説明

ガスセンサとガスセンサの断線検出方法

【目的】被測定ガス中に含まれる導電性の微粒子の濃度を検出するガスセンサにおいて、不感期間がなく、断線異常を速やかに検出できる信頼性の高いガスセンサとその断線検出方法を提供する、
【解決手段】検出部11と抵抗測定手段60との間を繋ぐ導通経路(111〜117、121〜127)の断線の有無を検出する断線検出手段として、所定の抵抗値ROFFSETを有する断線検出抵抗13を一対の検出電極110、120を導通すると共に、検出電極(110、120)間に形成される検出抵抗RSENに対して並列となるように反抵抗測定手段側に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼排気等の被測定ガス中に含まれる導電性微粒子を検出するガスセンサとガスセンサの断線異常を早期に検出する断線検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コモンレール式燃料噴射システム、過給器システム、酸化触媒、ディーゼル粒子状物質フィルタDPF、選択触媒還元(SCR)システム、排気再循環(EGR)システム等を組み合わせて、ディーゼル機関やガソリンリーンバーン機関等の燃焼排気中に含まれる窒素酸化物NOx、粒状物質PM、未燃炭化水素HC等の環境負荷物質の低減が図られている。
このようなシステムに用いられるDPFは、一般に、耐熱性に優れ、かつ、無数の細孔を有する多孔質セラミックスを素材としたハニカム構造とされ、多孔質の隔壁に存在する細孔中にPMを捕捉し、PMが堆積して細孔に目詰まりを起こして圧力損失が高くなると、バーナやヒータ等で加熱したり、機関の燃焼爆発後に少量の燃料を噴射するポスト噴射等によりDPF内に高温の燃焼排気を導入したりして、DPFを加熱し、DPF内に捕集されたPMを燃焼除去して再生できる構成とされている。
内燃機関の燃焼効率をさらに向上すべく、このようなDPFの再生時期の判断や、DPFの劣化、破損等を検出するOBD(オンボードダイアグノーシス、車載式故障診断装置)や、内燃機関のフィードバック制御等において、燃焼排気中に含まれるPMを高精度で連続的に検出できるガスセンサが必要とされている。さらに、このようなPMを検出するガスセンサを用いる場合、ガスセンサの故障に対する確実なフェールセーフが求められている。
【0003】
燃焼排気中のPMの検出手段として、特許文献1には、耐熱性及び電気絶縁性を有する基板の表面に一対の電極を形成し、該電極間を検出部とし、前記基板の裏面及び/又は内部に発熱体を形成し、該基板上の検出部を形成する前記電極、検出部及び端子部を除く導電部を気密で電気絶縁物質よりなる保護層で被覆し、該検出部と保護層との境界付近の発熱体の発熱密度を該検出部の発熱密度より高くし、該検出部の温度を400℃以上で且つ600℃以下に加熱することを特徴とするスモーク濃度センサが開示されている。
【0004】
ところが、特許文献1にあるような、従来のスモーク濃度センサでは、導電性のスモークの堆積により変化する一対の電極間の電気抵抗を電子回路により検出しているが、スモークが堆積していない状態では一対の電極間は絶縁状態であるので、スモークの堆積によって一対の電極間の電気抵抗が徐々に低下し電子回路によって電気抵抗が検出できるようになるまでに不感期間が存在する。
【0005】
このような不感期間の問題を解消する方法として、特許文献2には、ガス流内の微粒子を検出するための検出装置であって、基板上に形成された少なくとも2つの電極からなる電極対を具備すると共に、該電極対の少なくとも2つの電極が導電層によって覆われ、該導電層の抵抗値が測定ガス中の微粒子によって形成される抵抗値の最小値と同等又はそれ以下の抵抗値であることを特徴とする微粒子検出装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、このような微粒子検出装置において、ガス流中の微粒子を検出する検出用の電極対とは別に参照用の電極対を具備し、検出用の電極対間に流れる電流と参照用の電極対間に流れる電流との比又は差が所定の閾値を超えたとき断線と認識する検出装置と異常検出方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献2にあるように、2つの電極を覆うように形成した導電層によって電極間を導通させて、電極間に堆積する微粒子によって形成される抵抗が検出可能となるまでの不感期間を解消しようとした場合、導電層の抵抗値として、極めて狭い範囲の抵抗値を維持することが必要となる。
しかし、このような微粒子検出装置では、検出用の電極対に堆積する微粒子を加熱燃焼除去する必要がある。このため、長期の使用により加熱が繰り返されると導電層と電極との間で金属成分が移動するマイグレーションを起こし、導電層の抵抗値が変化する。導電層の抵抗値の変化は、検出結果に影響を与え、ガス流中の微粒子の正確な検出ができなくなる虞がある。
また、このような検出装置では、導電層によって全面的に両電極間が導通されているため、2つの電極のいずれか一方又は両方に断線異常が生じた場合であっても、導電層によって断線部分を導通する導電パスが形成されるため断線異常を検出することができない。
【0008】
また、特許文献3にあるように、参照用電極対との比較によって検出用電極対の断線の有無を検出しようとした場合、従来の一対の電極によって粒子の検出を行う場合の倍の電極対が必要であるので製造コストの増加を招く虞がある。
さらに、参照用電極対自身の断線を検出することができない虞もある。
【0009】
そこで、かかる実情に鑑み、本願発明は、簡易な構成により被測定ガス中に含まれる導電性の微粒子の濃度を検出するガスセンサにおいて、不感期間がなく、断線異常を速やかに検出できる信頼性の高いガスセンサとその断線検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明では、少なくとも、被測定ガスに晒され、電気絶縁性耐熱基板の表面に所定の間隙を設けて対向する一対の検出電極を設けた検出部と該検出部を加熱する加熱部とを有する微粒子検出素子と、該微粒子検出素子によって検出された導電性微粒子の量に応じて変化する上記検出電極間の電気抵抗を測定する抵抗測定手段とを具備して、被測定ガス中の導電性微粒子の濃度を検出するガスセンサにおいて、
