説明

ガイド波のLモード・Tモード併用検査方法

【課題】ガイド波の発振箇所の近傍を含めた広範囲にわたって検査体を検査することができる検査方法を提供する。
【解決手段】Lモードのガイド波を用いて管状または棒状の検査体を検査する第1の検査装置と、Tモードのガイド波を用いて検査体を検査する第2の検査装置とを用意する。第1および第2の検査装置の一方を検査体に組み付けて、該検査装置によりガイド波を発生させてその反射波を検出する。次いで、検査体における一方の検査装置の組み付け箇所において、他方の検査装置を組み付けるように、一方の検査装置を他方の検査装置に換える。その後、他方の検査装置によりガイド波を発生させてその反射波を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状または棒状の検査体の検査方法に関する。より詳しくは、本発明は、検査体中を検査体の長手方向に伝播するガイド波を用いた検査方法に関する。なお、ガイド波の周波数は、例えば、1kHz〜数百kHz(一例では、32kHz、64kHz、128kHzなど)である。
【背景技術】
【0002】
ガイド波は、例えば、管状または棒状の検査体に巻いたコイルに交流電流を流すことで発生させられる。検査体に巻いたコイルに交流電流を流すと、交流磁場が発生する。この交流磁場による磁力を利用して、検査体を振動させ、これにより音波の一種であるガイド波を発生させる。発生・発振したガイド波は、検査体中をその長手方向に沿って伝播していく。
【0003】
ガイド波の反射波を検出することで、検査体の健全性を検査する。ガイド波は、検査体における不連続部や、円周方向に関する検査体の断面積変化などによって反射波として反射される。この反射波を、ガイド波の発振箇所において検出することで、検査体の健全性を検査する。検査体の健全性として、例えば、検査体の傷または腐食などの欠損部分の有無を検査する。
【0004】
ガイド波として、例えば、Lモード(Longitudinal mode)のガイド波とTモード(Torsional mode)のガイド波がある。Lモードのガイド波は、その伝播方向に振動しながら検査体中を伝播し、Tモードのガイド波は、検査体をねじるように振動しながら検査体中を伝播する。
【0005】
このようなガイド波は、一般の音波検査で用いる音波と比較して、減衰が少なく、検査体の広範囲にわたって検査体の健全性を検査できる。一般の音波検査において使用する音波は、例えば、周波数が5MHzと高く、波長が0.6mmと小さいため、減衰しやすい。これに対し、上述のようなガイド波は、例えば、周波数が数kHz〜数十kHzと小さく、波長が100mmと大きいので、減衰しにくい。
【0006】
本願の先行技術文献として、例えば下記の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−36516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来において、通常は、検査体および状況に応じて、LモードまたはTモードのどちらかのガイド波を選択し、選択した単一のガイド波を用いて検査している。
【0009】
この場合、LモードおよびTモードの特性により、検査体において、検査可能な範囲に限りがあり、検査不可能な範囲が生じることを、後述する「発明者による検証」のように発明者が検証した。
【0010】
そこで、本発明の目的は、広範囲にわたって検査体を検査することができる検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明者による検証)
本願の発明者は、Lモードのガイド波は、検査体に組み付けた検出装置の近傍をのぞいた遠方の検査に適しており、Tモードのガイド波は、検出装置の近傍の検査に適している特性を、次のように確認した。
Lモードのガイド波は、検査体に組み付けた検出装置により発生させられ、これにより、検査体の長手方向に伝播する。このガイド波は、検査体の欠陥個所で大きく反射して戻ってくる。この戻ってきた反射波を前記検出装置で検出することで、検査体の健全性を検査する。Lモードのガイド波は、Tモードのガイド波と比べて減衰が少ないので、遠方で反射波してもその反射波を検出できる。しかし、検出装置の近傍(特に、検出装置から900mm未満の領域)から、反射して戻ってきたLモードガイド波の反射波の波形は、発生ガイド波の波形と混在してしまう。そのため、Lモードのガイド波により、検出装置近傍において、検査体の健全性を検査することが困難である。特に、検査装置を組み付け可能な箇所が限られている場合には、検査装置の組付箇所(即ち、ガイド波の発振箇所)をずらすことができないので、当該組付箇所の近傍においては、検査体の健全性を検査することができない。
