説明

ガスケット

【課題】 ゴム状の弾性材料で形成されたガスケットのコーナー部角度が鋭角・鈍角を問わず、確実なコーナー部位置決めができ、ガスケット全体に亘り位置ずれなく、作業性容易に取付けることができるガスケットを提供することにある。
【解決手段】 2部材間をシールするガスケットは、第一の部材の周縁に嵌着され、第一の部材と第二の部材との間をシールするゴム状の弾性体から形成されたガスケットにおいて、ガスケットのコーナー部の一辺と他辺とに連結して、第一の部材に設けられた係合溝に係合する係合部を備えてなるコーナー間連結部材を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の部材と第2の部材との間をシールするガスケット、特に軟質ゴムのガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンに用いるシリンダーヘッドカバーを例にとれば、図5に示すようにエンジンのシリンダーヘッド1の上面には、図示しないカムシャフトおよびカムシャフトを軸支する軸受け、バルブおよびバルブタイミングを制御するタイミングギヤチェーンなどが設けられており、これらを覆うためのシリンダーヘッドカバー2がゴムのガスケット3を介して取付けられている。シリンダーヘッドカバー2は、シリンダーヘッド1への締め付け部の設定により、複雑な外周形状で取付けられている。
【0003】
近年、シリンダーヘッドカバー2は樹脂化が進んでおり、合成樹脂製となることにより剛性が低くなる。このためガスケット3としては、低硬度の軟質材料を用いるか、断面ボリュームを小さくすることにより反発力を下げている。したがってガスケット3を取り扱う時には一定形状を保持できず、絡まりあったような不規則形状になりやすく、シリンダーヘッドカバー2への取付作業が悪化し、さらにカバー周縁のガスケット嵌着溝20の対応位置に合致して取付けられず、位置ズレが生じやすい。このような問題を解決する手段として、特許文献1は図6、図7に示すようにコーナー部に保形用のリブ3aを一体形成し、コーナー部形状を保持する構成を開示している。
【特許文献1】実開昭63−164663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のガスケット3によると、ガスケット3のコーナー部はその形状を保持しているので、対応するシリンダーヘッドカバー2のコーナー部に容易に取付けることができ、ガスケット全体に亘り位置ずれなく、作業性容易に取付ける事が実現できる。しかしながら特許文献1の技術は、ガスケット3のコーナー部形状を保形用リブ3aにより保持して、シリンダーヘッドカバー2のコーナー部形状に合致させるものである。これは、ゴム状の弾性材料で形成されたガスケット3のコーナー部位置決めを2辺の角度で実施するものであるため、コーナー部角度が鋭角である場合には有効であるが、コーナー部が鈍角である場合にはズレが生じやすく、その有効性に問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記のゴム状の弾性材料で形成されたガスケットのコーナー部角度が鋭角・鈍角を問わず、確実なコーナー部位置決めができ、ガスケット全体に亘り位置ずれなく、作業性容易に取付けることができるガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の2部材間をシールするガスケットは、第一の部材の周縁に嵌着され、第一の部材と第二の部材との間をシールするゴム状の弾性体から形成されたガスケットにおいて、ガスケットのコーナー部の一辺と他辺とに連結して、第一の部材に設けられた係合溝に係合する係合部を備えてなるコーナー間連結部材を有することを特徴とする。このような構成とすることにより、ガスケットのコーナー部はコーナーを挟んだ2辺とコーナー間連結部材の係合部の3点で位置決めされることにより、ガスケットのコーナー部角度が鋭角・鈍角を問わず、確実なコーナー部位置決めができ、ガスケット全体に亘り位置ずれがなく、作業性容易に取付けることができる。
【0007】
そして、前記コーナー間連結部材は、係合部と連結部とからなり、連結部は係合部より薄肉に形成されていることが好ましい。このような構成とすることにより、ガスケットが第1の部材に嵌着一体化される際にコーナー間連結部材による影響を受けることなく、組付け時の引張り張力が全体的に分散される事となる。
【0008】
さらに前記コーナー間連結部材は、第一の部材への係合部をコーナー間連結部材の連結部からガスケットのコーナー部と反対側に突出した位置に備えることができる。このような構成とすることで、コーナー部が極端な鋭角形状または極端な鈍角形状となっている場合でも、コーナー部近傍に第1部材との係合部を配置する事ができ、確実なコーナー部位置決めができ、ガスケット全体に亘り位置ずれがなく、作業性容易に取付けることができる。
