説明

ガスケット

【課題】冷蔵庫などに使用できる断熱性能に優れたガスケットを提供する。
【解決手段】ガスケット101は塩化ビニル製であり、空洞室102とマグネット室103を備えている。マグネット室103内にはマグネット104を配置している。空洞室102の壁面には切り込みがあり、そこに断熱材105の一部が挿入されている。空洞室102の下部には、先端がくさび状の差込部106を備えている。キャビネット107の壁面は、鋼板製の外箱108とABS製の内箱109の間に発泡ウレタン断熱材110を充填して形成されている。なお、発泡ウレタン断熱材110を薄肉化する場合には、真空断熱材を埋設するとよい。ドア111の周縁部には、差込部106を挿入してガスケット101をドア111に固定する取付け溝112が設けられている。これにより、ガスケット101の空洞室102壁面と、その外側の空気との熱交換量を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫、ショーケースなどに使用されるガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、冷蔵庫、自動販売機などの冷凍冷蔵機器やジャーポットなどの温熱機器に対する消費エネルギー削減の要求は強くなり、断熱設計への取組みが盛んに行われている。冷蔵庫を例にとると、所定の冷蔵または冷凍温度に冷却された庫内には、外部から壁面を介して侵入する熱は、断熱材の性能を向上することにより抑制できる。そのために、冷蔵庫壁面内にも一般的に使用されているウレタン発泡断熱材に対して約数十倍の断熱性能を有する真空断熱材が開発され、壁面からの浸入熱を大幅に低減した。
【0003】
別の浸入熱としては、冷蔵庫前面のキャビネットとドアの隙間からの浸入する熱がある。そのため、ドアの周縁部にはガスケットを備えて隙間を塞ぐことによって浸入熱を低減している。また、ガスケットにはマグネットを埋設し、その磁力によってドアがキャビネットに引き寄せられてドアが閉まる仕組みになっているものがある。このとき、ガスケットに断熱空気層を設けることにより浸入熱量を低減する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図4は、従来の冷蔵庫用ガスケットの断面図である。本ガスケットは、空洞室1の下部室壁面を互いにオーバーラップする第1の切片2と、第2の切片3の2枚の切片で形成し、この2枚の切片を開くことにより軟質ウレタンフォーム4を空洞室1に挿入する。軟質ウレタンフォーム4の挿入は、まず、第1の切片2と第2の切片3を開き、その開口部から空洞室1に軟質ウレタンフォーム4を挿入する。このように作業は簡単であり、2枚の切片を有しない場合と比較して、生産性が大幅に向上でき、断熱性能に優れたガスケットを提供できる。
【特許文献1】特許第3164837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の構成では、空洞室1内の断熱性能は向上できるが、ガスケットそのものの熱伝導により熱が高温側から低温側に浸入するという課題があった。
【0006】
本発明は、断熱性能に優れたガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のガスケットは、空洞室と、空洞室上部にマグネット室を備え、空洞室壁面の外側の空気と接する面に断熱材を備えたのである。
【0008】
これにより、ガスケットを介して高温側から低温側に伝熱する場合、空洞室内の空気の熱伝導および対流によって伝熱したものも、ガスケット自体を伝熱したものも、断熱材によって遮断される。また、マグネット室を備えていることから、ガスケットは磁力によって金属筐体に密着するので、空気が隙間から流出入することを抑制でき、ガスケットが間仕切りしている温度差のある空間の熱浸入を抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガスケットによれば、空洞室と、空洞室上部にマグネット室を備え、空洞室壁面の外側の空気と接する面に断熱材を備えたものであり、開口部を有するキャビネットとその開口部を塞ぐドアで構成される断熱箱体などについて、ガスケットからの熱浸入を低減できる。このため、箱体内部を冷却あるいは加熱しても、その熱効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
請求項1に記載のガスケットの発明は、空洞室と、空洞室上部にマグネット室を備え、空洞室壁面の外側の空気と接する面に断熱材を備えたものであり、ガスケットの空洞室壁面と、その外側の空気との熱交換量を抑制できる。また、マグネットを備えているので、その磁力によって金属筐体と密着するので、ガスケットと金属筐体の隙間を低減できることから、隙間を流出入する空気量を低減でき、ガスケットの断熱性能を向上できる。
【0011】
請求項2に記載のガスケットの発明は、請求項1に記載の発明において、空洞室壁面の外側の空気と接する面のうち、空気の熱伝達率が高い側に断熱材を備えたものであり、ガスケットと空気の熱交換量が多い側に断熱材を設けているので、伝熱量を抑制できるので、ガスケットの断熱性能をさらに向上できる。
【0012】
請求項3に記載のガスケットの発明は、請求項1または2に記載の発明において、空洞室壁面の一部に切り込みを設け、切り込みに断熱材の一部を挿入したものであり、空洞室の壁面面積を低減し断熱材を備えることができる。このため、空洞室壁面と断熱材の接触面積、つまり伝熱面積を低減できるので、ガスケットの断熱性能をさらに向上できる。
【0013】
請求項4に記載のガスケットの発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、断熱材を、ガスバリア性樹脂箱内に芯材を充填して減圧密封した真空断熱材としたものであり、断熱材の断熱性能を向上することができ、断熱材を通過する伝熱量を抑制できるので、ガスケットの断熱性能をさらに向上できる。
