説明

ガスおよび液体の並流下降流の固定床反応器用のろ過トレイ

本発明は、ガス−液体下降並流の反応器に供給するために用いられる液体仕込原料に含まれる閉塞性粒子を捕捉するための、ろ過媒体を含む特定の分配器トレイを用いる装置に関する。本発明は、ジエンおよびアセチレン化合物を含む仕込原料の選択的水素化処理に特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスおよび液体の下降並流様式で機能する化学反応器にガスおよび液体を供給することを目的とする分配器トレイの分野に関する。
【0002】
このような反応器には、精製分野、より特定的には、種々のオイルカットの選択的水素化、より一般的には、高圧水素流を必要とし、閉塞性の固体粒子によって構成される不純物を含有し得る重質液体仕込原料により動作する水素化処理において遭遇する。
【0003】
場合によっては、液体仕込原料は、触媒床自体上に時間とともに堆積させられ得、かつ、当該触媒床の間隙容量を低減させ得る不純物を含有する。
【0004】
挙げられ得る閉塞性仕込原料は、3〜50個の炭素原子、好ましくは5〜30個の炭素原子を含む炭化水素の混合物を含むが、これは、無視することができない比率の不飽和または多不飽和アセチレン性またはジエン性化合物またはこれらの種々の化合物の組合せ(不飽和化合物の総比率は仕込原料中90重量%までであり得る)を含有し得る。本発明に関連する仕込原料の代表例は、熱分解ガソリンである(「熱分解(pyrolysis)」は、当業者に周知である熱分解法を示す)。
【0005】
当該タイプの方法および対応する生成物の記載は、P Wuithierによる「精製と化学エンジニアリング(Raffinage et Genie Chimique)」と表題を付けられた著作物(Technip出版,708頁)に見出され得る。
【0006】
本発明は、触媒床における閉塞粒子の堆積を制限することを可能にする。
【0007】
それ故に、本発明は、空隙率、したがって流れの質に関して床を均一に維持することに寄与し、本発明はまた、圧力降下が大きくなることを制限することを可能にする。
【0008】
触媒床において閉塞状態が生じた場合、反応器を通じた流れにおける圧力降下が非常に迅速に生じることが観察される。
【0009】
圧力降下があると、操作者が反応器を中断して、触媒の全部または一部を置き換えることを余儀なくさせられるようになり得、これは、明らかに、プロセスの実行時間を相当に短くする。
【0010】
触媒床の一部の閉塞は、多くの機構に起因し得る。
【0011】
直接的には、仕込原料流中の粒子の存在が、触媒床において前記粒子の堆積による閉塞を引き起こし得、この堆積は、効果的に、空隙率を低減させる。
【0012】
間接的には、化学反応に由来する生成物、典型的にはコーク(しかしながら、仕込原料中に存在する不純物に由来する他の固体生成物の場合もある)の層の形成(これらの生成物は、触媒粒の表面に堆積させられる)も、床の空隙率を低減させることに寄与し得る。
【0013】
さらに、閉塞性粒子は、多少乱雑な方法で床中に堆積させられ、結果として、その床の空隙率の分布の不均質をもたらし、これは、優先的経路の形成をもたらし得る。
【0014】
このような優先的経路は、流体力学的見地からの主たる問題である。それらは、床における相の流れの均一性を大幅に混乱させ得、化学反応の進行における不均一性並びに熱的問題に寄与し得るからである。
【背景技術】
【0015】
特許文献1には、触媒床が閉塞した時に試薬の流れの一部を偏向させることを目的とする調整用破損ディスク(breakage disk)を備えた導管のシステムが提案されている。圧力の増加は、破損ディスクを破裂させ、仕込原料が導管を通過することを可能にする。
【0016】
導管を通る流れ一部を偏向させる瞬間的な効果は、圧力降下の大きな低減である。導管への入口は、分配器トレイの上流または下流に位置するが、しかし、制御されたまたは独立した方法で液体流およびガス流を偏向させるためのシステムは提供されない。
【0017】
導管からの出口において流れを均一化するための再分配装置は、この場合において提供されない。この装置はまた、突然の圧力変動に影響を受けやすいという不利益点を蒙る。
