説明

ガスケットフィルタ

【課題】 付着した水分がとれやすくしかも表面処理が施しやすいガスケットフィルタを提供する。
【解決手段】 ガスケットフィルタは、円環状のガスケット本体62と、これに一体的に設けられたフィルタ63とを備えており、フィルタ63が、金属製円板状体64に多数の孔45があけられることにより形成されている。フィルター43の孔45がエッチングにより形成されている。フィルタ63が、円板部64と、これの周縁から径方向に突出した少なくとも1つの突出部65とを有しており、ガスケット本体62に、フィルタ63の円板部64を納める凹所66と、凹所66周縁部に沿って設けられた環状突起67と、環状突起67に設けられてフィルタ63の突出部65を納める切欠き部68とが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2つの継手部材の突き合わせ端面間に配置されて、シール性を確保するとともに、フィルタ機能をも果たすガスケットフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
弁部分から流体が洩れる主原因となるごみの進入を防止するため、また、オリフィス等単一の細孔が流路の場合に、細孔の目詰りを防止するため、その手前にガスケットフィルタが設置されている。
【0003】
従来、ガスケットフィルタとしては、金属繊維を焼結することにより形成されたものや金網を積層することにより形成されたものが知られている。また、特許文献1には、ガスケット本体が、金属ではなく、ゴム製または合成樹脂製とされたガスケットフィルタが開示されている。
【特許文献1】特開平7−71761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属繊維を焼結することにより形成されたガスケットフィルタや金網を積層することにより形成されたガスケットフィルタは、流される流体にとって不純物となる水分などが排除されなければならない半導体製造装置において使用される場合に、不純物が付着し得る表面積が大きく、フィルタ内部の微小空間に捕らえられた水分が抜けにくいという問題があった。また、ガスケットフィルタに表面処理を施して、耐食性や水分除去性を向上させる必要があるが、従来のものは表面処理が施しにくいという問題があった。また、ガスケット本体が、ゴム製または合成樹脂製の場合には、ガスケット本体自体が汚染の原因になる可能性がある。ガスケット本体を金属製とした場合には、ガスケット本体とフィルタとをどのように結合するかが課題となる。
【0005】
この発明の目的は、ガスケット本体が金属製であっても、付着した水分がとれやすくしかも表面処理が施しやすいガスケットフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によるガスケットフィルタは、円環状のガスケット本体と、これに一体的に設けられたフィルタとを備えており、フィルタが、金属製円板状体に多数の孔があけられることにより形成されているものである。
【0007】
この発明のガスケットフィルタによると、フィルタが金属製円板状体に多数の孔をあけたものであるから、表面処理が簡単にでき、しかも、従来のものに比べて、不純物が付着し得る表面積が小さくなりかつフィルタ内部に微小空間が存在しないので、付着した水分がとれやすくなる。また、開口面積を求めることが容易であるので、これに基づいて簡単に圧力損失を予測することができ、両端面が共に平坦であるので、シール性向上のための鏡面研磨が容易にできる。しかも、配管継手のガスケットの代わりに設置することができるので、フィルタのスペースが省略でき、また、構造的にシンプルであり、製造コストを安くすることができる。
【0008】
金属製円板状体に孔をあけるには、機械加工、エッチング、レーザー加工、放電加工、プレス加工などによることが可能である。金属製円板状体の厚さが20〜100μmであり、孔の径がこの厚さと同程度かこれより大きいときには、エッチング加工が好ましい。
【0009】
ガスケット本体とフィルタとは、溶接により一体とされることが好ましい。溶接方法としては、抵抗溶接、YAGレーザー溶接などが可能である。フィルタの厚みが50μm以上の場合には、上記のどの溶接方法も可能であるが、フィルタの厚みが30μm程度の場合には、材料の表面張力により直接レーザー溶接はできないため、抵抗溶接とすればよい。また、フィルタの厚みが30μm程度の場合には、以下の1から3のような構成にすることもできる。
【0010】
