説明

ガスセンサ

【課題】 フィルタを、外筒の後端開口部に嵌挿される外筒蓋の通気孔に容易かつ安価に取付可能なガスセンサを提供する。
【解決手段】 ガスセンサとしての酸素センサ1は、外筒13を上部から閉塞するゴム製の外筒蓋30に、外筒13内に大気を取り込むための通気孔31を備えている。そして、この通気孔31には、所定の境界で拡径された管状部材51と、撥水及び撥油性を備えたシート状のフィルタ53と、Oリング55とからなるフィルタユニット50が嵌挿されている。大径部の上方端部は曲げ加工により折曲されており、この折曲部は、大径部と小径部との間に形成された段部との間でフィルタ53及びOリング55を挟持している。つまり、フィルタ53が、管状部材51の内側に配置されている。このフィルタユニット50では、フィルタサイズが通気孔31と同程度で済み、更には、簡単にフィルタ53を外筒蓋30の所定位置に取り付けることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素イオン伝導性固体電解質体の表面に一対の電極が形成された検出素子を備え、被測定ガスの濃度を検出するガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、混合ガス中から特定のガス成分の濃度を検出するガスセンサとしては、HCセンサやNOxセンサ等様々な種類のものが知られているが、その内の一つとして、酸素イオン伝導性の固体電解質体からなる検出素子を備えた酸素センサが知られている。
【0003】
図10に示すように、一般的な酸素センサ101の検出素子102は、固体電解質体により先端側が閉塞され後端側が開口された有底筒状体の内外表面に、内側電極102aと、外側電極102bと、が形成された構成にされており、酸素センサ101は、検出素子102の外側の被測定ガスと、筒状体の内部空間102cに充満する基準ガスとしての大気と、の濃度差によって電極間に生じる起電力により、被測定ガスの酸素濃度を検出する。
【0004】
このような原理で被測定ガスの酸素濃度を検出する酸素センサ101は、主体金具111の軸方向に形成された貫通孔112の先端側から検出素子102の先端部を被測定ガスに晒させるように、該検出素子102を主体金具111にて保持し、周囲の粉塵や、水、油、飛石等から保護するために、外筒113にて検出素子を覆うようにしている。また、酸素センサ101は、外筒113の後端開口部をゴム製のシール部材である外筒蓋130によって閉塞している。
【0005】
ただし、完全な閉塞状態では、酸素センサ101内部に収容された検出素子102の内部空間102cに、十分な大気(基準ガス)を送り込むことができなくなってしまうので、この種の酸素センサ101の外筒蓋130に、通気孔131を設けたものが知られている。
【0006】
この通気孔131には、水の外筒113内部への侵入を防ぎつつ、大気を選択的に外筒113内部に導入するための通気性及び撥水性を有するフィルタ153が、通気孔131を塞ぐようにして設けられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2000−193632号(第3図参照)
【特許文献2】特開2001−208724号(第1図参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した特許文献に記載の酸素センサでは、通気孔内面全体にフィルタが接するように他部材を用いてフィルタを固定することによって、通気孔をフィルタで塞いでいたため、センサの製造コストが高くなってしまったり、センサの製造過程でフィルタが破損してしまうことがあった。
【0009】
つまり、上述した特許文献に記載の酸素センサでは、図11に示すように、シート状のフィルタ153を、筒状の挿入部材151に被せて、これを前方(主体金具側)から通気孔131内部に押し込むことにより、通気孔131内面にフィルタ153を接触させつつ、該通気孔131をフィルタ153で塞いでいた。そのために、通気孔131に挿入部材151を押し込む過程で、フィルタ153が、挿入方向とは反対方向に引っ張られ、破れてしまうことがあった。
【0010】
また、このような方法で通気孔131をフィルタ153にて塞ぐ場合には、フィルタ153を挿入部材151の外部に配置させて、通気孔131内面と挿入部材151の外周面との間で挟持させて固定させる設計上、通気孔131の径より十分大きいサイズのフィルタ153を用意しなければならないため、製造コストが高くなり、無駄が多かった。
【0011】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、簡単で安価にフィルタを通気孔に取り付け可能なガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、酸素イオン伝導性固体電解質体の表面に一対の電極が形成された検出素子と、軸方向に形成された貫通孔を有すると共に、その貫通孔の先端側から検出素子の先端部を被測定ガスに晒すようにして、検出素子を貫通孔内に保持する主体金具と、主体金具の後端側に設けられ、検出素子を内部に収容する外筒と、その外筒の後端開口部に嵌挿されると共に、自身の後端面から先端面に向けて貫通し、外筒の内部と外部との気体の流通経路となる通気孔を有する外筒蓋と、を備えたガスセンサに、ガスセンサ本体とは別体で形成したフィルタユニットを設けている。
【0013】
フィルタユニットは、外筒蓋の通気孔に嵌挿される管状部材と、その管状部材の内側に配置され、その管状部材の内側に固定された通気性及び撥水性を有するフィルタと、を備えており、外筒蓋の通気孔に嵌挿されて通気孔をフィルタで閉塞する構成にされている。
【0014】