【0009】
さらに前記コーナー間連結部材は、ガスケットが第1の部材と第2の部材の間に組みつけられた状態において、締め代を有しないことが好ましい。このような構成とすることで、締め付け時の部分的な反発力の増加を招くことがない。
【発明の効果】
【0010】

上記のような構成とすることにより、ゴム状の弾性材料で形成されたガスケットのコーナー部角度が鋭角・鈍角を問わず、確実なコーナー部位置決めができ、ガスケット全体に亘り位置ずれなく、作業性容易に取付けることができるガスケットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【0012】
(実施例1)
図1は本発明の第一の実施形態にかかるガスケット30を示す平面図である。図1に示すように、本発明のガスケット30はシリンダヘッドカバー2とシリンダヘッド1との間に介在して2部品間をシールしており、図5と同様にシリンダヘッドカバー2とともにシリンダヘッド1に組み付けられる。このガスケット30のコーナー部には、コーナー部を挟んだ2辺に連結するコーナー間連結部材31が配置されている。図1に示すコーナー間連結部材31は、ガスケット30の内側にのみ配置されているが、必ずしも内側にのみ配置されると限られるものではなく、外側に配置してもよい。
【0013】
図2は図1のガスケット30のコーナー部を示した斜視図である。
【0014】
コーナー部に配置されたコーナー間連結部材31は、その一端がガスケットの一辺に連結しており、他端がガスケットのコーナー部を挟んだ他辺に連結しており、コーナー間連結部材31の中間部の一部にはシリンダヘッドカバーに係合するための係合部32が設けられている。また、コーナー間連結部材31はガスケット30との連結部33近傍が薄肉形状とされている。この薄肉の連結部33は、ガスケット30のコーナー部とコーナー間連結部材31とにより区画される三角地帯34の全体に設けてもよいし、実施例1のようにコーナー間連結部材31のガスケット30との連結部近傍だけとしてもよい。
【0015】
図3は図2に示すコーナー部の断面を示した断面図である。
【0016】
ガスケット30は図5と同様に、シリンダヘッドカバー2とシリンダヘッド1との間に介在して2部品間をシールしている。このガスケット30は、シリンダヘッドカバー2の周縁に設けられているガスケット嵌着溝20に嵌め込まれる。この時ガスケット30はコーナー間連結部材31によりコーナー部形状が保持されるため、ガスケット嵌着溝20のコーナー部とガスケット30のコーナー部との位置確認が容易である。さらにコーナー間連結部材31の一部に配置された係合部32が、シリンダヘッドカバー2のガスケット嵌着溝20の近傍に配置された係合溝21に係合することにより、シリンダヘッドカバー2のガスケット嵌着溝20のコーナー部とガスケット30のコーナー部との確実な位置合わせが可能となる。
【0017】
このガスケット30をシリンダヘッドカバー2周縁のガスケット嵌着溝20に組付けるに際しては、コーナー形状が保持されたコーナー部をこれと対応するガスケット嵌着溝20のコーナー部に嵌め込んで後、コーナー間の部分を嵌め込み作業性容易かつ位置ずれなく組付けることができる。また長手方向に順次嵌め込む場合でも、コーナー間連結部材31を有するコーナー部からコーナー間連結部材31を有する次のコーナー部へ至った時に張力のかけ過ぎ等による位置ずれが明確に判明するため、直ちに修正することができる。
【0018】
そしてシリンダヘッドカバー2は、前述のようにガスケット30を嵌着一体化した後、シリンダヘッド1に組付けされる。ガスケット30はシリンダヘッド1とシリンダヘッドカバー2とによる圧縮によりシール力を発生するのであるが、この際にコーナー間連結部材31の連結部33が薄肉になっているため、ガスケットがシリンダヘッドカバー2のガスケット嵌着溝20に嵌着一体化される際に、コーナー間連結部材31による影響を受けることなく組付け時の引張り張力が全体的に分散される事となる。また、コーナー間連結部材31は、ガスケットがシリンダーヘッドカバー2とシリンダーヘッド1の間に組みつけられた状態において、締め代を有しない設定となっている。このような構成とすることで、締め付け時の部分的な反発力の増加を招くことがない。本実施例において連結部33は薄肉としたが、必ずしも薄肉とする必要はなく厚肉のままであってもよい。この場合には、ガスケット30を成形する金型の加工が容易になる。
【0019】
(実施例2)
