説明

ガスケット

【課題】ガスケットの装着性や装着後の安定性(座り性)が良く、低反力で高圧縮が可能で有ると共に、設置スペースを狭くする為に、ケースとカバーとを固定する為のボルト孔をガスケット自体に設ける態様とする事を可能とした信頼性が高いガスケットを提供できることを目的とするものである。
【解決手段】対向する2面間の隙間をシールするガスケットであって、前記ガスケットは、平板状本体部と、前記本体部の一方の表面に設けられ、前記本体部に沿って相互に平行にのびる2本のリップ状突起と、前記本体部の他方の表面に設けられ、前記本体部に沿って相互に平行にのびる2本の小突起と、前記本体部の複数箇所に設けた貫通孔と、前記貫通孔を取り囲む様に設けた環状シール部とより成ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットに関するものである。
更に詳しくは、電気自動車、燃料電池車、ハイブリッド車等に使用される電池等に使用して有用なガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリーケース等の下側の基部であるケースと、上側の蓋部であるカバーとの間の隙間をシールする為のガスケットとして、断面円形のOリングや、Oリングを上下方向に引き伸ばした図8に示す断面形状のガスケット100が使用されてきた。(特許文献1)
【0003】
しかし、Oリングは、形状が単純で作りやすく、装着性や装着後の安定性(座り性)が良い利点はあるが、高圧縮時に圧縮割れを引き起こし易く、高反力となる欠点を有している。
【0004】
この為、隙間が大きく変動する箇所や、取り付ける相手部材であるケースやカバーの材質が脆弱な箇所には使用できない問題を惹起すると共に、円形断面を圧縮して使用する為、圧縮状態(セット状態)でのOリングの幅が大きくならざるを得ず、設置スペースが狭い場合や、設置幅に比べて高圧縮が必要な場合には使用出来ない問題を招来した。
【0005】
また、図8に示す断面形状のガスケット100は、単純な形状のOリングに比べ、高圧縮時における圧縮割れや、反力をある程度低下させる効果は期待出来るが、十分満足できる低反力とすることが出来ないだけでなく、座り性が悪い為、図8に示す様なケース200に設けた溝210内に装着する形で使用せざるを得なかった。
更に、設置スペースを狭くする為に、ケースとカバーとを固定する為のボルト孔をガスケット100自体に設ける態様とする事は不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−16621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ガスケットの装着性や装着後の安定性(座り性)が良く、低反力で高圧縮が可能で有ると共に、設置スペースを狭くする為に、ケースとカバーとを固定する為のボルト孔をガスケット自体に設ける態様とする事を可能とした信頼性が高いガスケットを提供できることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明にあっては、対向する2面間の隙間をシールするガスケットであって、前記ガスケットは、平板状本体部と、前記本体部の一方の表面に設けられ、前記本体部に沿って相互に平行にのびる2本のリップ状突起と、前記本体部の他方の表面に設けられ、前記本体部に沿って相互に平行にのびる2本の小突起と、前記本体部の複数箇所に設けた貫通孔と、前記貫通孔を取り囲む様に設けた環状シール部とより成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明のガスケットによれば、ガスケットの装着性や装着後の安定性(座り性)が良く、低反力で高圧縮が可能で有ると共に、設置スペースを狭くする為に、ケースとカバーとを固定する為のボルト孔をガスケット自体に設ける態様とする事が出来る。
また、請求項2記載の発明のガスケットによれば、より低反力で高圧縮が可能なガスケットとすることが出来る。
【0010】
更に、請求項3記載の発明のガスケットによれば、シール性能の信頼性をより高める事が出来る。
更に、請求項4記載の発明のガスケットによれば、ガスケットが過大に圧縮される事が無く、ガスケットの損傷を、より確実に阻止することが出来る。
【0011】
更に、請求項5記載の発明のガスケットによれば、ケースとカバーとを固定する為のボルトを貫通孔に挿入する際に、ガスケットがボルトにより損傷することを効果的に阻止出来る。
更に、請求項6記載の発明のガスケットによれば、ガスケットの使用状態において、不必要な締め代が無くなる為、ガスケットの寿命を長くする事が出来る。
【0012】
更に、請求項7記載の発明のガスケットによれば、長尺のガスケットであっても、正確で、かつ安定した状態に取り付ける事が出来る。
更に、請求項8記載の発明のガスケットによれば、より低反力で高圧縮が可能なガスケットとすることが出来る。
