説明

ガイドワイヤ

【課題】
本発明は、トルクに優れるガイドワイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明のガイドワイヤは、先端部及び後端部を有するコアシャフトと、複数の素線を撚合してなる中空撚線体とからなるガイドワイヤであって、上記コアシャフトは、上記先端部を含み、上記先端部側から上記後端部側に向かって一定領域に渡って延在している小径部と、上記小径部よりも上記後端部側に位置しており、上記先端部側から上記後端部側に向かって一定領域に渡って延在している大径部とを有しており、上記中空撚線体は、その内部に上記小径部が挿通されることにより上記小径部を覆っており、上記ガイドワイヤの外周面を部分的に形成していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、経皮的冠動脈形成術(以下、単にPTCAともいう)に使用される医療用機械器具の一つとして、バルーンやステント等のデバイスを病変部まで導くために使用されるガイドワイヤが知られている。
【0003】
このようなガイドワイヤとして、例えば、特許文献1には、後端部から先端部に向かって縮径したテーパー形状のコアシャフトと、上記コアシャフトの小径化した先端部に巻回したコイル体とからなり、上記コアシャフトと上記コイル体とが所定の位置で互いにロウ付けされたガイドワイヤが開示されている。
なお、係るガイドワイヤにおいては、コアシャフトの先端部側がガイドワイヤの遠位部であり、コアシャフトの後端部側がガイドワイヤの近位部である。
ガイドワイヤの遠位部は体内に挿入されることにより病変部に到達し、ガイドワイヤの近位部は医師等の手技者によって操作される。
【0004】
特許文献1に記載された従来のガイドワイヤは、コアシャフトの先端部が小径化しているので柔軟性が高く、血管内壁の損傷を抑えることができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2902076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の従来のガイドワイヤでは、コアシャフトを中心軸として単一の素線をコアシャフトの先端部にらせん状に巻回することによりコイル体が形成されているため、ガイドワイヤの近位部を回転させることによりコイル体にねじり力が加わると、コイル体が容易にねじれてしまい、近位部で発生したトルクが遠位部まで伝わりにくい。
そのため、病変部が硬かったり、病変部の狭窄の度合いが高かったり、あるいは病変部が閉塞していたりする場合には、ガイドワイヤが病変部を通過しにくいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、コイル体の代わりにワイヤロープを使用することによりトルクを向上させることができることを見出し、本発明のガイドワイヤを完成させた。
【0008】
即ち、本発明のガイドワイヤは、先端部及び後端部を有するコアシャフトと、
複数の素線を撚合してなる中空撚線体とからなるガイドワイヤであって、
上記コアシャフトは、上記先端部を含み、上記先端部側から上記後端部側に向かって一定領域に渡って延在している小径部と、上記小径部よりも上記後端部側に位置しており、上記先端部側から上記後端部側に向かって一定領域に渡って延在している大径部とを有しており、
上記中空撚線体は、その内部に上記小径部が挿通されることにより上記小径部を覆っており、上記ガイドワイヤの外周面を部分的に形成していることを特徴とする。
【0009】
係る構成を有する本発明のガイドワイヤは、トルクに優れる。
本発明のガイドワイヤの構成及び効果について、以下に図面を用いて詳しく説明する。
【0010】
図1(a)は、本発明の一の実施形態に係るガイドワイヤを模式的に示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示すガイドワイヤの遠位部をその長手方向に沿って一部切り欠いて示す一部切り欠き拡大断面図である。
【0011】
図1(a)に示す本発明のガイドワイヤ1は、先端部11及び後端部12を有するコアシャフト10と、複数の素線21を撚合してなる中空撚線体20とからなる。
なお、図1(a)では、説明の簡略化のために、ガイドワイヤ1の遠位部とコアシャフト10の先端部とをともに同じ符号11で示しており、ガイドワイヤ1の近位部とコアシャフト10の後端部とをともに同じ符号12で示している。
【0012】