1.ガスケット本体の一端面に、フィルタの厚みよりも深いフィルタ収納凹所が設けられて、この底面にフィルタが載せられるとともに、フィルタ収納凹所の周面に沿うように挿入された押圧リングが、フィルタの周縁部をフィルタ収納凹所の底面に密接させており、ガスケット本体と押圧リングとが溶接されている。このようにすると、フィルタがガスケット本体と押圧リングとによって挟持されるので、ガスケット本体と押圧リングとを溶接すればよく、この溶接は簡単に行える。
【0011】
2.フィルタが、円板部と、これの周縁から径方向に突出した少なくとも1つの突出部とを有しており、ガスケット本体に、フィルタの円板部を納める凹所と、凹所周縁部に沿って設けられた環状突起と、環状突起に設けられてフィルタの突出部を納める切欠き部とが形成されている。このようにすると、環状突起の切欠き部とフィルタの突出部とが嵌まり合うことにより、位置決めがなされてガスケット本体に対するフィルタの移動が抑えられる。この場合に、フィルタがガスケット本体内にプレスで圧入されることにより、フィルタの突出部がかしめられてガスケット本体の切欠き部に納められており、フィルタとガスケット本体とが溶接されていることが好ましい。このようにすると、かしめが仮付けの機能を果たすため、フィルタとガスケット本体との溶接が容易にできる。なお、エッチングにより孔があけられたフィルタは、1枚のシートに多数枚のフィルタが配列された状態で供給され、これをプレスによって1枚ずつ切断するものであることから、フィルタをガスケット本体内にプレスで圧入するさいに、プレスによる切断を合わせて行うことにより、フィルタを切断しておいてこれをガスケット本体にセットする手間が省け、しかも、ガスケット本体に対するフィルタの位置決めもより正確になる。
【0012】
3.ガスケット本体が、環状の第1半体と環状の第2半体とよりなり、第1半体と第2半体とがフィルタの周縁部を介して突き合わされている。すなわち、ガスケットフィルタが介在される2つの部材同士が互いに引き寄せられるのに伴って、両半体同士が互いに引き寄せられることにより、フィルタが両半体に挟持される構成とし、これにより、溶接を行うことなく、ガスケット本体とフィルタとを一体的に接合することができる。この場合に、第1半体および第2半体の少なくとも一方の突き合わせ面に、フィルタ押さえ用環状突起が設けられていることが好ましい。また、第1半体の突き合わせ面と第2半体の突き合わせ面との間に、流体洩れ確認用のリークポートが形成されているようにすることもできる。
【0013】
上記のほかに、この発明のガスケットフィルタは、円板状体の周縁部を除く部分にレーザー加工により多数の孔があけられることにより、周縁部がガスケット本体とされるとともに、多数の孔があけられた部分がフィルタとされている構成としてもよい。この場合に、レーザー加工による孔が、円板状体の一端面側に開口した有底孔とされ、円板状体の他端面側が削られることにより、フィルタの孔が他端面側にも開口させられている構成としてもよい。
【0014】
上記ガスケットフィルタには、表面処理が施されていることが好ましく、表面処理としては、メッキ、電解研磨、クロム不動態処理、フッ化不動態処理などが適している。下地メッキとしてNi−Pの無電解メッキをしてからフッ化不動態処理をして、表面にNiFを形成することも可能である。また、Ni−Pの無電解メッキをしてから上にクロムメッキをして、クロム不動態処理の組合せにより耐食性を向上させるということも可能である。そして、孔を大きめにあけておき、メッキにより所要の大きさとすることが可能であり、メッキの厚みにより表面処理後の孔の大きさをコントロールすることができる。この場合に、クロムは0.5μm以上の厚さになるとクラックが入るため、Ni−Pの下地メッキにより孔径を調整してから、0.1μm程度のクロムメッキをしてクロム不動態処理することが好ましい。
【0015】
上記ガスケットフィルタを備えた流体制御器であって、入口通路および出口通路が形成されたブロック状本体に、流体の圧力および流量のいずれかを検出するセンサと、センサからの信号に基づいて流体の流路の開閉度を制御するアクチュエータとが取り付けられ、本体の入口通路に通じる導入通路を有する通路ブロックが本体に突き合わせられており、本体の入口通路と通路ブロックの導入通路との突き合わせ部に上記のガスケットフィルタが装着されているものは、半導体製造用などの流体制御装置を構成する部材として有用である。
【0016】
また、金属製円板状体に多数の孔がエッチングによりあけられることにより形成されているフィルタは、上記ガスケットフィルタを構成するものとして有用である。
【発明の効果】
【0017】
