説明

ガスセンサ

【目的】簡易な構成により被測定ガス中に含まれる導電性の微粒子の濃度を検出するガスセンサにおいて、広い検出範囲を有するガスセンサを提供する。
【解決手段】セラミックス基板30の表面に形成した検出部10、20に捕集、堆積する導電性微粒子PMの堆積量Qによって変化する抵抗値R10、R20を測定して被測定ガス中のPMの濃度を検出するガスセンサ1であって、検出範囲の異なる複数の検出部10、20を具備すると共に、これらの複数の検出範囲DR10、DR20の一部が互いに重なるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼排気等の被測定ガス中に含まれる導電性微粒子を検出するガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コモンレール式燃料噴射システム、過給器システム、酸化触媒、ディーゼル粒子状物質フィルタDPF、選択触媒還元(SCR)システム、排気再循環(EGR)システム等を組み合わせて、ディーゼル機関やガソリンリーンバーン機関等の燃焼排気中に含まれる窒素酸化物NOx、粒状物質PM、未燃炭化水素HC等の環境負荷物質の低減が図られている。
このようなシステムに用いられるDPFは、一般に、耐熱性に優れ、かつ、無数の細孔を有する多孔質セラミックスを素材としたハニカム構造とされ、多孔質の隔壁に存在する細孔中にPMを捕捉し、PMが堆積して細孔に目詰まりを起こして圧力損失が高くなると、バーナやヒータ等で加熱したり、機関の燃焼爆発後に少量の燃料を噴射するポスト噴射等によりDPF内に高温の燃焼排気を導入したりして、DPFを加熱し、DPF内に捕集されたPMを燃焼除去して再生できる構成とされている。
内燃機関の燃焼効率をさらに向上すべく、このようなDPFの再生時期の判断や、DPFの劣化、破損等を検出するOBD(オンボードダイアグノーシス、車載式故障診断装置)や、内燃機関のフィードバック制御等において、燃焼排気中に含まれるPMを高精度で連続的に検出できるガスセンサが必要とされている。さらに、このようなPMを検出するガスセンサを用いる場合、ガスセンサの故障に対する確実なフェールセーフが求められている。
また、一般にDPFの再生制御等には、DPFの入口側と出口側とに設けた圧力センサによってその圧力差を検出して、DPFの目詰まりを判断する方法が用いられているが、DPFの目詰まりが進行し、圧力差が大きくなった状態でないと検出できない虞がある。
【0003】
燃焼排気中のPMの検出手段として、特許文献1には、煤を含むガスが通過するガス流路内に設置して、前記ガスに含まれる前記煤を検出する煤検出センサであって、多孔質の導電性物質から構成された煤検出電極と、前記煤検出電極に配設され、前記煤検出電極の電気抵抗の値を測定するための少なくとも一対の導電性電極とを備えた煤検出センサが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ガス流内の導電性の微粒子を検出するための検出装置であって、基板上に形成された少なくとも2つの電極からなる電極対を具備すると共に、該電極対の少なくとも2つの電極が導電層によって覆われ、該導電層の抵抗値が測定ガス中の微粒子によって形成される抵抗値の最小値と同等又はそれ以下の抵抗値であることを特徴とする微粒子検出装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、ガスセンサ向けセンサ素子及びセンサ素子の作動方法として、混合気に晒される少なくとも2つの電極(1)、(2)とこれらの電極を支持する1つの基板(3)とを有し、混合ガス中の粒子を定量するためのガスセンサ、特にカーボン向けセンサ素子に関するものであって、前記基板(3)と前記電極(1)、(2)との間に1つの導電性ベース(4)が設けられており、さらに、前記電極(1)、(2)は、導電性ベース(4)によって互いに電気的に接続されているセンサ素子及びこのセンサ素子を用いて混合ガス中の微粒子を定量するための方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1にあるような煤検出センサでは、多孔質の導電性物質から構成された煤検出電極に煤が付着することによる電気抵抗の値の変化を、一対の導電性電極によって測定し、得られた電気抵抗の値からガスに含まれる煤の量を検出するものであるため、煤検出電極に付着した煤が微量であっても検出できる。 ところが、煤検出電極全体の表面を覆うように煤が堆積した後は、それ以上に煤が堆積しても検出される電気抵抗が変化しないため、煤の堆積量として検出できる範囲が狭く、DPFの破損等により短期間に比較的多量の煤が放出された場合に異常を検知できなかったりする虞がある。
