説明

ガスケット及び密封構造

【課題】装着相手の接触面の表面状態の影響を受けずにシール性を発揮することが可能なガスケット及び密封構造を提供する。
【解決手段】圧縮方向を高さ方向とし溝の両側面が対向する方向を幅方向として、ガスケット1を高さ方向及び幅方向に沿った断面において、該断面の輪郭のうちシール面を形成する領域が、ガスケット1が2部材間で圧縮される前の状態において、それぞれ溝底面及び他方の部材の表面に向かって凸状の曲線で構成された円弧状部2であり、溝の側面に対向する領域に凹状の曲線で構成された円弧状のくびれ部3を有しているガスケット1において、円弧状部2は、高さが略同等の円形断面のガスケットの断面の曲率よりも小さい曲率の曲線で構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケット及び密封構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Oリング等のガスケットは、2部材の間に挟み込まれて圧縮されることにより、2部材間の隙間を封止する。一般的に、2部材のうちの一方の部材にガスケットを装着するための溝が設けられる。この溝内に装着されたガスケットが溝の溝底面と他方の部材表面に密着することにより、2部材間の隙間が封止される。ガスケットは、2部材間で押し潰されるように変形し、2部材との接触面がシール面として機能する。
【0003】
ガスケットは、ガスケットと2部材とが互いに隙間なく密着することでシール性を発揮する。しかし、2部材の表面に凸凹などがあると、ガスケットと2部材との間に隙間が形成され、そこから密封流体の漏れを生じてしまうことがある。
【0004】
エンジン部品などのアルミダイカスト製部品は、仕上げ面に鋳巣による凹状部が発生することがある。鋳造部品は、粒子間の空隙が焼結成形後も部品内部に残留して鋳巣を形成することがある。鋳造部品の表面は、寸法精度や平面度などを高めるために切削によって仕上げられる場合があるが、このとき、部品内部の鋳巣が切削によって表面に露出して凹状部を形成することがある。この凹状部の大きさが、ガスケットのシール面の幅よりも大きい場合には、凹状部を介して密封流体が漏れてしまうことがある。
【0005】
近年、製造工程の簡略化による製造コストの低減のため、鋳造品を用いて製品を組み立てる手法を採用する場合が多い。しかし、上述の鋳巣の発生によって十分な密封性を得られないために、何段階もシールを設ける必要が生じたり、不適合品として製品を廃棄したり、鋳造材の採用を断念しなければならないような場合もある。
【0006】
従来は、凹状部に樹脂や液状ゴム(FIPG)を塗布して、ガスケットと鋳造部品との間の隙間を封止したり、鋳造部品自体を、鋳巣の影響の少ない構成のものに代えるなどして対処していた(特許文献1参照)。しかし、近年の機械設計では、スペース確保や燃費向上を目的とした小型化、軽量化等が求められ、小型化の促進によって成形が困難な製品形状が増加し、また、製造工程における欠陥の管理作業が難しくなっている。したがって、ガスケット自体にも、鋳巣対策のために何らかの工夫が必要であると考えられる。
【0007】
しかしながら、これまで提案されているガスケットは、装着時の反力低減や倒れ防止等を図ったものがほとんどであり、装着相手の接触面のコンディションが悪い場合にも十分対応できるものとはなっていない。例えば、特許文献2に開示されたガスケットは、ガスケット側面にくびれ形状を持たせることで装着時の反力を低減させるとともに、変形をくびれ部に集中させることでシール面での変形を抑制したものであるが、接触幅の増大を抑制するものとなっているため、相手部材の接触面に上述の凹状部などが形成されている場合には、漏れを生じてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−113404号公報
【特許文献2】特開2007−107546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、装着相手の接触面の表面状態の影響を受けずにシール性を発揮することが可能なガスケット及び密封構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明におけるガスケットは、
2部材のうちの一方の部材に設けられた溝内に装着され、2部材間で圧縮されることにより、前記溝の溝底面と他方の部材の表面にそれぞれ密着するシール面を形成して2部材間の隙間を封止するガスケットであって、