【0018】
特許文献2および3には、試薬の流れによって運ばれる不純物を収集するために触媒床の上流または頂部に置かれるフィルターバスケットからなるシステムが提案されている。この場合、床の無視することのできない容積が前記バスケットによって占められ、バスケットの間に位置する床の一部分の付着物は実際には防止されない。さらに、ガス/液体流の適用のために、システムは、バスケットの間およびバスケットの下流のガス/液体流の均一な分布を制御することができない。
【0019】
非特許文献1には、外部フィルタのシステムが記載されているが、しかし、当該システムは、全てのタイプの閉塞を克服するわけではなく、当該解決方法のコストは非常に高い。
【0020】
特許文献4および5には、管を通る流れの一部を偏向させることによって触媒床における圧力降下の増加を少なくすることができる装置が記載されている。短回路を形成する一連の管は触媒床を通る。これらの管への入口は、分配器トレイの下流に位置し、これらの管からの出口は、種々のレベルで触媒床への入口の上に開口する。このシステムは、それ故に、独立して、ガスおよび液体の流れを偏向させることができるが、ただし、液体のレベルは、床の上流に確立される。引用特許に記載される装置は、前記システムを構成する管に偏向させられる液体流とガス流との間の比率を制御することができない。ガスは、反応器の始動から偏向させられることになり、液体は、付着物のために床の上に十分な液体レベルが確立された場合にのみ偏向させられることになる。
【0021】
さらに、2つの引用特許において記載された装置からの出口において流体の分配効果はなく、分配器トレイまたは等価なシステムの下流での供給が必要である。本発明の場合には、分配機能は、単一の装置を形成するろ過システムに組み込まれる。
【0022】
より最近の特許出願である特許文献6には、チャンバと対になった短回路を形成する管を用い、該チャンバも短回路を形成し、仕込原料に含まれるあらゆる不純物を捕捉するように機能する、装置が記載されている。当該装置は、ガス/液体流様式でシステムが用いられる場合に前記チャンバからの出口においてガス/液体流出物を再分配させるための効果的なシステムを含まない。
【0023】
特許文献7の発明のトレイは、一連のろ過装置であって、それぞれが、一方が空であり他方が「ろ過体(filtration body)」によって占められる交互同軸(alternating concentric)チャンバ(詳細には記載されていない)によって構成されるものによって構成される。
【0024】
このようなシステムでは、ろ過機能は、混合および分配機能から完全に分けられる一方で、本発明の装置では、以下に説明されるように、ろ過床と混合煙突体(chimney)との間に真正の相乗効果がある。
【0025】
事実、トレイと直接的に一体化されるろ過床は、トレイの上に位置するガス/液体の界面を安定化するという二次的な機能を有し、それ故に、前記トレイの一体部を形成する混合および分配煙突体への均一な液体供給に寄与する。
【0026】
特許文献8には、ろ過構成要素を含むトレイシステムが記載されるが、当該特許の関連における用語「ろ過」が、プロセス流体に対する浸透能および触媒粒子に対する非浸透能を意味する一方で、本発明の関連では、用語「ろ過」は、仕込原料に含まれる閉塞性粒子を保持する能力を意味する。
【0027】
最後に、本発明において記載される装置は、従来技術の装置とは対照的に著しくコンパクトであり、それ故に、反応器の所与の容積においてより多くの触媒が用いられて、その効率が高くなり得ることを意味する。
【特許文献1】米国特許第3702238号明細書
【特許文献2】米国特許第3607000号明細書
【特許文献3】仏国特許発明第7513027号明細書
【特許文献4】米国特許第4313908号明細書
【特許文献5】欧州特許第0050505号明細書
【特許文献6】国際公開第03/000401号パンフレット
【特許文献7】米国特許第3958952号明細書
【特許文献8】米国特許第4229418号明細書
