説明

ガスケット、シーリング構造および無線通信装置

【課題】経年劣化に伴いガスケットの断面が変形することで円形を保てず反発力が弱くなったとしても、ガスケットの断面を円形に維持または復元でき、再利用が可能となるだけでなく、必要に応じて反発力も調整することができるガスケットを提供する。
【解決手段】ガスケットは、中空部30を含み、該中空部30にゲル状物質を充填可能な弾性を有する環状のOリング部材20と、Oリング部材20の表面の一部に孔を有し、中空部30に該孔を介してゲル状物質を注入可能な充填部40と、充填部40から中空部30にゲル状物質を注入後、充填部40を密閉する止め具50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケット、シーリング構造および無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基地局装置等の電子装置は、屋外に配置される。そして、これらの電子装置は、防水・防塵のため、目地にシーリング構造が設けた筐体が用いられる。例えば、オーリングを用いるシーリング構造では、該オーリングを一定量潰して気密性を維持しており、該オーリングによる反発力は筐体のネジ締めにより吸収されている。
【0003】
このオーリングは、断面がO形(円形)の環状をした密封用機械部品であり、材質にはゴムが使われることが多い。そのため、ゴムの経年劣化に伴いオーリングの反発力が弱くなり、気密性を維持できないという問題がある。
【0004】
この問題に関し、メタルOリング部材の中空部に膨張黒鉛を高密度で充填する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。そして、膨張黒鉛における、圧縮して高密度にすることでゴム弾性が生じ、これが低温、高温においても保持されるという特性により、気密性を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−98064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述する特許文献1では、メタルOリング部材に膨張黒鉛を注入する際、溶接加工を施す必要がある。そのため、膨張黒鉛の注入時におけるゴム弾性がそのまま維持され、ゴム弾性を調節することが困難であった。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、必要に応じて反発力を調整することができるガスケット、シーリング構造および無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るガスケットは、中空部を含み、該中空部にゲル状物質を充填可能な弾性を有する環状の環状部材と、前記部材の表面の一部に孔を有し、前記中空部に該孔を介して前記ゲル状物質を注入可能な充填部と、前記充填部から前記中空部に前記ゲル状物質を注入後、前記充填部を密閉する止め具と、を備える。
【0009】
本発明に係るガスケットにおいて、前記環状部材は、樹脂材料からなる。
【0010】
本発明に係るガスケットにおいて、前記ゲル状物質は、液状のシリコーンからなる。
【0011】
本発明に係るシーリング構造は、中空部を含み、該中空部にゲル状物質を充填可能な弾性を有する環状の環状部材と、前記環状部材の表面の一部に孔を有し、前記中空部に該孔を介して前記ゲル状物質を注入可能な充填部と、前記充填部から前記中空部に前記ゲル状物資を注入後、前記充填部を密閉する止め具と、を含むガスケットと、 環状の凹部を有し、該凹部に前記ガスケットを嵌め込んで装着可能な第1の部材と、前記第1の部材に前記ガスケットを装着後、前記ガスケットを押圧する第2の部材と、を備える。
【0012】
本発明に係る無線通信装置は、中空部を含み、該中空部にゲル状物質を充填可能な弾性を有する環状の環状部材と、前記環状部材の表面の一部に孔を有し、前記中空部に該孔を介して前記ゲル状物質を注入可能な充填部と、前記充填部から前記中空部に前記ゲル状物資を注入後、前記充填部を密閉する止め具と、を含むガスケットと、環状の凹部を有し、該凹部に前記ガスケットを嵌め込んで装着可能な第1の部材と、前記第1の部材に前記ガスケットを装着後、前記ガスケットを押圧する第2の部材と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、経年劣化に伴いガスケットの断面が変形することで円形を保てず反発力が弱くなったとしても、ガスケットの断面を円形に維持または復元でき、再利用が可能となるだけでなく、必要に応じて反発力も調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係るガスケットを採用する無線通信装置である基地局装置の筐体を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態に係るガスケットを採用する無線通信装置である基地局装置の筐体の構成を示す斜視図である。
【図3】本実施の形態に係るガスケットの構成を示す斜視図である。
【図4】図1におけるIII−III線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施の形態に係るガスケットを採用したシーリング構造を有する無線通信装置である基地局装置の筐体100を示す斜視図である。図2は、本実施の形態に係るガスケットを採用する無線通信装置である基地局装置の筐体100の構成を示す斜視図である。図3は、本実施の形態に係るガスケット10を示す図である。図4は、図1におけるIII−III線断面図である。
【0016】
図1に示すように、基地局装置の筐体100は、蓋部(第2の部材)102、本体部(第1の部材)104を含み、さらにガスケットとしてOリング10を含む。
【0017】
そして、図2(A)に示すように、筐体100は、環状の底部120を有する凹状の蓋部102と、環状の凹部140と該凹部140における内周面の一部に切欠部142を有する本体部104と、を含む。
【0018】