【0013】
更に、請求項9記載の発明のガスケットによれば、ガスケットを装着する為の溝を形成する必要が無い為、シール構造全体を安価に提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るガスケットの一部を切欠いて示した平面図。
【図2】図1の部分側面図。
【図3】図1の部分拡大図。
【図4】図1のA−A断面図。
【図5】図1のB−B断面図。
【図6】図1のC−C断面図。
【図7】図5に示した箇所が使用状態に圧縮された状態の断面図。
【図8】従来技術に係るガスケットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明に係る形態のガスケットは、図1、図2、図3、図4、図5、図6及び図7に示す様に、対向する2面2、3間の隙間をシールするガスケット1であって、このガスケット1は、平板状の本体部11と、この本体部11の一方の表面111に設けられ、本体部11に沿って相互に平行にのびる2本のリップ状突起12、12と、本体部11の他方の表面112に設けられ、本体部11に沿って相互に平行にのびる2本の小突起13、13と、本体部11の複数箇所に設けたボルト挿入用の貫通孔14と、この貫通孔14を取り囲む様に設けた環状シール部15とより構成されている。
【0016】
そして、このリップ状突起12は、図5及び図6に示す様に、山形形状の基部121の頂部に基部121に比べより先鋭な山部122を形成した2段リップ形状となっている。
この様に、小突起13を設けた本体部11は、ガスケット1が配置される一方の面3に対し安定した状態で保持されると共に、リップ状突起12が図に示す様な2段リップ形状となっている為、低反力で高圧縮が可能なガスケットとすることが出来る。
【0017】
一方、環状シール部15の断面形状は、図4に示す様に上下に線対称の2段リップ形状となっている。
この様に、環状シール部15は、貫通孔14の様な円周形状部位に使用するもので、断面が上下対象形状であって、先端部151と中央部の間に一段もしくは二段以上の段差があり、環状シール部15の断面の縦横比が、1:0.8〜1:0.3である様な形状となっている。
また、環状シール部15の先端部151の先端角度αは、45〜80度、好ましくは55〜65度となる様に設計されている。
【0018】
また、先端部151の高さ寸法Xは、全体の高さ寸法Yの1〜20%、好ましくは3〜7%の範囲にある事が、良好なシール性能を発揮する上で好ましい。
また、図4に示す様に、環状シール部15は、略中央部(図上上下中間部)で最もボリュームが有り、上下にいくに連れて細まっていく形状となっている。
この為、上下から圧縮された際に、環状シール部15は、上下均等に圧縮され、上下中央部が外側に膨れて張り出すため、高圧縮時に低反力である上、環状シール部15が倒れることがない。
【0019】
更に、環状シール部15は、2段リップ形状となっている為、ガスケット1の圧縮量が少ない時は高いピーク面圧を発生し、圧縮量が多い時は倒れ難く、かつ低反力を達成できる。
【0020】
ガスケット1に使用される材料は、ゴム状弾性を備えたゴム材である。
ゴム材としては、ニトリルゴム、アクリルゴム、EPDM、CR、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム等が挙げられ、各種用途に応じて適宜選択して用いられる。
ゴム硬度は、好ましくはHs40〜Hs60で、低反力とする為に、Hs70以下とする事が重要である。
【0021】
一方、図4に示す様に、貫通孔14には、金属環4が装着されている。
金属環4の軸方向長さZは、環状シール部15の全体の高さ寸法Yよりも短く、具体的には、高さ寸法Yから、上下に設けられた先端部151,151の高さ寸法Xを引いた長さに略等しい。
【0022】
この為、ガスケット1が、上下の2面2、3間で圧縮された際には、金属環4がストッパー機能を発揮して、ガスケット1は、金属環4の軸方向長さZ以上には圧縮されない為、ガスケット1が、過剰に圧縮され、圧縮割れを起こす事を効果的に回避出来る。
また、低反力の先端部151,151の領域のみが圧縮される為、ガスケット1全体の機能が長期間維持出来る。
【0023】
更に、金属環4の一方の軸方向端部には、径方向外方に伸びるフランジ部41が設けられている。
この為、貫通孔14にボルト等の固定手段を挿入する際、ボルトの挿入位置が多少ずれても、フランジ部41により、ガスケット1にボルトが接触する事を阻止し、ガスケット1が損傷する事を効果的に阻止出来る。
従って、フランジ部41は、ボルト等の固定手段が挿入される側に存在させることが必要である。
【0024】
また、図7に示す様に、金属環4の外周面と環状シール部15の内周面との間の締め代は、ガスケット1が、バッテリーケース等の下側の基部であるケースの面3と、上側の蓋部であるカバーの面2との間で圧縮挟持された使用状態において、環状シール部15全体が径方向外方に広がる事により、締め代が無くなる(金属環4の外周面と環状シール部15の内周面との間に間隙Wが生ずる)様な値に設計されている。
