説明

ガスセンサ用MEMS構造体

【課題】
MEMS構造を有するガスセンサは,大量生産に向きコスト的にも低価格を実現できる可能性がある。しかし,車載を目的とする用途の様に機械的な特性,耐熱衝撃性,耐久性などの特性でまだ実用化の段階に達していない。上記用途の様に機械的な特性,耐熱衝撃性,耐久性が更に必要な場合に向けて先願特許 特願2005−325455は発明された。しかし、ブリッジ方向に発生する膨張収縮による応力を更に緩和する必要があった。
【解決手段】
シリコン基板とSiO2層及びSiNx層等からなるダイアフラム構造体において,該ダイアフラム部の一部を除去して形成される4本のブリッジを有するブリッジ構造体であって,相対する対をなすブリッジを平行な位置に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明はマイクロマシーニング技術を利用したガスセンサの構造に関するものである。詳しくは,マイクロマシーニング技術を利用してブリッジ構造を形成し,そのブリッジ構造上に電極とヒーター及びガス感応層を設けたガスセンサのMEMS構造体に関すものである。
【背景技術】
【0002】
一般にセラミックガスセンサは,目的のガスを検出し濃度表示出力,警報出力あるいは制御信号を出力する機器に使用されている。ガスセンサが特定のガスに曝される時,ガス感応物質であるセラミックの電気伝導度の変化あるいは起電力の発生が生じ,その値から目的ガスの存在及びガス濃度を検出することができる。この種のガスセンサは,他のセンサに比べて消費電力が非常に大きい。従って,セラミックガスセンサの応用範囲を拡大するためには,小さいエネルギーでセンサ温度を維持できる低電力型のセラミックガスセンサを提供することは非常に意義がある。
【0003】
従来のガスセンサは,絶縁セラミック基板の片面あるいは両面を利用して,電極とヒーターを形成し電極面にはガス感応物質を印刷又は塗布したセンサ素子をリード線により宙づりにした構造であった。この構造では,十分な低消費電力化を実現するのは困難であった。
【0004】
一方,最近従来のセラミックセンサの小型化が進み印刷タイプや薄膜タイプも出現していると同時に,極細の貴金属線コイルにガス感応セラミック粉体を塗布した極低電力型も出現してきた。しかし,従来のセラミック粉体を立体的なコイルに塗りつけたセンサは粉体と電極兼用のコイルとの剥離が発生するなど欠点も見られる。また,依然として宙づり構造であるので振動や衝撃に弱い。
【0005】
その他の開発動向として,シリコンのマイクロマシーニング技術を利用してダイアフラムを形成し,その上にマイクロヒーターを,更にその上に絶縁層を介して検出用電極を設け,さらにガス感応層を設けたMEMS構造を有するガスセンサも出現している。MEMS型の構造を有するガスセンサは,大量生産に向きコスト的にも低価格を実現できる可能性がある。しかし,機械的な特性,耐熱衝撃性,耐久性などの特性でまだ実用化の段階に達していない。例えば,昨今自動車の空質の制御用にガスセンサが使用されるようになったが,未だに従来型のセラミックガスセンサが使用されているのはMEMS型ガスセンサの信頼性が自動車の信頼性のレベルに達していないからである。
【0006】
このような車載を目的とする用途の様に機械的な特性,耐熱衝撃性,耐久性などの特性が必要とされる場合,既存のMEMS型ガスセンサ構造の上述の状況を鑑み,先願特許 特願2005−325455は,発明された。その結果,車載用に耐えうるMEMS構造となっている。しかし,4本のブリッジが各対角線上に位置しているため,ブリッジ方向に発生する膨張収縮による応力を緩和する構造となっていない。
【特許文献1】特願2005−325455
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1に先願特許 特願2005−325455の構成を示す。ただし,ここで示したのは4本のブリッジ3とそれらによって支えられるステージ2とシリコンフレーム1による構成のみとし,ヒーターや電極等を割愛して示した。ヒーターと電極はステージ2上に形成され,ブリッジ3上の配線パターンを通してガスセンサの信号とヒーター電力が供給される。
【0008】
ブリッジ3を通してヒータ電力がステージ2に供給され加熱されると,ステージ2およびブリッジ3が膨張し,電力供給を停止し常温に戻すと収縮し元に戻る。図1において,ブリッジはB1とB3及びB2とB4がそれぞれ一直線上に位置されている。その為,前述のようにステージ2に電力供給がなされ加熱されると,相対するブリッジB1とB3あるいはB2とB4がステージ2を挟んで押し合い,結果として常温を維持しているシリコンフレーム1を押しつけようとする力が働く。ここで発生する応力はブリッジ3とシリコンフレーム1の境界付近に集中する。その為加熱・冷却を何度も繰り返すと,繰り返される応力発生及び緩和によりブリッジ3およびステージ2の部分に疲労が発生して破損する可能性がある。この応力発生と緩和による疲労を可能な限り緩和することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために,図2に示すようにブリッジ3を相対するブリッジに対し,一直線上に配置することを避け,平行関係に位置するように設けることである。
【発明の効果】
【0010】
本発明における構成は,この境界に応力が集中することを避ける為,ブリッジ3と対向するブリッジ3をステージ2の幅にほぼ相当する間隔を持たせ,平行な位置関係に配置することによって,加熱時に相対するブリッジ3は互いに膨張するが,膨張することでステージ2を回転させるような力に変換され,上述の応力は緩和される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図2に示すように相対するブリッジ3をステージ2の幅に相当する間隔で平行に位置するように設けることで,加熱時の膨張における応力をステージ2を回転させる力に変え,シリコンフレーム1とブリッジ3の境界に集中していた応力を緩和させることができる。
【実施例】
【0012】
図1は,先願特許 特願2005−325455の構成を示し,図2は本発明の構成を示す。ブリッジ3の4本にそれぞれB1,B2,B3,B4と識別記号を付けて表記する。図1では,B1とB3あるいはB2とB4は相対するブリッジで有り一直線上に位置している。図2ではB1の一直線上にB3は存在せず,図1でB3のあった位置よりステージ2の幅分だけ移動した位置に設けた。B2とB4の位置関係も同様である。
【0013】
図2bのように4本のブリッジ3の位置関係はシリコンフレーム1およびステージ2の形状が四角から丸となっても同様である。その他設計により,ブリッジ3,ステージ2及びシリコンフレーム1の形状に細かな変更を加えたとしても,このように一直線上に配置していたブリッジの位置を変更して応力を回転方向の力に変換することにより,上述の問題点である応力を緩和することがかのである。
【産業上の利用可能性】
【0014】
先行特許 特願2005−325455では考慮されていなかったブリッジ方向の応力緩和を実現でき,車載用ガスセンサとしてのMEMSガスセンサの信頼性を更に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】先願する特許 特願2005−325455の構成。
【図2】ブリッジ3を平行関係に位置させた本発明の構成。
【符号の説明】
【0016】
1…シリコンフレーム
2…ステージ
3…ブリッジ
B1…ブリッジ(B3と対向する,もしくは平行関係にある)
B2…ブリッジ(B4と対向する,もしくは平行関係にある)
B3…ブリッジ(B1と対向する,もしくは平行関係にある)
B4…ブリッジ(B2と対向する,もしくは平行関係にある)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板とSiO2層及びSiNx層等からなるダイアフラム構造体において,該ダイアフラム部の一部を除去して形成される4本のブリッジを有するブリッジ構造体であって,相対する対をなすブリッジが平行な位置関係を有することを特徴とするガスセンサ用MEMS構造体。

【図1】
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【図2】
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