このように構成されたガスセンサにおいては、管状部材の内側(内部)でフィルタを固定するフィルタユニットを用いることから、そのフィルタユニットを外筒蓋の通気孔に嵌挿すれば簡単に通気孔をフィルタで閉塞することができる。換言すると、本発明においては、フィルタユニットを通気孔に取り付けることで、簡単に、ガスセンサを、フィルタの機能によって通気孔から水滴や粉塵等が外筒内部に侵入するのを防止しつつ、外筒の内部と外部とで気体の流通が可能な構成にすることができる。したがって、本発明のガスセンサにおいては、製品の生産性を向上させることができる。
【0015】
また従来のガスセンサにおいては、フィルタを挿入部材の外部にセットして直接通気孔内に押し込むようにして外筒蓋に装着する方法を採用していたため、挿入途中でフィルタが損傷してしまうことがあったが、本発明においては、予め管状部材内側にフィルタを装着させているので、フィルタユニット嵌挿時にフィルタを破損させなくて済む。したがって、本発明のガスセンサにおいては、製品の製造コストを抑えることができ、フィルタの信頼性ひいてはガスセンサの信頼性を向上させることができる。
【0016】
ところで、このように別体でフィルタユニットを構成すると、フィルタユニットを単に外筒蓋に嵌挿して取り付けるだけでは、取付後においてガスセンサが振動を受けたりすることによって、フィルタユニットが通気孔から抜け出てしまう可能性がある。したがって、フィルタユニットが外筒蓋から抜け出てしまうのを防止するためには、例えば接着剤等でフィルタユニットを外筒蓋に固定するのがよい。
【0017】
ただし、接着剤は時間が経過するとその性能が低下するため、長期間しっかりとフィルタユニットを外筒蓋に固定することができない可能性がある。
このため、請求項1に記載のガスセンサにおいては、請求項2に記載のように、管状部材に、外筒蓋の先端部(主体金具側)に係止する第一係止部と、外筒蓋の後端部(主体金具とは反対側)に係止する第二係止部とを設けるのが良い。
【0018】
請求項2に記載のガスセンサにおいては、フィルタユニットが、第一係止部及び第二係止部によって通気孔の両開口部側から外筒蓋を挟み込むようにして自身を外筒蓋に固定するため、接着剤等を用いる場合よりも確実にフィルタユニットの抜けを防止することが可能である。
【0019】
この他、フィルタユニット内において、フィルタは、管状部材の内側であればどの位置に固定されていてもよく、またフィルタの通気孔に対する配置位置についても、ガスセンサの取り付け位置や使用環境を考慮して適宜設定すればよい。具体的には、請求項3に記載のように、フィルタが、外筒蓋の通気孔より後端側に配置されるように、管状部材に固定されるようにしてもよい。このようにフィルタを外筒蓋の通気孔より後端側に配置させることにより、フィルタ上面(ガスセンサの後端側に位置することになる面)は、外筒蓋の後端面(主体金具とは反対側に位置する面)よりも後方側に位置することになるため、ガスセンサ使用時にフィルタ上面に水が溜まってしまったり、埃が堆積したりすることを効果的に抑制することができる。
【0020】
ただし、フィルタを外筒蓋の通気孔より後端側に配置するように管状部材に固定させた場合、フィルタ上面に水が溜まることを抑制することができる反面、飛石等によるフィルタの破損の危険が増すことになる。そこで、請求項4に記載のように、フィルタが、外筒蓋の通気孔内に配置されるように、管状部材に固定されるようにしてもよい。このように、フィルタを外筒蓋の通気孔内に配置させることにより、フィルタ上面は、外筒蓋の後端面よりも前方側に位置することになるため、飛石等がフィルタに当たることを有効に防ぐことができ、フィルタの破損を効果的に抑制することができる。
【0021】
ただし、フィルタを外筒蓋の通気孔内に配置させた場合には、飛石等によるフィルタの破損を抑制することができる反面、上述したようにフィルタ上面への水等が溜まることが懸念される。そこで、フィルタ上面に水等が溜まる問題、および飛石等によるフィルタの破損問題の両者を解決するガスセンサの構造として、請求項5に記載のように、フィルタが、外筒蓋の通気孔内に配置されるように管状部材に固定される構成(上述した請求項4に記載の構成)を前提にしつつ、外筒蓋の後端面に、一端側が通気孔に連通し、他端側が外筒蓋の側壁面に開放する溝部を形成し、フィルタを、溝部の最深部よりも後端側に配置させるように構成するとよい。
【0022】
すなわち、本発明(請求項5)のガスセンサでは、フィルタを外筒蓋の通気孔内に配置させることにより、上述したようにフィルタよりも高い位置に外筒蓋の後端面が位置することから、フィルタの飛石等による破損を防止することができる。加えて、本発明(請求項5)のガスセンサでは、外筒蓋の後端面において、一端側(内側)が通気孔に連通し、他端側(外側)外筒蓋の側壁面に開放する溝部を設け、この溝部の最深部よりも後端側にフィルタを配置させることによって、フィルタ上に水等がかかった場合にも、この水をフィルタよりも低い位置にある溝部を介して外筒蓋の径方向外側に排出することが可能となる。つまり、フィルタを基準にして、外筒蓋の後端面を高い位置に配置させつつ、上記溝部の最深部を低い位置に配置させることによって、フィルタ上面に水等が溜まる問題、および飛石等によるフィルタの破損問題の両者を一挙に解決することができる。なお、溝部の形状は特に限定されず、断面形状においてU字状やV字状に形成することができる。
【0023】
上記溝部については、請求項6に記載のように、外筒蓋は、検出素子と電気的に接続するリード線を挿通するためのリード線用貫通孔を複数有しており、外筒蓋の後端面において、溝部がリード線用貫通孔と干渉しない位置に複数形成されているとよい。つまり、外筒蓋の限られた堆積を有効活用して溝部を形成することによって、フィルタ上面にかかる水等を、溝部を介して効率良く外筒蓋の径方向外側に向かって排出することが可能となる。
【0024】
また、フィルタとしては、請求項7に記載のように、撥油性を兼ね備えたフィルタを用いるのが良い。
