説明

ガスケット及び密封構造

【課題】シール性の安定化を図り、かつ、耐久性の向上を図ったガスケット及び密封構造を提供する。
【解決手段】圧力容器20の開口部を塞ぐ封口板30における圧力容器外側の板面31上に配置され、圧力容器20の開口端部のかしめによって、封口板30と圧力容器20の開口端部先端22aとの間に挟み込まれることにより固定されて、封口板30の外周面と圧力容器20の内周面との間の隙間からの密封流体の漏れを防止するガスケット10において、圧力容器20の開口端部における湾曲したかしめ部分22の内側に入り込み、かしめによる変形に伴って、かしめ部分22における内周側の内壁面22bと外周側の内壁面22cのそれぞれに密着する2つの環状突起12,13を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケット及び密封構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンデンサなどに用いられる圧力容器においては、圧力容器の開口部を封止しなければならない。図5を参照して、従来例に係る密封構造について説明する。図5は従来例に係るコンデンサの模式的断面図である。
【0003】
コンデンサ200は、圧力容器220と、圧力容器220の開口部を塞ぐ封口板230と、封口板230の外周面と圧力容器220の内周面との間の隙間からの密封流体(気化状態の電解液)の漏れを防止するためのガスケット210とを備えている。
【0004】
ガスケット210は、圧力容器220の開口端部をかしめることによって、封口板230と圧力容器220の開口端部先端により挟み込まれることで固定される。そして、この従来例においては、ガスケット210は、断面が長方形の角リングを用いており、かしめによる圧縮によってのみ固定されている。
【0005】
一般的に、かしめ部分の寸法や形状はバラツキが生じ易い。そのため、かしめによる圧縮のみによってガスケットを圧縮する場合には、ガスケットのシール性を満足させるために、ガスケットの圧縮量を大きめに設定する必要がある。例えば、シール性を満足させるために必要なガスケットのつぶし率が30%であるとすると、つぶし率を確実に30%確保するために、つぶし率を30%以上に設定してかしめを行わなければならない。そのため、実際上は、つぶし率が50%以上の過圧縮になってしまうものも少なくない。
【0006】
一般的に、ガスケットが過圧縮されると、へたりや亀裂が生じ易くなってしまう。特に、近年、電解液の改良によるコンデンサの高性能化、耐熱性の向上、耐振性の向上などの要求があるが、従来仕様では、ガスケットのゴム材の耐電解液性不足や耐熱性不足により、ガスケットにおけるかしめ部分にへたりや亀裂が生じてシール性が低下してしまうため、これらの要求に十分対応することができない。
【0007】
なお、関連する技術としては、特許文献1に開示されたものがある。
【特許文献1】特開2002−329485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、シール性の安定化を図り、かつ、耐久性の向上を図ったガスケット及び密封構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0010】
すなわち、本発明のガスケットは、
ケースの開口部を塞ぐ封口板におけるケース外側の板面上に配置され、ケースの開口端部のかしめによって、封口板とケースの開口端部先端との間に挟み込まれることにより固定されて、封口板の外周面とケースの内周面との間の隙間からの密封流体の漏れを防止するガスケットにおいて、
ケースの開口端部における湾曲したかしめ部分の内側に入り込み、かしめによる変形に
伴って、かしめ部分における内周側の内壁面と外周側の内壁面のそれぞれに密着する2つの環状突起を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の密封構造は、
ケースと、
ケースの開口部を塞ぐ封口板と、
封口板におけるケース外側の板面上に配置され、ケースの開口端部のかしめによって、封口板とケースの開口端部先端との間に挟み込まれることにより固定されて、封口板の外周面とケースの内周面との間の隙間からの密封流体の漏れを防止するガスケットと、
を備えた密封構造において、
前記ガスケットは、ケースの開口端部における湾曲したかしめ部分の内側に入り込み、かしめによる変形に伴って、かしめ部分における内周側の内壁面と外周側の内壁面のそれぞれに密着する2つの環状突起を備えると共に、
