説明

ガスセンサ及びその製造方法

【課題】 ガスセンサの応答性を向上させ、且つ保護カバーの段部での亀裂を防止して、保護カバーが脱落することを防止することが可能なガスセンサを提供。
【解決手段】 ガスセンサ1の主体金具4の先端部外周に全周接合される接合部151を有する外側カバー15が、接合部151及び主体金具4の先端よりも先端側に位置する径大部152と、径大部152よりも外径及び内径が径小となる径小部153と、径大部152と径小部153との間に位置する段部154とを含み、軸線を含む断面でみたとき、外側カバー15の段部154の外面fと軸線方向に垂直な方向t1とのなす角をθ(単位は°)とし、外側カバー15の径小部153と段部154とが接続する頂点p1の曲率半径をR(単位はmm)としたとき、θ>−30R+45である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内燃機関の燃焼制御等に用いられるガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排気系に設置し、排気ガス中の酸素濃度を検出して内燃機関の燃焼制御に利用されるガスセンサとして、酸素センサが知られている。この酸素センサには、先端側に検出部をもつ検出素子と、少なくとも検出部が先端側に露出するように検出素子を保持する筒状のハウジング本体とを有している。そして、ハウジングの先端部には、排ガス等が被測定ガスに晒される検出素子の検出部を保護するために、筒状の保護カバーが備えられている。
【0003】
この筒状の保護カバーは、レーザ溶接によりハウジング本体の先端部外周に全周接合することが知られている(特許文献1、2、3参照)。これにより、ハウジング本体から保護カバーが脱落することなく、ハウジング本体に強固に固着することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平9−210952号公報
【特許文献2】特開平9−304332号公報
【特許文献3】特開2004−138599
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガスセンサの応答性向上のために、従来よりも保護カバー内の容量を小さくすることが考えられる。これは、保護カバー内の容量が小さくなることで保護カバー内の被測定ガスの置換性を向上させ、これによりガスセンサの応答性の向上を図っている。この保護カバー内の容量を小さくする1つの手段として、保護カバーに段部を設け、その先端側に、段部よりも後端側の径大部よりも径小となる径小部を設けることが挙げられる。これにより、径小部が従来よりも径小となるため、保護カバー内の容量を小さくすることができる。
【0006】
しかしながら、径小部を有する保護カバーは、径小部がガスセンサから脱落する虞がある。これは、ガスセンサ使用時に、排気ガス等により加熱された保護カバーが悪路等からの振動の影響を受け、最も応力がかかる保護カバーの段部がこの応力に耐えることができなくなり、亀裂が発生するからである。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点を鑑みて成されたもので、ガスセンサの応答性を向上させ、且つ保護カバーの段部での亀裂を防止して、保護カバーが脱落することを防止することが可能なガスセンサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軸線方向に延び、先端側に検出部をもつ検出素子と、筒状をなして自身の内側に該検出素子を挿通し、少なくとも該検出部が先端側に露出するように該検出素子を保持するハウジング本体と、該検出部を覆うとともに、該ハウジング本体の先端部外周に全周接合される接合部を有する外部に露出した筒状の外側カバーを有するガスセンサにおいて、
該外側カバーは、該接合部及びハウジング本体の先端よりも先端側に位置する径大部と、径大部よりも外径及び内径が径小となる径小部と、径大部と径小部との間に位置する段部とを含み、軸線を含む断面でみたとき、該外側カバーの段部の外面と軸線方向に垂直な方向とのなす角をθ(単位は°)とし、前記外側カバーの径小部と段部とが接続する頂点の曲率半径をR(単位はmm)としたとき、
θ>−30R+45
であることを特徴とする。
【0009】