Tモードのガイド波では、Lモードのガイド波と比べて、検出装置の近傍からの反射波が発生ガイド波と混在する検査体上の領域が少ない。従って、Tモードのガイド波は、検出装置の近傍での検査に適している。
本願の発明者は、このような各モードの特性を併用することにより、検査可能な範囲の制限を、無くし、若しくは、少なくした。
【0012】
すなわち、上記目的を達成するため、本発明によると、管状または棒状の検査体にガイド波を伝播させ、該ガイド波の反射波を検出し、この反射波に基づいて検査体を検査するガイド波を用いた検査方法であって、
(A)伝播方向に振動しながら検査体中を伝播するLモードのガイド波を発生させ、かつ、このガイド波の反射波を検出する第1の検査装置を用意し、
(B)検査体をねじるように振動しながら検査体中を伝播するTモードのガイド波を発生させ、かつ、このガイド波の反射波を検出する第2の検査装置を用意し、
(C)第1および第2の検査装置の一方を検査体に組み付け、該一方の検査装置によりガイド波を発生させてその反射波を検出し、
(D)前記検査体における前記一方の検査装置の組付箇所において、他方の検査装置を組み付けるように、前記一方の検査装置を他方の検査装置に換え、
(E)該他方の検査装置によりガイド波を発生させてその反射波を検出する、ことを特徴とするガイド波のLモード・Tモード併用検査方法が提供される。
【0013】
上記本発明において、前記Lモードのガイド波により、前記組付箇所の近傍(例えば、検査体の軸方向に関して、該組付箇所から、該組付箇所との距離が900mmとなる位置までの領域)を除いた第1範囲にわたって検査体を検査し、前記Tモードのガイド波により、前記組付箇所の近傍(例えば、検査体の軸方向に関して、該組付箇所との距離が700mmとなる位置から、該組付箇所との距離が900mmとなる位置までの領域)を含む第2範囲にわたって検査体を検査し、第1範囲は、第2範囲と比べて前記組付箇所から遠い検査体の領域を含む。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によると、第1の検査装置は、金属材料で形成された検査体に巻かれるコイルと、検査体に巻かれた前記コイルを挟むように検査体の外周面に取り付けられるN極とS極を有する磁石と、前記コイルに交流電流を流す交流電源と、前記コイルの両端間の電圧を検出する検出部と、を備え、
第2の検査装置は、前記コイルと、前記交流電源と、前記検出部と、前記コイルが巻かれた検査体の範囲において検査体の軸方向に検査体の外表面に直流電流を流す直流電源と、を備え、
前記(C)において、前記磁石と前記直流電源のうち、前記一方の検査装置の構成要素となるものを使用し、
前記(D)において、前記コイルと前記交流電源と前記検出部を、前記一方および前記他方の検査装置で共有するように検査体に組み付けたままにし、
前記(E)において、前記磁石と前記直流電源のうち、前記他方の検査装置の構成要素となるものを使用する。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明によると、LモードおよびTモードのガイド波を同じ箇所から発振させ、その反射波を検出することで、次のように、ガイド波の発振箇所の近傍を含めた広範囲にわたって検査体を検査することが可能となる。
Lモードのガイド波を利用した場合には、その発振箇所の近傍を除いて、発振箇所から遠い箇所まで検査体を検査できる。Tモードのガイド波を利用した場合には、その発振箇所から遠い範囲を除いて、発振箇所の近傍を含めた範囲にわたり検査体を検査できる。そこで、上述のように、第1および第2の検査装置の一方を検査体に組み付け、該一方の検査装置によりガイド波を発生させてその反射波を検出し、前記検査体における前記一方の検査装置の組付箇所において、他方の検査装置を組み付けるように、前記一方の検査装置を他方の検査装置に換え、該他方の検査装置によりガイド波を発生させてその反射波を検出する。これにより、ガイド波の発振箇所の近傍を含めた広範囲にわたって検査体を検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】Lモードのガイド波により検査体を検査する検査装置の構成例を示す。
【図2】Tモードのガイド波により検査体を検査する検査装置の構成例を示す。