【非特許文献1】ティー・エイチ・リンドストローム(T H Lindstrom)ら著、「ハイドロカーボン・プロセッシング(Hydrocarbon Processing)」、2003年2月、p.49−51
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0028】
(発明の簡単な説明)
本発明において記載される装置は、ろ過媒体を含む特定の分配器トレイによって、ガスおよび液体の下降並流様式で機能する反応器のための仕込原料の一部を構成する液体流に含まれる閉塞性粒子を捕捉することができる。
【0029】
本発明は、ガス相および液相の下降並流により機能する固定床反応器に供給するガス相と液相とを分配すると共に、処理されるべき仕込原料の一部を構成する液相に含まれる不純物のろ過機能を確実に行うことができる装置からなる。
【0030】
より正確には、本発明の装置は、少なくとも1つの固定式触媒床を含み、ガスおよび液体の下降並流様式で機能する反応器への供給物を構成するガス相および液相をろ過および分配するための装置であり、該液相は、一般的には、閉塞性粒子を含有する、装置であって、該装置は、触媒床の上流に位置するトレイを含み、該トレイは、実質的に水平なベース平板によって構成され、該ベース平板は反応器の壁に連結され、該ベース平板には、実質的に垂直な煙突体が固定され、該煙突体は、ガス流入を可能にするように上端に開口し、下流の触媒床に供給するガス−液体混合物を排出するように下端に開口し、該煙突体には、液体の流入のために連続的側部スロットまたは側部オリフィスによって高さの所定割合にわたって穴が開けられ、該トレイは、煙突体を取り囲むろ過床を支持し、前記ろ過床は、触媒床の粒子のサイズ以下のサイズを有する粒子の少なくとも1つの層によって構成される、装置である。
【0031】
前記ろ過床(分配器トレイの一部を形成する)は、一般的には、異なるサイズの粒子の複数の層からなる。
【0032】
ろ過床の種々の層を構成する粒子は、一般的には不活性であり、通常、シリカまたはアルミナまたは任意の他のセラミック性の物質から形成される。
【0033】
しかしながら、所定の場合には、ろ過床の少なくとも1つの層が、ろ過分配器トレイの下流に位置する触媒床上で起こる化学反応の意味において活性である粒子から構成されることは有利であり得る。この場合、活性粒子は、好ましくは、触媒床中の触媒と同一の触媒または同じ系統に属する触媒からなる。
【0034】
本発明の装置のさらなる変形例において、ろ過床は、35〜50%(0.35〜0.50)の範囲の空隙率で構造化された充てん層(packing)からなる。
【0035】
煙突体の側部オリフィスまたは側部スロットの閉塞を防止するために、各煙突体は、一般的には、十分に微細なメッシュ、すなわち、ろ過床の粒子のサイズ未満のメッシュサイズを有する障壁によって、それを取り囲むろ過床から分離される。この場合、ろ過床から煙突体を分ける距離は、一般的には5〜20mmである。
【0036】
本発明のろ過および分配装置は、それ故に、ベース平板を有するろ過分配器トレイであって、該ベース平板は煙突体およびろ過床を支持し、該煙突体は、オリフィスを備え、オリフィスの密度は、好ましくは反応器断面の面積(m)当たり100オリフィス超である、ものである。
【0037】
本発明のろ過および分配装置は、触媒の耐用期間を大幅に延長することができる。一般に、ろ過床の周期的な取替は、少なくとも6月の周期で行われる。
【0038】
本発明のろ過および分配装置は、水素化処理反応器、選択的水素化反応器における、または、残渣または250℃超の初留点を有する炭化水素留分の転化における使用に特に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
(発明の詳細な説明)
本発明の装置は、分配器トレイからなり、該分配器トレイは、反応器の壁と一体化される実質的に水平なベース平板を含み、該ベース平板上には、一連の実質的に垂直な煙突体が固定され、該煙突体は、上部開口および下部開口を備え、全て垂直壁に沿って分布する側部オリフィスにより孔が開けられる。
【0040】