このように、外側カバーに、接合部及びハウジング本体の先端よりも先端側に位置する径大部に対して、先端側に向かって先細りとなる段部を設け、さらにその先端側に径大部よりも外径及び内径が径小となる径小部を設けている。これにより、相対的に外側カバー内の容量を小さくすることができ、外側カバー内の被測定ガスの置換性を向上させ、それによりガスセンサの応答性の向上を図ることができる。
【0010】
そして、軸線を含む断面でみたとき、該外側カバーの段部の外面と軸線方向に垂直な方向とのなす角をθ(単位は°)とし、前記外側カバーの径小部と段部とが接続する頂点の曲率半径をR(単位はmm)としたとき、θ>−30R+45としている。これを満たすことで、段部での亀裂を防止し、外側カバーの径小部での脱落を防止することができる。具体的には、外側カバーの径小部と段部とが接続する頂点の曲率半径Rが小さいと、その頂点に最も応力がかかり、その頂点が起点となって亀裂が発生する。それに対し、頂点を円弧状とすることで起点が無くなり、頂点での応力を分散することができ、外側カバーの亀裂を防止できる。そして、この円弧は、段部の垂直方向に対する角度が大きくなるにつれて大きくすることで、頂点の応力を有効に分散することができる。なお、θ≦−30R+45では、上記効果を得ることができず、段部で亀裂が生じることがある。
【0011】
なお、径大部と径小部とを接続する段部は、先端側に向かって先細りとなるテーパ部であっても良いし、軸線方向に垂直な方向とのなす角θが0°となるように径大部と径小部に対して直角となる直角部であっても良い。
また、「外側カバーの段部の外面と軸線方向に垂直な方向のなす角」は、外側カバーの段部の外面が直線状となる部位を有する場合には、その直線と軸線方向に垂直な直線とのなす角とする。一方、径大部と段部との頂点及び径小部と段部との頂点がそれぞれ円弧状となっている場合は、外側カバーの段部にできる変曲点に対して互いの円弧に接する接線を引き、その接線と軸線方向に垂直な直線とのなす角とする。
【0012】
さらに、軸線方向にみたときに前記段部は、前記ハウジングの先端と前記検出素子の先端との間に位置することが好ましい。ガスセンサ素子の検出部が配置された位置に対応する位置に段部を形成することで、外側カバー内の容量が小さくすることの効果をさらに得ることができ、有効にガスセンサの応答性が向上する。
【0013】
ところで、ビッカース硬度250HV以上を有する外側カバーは、外部からの衝撃が外側カバーに加わったとしても、内部で覆われている検出素子がその衝撃の影響を受けずに保護される。ところが、このような外側カバーは、硬度が高いが故に応力を逃がすことが難しくなり、特に応力のかかりやすい段部にて亀裂が起こりやすくなる。そこで、このような硬度を有する外側カバーに本発明の段部の角度及び曲率半径を採用することで、段部での亀裂が防止でき、外側カバーの径小部での脱落を防止できる。なお、製造面から考えると、外側カバーのビッカース硬度は、400HV以下が好ましい。
【0014】
さらに、前記外側カバーと前記検出素子との間に位置し、該検出素子を覆う筒状の内側カバーを有し、前記外側カバーの厚みが前記内側カバーの厚みよりも厚いことが好ましい。素子の被水対策のために外側カバーの内部に検出素子を覆う内側カバーを有するガスセンサが知られている。この時、外側カバーの厚みを相対的に厚くすることで、外部からの衝撃をさらに外側カバーにて吸収することができる。一方、内側カバーは、相対的に薄くして、内側カバーの加工性を向上させている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を適用した実施形態であるガスセンサを図面と共に説明する。本実施形態では、自動車の排気管(特に触媒の下流側等)に装着されて排気ガス中の酸素の濃度を検出するガスセンサ(酸素センサ)について説明する。図1は、本実施形態のガスセンサ1の全体構成を示す断面図である。
【0016】
図1に示すように、ガスセンサ1は、先端部が閉じた有底筒状をなすセンサ素子2、センサ素子2の有底孔21に挿入されるセラミックヒータ3と、センサ素子2を自身の内側にて保持する主体金具4を備える。なお、本実施形態において、図1に示すセンサ素子2の軸に沿う方向のうち、測定対象ガス(排気ガス)に晒される先端部に向かう側(閉じている側、図中の下側)を「先端側」とし、これと反対方向(図中上側)に向かう側を「後端側」として説明する。