【0007】
また、特許文献2や、特許文献3にあるように、2つの電極を覆うように導電層を形成したり、2つの電極層の下側に導電性ベースを形成したりすることによって電極間を導通させると、電極間に堆積する微粒子によって形成される抵抗が検出可能となるまでの不感時間を解消することができるが、電極と導電層との2つのノイズが検出信号に含まれ、検出精度が低下する虞がある。
さらに、導電層が微粒子の堆積する部分の全体に渡って設けられているため、一定以上の量のPMが堆積した場合の抵抗値変化が相対的に小さくなるので、DPFの破損等により短期間に比較的多量の煤が放出された場合に異常を検知できない虞がある。
【0008】
そこで、かかる実情に鑑み、本願発明は、簡易な構成により被測定ガス中に含まれる導電性の微粒子の濃度を検出するガスセンサにおいて、広い検出範囲を有するガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明では、耐熱性基板の表面に形成した検出部に捕集、堆積する導電性微粒子の堆積量によって変化する抵抗値を測定して被測定ガス中の導電性微粒子の濃度を検出するガスセンサであって、検出範囲の異なる複数の検出部を具備すると共に、これらの複数の検出範囲の一部が互いに重なるように設定する(請求項1)。なお、ここで言う耐熱性基板とはセラミックス等の融点が1000℃以上の耐熱性材料によって形成された基板である。
【0010】
第1の発明によれば、上記複数の検出部の一方の検出部に堆積する上記導電性微粒子の量が少なく、抵抗値の変化を検出できない不感期間であっても、検出範囲の異なる他方の検出部によって補うことができ、広い検出範囲に渡って被測定ガス中の導電性微粒子の濃度を検出することができる。
【0011】
第2の発明では、上記複数の検出部を第1の検出部と第2の検出部とで構成し、上記第2の検出部の検出範囲を上記第1の検出部の検出範囲の1/10ないし1/2とする(請求項2)。
【0012】
第2の発明によれば、上記第1の検出部の不感期間を上記第2の検出部によって補うことが可能となり、広い検出範囲に渡って被測定ガス中の導電性微粒子の濃度を検出可能なガスセンサが実現できる。
加えて、上記第1の検出部と上記第2の検出部とが同時に出力する期間が形成されるので、上記第2の検出部からの出力が飽和する時期と上記第1の検出部からの出力が検出可能となる時期のズレによって互いの検出部の異常を検知することも可能となる。
【0013】
より具体的には、第3の発明のように、上記第1の検出部は、上記耐熱性基板の表面に所定の間隙を設けて対向する一対の検出電極によって形成し、上記第2の検出部は、上記耐熱性基板の表面に上記第1の検出部と共に形成され、上記第1の検出部を形成する一対の検出電極の上記所定の間隙の1/10ないし1/2の間隙を設けて対向する一対の検出電極によって形成する(請求項3)。
【0014】
第3の発明によれば、上記一対の電極間の間隙を調整するだけで、上記第2の検出範囲を上記第1の検出部の検出範囲の1/10ないし1/2の検出範囲において、任意に設定することが可能で、検出範囲の広いガスセンサを容易に実現可能となる。
【0015】
また、第4の発明のように、少なくとも上記第2の検出部を上記耐熱性基板の表面に形成した所定の気孔率を有する多孔質導電性層と電極とによって構成しても良い(請求項4)。
【0016】
第4の発明によれば、上記第2の検出部に上記導電性微粒子が付着していない状態でも微量の電流が流れているため、不感期間がなく、連続的な出力の検出が可能となる。さらに、上記多孔質導電性層の気孔率を調整することによって、検出範囲の調整が可能となる。
【0017】
第5の発明では、上記第2の検出部が高温側となるように、上記第1の検出部と上記第2の検出部とを上記耐熱性基板の長手方向に対して、上下に配設する(請求項5)。
【0018】