供給物のガス部分は、本質的には上部開口を介して煙突体の内側に突き抜けて通り、供給物の液体部分は、本質的には側部オリフィスを介して煙突体の内側に突き抜けて通る。用語「本質的」は、それぞれ上部開口および側部オリフィスを介して煙突体の内側に突き抜けて通るガスおよび液体の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%を意味する。
【0041】
ガスおよび液体は、煙突体の内側で混合され、得られた混合物は、下部開口を介して煙突体を出る。
【0042】
側部オリフィスは、煙突体の高さの大部分にわたって延びる連続スロットを形成し得る。本明細書の以降の部分は、側部オリフィスを引き合いに出すことになるが、これは、連続スロットの場合を包含することになる。
【0043】
分配器トレイはろ過床を支持し、該ろ過床は、フィルタとして機能する少なくとも1つの粒状固体によって構成され、該固体粒状床は、それらの高さの一部にわたって煙突体のそれぞれを取り囲む。
【0044】
煙突体は、一般的には、少なくとも30mm、好ましくは35mm超、さらには40mm超の高さ(H’)だけろ過床の高さより高い。
【0045】
ろ過床は、任意形状の粒子の複数の層を含み得る。
【0046】
ろ過床の各層を構成する粒子のサイズは、ろ過床の頂部から底部にかけて低減する。
【0047】
下部の(または最も下部の)層の粒子は、好ましくは、分配器トレイの下流に位置する触媒床を構成する触媒の粒子のサイズより小さい平均サイズを有する。
【0048】
一般的に、各層における粒子のサイズは、1〜30mmの間、好ましくは1〜20mmの間で変動する。
【0049】
本発明のろ過および分配装置の変形例では、ろ過床は、固体粒子の少なくとも2つの層からなり、所定の層の粒子のサイズは、直上の層の粒子のサイズより小さい。
【0050】
本発明の装置の特定の変形例では、ろ過床の上部層の粒子のサイズは、5〜30mmであり、下部層の粒子のサイズは、2〜10mmである。
【0051】
純粋に例示として、およびあらゆる制限を構成することなく、本発明の装置のろ過床は、
・ 上部層:ろ過床の全高の25%を示し、触媒粒のサイズより(好ましくは少なくとも10%だけ)大きいサイズを有する粒子からなる;
・ 中間層:ろ過床の全高の25%を示し、触媒粒のサイズとほぼ等しいサイズを有する粒子からなる;
・ 下部層:ろ過床の全高の50%を示し、触媒粒のサイズより(好ましくは少なくとも10%だけ)小さいサイズを有する粒子からなる
によって構成され得る。
【0052】
ろ過床を形成する粒子は、内部に空洞を有するまたは有しない、任意の形状、例えば、球状または円筒状を有し得る。それらは、一般的には不活性であるが、場合によっては、触媒性であってもよい。後者の場合、ろ過床の活性な粒子は、一般的に、ろ過床の下流に位置する触媒床において用いられる触媒と同じ系統からの触媒によって構成される。
【0053】
ろ過床はまた、不純物についての大きな表面捕獲を提示しながら、高い空洞割合を提示する充てん要素によって構成され得る。
【0054】
挙げられ得るこのような充てん要素の例は、チタンおよびアルミナからなる不活性な粒子であって、20mm径の円筒状の形状を有し、その中に円筒状チャンネルが形成されるものである。
【0055】
挙げられ得る活性粒子の例は、10mm径の小球(beads)であって、ニッケル−モリブデンまたはコバルト−モリブデン並びにアルミナを含有するものである。
【0056】
複数層を用いるろ過床の組成の例は、本記載に続く詳細な例において与えられる。
【0057】
産業反応器の大部分について、ろ過床の全高は、一般的に200〜1500mm、好ましくは300〜600mmである。
【0058】
側部オリフィスは、煙突体の高さの大部分にわたって延びるが、それらの最低位は、好ましくは、トレイのベース平板に対して最も低い高さ(h)に位置し、これは、好ましくは、前記トレイのベース平板の上50mm、さらには60mm上である。「トレイのベース平板」は、反応器の壁に連結され、ろ過床を支持する平板である。
【0059】
オリフィスは、好ましくは、煙突体の高さ全体にわたり、最高位の高さ(h’)まで段状に設けられ、この最高位の高さ(h’)は、好ましくは、ろ過床の上表面の20mm上、さらには15mm上である。