【0017】
このセンサ素子2は、イットリアを安定化剤として固溶させた部分安定化ジルコニアを主成分とする酸素イオン伝導性を有する固体電解質体からなり、先端部に検出部22を有している。この検出部22のうち有底孔21の内面に、そのほぼ全面を覆うようにPtあるいはPt合金により多孔質状に形成された内部電極層23と、検出部22の外面に、内部電極層23と同様に多孔質状に形成された外部電極層24を有している。また、このセンサ素子2の軸線方向の略中間位置には、径方向外側に向かって突出する係合フランジ部25が設けられている。なお、本実施形態のセンサ素子2が特許請求の範囲の「検出素子」に相当する。一方、セラミックヒータ3は、棒状に形成されると共に、内部に発熱抵抗体を有する発熱部31を備えている。このセラミックヒータ3は、後述するヒータ用リード線19、22を介して通電されることにより発熱部31が発熱することになり、センサ素子2を活性化させるべく当該センサ素子2を加熱する機能を果たす。
【0018】
主体金具4は、ガスセンサ1を排気管の取付部に取り付けるためのネジ部41と、排気管の取付部への取り付け時に取付工具をあてがう工具係合部42を有している。また、主体金具4は、センサ素子2を先端側から支持するアルミナ製の支持部材5と、支持部材5の後端側に充填される滑石粉末からなる充填部材6と、充填部材6を後端側から先端側に向けて押圧するアルミナ製のスリーブ7とを内部に収納可能に構成されている。なお、本実施形態の主体金具4が特許請求の範囲の「ハウジング本体」に相当する。
【0019】
主体金具4には、先端側内周に径方向内側に向かって突出した金具側段部43が設けられており、この金具側段部43にパッキン8を介して支持部材5を係止させている。なお、センサ素子2は、係合フランジ部25が支持部材5上にパッキン9を介して支持されることにより、主体金具4に支持される。支持部材5の後端側における主体金具4の内面とセンサ素子2の外面との間には、充填部材6が配設され、さらにこの充填部材6の後端側にスリーブ7および環状リング10が順次同軸状に内挿された状態で配置される。そして、主体金具4の金具側後端部44を内側先端方向に加締めることで、主体金具5に固定されている。なお、ガスセンサ1においては、主体金具4の金具側後端部44を加締めることを通じて、充填部材6がスリーブ7を介して圧縮充填される構造になっており、これによりセンサ素子2が筒状の主体金具4の内側に気密状に保持されている。
【0020】
また、主体金具4の後端側内側にはSUS304Lからなる外筒部材11の先端部が接合されている。外筒部材11は、軸線方向における略中間位置に外筒段付き部111が形成されており、外筒段付き部111よりも先端側が外筒先端側胴部112として形成され、外筒段付き部111よりも後端側が外筒後端側胴部113として形成される。このうち、外筒後端側胴部113には、後述する保持部材17を保持するための第1加締め部114、及び後述する弾性シール部材13を気密状に固定するための第2加締め部115が形成されている。
【0021】
また、外筒部材11の外筒後端側胴部113内に保持部材17を介して配置されるセパレータ12は、素子用リード線20、21と、ヒータ用リード線19、22とを挿通するためのセパレータリード線挿通孔121が先端側から後端側にかけて貫通するように形成されている。また、セパレータ12には、先端面に開口する有底状の保持孔122が軸線方向に形成されている。この保持孔122内には、セラミックヒータ3の後端部が挿入され、セラミックヒータ3の後端面が保持孔122の底面に当接することでセパレータ12に対するセラミックヒータ3の軸線方向の位置決めがなされる。このセパレータ12は、周方向外側に延設されたセパレータフランジ部123を有している。
【0022】
外筒部材11の後端内部に配置される弾性シール部材13は、センサ素子2に電気的に接続される2本の素子用リード線20、21と、セラミックヒータ3に電気的に接続される2本のヒータ用リード線19、22とを挿通するための4つのリード線挿通孔131が、先端側から後端側にかけて貫通するように形成されている。さらに、弾性シール部材13の略中央には、先端側から後端側に向かって大気導入孔132が形成され、その大気導入孔132内部には、フィルタ133が配置されている。
【0023】