上記検出部と上記抵抗測定手段との間を繋ぐ導通経路の断線の有無を検出する断線検出手段として、所定の抵抗値を有する断線検出抵抗を上記一対の検出電極を導通すると共に、該検出電極間に形成される検出抵抗に対して並列となるように反抵抗測定手段側に設ける(請求項1)。
【0011】
第1の発明によれば、微粒子の堆積により上記検出部に形成される検出抵抗と上記断線検出抵抗とが並列に接続されているので、これらの合成抵抗が低下し、上記抵抗測定手段によって検出するときに、上記微粒子検出素子に流れる電流を該抵抗測定手段の検出限界以上に引上げ、不感期間を解消することができる。
加えて、上記検出部と上記抵抗測定手段とを繋ぐ通電経路が、上記断線検出抵抗を介して直列に接続された状態となるので、上記通電経路に断線が発生した場合には、上記検出部に堆積した微粒子を上記加熱部によって加熱し、微粒子を燃焼除去した直後において、出力電圧が0となるので、確実に上記検出部と上記抵抗測定手段とを繋ぐ通電経路の断線を検出することが可能となり、速やかに異常を警告する等により異常解消のための対応を図ることができる。
【0012】
第2の発明では、上記一対の検出電極を複数の電極が突出する櫛歯形状に形成し、これらを対向せしめる。
【0013】
第2の発明によれば、 第1の発明と同様に、不感期間が解消されるのに加え、上記検出部の微粒子が堆積する部分以外の通電経路に断線が発生した場合に、出力電圧が0となるので、断線を検出することが可能となる。
【0014】
第3の発明では、上記一対の検出電極の一部をクランク状に屈曲させて、これらを対向せしめる(請求項3)。
【0015】
第3の発明によれば、第1の発明と同様に、不感期間を解消することができる上に、上記一対の検出電極を含め上記検出部と上記抵抗測定手段とを繋ぐ通電経路の全てが、上記断線検出抵抗を介して直列に接続された状態となるので、上記検出電極及び上記通電経路のいずれかに断線が発生した場合に、それが上記検出電極と上記通電経路の如何なる場所であっても、上記検出部に堆積した微粒子を上記加熱部によって加熱し燃焼除去した直後には、出力電圧が0となるので、確実に断線を検出することが可能となり、速やかに異常を警告する等により異常解消のための対応を図ることができ、より信頼性の高いガスセンサが実現できる。
【0016】
第4の発明では、上記断線検出抵抗を熱的に安定した位置に載置する(請求項4)。
【0017】
第4の発明によれば、上記断線検出抵抗の抵抗値が安定し、確実に断線検出を行うことができる。
【0018】
第5の発明では、上記断線検出抵抗として感温特性を有するサーミスタを用いると共に、上記検出部側に設ける(請求項5)。
【0019】
第5の発明によれば、第1の発明と同様の効果に加え、上記検出部の温度を検出することが可能となり、微粒子検出時の検出部の温度管理や上記加熱部の温度制御がより正確に実現できるようになり、さらに信頼性の高いガスセンサが実現できる。
【0020】
第6の発明では、少なくとも、被測定ガスに晒され、電気絶縁性耐熱基板の表面に所定の間隙を設けて対向する一対の検出電極を設けた検出部と該検出部を加熱する加熱部とを有する微粒子検出素子と、該微粒子検出素子によって検出された導電性微粒子の量に応じて変化する上記検出電極間の電気抵抗を測定する抵抗測定手段とを具備して、被測定ガス中の導電性微粒子の濃度を検出するガスセンサの断線検出方法であって、
上記ガスセンサが、上記検出部と上記抵抗測定手段との間を繋ぐ導通経路の断線の有無を検出する断線検出手段として、上記一対の検出電極を導通すると共に、該検出電極間に形成される検出抵抗に対して並列となるように設けた、所定の抵抗値を有する断線検出抵抗を具備し、
少なくとも、上記検出抵抗と上記断線検出抵抗との合成抵抗によって検出される出力電圧と所定の閾値との比較によって断線の有無を検出する断線判定手段を有し、上記出力電圧が所定の閾値を越えた場合に断線と判定する(請求項6)。
【0021】
第6の発明によれば、断線を生じていなければ、少なくとも上記断線検出抵抗によって導通が確保されているので、上記出力電圧が必ず発生し、誤差を考慮して、上記出力電圧が上記所定の閾値を越えた場合には、確実に断線していると判断できる。
なお、上記出力電圧が上記所定の閾値以上を断線と判断するか上記所定の閾値以下を断線と判断するかは、上記抵抗測定手段を上記検出抵抗に対してハイサイドに設けるかローサイドに設けるか、上記出力電圧を反転出力とするか非反転出力とするか、上記閾値を上記出力電圧に対してハイサイドに設けるかローサイドに設けるか等によって適宜変更可能である。
【0022】
第7の発明では、上記加熱部の作動により上記検出部に堆積した微粒子を燃焼除去する燃焼行程と、燃焼時間及び微粒子検出素子の出力のいずれか1つ若しくは両方を用いて微粒子の燃焼完了を判定する微粒子燃焼完了判定手段と、微粒子の燃焼確認後における微粒子検出素子の出力の有無によって断線の有無を判定する断線判定手段とを具備し、微粒子を完全に除去した状態で断線の有無を判定する(請求項7)。
【0023】
第7の発明によれば、確実に微粒子を燃焼除去した状態で断線の有無を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態における微粒子検出素子を含むガスセンサの概要を示し、(a)は、展開斜視図、(b)は、PM堆積時における検出部の等価回路図、(c)は、PM燃焼後における検出部の等価回路図。
【図2】本発明の第1の実施形態における微粒子検出素子の変形例を示す展開斜視図。
【図3】本発明の第1の実施形態における微粒子検出素子を用いたガスセンサ全体の概要を2方向から示す断面図。