圧縮方向を高さ方向とし前記溝の両側面が対向する方向を幅方向として、ガスケットを高さ方向及び幅方向に沿った断面において、該断面の輪郭のうち前記シール面を形成する領域が、ガスケットが前記2部材間で圧縮される前の状態において、それぞれ前記溝の溝底面及び前記他方の部材の表面に向かって凸状の曲線で構成された円弧状部であり、
前記溝の側面に対向する領域に凹状の曲線で構成された円弧状のくびれ部を有しているガスケットにおいて、
凸状の前記円弧状部は、高さが略同等の円形断面のガスケットの断面の曲率よりも小さい曲率の曲線で構成されることを特徴とする。
【0011】
このように、凸状の円弧状部の曲率を小さくすることにより、高さ方向に円形断面のガスケットと略同等のつぶし量で、ガスケットが2部材間で圧縮されたときに2部材と接触する領域(シール面)の幅が大きくなる。ここで、つぶし量とは、2部材による圧縮前のガスケット断面の高さと、該高さ方向における溝底面と他方の部材表面との間の距離(2部材による圧縮後のガスケット断面の高さ)との差をいう。これにより、相手部材の接触面のコンディションによるシール性への影響が低減される。すなわち、溝底面や他方の部材表面に凸凹がある場合でも、拡大されたシール面が凸凹を覆うことで凸凹を介しての漏れを抑制することができる。
【0012】
溝底面や他方の部材表面に凹状部が生じる場合としては、例えば、2部材の両方またはいずれかが鋳造品であり、ガスケットとの接触面に鋳巣による凹状部が形成された場合が考えられる。また、例えば、溝底面や他方の部材表面に傷ができることで凸凹が形成される場合も考えられる。なお、2部材におけるガスケットとの接触面に凸凹が生じる場合としては、これらの場合に限定されるものではない。すなわち、本発明のガスケットは、相手部材の接触面が従来のガスケットでは十分にシールすることが困難な表面状態となっている場合でも好適に使用することができる。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明における密封構造は、
両方またはいずれか一方が鋳造品である2部材と、
前記2部材間の隙間を封止する上記ガスケットと、
を備えることを特徴とする。
【0014】
上述したように、2部材におけるガスケットとの接触面に鋳巣による凹状部が形成された場合でも、拡大されたガスケットのシール面が凹状部を覆うことで凹状部を介しての漏れを抑制することができる。したがって、上述の鋳造品を採用することによる不具合が解消され、工程数の削減、不適合品の削減、管理作業の削減等に寄与することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装着相手の接触面の表面状態の影響を受けずにシール性を発揮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に係るガスケットの模式的断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る密封構造の模式的断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る密封構造の模式的断面図である。
【図4】つぶし量を説明する模式図である。
【図5】つぶし量を説明する模式図である。
【図6】本発明の実施例に係るガスケットと従来のOリングとの性能比較の検証結果を示す表である。
【図7】本発明の実施例に係るガスケットと従来のOリングとの性能比較の検証結果を示す表である。
【図8】本発明の実施例に係るガスケットにおいて曲率半径を変化させたときの解析結果を示す表である。
【図9】本発明の実施例に係るガスケットにおいて製品芯幅を変化させたときの解析結果を示す表である。
【図10】本発明の実施例に係るガスケットにおいて製品芯幅と製品幅との関係を変化させたときの解析結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0018】
(実施例)
図1〜図10を参照して、本発明の実施例に係るガスケット及び密封構造について説明する。図1は、本発明の実施例に係るガスケットの模式的断面図である。図2は、本発明の実施例に係る密封構造(平面固定用シール)の模式的断面図である。図3は、本発明の実施例に係る密封構造(円筒面固定用シール)の模式的断面図である。図4は、つぶし量を説明する模式図である。図5は、つぶし率を説明する模式図である。図6は、本発明の実施例に係るガスケットと従来のOリングとの性能比較の検証結果を示す表である。図7は、本発明の実施例に係るガスケットと従来のOリングとの性能比較の検証結果を示す表である。図8は、本発明の実施例に係るガスケットにおいて曲率半径を変化させたときの解析結果を示す表である。図9は、本発明の実施例に係るガスケットにおいて製品芯幅を変化させたときの解析結果を示す表である。図10は、本発明の実施例に係るガスケットにおいて製品芯幅と製品幅との関係を変化させたときの解析結果を示す表である。