また、素子用リード線20、21およびヒータ用リード線19、22は、セパレータ12のセパレータリード線挿通孔121、弾性シール部材13のリード線挿通孔131を通じて、外筒部材11の内部から外部に向かって引き出されている。なお、これら4本のリード線19、20、21、22は外部において、図示しないコネクタに接続される。そして、このコネクタを介してECU等の外部機器と各リード線19、20、21、22とは電気信号の入出力が行われることになる。
【0024】
また、各リード線19、20、21、22は、詳細は図示しないが、導線を樹脂からなる絶縁皮膜にて被覆した構造を有しており、導線の後端側がコネクタに設けられるコネクタ端子に接続される。そして、素子用リード線20の導線の先端側は、センサ素子2の外面に対して外嵌される端子金具14の後端部と加締められ、素子用リード線20の導線の先端側は、センサ素子2の内面に対して圧入される端子金具14の後端部と加締められる。これにより、素子用リード線20は、センサ素子2の外部電極層23と電気的に接続され、素子用リード線21は、内部電極層24と電気的に接続される。他方、ヒータ用リード線19、22の導線の先端部は、セラミックヒータ3の発熱抵抗体と接合された一対のヒータ用端子金具と各々接続される。
【0025】
次に、本発明の主要部である外側カバー15について詳細に説明する。
図2に示すように、主体金具4の先端部26に外側カバー15の接合部151が接合されている。この外側カバー15は、オースナイト系ステンレス鋼からできており、主体金具4から突出するガスセンサ素子2の検出部22の周囲を覆う有底筒状となっている。そして、外側カバー15は、接合部151から先端側に向かって、径大部152、段部154、径小部153が順に形成されている。このうち径小部153には、ガスを外側カバー15内に導入するためのガス導入孔155外側カバー15の周方向に連設されている。このように、外側カバーに、接合部及びハウジング本体の先端よりも先端側に位置する径大部に対して、先端側に向かって先細りとなる段部を設け、さらにその先端側に径大部よりも外径及び内径が径小となる径小部を設けているので、外側カバー15内の容量を小さくすることができ、外側カバー15内の被測定ガスの置換性を向上させ、それによりガスセンサ1の応答性の向上を図ることができる。
【0026】
そして、外側カバー15の段部154は、外側カバー15の段部154の外面fと軸線方向に垂直な方向(図2におけるt1)とのなす角θ1が30°となっている。さらに、外側カバー15の径小部153と段部154とが接続する頂点p1の曲率半径Rが1mmとなっている。この角度θ1及び曲率半径Rは、θ>−30R+45を満たしており、段部154での亀裂を防止し、外側カバー15の径小部153が主体金具4から脱落を防止することができる。
【0027】
さらに、外側カバー15の段部154は、主体金具4の先端とセンサ素子2の先端との間に位置している。ガスセンサ素子2の検出部22が配置された位置に対応する位置に段部154を形成することで、外側カバー15内の容量が小さくすることの効果をさらに得ることができ、有効にガスセンサ1の応答性が向上する。
【0028】
さらに、外側カバーはビッカース硬度が350HVとなっている。外側カバー15のビッカース硬度が250HV以上であるため、外部の衝撃が外側カバーに加わったとしても、内部で覆われている検出素子がその衝撃の影響を受けずに保護される。なお、このような外側カバーは、硬度が高いが故に応力を逃がすことが難しくなり、特に応力のかかりやすい段部にて亀裂が起こりやすくなるが、本発明の段部の角度(具体的にはθ=30°)及び曲率半径(具体的にはR=1mm)を採用することで、段部での亀裂が防止でき、外側カバーの径小部での脱落を防止できている。
【0029】
さらに、図1に示すように外側カバー15の内部には、内側カバー16が形成されている。この内側カバー16も外側カバー15と同様にガスセンサ素子2の検出部22を覆う有底筒状であり、オースナイト系ステンレス鋼からできている。この内側カバー16も、後端側から順に径大部161、段部163、径小部162が形成されており、径小部162には外側カバー15と同様に気体導入孔164が周方向に連設されている。また、外側カバー15には内側カバー16の回り止めを防止する凹部(図示せず)が形成されており、この凹部が内側カバー16の径大部161に当接している。さらに、径大部161は、外側カバー15の径小部153に対して周囲4点のスポット溶接がなされることにより外側カバー15に接合されている。