【図3】(A)は、図1の検査装置により検出した反射波の波形の模式図を示し、(B)は、図2の検査装置により検出した反射波の波形の模式図を示す。
【図4】本発明の実施形態によるガイド波のLモード・Tモード併用検査方法を示すフローチャートである。
【図5】検査装置の組付箇所が制限されることの説明図である。
【図6】Tモードのガイド波により検査体を検査する検査装置の他の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0018】
図1は、Lモードのガイド波を用いる検査装置3の構成例を示す。検査装置3は、金属材料で形成された検査体7の欠陥を検査する装置であり、コイル3a、磁石3d、交流電源3b、および検出部3cを備える。
【0019】
検査体7は、管状または棒状のものである。例えば、管状の検査体7としては、内部に流体が流れる配管であってもよいし、棒状の検査体7としては、グラウンドアンカーやアンカーボルトや鉄筋などであってもよい。
【0020】
コイル3aは、検査体7に巻かれる。磁石3dは、検査体7の軸方向に関して、コイル3aの一方側にN極9が位置し、コイル3aの他方側にS極11が位置し、当該N極9とS極11でコイル3aを挟むように配置される。また、これらN極9とS極11が、適宜の手段により、検査体7の外周面に対し、検査体7の中心軸に向けて押し付けられるように当該外周面に固定される。検出部3cは、コイル3aの両端間の電圧を検出できるようにコイル3aに接続されている。
【0021】
このようにコイル3aと磁石3dと検出部3cを設けた状態で、交流電源3bが、コイル3aに交流電流を流すことで、Lモードのガイド波が検査体7中に発生し、かつ、当該ガイド波が検査体7の長手方向に伝播していく。このように伝播していったガイド波が、検査体7における傷や腐食(減肉)などの欠陥部位で反射して、コイル3a側へ伝播して戻って来る。検出部3cは、反射波がコイル3aの部分に到達することでコイル3aの両端間に発生する電圧を検出する。
【0022】
図2は、Tモード(Torsional mode)のガイド波を用いる検査装置5の構成例を示す。検査装置5は、強磁性金属板5d、コイル5a、交流電源5b、および検出部5cを備える。
【0023】
強磁性金属板5dは、強磁性材料で形成されたプレート状の金属板であり、検査体7の外周面に直接に巻き付けられる。コイル5aは、強磁性金属板5dの上から検査体7に巻かれる。検出部5cは、コイル5aの両端間の電圧を検出できるようにコイル5aに接続されている。
【0024】
このように強磁性金属板5dとコイル5aと検出部5cを組み付けた状態で、交流電源5bが、コイル5aに交流電流を流すことで、Tモードのガイド波が検査体7中に発生し、かつ、当該ガイド波が検査体7の長手方向に伝播していく。このように伝播していったガイド波が、検査体7における傷や腐食(減肉)などの欠陥部位で反射して、コイル5a側へ伝播して戻って来る。検出部5cは、反射波がコイル5aの部分に到達することでコイル5aの両端間に発生する電圧を検出する。
【0025】
図3(A)は、図1の検査装置3で検出した波形の模式図を示す。具体的には、図3(A)は、Lモードのガイド波が、コイル3aとの距離が900mmとなる位置の欠陥部位で反射した場合に、検出部3cが検出した反射波の波形の模式図を示す。図3(B)は、図2の検査装置5で検出した波形の模式図を示す。具体的には、図3(B)は、Tモードのガイド波が、コイル5aとの距離が700mmとなる位置の欠陥部位で反射した場合に、検出部5cが検出した反射波の波形の模式図を示す。図3(A)と図3(B)において、横軸は、コイル3a、5aを組み付けた位置からの距離(時間に対応する)を示し、縦軸は、コイル3a、5aの両端間の電圧の振幅(即ち、反射波の強度)を示す。図3(A)と図3(B)において、丸で囲んだ部分(きず信号)では、反射波の強度が大きくなっており、この部分に相当する検査体7の位置において、きずや腐食などの欠陥が存在することが分かる。なお、図3(A)と図3(B)において、範囲Aは、ガイド波を発生させる時に交流電源5a、5bにより印加された電圧を示す。
【0026】
Lモードのガイド波は、図3(A)の例のように、コイル3aとの距離が900mmとなる位置の欠陥部位で反射した場合に、検出部3cに検出される当該反射波の振幅は十分に大きく検査体7の健全性の評価に使用できるが、コイル3aとの距離が900mmより小さい位置で反射した場合には、検出部3cにより検出される当該反射波の振幅が小さすぎて検査体7の健全性の評価に使用できない。