具体的には、図1(a)及び図1(b)に示すように、コアシャフト10は、先端部11を含み、先端部11側から後端部12側に向かって一定領域に渡って延在している小径部13と、小径部13よりも後端部12側に位置しており、先端部11側から後端部12側に向かって一定領域に渡って延在している大径部14とを有している。即ち、コアシャフト10は、後端部12側から先端部11側に向かって縮径しており、先細りのテーパー形状である。
そのため、小径部13は剛性が低くて柔軟性が高く、大径部14は剛性が高く柔軟性が低い。係る構成を有するコアシャフト10を備えるガイドワイヤ1は、遠位部11の柔軟性が高く、血管内壁の損傷を抑えることができる。
【0013】
中空撚線体20は、その内部に小径部13が挿通されることにより小径部13を覆っており、ガイドワイヤ1の外周面を部分的に形成している。
【0014】
中空撚線体20は、複数の素線21が撚合されて形成された管状体である。
そのため、中空撚線体20は、柔軟であり可とう性を有する。
また、単一の素線をらせん状に巻回することにより形成されたコイル体(以下、単にコイル体ともいう)とは異なり、中空撚線体20は、一の端部を回転させることによりねじり力が加わってもねじれにくく、一の端部で発生したトルクが他の端部まで効率よく伝わる。
【0015】
本発明のガイドワイヤ1は、トルクの伝達に優れる中空撚線体20をコイル体の代わりに使用しているので、ガイドワイヤ1の近位部12を回転させた場合であっても、近位部12で発生したトルクが遠位部11まで伝わりやすい。
従って、病変部が硬かったり、病変部の狭窄の度合いが高かったり、あるいは病変部が閉塞していたとしても、ガイドワイヤ1が病変部を通過しやすい。
なお、一般的には、コアシャフト10の剛性の方が中空撚線体20の剛性よりも高いことが多いので、中空撚線体20を設けたことによる剛性の向上よりも、小径部13を小径化したことによる剛性の低下が大きく、中空撚線体20をコイル体の代わりに使用したためにガイドワイヤ1の遠位部11の柔軟性が血管内壁を損傷してしまうほど大きく損なわれることはない。
また、本明細書において、「中空撚線体」が「ガイドワイヤの外周面を部分的に形成している」とは、中空撚線体がガイドワイヤの外周面の一部を形成しており、外部から視認可能なように上記外周面の一部に露出していることをいうものとする。
【0016】
本発明のガイドワイヤにおいては、上記大径部の最大径と上記中空撚線体の最大径とが同一であることが望ましい。
【0017】
本発明のガイドワイヤにおいて、上記中空撚線体の外周面には、上記後端部側から上記先端部側に向かって段階的に縮径するように段差が形成されていることが望ましい。
【0018】
本発明のガイドワイヤにおいて、上記中空撚線体は、大径ユニットと、上記大径ユニットよりも素線径が小さい小径ユニットとからなり、上記段差は、上記大径ユニットと上記小径ユニットとが連結されることにより形成されていることが望ましい。
【0019】
本発明のガイドワイヤにおいては、単一の素線を巻回してなるコイル体をさらに有しており、上記コイル体は、上記コイル体の一方の端部が上記段差に嵌め込まれることにより上記中空撚線体の先端部を覆っていることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1(a)は、本発明の一の実施形態に係るガイドワイヤを模式的に示す平面図である。図1(b)は、図1(a)に示すガイドワイヤの遠位部をその長手方向に沿って一部切り欠いた状態を示す一部切り欠き拡大断面図である。
【図2】図2(a)は、本発明の別の実施形態に係るガイドワイヤを模式的に示す平面図である。図2(b)は、図2(a)に示すガイドワイヤの遠位部をその長手方向に沿って一部切り欠いて示す一部切り欠き拡大断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明のさらに別の実施形態に係るガイドワイヤを模式的に示す平面図である。図3(b)は、図3(a)に示すガイドワイヤの遠位部をその長手方向に沿って一部切り欠いて示す一部切り欠き拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第一実施形態)
以下、本発明のガイドワイヤの一実施形態である第一実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態のガイドワイヤは、上述した本発明のガイドワイヤと同様の構成を有しているため、以下の説明では、図1(a)及び図1(b)を参照しながら説明する。
なお、本発明のガイドワイヤに係る説明と重複する事項については、説明を省略する。
【0022】
図1(a)及び図1(b)に示す本実施形態のガイドワイヤ1は、先端部11及び後端部12を有するコアシャフト10と、複数の素線21を撚合してなる中空撚線体20とを含んで形成されている。