【0030】
そして、本実施形態では、外側カバー15の厚みが内側カバー16の厚みよりも厚くなっている。具体的には、外側カバー15の厚みが0.5mm、内側カバーの厚みが0.3mmである。このように、外側カバーの厚みを相対的に厚くすることで、外部からの衝撃をさらに外側カバーにて吸収することができる。
【0031】
次に、本実施形態のガスセンサ1の製造方法について詳細に説明する。まず、ジルコニアに、イットリアを5mol%添加して造粒した後、先端部が閉じた有底筒状に成形し、電気炉にて1400〜1600℃の温度で焼成し、固体電解質体22を得た。次いで、この固体電解質体22の外周面に蒸着や化学メッキ等を用いて、白金よりなる外側電極層23を設ける。一方、固体電解質体22の内側面にも同様に、蒸着や化学メッキ等を用いて、内側電極層23を設け、ガスセンサ素子2を得た。
【0032】
ついで、主体金具4の先端部26に内側カバー16が挿入された外側カバー15の接合部151を外挿し、レーザ溶接にて全周溶接する。そしてこの主体金具4にパッキン8、支持部材5、パッキン9、ガスセンサ素子2、充填部材6、スリーブ7を順に挿入し、主体金具4の金具側後端部44を加締めセンサ下部中間体を準備する。
【0033】
一方、端子金具14、14にそれぞれ素子用リード線20、21を接合し、セラミックヒータ3のヒータ用端子金具にヒータ用リード線19、22を接合しておく。そして、端子金具14の内側にセラミックヒータ3を位置させた状態で、各リード線19、20、21、22をセパレータ12の各セパレータリード線挿通孔121に挿通する。ついで、各リード線19、20、21、22を外筒部材11に挿入された弾性シール部材13のリード線挿通孔131に挿通させた状態で、この弾性シール部材131の先端面がセパレータ12の後端面に当接するまで移動させる。そして、セパレータ12の先端から保持部材17を挿入し、保持部材17を固定するように外筒部材11を加締め、第1加締め部114を形成する。このようにしてセンサ上部中間体を作製する。
【0034】
そして、センサ上部中間体の外筒部材11を主体金具4の後端側に挿入し、外筒部材11と主体金具4との重なり部及び弾性シール部材13をそれぞれ加締める。なお、弾性シール部材13は第2加締め部115が形成される。なお、加締めは八方丸加締めにて行った。そして、上記重なり部をレーザ溶接することにより固定し、ガスセンサ1が完成する。
【実施例】
【0035】
本発明の効果を確認するために、以下の各種試験を行った。
なお、試験では、主体金具4外側カバー15及び内側カバー16のみを用いて行っている。まず、SUS310製の主体金具4を所定形状に作製し、ついで、主体金具4の先端部26に内側カバー16が挿入された外側カバー15の接合部151を外挿し、レーザ溶接にて全周溶接した。なお、外側カバー15は、SUS310製であり、肉厚0.5mmであり、さらに外側カバー15の先端から主体金具4の先端までの長さが16mmである。一方、内側カバー16はSUS310製であり、肉厚0.3mmである。そして、外側カバー15の段部154の角度θ1及び頂点p1の曲率半径R1を表1に示すような値とした各種サンプルを作製した。
【0036】
そして、各種サンプルを、例えば図3に示すような加熱衝撃装置200に取り付けた。具体的に、このセンサ加熱衝撃装置200は、台座201と、台座に取り付けられた振動部202、及び振動部202に取り付けられた主体金具取付部203からなり、台座201と振動部202とつなぐようにしてばね204が取り付けられている。このセンサ加熱衝撃装置200の動きを簡単に説明すると、ばね204の伸縮により振動部202が振動(図3における上下方向)する。
【0037】
次に、外側カバー15の先端側からバーナー205を当てて、外側カバー15の先端温度が1000〜1100℃となるように加熱した。その後、振幅幅5mm、周波数6.7Hz(400rpm)となるように振動部202を15分間振動させた。その後、振動部202の振動及びバーナー205を止めて外側カバーが常温となるまで冷却する。以上の工程を1サイクルとし、これを3サイクル行った後に外側カバーの段部154が破壊しているか否かを見た。結果も表1に示す。なお、表1において、段部154で破壊したものを×、主体金具4と外側カバー15との接合部151で破壊したもの、及び段部154及び接合部151での破壊が無かったものを○とする。