【0060】
側部オリフィスの最低位および最高位の段高さはまた、連続スロットが用いられる場合に適用され得る。
【0061】
煙突体の内径は、一般的に10〜150mm、好ましくは25〜80mmである。
【0062】
本発明の一つの好ましい実施形態において、各煙突体を取り囲む分離ゾーンは、煙突体の側部オリフィスまたは側部スロットが固体粒子またはろ過床を構成する充てん要素によって覆い隠されることが防止されるように、フィルタと煙突体との直接的な接触を回避する。
【0063】
この場合、ろ過床から煙突体を分ける距離は、一般的には5〜20mmである。
【0064】
ろ過床は、下部層を始めとして時間とともにゆっくりと詰まり、下部の閉塞部分と上部の非閉塞部分の間に界面が効果的に形成される。
【0065】
液体は、ろ過床をその上部の非閉塞部分を通して通過し、側部オリフィスを介して煙突体を突き抜ける。
【0066】
ガス相は、主として、煙突体の内側にそれらの上部開口を介して導入される。
【0067】
大なり小なりのガス部分も、煙突体の側部オリフィスを介してまたは側部スロットを介して導入される。
【0068】
煙突体の上部開口は、一般的には、ろ過床より上の高さH’に位置し、一般的には、キャップまたは煙突体の前記上部開口を介した液体の直接的な導入を防止することを目的とする任意の等価物によって保護される。
【0069】
側部オリフィスまたは側部スロットを介して導入された液体は、それ故に、煙突体の内側でガス相と混ざり、生じた混合物は、下部開口を介して煙突体から排出され、次いで、分配器トレイの下流に位置する触媒床に分配される。
【0070】
本明細書の以降の記載において、本発明者らは、分配器トレイ、煙突体、および該分配器トレイによって支持されるろ過床によって構成される装置の集合体を「ろ過分配器トレイ」と称することにする。
【0071】
本発明の装置は、それ故に、ろ過分配器トレイであって、反応器の内部の円筒壁に連結され、触媒床の上に位置するものからなる。
【0072】
反応器が複数の相異なる触媒床を含む場合、これらの触媒床のそれぞれに、本発明のろ過分配器トレイが供給され得る。
【0073】
この場合、所与のろ過分配器トレイに供給するガス相および液相は、それの直上に位置する触媒床からの流出物によって構成され、ガス相および液相には、場合によっては、2つの触媒床の間に導入される流体(これは、水素化または水素化処理反応の場合には、通常、冷却流体である)が添加され得る。
【0074】
ろ過分配器トレイはまた、任意の形状の複数の穴によって水平のベース平板が貫通されて、これらの穴に起因する全体的な空隙率が、液体トラップと称されるトレイ上の液体の最低高さを生じさせ得るようにされ得る。しかしながら、ベース平板を貫通する穴がないろ過分配器トレイは機能するだろうし、本発明の範囲内に含まれる。
【0075】
ろ過分配器トレイはまた、煙突体を支持し、該煙突体は、ガスおよび液体を混合し、生じた混合物を、トレイの下流のゾーン内に位置する触媒床の方に案内するように機能する。
【0076】
これらの煙突体の密度は、触媒床の断面面積(m)当たり10〜150個、好ましくは30〜100個である。
【0077】
煙突体の全部は、煙突体の垂直壁に沿う全進路に段付けされた種々のレベルに位置する側部オリフィスまたは連続的長手スロットを備えており、これ(これら)は、ろ過床における閉塞のレベルに拘わらず液相が煙突体の内側を通ることを可能にする。
【0078】
これらの側部オリフィスまたは側部スロットの形状は、以下に説明されるように、操作サイクルの間の液体の流量の変動に従ってその形状を調節するように検討される。
【0079】
側部スロットの場合、前記スロットの形状は、長方形状またはに上方または下方に向く三角形の頂点を有する三角形状であり得る。
【0080】
スロットの高さについての条件を満足する限り、あらゆる形状のスロットが可能である。それは、好ましくは、トレイのベース平板の上方の少なくとも50mmの高さ(h)で始まるべきであり、好ましくは、ろ過床の上部レベルの上方の少なくとも20mmの高さ(h’)に延びる。
【0081】
