説明

ガスケット材用未加硫ゴムシート及びガスケット材用未加硫ゴムシートの製造方法

【課題】圧縮性材料からなるガスケット材の特性を活かし且つ適性の増大を図り、更に、製造時の無駄を少なくするようにしたガスケット材用未加硫ゴムシートとその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】金属板1を、ロール対2の繰込み部に配置すると共に、圧縮性基材繊維を含む未加硫のゴムコンパウンド材3を、上記金属板1の片面とロール表面との間の空域に供給する工程と、金属板1とゴムコンパウンド材3とを該ロール対の対合部間を通過させて金属板1の表面にゴムコンパウンド材の展延層3aを形成する工程と、該ゴムコンパウンド材の展延層3aを金属板1から剥離してゴムコンパウンド材の展延シート3b(本発明のガスケット材用シート)を得る工程とにより、ガスケット材用未加硫ゴムシートを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ガスケットの基材として用いられる圧縮性材料からなるガスケット材用未加硫ゴムシートに係り、特に金属板の表面に一体とされ或いは単独で用いられるガスケット材用未加硫ゴムシートとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属板の表面に圧縮性材料の層をコーティングしたガスケット材が広く使用されており、このようなガスケット材としては、特許文献1に開示されたガスケット材が挙げられる。特許文献1には、圧縮性基材繊維とゴム材とを主成分とするゴムコンパウンドの層を金属板の表面に加硫コーティングしてなるガスケット材が開示されている。このガスケット材は金属板を基材としているから、強度が大であり、金型等による打抜き加工の際の寸法精度やシール部への組付け作業性に優れ、また、圧縮性材料の層を備えているから、エンボス加工等も容易であり、更には、基材繊維の担持性によりゴム材の横流れもなく、シール性、耐熱性に優れ、各種ガスケット基材として広く用いられるようになった。
【0003】
また、特許文献2には上記ガスケット材の製造方法が開示されており、本製造方法は、耐熱性接着剤が塗布された金属板を互いに反方向に回転するロール対間に挿入すると共に、上記圧縮性基材繊維を含むゴムコンパウンド材を該金属板とロールとの間に供給し、ロールの対合部間を通過させることによって金属板の表面にゴムコンパウンドの層を加硫コーティングするものである。更に、特許文献3或いは特許文献4には、繊維基材を含むゴムコンパウンド材(ゴム混合物)を冷ロールと熱ロールとの間に供給して、ゴムコンパウンド材を熱ロールの表面に加熱圧延し、これを剥がすことによってジョイントシートを得る方法が開示されている。その他、同様のガスケット材用のシートとしてビータシートも汎用されている。
【特許文献1】特公平6−84785号公報
【特許文献2】特開平9−11363号公報
【特許文献3】特公平6−86075号公報
【特許文献4】特許第2573932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1或いは特許文献2に開示されたガスケット材は、自動車用エンジンや産業機械、機器等に広く使用されるが、実際の製品としてのガスケットは、上記ガスケット材を目的の被シール部の形状に合わせて環状に、更にはボルト孔等も含んだ形状に打抜くことにより調製され供せられる。然るに、このような被シール部の形状特性から、中抜部分(環状内側部分)の占める割合が大きく、しかもゴムコンパウンドの層と金属板は接着一体とされ且つゴム材は加硫されているから、この中抜部分や他の打抜部分の再利用ができず廃棄せざるを得ない為、ガスケット材の無駄が多く、製品コストの高騰を来たす原因にもなっていた。
【0005】