通気孔を水密に塞ぐためには、上記フィルタとして、撥水性のフィルタを用いればよいが、撥水性のフィルタは、油が付着するとその撥水性を十分に発揮できなくなってしまう。このような問題に鑑み、請求項7に記載のガスセンサでは、フィルタに撥油処理を施すなどして撥油性を持たせるようにしている。特に、車両用のガスセンサ等は油に汚染される可能性があるので、このようにフィルタユニットに撥油性のフィルタを用いれば、長期に渡ってフィルタユニットの性能を維持することができる。
【0025】
また、本発明のガスセンサにおいては、請求項7に記載のように、フィルタユニットは、管状部材の内側において、複数のフィルタが固定された構成とするとよい。このように複数のフィルタを管状部材の内側に設けることにより、最外層に配置されることになるフィルタが万が一破れることがあっても、他のフィルタにより防水性を維持することができる。なお、複数のフィルタを管状部材の内側に配置させるにあたっては、複数のフィルタを重ねて、または管状状部材の中心軸線方向に対して所定の間隔をもって配置させることができる。
【0026】
さらに、本発明のガスセンサにおいては、請求項8に記載のように、フィルタユニットは、管状部材の内側において、フィルタを露出させる複数の開口部を備えた仕切り板が当該フィルタより後端側に固定された構成にされているとよい。このようにフィルタの後端側(換言すれば、フィルタ上面)に複数の開口部を備えた仕切り板を配置させることにより、飛石等によるフィルタの破損を有効に防止しつつ、外筒内に大気を導入させることが可能となる。
【0027】
この他、フィルタユニット内部を水密に保持するためには、請求項10に記載のように、フィルタを管状部材の内側で水密に固定するためのシール部材を、フィルタユニット内部に設けるのが良い。
このようなシール部材を備えるフィルタユニットをガスセンサの通気孔に嵌挿すれば、フィルタと管状部材との間の空隙を介して水滴等がフィルタユニット内部に侵入し、外筒内部が水滴等で汚染されるのを十分に抑制することができ、結果、ガスセンサの性能を長期にわたって維持することが可能である。尚、シール部材は、フィルタ外縁を管状部材内壁に接着可能な接着剤であってもよいし、Oリングのようなゴム製シール部材であってもよい。特に、ゴム製シール部材を用いると、熱がかかった際にゴムが管状部材内壁に接着するから、ガスセンサ内部の気密対策に有効である。
【0028】
また、フィルタユニットの生産性を考慮するならば、例えば、請求項11に記載のようにガスセンサを構成するのがよい。
請求項11に記載のガスセンサにおいては、フィルタを管状部材内側の所定位置に固定するためのフィルタ固定部が管状部材に設けられており、フィルタユニットは、フィルタ及びシール部材としてのOリングを管状部材内側方向に折曲された管状部材の端部とフィルタ固定部の間で挟持して固定する構成にされている。
【0029】
このような構成のガスセンサにおいては、管状部材の内側に形成されるフィルタ固定部に、Oリング及びフィルタを重ねるように収納し、この後に、曲げ加工等で管状部材の端部を当該部材の内側方向に折曲することで、フィルタユニットを完成させることができ、簡単かつ効率的にフィルタユニットを製造することが可能である。
【0030】
この他、フィルタユニットは具体的に請求項12に記載のように構成されているのがよい。
請求項12に記載のガスセンサにおいては、管状部材を所定の境界で拡径することにより、管状部材内壁に上記フィルタ固定部としての段部を形成し、管状部材の拡径された一端側で上記段部にOリング及びフィルタを重ねるように配置して管状部材内側にOリング及びフィルタを収納している。
【0031】
また、請求項12に記載のガスセンサにおいては、一端側の管状部材端部を管状部材内側方向に折曲することによって、Oリング及びフィルタを、フィルタ固定部としての段部と管状部材端部との間で挟持するようにし、これによってOリング及びフィルタを固定するように、フィルタユニットを構成している。
【0032】
このように管状部材の拡径により段部を形成する方法を採用すると、簡単に管状部材の内側にフィルタ固定部を形成することができる。
また拡径により管状部材に段部を形成すると、段部に対応する管状部材外壁に、請求項2における第一係止部又は第二係止部を形成することができるので、フィルタユニット製造時の工程数を少なくすることができて、フィルタユニットの生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に本発明の実施例について、図面とともに説明する。
図1は、本発明が適用された第一実施例の酸素センサ1の構成を表す概略断面図である。
【0034】
図1に示すように、ガスセンサの一つである第一実施例の酸素センサ1は、検出素子2、検出素子2を適切な温度で動作させるためのセラミックヒータ3、センサ各部を内側に収容するためのケーシング10、などから構成されている。
検出素子2は、ZrO2を主成分とする酸素イオン伝導性固体電解質体により先端が閉じた中空軸状に形成され、更に、内面及び外面にプラチナ(Pt)からなる一対の多孔質電極層(内側電極2a,外側電極2b)が形成された構成にされている。また、セラミックヒータ3は、軸状に構成され、検出素子2の内部空間2cに配置されている。
【0035】
一方、ケーシング10は、検出素子2を保持するための主体金具11、検出素子2を含むセンサ内部を保護するための外筒13、などから構成されている。
主体金具11は、両端部が開口された中空状に形成され、中央側壁に凸状の段部11aを備えた構成にされている。また、主体金具11は、軸方向に形成された貫通孔11bを有しており、その貫通孔11bの先端側から検出素子2の閉じた先端部を後述する管内に充満する被測定ガスに晒すように突出させ、また貫通孔11bの後端側から検出素子2の後端部を突出させるようにして、貫通孔11b内にて検出素子2を保持するようにされている。
