説明

ガスケット溝形状

【課題】ガスケット溝に溜まった水が凍結または、凍結、溶解を繰り返したとしても、ケース破損を免れることのできる屋外設置用筐体を提供することである。
【解決手段】ケース部材の接合面同士の少なくとも一方に接合面全長にわたって、筐体内部を密閉空間にする為に用いるガスケット4を介在させるガスケット溝5を有する屋外設置用筐体であって、ガスケット溝5は筐体外部側と比べ筐体内部側の方が狭くなっており、ガスケットを介在させた場合、少なくともガスケット溝5の筐体内部側に空間を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットを用いて筐体内部を密閉空間にする屋外設置用筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機の電波を中継する基地局は、電波の中継や割り当てに必要な電気回路や電源を、防水性能を備えた屋外設置用筐体に収容して屋外に設置される。このような基地局に使用される屋外設置用筐体は、ケース部材の接合面同士にガスケットを介在させ、防水性能を確保している。ガスケットを介在させることによって筐体内部は密閉空間にすることができるが、ガスケットを介在させるためのガスケット溝に、水が溜まる場合がある。そこで、ガスケット溝部に溜まる水を排水する為の防水型機器が提案されている
【特許文献1】特開2000−55202
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、屋外設置用筐体が寒冷地に設置された場合、屋外設置用筐体を構成しているケース部材相互の互いに突き合わされた接合端面間を経て、ガスケット溝のうち筐体外部側に浸入した水が凍結することがある。一般に、水が凍ると体積が増えることが知られている。
【0004】
従来の屋外設置用筐体では、このような接合端面間とガスケット溝に浸入した水の凍結の影響については考慮していなかった。そのため、凍結時の接合端面間とガスケット溝に溜まった水の体積増加により、ガスケットに筐体内部方向への過大な荷重が作用し、その力がガスケット溝側面部に作用した場合にはケース部材の破損を招くことがあった。
【0005】
また、ケース部材の接合端面間とガスケット溝に浸入した水が凍結すると、ガスケットが筐体内部方向へ押し遣られる。その凍結した水が溶解した場合、ガスケットを筐体内部方向へ押し遣る力はなくなるが、水が凍結する前に位置していた場所への復元力は作用しないために、ガスケットはガスケット溝において、筐体内部側に偏った状態で位置することになる。ガスケットが筐体内部側に偏った場合、ガスケットを介在させたガスケット溝のうち筐体外部の空間が偏る前と比べて広くなり、より多くの水がガスケット溝に溜まることになる。この状態で再び水が凍結すると、ガスケット溝における水の凍結に係る膨張の体積が、ガスケットが偏る前と比べて増えるために、より大きな力がガスケット加わることになる。このように、水の凍結、溶解を繰り返していくことによりガスケットが徐々に筐体内部側に偏るとともに、ガスケットへ加わる力が大きくなり、ついにはガスケット溝のうち筐体内部側側面に過大な荷重が作用してケースの破損を招くという事態があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、ガスケット溝に溜まった水が凍結したとしてもまたは、凍結、溶解を繰り返したとしても、ケース破損を免れることのできる屋外設置用筐体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、ケース部材の接合面同士の少なくとも一方に接合面全長にわたって、筐体内部を密閉空間にする為に用いるガスケットを介在させるガスケット溝を有する屋外設置用筐体であって、ガスケット溝はガスケット溝の筐体外部側端部と比べ筐体内部側端部の方が狭くなっており、ガスケットを介在させた場合、少なくともガスケット溝の筐体内部側に空間を有することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、ガスケットを介在させるためのガスケット溝は筐体外部側と比べ筐体内部側の方が狭くなっているため、ガスケットをガスケット溝に介在させた場合、ガスケットは筐体外部側に偏った状態で位置する。そのため、ガスケット溝に水が溜まりにくい構造となる。