蓋部102および本体部104は、例えば、プラスチックからなる。本体部104の凹部140には、Oリング10が嵌入される。そして、蓋部102と本体部104とがネジ締め(図示しない)され、Oリング10を介して組み合わされることで、密閉された筐体100を構成する。
【0019】
Oリング10はシリコーン(ケイ素樹脂)を成型することによって製造されており、弾性および伸縮性をもつ。そして、図3に示すように、Oリング10は、環状のOリング部材20(環状部材)、中空部30、充填部40、および止め具50を含む。
【0020】
Oリング10は、環状のOリング部材20における中空部分である中空部30に、充填部40から液状のシリコーンが充填される。充填部40は、Oリング部材20の内周における表面の一部が突出するとともに中空部30とつながる孔を有し、この孔から中空部30にゲル状物質、例えば、従来のシリコーンにより成型されるOリングと同様の難燃性および耐環境性を有する液状のシリコーンが充填可能となっている。液状のシリコーンが中空部30に充填された後、充填部40は止め具50で狭圧される。充填部40を止め具50で狭圧する際、充填部40からOリング部材20の方向に止め具50を摺動させて圧力をかけ、Oリング部材20の断面の形状を円形にさせる。これにより、Oリング10が経年劣化により、Oリング部材20における断面の形状が円形でなくなったとしても、止め具50を取り外して充填部40から液状のシリコーンを中空部30に充填し、その後、止め具50で狭圧することで、Oリング10の断面を円形に維持または復元でき、Oリング10の再利用が可能となる。
【0021】
そして、図2(B)に示すように、Oリング10は、本体部104の凹部140に、充填部40が切欠部142から嵌通するよう嵌入される。Oリング10は、Oリング10を伸ばせば凹部140に嵌め込まれる程度に、凹部140の内周より短い。また、本体部104の凹部140の垂直方向の長さは、Oリング10のOリング部材20における断面の直径より短い。これにより、図4に示すように、蓋部102と本体部104とがネジ締めされる場合に、Oリング10は、底部120により押圧され変形することで、密閉された筐体100を構成する。
【0022】
次に、本発明に係るOリング10を採用する筐体100のシーリング構造を構成する手順を説明する。まず、Oリング10を本体104へ嵌入する前に、充填部40から液状のシリコーンが充填される。そして、液状のシリコーンの充填後、止め具50を摺動させてOリング部材20方向に圧力をかけつつ充填部40を狭圧し、Oリング10のOリング部材20の断面の形状を円形にさせる。
【0023】
そして、Oリング10が凹部140に嵌入される。このとき、Oリング10の内周は凹部140の内周よりも短いため、Oリング10は一旦伸ばされ、元の長さに戻されながら凹部140を囲むように嵌入される。
【0024】
続いて、蓋部102と本体部104とがネジ締めされる。このとき、Oリング10は、底部120により押圧されて潰され、Oリング10自身の反発力により、底部120に密着し、筐体100は密閉される。
【0025】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0026】
例えば、上記実施の形態において、Oリング10の材質はシリコーンとしたが、弾性を有すれば他の材質でもよく、例えばゴム(エストラマー等)や、発泡体等でもよい。蓋部102および本体部104の材質はプラスチックとしたが、Oリング10を変形しうる強度を有すれば他の材質でもよく、例えばステンレス等の金属でもよい。
【0027】
上記実施の形態において、本発明に係る筐体を有する無線通信装置として、基地局装置の例を示したが、他の通信装置に応用してもよく、さらに他の電子機器に用いてもよい。また、食品容器など密閉が求められる他の容器に応用してもよい。
【符号の説明】
【0028】
10 Oリング、20 Oリング部材、30 中空部、40 充填部、50 止め具、100 筐体、102 蓋部、104 本体部、120 底部、140 凹部、142 切欠部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を含み、該中空部にゲル状物質を充填可能な弾性を有する環状の環状部材と、
前記部材の表面の一部に孔を有し、前記中空部に該孔を介して前記ゲル状物質を注入可能な充填部と、
前記充填部から前記中空部に前記ゲル状物質を注入後、前記充填部を密閉する止め具と、
を備えることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記環状部材は、樹脂材料からなることを特徴とする請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記ゲル状物質は、液状のシリコーンからなることを特徴とする請求項1または2に記載のガスケット。
【請求項4】
中空部を含み、該中空部にゲル状物質を充填可能な弾性を有する環状の環状部材と、前記環状部材の表面の一部に孔を有し、前記中空部に該孔を介して前記ゲル状物質を注入可能な充填部と、前記充填部から前記中空部に前記ゲル状物資を注入後、前記充填部を密閉する止め具と、を含むガスケットと、
環状の凹部を有し、該凹部に前記ガスケットを嵌め込んで装着可能な第1の部材と、
前記第1の部材に前記ガスケットを装着後、前記ガスケットを押圧する第2の部材と、
を備えることを特徴とするシーリング構造。
【請求項5】
中空部を含み、該中空部にゲル状物質を充填可能な弾性を有する環状の環状部材と、前記環状部材の表面の一部に孔を有し、前記中空部に該孔を介して前記ゲル状物質を注入可能な充填部と、前記充填部から前記中空部に前記ゲル状物資を注入後、前記充填部を密閉する止め具と、を含むガスケットと、
環状の凹部を有し、該凹部に前記ガスケットを嵌め込んで装着可能な第1の部材と、
前記第1の部材に前記ガスケットを装着後、前記ガスケットを押圧する第2の部材と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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