【0027】
一方、Tモードのガイド波は、図3(B)の例のように、コイル5aとの距離が700mmとなる位置の欠陥部位で反射した場合であっても、検出部5cに検出される当該反射波の振幅は十分に大きく検査体7の健全性の評価に使用できる。
【0028】
波長の同じ倍数の長さ(例えば、2波長の長さ)を持つLモードのガイド波とTモードのガイド波が、それぞれ、検査装置3、5により発生させられる場合、検査装置5のほうが、検査体7におけるその組付箇所により近い位置まで検査体7の欠陥を検出できる。
【0029】
図4は、本発明の実施形態によるガイド波のLモード・Tモード併用検査方法のフローチャートである。
【0030】
ステップS1において、図1の検査装置3、および図2の検査装置5を用意する。
【0031】
ステップS2において、検査体7における装置の組付箇所に、検査装置3を組み付ける。すなわち、検査体7の軸方向の所定位置にある組付箇所において、検査体7の外周面に対し検査体7の軸心周りにコイル3aを巻き付ける。また、上述のように、磁石3d、交流電源3b、および検査装置3を配置する。
【0032】
ステップS3において、交流電源3bとコイル3aを接続する配線に設けたスイッチを適宜の手段によりオンにすることで、コイル3aに交流電流を流す。これにより、Lモードのガイド波が発生し、このガイド波が検査体7の長手方向に伝播していく。なお、所望の短い長さ(例えば、2〜3波長程度)のガイド波が発生して伝播していくようにスイッチがオンとなる時間が制御されるのがよい。この時間だけスイッチをオンにした後は、スイッチをオフにすることで交流電源3bがコイル3aに電流を流さないようにする。
【0033】
ステップS4において、ステップS3で検査体7中を伝播したLモードのガイド波の反射波を、検出部3cにより検出する。例えば、検出部3cにより、図3(A)のような反射波の波形を取得する。
【0034】
ステップS5において、検査体7における検査装置3の組付箇所において、他方の検査装置5を組み付けるように、検査装置3を検査装置5に換える。すなわち、コイル3aと磁石3dを検査体7から取り外し、次いで、前記組付箇所における検査体7の外周面に対し検査体7の軸心周りに強磁性金属板5dを巻き付け、強磁性金属板5dの上から検査体7にコイル5aを巻き付ける。また、上述のように、交流電源5bおよび検出部5cを配置する。なお、検査装置3のコイル3a、交流電源3b、および検出部3cを、それぞれ、検査装置のコイル5a、交流電源5b、および検出部5cとして使用してもよい。
【0035】
ステップS5において、検査装置3が組み付けられていた前記組付箇所に、検査装置5を組み付けるのは、次の理由による。検査体7に取り付けた弁などの機器や、検査体7を埋設した構造体などにより、検査装置3、5を組み付ける箇所が所定の箇所(前記組付箇所)に限られる。図5の例では、検査体7に取り付けた弁などの機器13(破線で示す)と、検査体7を埋設した構造体15(破線で示す)とにより、検査体7において検査装置3、5を組み付けられる箇所が前記組付箇所(図5の符号Xで示す領域)に限られている。
【0036】
ステップS6において、交流電源5bとコイル5aを接続する配線に設けたスイッチをオンにすることで、コイル5aに交流電流を流す。これにより、Tモードのガイド波が発生し、このガイド波が検査体7の長手方向に伝播していく。なお、所望の短い長さ(例えば、2〜3波長程度)のガイド波が発生して伝播していくようにスイッチがオンとなる時間が制御されるのがよい。この時間だけスイッチをオンにした後は、スイッチをオフにすることで交流電源5bがコイル5aに電流を流さないようにする。なお、ステップS6で使用するTモードのガイド波の周波数は、ステップS3で使用するLモードのガイド波の周波数と同じであってよい。
【0037】
ステップS7において、ステップS6で検査体7中を伝播したTモードのガイド波の反射波を、検出部5cにより検出する。例えば、検出部5cにより、図3(B)のような反射波の波形を取得する。
【0038】
上述した本発明によると、LモードおよびTモードのガイド波を同じ箇所から発振させ、その反射波を検出することで、次のように、ガイド波の発振箇所の近傍を含めた広範囲にわたって検査体7を検査することが可能となる。