【0019】
<ガスケット>
本実施例に係るガスケット1は、ゴム状弾性体により構成される。このゴム状弾性体の素材の具体例としては、アクリル系ゴムやニトリル系ゴム、フッ素系ゴムなどを好適例として挙げることができる。
【0020】
本実施例に係るガスケット1は、自動車部品や産業機器などの各種機器に用いられる。より具体的には、インレットマニホールド用、フィルターブランケット用、シリンダーヘッドカバー用、タイミングベルトカバー用、燃料電池のセパレータ用など、各種用途に用いられる。特に、接触面に鋳巣による凹状部が形成されるようなアルミダイカスト製品等の鋳造部品のシール、鋳肌面のシール、ブラスト面のシール、切削加工面のシールに好適である。
【0021】
ガスケット1は、上記各種機器において、互いに対向する対向面を有する2部材の対向面間に挟み込まれて圧縮され、2部材間の隙間を封止する。一般的に、2部材のうちの一
方の部材の対向面にガスケット1を装着するための溝が設けられる。ガスケット1は、この溝内に装着され、溝底面と他方の部材表面に密着することにより、2部材間の隙間を封止する。
【0022】
図1に示すように、ガスケット1は、高さ方向及び幅方向に沿って切った断面において、シール面を形成する円弧状部2と、圧縮荷重を吸収するためのくびれ部3とを備える断面形状を有している。ここで、高さ方向は、ガスケットが装着時に2部材間で圧縮される方向とし、幅方向は、ガスケットが装着される溝の両側面が互いに対向する方向としている。ガスケット1の断面形状は、高さ方向に延びる断面の中心軸Xを中心として幅方向に左右対称に構成されている。
【0023】
円弧状部2は、ガスケット1と製品高さを同じくする略真円断面の従来のガスケット(Oリング)100における円弧状部よりも曲率が小さい。すなわち、円弧状部2は、ガスケット100の半径rbよりも大きな曲率半径raで構成されている。したがって、ガスケット1とガスケット100とが高さ方向に同じ量だけ圧縮されたときに形成されるシール面の接触幅は、ガスケット1の方が広くなる。
【0024】
ガスケット1は、溝側面43に対向する側部に凹状の曲線で構成された円弧状のくびれ部3が設けられている。すなわち、ガスケット1側部の幅が高さ方向の両端部から中央部かけて徐々に減少するように構成されている。このようなくびれ部3を設けることで、ガスケット1の圧縮時の断面形状は、溝41の断面形状に近い略矩形とすることができる。これにより、ガスケット側面の圧縮変形による溝側面43方向への張り出しが解消されるので、シール時における溝41への充填率を高めて溝空間を有効に利用するとともに、シール面が拡大されることによるガスケット1の反力の増加が抑制される。
【0025】
<密封構造>
図2及び図3を参照して、本実施例に係る密封構造について説明する。本実施例に係る密封構造は、2部材間、すなわち、一方の部材4と他方の部材5との間の隙間6をガスケット1によって密封する構造である。2部材は、両方またはいずれかが鋳造品であり、ガスケット1が密着する面が切削により寸法や平面度を調整して仕上げられている。これら一方の部材4と他方の部材5は、不図示の手段(例えば、嵌合、ねじによる締結、接着などの公知の手段)により互いに組み付けられて固定される。なお、図中の矢印は、密封対象領域からガスケット1に作用する密封流体の印加圧方向を示している。
【0026】
本実施例に係るガスケット1は、図2に示すように平面状の対向面間の隙間を封止する場合と、図3に示すように円筒面状の対向面間の隙間を封止する場合とがある。ガスケット1の全体形状は、相手部材(2部材)の構成に応じて異なる。例えば、図2に示す密封構造の場合には、ガスケット1の平面形状(各図において上下方向に見た形状)は、ガスケットが適用される対象製品に応じて円形や多角形など多種多様であり、一般的には、端部を有しない無端状の形状となる。また、図3に示す密封構造の場合には、ガスケット1はリング状に構成される。
【0027】
