 細径部(コアシャフト)
2d 先端細径部(コアシャフト)
3 第1のコイル体
4 膨隆部
5,15、25、35 第2のコイル体
35a テーパー形状(第2のコイル体)
6 最先端部
7、8 固着部
9 ロウ付け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシャフトと、コアシャフトを覆う第1のコイル体と、第1のコイル体よりもコイル外径の細い第2のコイル体とを有し、
前記第2のコイル体の先端が、前記第1のコイルの先端よりも先端方向に位置するように、前記第2のコイル体と前記第1のコイル体の先端とコアシャフトとが、膨隆部を介して固着されている、ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドワイヤにおいて、
前記第2のコイル体の外径は、前記第1のコイル体の内径よりも細く、
前記第2のコイル体の基端は、前記第1のコイル体の内部に位置し、固着部を介して前記コアシャフトに固着されている、ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤにおいて、
前記第2のコイル体を構成する素線の外径は、前記第1のコイル体を構成する素線の外径よりも細い、ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、
前記第2のコイル体は、複数の素線から形成された多条コイル体である、ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、
前記コアシャフトの先端は、前記第2のコイル体の先端に固着されている、ガイドワイヤ。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、
前記第2のコイル体は、先端から基端方向に向ってコイル外径が増加するテーパー形状を有している、ガイドワイヤ。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、
前記膨隆部は、金を主成分とする金属ハンダによって形成されている、ガイドワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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