【0023】
コアシャフト10は、先端部11を含み、後先端部11側から後端部12側に向かって一定領域に渡って延在している小径部13と、小径部13よりも後端部12側に位置しており、先端部11側から後端部12側に向かって一定領域に渡って延在している大径部14とを含んで形成されている。
【0024】
より具体的には、小径部13は、その径が小径部13の最大径Dと一致している第一円柱部13aと、第一円柱部13aに結合しており先端部11側に向かって縮径している第一テーパー部13bと、第一テーパー部13bに結合している第二円柱部13cと、第二円柱部13cに結合しており先端部11側に向かって縮径している第二テーパー部13dと、第二テーパー部13dに結合している最先端部13eとから形成されている。
【0025】
コアシャフト10の長手方向に対して垂直な方向における最先端部13eの断面形状は、矩形状である。より具体的には、細長な矩形状である。
また、上記垂直な方向における第二テーパー部13dの断面形状は、第二円柱部13c側から最先端部13e側に向かうにつれて円形状から矩形状に徐々に変化している。
【0026】
大径部14は円柱状であり、その最大径Dは小径部13の最大径Dよりも大きい。
また、第一円柱部13aと大径部14とは、テーパー状の連結部15を介して結合している。
大径部14の後端部12側の端部には、延長用のガイドワイヤを接続するための接続部16が取り付けられている。
【0027】
中空撚線体20は、複数の素線21を撚合することにより形成されており、内部に貫通孔を有する管状体である。
具体的には、中空撚線体20は、断面円形状の素線21がらせん状に複数本撚合されることにより形成されており、一の素線21と該素線21に隣り合う他の素線21とにより形成されたらせん状の溝部24が外周面に複数本切られている。
【0028】
中空撚線体20は、中空撚線体20の内部に小径部13が挿通されており、小径部13を覆っている。
これにより、中空撚線体20は、ガイドワイヤ1の外周面を部分的に形成している。
即ち、ガイドワイヤ1の外周面の一部は中空撚線体20から形成されており、外周面の他の一部は大径部14から形成されている。
【0029】
小径部13の第一円柱部13aと中空撚線体20の後端部22とは、後端ロウ付け部17により固定されており、小径部13の最先端部13eと中空撚線体20の先端部23とは、半球状の先端ロウ付け部18により固定されている。
【0030】
大径部14の最大径Dと中空撚線体20の最大径Dとは、同一である。
なお、本明細書において、大径部の最大径と中空撚線体の最大径とが同一であるとは、大径部の最大径と中空撚線体の最大径とが同一であるか、又は、やや差異があってもガイドワイヤを体内に挿入した場合に抵抗をそれほど生じない程度に近似していることをいう。
【0031】
本実施形態のガイドワイヤは、例えば、上述した所定形状となるように金属棒材に対してテーパー加工を施すことによりコアシャフトを作製し、作製したコアシャフトの小径部に中空撚線体を挿入した後、小径部と中空撚線体とを所定の位置でロウ付けすることにより製造することができる。
なお、テーパー加工としては、例えば、センタリング研磨等の切削加工、セージング加工、引き抜き加工等が挙げられる。
【0032】
本実施形態のガイドワイヤの作用効果を以下に列挙する。
(1)本実施形態のガイドワイヤでは、複数の素線を撚合してなりトルクの伝達に優れる中空撚線体が小径部を覆っており、ガイドワイヤの外周面を部分的に形成している。
それゆえ、ガイドワイヤの近位部を回転させた場合には、近位部で発生したトルクが遠位部まで伝わりやすい。
よって、本実施形態のガイドワイヤは、トルクに優れており、病変部を通過しやすい。
【0033】
(2)本実施形態のガイドワイヤでは、大径部の最大径と中空撚線体の最大径とが同一であり、ガイドワイヤの形状が均一径の円柱状に近く、外周面がより平坦なので、病変部をより通過しやすい。
【0034】
(3)小径部は、第一円柱部と第一テーパー部と第二円柱部と第二テーパー部と最先端部とから形成されており、先端部側に向かって段階的に小径化している。
そのため、小径部は、先端部側にいくにつれて剛性が徐々に低下しており、柔軟性が徐々に高くなっている。また、小径部は、急激に小径化している部分がないので、曲げ外力が集中しにくく、塑性変形しにくい。
【0035】
(4)コアシャフトの長手方向に対して垂直な方向における最先端部の断面形状は、矩形状であり、断面形状が円形の最先端部に比べて、最先端部の柔軟性が高い。
【0036】