ガス/液体流の分配機能は、閉塞の進行に応じて維持される。一連の煙突体の全体が常時用いられ、トレイ上に確立される液体レベルによって本質的に左右される液体流量が煙突間で概ね同じままであるからである。それ故に、ろ過トレイのベース平板上に所定の液体レベルを確立および維持することの重要性が理解されるだろう。
【0082】
さらに、ろ過床の存在は、ガスと液体の間の界面の揺らぎを調整することによって、この液体レベルを安定化させることに寄与する。
【0083】
それ故に、液体の分配は、ろ過床の耐用期間を通してコントロール下のままであり、煙突体の長さ全体に沿って分布する側部オリフィスまたは側部スロットの漸進的な使用は、ろ過床が完全に飽和するまで、装置が中断させられなければならないことを意味する圧力勾配が大きくなることなく、ろ過床が用いられることを可能にする。
【0084】
本発明の装置の詳細な説明は、図1を活用して提示される。図1は、ベース平板(11)によってろ過分配器トレイが構成される実施形態に関する。ベース平板(11)は、粒状ろ過床(2)を支持し、この粒状ろ過床(2)は、図1の場合3層を含んでいる。
【0085】
大多数の層が好ましくは可能であり、依然として本発明の範囲に含まれることが想起されることになる。
【0086】
ろ過分配器トレイは、下降並流でガス(G)および液体(L)を供給される反応器の上部部分に位置する。
【0087】
ろ過分配器トレイは、触媒床(10)の上流に位置し、触媒床(10)では、反応器の頂部に導入されたガス(G)および液(L)相を用いる触媒反応が起こる。
【0088】
ろ過分配器トレイは、ベース平板(11)によって構成され、このベース平板(11)上には、側部開口(4)を備えた煙突体(3)が固定される。
【0089】
図1の場合、側部開口(4)は、長手方向スロットによって構成される。この長手方向スロットは、長方形の形状であるが、それらは、同様に、非長方形状、例えば、三角形状のスロットによって、または、煙突体(3)の高さの全体にわたって種々のレベルに分布する任意形状の一連のオリフィスによって構成され得る。
【0090】
煙突体(3)の密度は、面積(m)当たり10〜150、好ましくは面積(m)当たり30〜100である。ベース平板(11)上の煙突体(3)の分布は規則的であり、正方形または三角形のパターンであり得る。
【0091】
ろ過床(2)を構成する粒子の形状は、不純物の堆積を促進すると共に、最大量の不純物を捕捉し、かつ、フィルタの耐用期間を増加させるための十分な細孔容積を維持する大きな面積を創り出すように規定される。
【0092】
サイクルの開始時に、液体レベルは、ベース平板(11)の上方に確立され、液体流は、トレイのベース平板(11)上に位置するオリフィス(12)を通じて反応器の断面全体にわたって分配させられる。
【0093】
オリフィスのないベース平板も可能であり、本発明の範囲に含まれるが、好ましくは、ベース平板はオリフィスを備え、この場合、トレイのベース平板(11)上に位置するオリフィスの密度は、一般的に、面積(m)当たり少なくとも100オリフィスに等しいことが想起されるだろう。
【0094】
ろ過床(2)が閉塞状態になると、トレイのベース平板(11)上方の液体レベルは高くなり、液体の部分が、煙突体(3)の長方形状のスロット(4)を通じて流れ始める。
【0095】
閉塞が進行するにつれ、トレイのベース平板(11)上方の液体レベルが上がる。
【0096】
ろ過床が完全に閉塞した場合、液体は、側部スロット(4)を通じて、ろ過床(2)の上部レベルの上方に位置するその部分に流れる。
【0097】
全ての場合において、ガスは、煙突体(3)を通じて流れ、主として、上部開口(6)を介して導入される。上部開口(6)は、場合によっては、前記上部開口(6)を介して液体が導入されることを防止するためにキャップ(7)を備える。
【0098】
円形の障壁(8)は、煙突体(3)とろ過床(2)との間に空洞容積を取っておくように、煙突体(3)を取り囲み、その結果、ろ過床(2)の粒子は、煙突体(3)に沿って位置する側部スロット(4)を遮らない。
【0099】
それ故に、障壁(8)の網目サイズは、分配器トレイのろ過床(2)の粒子の最小径より小さいことになる。
【0100】
(実施例)