【図4】本発明の第1の実施形態における微粒子検出素子の他の変形例を示す展開斜視図。
【図5】本発明の第1の実施形態における微粒子検出素子の他の変形例の概要を示し、(a)は検出部側から見た斜視図、(b)は、裏面側から見た斜視図。
【図6】本発明の第1の実施形態における微粒子検出素子の他の変形例を示す展開斜視図。
【図7】本発明の第2の実施形態における微粒子検出素子を含むガスセンサの概要を示し、(a)は、展開斜視図、(b)は、PM堆積時における検出部の等価回路図、(c)は、PM燃焼後における検出部の等価回路図。
【図8】本発明の第2の実施形態における微粒子検出素子の変形例を示し、(a)は平面図、(b)は、その断面図、(c)は、他の変形例を示す平面図、(b)は、その断面図。
【図9】本発明の第2の実施形態における検出部の変形例を示し、(a)は、定電流電源を用いた等価回路図、(b)は、低電圧電源を用いた等価回路図。
【図10】本発明のガスセンサに用いられ得断線検出方法を示すフローチャートであって、(a)は、最も基本的なフローチャート、(b)は、より確実な断線検出を図ったフローチャート。
【図11】本発明のガスセンサに用いられる断線検出方法を示すフローチャート。
【図12】本発明の微粒子検出素子の不感期間解消効果を比較例と共に示す特性図。
【図13】本発明のガスセンサの断線検出効果を示し、(a)は、検出部以外で断線が発生した場合の特性図、(b)は、検出部に断線が発生した場合の特性図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照して、本発明の第1の実施形態における微粒子検出素子10とこれを有するガスセンサ1の概要について説明する。
本発明の第1の実施形態における微粒子検出素子10は、例えば、ディーゼル内燃機関から排出される燃焼排気中に含まれる粒子状物質(PM)を捕集するディーゼル粒子状物質フィルタ(DPF)の故障診断(OBD)や、DPFの再生制御を行うべく、燃焼排気中のPM、特に、導電性微粒子の濃度を検出するガスセンサ1に用いられる。
微粒子検出素子10は、所定の間隙を設けて対向する一対の検出電極110と検出電極120とによって形成される検出部11に堆積するPMの量によって変化する検出抵抗RSENを外部に設けた抵抗測定手段60によって測定して、被測定ガス中のPMを検出するものである。検出電極110と検出電極120とは、それぞれリード部111、121から複数の電極が突出する櫛歯形状に形成し、これらを対向せしめてあり、電極間にPMが堆積するようになっている。
本発明の微粒子検出素子10は、検出部11と加熱部14とによって構成され、ガスセンサ1は、微粒子検出素子10と、微粒子検出素子10の検出部11に形成される検出抵抗RSENを測定する抵抗測定手段60と、検出部11を所定の温度に加熱して、検出抵抗RSENを安定化したり、検出部11に堆積したPMを加熱除去したりするための加熱部14への通電を制御するヒータ制御手段61と、抵抗測定手段60からの出力電圧VOUTに応じて、後述する断線判定制御等を行う電子制御装置70とによって構成されている。
【0026】
本発明の第1の実施形態における微粒子検出素子10の最大の特徴は、図1(b)に示すように、断線検出手段として、所定のオフセット抵抗値ROFFSETを有する断線検出抵抗13を介して検出電極110と検出電極120と導通すると共に、検出抵抗RSENに対して並列となるように断線検出抵抗13を反抵抗測定手段側に設けた点にある。
このような構成とすることによって、断線検出抵抗13のオフセット抵抗ROFFSETと検出抵抗RSENとの合成抵抗RSUM(=ROFFSET・RSEN/(ROFFSET+RSEN))を低くし、合成抵抗RSUMによって降下する出力電圧VOUTを、抵抗測定手段60として設けた分圧抵抗Rによって検出するときに微粒子検出素子10に流れる電流を抵抗測定手段60の検出限界以上に引上げ、不感期間を解消することができる。
検出部11に微粒子PMが堆積し、飽和状態となった場合には、検出抵抗RSENが断線検出抵抗ROFFSETに比べて遙かに小さくなり、電源電圧VCCを検出抵抗RSENと断線検出抵抗ROFFSETとの合成抵抗RSUM及び分圧抵抗Rとによって案分した出力電圧VOUTとして検出することができ、検出部11に堆積した微粒子PMが燃焼除去された場合には、検出抵抗RSENが断線検出抵抗ROFFSETに比べて遙かに大きくなり、電源電圧VCCを断線検出抵抗ROFFSETと分圧抵抗R1とによって案分した出力電圧VOUTとして検出することができる。
加えて、図1(c)に示すように、検出部11と抵抗測定手段60とを繋ぐ通電経路(111〜117、121〜127)が断線検出抵抗13を介して直列に接続された状態となるので、通電経路(111〜117、121〜127)のいずれかに断線が発生した場合に、検出部11に堆積したPMを燃焼除去した直後には、断線箇所によって通電経路が遮断され抵抗測定手段との導通がなくなるので、容易に断線を検出することが可能となり、速やかに異常を警告する等により異常解消のための対応を図ることができる。
なお、本実施形態においては、検出部11と抵抗測定手段60とを繋ぐ通電経路の断線を検出することができるが、検出電極110、120自体の断線を検出することはできない。
【0027】
電子制御装置70は、抵抗測定手段60によって検出された出力電圧VOUTに基づき、被測定ガス中のPM量を把握し、内燃機関の運転条件にフィードバックさせると共に、PM量に応じて、微粒子検出素子10の検出条件を決定したり、微粒子検出素子10の再生の要否を判断したりして、ヒータ140への通電条件を決定し、さらに、後述する断線判定手段に従って、微粒子検出素子10と抵抗測定手段60と間を繋ぐ通電経路に断線の有無を判定している。
【0028】
より具体的には、検出部11は、電気絶縁性耐熱基板100と、電気絶縁性耐熱基板100上に所定の距離を離隔して設けた一対の検出電極110と検出電極120と、本発明の要部であり、検出電極110と検出電極120とを繋ぐ断線検出手段として設けた断線検出抵抗13によって構成されている。