第5の発明によれば、上記第2の検出部に捕集される上記導電性微粒子が粒径によって分級して検出することが可能となる。
【0019】
第6の発明では、上記被測定ガスは、ディーゼル燃焼機関の燃焼排気である(請求項6)。
【0020】
第6の発明によれば、上記ガスセンサをディーゼル燃焼機関の排気浄化装置のより精度の高い故障診断やディーゼル燃焼機関の燃焼制御に利用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるガスセンサの概要を示す平面図。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるガスセンサの作動原理を説明するための説明図であり、(a)は、ガスセンサの構成の概要を示す等価回路図、(b)は、検出部に堆積するPMの量に対する出力を示す特性図。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるガスセンサの効果を示し、(a)は、DPFが正常な状態におけるセンサ出力の経時変化を示す特性図、(b)は、DPFに破損を生じた状態におけるセンサ出力の経時変化を示す特性図、(c)は、DPFにPMが堆積した状態におけるセンサ出力の経時変化を示す特性図。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるガスセンサの効果を示し、(a)は、第2の検出部に断線異常が発生した状態におけるセンサ出力の経時変化を示す特性図、(b)は、第2の検出部に劣化異常が生じた場合のセンサ出力の経時変化を示す特性図。
【図5】本発明の第1の実施形態におけるガスセンサの効果を示し、(a)は、第1の検出部に断線異常が発生した状態におけるセンサ出力の経時変化を示す特性図、(b)は、第1の検出部に劣化異常が生じた場合のセンサ出力の経時変化を示す特性図。
【図6】本発明の第2の実施形態におけるガスセンサの概要を示し、(a)は要部断面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った断面図。
【図7】(a)は、本発明の第3の実施形態におけるガスセンサの検出部の概要を示す平面図、(b)は、第4の実施形態におけるガスセンサの検出部の概要を示す平面図。
【図8】本発明の第5の実施形態におけるガスセンサの検出部の概要を示し、(a)は、平面図、(b)は、展開斜視図。
【図9】本発明のガスセンサの他の変形例を示す等価回路図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照して、本発明の第1の実施形態におけるガスセンサ1の概要について説明する。
ガスセンサ1は、例えば、ディーゼル燃焼機関から排出される燃焼排気中に含まれる粒子状物質(PM)を捕集するディーゼル粒子状物質フィルタ(DPF)の故障診断(OBD)や、DPFの再生制御を行うべく、燃焼排気中のPM、特に、導電性微粒子の濃度を検出するのに用いられる。
ガスセンサ1は、例えば、耐熱性基板として、略平板状に形成したアルミナ等の1000℃以上の融点を有するセラミックス基板30の表面上に、導電性材料を用いて第1の検出部10と第2の検出部20とを厚膜印刷、フォトリソグラフィ等の公知の方法により形成して構成されている。
なお、耐熱性基板として、一部に導電性層を有するものや、1000℃以上の耐熱性を示すものであれば、高分子材料や耐熱ガラス等のセラミックス以外の耐熱性材料を用いても良い。
第1の検出部10は、少なくとも、所定の第1の間隙Dを設けて対向する一対の検出電極110と検出電極120とによって形成されている。
第2の検出部20は、少なくとも、所定の第2の間隙Dを設けて対向する一対の検出電極210と検出電極220とによって形成されている。
第2の間隙Dは、第1の間隙Dの1/10〜1/2の間隙に設けられている。
なお、本実施形態においては、第1の検出部10は、一対のリード部111、121に直交する方向に延設したリード部にさらに直交方向に延設して複数の検出電極110、120を交互に突出するように延設して櫛歯状に形成して、所定の間隙Dを設けて対向せしめてあり、第2の検出部20は、一対のリード部211、221に直交する方向に延設したリード部にさらに直交方向に延設して複数の検出電極210、220を交互に突出するように延設して櫛歯状に形成して、所定の間隙Dを設けて対向せしめてある。