また、特許文献3或いは4に開示されたジョイントシートやビータシートは、金属板と別個に調製されるから、金属板の中抜部分等は再利用ができるが、ジョイントシートは加熱圧延時にゴム材が加硫されるから、中抜部分等は上記同様再利用ができず、例えば、粉砕のどにより再利用しても物性低下などの問題がある。一方、ビータシートは中抜部分の再利用は可能であるが、繊維密度が小さくまた薄いものができないと言う難点があった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、圧縮性材料からなるガスケット材の特性を活かし且つ適性の増大を図り、更に、製造時の無駄を少なくするようにしたガスケット材用未加硫ゴムシートとその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係るガスケット材用未加硫ゴムシートは、石綿以外の圧縮性無機繊維及び圧縮性有機繊維からなる基材繊維、未加硫のゴム材若しくはゴムラテックス、ゴム薬品及び無機充填材を含有したゴムコンパウンド材を、シート状に形成してなることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、上記ガスケット材用未加硫ゴムシートの第1の製造方法であって、金属板を、互いに反方向(ウイズ方向)に回転するロール対の繰込み部に配置すると共に、石綿以外の圧縮性無機繊維及び圧縮性有機繊維からなる基材繊維、未加硫のゴム材若しくはゴムラテックス、ゴム薬品及び無機充填材を含有したゴムコンパウンド材を、上記金属板の片面とロール表面との間の空域に供給する工程と、上記ロール対の回転により、金属板とゴムコンパウンド材とを該ロール対の対合部間を通過させて金属板の表面にゴムコンパウンド材の展延層を形成する工程と、該ゴムコンパウンド材の展延層を金属板から剥離してゴムコンパウンド材の展延シートを得る工程とよりなることを特徴とする。
【0009】
上記ガスケット材用未加硫ゴムシートの製造方法において、請求項3の発明のように、前記金属板の少なくともゴムコンパウンド材が供給される側の面には、ゴムコンパウンド材の剥離性を向上させる為の表面処理が施されていることが望ましい。この表面処理としては、例えば、低摩擦材料のコーティングを挙げることができ、テフロン(登録商標)コーティング、フッ素コーティング或いはダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティング等が採用される。また、請求項4の発明のように、前記ゴムコンパウンド材の展延層を形成する工程と、前記ゴムコンパウンド材の展延層を金属板から剥離してゴムコンパウンド材の展延シートを得る工程との間に、当該ゴムコンパウンド材の展延層を片面に備えた状態の金属板を前記ロール対の繰込み部に再度配置すると共に該金属板の他面とロール表面との間に前記コンパウンド材を供給する工程と、ゴムコンパウンド材の展延層及び金属板と新たに供給されたゴムコンパウンド材とを前記ロール対の対合部間を通過させて金属板の他面に新たなゴムコンパウンド材の展延層を形成させる工程とを付加することができる。
【0010】
或いは、請求項5の発明のように、前記ゴムコンパウンド材の展延層を形成する工程と、前記ゴムコンパウンド材の展延層を金属板から剥離してゴムコンパウンド材の展延シートを得る工程との間に、当該ゴムコンパウンド材の展延層を備えた状態の金属板を厚み調整ロール対の対合部間を通過させてゴムコンパウンド材の展延層を圧縮しその厚み調整をする工程を付加することもできる。
【0011】
請求項6の発明は、上記ガスケット材用未加硫ゴムシートの第2の製造方法であって、上記同様のゴムコンパウンド材を、互いに反方向(ウイズ方向)に回転し周速度比が1:1.01〜1.2に設定されたロール対の繰込み部に供給する工程と、上記ロール対の回転により、ゴムコンパウンド材を該ロール対の対合部間を通過させてゴムコンパウンド材の展延シートを繰出す工程と、該ゴムコンパウンド材の展延シートを所定の間隔に調整された厚み調整ロール対の対合部間を通過させて所望厚みのゴムコンパウンド材の展延シートを得る厚み調整工程とよりなることを特徴とする。上記周速度比は、特に好ましくは、1:1.05である。
【0012】
本製造方法においては、請求項7の発明のように、前記前記厚み調整ロール対の下流側に第2の厚み調整ロール対を配置し、前記厚み調整工程の後に第2の厚み調整工程を付加することができる。更に、請求項8の発明のように、前記各ロール対を構成するロールは、その表面に上記同様の表面処理が予め施されたものが望ましく採用される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明に係るガスケット材用シートを、ガスケットとして製品化する場合、別途準備した金属板を所定の形状に打抜きしてその両面に耐熱性接着剤を塗布し、当該ガスケット材用シートを同形状に打抜きして該金属板の両面に加圧圧縮して貼り合わせる。