【0036】
即ち、検出素子2は、主体金具11に対して絶縁性セラミックから形成されたセラミックホルダ15,16とタルクから形成されたセラミック粉末17とを介して、検出素子2の軸方向における中央部付近の外周を電気的に絶縁した状態で保持される。
【0037】
また、主体金具11の外周には、排気管等の被測定ガスが充満する管19の壁面に形成された取付孔19aに螺合可能な取付ねじ部11cが形成されており、主体金具11は、取付孔19aに螺合して酸素センサ1を管19に固定し、検出素子2の先端部を管内側に配置するようにされている。
【0038】
この他、主体金具11の先端部には、検出素子2の先端部を一定の間隔を隔てて覆うように第一プロテクタ21及び第二プロテクタ23が取り付けられている。この第一プロテクタ21及び第二プロテクタ23には、被測定ガスをプロテクタ21,23内側に導入するための複数のガス透過口21a,23aが形成されている。
【0039】
また、外筒13は、円筒状に形成されており、先端開口部が、主体金具11のうちで管19より外側に位置する段部11aよりも後方側の部分に外嵌され、固着されている。この外筒13は、検出素子2を外部の水、油、粉塵、飛石等から保護するようにして内部に収容している。
【0040】
また、外筒13は、検出素子2より後方側で、セラミックにより筒状に形成された絶縁性のセパレータ27を収容している。
セパレータ27は、外周面に鍔部27aを備えており、この鍔部27aによって外筒13に形成された径方向内側に突出する凸部13aに係止され、外筒13内部の所定位置に固定されている。また、セパレータ27は、軸方向に形成された貫通孔を複数有しており、この貫通孔内に外筒蓋30を介して外部から導入されたリード線35,41,47を収容している。
【0041】
外筒蓋30は、円柱形状のゴム(例えば、フッ素ゴム)からなり、外筒13の後端開口部に嵌合され、外筒13内部を水、油、粉塵等から保護するシール部材として機能する。また、この外筒蓋30は、中心部に外筒13内部を軸方向に貫通する通気孔31を備え、更に、その通気孔31の周囲に、リード線を外部から外筒内部に導入するための複数個(本実施例では4つ)のリード線用貫通孔33を備えている。
【0042】
つまり、当該酸素センサ1においては、検出素子2の内側電極2aに電気的に接続されるリード線35と、検出素子2の外側電極2bに電気的に接続されるリード線41と、セラミックヒータ3に接続される一対のリード線47(図示しない一方のリード線は、図面前方に配置されている。)と、が各リード線用貫通孔33を挿通してセパレータ27内部に導入されている。
【0043】
尚具体的に、検出素子2用の一方のリード線35は、コネクタ部36、引出し部37、及び、内部電極に接触する筒状の内部電極接続部38、で構成される端子金具を経て、検出素子2の内側電極2aと電気的に接続され、他方のリード線41は、コネクタ部42、引出し部43、及び、外部電極接続部44、で構成される端子金具を経て、検出素子2の外側電極2bと電気的に接続されている。
【0044】
また、セラミックヒータ3通電用の一対のヒータ用リード線47は、外筒蓋30、セパレータ27内を通り、セラミックヒータ3の後端部に形成された一対のヒータ端子部48に接続され、このヒータ端子部48を経て、セラミックヒータ3内に埋設された図示しない発熱用抵抗回路に通電されている。
【0045】
次に、外筒蓋30の通気孔31に嵌挿されたフィルタユニット50の構成について図2を用いて説明する。尚、図2は、フィルタユニット50の外筒蓋30への取付態様を表す説明図であり、外筒蓋30に固定する前のフィルタユニット50の軸方向に沿う概略断面図である。
【0046】
フィルタユニット50は、所定の境界Aで拡径された円筒状の管状部材51、シート状のフィルタ53、シール部材としてのOリング55、などから構成されている。
管状部材51は、境界Aより前方側の(主体金具側に配置される)小径部51aと、境界Aより後方側の(主体金具とは反対側に配置される)大径部51bと、から構成されており、小径部51aの外径は、外筒蓋30に形成された通気孔31の内径と略同一寸法にされ、小径部51aの軸方向長さは、外筒蓋30の軸方向長さと略同一寸法にされている。また、上記拡径により管状部材51は、境界Aにおいて、内壁に段部51cを備えた構成にされている。
【0047】
一方、フィルタ53は、水(水滴等)や油などの液体の透過は阻止し、気体(空気等)の透過は許容する撥水性及び撥油性を備えた通気性のフィルタから構成されており、シート状で、外径が管状部材51の大径部51bの内径と略同程度の大きさの円状に形成されている。
【0048】
尚具体的に、本実施例のフィルタ53としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の未焼成成形体を、PTFEの融点よりも低い加熱温度で1軸以上の方向に延伸することにより得られる撥水性の多孔質繊維構造体(商品名:例えばゴアテックス(ジャパンゴアテックス(株))に、撥油処理(例えばゴアテックスのオレオ処理)を施したものが使用されている。
【0049】
ここで、フィルタ53に撥油処理を施すのは、本実施例の酸素センサ1が、自動車等の車両内で使用される場合があるためである。仮に、多孔質繊維構造体に油が付着すると、これによって多孔質繊維構造体に付着した水の表面張力が低下するため、フィルタの撥水性が十分に発揮できない可能性があるが、本実施例のように、フィルタ53に撥油処理を施すと、フィルタ53の撥水性を十分に発揮させることができ、水滴がフィルタ53を透過してしまうのを防止することができる。
【0050】
この他、フィルタユニット50のOリング55としては、外径が管状部材51の大径部51bの内径と略一致するものが用いられている。
