説明

ガイド用、搬送用ロール

【課題】 従来の搬送用、ガイド用ロールはロール外周面が鏡面状に仕上げられていないため、フィルムや基板(基材)の搬送やガイドに使用すると、基材にシミや汚れが発生したり傷が付いたりすることがあった。
【解決手段】 本発明のガイド用、搬送用ロールは、ロール外周面を研磨してその外周面をRa1.0μm以下の準鏡面又は鏡面とした。ロール外周面に高機能樹脂製のチューブ状或いはパイプ状の被覆材を密着被覆し、その被覆材の外周面をRa1.0μm以下の準鏡面又は鏡面に研磨することもできる。前記研磨はロール外周面又は被覆材外周面に研磨フィルムを接触させてオッシレーションさせて行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶反射板用フィルム、レジストフィルム、フレキシブルプリントサーキット(FPC)といった各種電子部材用のフィルムや基板等の製造或いは加工時に、それらをガイドしたり、搬送したりするのに使用されるガイド用、搬送用のロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種電子部材用のフィルム、基板等は製造ラインや加工ライン等において、回転ロールで上下から挟まれて搬送されたり、回転ロールでガイドされたりしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電子部材用のフィルムや基板等をロールで搬送する場合、フィルムや基板等にテンションをかけて搬送し、ガイドするため、ロール外周面が粗面であるとフィルムや基板等にロールの接触跡が汚れとなって付着したり、押し傷が付いたり、フィルムや基板等が微妙に変形したりすることがある。そのフィルムや基板等を電子部品や電子機器に組み込んで使用すると電子部品や電子機器の品質劣化の一因となることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はロール外周面に前記汚れや押し傷等が付きにくく、フィルムや基板等が変形しにくいガイド用、搬送用ロールを提供するものである。
【0005】
本件出願のガイド用、搬送用ロールは請求項1記載のように、ゴム製、樹脂製、金属製のロールの外周面が回転軸の中心線を基準として真円或いはほぼ真円のロール状に成形され、ロールの外周面は研磨材を接触させてオッシレーションしてRa1.0μm以下の準鏡面又は鏡面に研磨されたものである。この場合、請求項2記載のように、外周面が真円或いはほぼ真円であるロールの外周に高機能樹脂製のチューブ状又はパイプ状の被覆材を密着被覆し、その被覆材の外周面を前記研磨と同様に研磨材でオッシレーションしてRa1.0μm以下の準鏡面又は鏡面に仕上げることもできる。この場合、請求項3記載のように、研磨材にフィルムを使用し、その研磨材をロール外周面或いは被覆材の外周面に接触させながらオッシレーションさせて研磨することができる。ロールは請求項4記載のように回転軸を備えた軸付きロール、又は回転軸を脱着自在な軸受を備えた軸受付き(軸無し)ロールとすることもできる。
【発明の効果】
【0006】
本件出願の請求項1記載のガイド用、搬送用ロールは、ロール外周面が回転軸の中心線を基準として真円又はほぼ真円のロール状であり、ロール外周面がRa1.0μm以下の準鏡面又は鏡面であるため、フィルムや基板に圧接させて搬送、ガイド等に使用してもフィルムや基板に染み、汚れ、傷等が付きにくくなる、という効果がある。
【0007】
本件出願の請求項2記載のガイド用、搬送用ロールは請求項1と同様の効果があり、更に、ロールの外周面に高機能樹脂製の被覆材を密着被覆させてあるため、ロール外周面の撥水性が向上し、搬送或いはガイドするフィルムや基材にシミ、汚れ、傷等が付きにくくなる。ロール外周に被せた被覆材をフッ素樹脂製とした場合は被覆材が汚れにくくなるためフィルムや基板も汚れにくくなり、被覆材の清掃も容易になる。また、被覆材を導電性樹脂(例えば導電性フッ素樹脂)にすれば静電気防止効果も高まり、粉塵などが付着しにくくなるといった各種効果もある。
【0008】
本件出願の請求項3記載のガイド用、搬送用ロールは上記各効果に加えて、更に、研磨材に研磨フィルムを使用し、それをロール外周面又は被覆材の外周面に接触させながらオッシレーションさせて研磨すると、砥石やバフによる研磨に比してロールや被覆材の外周面が精度の高い準鏡面又は鏡面に仕上がる。
【0009】
本件出願の請求項4記載のガイド用、搬送用ロールは上記各効果に加えて、更に、次のような効果もある。
(1)ロールを回転軸付きとし、しかもその回転軸を研磨時も使用時も同じものにすれば、ロール外周面の真円度が研磨時のまま確保され、フィルムや基板のガイドや搬送が安定する。
(2)ロールを軸受付きとし、その軸受を、研磨時も使用時も同じものにすれば、その軸受に搬送用、ガイド用の回転軸を装着すれば、ロール外周面の真円度がほぼ研磨時のまま確保され、フィルムや基板のガイドや搬送が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施形態1)