必要によって未架橋の合成樹脂とグラファイトの混合物を従来公知の方法でその両面にコーティングしてグラファイト層を形成し、140〜160℃、30〜40分間熱処理を行い、ガスケット材用未加硫ゴムシート中の未加硫ゴム材若しくはゴムラテックス或いはグラファイト層中の未架橋の合成樹脂を加硫或いは架橋させて製品を得る。この場合、金属板は、接着剤塗布やゴムコンパウンド材のコーティング前に打抜き加工されるから、中抜部分等は再利用が可能で無駄が生じることもなく、接着剤は必要な部分にのみ塗布されるから、その使用量を少なくすることができる。また、ガスケット材用未加硫ゴムシートもゴム材若しくはゴムラテックスが未加硫の状態で打抜されるから、その中抜部分等も容易に再利用でき無駄がなく、グラファイト層混合物の使用量も少なくなり、全体として製品コストが大幅に削減される。更に、金属板及びガスケット材用シートは、個別に打抜加工がなされるから、対応する全体形状や打抜孔の大きさなどが異なっていることが望ましい場合にも対応でき、多様なニーズへの適応性が向上する。
【0014】
金属板と一体化せずにガスケットとする場合、ガスケット材用未加硫ゴムシートを所定の形状に打抜きし、必要によって上記グラファイト層を形成した上で、上記と同様の熱処理を行うことによって所望の製品を得ることができるが、この場合も中抜部等の無駄が生じず、グラファイト層混合物の使用量もすくなくすることができる。そして、製品としてのガスケットにおいては、ゴムコンパウンド層に、石綿以外の圧縮性無機繊維及び圧縮性有機繊維からなる基材繊維が含まれるから耐熱性に優れ、また、ゴムコンパウンド層の横流れ、剥離が生じにくく、トルク保持性にも優れ、圧縮性材料からなるガスケット材の特性が十二分に活かされることになる。
【0015】
請求項2の発明に係るガスケット材用未加硫ゴムシートの製造方法(第1の製造方法)によれば、上記ガスケット材用未加硫ゴムシートを簡易に得ることができる。また、前述のジョイントシートの場合は、熱ロールの表面に加熱圧延して成形させた上で熱ロールから剥がすことによって製品を得るようにしているから、熱ロールの表面積以上の大きさのものを作製することができないが、本発明の場合は金属板の大きさ(長さ)を変えることによって任意の大きさのシートとすることができ、製造の効率化を図ることができる。更に、ゴムコンパウンド材の展延層が未加硫の状態のまま金属板の表面に圧延するように形成されるから、前記ジョイントシートのように、加熱・加硫しながら圧延する場合に比べて、該展延層の厚みを薄くすることができる。
【0016】
また、請求項3の発明のように、前記金属板の少なくともゴムコンパウンド材が供給される側の面に、ゴムコンパウンド材の剥離性を向上させる為の表面処理を施しておけば、金属板から展延層を剥離させる際の剥離性が良くなり、製品品質の維持に寄与する。
【0017】
更に、請求項4の発明のように、前記ゴムコンパウンド材の展延層を形成する工程と、前記ゴムコンパウンド材の展延層を金属板から剥離してゴムコンパウンド材の展延シートを得る工程との間に、金属板の他面に新たなゴムコンパウンド材の展延層を形成させる工程を付加すれば、上記展延層を金属板から剥離する工程の前に金属板の両面に展延層を形成することになり、製造工程の効率化を図ることができる。
【0018】
また、請求項5の発明のように、ゴムコンパウンド材の展延層を形成する工程と、前記ゴムコンパウンド材の展延層を金属板から剥離してゴムコンパウンド材の展延シートを得る工程との間に、展延層の厚み調整をする工程を付加するようにすれば、展延層のゴムコンパウンド材は未だ未加硫の状態であるから、その圧縮が任意になされ、従来になく薄手のシートを得ることができ、ガスケット材としての適用範囲が広められることになる。
【0019】
請求項6の発明に係るガスケット材用未加硫ゴムシートの製造方法(第2の製造方法)によれば、上記同様の未加硫のゴムコンパウンド材を、互いに反方向に回転し周速度比が1:1.01〜1.2(好ましくは、1:1.05)に設定されたロール対の繰込み部に供給して展延するようにしているから、薄い展延シートが両ロール表面に付着することなく繰出される。ロール対の周速度比が1:1.01未満〜1の場合、周速度の遅い方のロール表面に展延シートが付着する傾向となり、1:1.2超となると、展延シートが破断する傾向となる。また、この繰出された未加硫のゴムコンパウンド材の展延シートを、所定の間隔に調整された厚み調整ロール対の対合部間を通過させて所望厚みのゴムコンパウンド材の展延シートを得るようにしているから、所望厚みで且つ上記同様従来になく薄手の展延シートを的確に得ることができ、ガスケット材としての適用範囲が広められることになる。