ところで、本実施例のフィルタユニット50は、管状部材51の段部51c上に、Oリング55及びフィルタ53を、フィルタ53が上になるようにして順に収容した後、大径部51bの後端部を曲げ加工して、大径部中央方向(図2の小矢印方向)に折曲(折曲部51d)することによって作られている。
【0051】
この曲げ加工によって、フィルタユニット50は、段部51cと折曲部51dとの間でOリング55及びフィルタ53を挟持し、これによって、Oリング55及びフィルタ53を管状部材51の内側の所定位置で固定しつつ、管状部材51内側の水、油、粉塵等の侵入口となり得る空隙(例えば、フィルタ53外縁と管状部材内壁との間の隙間)を閉塞している。
【0052】
また、本実施例においては、このように構成されたフィルタユニット50を、外筒蓋30の通気孔31に挿入した後、小径部51aの先端を外筒蓋30先端で径方向外側に向かって曲げ加工することによって、外筒蓋30に固定している。尚、図3は、曲げ加工後のフィルタユニット50の構成を示したフィルタユニット50及び外筒蓋30の概略断面図である。
【0053】
この曲げ加工後において、フィルタユニット50は、境界Aでの径の変化にともなって形成される管状部材51の段部51c(第二係止部)の外面51eで外筒蓋30の後端部に係止され、曲げ加工によってフィルタユニット50先端に形成される折曲部51f(第一係止部)によって、外筒蓋30の先端部に係止される。
【0054】
また、本実施例においては、上述のようにして外筒蓋30にフィルタユニット50を固定した後、各リード線35,41,47を各リード線用貫通孔33に通しつつ、外筒蓋30を外筒13の後端開口部に嵌合し、嵌合後に外筒13側面を径方向内側に向かって曲げ加工を加えることによって、その外筒蓋30を外筒13の後端部内側に固定している。これにより、外筒13と外筒蓋30との境界及び各リード線と外筒蓋30の各リード線用貫通孔33との境界は、外筒蓋30の弾性によって閉塞されて、外筒13内部は外部から水密に隔離される。
【0055】
また一方で、被測定ガスの酸素濃度測定に必要な基準ガスとしての大気は、通気孔31に装着されたフィルタユニット50を介して、図4に示す矢印のように外筒13内部に導入され、検出素子2内壁とセラミックヒータ3との間の隙間を介して、その検出素子2の内部空間2cに供給される。尚、図4は、酸素センサ1の上部を拡大して表した概略断面図である。
【0056】
以上、第一実施例の酸素センサ1について説明したが、この酸素センサ1においては、予めフィルタ53を管状部材51の内側に固定したフィルタユニット50を別体で形成し、この後にフィルタユニット50を通気孔31に嵌挿する方法で、通気孔31をフィルタ53で塞ぐため、従来のような通気孔31にフィルタを挿入部材の外側に配置させつつ挿入する構成であるが故にフィルタが破れてしまうといった問題を解消することができるし、装着が簡単であるので酸素センサ1の生産性を向上させることができる。
【0057】
また、ガスセンサにはリード線が5本のものなど種々のタイプがあるが、第一実施例のようにフィルタユニット50を別体で製造しておくと、異なるタイプのガスセンサにおいても通気孔31のサイズを合わせておけば、フィルタユニット50をそのガスセンサに容易に流用することが可能である。したがって、第一実施例のようにフィルタユニット50を通気孔31に嵌挿する方法を採用すれば、ガスセンサの製造コストを抑えることができる。
【0058】
この他、第一実施例では、Oリング55の弾性力でフィルタ53を折曲部51dと段部51cとの間で挟持することにより、フィルタ53を管状部材51の大径部51b内で固定する方法を採用しているため、フィルタ53の径を通気孔31の径より若干大きくしておく程度で、通気孔31を塞ぐようにしてフィルタ53を管状部材51内部にしっかりと固定することが可能である。したがって、本実施例の酸素センサ1においては、高価なフィルタ53の使用量を抑えることができて、酸素センサ1の製造コストを抑えることができる。
【0059】
また第一実施例においては、Oリング55がフィルタ53の外縁側からの水滴等の侵入を阻止する役割を果たすため、フィルタユニット50内部を水密に維持することが可能で、長期に渡り、外筒13内部を水滴や油、粉塵等から保護することが可能である。
【0060】
また、酸素センサ1では、フィルタユニット50を段部51cの外面51eと折曲部51fとにより外筒蓋30にしっかりと固定しているため、フィルタユニット50が外筒蓋30から抜け落ちてしまうのを十分に抑制することができる。
この他、酸素センサ1では、大径部51bが通気孔31より後方側の外側に配置されているため、大径部51b内のフィルタ53近傍には埃が溜まりにくく便利である。つまり、この酸素センサ1においては、埃が蓄積してフィルタ53の通気性を悪化させることを防止することができる。
【0061】
次に、第二実施例の酸素センサ61の要部構成について図5を示しつつ説明する。尚、図5は、第二実施例の酸素センサ61の上部構成を概略的に表した断面図である。また、以下では、第一実施例の酸素センサ1と構成の異なる部分について述べることとし、同一構成の各部の説明については省略することとする。
【0062】
図5に示すように、第二実施例の酸素センサ61においては、フィルタユニット70の軸方向の長さを外筒蓋63の軸方向の長さと略同一にし、外筒蓋63の通気孔65をフィルタユニット70の外形に合わせて所定の境界より上方で拡径し、管状部材71の小径部71aのみならず大径部71bを通気孔65内に収容するようにしている。
【0063】
即ち、第二実施例において、外筒蓋63の通気孔65は、内径が管状部材71の大径部71bの外径と略同一寸法にされた大径部65bと、内径が管状部材71の小径部71aの外径と略同一寸法にされた小径部65aと、から構成されている。
【0064】