この発明のガスケットフィルタによると、ガスケット本体が金属製であっても、ガスケット本体とフィルタとの一体化が容易であり、しかも、付着した水分がとれやすくしかも表面処理が施しやすいものが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。以下の説明において、図1の左右を左右というものとする。また、同図の紙面表側を前、紙面裏側を後というものとする。
【0019】
図1は、この発明のガスケットフィルタが使用される流体制御装置の1例を示している。この流体制御装置(1) は、半導体製造装置等において用いられるもので、マスフローコントローラ(2) と、マスフローコントローラ(2) の左方に設けられた入口側遮断開放部(3) と、マスフローコントローラ(2) の右方に設けられた出口側遮断開放部(4) とよりなる。
【0020】
マスフローコントローラ(2) の下部左面には、下面に開口する入口通路(5a)を有する直方体状左方張出ブロック(第1流体制御部材)(5) が設けられ、同右面には、下面に開口する出口通路(6a)を有する直方体状右方張出ブロック(第2流体制御部材)(6) が設けられている。両張出ブロック(5)(6)は、横からのねじによりマスフローコントローラ(2) の本体に固定されている。
【0021】
入口側遮断開放部(3) は、上段に配置された4つの流体制御部材(7)(8)(9)(10) と、下段に配置された5つの直方体状継手(11)(12)(13)(14)(15)とよりなる。
【0022】
入口側遮断開放部(3) の左端に配置された第3流体制御部材(7) は、下向きの入口通路(16a) および出口通路(16b) を有するブロック状本体(16)に一体的に設けられかつこれらの通路(16a)(16b)同士の連通を遮断開放する第1開閉弁(17)よりなる。
【0023】
入口側遮断開放部(3) の左端から2番目に配置された第4流体制御部材(8) は、下向きの入口通路(18a) および出口通路(18b) を有しかつ上面左部に傾斜面が形成されている略直方体ブロック状本体(18)と、本体(18)傾斜面に設けられかつ入口通路(18a) と出口通路(18b) との連通部に配置されて圧力を調整するプレッシャーレギュレータ(19)と、本体(18)右上面の平坦部に設けられかつ出口通路(18b) に通じる通路を介して流体圧を測定する圧力センサ(20)とよりなる。本体(18)の入口通路(18a) には、フィルター(21)が設けられている。
【0024】
入口側遮断開放部(3) の左端から3番目に配置された第5流体制御部材(9) は、1つの直方体ブロック状本体(22)に一体的に設けられた第2および第3開閉弁(23)(24)よりなる。本体(22)には、左端部に設けられた下向きの第1入口通路(22a) と、第1入口通路(22a) に第2開閉弁(23)を介して連通する右向きの出口通路(22b) と、出口通路(22b) に第3開閉弁(24)を介して連通する下向きの第2入口通路(22c) とが設けられている。
【0025】
入口側遮断開放部(3) の左端から4番目に配置された第6流体制御部材(10)は、1つの直方体通路ブロックよりなる。第6流体制御部材(10)には、一端が第5流体制御部材本体(22)の出口通路(22b) に通じ、他端が下方に開口している連通路(10a) が設けられている。
【0026】
入口側遮断開放部(3) の左端に配置された第1継手(11)には、第3流体制御部材本体(16)の入口通路(16a) に通じかつ左方に開口するL字状上流側連通路(11a) と、第3流体制御部材本体(16)の出口通路(16b) に通じかつ右方に開口するL字状下流側連通路(11b) とが設けられている。第1継手(11)の左面には、上流側連通路(11a) に通じる第1入口管接続部(25)が設けられている。
【0027】
上流側遮断開放部(3) の左端から2番目に配置された第2継手(12)には、第1継手(11)の出口通路(11b) と第4流体制御部材本体(18)の入口通路(18a) とを連通するL字状上流側連通路(12a) と、一端が第4流体制御部材本体(18)の出口通路(18b) に通じかつ他端が右方に開口するL字状下流側連通路(12b) とが設けられている。
【0028】
上流側遮断開放部(3) の左端から3番目に配置された第3継手(13)には、第2継手(12)の出口通路(12b) と第5流体制御部材本体(22)の第1入口通路(22a) とを連通するL字状連通路(13a) が設けられている。
【0029】
上流側遮断開放部(3) の左端から4番目に配置された第4継手(14)には、一端が第5流体制御部材本体(22)の第2入口通路(22c) に通じ、他端が後方に開口する連通路(14a) が設けられている。第4継手(14)の後面には、連通路(14a) に通じる第2入口管接続部(図示略)が設けられている。