本発明のガイド用、搬送用ロール(以下両者をまとめて「本件ロール」と記す。)の実施形態の一例を図1〜図3に基づいて説明する。この実施形態は図1のようにフレキシブルプリントサーキット(FPC)、液晶反射板、レジストフィルムといった各種電子部材用のフィルム、基板等(以下「基材」という。)2を、前後に一連に配置された塗料塗布装置11及び乾燥装置12内を通過させるときに(ウェットタイプで)搬送したり、図2のようにロールコーター13で塗料を片面に塗布した基材2を乾燥装置14内を通過させて巻き取りロール15に巻き取るときに(ドライタイプで)ガイドしたりするのに使用する場合の例である。
【0011】
図3に示す本件ロール1は回転軸3の外周にロール4が設けられている軸付きロールの場合であり、回転軸3には金属製のパイプや棒或は塩ビパイプのような硬質樹脂製パイプや棒等が使用される。その長さは用途に合わせて任意に選択され、例えば数cm〜数m程度とすることができる。
【0012】
ロール4の材料としては変形しにくく、外周面が滑らかなものが望ましく、例えば、硬質のゴム製、樹脂製、金属製とすることができる。ロール4の成形方法は種々考えられるが、例えば次の(1)(2)のような方法がある。
(1)内面に剥型剤が塗布された成形型(図示しない)内に回転軸3をセットし、その成形型内にゴム又は樹脂等のロール材料を流し込んで回転軸3の外周にロール4を直接形成する方法。
(2)内面に剥型剤が塗布された円筒状の成形型(図示しない)内にゴム又は樹脂等のロール材料を流し込んで凝固させ、中心部に回転軸3を貫通固定可能な軸差込孔を備えたロール4を形成し、研磨前に前記軸差込孔に回転軸3を貫通固定させる方法。
【0013】
ロール4は回転軸3に取付けられた状態で外周面が研磨されて、外周面が回転軸3の中心軸を基準として真円或いはほぼ真円のロール状に成形されている。更に、回転軸3に取付けられた状態で(図5の場合は回転軸3に装着された状態で)回転され、その外周面が研磨されてRa1.0μm以下の準鏡面又は鏡面、好ましくはRa0.6μm以下の鏡面に仕上げられている。本件ロール1は研磨時に装着されていた回転軸3に取付けられたままガイド用や搬送用等として使用される。
【0014】
ロール4の研磨方法は種々考えられる。例えば図3(a)(b)に示すようにロール4の回転軸3を矢印C方向に回転させ、研磨フィルム6を回転中のロール4の外周面に軽く接触させながら矢印A−A方向に細かく往復微振動(オッシレーション)させて研磨する。研磨フィルム6は前記ロール4と平行にセットされたガイドロール7によってガイドされて前記ロール4の外周面に接触するようにしてある。前記研磨フィルム6は送りロール8から矢印D方向に引き出されて巻取りロール9へ巻き取られる。ロール8、9は研磨フィルム6と同期して同方向に往復移動する。研磨フィルム6の幅は任意とすることができ、ロール4の長さと同じ或いはそれ以上とすることもできる。ロール4の長さと同じ或いはそれより短い場合は研磨フィルム6を矢印B−B方向に常時或いは随時往復移動させてロール4の外周面全長を研磨できるようにしてある。また、矢印D方向に連続的に又は間欠的に送ってロール4との接触部分が目詰まりしたり摩耗し過ぎたりしないようにすることができるようにしてある。ロール4の矢印C方向への回転速度、研磨フィルム6のオッシレーションの振動強度、矢印A−A方向への往復振動速度、矢印B−B方向への往復移動速度、矢印D方向への研磨フィルム6の送り速度又は間欠間隔等は研磨状態に合わせて任意とすることができる。
【0015】
フィルムにはナイロン、ポリエステルといった樹脂製のほか、紙製、布製といった任意の素材製のものを用いることができる。研磨フィルム6には微粉末状の研磨剤が付着されたフィルムを用いると研磨効率が良い。
【0016】
(実施形態2)
本件ロールの実施形態の他の例を図4(a)(b)に基づいて説明する。この例は回転軸3の外周のロール4の外周を研磨して、ロール外周を回転軸3の中心線を基準として真円又はほぼ真円のロール状に成形し、そのロール4の外周を被覆材5で被覆したものである。被覆材5としてはフッ素樹脂(導電性フッ素樹脂又は非導電性フッ素樹脂)、ポリアミドイミドといった高機能性樹脂製の熱収縮チューブが適し、特に、フッ素樹脂製のものが汚れ防止の面から好ましい。また、フッ素樹脂が導電性フッ素樹脂であれば静電気防止の面からも好ましい。
【0017】
被覆材5として用いる熱収縮チューブには図4(a)に示すようにロール4より長く、内径がロール4の外径よりも大きなものを使用し、それをロール4の外周に被せてから加熱してロール4の外周に密着させる。その後、被覆材5の外周面を研磨フィルムをオッシレーションさせて研磨してRa1.0μm以下の準鏡面又は鏡面に仕上げてある。この場合もRa0.6μm以下が好ましい。ロール4の成形、被覆材5の外周面研磨は実施形態1のロール成形方法、ロール外周面の研磨方法と同様に行なうことができる。この場合、被覆材5をロール4の軸方両端面まで被せてロール4から外れにくくしてある。
【0018】
(実施形態3)