(5)上記垂直な方向における小径部の第二テーパー部の断面形状は、第二円柱部側から最先端部側にいくにつれて円形状から矩形状に徐々に変化しており、形状が急激に変化している部分がないので、曲げ外力が集中しにくく、先端部近傍が塑性変形しにくい。
【0037】
(6)中空撚線体の外周面にはらせん状の溝部が外周面に複数本切られており、中空撚線体が雄ねじ形状となっている。そのため、ガイドワイヤの近位部を回転させると、ガイドワイヤの遠位部が病変部にねじ込まれるので、病変部への通過性により優れる。
【0038】
(第二実施形態)
以下、本発明のガイドワイヤの一実施形態である第二実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態のガイドワイヤは、中空撚線体の外周面に、後端部側から先端部側に向かって段階的に縮径するように段差が形成されていること以外は、上述した第一実施形態のガイドワイヤと同様の構成を有している。より具体的には、中空撚線体が大径ユニットと大径ユニットよりも素線径が小さい小径ユニットとからなり、段差が大径ユニットと小径ユニットとが連結されることにより形成されていること以外は、上述した第一実施形態のガイドワイヤと同様の構成を有している。
よって、第一実施形態のガイドワイヤと重複する事項については説明を省略する。
【0039】
図2(a)は、本発明の別の実施形態に係るガイドワイヤを模式的に示す平面図であり、図2(b)は、図2(a)に示すガイドワイヤの遠位部をその長手方向に沿って一部切り欠いて示す一部切り欠き拡大断面図である。
【0040】
図2(a)及び図2(b)に示す本実施形態のガイドワイヤ2は、先端部11’及び後端部12’を有するコアシャフト10’と、複数の素線21A’を撚合してなる第一中空撚線体20A’と、複数の素線21B’を撚合してなる第二中空撚線体20B’と、複数の素線21C’を撚合してなる第三中空撚線体20C’とを含んで形成されている。
【0041】
コアシャフト10’の構成は、上述した第一実施形態のガイドワイヤを形成しているコアシャフトの構成と同様である。
【0042】
第一中空撚線体20A’は、小径部13’の第一円柱部13a’の全体と、第一テーパー部13b’の後端部とを覆っている。
なお、第一中空撚線体20A’の最大径(外径)は、図2(b)において符号D’で示している。
【0043】
第二中空撚線体20B’の最大径D’(外径)は、第一中空撚線体20A’の内径と略同一であり、第一中空撚線体20A’の最大径D’よりも小さい。従って、第一中空撚線体20A’と第二中空撚線体20B’との関係でいえば、第一中空撚線体20A’が大径ユニットであり、第二中空撚線体20B’が小径ユニットである。
また、第二中空撚線体20B’を形成する素線の素線径は、第一中空撚線体20A’を形成する素線の素線径よりも小さい。そのため、第二中空撚線体20B’は、外径が小さいものの、充分な大きさの内径を有している。
第二中空撚線体20B’は、第一テーパー部13b’の後端部から先端部までを覆っている。
【0044】
第二中空撚線体20B’の後端部22B’は、第一中空撚線体20A’の先端部23A’の内壁に接するように第一中空撚線体20A’の先端部23A’の内部に嵌め込まれており、第一接合部40A’が形成されている。
第一接合部40A’には、後端部12’側から先端部11’側に向かって段階的に縮径するように段差が形成されている。
このように、大径ユニット(第一中空撚線体20A’)と小径ユニット(第二中空撚線体20B’)とが連結されることにより、段差が形成されている。
【0045】
第三中空撚線体20C’の最大径D’(外径)は、第二中空撚線体20B’の内径と略同一であり、第二中空撚線体20B’の最大径D’よりも小さい。従って、第二中空撚線体20B’と第三中空撚線体20C’との関係でいえば、第二中空撚線体20B’が大径ユニットであり、第三中空撚線体20C’が小径ユニットである。
また、第三中空撚線体20C’を形成する素線の素線径は、第二中空撚線体20B’を形成する素線の素線径よりも小さい。そのため、第三中空撚線体20C’は、外径が小さいものの、充分な大きさの内径を有している。
第三中空撚線体20C’は、第一テーパー部13b’の先端部と、第二円柱部13c’と、第二テーパー部13d’と、最先端部13e’とを覆っている。
【0046】
第三中空撚線体20C’の後端部22C’は、第二中空撚線体20B’の先端部23B’の内壁に接するように第二中空撚線体20B’の先端部23B’の内部に嵌め込まれており、第二接合部40B’が形成されている。
第二接合部40B’には、後端部12’側から先端部11’側に向かって段階的に縮径するように段差が形成されている。