【0030】
上流側遮断開放部(3) の左端から5番目に配置された第5継手(15)には、一端が第6流体制御部材(10)の連通路(10a) 出口に通じ、他端がマスフローコントローラ(2) の左方張出ブロック(5) の入口通路(5a)に通じているV字状連通路(15a) が設けられている。
【0031】
下流側遮断開放部(4) は、上段に配置された第7流体制御部材(26)と、下段に配置された第6および第7の直方体状継手(27)(28)とよりなる。第7流体制御部材(26)は、下向きの入口通路(29a) および出口通路(29b) を有するブロック状本体(29)に一体的に設けられかつこれらの通路(29a)(29b)同士の連通を遮断開放する第4開閉弁(30)よりなる。下流側遮断開放部(4) の左方に配置された第6継手(27)には、一端がマスフローコントローラ(2) の右方張出ブロック(6) の出口通路(6a)に通じ、他端が第7流体制御部材本体(29)の入口通路(29a) に通じているV字状連通路(27a) が設けられている。下流側遮断開放部(4) の右方に配置された第7継手(28)には、一端が第7流体制御部材本体(29)の出口通路(29b) に通じ、他端が後方に開口する連通路(28a) が設けられている。第7継手(28)の後面には、連通路(28a) に通じる出口管接続部(図示略)が設けられている。
【0032】
流体制御部材同士(5)(6)(7)(8)(9)(10)(26) の連通部、継手(11)(12)(13)(14)(15)同士の連通部および流体制御部材(5)(6)(7)(8)(9)(10)(26) と継手(11)(12)(13)(14)(15)との連通部には、それぞれシール部(33)が設けられている。
【0033】
流体制御部材(5)(6)(7)(8)(9)(10)(26) の下面はすべて面一とされるとともに、各継手(11)(12)(13)(14)(15)の上面同士も面一とされ、継手(11)(12)(13)(14)(15)(27)(28)が基板(31)に固定され、各流体制御部材(5)(6)(7)(8)(9)(10)(26) が、上方からのねじ(32)により継手(11)(12)(13)(14)(15)(27)(28)に固定されている。
【0034】
こうして、第1継手(11)の第1入口管接続部(25)および第4継手(14)の第2入口管接続部からそれぞれ異なる流体が導入され、これらの流体が適宜切り換えらてマスフローコントローラ(2) を経て第7継手(28)の出口管接続部から排出される流体制御装置(1) が構成されている。
【0035】
上記流体制御装置(1) において、各シール部(33)にはガスケットが配置されるが、マスフローコントローラ(2) などは目詰りを起こしやすい流体制御器であるため、これの上流側では、必要に応じて通常のガスケットをこの発明のガスケットフィルタ(41)(51)(61)(81)(91)(92)に置き換え、目詰りの防止が図られる。
【0036】
この発明の第1実施形態のガスケットフィルタ(41)は、図2に示すように、円環状のガスケット本体(42)と、これに一体的に設けられたフィルタ(43)とよりなる。
【0037】
フィルタ(43)は、図3に示すように、金属製の薄い円板(44)の周縁部を除く部分に多数の孔(45)がエッチングであけられることにより形成されている。エッチング方法としては、フィルタ(43)の材質と孔(45)の径に応じて、両面エッチングまたは片面エッチングが適宜採用される。両面エッチングの場合、各孔(45)の形状は、図3(b)に示すように、円板(44)の両端面で径が最も大きく、円板(44)の厚みの中央で径が最小となっている。片面エッチングの場合は、図示省略するが、各孔(45)の形状は、表面で径が最も大きく裏面で径が最小となる。
【0038】
ガスケット本体(42)の一端面には、ガスケット本体(42)と同軸の環状の凹所(46)が設けられており、この凹所(46)の底面に、これより径が小さいフィルタ収納凹所(47)が設けられている。フィルタ収納凹所(47)は、フィルタ(43)の厚みにほぼ等しい深さとフィルタ(43)の外径にほぼ等しい径を有しており、フィルタ(43)は、このフィルタ収納凹所(47)に嵌め入れられて、ガスケット本体(42)に溶接されている。
【0039】
溶接方法としては、抵抗溶接やYAGレーザー溶接などが可能である。フィルタ(43)の厚みが50μm以上の場合には、これらのうちのどの溶接方法も可能であるが、フィルタ(43)の厚みが30μm程度の場合には、材料の表面張力により直接レーザー溶接はできないため、抵抗溶接が好ましい。
【0040】