更に、請求項7の発明のように、前記厚み調整工程の後に第2の厚み調整工程を付加するようにすれば、より薄手の展延シートを任意に得ることができる。そして、請求項8の発明のように、各ロールの表面に上記同様の表面処理を予め施しておけば、ロール対の対合部間を通過するゴムコンパウンド材の展延シートのロール表面に対する付着性がより少なくなり、繰出しがより円滑になされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1(a)(b)(c)は本発明に係るガスケット材用未加硫ゴムシートの第1の製造方法の概略的工程図、図2(a)(b)は同製造方法の後半部の概略的工程図、図3は図1(b)の要部の拡大図、図4は同変形例の図3と同様図、図5は同製造方法の変形例による装置の概略図、図6は更に別変形例の装置の概略図、図7は本発明に係るガスケット材用及びシートの第2の製造方法による装置の概略図である。
【実施例1】
【0021】
第1及び図2は、本発明の第1の製造方法に採用される装置による概略的工程図を示し、図1(a)は、金属板1をロール対2(2a、2b)の繰込み部に配置すると共に、前記ゴムコンパウンド材3を、上記金属板1の片面と1方のロール2aの表面との間の空域に供給する工程を示す。金属板1はSPCC鋼板、アルミニウム板或いはステンレス鋼板等からなり、ゴムコンパウンド材3が供給される側の面には、テフロン(登録商標)コーティング、フッ素コーティング或いはダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティング等の低摩擦材料によるコーティング処理(表面処理)がなされている。また、ゴムコンパウンド材3は、前記の通り、石綿以外の圧縮性無機繊維及び圧縮性有機繊維からなる基材繊維、未加硫のゴム材若しくはゴムラッテクス、ゴム薬品、無機充填材及び溶剤を混練して事前に調製される。
【0022】
上記ゴムコンパウンド材を構成する圧縮性無機繊維としては、ガラス繊維、セラミック繊維、岩綿、鉱滓綿、溶融石英繊維、化学処理高シリカ繊維、溶融硅酸アルミナ繊維、アルミナ連続繊維、安定化ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、チタン酸アルカリ繊維、ウィスカー、ボロン繊維、炭素繊維、金属繊維等を用いることができる。一方、圧縮性有機繊維としては、芳香族ポリアミド繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ尿素系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリフルオロカーボン系繊維、フェノール繊維、セルロース系繊維等を用いることができる。
【0023】
また、ゴムコンパウンドを構成するゴム材としては、ニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(Si)、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)、エチレン酢ビゴム(EVA)、塩化ポリエチレン(CPE)、塩化ブチルゴム(CIR)、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、ニトリルイソプレンゴム(NIR)、天然ゴム(NR)等を用いることができる。また、これらのゴム材、例えばSBRにナフテン系のプロセス油が添加された油展ゴムもゴム材として用いることができる。
【0024】
ゴム薬品としては、硫黄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、過酸化物、ジニトリロリベンゼン等の加硫剤、及びチアゾール系化合物、ポリアミン系化合物、スルフェンアミド系化合物、ジチオカルバメート系化合物、アルデヒドアミン系化合物、グアニジン系化合物、チオ尿素系化合物、キサンテート系化合物等の加硫促進剤を用いることができる。更に、無機充填材としては、クレー、タルク、硫酸バリウム、重炭酸ナトリウム、グラファイト、硫酸鉛、トリポリ石、ウォラストナイト等を用いることができる。溶剤としては、トルエンが望ましく採用され、ゴムコンパウンド材3の全体量に対し、10〜40重量%含有される。ゴムラッテックスの場合、水が使用される。
【0025】