本実施形態において、検出電極110と検出電極120とは、外部の抵抗測定手段60との導通を図るリード部111、121に接続されており、複数の検出電極110と検出電極120とが交互に対向するように櫛歯状に形成されている。
さらにリード部111、121の出力側の端部には、端子部112、122が形成され、外部の抵抗測定手段60と接続金具115、116、125、126、導通線117、127を介して接続されている。
また、リード部111、121の反出力側の端部には、本発明の要部であり、検出電極間に堆積するPMによって形成される検出抵抗RSENに対して並列となるように、所定の抵抗値ROFFSETを有し、不感期間解消手段と断線検出手段とを兼ねる、断線検出抵抗13が、断線検出抵抗リード部113、123、断線検出抵抗電極部114、124を介して接続されている。
さらに、断線検出抵抗13をバイパスしてリード部112、121間を短絡するように堆積するPMと、断線検出抵抗13、リード部113、114、123、124との電気絶縁性を確保するために、断線検出抵抗13及びリード部113、114、123、124の表面を覆うように電気絶縁性耐熱材料を用いて絶縁性耐熱保護層150が形成されている。
加熱部14は、通電により発熱するヒータ141と、ヒータ141と通電制御装置61とを接続する一対のヒータリード部142a、142bと、ヒータ端子部144a、144bと、電気絶縁性耐熱基板140と、絶縁性耐熱基板140を貫通し、ヒータリード部142a、142bとヒータ端子部144a、144bとを導通するスルーホール電極143a、143bと、通電線145a、145bと、検出部11以外、特に、電線検出抵抗13を保護する絶縁性耐熱保護層150とによって構成されている。
電気絶縁性耐熱基板100、140は、アルミナ等の電気絶縁性耐熱材料をドクターブレード法、プレス成形法、CIP、HIP等の公知の方法により平板状に形成されている。
検出電極110、120、リード部111、121、端子部112、122、断線検出抵抗リード部113、123、断線検出抵抗端子部114、124、ヒータ141、ヒータリード部142a、142b、ヒータ端子部144a、144bは、厚膜印刷、メッキ、蒸着等の公知の方法により電気絶縁性耐熱基板100、140上に形成されている。
断線検出抵抗13には、金属、金属酸化物、金属化合物、炭素、炭素化合物のいずれか1以上を含む単体又は複合体からなる抵抗体が用いられる。
本実施形態においては、電気絶縁性耐熱基板100の表面に厚膜形成した抵抗体を用いた例を示す。
また、本実施形態においては、断線検出抵抗13は、加熱部14によって加熱可能な位置に形成し、オフセット抵抗ROFFSETの安定化を図っている。
なお、検出部11に堆積するPMによって形成される検出抵抗RSENは、PM堆積時には、数百Ω〜1kΩとなり、PM燃焼時には1MΩ以上に変化する。
また、本実施形態において、断線検出抵抗13のオフセット抵抗ROFFSETは、16kΩ〜36kΩ、出力電圧検出手段60の分圧抵抗Rは、4kΩ〜24kΩに設定され、電源電圧VCCは、5.0vに設定されている。
【0029】
検出部11にPMが最大量堆積した場合、オフセット抵抗ROFFSETに比べて検出抵抗RSENが遙かに小さいので出力電圧VOUTは、検出抵抗RSENと分圧抵抗Rとによって決まり、4.0v〜4.8vとなり、ダイナミックレンジを有効活用すると共に、出力のバラツキを考慮しても安定して検出可能な範囲となる。
分圧抵抗Rを24kΩ以上にすると出力バラツキが大きくなり、分圧抵抗Rを4kΩ以下にするとダイナミックレンジが低下し、検出精度が悪くなる。
また、検出部11に堆積したPMが燃焼除去された状態では、オフセット抵抗ROFFSETに比べて検出抵抗RSENが遙かに大きいので出力電圧VOUTは、オフセット抵抗ROFFSETと分圧抵抗Rとによって決まり、0.5v〜1.0vとなる。
オフセット抵抗ROFFSETを36kΩ以上にすると、ダイナミックレンジが低下し、検出精度が悪くなり、オフセット抵抗ROFFSETを16kΩ以下にすると、オフセット値が小さくなり、正常時と断線時との判別が困難となる。
【0030】
図2を参照して、本発明の第1の実施形態における微粒子検出素子の変形例10aについて説明する。
上記実施形態においては、断線検出抵抗13を加熱部14によって加熱可能な位置に設けて、オフセット抵抗ROFFSETの安定化を図っているが、本実施形態においては、リード部111、121の反出力側から引き出した断線検出抵抗リード部113a、123aを、電気絶縁性基板100の出力側まで引き延ばし、被測定ガスの熱や、加熱部14からの熱を受けず、熱的に安定した位置に、断線検出抵抗端子部114a、124aを設け、チップ抵抗等の固定抵抗器からなる断線検出抵抗13aを実装し、オフセット抵抗ROFFSETの安定化を図っている。
なお、本実施形態において、断線検出抵抗13aとして感温特性を有するサーミスタを用いると共に、検出部側の加熱部14によって加熱可能な位置に設けても良い。
このような構成とすることにより、上記実施形態と同様の効果に加え、検出部11の温度を検出することが可能となり、微粒子検出時の検出部11の温度管理や加熱部14の温度制御がより正確に実現できるようになり、さらに信頼性の高いガスセンサが実現できる。
【0031】
図3を参照して、本発明の第1の実施形態における微粒子検出素子10aを用いたガスセンサ1のより具体的な構成について説明する。