フィルタ(43)の厚みが30μm程度であり、材料の表面張力によって直接溶接が困難な場合において、ガスケット本体(52)(62)(82)とフィルタ(43)(63)とを一体的に接合する形態を以下に示す。
【0041】
図4に示す第2実施形態のガスケットフィルタ(51)は、押圧リング(55)を用いて溶接するもので、ガスケット本体(52)の一端面には、ガスケット本体(52)と同軸の環状の凹所(53)が設けられており、この凹所(53)の底面に、これより径が小さいフィルタ収納凹所(54)が設けられている。フィルタ収納凹所(54)は、フィルタ(43)の厚みよりも深くかつフィルタ(43)の外径にほぼ等しい径を有しており、この底面にフィルタ(43)が載せられている。そして、フィルタ収納凹所(54)の径にほぼ等しい外径を有する押圧リング(55)が、フィルタ収納凹所(54)の周面に沿うように挿入されて、フィルタ(43)の周縁部をフィルタ収納凹所(54)の底面に密接させている。溶接は、ガスケット本体(52)と押圧リング(55)との間で行われている。
【0042】
図5および図6に示す第3実施形態のガスケットフィルタ(61)は、フィルタ(63)をプレスでかしめておいてから溶接したもので、フィルタ(63)は、図3に示したフィルタ(43)と同一形状の多数の孔(45)付き円板部(64)と、これの周縁から径方向に突出した2つの突出部(65)とよりなる。ガスケット本体(62)には、フィルタ(63)の円板部(64)を納める凹所(66)と、凹所(66)周縁部に沿って設けられた環状突起(67)と、環状突起(67)に設けられてフィルタ(63)の突出部(65)を納める切欠き部(68)とが形成されている。
【0043】
このガスケットフィルタ(61)のフィルタ(63)は、1枚のシートに多数枚のフィルタ(63)が配置された状態で製造されるものであり、フィルタ(63)の突出部(65)がフィルタ(63)同士を連結させておくブリッジ部となっている。したがって、このブリッジ部を含むようにしてフィルタ(63)を1枚ずつ切断した後で、フィルタ(63)をガスケット本体(62)に載せてプレスによりかしめることにより、フィルタ(63)が容易には離れないようにガスケット本体(62)に取り付けられる。したがって、仮付け溶接を省略することができ、レーザー溶接によりこのガスケットフィルタ(61)を得ることができる。また、図7に示すように、1枚のシート(69)に多数枚のフィルタ(63)が配置された状態でガスケット本体(62)に載せて、プレスにより1枚ずつの切断とかしめとを同時に行うようにしてもよい。この場合に、プレス金型(71)は、内側の切断ポンチ(72)と、ばね(74)により切断ポンチ(72)よりも下方に突出させられた外側の曲げポンチ(73)とを備えた二重構造とされる。そして、ガスケット本体(62)の環状突起(67)の切欠き部(68)にフィルタ(63)の突出部(65)を合わせると、エッチング時に形成された抜き代部分がガスケット本体(62)の環状突起(67)に合わせられ、これにより、シート(69)がガスケット本体(62)に保持される。この状態で、プレスを作動させると、まず、切断ポンチ(72)によりシート(69)からフィルタ(63)が切り離されてガスケット本体(62)に受け止められ、次いで、曲げポンチ(73)によりフィルタ(63)の突出部(63)がかしめられる。これにより、フィルタ(63)が容易には離れないようにガスケット本体(62)に取り付けられ、この状態でレーザー溶接することにより同様のガスケットフィルタ(61)が得られる。図7に示した方法によると、フィルタ(63)をガスケット本体(62)に1枚ずつセットする手間が省かれ、フィルタ(63)のガスケット本体(62)に対する位置決めも精度良く行われる。
【0044】
図8に示す第4実施形態のガスケットフィルタ(81)は、溶接を不要とするもので、ガスケット本体(82)が、同図の左方に示す環状の第1半体(83)と、同図の右方に示す環状の第2半体(84)とよりなり、第1半体(83)と第2半体(84)とが図3に示したフィルタ(43)の周縁部を介して突き合わされているものである。
【0045】
第1半体(83)は、フィルタ(43)の周縁部に接している基準突き合わせ面(83a) より径方向外側にあってかつこれよりも後退した後退突き合わせ面(83b) を有している。第2半体(84)は、フィルタ(43)の周縁部に接している基準突き合わせ面(84a) より径方向外側にあってかつこれよりも突出した突出突き合わせ面(84b) を有している。第2半体(84)の基準突き合わせ面(84a) には、フィルタ押さえ用環状突起(85)が設けられている。また、後退突き合わせ面(83b) と突出突き合わせ面(84b) との間に、流体洩れ確認用のリークポート(86)が形成されている。第1半体(83)と第2半体(84)との間には、押さえ代(87)が存在しており、ガスケットフィルタ(81)が介在される2つの部材同士が互いに引き寄せられるのに伴ってこの押さえ代(87)がゼロとなり、ガスケットフィルタ(81)が2つの部材間に挟持される。