また、フィルタユニット70の管状部材71は、通気孔65の大径部65bに嵌合する大きさの大径部71bと、通気孔65の小径部65aに嵌合する大きさの小径部71aと、からなり、フィルタユニット70は、曲げ加工により上端に形成された折曲部71dと、大径部71bと小径部71aとの境界に形成された段部71cとの間となる大径部71b内側にOリング55及びフィルタ53を収容した構成にされている。
【0065】
このような構成のフィルタユニット70は、外筒蓋63の後端側から通気孔65内に嵌挿され、この嵌挿後に、先端部が通気孔65の径方向外側に向かって曲げ加工されて、外筒蓋63に固定される。尚、この状態において、フィルタ53は、外筒蓋63の後端面と略同一位置に固定される。
【0066】
以上に説明した第二実施例における酸素センサ61は、フィルタユニット70の略全体を通気孔65に収容する構成のため、この酸素センサ61によれば、フィルタユニット70が外筒蓋63より突出するのを解消することができて、酸素センサ61を小型化することができる。
【0067】
この他、第二実施例における酸素センサ61は、図6に示す酸素センサ81のように変形することが可能である。尚、図6は、酸素センサ81の要部構成を概略的に表した説明図である。
図6に示す酸素センサ81は、上記第二実施例の酸素センサ61の通気孔小径部65aの径を小さくし(通気孔65’の小径部65a’)、これに合わせて、フィルタユニット70の小径部71aの径を小さくした(管状部材71’の小径部71a’)ものである。
【0068】
この変形例から理解できるように、上記構成のフィルタユニット70’では、外筒蓋63の通気孔小径部65a’が小さい場合でも、フィルタ53のサイズを大きいままにしておくことができるので、通気孔小径部65a’を小さくすることにより基準ガスの通気量が悪くなるのをある程度抑制することができる。換言すると、通気孔を小さくしてもなお通気量を確保することができる。
【0069】
したがって、このようなフィルタユニット70’を使用する場合においては、酸素センサ81の設計過程において、通気孔65’のサイズを従来より自由に設定することができる。
尚、上述したように、本発明のガスセンサにおけるフィルタユニットの第一係止部は、フィルタユニット50の折曲部51fに相当し、第二係止部は、フィルタユニット50の段部51cの外面51eに相当する。
【0070】
また、本発明のガスセンサは、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施例においては、フィルタ53を、外筒蓋30の後方側で、管状部材51の内側に配置するようにしたが、フィルタ53を外筒蓋30の前方(先端)側に配置してもよい。
【0071】
この他、本実施例においては、フィルタユニット50,70,70’内においてOリング55を一つ配置しただけであるが、例えば、段部51c側と折曲部51d側にOリングをそれぞれ配置し、大径部51b内においてフィルタ53を一対のOリングで挟み込むようにしてもよい。このようにすれば、フィルタユニット50,70,70’のシール性を一層高めることが可能である。
【0072】
また、本発明を図10に示した従来の酸素センサ101に適用することも可能である。
さらに、本実施例では、検出素子2を先端が閉じた中空軸状の有底筒状体としたが、板状に形成された酸素イオン導電性固体電解質体の表面に一対の電極が形成されたタイプを用いることもできる。その他に、一対の電極が形成された板状の酸素イオン伝導性固体電解質体に対し、板状のセラミックヒータが一体に設けられた検出素子を用いてもよい。
【0073】
さらに、第三実施例の酸素センサ91について、図7及び図8を参照しつつ説明する。なお、図7は第三実施例の酸素センサ91の上部構造を概略的に表わした断面図であり、図8は第三実施例の酸素センサ91において、(a)フィルタユニット100を有する外筒蓋83を後端面93側からみた斜視図、および(b)フィルタユニット100を有する外筒蓋83を先端面95側からみた平面図である。また、以下では、第一実施例および第二実施例の酸素センサ1、61と異なる部分について述べることとし、同一構成の各部についての説明は省略することとする。
【0074】
図7に示すように、第三実施例の酸素センサ91においては、フィルタユニット100の軸方向の長さを外筒蓋83の軸方向の長さよりも短く設定すると共に、外筒蓋83の通気孔85をフィルタユニット100の外形に合わせて所定の境界より上方で拡径して、管状部材101の小径部101aのみならず大径部101bを通気孔85内に収容するようにしている。
【0075】
即ち、第三実施例において、外筒蓋83の通気孔85は、内径が管状部材101の大径部101bの外径と略同一寸法に形成された大径部85bと、内径が管状部材101の小径部101aの外径と略同一寸法に形成された小径部85aと、から構成されている。通気孔85の大径部85bの軸方向長さは、管状部材101の大径部101bの軸方向長さよりも大きく設定されており、フィルタユニット100のフィルタ103上面(図7において上側に位置する面)が外筒蓋83の後端面93よりも前方側に配置されている。
【0076】
なお、この第三実施例では、フィルタユニット100(管状部材101)の先端に形成されて、外筒蓋83の先端部に係止される折曲部101fが、第一実施例および第二実施例とは異なっている。即ち、第1実施例および第二実施例においては、管状部材51の先端側を径方向外側に向かって拡径するようにして折曲部51fを形成していた。一方、本第三実施例においては、図8(b)に示すように、管状部材101の先端側に径方向外側に向かって折り曲げたときに、十字形態をなして外筒蓋83の先端部(先端面95)に係止される折曲部101fが、管状部材101の先端側に形成されている。
【0077】
このような構成のフィルタユニット100は、外筒蓋83の後端側から通気孔85内に嵌挿され、この嵌挿後に、管状部材101の先端側に位置する4本の折曲部101fを径方向外側に向かって十字形態をなすように折り曲げることで、外筒蓋83に固定される。