上記ロール対2a、2bのロール間隔を金属板1の表面に形成されるゴムコンパウンド材3の展延層3a(図1(b)(c)参照)の厚みが50〜200μmとなるよう調整し、図1(b)及び図3のようにロール対2a、2bを互いにウイズ方向(図の矢示方向)に回転させ、金属板1とゴムコンパウンド材3とを該ロール対2a、2bの対合部間を通過させて金属板1の表面にゴムコンパウンド材の展延層3aを形成する工程が実施される。ロール対2a、2bの周速度比は、1:1.2〜1.4に設定される。図1(c)は、乾燥ゾーン4を通過(放置)させて含有溶剤を揮散させる乾燥工程を示す。乾燥ゾーン4としては、送風装置が設けられた乾燥室或いは自然乾燥させる為に確保された適宜乾燥スペース等が充当され、ベルトコンベア等により搬送しながら乾燥したり、静置させたりして乾燥がなされる。
【0026】
図2(a)(b)は、ゴムコンパウンド材の展延層3aを金属板1から剥離してゴムコンパウンド材の展延シート(ガスケット材用シート)3bを得る工程を示す。上記展延層3aの金属板1からの剥離は、適宜スクレーパによって、ベルトコンベア上を搬送中に連続的になされたり、各金属板1毎に手作業によってなされる。剥離されて得られる展延シート3bは、ゴム弾性は未だ保有しないので、ロール対2a、2bの間隔調整により、従来のジョイントシートでは得られない薄さのものも得られ、且つ、前記未加硫のゴム材中に前記繊維基材が混練一体とされたシート状であり、前記のようなガスケットに適用させる場合は、適宜形状に打抜加工し、加熱・加硫処理してその調製がなされる。そして、中抜部分等の打抜残材は再利用が可能で、無駄が生じることがない。
【0027】
図4の例は、上記乾燥工程の前に、ゴムコンパウンド材の展延層3aを片面に備えた状態の金属板1を反転し、前記ロール対2a、2bの繰込み部に再度配置すると共に該金属板1の他面とロール2aの表面との間に前記コンパウンド材3を供給する工程と、ゴムコンパウンド材の展延層3a及び金属板1と新たに供給されたゴムコンパウンド材3とを前記ロール対2a、2bの対合部間を通過させて金属板1の他面に新たなゴムコンパウンド材の展延層3a’を形成させる工程とを付加した場合の状態を示している。このように、乾燥工程の前に、金属板1の両面にゴムコンパウンド材の展延層3a、3a’を形成するようにすれば、実質的に乾燥時間が短縮され、製造効率の向上が図られる。
【0028】
図には示さないが、前記乾燥工程と、前記ゴムコンパウンド材の展延層3a(3a’)を金属板1から剥離してゴムコンパウンド材の展延シート3bを得る工程との間に、当該ゴムコンパウンド材の展延層3a(3a’)を備えた状態の金属板1を厚み調整ロール対(ロール対2a、2bを充当させることも可)の対合部間を通過させてゴムコンパウンド材の展延層3a(3a’)を圧縮しその厚み調整をする工程を付加することも可能である。展延層3a(3a’)は未だゴム弾性を有しないから、このような厚み調整をする工程を付加することにより、より薄い展延シート3bを任意に得ることができる。
【実施例2】
【0029】
図5は、上記第1の製造方法の変形例を示すものであり、金属板としてのエンドレスの帯鋼1aを、上記ロール対2a、2bを構成する他方のロール2bと、別のロール5とに巻回張架してベルトコンベア状となし、ロール対2a、2b、ロール5及び帯鋼1aを矢示方向に回転させながら、ロール対2a、2bの繰込部に供給されたゴムコンパウンド材3を展延し、連続的に帯鋼1aの表面にゴムコンパウンド材の展延層3aを形成するようにしたものである。そして、帯鋼1aの表面に形成されたゴムコンパウンド材の展延層3aは、帯鋼1aによって搬送されながら乾燥ゾーン4を通過中に溶剤の揮散がなされ、該帯鋼1aの表面に摺接するよう取付けられたスクレーパ6によってゴムコンパウンド材の展延シート3bとして順次剥離される。該展延シート3bが剥離された帯鋼1aは、ロール対2a、2bの繰込部に導入され、上記ゴムコンパウンド材3の供給及びその展延が繰り返しなされ、展延シート3bの剥離が連続的になされる。このようにガスケット材用シートを連続的に製造するようにすれば、装置がコンパクトであり、製造効率も向上する。
【実施例3】
【0030】