図4は本発明の第二の実施形態にかかるガスケットを示す斜視図である。図5に示す第二実施形態のガスケット40は、コーナー間連結部材41の形状が第一実施形態と異なっているのみであるため、この部分についてのみ説明する。本発明のガスケット40は第1実施形態と同様に、コーナー部に配置されたコーナー間連結部材41は、その一端がガスケットの一辺に連結しており、他端がガスケットのコーナー部を挟んだ他辺に連結している。そして、シリンダヘッドカバー2に係合するための係合部42が、コーナー間連結部材41の中間部外形から、ガスケットのコーナー部とは反対側に突出して設けられている。このような構成とすることで、コーナー部が極端な鋭角形状または極端な鈍角形状となっている場合でも、コーナー部近傍にシリンダーヘッドカバー2との係合部42を配置する事ができるため、確実なコーナー部位置決めができ、ガスケット全体に亘り位置ずれがなく、作業性容易に取付けることができる。図4の場合は、コーナー間連結部材41本体は薄肉に形成されており、厚肉となっている係合部42と重なっている部分はないが、この形態に限られるものではなく、係合部42とコーナー間連結部材41とが部分的に重なり合っていてもよい。この構成により第1実施形態と同様に、コーナー間連結部材41の連結部43が薄肉になっているため、ガスケットがシリンダヘッドカバー2のガスケット嵌着溝20に嵌着一体化される際に、コーナー間連結部材41による影響を受けることなく組付け時の引張り張力が全体的に分散される事となる。また、コーナー間連結部材41は、ガスケットがシリンダーヘッドカバー2とシリンダーヘッド1の間に組みつけられた状態において、締め代を有しない設定となっている。このような構成とすることで、締め付け時の部分的な反発力の増加を招くことがない。
【0020】
なお、この発明は上記実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態であるガスケットの平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態であるガスケットのコーナー部の斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態であるガスケットのコーナー部の断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態であるガスケットのコーナー部の斜視図である
【図5】従来のガスケット仕様のエンジン分解図である。
【図6】特許文献1の仕様のガスケット斜視図である。
【図7】特許文献1の仕様のガスケット断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 シリンダヘッド
2 シリンダヘッドカバー
3 ガスケット
3a 保形用のリブ
20 ガスケット嵌着溝
21 係合溝
30 第1実施形態のガスケット
31 コーナー間連結部材
32 係合部
33 連結部
40 第2実施形態のガスケット
41 コーナー間連結部材
42 係合部
43 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の部材の周縁に嵌着され、該第一の部材と第二の部材との間をシールするゴム状の弾性体から形成されたガスケットにおいて、ガスケットのコーナー部の一辺と他辺とに連結して、第一の部材に設けられた係合溝に係合する係合部を備えてなるコーナー間連結部材を有することを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記コーナー間連結部材は、係合部と連結部とからなり、連結部は係合部より薄肉に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記コーナー間連結部材は、前記係合部をコーナー間連結部材の連結部からガスケットのコーナー部と反対側に突出した位置に備えることを特徴とする請求項2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記コーナー間連結部材は、ガスケットが第1の部材と第2の部材の間に組みつけられた状態において、締め代を有しないことを特徴とする請求項1から3に記載のガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−170358(P2006−170358A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365779(P2004−365779)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】