Lモードのガイド波を利用した場合には、その発振箇所(即ち、前記組付箇所)の近傍を除いて、発振箇所から遠い箇所まで検査体7を検査できる。Tモードのガイド波を利用した場合には、その発振箇所(即ち、前記組付箇所)から遠い範囲を除いて、発振箇所の近傍を含めた範囲にわたり検査体7を検査できる。そこで、上述のように、検査装置3、5の一方を検査体に組み付け、該一方の検査装置によりガイド波を発生させてその反射波を検出し、検査体7における一方の検査装置の組付箇所において、他方の検査装置を組み付けるように、一方の検査装置を他方の検査装置に換え、該他方の検査装置によりガイド波を発生させてその反射波を検出するといった具合に、同じ箇所からLモードおよびTモードのガイド波を発振させ、その反射波を検出する。これにより、ガイド波の発振箇所の近傍を含めた広範囲にわたって検査体7を検査することが可能となる。
【0039】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、以下のように本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【0040】
検査装置3、5の構成は、図1、図2に示した構成例に限定されない。例えば、Tモードをガイド波により検査体7を検査する検査装置5は、図6の構成を有していてもよい。図6の検査装置5は、コイル5a、交流電源5b、検出部5c、および直流電源5eを有するが、強磁性金属板5dを有さない。図6の構成において、コイル5a、交流電源5b、検出部5cは、図2に基づいて説明した構成と同じである。なお、図6において、コイル5aを、検査体7の外周面に直接巻いてよい。直流電源5eは、配線5fと配線5gを介して検査体7の外表面に直流電流を流す。配線5fは、コイル5aの一方側にある検査体7外表面の接点aに接続され、配線5gは、コイル5aの他方側にある検査体7外表面の接点bに接続される。従って、直流電源5eにより、検査体7の外表面において接点aから接点bへ直流電流が流れる。
図6の構成で、交流電源5bが、コイル5aに交流電流を流しながら、直流電源5eが、検査体7の外表面において接点aから接点bへ直流電流を流すことで、Tモードのガイド波が検査体7中に発生し、かつ、当該ガイド波が検査体7の長手方向に伝播していく。このように伝播していったガイド波が、検査体7における傷や腐食(減肉)などの欠陥部位で反射して、コイル5a側へ伝播して戻って来る。検出部5cは、反射波がコイル5aの部分に到達することでコイル5aの両端間に発生する電圧を検出する。
【0041】
上述の実施形態において、図2の検査装置5の代わりに図6の検査装置5を用いる場合には、上述のステップS5とステップS6は、次のように行う。
ステップS5において、検査装置3の構成要素のうち磁石3dのみを検査体7から取り外し、直流電源5e、配線5f、および配線5gを図6のように検査体7に組み付け、検査装置3のコイル3a、交流電源3b、および検出部3cを、それぞれ、図6の検査装置のコイル5a、交流電源5b、および検出部5cとして使用する。このようにして、検査体7における図1の検査装置3の組付箇所において、図6の検査装置5を組み付けるように、検査装置3を検査装置5に換える。すなわち、ステップS5において、コイル3aと交流電源3bと検出部3cを、検査装置3、5で共有するように検査体7に組み付けたままにして、磁石3dを検査体7から取り外し、直流電源5eと配線5fと配線5gを検査体7に取り付ける。この共有により、使用する機器の数を減らすことができる。また、コイル3aを検査体7に取り付けたままにするので、Lモードの検出反射波とTモードの検出反射波を、距離(図3(A)(B)の横軸)に関して整合させる処理が不要になる。
ステップS6において、コイル5aに交流電流を流しながら、直流電源5eが、検査体7の外表面において接点aから接点bへ直流電流が流すことで、Tモードのガイド波を検査体7中に発生させる。
他の点は、上述の実施形態と同じであってよい。
【0042】
上述の実施形態では、検査装置5よりも先に検査装置3を検査体7に組み付けたが、検査装置3よりも先に検査装置5を検査体7に組み付けてもよい。
また、図1の検査装置3と図6の検査装置5を用いる場合にも、検査装置3よりも先に検査装置5を検査体7に組み付けてもよい。この場合、ステップS2において、検査装置5を検査体7に組み付け、ステップS3、S4により、Tモードのガイド波の反射波を検出し、ステップS5において、検査装置5の構成要素のうち直流電源5e、配線5f、および配線5gを検査体7から取り外し、磁石3dを図1のように検査体7に配置し、図6の検査装置5のコイル5a、交流電源5b、および検出部5cを、検査装置3のコイル3a、交流電源3b、および検出部3cとして使用する。すなわち、ステップS5において、コイル5aと交流電源5bと検出部5cを、検査装置3、5で共有するように検査体7に組み付けたままにして、直流電源5eと配線5fと配線5gを検査体7から取り外し、磁石3dを検査体7に取り付け、ステップS6、S7により、Lモードのガイド波の反射波を検出する。このようにして、ステップS5において、検査体7における図6の検査装置5の組付箇所において、図1の検査装置3を組み付けるように、検査装置5を検査装置3に換える。他の点は、上述の実施形態と同様であってよい。