以下の実施例は、時間の関数としての線形堆積に対応する粒子の堆積についての動態方程式を用いるシミュレーションから引き出される。
【0101】
反応器は、分配器トレイおよび触媒床を含めて1メートルの直径および5メートルの全高を有していた。触媒床は、選択的水素化を行うための従来からの触媒の粒子からなっていた。それは、Niをアルミナ担体上に担持させられて含有する触媒であった。
【0102】
分配器トレイの下流に位置する触媒床を形成する触媒の粒子サイズは2mmであった。
【0103】
反応器には、液体部分およびガス部分が供給された。
【0104】
液体は、熱分解ガソリンであって、標準状態下に50〜280℃の沸点(120℃の平均沸点)を有するものによって構成された。ガス相は、90モル%が水素からなっており、残部は、本質的には、メタンであった。
【0105】
ろ過分配器トレイは、50mmの直径および650mmの高さを有する7個の煙突体を有しており、各煙突体は、400mm(スロットの高さ)×5mm(スロットの幅)の寸法の長方形状の長手方向スロットを備えていた。
【0106】
スロットの下端は、トレイのベース平板の上方h=50mmで始まっていた。ろ過床は、底部から頂部に向けて1、2、3、4で示される同一の厚さの4層からなっていた。粒子はAXENS社によって販売される不活性アルミナ粒子であった。
【0107】
粒子のサイズの特徴および各層の空隙率は、下記表1に与えられる。
【0108】
【表1】

【0109】
反応器の操作条件下のガスおよび液体の特性は、下記表2に与えられる。
【0110】
【表2】

【0111】
図2は、
・曲線(A)によって表されるろ過床上に堆積した不純物の量;この曲線は、動力学的堆積式を用いて得られた;
・曲線(B)によって表されるろ過床の不存在下での触媒床を通して測定された圧力降下
・曲線(C)によって表される本発明のろ過床の存在下での触媒床を通して測定される圧力降下
の経時変化を示す。
【0112】
曲線(B)および(C)は、時間に対してシフトされてほぼ平行である。
【0113】
この時間のシフトは、ろ過床の段階的な閉塞に対応する。
【0114】
閉塞期間は、時間t0から時間tf(曲線(A)の平坦部によって印が付けられるろ過床の飽和に対応する)に及ぶ。
【0115】
時間tf時に、曲線(A)は、その平坦部分に達し、時間tf以降では、液体仕込原料に含まれる不純物は、もはや、ろ過床によっては保持されない;
・ろ過床がないトレイ(従来技術)により、触媒床を通した圧力降下は、時間tbから急激に、反応器によって許容され得る圧力降下の限界値にまで大きくなる;
・本発明によるろ過床を有するろ過トレイにより、触媒床を通した圧力降下は、時間tbに対して明らかにシフトした時間tcから急激に大きくなる;このtc−tbのシフトは、本発明のトレイによって提供される向上を定量化した;tc−tbに対応する全体的な補足期間の間、触媒床を通じた圧力降下は、実際に一定であり、サイクルの開始時t0の値と同じままであるからである。
【0116】
本発明のトレイは、それ故に、tc−tbに相当する期間まで耐用期間を延ばすことができる。
【0117】
本発明の場合、前記延長は、ろ過床がない分配器トレイによるサイクルタイムと比較して80%である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、本発明のろ過分配器トレイであって、ガス部分および液体部分を有する仕込原料を提供される触媒床の上流に配置されるトレイの図を示す。
【図2】図2は、堆積した不純物の量(曲線A)、ろ過床なしの触媒床を通じた圧力降下(曲線B)および本発明のトレイを有する、すなわち、ろ過床を備えた触媒床を通じた圧力降下(曲線C)の、時間の関数としての変化の曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの固定式触媒床を含む反応器への供給物を構成するガス相および液相をろ過および分配するための装置であり、ガスおよび液体の下降並流様式で機能し、液相は、閉塞性粒子を含有する、装置であって、該固定式触媒床の上流に位置するトレイを含み、該トレイは実質的に水平なベース平板によって構成され、該ベース平板は反応器の壁に連結され、該ベース基板には、実質的に垂直な煙突体が固定され、該煙突体は、ガス流入を可能にするように上端において開口しており、ガス−液体混合物を下流の触媒床に供給するためにガス−液体混合物を排出するように下端において開口しており、該煙突体は、液体を流入させるために連続的側部スロットまたは側部オリフィスによって高さの一部分にわたって孔があけられ、該トレイは、煙突体を取り囲んでいるろ過床を支持し、該ろ過床は、触媒床の粒子のサイズ以下のサイズを有する粒子の少なくとも1つの層によって構成される、装置。