ガスセンサ1は、微粒子検出素子10を内側に挿入保持する略筒状のインシュレータ21と、被測定ガスの流れる流路壁40に固定され、インシュレータ21を保持すると共に、微粒子検出素子10の検出部11を被測定流路400内の所定の位置に保持するハウジング20と、ハウジング20の先端側に設けられ、微粒子検出素子10の検出部11を保護するカバー体30と、ハウジング20の基端側に設けられ、接続金具115、116、125、126を介して微粒子検出素子10の端子部112、122に接続され、検出部11に捕集・堆積されたPM量に応じて変化する検出電極110、120間の検出電気抵抗RSENを外部の抵抗測定手段60に伝達する一対の信号線117、127と、微粒子検出素子10に内蔵されたヒータ1141とヒータ端子部145a、145b、接続金具146a、146bを介して接続される一対の導通線147a、147bとを、封止部材220を介して基端側で固定する略筒状のケーシング22とによって構成されている。
カバー体30のカバー基体300には、PMを含む被測定ガスを検出部11に導入するための被測定ガス入出孔301、302が適宜穿設され、基端側に設けたフランジ部303がハウジング20の先端側に設けた加締め部203によって加締め固定されている。
本実施形態において、断線検出抵抗13aは、インシュレータ21内の比較的温度が安定した位置に配置してある。
被測定ガスとして、PMを含むディーゼル燃焼排気が、被測定ガス流路400内を流れ、カバー体30に設けられた被測定ガス入出孔301、302から導入され、被測定ガス中に検出部11を晒している微粒子検出素子10の検出部11の表面に接触し、検出電極110、120の間にPMが堆積し、検出電極110、120間に検出抵抗RSENが形成され、ガスセンサ1の外部に設けた抵抗測定手段60によって検出抵抗RSENとオフセット抵抗ROFFSETとの合成抵抗を検出し、PMの堆積量を算出することができる。
【0032】
図4を参照して、本発明の第1の実施形態における微粒子検出素子10bとして他の変形例について説明する。上記実施形態においては、リード部111、121の反抵抗測定手段側の端部と断線検出抵抗13とを、電気絶縁性基板100に厚膜印刷等の方法により形成した断線検出抵抗リード部113、123を介して接続した例を示したが、本実施例における微粒子検出素子10bでは、断線線検出抵抗13bとして、電気絶縁性基板100の出力側に配置した、リード付き固定抵抗器を用い、リード線113b、123bを介してリード部111、121の反抵抗測定手段側の端部と接続してある。このような構成とすることにより、厚膜によって形成した場合に比べ、断線検出抵抗リード部113b、123bの内部抵抗を小さくでき、検出精度の向上を図ると共に、断線検出抵抗リード部113b、123bの耐久性の向上を図ることもできる。
【0033】
図5を参照して、本発明の第1の実施形態における微粒子検出素子10cとして他の変形例を説明する。
図5に示すように、断線検出抵抗13cとして、リード付き固定抵抗器を用い、さらに、断線検出抵抗リード部113c、123cを折り曲げ、検出部11の裏面側で断線検出抵抗13cが加熱部14に接するようにしても良い。
このような構成とすることによって、断線検出抵抗13cをヒータ141によって加熱可能とし熱的に安定させると共に、検出部11の裏面側に配設することにより、断線検出抵抗リード部113c、123cと電気絶縁性基板100とが立体的に離隔されるのでPMの堆積による導電パスが形成されがたくなり。断線検出抵抗13cへの影響を廃除できる。
【0034】
図6を参照して、本発明の第1の実施形態における微粒子検出素子10dとして他の変形例を説明する。
上記実施形態においては、電気絶縁性基板10の表面に断線検出抵抗13を形成した例を示したが、本実施形態のように、電気絶縁性基板100dを検出部11と加熱部14との間に介挿し、その表面に断線検出抵抗リード部113d、123d及び断線検出抵抗13dを形成し、リード部111、121の反検出側の端部と電気絶縁性基板100dを貫通するスルーホール電極118、128を介して接続させても良い。
本実施形態においては、断線検出抵抗13dを非可熱領域に設けた例を示したが、ヒータ140によって加熱可能な位置に設けても良い。
【0035】
図7を参照して、本発明の第2の実施形態における微粒子検出素子10eを用いたガスセンサ1eの概要について説明する。
上記実施形態においては、検出部11を構成する一対の検出電極110、120を、それぞれ、リード部111、121から直線的に伸びるように複数の検出電極110、120を引き出し、これらを対向せしめて櫛歯状に形成した例を示したが、本実施形態においては、リード部111、121に接続される一対の検出電極110e、120eの一部をクランク状に屈曲させて所定の間隙を設けて対向させ、これらの反抵抗測定部側の端部が断線検出抵抗リード部113e、123eを介して断線検出抵抗13に接続してある。
このような構成とすることによって、図7(b)に示すように、PMの堆積により検出部11eに形成される検出抵抗RSENと、断線検出抵抗13のオフセット抵抗ROFFSETとが並列に接続されるので合成抵抗が低下し、電源電圧VCCから合成抵抗によって降下する出力電圧VOUTを、抵抗測定手段60として設けた分圧抵抗Rによって検出するときに、微粒子検出素子10に流れる電流を分圧抵抗Rの検出限界以上に引上げ、不感期間を解消することができる。
【0036】
加えて、図7(c)に示すように、検出電極110e、120eを含め検出部11と抵抗測定手段60とを繋ぐ通電経路(111、112、113e、114〜117、121、122、123e、124〜127)の全てが、断線検出抵抗13を介して直列に接続された状態となるので、検出電極110e、120e及び通電経路(111、112、113e、114〜117、121、122、123e、124〜127)のいずれかに断線が発生した場合に、導通経路のみならず検出部11の如何なる場所で断線が発生しても、検出部11に堆積したPMを燃焼除去した直後には、出力電圧VOUTが0となるので、確実に断線を検出することが可能となり、速やかに異常を警告する等により異常解消のための対応を図ることができる。