前記封口板は、前記ガスケットに食い込む突起を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、かしめによる変形に伴って、2つの環状突起がかしめ部分における内周側の内壁面と外周側の内壁面のそれぞれに密着することによってシール性が発揮される。従って、かしめによるガスケットのつぶし率を大きくしなくても、安定したシール性を発揮させることができる。また、つぶし率を小さくできることにより、ガスケットのへたりや亀裂の発生を抑制でき、耐久性を向上させることができる。また、封口板にガスケットに食い込む突起を設けることで、ガスケットの位置ずれを抑制でき、より一層、シール性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、シール性の向上を図り、かつ、耐久性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
(実施例)
図1〜図4を参照して、本発明の実施例に係るガスケット及び密封構造について説明する。なお、本実施例では、ガスケット及び密封構造が適用される一例として、コンデンサの場合を例にして説明する。
【0016】
<コンデンサの概略構成>
図1を参照して、本発明の実施例に係るガスケット及び密封構造が適用されるコンデンサの概略構成を説明する。図1は本発明の実施例に係るコンデンサの模式的断面図である。
【0017】
コンデンサ100は、ケースとしてのアルミニウム製の圧力容器20と、圧力容器20の開口部を塞ぐ封口板30と、封口板30の外周面と圧力容器20の内周面との間の隙間からの密封流体(気化状態の電解液)の漏れを防止するためのガスケット10とを備えている。また、圧力容器20内には素子41が設けられ、封口板30には、素子41と電気的に接続された端子42と、圧力容器20内の圧力が異常に高くなった場合に圧力を逃がすための安全弁43が組み込まれている。なお、素子41は、膜状の電極と電解液を含浸させたセパレータとをロール状に巻いたものから構成されており、コンデンサ100の使
用時に、セパレータに含浸された電解液が気化して、気化状態の電解液が圧力容器20内に充満する。封口板30とガスケット10によって、この気化状態の電解液が外部に漏れないようにしている。
【0018】
<ガスケットの構成>
図2及び図3を参照して、本発明の実施例に係るガスケットの構成について説明する。図2は本発明の実施例に係るガスケットの平面図である。図3は本発明の実施例に係るガスケットの断面図である。なお、図3は図2のAA断面図である。
【0019】
本実施例に係るガスケット10はゴム材によって構成される。そして、ガスケット10は、封口板30における圧力容器外側の板面上に配置されるリング状のガスケット本体部11と、ガスケット本体部11から突出した2つの環状突起12,13とを備えている。環状突起12,13は、封口板30への載置面とは反対側に設けられている。そして、内周側の環状突起12は、ガスケット本体部11の内周端から離れた位置に設けられており、外周側の環状突起13は、ガスケット本体部11の外周端に沿って設けられている。
【0020】
<密封構造>
図4を参照して、本発明の実施例に係る密封構造について説明する。図4は本発明の実施例に係る密封構造を示す模式的断面図である。なお、図4は図1中のガスケット10付近において、ガスケット10,圧力容器20,及び封口板30のそれぞれの一部を拡大して示した断面図である。
【0021】
本実施例においては、圧力容器20の胴体部の一部が内側に凹むように折り曲げられた環状の折り曲げ部21が設けられており、この折り曲げ部21に封口板30が載置される。そして、封口板30を、この折り曲げ部21に載置した状態で、ガスケット10を封口板30における圧力容器外側の板面31上に配置し、圧力容器20の開口端部をかしめることによって、ガスケット10を固定するようにしている。また、かしめは、カーリング(先端を丸めていく手法)により行うようにしており、かしめ部分22は、図示のように湾曲した形状となる。このかしめによって、ガスケット10は、ガスケット本体部11(環状突起12,13のない部分)が封口板30と圧力容器20の開口端部先端22aとの間に挟みこまれて固定される。本実施例では、このかしめによるガスケット本体部11のつぶし率は50%以下となるように設定している。なお、つぶし率は、((かしめ前の厚み−かしめ後の厚み)÷かしめ前の厚み)×100%である。
【0022】
そして、かしめによって形成されたかしめ部分22の内側に、ガスケット10における環状突起12,13が入り込むように構成されている。また、上記のかしめに伴って、ガスケット10は弾性変形し、環状突起12はかしめ部分22における内周側の内壁面22bに密着し、環状突起13はかしめ部分22における外周側の内壁面22cに密着する。
【0023】
ここで、かしめは、上記の通りカーリングにより行われ、かしめ過程において、圧力容器20の開口端部先端22aは、環状突起12の内側から回り込む。従って、環状突起12が、かしめ部分22の外側にはみ出してしまうことを防止できる。
【0024】
また、本実施例では、環状突起12,13の先端に、かしめ部分22に対して締め代を設けるように設定している。従って、環状突起12,13は、かしめ部分22における内周側の内壁面22bと外周側の内壁面22cのそれぞれに確実に密着する。このとき、各密着面においては、いずれも部分的に面圧が高くなるピーク面圧が得られ、それぞれの部分でシール性を得ることができる。