【0078】
また、第三実施例においては、外筒蓋83の後端面93に、図8(a)に示すように、一端側(内側)が通気孔85に連通し、他端側(外側)が外筒蓋83の側壁面97に開放する溝部87がリード線用貫通孔33と干渉しない位置に十字形態で複数形成されている。なお、フィルタ103は、この溝部87の最深部89よりも後端側に位置するように配置されている。すなわち、この第三実施例の酸素センサ91では、上述したようにフィルタユニット100におけるフィルタ103上面が外筒蓋83の後端面93よりも前方側に配置される形状であるために、飛石等によるフィルタ103の破損を効果的に抑制することができると共に、フィルタ103の上面に水等がかかったとしても、この水を、溝部87を介して外筒蓋83の径方向外側に排出することが可能となる。
【0079】
よって、この第三実施例における酸素センサ91は、フィルタ103を外筒蓋83の後端面93より前方側に配置させたフィルタユニット100を備えるので、フィルタ103が飛石等によって破損することを有効に抑制することができる。さらに、外筒蓋83の後端面93に上記溝部87を形成したことによって、フィルタ103を外筒蓋83の後端面93より前方側に配置させた場合にも、フィルタ103の上面に水や埃等が溜まるのを有効に抑制することができる。
【0080】
なお、第三実施例においては、フィルタ103が、第1フィルタ103a、第2フィルタ103bの複数枚(2枚)から構成されており、この複数枚のフィルタ103a、103bが共に管状部材101の内側に配置された構成となっている。具体的には、フィルタ103a、103bはOリング55を介して対向して管状部材101の内側に配置されており、このフィルタ103a、103b及びOリング55が段部51cと折曲部101dとの間で挟持されている。このようにフィルタ103を二重に設けることにより、水、油等の浸入をより確実に防止することができる。また、フィルタ103を二重に設けることで、一方のフィルタが万が一破損したとしても、他方によるフィルタ機能を得ることができる。なお、二枚のフィルタ103a、103bは同一の性能を有するものを用いてもよいし、一方に撥水性、他方に撥油性を有するフィルタを用いるなど、機能を分けてもよい。
【0081】
さらに、フィルタの破損を防止するための変形例を、図9を参照しつつ説明する。図9(a)は、上述した第一実施例のフィルタユニット50を後端側からみた平面図である。管状部材51は、一つの開口部51hを有しており、開口部51hから管状部材51内部に取り付けられたフィルタ53が露出している。これに対し、図9(b)および図9(c)に示した変形例では、開口部51hが複数の開口部51h’、51h’’に分割されている。複数の開口部51h’、51h’’を有する仕切り板51g、51g’を、フィルタ53の後端側に設けた状態で管状部材51の内側に配置させることによって、一つの開口部の開口面積を小さくすることができ、飛石等によってフィルタ53が破損するのを有効に防止することができる。なお、仕切り板の形態としては、金属などの線材をメッシュ状に編みこんだものを採用することもできる。
【0082】
この他、本実施例では、外筒蓋30の通気孔31から外筒13内部に、検出素子2の基準ガスとしての大気を導入する酸素センサ1を例示したが、外筒13内部に大気を導入せずともガス濃度が検出可能なガスセンサにおいて、本発明を適用してもよい。
【0083】
例えば、ガスセンサが内燃機関の排気管に取り付けられる場合、当該センサが高温下の環境で使用されるために、その熱的要因に起因して外筒の後端開口部に配置される外筒蓋(特にフッ素ゴム製の外筒蓋)から腐食性のガスが生じ、その腐食性ガスにより外筒内部に収容されるセンサ各部が腐食する可能性が考えられる。したがって、このようなガスセンサにおいては、外筒蓋に外筒の内部と外部との気体の流通経路となる通気孔を設けることで、上記腐食性ガスを有効に外部に流出させる機能が得られる。しかし、このように外筒蓋に通気孔を設ければ、当然外筒内部に気体の流通を許容しつつ水滴等の侵入を防止することが必要になる。そこで、本発明を採用することによって、上記機能を簡単で安価に達成したガスセンサを得ることができる。
【0084】
また、上述した第1実施例および第2実施例では、フィルタ53を管状部材51の内側に1つ配置させる例を示したが、複数のフィルタ53を重ねて又は管状部材51の中心軸線方向に対して所定の間隔をもって、管状部材51の内側に配置・固定させてもよい。このような構成を図ることで、ガスセンサの外部に晒されることになる最外層のフィルタが万が一破れることがあっても、他のフィルタにより防水性を維持することができる。その結果、ガスセンサの信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】第一実施例の酸素センサ1の構成を表す概略断面図である。
【図2】フィルタユニット50の構成を表す概略断面図である。
【図3】フィルタユニット50が嵌挿された外筒蓋30の構成を表す概略断面図である。
【図4】酸素センサ1の上部構成を表す概略断面図である。
【図5】第二実施例の酸素センサ61の上部構成を表す概略断面図である。
【図6】酸素センサ61’の上部構成を表す概略断面図である。
【図7】第三実施例の酸素センサ91の上部構成を表す概略断面図である。
【図8】(a)フィルタユニット100が嵌挿された外筒蓋83の後端面93側からみた斜視図、及び(b)フィルタユニット100が嵌挿された外筒蓋83の先端面95からみた平面図である。
【図9】フィルタユニットにおいて、フィルタの後端側に仕切り板を配置させた変形例を示す説明図である。
【図10】従来の酸素センサ101の構成を表す断面図である。