図6は、上記第1の製造方法の別の変形例を示すものであり、金属板としての長尺の帯鋼1bをロール対2a、2bの対合部に導入すると共にゴムコンパンウンド材3を上記同様に供給し、帯鋼1bの表面にゴムコンパンウンド材の展延層3aを形成し、乾燥ゾーン4を通過中に溶剤の揮散がなされ、該帯鋼1bの表面に摺接するよう取付けられたスクレーパ6によってゴムコンパウンド材の展延シート3bとして順次剥離される。そして、該展延シート3bが剥離された帯鋼1bは順次巻取られて行く。この巻取の為の装置としては、従来公知の鋼板等巻取装置が採用される。本実施例の製造方法による装置も、上記実施例2の装置と同様に装置がコンパクトであり、製造効率も向上する。その他の構成は上記と同様であるので、共通部分に同一の符号を付しその説明を割愛する。
【実施例4】
【0031】
図7は、本発明の第2の製造方法に採用される装置によるガスケット材用未加硫ゴムシートの製造工程図を示すものである。即ち、上記同様ウイズ方向に回転し周速度比が1:1.01〜1.2(好ましくは、1:1.05)に設定された荒出し用ロール対7(7a、7b)の繰込み部にゴムコンパウンド材3を供給し、上記ロール対7a、7bの回転により、ゴムコンパウンド材3を該ロール対7a、7bの対合部間を通過させてゴムコンパウンド材の展延シート(厚み300〜500μm)3cを繰出し、該展延シート3cを、乾燥ゾーン8を構成するベルトコンベア8a上に連続的に垂下させ、該ベルトコンベア8a上で溶剤を揮散させた後、所定の間隔に調整された厚み調整ロール対9(9a、9b)の対合部間を通過させて所望厚みのゴムコンパウンド材の展延シート(ガスケット材用シート)3dを得るようにしたものである。
【0032】
図例では、上記厚み調整ロール対9に連続して第2の乾燥ゾーン10及び第2の厚み調整ロール対11(11a、11b)を配置し、上記展延シート3dを更に圧縮して、厚みが50〜00μmの展延シート3eを得るようにしている。このように、荒出し用ロール対7a、7bにより繰出された展延シート3cは、該展延シート3cを構成するゴム材若しくはゴムラテックスが未加硫であるから、下流の厚み調整ロール対9a、9b及び第2の厚み調整ロール対11a、11bでは任意の厚み調整がなされ、従来のジョイントシートでは得られない薄手の展延シート3eが得られる。展延シート3eは、ガスケット材用製品シートとして適宜ドラム(不図示)に巻取られる。
【0033】
ロール対7a、7bの表面は、前記と同様の低摩擦材料によるコーティング処理(表面処理)がなされ、更に、ロール対7a、7bの周速度比は、上記のように設定され、これらにより、ゴムコンパウンド材3のロール対7a、7bに対する付着が防止される。本実施例の方法は、前記実施例のように金属板1を使用することを要しない点で特筆され、上記各実施例と共に適宜選択採用される。
【0034】
尚、本発明の製造方法によって得られたガスケット材用シートは、前記のように適宜打抜き加工され、また、金属板に貼着一体とされ、更には、グラファイト処理された上で加熱・加硫処理がなされて、自動車エンジンのシリンダヘッドガスケット、内燃機関の各種ガスケット、その他の要シール部等に広く採用されるもので、従来にない薄さ故にその適用範囲が更に広がるものである。更に、上記実施例の製造工程では、乾燥工程を含むが、ゴムコンパウンド材中の溶剤量やロール温度等によっては、乾燥工程が不要とされる場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)(b)(c)は本発明に係るガスケット材用未加硫ゴムシートの第1の製造方法の概略的工程図である。
【図2】(a)(b)は同製造方法の後半部の概略的工程図である。
【図3】図1(b)の要部の拡大図である。
【図4】同変形例の図3と同様図である。
【図5】同製造方法の変形例による装置の概略図である。
【図6】更に別変形例の装置の概略図である。
【図7】本発明に係るガスケット材用未加硫ゴムシートの第2の製造方法による装置の概略図である。
【符号の説明】
【0036】
1 金属板
1a エンドレスの帯鋼(金属板)
1b 長尺の帯鋼(金属板)
2 ロール対
3 ゴムコンパウンド材
3a ゴムコンパウンド材の展延層
3a’ ゴムコンパウンド材の展延層
3b ゴムコンパウンド材の展延シート
3c ゴムコンパウンド材の展延シート
3d ゴムコンパウンド材の展延シート
3e ゴムコンパウンド材の展延シート
7 ロール対
8 乾燥ゾーン
9 厚み調整用ロール対
11 第2の厚み調整用ロール対


【特許請求の範囲】
【請求項1】