【請求項2】
ろ過床は、少なくとも2つの粒子層によって構成され、所与の層の粒子サイズは、直上層の粒子サイズより小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
煙突体の密度は、床の断面面積(m)当たり10〜150個、好ましくは床の断面面積(m)当たり30〜100個である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
煙突体の側部スロットまたは側部オリフィスは、トレイのベース平板の少なくとも50mm上方に位置する下部分からろ過床の上部レベルの多くとも20mm上方に位置する上部分にまで延びる、請求項1〜3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項5】
ろ過床の全高は、200〜1500mmである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の装置。
【請求項6】
トレイの煙突体は、少なくとも30mmの高さ(H’)だけろ過床の上部レベルを超える、請求項1〜5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項7】
ろ過床の上層の粒子サイズは5〜30mmであり、ろ過床の下層の粒子サイズは2〜10mmである、請求項1〜6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
ろ過床を構成する層の少なくとも1つは、触媒床において起こる化学反応の意味で活性である粒子により形成される、請求項1〜7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
ろ過床は、35〜50%の空隙率を有する構造化充てん層からなる、請求項1〜5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項10】
各煙突体は、5〜20mmの距離で、これを取り囲むろ過床から分けられている、請求項1〜9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
ろ過床の定期的な取替は、少なくとも6月の周期で行われる、請求項1〜10のいずれか1つに記載の装置。
【請求項12】
ろ過分配器トレイのベース平板は、反応器の断面面積(m)当たり100超のオリフィスの密度でオリフィスを備えている、請求項1〜11のいずれか1つに記載の装置。
【請求項13】
水素化処理反応器、選択的水素化反応器、または残渣または3〜50個、好ましくは5〜30個の多数の炭素原子を有する炭化水素留分の転化用反応器における請求項1に記載のろ過および分配のための装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−505819(P2009−505819A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527484(P2008−527484)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001978
【国際公開番号】WO2007/023225
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(500393413)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (32)
【Fターム(参考)】