【0014】
請求項5に記載のガスケットの発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、断熱材を、ガスバリア性フィルムからなる外被材内に、ガラス繊維積層体である芯材を挿入して減圧密封した真空断熱材としたものであり、断熱材の断熱性能を向上することができ、断熱材を通過する伝熱量を抑制できるので、ガスケットの断熱性能をさらに向上できる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。また、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるガスケットとその周辺部分を示す断面図である。図2は同実施の形態のガスケットにおけるガスバリア性樹脂箱内に粉体芯材を充填して減圧密封した真空断熱材の断面図である。図3は同実施の形態のガスケットにおけるガスバリア性外被材内にガラス繊維芯材を挿入して減圧密封した真空断熱材の断面図である。
【0017】
図1に示すガスケット101は塩化ビニル製であり、空洞室102とマグネット室103を備えている。マグネット室103内にはマグネット104を配置している。空洞室102の壁面には切り込みがあり、そこに断熱材105の一部が挿入されている。空洞室102の下部には、先端がくさび状の差込部106を備えている。
【0018】
キャビネット107の壁面は、鋼板製の外箱108とABS製の内箱109の間に発泡ウレタン断熱材110を充填して形成されている。なお、発泡ウレタン断熱材110を薄肉化する場合には、真空断熱材を埋設するとよい。
【0019】
ドア111の周縁部には、差込部106を挿入してガスケット101をドア111に固定する取付け溝112が設けられている。
【0020】
図2に示すように、断熱材105は、ガスバリア性を有する樹脂箱113内に粉体芯材114を充填し、内部を10Pa以下に減圧して密封している。粉体芯材114は、1次粒子径が5〜20ナノメーターの微粉体であり、充填時の空間率は90%以上を有する。
【0021】
図3に示すように、断熱材105は、ガスバリア性を有するラミネートフィルムで作製された外被材115内にガラス繊維を焼成してボード化した芯材116を充填し、内部を10Pa以下に減圧して密封してもよい。また、水分吸着材117を同封することにより、残存水分による影響を低減できる。
【0022】
以上のように、空洞室102と、空洞室102上部にマグネット室103を備え、空洞室102壁面の外側の空気と接する面に断熱材105を備えたものであり、ガスケット101の空洞室102壁面と、その外側の空気との熱交換量を抑制できる。また、マグネット101を備えているので、その磁力によって金属筐体と密着するので、ガスケット101と金属筐体の隙間を低減できることから、隙間を流出入する空気量を低減できるので、ガスケット101の断熱性能を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明にかかるガスケットは、ガスケットと空気が接する面に断熱材を有して伝熱量を抑制できる。このため、冷蔵庫やショーケースなどの断熱効果が向上し、電気エネルギーによって運転される各種保冷、保温機器の省エネができ、さらに住宅等の開閉部の断熱にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1におけるガスケットとその周辺部分を示す断面図
【図2】同実施の形態のガスケットにおけるガスバリア性樹脂箱内に粉体芯材を充填して減圧密封した真空断熱材の断面図
【図3】同実施の形態のガスケットにおけるガスバリア性外被材内にガラス繊維芯材を挿入して減圧密封した真空断熱材の断面図
【図4】従来の冷蔵庫用ガスケットの断面図
【符号の説明】
【0025】
101 ガスケット
102 空洞室
103 マグネット室
105 断熱材
113 ガスバリア性樹脂箱
114 芯材(粉体)
115 ガスバリア性外被材(ラミネートフィルム)
116 芯材(ガラス繊維)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞室と、前記空洞室上部にマグネット室を備え、前記空洞室壁面の外側の空気と接する面に断熱材を備えたことを特徴とするガスケット。
【請求項2】
空洞室壁面の外側の空気と接する面のうち、空気の熱伝達率が高い側に断熱材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
空洞室壁面の一部に切り込みを設け、前記切り込みに断熱材の一部を挿入したことを特徴とする請求項1または2に記載のガスケット。
【請求項4】
断熱材は、ガスバリア性樹脂箱内に芯材を充填して減圧密封した真空断熱材であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項5】
断熱材は、ガスバリア性フィルムからなる外被材内に、ガラス繊維積層体である芯材を挿入して減圧密封した真空断熱材であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−109053(P2009−109053A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279889(P2007−279889)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能、高機能真空断熱材」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】