次に、ケース部材の接合端面間とガスケット溝の筐体外部側に溜まった水が凍結し体積が増えた場合、ガスケットに筐体内部側に向かう方向に力がかかるが、ガスケット溝にガスケットを介在させた場合に、少なくともガスケット溝の筐体内部側に空間を有しているので、ガスケットが圧縮されながら筐体内部方向に移動し、ガスケット溝内部側面部に大きな力がかかりにくい。さらに、ガスケットは圧縮されながら移動するので、氷が溶解すると、ガスケットの伸長力によってガスケットは筐体外部側に移動し、ガスケット溝に溜まった水が凍結する前に位置していた場所に戻るとともに、ガスケット溝に溜まっている水を排出する機能を有する。水を排出すると共に元位置していた外部側に戻ることにより、度重なる水の凍結、溶解の繰り返しを経てもケースの破損の恐れが高まることはない。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、ケース部材の接合面同士の少なくとも一方に接合面全長にわたって、筐体内部を密閉空間にする為に用いるガスケットを介在させる為のガスケット溝を有している屋外設置用筐体であって、ガスケット溝はガスケット溝の筐体外部側端部と筐体内部側端部に比べ、筐体外部側端部と筐体内部側端部の中間点の方が広くなっており、ガスケットを介在させた場合、ガスケット溝の筐体外部側と筐体内部側に空間を有することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、ガスケット溝はガスケット溝の筐体外部側端部と筐体内部側端部に比べ、筐体外部側端部と筐体内部側端部の中間部の方が広くなっており、かつガスケットを介在させた場合に、ガスケット溝の筐体外部側と筐体内部側に空間を有しているため、請求項1に記載の発明と同様に外部から浸入する水が凍結した場合に、筐体内部側にガスケットは圧縮されながら移動する。氷が溶解した場合、ガスケットの伸長力によって水を排出すると共に、水の凍結する前に位置していた場所にガスケットが戻る。さらに、ガスケットを介在させた場合に、筐体外部側にも空間が存在するために、筐体内部と筐体外部の気圧に差が生じてガスケットの移動が起こったとしても、気圧の差が生じなくなった場合には、水の凍結、溶解と同様、元の位置に戻る。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る屋外設置用筐体では、ガスケットを介在させたガスケット溝のうち筐体外部側の空間とケース部材の接合端面間に溜まった水が凍結し体積が膨張すると、ガスケットが圧縮されながら筐体内部側に移動する。その氷が溶解するとガスケットの伸長力によって、ガスケット溝に溜まった水が凍結する前にガスケットが位置していた場所に戻るとともに、ガスケット溝に溜まった水を排出することができる。
【0012】
このように、ガスケット溝とケース接合端面間に溜まった水が凍結、溶解を繰り返したとしてもガスケットの位置ずれが生じることはない。さらにガスケットの位置ずれが生じないため、ガスケット溝のうち筐体外部側空間が拡大することはない。拡大した空間に大量の水が溜まり、その水が凍結することによる過大な荷重がガスケット溝の側面部に作用することがなく、ケース破損の恐れが低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。図1は第1実施形態にかかる屋外設置用筐体のうちケース接合部断面である。図1において右側が筐体外部、左側が筐体内部である。図2から図5においても同様である。
【0014】
第1実施形態において、屋外設置用筐体は上ケース部材1と下ケース部材2を有する。上ケース部材1と下ケース部材2は一側面を開放した箱型で、それぞれ外周部にフランジ部1a、2aが張り出している。上ケース部材1と下ケース部材2を突き合わせて結合させるための各接合端面1b、2bは各フランジ部1a、2aによって提供されている。各ケース部材1、2はそれぞれの接合端面1b、2bを互いに突き合せた状態で、それぞれのフランジ部1a、2aを螺子3により締結することで、密閉型の内部空間を形成している。各ケース部材1、2相互の互いに突き合わされた接続端面1b、2b間には、外部から接続端面1b、2b間に浸入した水分が密閉された内部空間に浸入することを防止するガスケット4が装備されている。
【0015】
このガスケット4はフランジ部2aに形成されたガスケット溝5に収容されている。ガスケット溝5は、フランジ部2a全長にわたって形成されると共に、その底部6には傾斜がついており、筐体内部側から筐体外部側に向けて下り勾配になっている。さらにガスケット溝5にガスケット4を介在させた場合、ガスケット溝5内部側に空間を有している。