【0025】
特に、本実施例では、上記の通り、かしめ部分22の内側に2つの環状突起12,13
を入り込ませて、かしめ部分22における内周側の内壁面22bと外周側の内壁面22cのそれぞれに密着させる構成を採用している。そのため、かしめ部分22の形状や寸法にバラツキがあっても、環状突起12,13の変形の仕方にバラツキが生じるものの、ピーク面圧の位置が変わるだけで、シール性自体に影響はない。従って、安定したシール性を得ることができる。
【0026】
更に、本実施例では、かしめ時において、圧力容器20の開口端部先端22aがガスケット本体部11を圧縮すると、環状突起12を内径側に傾かせる力が働く。これにより、かしめ部分22における内周側の内壁面22bへの環状突起12の密着力が高まる。
【0027】
また、本実施例では、封口板30における圧力容器外側の板面31上に、突起32が設けられている。これにより、かしめ時には、この突起32がガスケット10に食い込む。従って、ガスケット10の位置ずれを防止し、より一層シール性を向上させることができる。なお、この突起32は、環状に連続する構成とすることもできるし、不連続に複数設ける構成とすることもできる。
【0028】
<本実施例の優れた点>
上記の通り、本実施例によれば、環状突起12,13によって、かしめ部分22における内周側の内壁面22bと外周側の内壁面22cのそれぞれの部分でシールすることができる。そのため、封口板30と圧力容器20の開口端部先端22aによるガスケット本体部11の圧縮によっては十分にシール性を得ることができなくても、安定したシール性を得ることができる。従って、かしめ部分22の寸法や形状のバラツキが大きく、ガスケット本体部11のつぶし率のバラツキが大きくなっても、安定したシール性を得ることができる。
【0029】
また、シール性はガスケット本体部11のつぶし率にあまり影響を受けないことから、つぶし率を従来のように大きく設定する必要がなく、つぶし率を小さく設定しておくことができる。本実施例では、上記の通り、つぶし率を50%以下に設定している。これにより、ガスケット10の過圧縮を抑制することができる。従って、ガスケット10のへたりや亀裂の発生を抑制でき、耐久性を向上させることができる。
【0030】
また、本実施例では、上記のように、封口板30に設けた突起32をガスケット10に食い込ませることで、ガスケット10の位置ずれを防止し、より一層シール性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は本発明の実施例に係るコンデンサの模式的断面図である。
【図2】図2は本発明の実施例に係るガスケットの平面図である。
【図3】図3は本発明の実施例に係るガスケットの断面図である。
【図4】図4は本発明の実施例に係る密封構造を示す模式的断面図である。
【図5】図5は従来例に係るコンデンサの模式的断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 ガスケット
11 ガスケット本体部
12,13 環状突起
20 圧力容器
21 折り曲げ部
22 かしめ部分
22a 開口端部先端
22b 内壁面
22c 内壁面
30 封口板
31 板面
32 突起
41 素子
42 端子
43 安全弁
100 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの開口部を塞ぐ封口板におけるケース外側の板面上に配置され、ケースの開口端部のかしめによって、封口板とケースの開口端部先端との間に挟み込まれることにより固定されて、封口板の外周面とケースの内周面との間の隙間からの密封流体の漏れを防止するガスケットにおいて、
ケースの開口端部における湾曲したかしめ部分の内側に入り込み、かしめによる変形に伴って、かしめ部分における内周側の内壁面と外周側の内壁面のそれぞれに密着する2つの環状突起を備えることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
ケースと、
ケースの開口部を塞ぐ封口板と、
封口板におけるケース外側の板面上に配置され、ケースの開口端部のかしめによって、封口板とケースの開口端部先端との間に挟み込まれることにより固定されて、封口板の外周面とケースの内周面との間の隙間からの密封流体の漏れを防止するガスケットと、
を備えた密封構造において、
前記ガスケットは、ケースの開口端部における湾曲したかしめ部分の内側に入り込み、かしめによる変形に伴って、かしめ部分における内周側の内壁面と外周側の内壁面のそれぞれに密着する2つの環状突起を備えると共に、
前記封口板は、前記ガスケットに食い込む突起を備えることを特徴とする密封構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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