このように、大径ユニット(第二中空撚線体20B’)と小径ユニット(第三中空撚線体20C’)とが連結されることにより、段差が形成されている。
【0047】
このように、第一中空撚線体20A’、第二中空撚線体20B’及び第三中空撚線体20C’は、その内部に小径部13’が挿通されることにより小径部13’を覆っており、ガイドワイヤ2の外周面を部分的に形成している。
【0048】
また、大径部14’の最大径D’と第一中空撚線体20A’の最大径D’とは、同一である。
【0049】
第一中空撚線体20A’の後端部22A’と、小径部13’の第一円柱部13a’の後端部とは、後端ロウ付け部17’により固定されている。
第一接合部40A’では、第一中空撚線体20A’の先端部23A’と、第二中空撚線体20B’の後端部22B’と、第一テーパー部13b’の後端部とが第一中間ロウ付け部19A’により固定されている。
また、第二接合部40B’では、第二中空撚線体20B’の先端部23B’と、第三中空撚線体20C’の後端部22C’と、第一テーパー部13b’の先端部とが第二中間ロウ付け部19B’により固定されている。
そして、第三中空撚線体20C’の先端部23C’と、小径部13’の最先端部13e’とが半球状の先端ロウ付け部18’により固定されている。
【0050】
本実施形態のガイドワイヤの作用効果を以下に列挙する。
本実施形態のガイドワイヤは、上述した第一実施形態のガイドワイヤの作用効果(1)〜(6)を発揮することができる。
【0051】
また、下記特有の作用効果(7)及び(8)を発揮することができる。
(7)中空撚線体の外周面には、後端部側から先端部側に向かって段階的に縮径するように段差が形成されており、ガイドワイヤの形状が先端部に向かって段階的に細くなっているので、病変部への通過性により優れる。
【0052】
(8)中空撚線体は、大径ユニットと大径ユニットよりも素線径が小さい小径ユニットとからなり、段差は、大径ユニットと小径ユニットとが連結されることにより形成されている。そのため、種々の外径及び内径を有するユニットを複数個組み合わせることにより、中空撚線体の外周面に形成される段差の形状を自由に設計できる。
【0053】
(第三実施形態)
以下、本発明のガイドワイヤの一実施形態である第三実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態のガイドワイヤは、単一の素線を巻回してなるコイル体をさらに有しており、コイル体が中空撚線体の先端部を覆っていること以外は、上述した第一実施形態のガイドワイヤと同様の構成を有しているので、重複する事項については説明を省略する。
【0054】
図3(a)は、本発明のさらに別の実施形態に係るガイドワイヤを模式的に示す平面図であり、図3(b)は、図3(a)に示すガイドワイヤの遠位部をその長手方向に沿って一部切り欠いて示す一部切り欠き拡大断面図である。
【0055】
図3(a)及び図3(b)に示す本実施形態のガイドワイヤ3は、先端部11’’及び後端部12’’を有するコアシャフト10’’と、複数の素線21A’’を撚合してなる第一中空撚線体20A’’と、複数の素線21B’’を撚合してなる第二中空撚線体20B’’と、単一の素線31’’を巻回してなるコイル体30’’とを含んで形成されている。
【0056】
コアシャフト10’’の構成は、上述した第一実施形態のガイドワイヤを形成しているコアシャフトの構成と同様である。
【0057】
第一中空撚線体20A’’は、小径部13’’の第一円柱部13a’’の全体と、第一テーパー部13b’’の後端部とを覆っている。
なお、第一中空撚線体20A’’の最大径(外径)は、図3(b)において符号D’’で示している。
【0058】
第二中空撚線体20B’’の最大径D’’(外径)は、第一中空撚線体20A’’の内径と略同一であり、第一中空撚線体20A’’の最大径D’’よりも小さい。従って、第一中空撚線体20A’’が大径ユニットであり、第二中空撚線体20B’’が小径ユニットである。
また、第二中空撚線体20B’’を形成する素線の素線径は、第一中空撚線体20A’’を形成する素線の素線径よりも小さい。そのため、第二中空撚線体20B’’は、外径が小さいものの、充分な大きさの内径を有している。
また、第二中空撚線体20B’’は、第一テーパー部13b’’の後端部と、第一テーパー部13b’’の後端部よりも先端部11’’側に位置する小径部13’’のすべての領域を覆っている。即ち、第二中空撚線体20B’’は、第一テーパー部13b’’の後端部と、第二円柱部13c’’と、第二テーパー部13d’’と、最先端部13e’’とを覆っている。
【0059】