【0016】
次に図1の屋外設置用筐体が風雨に曝され、かつ水が凍結、溶解を繰り返す環境に設置された場合について説明する。図1の屋外設置用筐体が風雨に曝された場合、ガスケット4がガスケット溝5に介在しているため、筐体内部の密閉空間への水の浸入を防ぐことができる。しかし、筐体内部の密閉空間への水の浸入を防ぐことができたとしても、上ケース部材1と下ケース部材2の各接合端面1b、2bの間から水が浸入し、その接合端面間とガスケットを介在させたガスケット溝5のうち外部側の空間に水が溜まる。水が溜まった状態で筐体外部の気温が下がり、水が凍結すると、水が氷になる際に体積が増えるために、ガスケット4に筐体外部方向から体積膨張に係る力が作用する。ガスケット溝5にガスケット4を介在させた場合に、少なくともガスケット溝5の筐体内部側に空間を有しているので、ガスケット4が圧縮されながら筐体内部方向に移動する。図2は溜まった水が凍結し、ガスケット4が圧縮されながら筐体内部方向に移動した状態を示している。ガスケット溝5にガスケット4を介在させた場合、ガスケット溝5内部側に空間を有しているため、水が凍結したとしてもガスケット溝5内部側面部に大きな力がかかりにくい。さらに、ガスケット4は圧縮されながら移動するので、氷が溶解すると、ガスケット4の伸長力によってガスケット4は筐体外部側に移動し、ガスケット溝5に溜まった水が凍結する前に位置していた場所に戻るとともに、ガスケット溝5に溜まっている水を排出する。水を排出するとともに元位置していた外部側に戻ることにより、度重なる水の凍結、溶解の循環を経てもケースの破損の恐れが高まることはない。
【0017】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。さらに、同様の効果についても説明を省略する。図3は第2実施形態にかかる屋外設置用筐体のうちケース接合部断面である。
【0018】
上記第1実施形態においては、ガスケット溝5にガスケット4を介在させた場合、ガスケット溝5において筐体内部側と比べ筐体外部側の空間の方が広いために、ガスケットは筐体外部側に偏って配置される。そのため、上ケース部材1と下ケース部材2を接合させ、内部空間を密閉しようとする際、ガスケット4が各ケース部材接合端面1b、2b間に挟まれる恐れが高く、誤って隙間が生じたままケースを閉じてしまう場合がある。そこで本実施形態は、ケースを接合する際にガスケットを挟みこみにくい構造を有する。
【0019】
第2実施形態のガスケット溝5は、フランジ部2a全長にわたって形成されると共に、底部6は筐体内部側端部7から溝部中間点9に向けて下り勾配で、溝部中間点9から筐体外部側端部8方向に向けて上り勾配になっている。さらにガスケット溝5にガスケット4を介在させた場合、ガスケット溝5内部側と外部側ともに空間を有する。
【0020】
本実施形態においては、ガスケット4が介在したガスケット溝5のうち筐体外部側にも空間が存在するために、筐体内部と筐体外部の気圧に差が生じ、ガスケットが筐体外部側に移動したとしても、圧力の差が生じなくなった場合には、水の凍結、溶解と同様に、元の位置に戻る。
【0021】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について説明する。上記第1実施形態と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。さらに、同様の効果についても説明を省略する。図4は第3実施形態にかかる屋外設置用筐体のうちケース接合部断面である。
【0022】
ケース破損は主にガスケット溝5に溜まった水が凍結することにより引き起こされている。そこで第3実施形態においては、第1実施形態の効果を有するとともに、さらにガスケット溝に水が溜まりにくい構造を有する。
【0023】
第3実施形態のガスケット溝は、フランジ部1a全長にわたって形成されると共に、その底部6には傾斜がついており、筐体内部側から筐体外部側に向けて上り勾配になっている。さらにガスケット溝5にガスケット4を介在させた場合、ガスケット溝5内部側に空間を有する。
【0024】
本実施形態においては、上記第1実施形態と比べ、ガスケット溝に水が溜まりにくい構造となっており、水の凍結によるケースの破損がより起こりにくくなる。