上記第1の実施形態においては、導通経路における断線の有無の検出は可能でも、検出電極110、120自体の断線の検出ができなかったが、本実施形態においては、検出電極110e、120e自体の断線も検出することができる。
なお、本実施形態においては、分圧抵抗Rを検出抵抗RSENと接地との間に設けた例を示したが、電源電圧VCCと検出抵抗RSENとの間に設けた構成としても良い。
【0037】
図8を参照して、本発明の第2の実施形態における微粒子検出素子10f、10gとして変形例について説明する。
本実施形態においても上記実施形態と同様、断線検出抵抗リード部113、123を介して断線検出抵抗13f、13gの載置位置を検出部11f、11gの電気的に反出力側に載置するのであれば、断線検出抵抗13の載置位置を適宜変更することができる。
【0038】
図9を参照して、本発明の第2の実施形態における検出部11の変形例について説明する。上記実施形態においては、断線検出抵抗ROFFSETと検出抵抗RSENの合成抵抗RSUMと分圧抵抗Rとによって電源電圧VCCを分圧して出力電圧VOUTを検出するように構成した例について説明したが、本図(a)に示すように、定電流電源60hを設け、オペアンプ601によって、出力電圧VOUTを検出するように構成しても良いし、本図(b)に示すように、定電圧電源80を用い、オペアンプ601iを用いて出力電圧VOUTを検出するように構成しても良い。
なお、これらの実施形態は、本発明の第1の実施形態にも適宜採用し得るものである。
【0039】
図10を参照して、本発明のガスセンサ1の基本的な断線検出方法について説明する。
本図(a)は、最も単純化した断線検出方法を示すものであり、ステップS100の出力電圧閾値判定手段では、出力電圧VOUTと所定の閾値VREFとの比較を行い、例えば閾値VREFとして、0vに近い値を設定すれば、出力電圧VOUTが限りなく0vに近ければ判定Yesとなり、断線が発生していると判断され、ステップS110の断線判定がなされ、出力電圧VOUTが所定の閾値VREF以上であれば、断線があるとは判定されず、見かけ上正常と判断し得るので、判定Noとなり、一応の正常判定とすることもできるが、より正確な判定をするために、後述するステップS200の正常判定手段に進む。
本実施形態によれば、断線を生じていなければ、少なくとも断線検出抵抗13によって導通が確保されているので、出力電圧VOUTが必ず発生し、誤差を考慮して、出力電圧VOUTが所定の閾値VREFより小さければ、確実に断線していると判断できる。
【0040】
なお、本実施形態においては、出力電圧VOUTが所定の閾値VREF以下を断線と判断したが、所定の閾値VREF以上を断線と判断するように構成しても良い。 出力電圧VOUTが上定の閾値VREF以上を断線と判断するか、所定の閾値VREF以下を断線と判断するかは、、抵抗測定手段60を検出抵抗RSENに対してハイサイドに設けるかローサイドに設けるか、出力電圧VOUTを反転出力とするか非反転出力とするか、閾値VREFを形成する分圧抵抗Rを検出抵抗RSENに対して、ハイサイドに設けるかローサイドに設けるか等によって適宜変更可能である。
【0041】
本図(b)は、確実な断線の有無を判定するための判定方法を示すフローチャートである。
ステップS200のPM燃焼行程では、検出部11に堆積したPMを燃焼するためにヒータ部14へ通電がなされPMが燃焼除去される。
ステップS210のPM燃焼完了判定手段では、PMの燃焼が完了したか否かが判定される。具体的には、PM燃焼行程がスタートしてからの燃焼時間を計測したり、検出抵抗RSENの出力の有無を検出することによって判断したり、これらの両方を組み合わせてPM燃焼が完了したか否かを判定することができる。
ステップS210で、燃焼完了していないと判定された場合には、判定Noとなり、ステップS200のPM燃焼行程に戻り、完全にPMが燃焼されるまで繰り返される。
検出部11に堆積したPMが完全に燃焼されるとステップS210の燃焼完了判定手段で判定Yesとなり、ステップS220の閾値判定手段に進む。
ステップS220の閾値判定手段では、出力電圧VOUTが所定の閾値より小さいか否かが判定され、断線が発生している場合には、出力電圧VOUTは0又は限りなく0に近い値となり、判定Yesとなり、断線判定される。
検出部11にPMが完全に堆積していない状態で、出力電圧VOUTが所定の閾値VREF(例えば、断線検出抵抗ROFFSETと分圧抵抗Rとによって分圧されたオフセット電圧VOFFSET)以上であれば、判定Noとなり、ステップS230の正常判定に進む。
【0042】
図11を参照して本発明のガスセンサ1の断線検出方法の他の具体例について説明する。電子制御装置70に設けられた断線検出手段では、図11に示したフローチャートに従って、ガスセンサ1の断線判定が開始される。なお、本断線検出方法は、断線検出手段であると同時に、ガスセンサの再生手段でもある。
ステップS300の第1の出力判定手段では、微粒子検出素子10の出力電圧VOUTの有無が判定され、出力電圧VOUTが0vより大きければ、判定Yesとなり、ステップS310に進み、出力電圧VOUTが0v、即ち、出力がなければ、判定にNoとなり、ステップS370の断線判定手段に進む。
ステップS310の第2の出力判定手段では、出力電圧VOUTが所定の第1の閾値Vref1より大きいか否かが判定される。出力電圧VOUTが第1の閾値Vref1以下である場合には、微粒子検出素子10の検出部11に堆積したPMの量が飽和状態となっておらず、PM量を検出可能であるため、判定Noとなる。PMの堆積量が所定量以上となり、検出電圧VOUTが第1の閾値Vref1以上となり、判定Yesとなるまで、ステップS300とステップS310とを繰り返す。
PMの堆積量が飽和量に近づき、ステップS310で判定Yesとなると、ステップS320の微粒子燃焼行程に進む。
ステップS320の微粒子燃焼行程では、検出部11に堆積したPM量が所定量以上となっているため、ヒータ140へ通電を開始し、検出部11に堆積したPMを燃焼除去させる。