石綿以外の圧縮性無機繊維及び圧縮性有機繊維からなる基材繊維、未加硫のゴム材若しくはゴムラテックス、ゴム薬品及び無機充填材を含有したゴムコンパウンド材を、シート状に形成してなることを特徴とするガスケット材用未加硫ゴムシート。
【請求項2】
金属板を、互いに反方向に回転するロール対の繰込み部に配置すると共に、石綿以外の圧縮性無機繊維及び圧縮性有機繊維からなる基材繊維、未加硫のゴム材若しくはゴムラテックス、ゴム薬品及び無機充填材を含有したゴムコンパウンド材を、上記金属板の片面とロール表面との間の空域に供給する工程と、上記ロール対の回転により、金属板とゴムコンパウンド材とを該ロール対の対合部間を通過させて金属板の表面にゴムコンパウンド材の展延層を形成する工程と、該ゴムコンパウンド材の展延層を金属板から剥離してゴムコンパウンド材の展延シートを得る工程とよりなることを特徴とするガスケット材用未加硫ゴムシートの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のガスケット材用未加硫ゴムシートの製造方法において、
前記金属板の少なくともゴムコンパウンド材が供給される側の面には、ゴムコンパウンド材の剥離性を向上させる為の表面処理が施されていることを特徴とするガスケット材用未加硫ゴムシートの製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のガスケット材用未加硫ゴムシートの製造方法において、
前記ゴムコンパウンド材の展延層を形成する工程と、前記ゴムコンパウンド材の展延層を金属板から剥離してゴムコンパウンド材の展延シートを得る工程との間に、当該ゴムコンパウンド材の展延層を片面に備えた状態の金属板を前記ロール対の繰込み部に再度配置すると共に該金属板の他面とロール表面との間に前記コンパウンド材を供給する工程と、ゴムコンパウンド材の展延層及び金属板と新たに供給されたゴムコンパウンド材とを前記ロール対の対合部間を通過させて金属板の他面に新たなゴムコンパウンド材の展延層を形成させる工程とを付加したことを特徴とするガスケット材用未加硫ゴムシートの製造方法。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載のガスケット材用未加硫ゴムシートの製造方法において、
前記ゴムコンパウンド材の展延層を形成する工程と、前記ゴムコンパウンド材の展延層を金属板から剥離してゴムコンパウンド材の展延シートを得る工程との間に、当該ゴムコンパウンド材の展延層を備えた状態の金属板を厚み調整ロール対の対合部間を通過させてゴムコンパウンド材の展延層を圧縮しその厚み調整をする工程を付加したことを特徴とするガスケット材用シートの製造方法。
【請求項6】
石綿以外の圧縮性無機繊維及び圧縮性有機繊維からなる基材繊維、未加硫のゴム材若しくはゴムラテックス、ゴム薬品及び無機充填材を含有したゴムコンパウンド材を、互いに反方向に回転し周速度比が1:1.01〜1.2に設定されたロール対の繰込み部に供給する工程と、上記ロール対の回転により、ゴムコンパウンド材を該ロール対の対合部間を通過させてゴムコンパウンド材の展延シートを繰出す工程と、該ゴムコンパウンド材の展延シートを所定の間隔に調整された厚み調整ロール対の対合部間を通過させて所望厚みのゴムコンパウンド材の展延シートを得る厚み調整工程とよりなることを特徴とするガスケット材用未加硫ゴムシートの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のガスケット材用未加硫ゴムシートの製造方法において、
前記厚み調整ロール対の下流側に第2の厚み調整ロール対を配置し、前記厚み調整工程の後に第2の厚み調整工程を付加したことを特徴とするガスケット材用未加硫ゴムシートの製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のガスケット材用未加硫ゴムシートの製造方法において、
前記各ロールの表面にはゴムコンパウンド材の剥離性を向上させる為の表面処理が施されていることを特徴とするガスケット材用未加硫ゴムシートの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−107596(P2007−107596A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298329(P2005−298329)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】