図2に示す密封構造について説明する。この密封構造では、2部材は平面状の互いに対向する対向面を有している。これら2部材のうちの一方の部材4には、他方の部材5との対向面40にガスケット1を装着するための溝41が設けられている。ガスケット1は、溝41に装着され、溝底面42と他方の部材5の対向面50との間で押し潰されるように圧縮変形し、2部材間の隙間6を封止する。なお、図2では、ガスケット1を2部材によって圧縮される前の状態で図示している。実際には、図5に示すように、隙間6が図示の状態よりも狭くなり、ガスケット1は溝底面42と対向面50とによって2部材の対向方向に圧縮される。
【0028】
図3に示す密封構造について説明する。この密封構造では、2部材は円筒面状の互いに対向する対向面を有している。これら2部材は、例えば、一方の部材4は軸であり、他方の部材5は軸が挿入される軸孔を有するハウジングである。一方の部材4の対向面(外周面)40には、ガスケット1を装着するための環状の溝41が設けられている。ガスケット1は、溝41に装着され、溝底面42と他方の部材5の対向面(軸穴内周面)50との間で径方向に押し潰されるように圧縮変形し、2部材間の隙間6を封止する。なお、図3も、図2と同様に、ガスケット1を2部材によって圧縮される前の状態で図示している。実際には、図5に示すように、隙間6が図示の状態よりも狭くなり、ガスケット1は溝底面42と対向面50とによって2部材の対向方向に圧縮される。
【0029】
<ガスケットの寸法設定>
本実施例に係るガスケット1の断面の各寸法は、次のように設定される。
【0030】
図1に示すように、ガスケット1の製品高さh0は、従来の略真円断面のガスケット100と同等に設定されている。したがって、本実施例のガスケット1は、従来のガスケット100と同等のつぶし量で圧縮され、円弧部2の曲率を従来のガスケット100よりも小さくした分だけ、シール面の接触幅がガスケット100よりも大きく増大される。ここで、つぶし量とは、図4に示すように、2部材による圧縮前のガスケット1の製品高さh0と、該高さ方向における溝底面42から対向面50までの距離(圧縮後のガスケット1の製品高さ)との差をいう。また、つぶし率とは、図5に示すように、つぶし量を製品高さh0で割ったもの、すなわち、製品高さh0と圧縮(シール)時の製品高さh0′との差を製品高さh0で割ったものをいう。
つぶし率=(h0−h0′)/h0
【0031】
図6及び図7は、本実施例に係るガスケットと従来のOリングとの性能比較の検証結果を示している。この検証では、図2に示す平面固定用ガスケットについて、本実施例に係るガスケットとして、硬度70度相当のゴム材からなり、内径が21.8mm、h0が2.4mm、d0が2.4mmのガスケット形状Bを用いた。また、従来のOリングとして、ガスケット形状Bと同ゴム材で製品幅および内径が同一の断面真円形状の平面固定用Oリングを用いた。これらのガスケットをつぶし率8%、25%でそれぞれ圧縮した時のシール接触幅、単位長さ当たりの反力、最大面圧をFEM解析から算出した。
【0032】
図6及び図7に示すように、本実施例に係るガスケット形状Bは、反力や面圧が従来のOリングとほぼ同等でありながらシール面の接触幅がより大きくなっている。したがって、接触面に凹状部が形成された2部材間の隙間の封止において、Oリングに比べてより大きな凹状部をカバーして封止できる。
【0033】
図8〜図10は、本実施例に係るガスケットの断面形状の各寸法を変化させた場合の解析結果を示している。
【0034】
図8に示すように、曲率半径raを大きくすることで、シール面の接触幅が増大することがわかる。この解析で使用したガスケットは、硬度70度相当のゴム材からなり、つぶし率は8%、摩擦係数は0.3である。
【0035】
ただし、曲率半径raは、製品幅d0との関係で規定され、製品幅d0に対して0.75〜2.5倍に設定するのがよい。2.5倍を超えると予め規定されたつぶし量に対して、反力が大きくなり過ぎてしまう。反力が大きくなると、部材への変形応力が大きくなって部材を損傷するだけでなく、図3に示すような円筒面固定シール用途において、ガスケットを取り付けた軸を軸孔に挿入する際の挿入抵抗が大きくなることが懸念される。
【0036】
図9に示すように、くびれ部において断面幅がもっとも狭い部分である製品芯幅d1を小さくすることで、ガスケットの反力が低減されることがわかる。この解析で使用したガスケットは、硬度70度相当のゴム材からなり、つぶし率は8%、摩擦係数は0.3である。
【0037】
なお、製品芯幅d1は、くびれ部3を設けることによって懸念されるガスケット1の座屈や倒れを抑制すべく、製品幅d0に対して0.4倍より大きく設定されるのが望ましい。