【0038】
【表1】

【0039】
表1によると、角度θ1が15°の場合、R1が0mm、0.5mm、1.0mmでは×であったが、1.5mm以上では○となった。また、角度θ1が30°の場合、R1が0mm、0.5mmでは×であったが、1.0mm、1.5mm以上では○となった。角度θ1が45°の場合、R1が0mmでは×であったが、0.5mm、1.0mm、1.5mm以上では○となった。また、角度θ1が60°の場合、R1が0mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm以上のすべてが○となった。つまり、角度θ1及び曲率半径R1がθ>−30R+45となることで、段部154での亀裂を防止し、外側カバー15の径小部153が主体金具4から脱落を防止することができる。
【0040】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は実施形態に限定されることはなく、この発明の目的を達成することのできる範囲で、様々に設計変更することができる。
例えば、本実施形態では、有底筒状のガスセンサ素子2を用いたガスセンサ1を例としたが、これに限らず、板状のガスセンサ素子2を用いたガスセンサ1であってもよい。
また、本実施形態では、外側カバー15及び内側カバー16を用いた2重のカバーを用いていたが、これに限らず、外側カバー15のみであっても良いし、内側カバー16が2重以上(3重以上のカバー)となっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態のガスセンサ1の断面図である。
【図2】本実施形態のガスセンサ1の要部拡大断面図である。
【図3】実施例に用いるセンサ加熱衝撃装置200の説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・ガスセンサ
2・・・ガスセンサ素子
3・・・ヒータ
4・・・主体金具
15・・・外側カバー
16・・・内側カバー
151・・・接合部
152・・・径大部
153・・・径小部
154・・・段部
155・・・気体導入孔
200・・・センサ加熱衝撃装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延び、先端側に検出部をもつ検出素子と、
筒状をなして自身の内側に該検出素子を挿通し、少なくとも該検出部が先端側に露出するように該検出素子を保持するハウジング本体と、
該検出部を覆うとともに、該ハウジング本体の先端部外周に全周接合される接合部を有する外部に露出した筒状の外側カバーを有するガスセンサにおいて、
該外側カバーは、該接合部及びハウジング本体の先端よりも先端側に位置する径大部と、径大部よりも外径及び内径が径小となる径小部と、径大部と径小部との間に位置する段部とを含み、
軸線を含む断面でみたとき、該外側カバーの段部の外面と軸線方向に垂直な方向とのなす角をθ(単位は°)とし、前記外側カバーの径小部と段部とが接続する頂点の曲率半径をR(単位はmm)としたとき、
θ>−30R+45
であることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
請求項1記載のガスセンサにおいて、
軸線方向にみたときに前記段部は前記ハウジングの先端と前記検出素子の先端との間に位置することを特徴とするガスセンサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガスセンサにおいて、
前記外側カバーの段部は、ビッカース硬度250HV以上であることを特徴とするガスセンサ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガスセンサにおいて、
前記外側カバーと前記検出素子との間に位置し、該検出素子を覆う筒状の内側カバーを有し、
前記外側カバーの厚みが、前記内側カバーの厚みよりも厚いことを特徴とするガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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