第二中空撚線体20B’’の後端部22B’’は、第一中空撚線体20A’’の先端部23A’’の内壁に接するように第一中空撚線体20A’’の先端部23A’’の内部に嵌め込まれており、接合部40’’が形成されている。
接合部40’’には、後端部12’’側から先端部11’’側に向かって段階的に縮径するように段差が形成されている。
このように、大径ユニット(第一中空撚線体20A’’)と小径ユニット(第二中空撚線体20B’’)とが連結されることにより、段差が形成されている。
【0060】
第一中空撚線体20A’’及び第二中空撚線体20B’’は、その内部に小径部13’’が挿通されることにより小径部13’’を覆っており、ガイドワイヤ3の外周面を部分的に形成している。
【0061】
また、大径部14’’の最大径D’’と第一中空撚線体20A’’の最大径D’’とは、同一である。
【0062】
コイル体30’’の内径は、第一中空撚線体20A’’の内径と略同一であり、第二中空撚線体20B’’の最大径D’’(外径)と略同一である。
コイル体30’’の最大径D’’(外径)は、第一中空撚線体20A’’の最大径D’’(外径)よりも大きい。
また、コイル体30’’は、その後端部32’’が接合部40’’の段差に嵌め込まれており、その先端部33’’が最先端部13e’’まで達しており、第二中空撚線体20B’’を覆っている。
【0063】
このように、コイル体30’’は、中空撚線体(第一中空撚線体20A’’及び第二中空撚線体20B’’)の先端部である第二中空撚線体20B’’を覆っている。
【0064】
第一中空撚線体20A’’の後端部22A’’と、小径部13’’の第一円柱部13a’’の後端部とは、後端ロウ付け部17’’により固定されている。
接合部40’’では、第一中空撚線体20A’’の先端部23A’’と、第二中空撚線体20B’’の後端部22B’’と、コイル体30’’の後端部32’’と、第一テーパー部13b’’の後端部とが中間ロウ付け部19’’により固定されている。
また、第二中空撚線体20B’’の先端部23B’’と、コイル体30’’の先端部33’’と、小径部13’’の最先端部13e’’とが半球状の先端ロウ付け部18’’により固定されている。
【0065】
本実施形態のガイドワイヤの作用効果を以下に列挙する。
本実施形態のガイドワイヤは、上述した第一実施形態のガイドワイヤの作用効果(1)〜(6)を発揮することができる。
【0066】
また、下記特有の作用効果(9)及び(10)を発揮することができる。
(9)素線を巻回してなるコイル体が中空撚線体の先端部を覆っているので、コイル体の素線の材質を適宜変更することにより、例えば、X線不透過性等の所望の効果を付与することができる。
【0067】
(10)コイル体の後端部が接合部の段差に嵌め込まれているので、ガイドワイヤの最大径(外径)が小さく、病変部への通過性に優れる。また、手技時においても、コイル体が脱落しにくく、安全性が高い。
【0068】
(その他の実施形態)
本発明のガイドワイヤにおいて、大径部の最大径と中空撚線体の最大径とは同一であることが望ましいが、大径部の最大径が中空撚線体の最大径よりも大きい場合や、大径部の最大径が中空撚線体の最大径よりも小さい場合であっても、本発明の作用効果を好適に享受することができる。
【0069】
本発明のガイドワイヤにおいて、中空撚線体を形成している素線は、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、オーステナイト、フェライト二相ステンレス又は析出硬化ステンレス等のステンレス、Ni−Ti合金等の超弾性合金、タングステンから形成されていることが望ましい。
【0070】
本発明のガイドワイヤにおいて、中空撚線体の外周面に、後端部側から先端部側に向かって段階的に縮径するように段差が形成されている場合には、上述したように、大径ユニットと小径ユニットとが連結されることにより段差が形成されていてもよいが、中空撚線体が各ユニットに分割されておらず、一のユニットのみからなり、該ユニットの外周面に段差が形成されていてもよい。
【0071】
また、中空撚線体が大径ユニットと小径ユニットとから形成されている場合、ユニットの個数は、上述したように2個又は3個に限定されず、4個以上のユニットから形成されていてもよい。
ユニットの個数が増えるにしたがってユニット同士の接合部の段差が小さくなるので、挿入抵抗がより少なくなり、病変部への通過性に特に優れることとなる。
【0072】
本発明のガイドワイヤにおいて、コイル体を形成している素線は、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、オーステナイト、フェライト二相ステンレス又は析出硬化ステンレス等のステンレス、Ni−Ti合金等の超弾性合金、タングステン、放射線不透過性金属である白金、金、タングステン等の材料から形成されていることが望ましい。