本件ロールでは被覆材5として前記高機能樹脂製の熱収縮チューブに代えて、高機能樹脂製の肉薄のパイプ(図示しない)を使用することもできる。パイプはフッ素樹脂、ポリアミドイミドといった任意の高機能性樹脂製とすることができる。この実施形態では、ロール4を回転軸3の中心線を基準として真円或いはほぼ真円のロール状に研磨してから、その回転軸3及びロール4を前記パイプ内に圧入してロール4の外周にパイプ(被覆材5)を被せ、その後に、被覆材5の外周面を研磨してRa1.0μm以下の準鏡面又は鏡面とする。この場合もRa0.6μm以下が好ましい。前記圧入には油圧シリンダとか他の任意の手段を用いることができる。
【0019】
(実施形態4)
本件ロールの一例として図5(a)に示すものも軸付きロールであり、これは内面に剥型剤が塗布された円筒状の成形型内にゴム又は樹脂等のロール材料を流し込んで凝固させ、中心部に回転軸3を貫通できる軸孔を設け、その軸方向両端部に軸受21を内装固定し、その軸受21内に回転軸3を装着固定し、その回転軸3を研磨時も、ガイド用、搬送用として使用するときもそのまま使用することができるようにしたものである。
【0020】
(実施形態5)
本件ロールの一例として図5(b)に示すものは、回転軸3が装備されていない軸なしタイプであり、これは金属製のロール4の軸方向両端側にリング状(断面コ字形)の支持金具20を内装し、その内側に軸受21を内装固定したものである。本件ロール1の場合は研磨時、ガイド用や搬送用として使用するときに前記軸受21内に別途用意された回転軸3を装着して使用する。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本件ロールは、電子部材用のフィルムや基板等のガイド、搬送への使用に限られず、製紙工場、フィルムラミネート工場、粘着テープ工場、磁気テープ工場等において紙、フィルム、粘着テープ、磁気テープ等をガイドしたり搬送したりするのに用いることもできる。ロール外周面に被覆材を備えた本件ロールの場合はガイドや搬送に使用してもロール4の表面が汚れにくいため、塗料乾燥室等の溶剤雰囲気下での使用や静電気対策が必要な箇所での使用に適する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のガイド用、搬送用ロールを使用してウエットタイプの環境下で基材を搬送する様子を示す説明図。
【図2】本発明のガイド用、搬送用ロールをドライタイプの環境下で使用する場合の一例を示す説明図。
【図3】(a)、(b)は、本発明のガイド用、搬送用ロールの製造過程において、ロールの外周面を研磨する様子を示す説明図。(a)は平面説明図、(b)は正面説明図である。
【図4】(a)、(b)は、本発明のガイド用、搬送用ロールの実施形態の他の例を示す説明図。(a)は、ロールの外周面を被覆材(熱収縮チューブ)によって被覆した様子、(b)は被覆材(熱収縮チューブ)を熱収縮させた様子を夫々示す。
【図5】(a)は本発明の軸付きロールの他例を示す縦断面図、(b)は本発明の軸無しロールの一例を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0023】
1 本発明のガイド用、搬送用ロール
2 基材
3 回転軸
4 ロール
5 被覆材
6 研磨フィルム
7 ガイドロール
8 送りロール
9 巻取りロール
20 支持金具
21 軸受


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部材用のフィルム、基板等をガイド、搬送等するロールであり、ロールがゴム製、樹脂製、金属製のロールであり、ロール外周面が回転軸の中心線を基準として真円或いはほぼ真円のロール状に成形され、その外周面は研磨材を接触させてオッシレーションしてRa1.0μm以下の準鏡面又は鏡面に研磨されたものであることを特徴とするガイド用、搬送用ロール。
【請求項2】
電子部材用のフィルム、基板等をガイド、搬送等するロールであり、ロールがゴム製、樹脂製、金属製のロールであり、ロール外周面が回転軸の中心線を基準として真円或いはほぼ真円のロール状に成形され、ロールの外周面に高機能樹脂製のチューブ状又はパイプ状の被覆材が密着被覆され、被覆材の外周面は研磨材を接触させてオッシレーションしてRa1.0μm以下の準鏡面又は鏡面に研磨されたものであることを特徴とするガイド用、搬送用ロール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のガイド用、搬送用ロールにおいて、研磨材にフィルムを使用し、その研磨材をロールの外周面又は被覆材の外周面に接触させながらオッシレーションさせて研磨したことを特徴とするガイド用、搬送用ロール。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のガイド用、搬送用ロールにおいて、ロールに回転軸が装着された軸付きロール、回転軸を脱着可能な軸受を備えた軸受付きロールであることを特徴とするガイド用、搬送用ロール。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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