【0043】
なお、図示と説明を省略したが、各検査装置は、互いに逆を向く検査体の2つの軸方向のうち、一方の軸方向へ伝播する上述のガイド波の振幅を強め、他方の軸方向へは、上述のガイド波を打ち消す打ち消し装置が設けられてよい。この打ち消し装置は、検査装置と同様にコイルと交流電源を有し、当該コイルは、例えば、上述の検査装置のコイルからガイド波の波長の1/4だけ離れた位置において検査体に巻かれ、かつ、打ち消し装置のコイルにより発生するガイド波は、検査装置のコイルにより発生するガイド波の周期の1/4だけずれた位相でガイド波が発生させられる。このような打ち消し装置を、各検査装置と共に、検査体に組み付けまたは組み替えて、一方の軸方向にのみガイド波を伝播させることができる。
【符号の説明】
【0044】
3 検査装置、3a コイル、3b 交流電源、
3c 検出部、3d 磁石、5 検査装置、
5a コイル、5b 交流電源、5c 検出部、
5d 強磁性金属板、7 検査体、9 N極、11 S極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状または棒状の検査体にガイド波を伝播させ、該ガイド波の反射波を検出し、この反射波に基づいて検査体を検査するガイド波を用いた検査方法であって、
(A)伝播方向に振動しながら検査体中を伝播するLモードのガイド波を発生させ、かつ、このガイド波の反射波を検出する第1の検査装置を用意し、
(B)検査体をねじるように振動しながら検査体中を伝播するTモードのガイド波を発生させ、かつ、このガイド波の反射波を検出する第2の検査装置を用意し、
(C)第1および第2の検査装置の一方を検査体に組み付け、該一方の検査装置によりガイド波を発生させてその反射波を検出し、
(D)前記検査体における前記一方の検査装置の組付箇所において、他方の検査装置を組み付けるように、前記一方の検査装置を他方の検査装置に換え、
(E)該他方の検査装置によりガイド波を発生させてその反射波を検出し、
前記Lモードのガイド波により、前記組付箇所の近傍を除いた第1範囲にわたって検査体を検査し、前記Tモードのガイド波により、前記組付箇所の近傍を含む第2範囲にわたって検査体を検査し、第1範囲は、第2範囲と比べて前記組付箇所から遠い検査体の領域を含む、ことを特徴とするガイド波のLモード・Tモード併用検査方法。
【請求項2】
第1の検査装置は、金属材料で形成された検査体に巻かれるコイルと、検査体に巻かれた前記コイルを挟むように検査体の外周面に取り付けられるN極とS極を有する磁石と、前記コイルに交流電流を流す交流電源と、前記コイルの両端間の電圧を検出する検出部と、を備え、
第2の検査装置は、前記コイルと、前記交流電源と、前記検出部と、前記コイルが巻かれた検査体の範囲において検査体の軸方向に検査体の外表面に直流電流を流す直流電源と、を備え、
前記(C)において、前記磁石と前記直流電源のうち、前記一方の検査装置の構成要素となるものを使用し、
前記(D)において、前記コイルと前記交流電源と前記検出部を、前記一方および前記他方の検査装置で共有するように検査体に組み付けたままにし、
前記(E)において、前記磁石と前記直流電源のうち、前記他方の検査装置の構成要素となるものを使用する、ことを特徴とする請求項1に記載のガイド波のLモード・Tモード併用検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−88243(P2013−88243A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227914(P2011−227914)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000198318)株式会社IHI検査計測 (132)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(501284767)株式会社ジェイアール総研電気システム (17)
【Fターム(参考)】