微粒子燃焼行程が開始されると、出力電圧VOUTがモニタされ、ステップ130の微粒子燃焼完了判定手段において、PMの燃焼が完了されたかどうかを、出力電圧VOUTと第2の閾値Vref2との比較によって判定される。
PMの燃焼により、検出電極110、120間の検出抵抗RSENが上がり、出力電圧VOUTが第2の閾値Vref2以下となるまで、判定Noとなり、ステップS320とステップS330とを繰り返し、PMの燃焼のためにヒータ140への通電が維持される。
ステップS330で出力電圧VOUTが第2の閾値Vref2以下となり、判定YesとなるとステップS340の微粒子燃焼確認タイマtがスタートする。
次いでステップS350の微粒子燃焼確認判定手段では、微粒子燃焼確認タイマtが所定の閾値trefを経過したかどうかが判定される。
微粒子燃焼確認タイマtが閾値tref経過するまでは、出力電圧VOUTが所定の閾値Vref2以下となってもPMを確実に燃焼させるため、ヒータ140への通電が維持される。
所定時間が経過し、ステップS350で判定Yesとなるとステップ160の微粒子燃焼停止行程に進み、PMの燃焼のためのヒータ140への通電が停止される。
次いでステップS370の断線判定手段では、出力電圧VOUTが0vであるか否かによって、断線判定を行う。
ステップS340からステップS360によって確実にPMが燃焼された状態であるにも拘わらず、ステップS370において出力電圧VOUTが0vである場合には、断線していることが確実であるので、判定Yesとなり、ステップS380の断線判定を行う。
ステップS340からステップS360によって確実にPMが燃焼された状態であり、かつ、ステップS370において出力電圧VOUTが0v出ない場合には、正常であることが確実であるので、判定Noとなり、ステップS390の正常判定を行う。
ステップS300で出力電圧VOUTが0vであれば、断線しており、必然的にステップS370においても、出力電圧VOUTが0vとなり、判定Yesとなり、ステップS380の断線判定を行う。
スッテプS180及びステップS390では、断線の有無の判定結果をダイアグ出力等により外部に伝達し、断線判定を終了する。
なお、PMの堆積によって出力電圧VOUTが0vのままである場合には、検出部11以外の導通経路における断線であり、PMの堆積によって出力電圧VOUTが変化し、PMの燃焼後の出力電圧VOUTが0となる場合には、検出部11における断線であることと判断できるので、ステップ180における断線判定において、検出部11における断線であるか、検出部11以外の通電経路における断線であるかを判定してダイアグ出力を分けて行うこともできる。
【0043】
図12を参照して、本発明の微粒子検出素子10を用いたガスセンサ1の正常時における本発明の効果について、比較例と共に説明する。
本発明の断線検出抵抗13を備えていない微粒子検出素子を用いたガスセンサの出力変化を比較例として示す。
比較例では、一対の検出電極間にPMが堆積し始める時期においては、1MΩから10MΩ程度の極めて高い抵抗値であるため、出力電圧VOUTは、ほとんど0vで推移し、検出することができない不感期間tdが存在する。
このため、不感期間tdにおいて、ガスセンサ1に断線異常が発生していても異常かどうかの判断をすることができず、排気浄化装置の故障によるPMの流出等の異常を阻止できない虞がある。
一方、本発明の断線検出抵抗13を備えた微粒子検出素子10を用いたガスセンサ1では、断線検出抵抗13が、検出部11に堆積するPMによって形成される出力電極110、120間に検出抵抗RSENを形成したときに、検出抵抗RSENに対して、断線検出抵抗13のオフセット抵抗ROFSETが並列となるので、合成抵抗が下がり、PM堆積初期においても、出力電圧VOUTの検出が可能となる。
PMの堆積量が少ない場合、検出電極110、120間に形成される検出抵抗RSENが大きく、出力電圧VOUTは、オフセット抵抗ROFFSETと分圧抵抗R1とによって決まり、オフセット電圧VOFFSETにほぼ等しくなる。
さらに、PMの堆積が進み、出力電圧VOUTが第1の閾値Vref1以上となると、上述の断線判定手段に従って、PMの燃焼が開始され、出力電圧VOUTがオフセット電圧VOFFSETの近傍の第2の閾値VREF2以下となってから所定時間trefだけPMの燃焼が維持され確実にPMが除去された状態で、断線の有無が判定され、PM燃焼停止後の出力電圧VOUTが0v以上のオフセット電圧VOFFSETとなっていれば、正常判定され、そのままPMが堆積し、出力電圧VOUTが第1の閾値以上となると再びPMの燃焼が開始される。
【0044】
図13を参照して、断線異常が発生した場合の効果について説明する。
図13(a)に示すように、正常であれば、出力電圧VOUTは、PMの堆積によって出力電圧VOUTが上昇し、PMの燃焼によってもオフセット電圧VOFFSET以下とはならず、検出部11にPMが堆積している途中で検出部11以外の通電経路に断線が発生した場合には、PMの燃焼の有無に関わらず出力電圧VOUTが0となったまま継続されるので容易に断線が生じていることが分かる。
本発明の第1の実施形態における微粒子検出素子10、10a、10b、10c、10dと第2の実施形態における微粒子検出素子10e、10f、10gのいずれを用いてもこのような断線を検出することができる。
図13(b)に示すように、検出部11eに断線が発生した場合、PMの堆積途中では、断線部分にPMが堆積して導電パスを形成すると、出力電圧VOUTは、断線が生じていても0とならず、この状態では断線の有無が検出されず、ガスセンサ1は、一見正常なように機能する。
PMの堆積が進み出力電圧VOUTが第1の閾値Vref1以上となり、PMの燃焼が開始され、断線部分に堆積したPMが除去されると、検出部11の断線部以外にPMが残存していても、急激に抵抗値が高くなり、出力電圧VOUTは、第2の閾値Vref2以下となる。しかし、本発明では、出力電圧VOUTが第2の閾値となっても直ちにPMの燃焼を停止するのではなく、所定の時間trefだけ、PMの燃焼を維持し、完全に検出部11に堆積したPMを除去した後、断線判定を行う。