【0073】
本発明のガイドワイヤにおいて、コアシャフトは、例えば、ステンレス鋼、Ni−Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、タングステン線等の材料から構成されていてもよい。
上記ステンレスとしては、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、オーステナイト、フェライト二相ステンレス及び析出硬化ステンレス等のステンレスが挙げられる。
これらのなかでは、オーステナイト系ステンレスであることが望ましく、特にSUS304、SUS316又はSUS316Lであることがより望ましい。
【0074】
本発明のガイドワイヤにおいて、ロウ付け部を構成するロウの材料としては、例えば、アルミニウム合金ロウ、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn−Pb合金、Sn−Au合金、Pb−Ag合金、Sn−Ag合金等の材料が挙げられる。
これらの中では、金ロウ、Sn−Au合金、Sn−Ag合金が特に好ましい。ロウ付け部の強度がより高くなるからである。
【0075】
本発明のガイドワイヤにおいて、ガイドワイヤの外表面には、親水性材料が被覆されていてもよい。
ガイディングカテーテル内、管状器官内又は体内組織内におけるガイドワイヤの摺動抵抗を低減させ、ガイドワイヤをスムーズに移動させることができるからである。
【0076】
上記親水性材料としては、例えば、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体等の無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミドのブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸塩等が挙げられる。
これらの中では、ヒアルロン酸塩がより望ましい。
【符号の説明】
【0077】
1、2、3 ガイドワイヤ
10、10’、10’’ コアシャフト
11、11’、11’’ コアシャフトの先端部
12、12’、12’’ コアシャフトの後端部
13、13’、13’’ コアシャフトの小径部
14、14’、14’’ コアシャフトの大径部
20、20A’、20B’、20C’、20A’’、20B’’ 中空撚線体
21、21A’、21B’、21C’、21A’’、21B’’ 中空撚線体の素線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部及び後端部を有するコアシャフトと、
複数の素線を撚合してなる中空撚線体とからなるガイドワイヤであって、
前記コアシャフトは、前記先端部を含み、前記先端部側から前記後端部側に向かって一定領域に渡って延在している小径部と、前記小径部よりも前記後端部側に位置しており、前記先端部側から前記後端部側に向かって一定領域に渡って延在している大径部とを有しており、
前記中空撚線体は、その内部に前記小径部が挿通されることにより前記小径部を覆っており、前記ガイドワイヤの外周面を部分的に形成していることを特徴とするガイドワイヤ。
【請求項2】
前記大径部の最大径と前記中空撚線体の最大径とが同一である請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
前記中空撚線体の外周面には、前記後端部側から前記先端部側に向かって段階的に縮径するように段差が形成されている請求項1又は2に記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記中空撚線体は、大径ユニットと、前記大径ユニットよりも素線径が小さい小径ユニットとからなり、
前記段差は、前記大径ユニットと前記小径ユニットとが連結されることにより形成されている請求項3に記載のガイドワイヤ。
【請求項5】
単一の素線を巻回してなるコイル体をさらに有しており、
前記コイル体は、前記コイル体の一方の端部が前記段差に嵌め込まれることにより前記中空撚線体の先端部を覆っている請求項3又は4に記載のガイドワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−176190(P2012−176190A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41430(P2011−41430)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】