【0025】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態について説明する。上記第1実施形態と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。さらに、同様の効果についても説明を省略する。図5は第4実施形態にかかる屋外設置用筐体のうちケース接合部断面である。
【0026】
第3実施形態によればガスケット溝にはほとんど水が溜まることはないが、各ケース部材接合端面1b、2b間に水が溜まり、その水が凍結することによるケース破損の恐れがある。
【0027】
そこで第4実施形態においては、第1実施形態の効果を有するとともに、さらにガスケット溝、各ケース部材接合端面1b、2b間に水が溜まりにくい構造を有する。
【0028】
第4実施形態のガスケット溝5は、フランジ部1a、2a間に全長にわたって形成される。フランジ部2aはその端部が筐体内部側端部7から筐体外部側端部8に向けて下り勾配の傾斜を有している。さらにフランジ部1aは略L字型をしており、フランジ部1a、2a間の空間をガスケット溝5としてガスケット4を介在させ、筐体内部を密閉している。
【0029】
ガスケット溝5の底部6と各ケース部材接合端面1b、2bは筐体内部側端部7から筐体外部側端部8に向けて下り勾配であるため、本実施形態においては、上記第1実施形態と比べ、ガスケット溝、各ケース部材接合端面1b、2b間に水が溜まりにくい構造であり、水の凍結によるケースの破損がより起こりにくくなる。
【0030】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変換例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0031】
例えば、実施例における下り勾配といった記載は、直線状の下り勾配に限定されるわけではなく、曲線状、階段状でもかまわない。さらに第2実施形態においては、溝部中間点9が一番深い構造となっているが、必ずしも中間点が一番深い構造である必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態にかかる屋外設置用筐体のケース断面図である。
【図2】第1実施形態にかかる屋外設置用筐体のケース断面図であり、ガスケット溝部と上ケース部材と下ケース部材の各接合端面に溜まった水が凍結した場合の状況図である。
【図3】第2実施形態にかかる屋外設置用筐体のケース断面図である。
【図4】第3実施形態にかかる屋外設置用筐体のケース断面図である。
【図5】第4実施形態にかかる屋外設置用筐体のケース断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 上ケース部材
1a 上ケースフランジ部
1b 上ケースフランジ部接合面
2 下ケース部材
2a 下ケースフランジ部
2b 下ケースフランジ部接合面
3 螺子
4 ガスケット
5 ガスケット溝
6 ガスケット溝底部
7 氷
8 ガスケット溝底部における筐体内部側端部
9 ガスケット溝底部における筐体外部側端部
10 ガスケット溝底部における中間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部材の接合面同士の少なくとも一方に前記接合面全長にわたって、筐体内部を密閉空間にする為に用いるガスケットを介在させるガスケット溝を有する屋外設置用筐体であって、
前記ガスケット溝はガスケット溝の筐体外部側端部と比べ筐体内部側端部の方が狭くなっており、
ガスケットを介在させた場合、少なくともガスケット溝の筐体内部側に空間を有することを特徴とする屋外設置用筐体。
【請求項2】
ケース部材の接合面同士の少なくとも一方に前記接合面全長にわたって、筐体内部を密閉空間にする為に用いるガスケットを介在させる為のガスケット溝を有している屋外設置用筐体であって、
前記ガスケット溝はガスケット溝の筐体外部側端部と筐体内部側端部に比べ、筐体外部側端部と筐体内部側端部の中間点の方が広くなっており、
ガスケットを介在させた場合、ガスケット溝の筐体外部側と筐体内部側に空間を有することを特徴とする屋外設置用筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−108899(P2009−108899A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280378(P2007−280378)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】