【0046】
図9(c)に示すガスケットフィルタ(91)(92)は、溶接を不要とするとともに、フィルタのエッチング加工も不要とするものである。すなわち、図9(a)に示す円板(93)の周縁部を除く部分に、上面側からレーザー加工により多数の有底孔(94)をあけて、同図(b)に示す有底孔(94)付き円板(93)を得た後、この円板(93)を外形加工することにより、周縁部がガスケット本体(95)(98)とされ、多数の孔(97)(100) があけられた部分がフィルタ(96)(99)とされたガスケットフィルタ(91)(92)を形成するものである。下面側から削る際には、(91)のガスケットのように、全面を平坦に削ってもよく、(92)のガスケットのように、ガスケット(92)の全厚みに対するフィルタ(99)の孔(100) を相対的に短くするように、下面が凹状になるように削っても良い。なお、(92)のガスケットは、外形加工を先にして、後から孔(100) を貫通状にあけるようにしてもよい。
【0047】
なお、上記第1〜第4実施形態の各ガスケットフィルタは、以下のように、流体制御器に内蔵された状態でも使用される。
【0048】
図10に示す流体制御器(101) は、入口通路(103) および出口通路(104) が形成された直方体ブロック状本体(102) に、出口通路(104) 内の流体の圧力を検出する圧力センサ(105) と、圧力センサ(105) からの信号に基づいて入口通路(103) の開閉度を制御するピアゾアクチュエータ(106) と、出口通路(104) 近くの温度を検出する温度センサ(112) とが取り付けられ、本体(102) の入口通路(103) に通じる導入通路(108) が形成された導入通路ブロック(107) が本体(102) の入口側の面に突き合わせられており、本体(102) の入口通路(103) と導入通路ブロック(107) の導入通路(108) との突き合わせ部に上記第1から第4までの実施形態のガスケットフィルタ(41)(51)(61)(81)(91)(92)のいずれかが装着されているものである。本体(102) の出口通路(104) にはオリフィス(111) が形成されており、本体(102) の出口側の面には、出口通路(104) に通じる排出通路(110) が形成された排出通路ブロック(109) が突き合わされている。
【0049】
図11に示す流体制御器(121) は、マスフローコントローラであって、入口通路(123) および出口通路(124) が形成された直方体ブロック状本体(122) に、入口通路(123) 内の流体の流量を検出する流量センサ(125) と、流量センサ(125) からの信号に基づいて出口通路(124) の開閉度を制御するピアゾアクチュエータ(126) とが取り付けられ、本体(122) の入口通路(123) に通じる導入通路(128) が形成された導入通路ブロック(127) が本体(122) の入口側の面に突き合わせられており、本体(122) の入口通路(123) と導入通路ブロック(127) の導入通路(128) との突き合わせ部に上記第1から第4までの実施形態のガスケットフィルタ(41)(51)(61)(81)(91)(92)のいずれかが装着されているものである。本体(122) の出口通路(124) にはオリフィス(131) が形成されており、本体(122) の出口側の面には、出口通路(124) に通じる排出通路(130) が形成された排出通路ブロック(129) が突き合わされている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明によるガスケットフィルタが使用される流体制御装置の1例を示す図である。
【図2】この発明によるガスケットフィルタの第1実施形態の縦断面図である。
【図3】この発明によるガスケットフィルタのフィルタを示す図であり、(a)はその正面図、(b)は孔の拡大断面図である。
【図4】この発明によるガスケットフィルタの第2実施形態の縦断面図である。
【図5】この発明によるガスケットフィルタの第3実施形態の縦断面図である。
【図6】同正面図である。
【図7】第3実施形態のガスケットフィルタを製造する装置の概略を示す縦断面図である。
【図8】この発明によるガスケットフィルタの第3実施形態の縦断面図である。