この事により、ガスケットの使用状態において、不必要な締め代が無くなる為、ガスケットの寿命を長くする事が出来る。
【0025】
更に、図2及び図5に示す様に、本体部11の他方の表面側には、ガスケット1を挟持する2面2、3の一方に設けた孔に挿入する為の、複数の位置決め用突起16、16が形成されている。
この一定間隔に設けた位置決め用突起16、16を、相手面2、3に設けた孔に順次挿入して組み込んでゆく為、ガスケット1の装着が容易であると共に、装着時にガスケット1に不要な応力が作用しない為、初期シール性能が良好で、長期間安定したシール性能が維持出来る。
【0026】
また、小突起13、13の両側には、逃げ溝17、17が設けられている。
この為、小突起13、13が圧縮された際、小突起13、13の一部が、逃げ溝17、17に入り込める為、小突起13、13の低反力が維持出来る
【0027】
更に、図7からも明らかなように、ガスケット1が挟持される面2、3には、何れも溝部が設けられていない平面形状となっている。
本発明に係るガスケット1は、この様な溝部が存在しない取付構造のものに於いて、特に安定したシール性能を発揮する。
従って、シール構造全体を安価に提供出来る。
【0028】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、その他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係るガスケットは、電気自動車、燃料電池車、ハイブリッド車等に使用される電池等の下側の基部であるケースと、上側の蓋部であるカバーとの間の隙間をシールする為に使用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 ガスケット
2 一方の面
3 他方の面
4 金属環
11 本体部
12 リップ状突起
13 小突起
14 貫通孔
15 環状シール部
16 位置決め用突起
17逃げ溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2面(2)、(3)間の隙間をシールするガスケット(1)であって、前記ガスケット(1)は、平板状本体部(11)と、前記本体部(11)の一方の表面(111)に設けられ、前記本体部(11)に沿って相互に平行にのびる2本のリップ状突起(12)と、前記本体部(11)の他方の表面(112)に設けられ、前記本体部(11)に沿って相互に平行にのびる2本の小突起(13)と、前記本体部(11)の複数箇所に設けた貫通孔(14)と、前記貫通孔(14)を取り囲む様に設けた環状シール部(15)とより成ることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記リップ状突起(12)が、山形形状の基部(121)の頂部に前記基部(121)に比べより先鋭な山部(122)を形成した2段リップ形状であることを特徴とする請求項1記載のガスケット。
【請求項3】
前記環状シール部(15)の断面形状が線対称の2段リップ形状であることを特徴とする請求項1または2記載のガスケット。
【請求項4】
前記貫通孔(14)には金属環(4)が装着されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載のガスケット。
【請求項5】
前記金属環(4)の一方の軸方向端部には、径方向外方に伸びるフランジ部(41)が設けられていることを特徴とする請求項4記載のガスケット。
【請求項6】
前記金属環(4)の外周面と前記環状シール部(15)の内周面との間の締め代は、前記ガスケット(1)が前記2面(2)、(3)の間で圧縮挟持された使用状態において、前記締め代が無くなる様な値であることを特徴とする請求項4または5記載のガスケット。
【請求項7】
前記本体部(11)の他方の表面側には、前記2面(2)、(3)の一方に設けた孔に挿入する為の位置決め用突起(16)が形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項8】
前記小突起(13)の両側には、逃げ溝(17)が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項9】
前記2面(2)、(3)が、何れも溝部を設けない平面形状であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−122536(P2012−122536A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273134(P2010−273134)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】