【0038】
図10に示すように、製品芯幅d1を0.6mmとしたガスケットG(d0/d1が0.4)では、図3に示す密封構造においてガスケットが装着された軸をハウジングの軸孔に挿入した際にガスケットの倒れが発生した。一方、製品芯幅d1を1.6mmとしたガスケットBでは、そのような倒れは生じなかった。この解析で使用したガスケットは、硬度70度相当のゴム材からなり、つぶし率は16%、摩擦係数は0.3である。
【0039】
シール面の接触幅は、製品幅d0を大きくすればするほど大きくなり、より大きな開口部を有する鋳巣に対する密封性能が良化するが、圧縮時の座屈や挿入時の倒れや反力を抑制するために、ガスケット形状のアスペクト比(製品高さh0/製品幅d0)は0.8〜2.0とするのが好ましい。0.8未満では同一シール接触幅において反力が大きくなり、2.0を超えるとつぶし時に座屈しやすくなる。一方、0.8〜2.0とすることによって、圧縮時の座屈や挿入時の倒れの抑制だけでなくシール時の反力の低減も期待できる。
【0040】
<本実施例の優れた点>
本実施例によれば、同じつぶし量で同一製品幅(製品高さ)のOリング100より大きなシール接触幅を得ることができる。これにより、相手部材の接触面のコンディションによるシール性への影響が低減される。すなわち、溝底面42や他方の部材表面50に凹状部51が形成されている場合でも、拡大されたシール面が凹状部51を覆うことで凹状部51を介しての密封流体等の漏れを抑制することができる。
【0041】
また、本実施例によれば、ガスケット1の溝側面43に対向する側部にくびれ部3が設けられているので、シール時における溝41への充填率を高めて溝空間を有効に利用するとともに、シール面の接触幅が拡大されることによるガスケット1の反力の増加が抑制される。特に、ガスケット1の反力の低減は、2部材の両方またはいずれかが、金属製部材と比して変形を生じやすい樹脂製部材の場合に特に好適である。
【0042】
なお、2部材の表面に凹状部が形成されていない場合でも従来と同様のガスケットとして適用できる。
【0043】
本実施例に係るガスケット1のアスペクト比(製品高さh0/製品幅d0)が1.0の場合、通常のJISで規格されているOリングの装着溝形状への適用が可能である。したがって、特に特殊な溝形状を必要としない。
【0044】
本実施例によれば、鋳造品を採用することによる不具合の解消を図ることができる。したがって、鋳造品の積極的な採用が可能となり、工程数の削減、不適合品の削減、管理作業の削減等に寄与することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 ガスケット
2 円弧状部(シール面)
3 くびれ部
4 一方の部材
40 表面
41 溝
42 溝底面
43 溝側面
5 他方の部材
50 表面
51 凹状部
6 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2部材のうちの一方の部材に設けられた溝内に装着され、2部材間で圧縮されることにより、前記溝の溝底面と他方の部材の表面にそれぞれ密着するシール面を形成して2部材間の隙間を封止するガスケットであって、
圧縮方向を高さ方向とし前記溝の両側面が対向する方向を幅方向として、ガスケットを高さ方向及び幅方向に沿って切った断面において、該断面の輪郭のうち前記シール面を形成する領域が、ガスケットが前記2部材間で圧縮される前の状態において、それぞれ前記溝の溝底面及び前記他方の部材の表面に向かって凸状の曲線で構成された円弧状部であり、
前記溝の側面に対向する領域に凹状の曲線で構成された円弧状のくびれ部を有しているガスケットにおいて、
凸状の前記円弧状部は、高さが略同等の円形断面のガスケットの断面の曲率よりも小さい曲率の曲線で構成されることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
両方またはいずれか一方が鋳造品である2部材と、
前記2部材間の隙間を封止する請求項1に記載のガスケットと、
を備えることを特徴とする密封構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−94667(P2011−94667A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247627(P2009−247627)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】