【図9】この発明によるガスケットフィルタの第4実施形態およびその製造過程を示す図である。
【図10】この発明によるガスケットフィルタを使用した流体制御器の一例を示す図である。
【図11】この発明によるガスケットフィルタを使用した流体制御器の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
(41)(51)(61)(81)(91)(92) ガスケットフィルタ
(42)(52)(62)(82)(95)(98) ガスケット本体
(43)(63)(96)(99) フィルタ
(44) 円板
(45)(97)(100) 孔
(54) フィルタ収納凹所
(55) 押圧リング
(64) 円板部
(65) 突出部
(66) 凹所
(67) 環状突起
(68) 切欠き部
(83) 第1半体
(83a)(83b) 突き合わせ面
(84) 第2半体
(84a)(84b) 突き合わせ面
(85) フィルタ押さえ用環状突起
(86) リークポート
(93) 円板状体
(94) レーザー加工による孔
(101)(121) 流体制御器
(102)(122) ブロック状本体
(103)(123) 入口通路
(104)(124) 出口通路
(105)(125) センサ
(106)(126) アクチュエータ
(107)(127) 通路ブロック
(108)(128) 導入通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のガスケット本体と、これに一体的に設けられたフィルタとを備えており、フィルタが、金属製円板状体に多数の孔があけられることにより形成されているガスケットフィルタ。
【請求項2】
フィルターの孔がエッチングにより形成されている請求項1のガスケットフィルタ。
【請求項3】
フィルタが、円板部と、これの周縁から径方向に突出した少なくとも1つの突出部とを有しており、ガスケット本体に、フィルタの円板部を納める凹所と、凹所周縁部に沿って設けられた環状突起と、環状突起に設けられてフィルタの突出部を納める切欠き部とが形成されている請求項2のガスケットフィルタ。
【請求項4】
フィルタがガスケット本体内にプレスで圧入されることにより、フィルタの突出部がかしめられてガスケット本体の切欠き部に納められており、フィルタとガスケット本体とが溶接されている請求項3のガスケットフィルタ。
【請求項5】
ガスケット本体が、環状の第1半体と環状の第2半体とよりなり、第1半体と第2半体とがフィルタの周縁部を介して突き合わされている請求項2のガスケットフィルタ。
【請求項6】
第1半体および第2半体の少なくとも一方の突き合わせ面に、フィルタ押さえ用環状突起が設けられている請求項5のガスケットフィルタ。
【請求項7】
第1半体の突き合わせ面と第2半体の突き合わせ面との間に、流体洩れ確認用のリークポートが形成されている請求項6のガスケットフィルタ。
【請求項8】
円板状体の周縁部を除く部分にレーザー加工により多数の孔があけられることにより、周縁部がガスケット本体とされるとともに、多数の孔があけられた部分がフィルタとされている請求項1のガスケットフィルタ。
【請求項9】
レーザー加工による孔が、円板状体の一端面側に開口した有底孔とされ、円板状体の他端面側が削られることにより、フィルタの孔が他端面側にも開口させられている請求項8のガスケットフィルタ。
【請求項10】
表面処理が施されている請求項1〜9のガスケットフィルタ。
【請求項11】
入口通路および出口通路が形成されたブロック状本体に、流体の圧力および流量のいずれかを検出するセンサと、センサからの信号に基づいて流体の通路の開閉度を制御するアクチュエータとが取り付けられ、本体の入口通路に通じる導入通路を有する通路ブロックが本体に突き合わせられており、本体の入口通路と通路ブロックの導入通路との突き合わせ部に請求項1〜10のガスケットフィルタが装着されている流体制御器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−202799(P2008−202799A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103815(P2008−103815)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【分割の表示】特願平10−340893の分割
【原出願日】平成10年12月1日(1998.12.1)
【出願人】(596089517)ユーシーティー株式会社 (2)
【出願人】(390033857)株式会社フジキン (148)
【Fターム(参考)】