このため、検出部11に断線が生じている場合には、PM燃焼確認後に、出力電圧VOUTが0となっているので検出部11に断線が生じていることが解り、確実に断線判定をすることができる。
なお、検出部11に断線が生じている場合、このままガスセンサ1を作動させると、断線部にPMが堆積し、断線部をバイパスして一見正常なように作動するが、PM燃焼後には、出力電圧VOUTが0となり、断線異常であることが分かる。
【0045】
本発明は上記実施形態に限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、自動車エンジン等の内燃機関に搭載される粒子状物質検出センサを例に説明したが、本発明の粒子状物質検出センサは、車載用に限定されるものではなく、火力発電所等の大規模プラントにおける粒子状物質検出の用途にも利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 ガスセンサ
10 微粒子検出素子
11 検出部
110、120 検出電極
111、121 リード部
112、122 端子部
113、123 断線検出抵抗リード部
114、124 断線検出抵抗端子部
115、116、125、126 接続金具
117、127 信号線
100、140 電気絶縁性耐熱基板
13 断線検出抵抗
141 ヒータ
142a、142b ヒータリード部
143a、143b スルーホール電極
144a、144b ヒータ端子部
145a、145b、146a、146b 接続金具
147a、147b 通電線20 ハウジング
21 インシュレータ
22 ケーシング
220 封止部材
30 カバー体
301、302 被測定ガス入出孔
40 被測定ガス流路壁
400 被測定ガス流路
60 抵抗測定手段
61 加熱制御手段
70 電子制御装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開昭59−197847号公報
【特許文献2】国際公開第2008/138661号
【特許文献3】欧州特許出願公開第1925926号明細書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、被測定ガスに晒され、電気絶縁性耐熱基板の表面に所定の間隙を設けて対向する一対の検出電極を設けた検出部と該検出部を加熱する加熱部とを有する微粒子検出素子と、該微粒子検出素子によって検出された導電性微粒子の量に応じて変化する上記検出電極間の電気抵抗を測定する抵抗測定手段とを具備して、被測定ガス中の導電性微粒子の濃度を検出するガスセンサにおいて、
上記検出部と上記抵抗測定手段との間を繋ぐ導通経路の断線の有無を検出する断線検出手段として、所定の抵抗値を有する断線検出抵抗を上記一対の検出電極を導通すると共に、該検出電極間に形成される検出抵抗に対して並列となるように反抵抗測定手段側に設けたことを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
上記一対の検出電極を複数の電極が突出する櫛歯形状に形成し、これらを対向せしめた請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
上記一対の検出電極の一部をクランク状に屈曲させて、これらを対向せしめた請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項4】
上記断線検出抵抗を熱的に安定した位置に載置した1ないし3のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項5】
上記断線検出抵抗として感温特性を有するサーミスタを用いると共に、上記検出部側に設けた請求項1ないし3のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項6】
少なくとも、被測定ガスに晒され、電気絶縁性耐熱基板の表面に所定の間隙を設けて対向する一対の検出電極を設けた検出部と該検出部を加熱する加熱部とを有する微粒子検出素子と、該微粒子検出素子によって検出された導電性微粒子の量に応じて変化する上記検出電極間の電気抵抗を測定する抵抗測定手段とを具備して、被測定ガス中の導電性微粒子の濃度を検出するガスセンサの断線検出方法であって、
上記ガスセンサが、上記検出部と上記抵抗測定手段との間を繋ぐ導通経路の断線の有無を検出する断線検出手段として、上記一対の検出電極を導通すると共に、該検出電極間に形成される検出抵抗に対して並列となるように設けた、所定の抵抗値を有する断線検出抵抗を具備し、
少なくとも、上記検出抵抗と上記断線検出抵抗との合成抵抗によって検出される出力電圧と所定の閾値との比較によって断線の有無を検出する断線判定手段を有し、上記出力電圧が所定の閾値を越えた場合に断線と判定することを特徴とするガスセンサの断線検出方法。
【請求項7】
上記加熱部の作動により上記検出部に堆積した微粒子を燃焼除去する燃焼行程と、燃焼時間及び微粒子検出素子の出力のいずれか1つ若しくは両方を用いて微粒子の燃焼完了を判定する微粒子燃焼完了判定手段と、微粒子の燃焼確認後における微粒子検出素子の出力の有無によって断線の有無を判定する断線判定手段とを具備し、微粒子を完全に除去した状態で断線の有無を判定する請求項6に記載のガスセンサの断線検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−203093(P2011−203093A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70221(P2010−70221)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】