【図11】従来の酸素センサ101におけるフィルタ153の取付態様を表す説明図である。
【符号の説明】
【0086】
1,61,81,91・・・酸素センサ、2・・・検出素子、2a・・・内側電極、2b・・・外側電極、3・・・セラミックヒータ、10・・・ケーシング、11・・・主体金具、11b・・・貫通孔、13・・・外筒、19・・・管、19a・・・取付孔、21,23・・・プロテクタ、21a,23a・・・ガス透過口、27・・・セパレータ、30,63,83・・・外筒蓋、31,65,65’,85・・・通気孔、33・・・リード線用貫通孔、35,41,47・・・リード線、50,70,70’,100・・・フィルタユニット、51,71,71’、101・・・管状部材、51a,65a,71a,71a’
・・・小径部、51b,71b・・・大径部、51c,71c・・・段部、51d,51f,71d,101d,101f・・・折曲部、51g,51g’・・・仕切り板、53、103・・・フィルタ、55・・・Oリング、87・・・溝部、89・・・溝部の最深部、93・・・外筒蓋の後端面、97・・・外筒蓋の側壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素イオン伝導性固体電解質体の表面に一対の電極が形成された検出素子と、
軸方向に形成された貫通孔を有すると共に、該貫通孔の先端側から前記検出素子の先端部を被測定ガスに晒すようにして、前記検出素子を前記貫通孔内に保持する主体金具と、
該主体金具の後端側に設けられ、前記検出素子を内部に収容する外筒と、
該外筒の後端開口部に嵌挿されると共に、自身の後端面から先端面に向けて貫通し、該外筒の内部と外部との気体の流通経路となる通気孔を有する外筒蓋と、
を備えたガスセンサであって、
前記外筒蓋の通気孔に嵌挿される管状部材と、該管状部材の内側に配置されると共に、その内側で固定されて前記通気孔を塞ぐ通気性及び撥水性を有するフィルタと、からなるフィルタユニット、
を前記外筒蓋に備えていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記管状部材は、前記外筒蓋の先端部に係止する第一係止部と、前記外筒蓋の後端部に係止する第二係止部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記フィルタは、前記外筒蓋の前記通気孔より後端側に配置されるように、前記管状部材に固定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記フィルタは、前記外筒蓋の前記通気孔内に配置されるように、前記管状部材に固定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記外筒蓋の後端面に、一端側が前記通気孔に連通し、他端側が前記外筒蓋の側壁面に開放する溝部が形成されており、前記フィルタは、溝部の最深部よりも後端側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記外筒蓋は、前記検出素子と電気的に接続するリード線を挿通するためのリード線用貫通孔を複数有しており、前記外筒蓋の後端面において、前記溝部が、前記リード線用貫通孔と干渉しない位置に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記フィルタは、撥油性を兼ね備えたフィルタであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記フィルタユニットは、前記管状部材の内側において、複数のフィルタが固定された構成にされていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項9】
前記フィルタユニットは、前記管状部材の内側において、前記フィルタを露出させる複数の開口部を備えた仕切り板が当該フィルタより後端側に固定された構成にされていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項10】
前記フィルタユニットは、前記フィルタを前記管状部材の内側で水密に固定するためのシール部材を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項11】
前記管状部材は、前記フィルタを自身内側の所定位置に固定するためのフィルタ固定部を備え、
前記フィルタユニットは、前記フィルタ及び前記シール部材としてのOリングが、管状部材内側方向に折曲された該管状部材端部と前記フィルタ固定部との間で挟持されて固定された構成にされていることを特徴とする請求項10に記載のガスセンサ。
【請求項12】
前記管状部材は、所定の境界で拡径され、該拡径により形成された段部を、前記フィルタ固定部として内壁に有する構成にされており、
前記フィルタユニットは、該拡径された一端側で該段部に前記Oリング及び前記フィルタが重なるように配置され、該管状部材内側方向に折曲された該一端側の管状部材端部によって、前記Oリング及び前記フィルタが前記段部と前記管状部材端部との間で挟持されて固定された構成にされていること特徴とする請求項11に記載のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−157965(P2008−157965A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36508(P2008−36508)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【分割の表示】特願2002−379571(P2002−379571)の分割
【原出願日】平成14年12月27日(2002.12.27)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】