本発明のガスセンサは、第1の検出部10と第2の検出部20とがPM等の導電性の微粒子を含む被測定ガスに晒され、第1の検出部10及び第2の検出部20に捕集され、堆積したPMの堆積量Qによって抵抗値が変化する第1の検出抵抗R10と第2の検出抵抗R20とを外部に設けた抵抗測定手段によって測定して、被測定ガス中のPM濃度を検出するものである。
また、公知の方法により、セラミックス基板30の裏面側に積層して、又は、セラミックス基板30の内部に通電により発熱する図略の加熱部を設けて、加熱により第1の検出部10と第2の検出部20とに堆積したPMを燃焼除去できるようになっている。
【0023】
図2を参照して、本発明の第1の実施形態におけるガスセンサ1の効果について説明する。
本図(a)に示すように、第1の検出部10に堆積するPMによって形成される第1の抵抗R10は、第1の抵抗検出手段50として、電源電圧+Bを第1の抵抗R10とで分圧する分圧抵抗RS1を設けて、第1の出力電圧VOUT1を計測することによって検出することができ、第2の検出部20に堆積するPMによって形成される第2の抵抗R20は、第2の抵抗検出手段60として、電源電圧+Bを第2の抵抗R20とで分圧する分圧抵抗RS2を設けて、第2の出力電圧VOUT2を計測することによって検出することができる。
本図(b)は、本実施形態におけるガスセンサ1の第1の検出部10と第2の検出部20との検出範囲に一例を示すものである。
例えば、第1の検出部10は、第1の検出部10のPM捕集量Qが1.0μgとなったときに、第1の出力電圧VOUT1が検出可能な最小電圧minVOUT1(例えば0.1v)となり、第1の検出部10のPM捕集量Qが100.0μgとなったときに、第1の出力電圧VOUT1が最大電圧maxVOUT1(例えば9.9v)となるように構成され、第2の検出部20は、第2の検出部20のPM捕集量Qが0.1μgとなったときに、第2の出力電圧VOUT2が検出可能な最小電圧minVOUT2(例えば0.1v)となり、第2の検出部20のPM捕集量Qが10.0μgとなったときに、第2の出力電圧VOUT2が最大電圧maxVOUT1(例えば9.9v)となるように構成されている。
このため、第1の検出部10の検出範囲DR10は、1.0μg〜100.0μgとなっており、第2の検出部20の検出範囲DR20は、0.1μg〜10.0μgとなっており、第1の検出部10の検出範囲DR10と第2の検出部20の検出範囲DR20とは、1.0μg〜10.0μgの範囲で重複している。
本発明においては、第1の検出部10の検出範囲DR10と第2の検出部20の検出範囲DR20とが重なるように、第2の検出部20の一対の検出電極210、220間の距離を表す第2の間隙Dが、第1の検出部10の一対の検出電極110、120間の距離を表す第1の間隙Dの1/10〜1/2の範囲で適宜変更可能である。
【0024】
図3を参照して、本発明の第1の実施形態におけるガスセンサ1の効果について説明する。
上述の関係を満たすように、第1の検出部10と第2の検出部20とを、形成すれば、図3(a)に示すように、先ず、第1の検出部10に堆積したPMによって検出電極110、120間に導電パスが形成され、第1の検出抵抗R10が徐々に低下し、第1の検出抵抗R10が検出可能となるPM量の1/10〜1/2の量のPMが第2の検出部20に堆積した時点で第2の検出部20に堆積したPMによって形成される第2の検出抵抗R20が検出可能となり、第2の出力VOUT2の上昇が始まる。
第1の検出部10からの出力VOUT1を検出できないような、始動開始直後等の検出部に堆積するPM量Qが少ないときであっても、第2の出力VOUT2が出力されるので、不感時間Td1を解消することができる。
この際、第2の検出部20にもPMの堆積を検出できない不感期間Td2が存在するが、極めて短い時間であるため、無視することができる。
第1の検出部10に堆積したPMによって形成される第1の検出抵抗R10が、さらに低下し、第1の出力VOUT1が、検出可能な最小電圧minVOUT1以上となると、第1の出力VOUT1は徐々に上昇し、第2の検出部20に堆積するPM量が飽和し、第2の検出部20の最大電圧maxVOUT1を超えるまでは、第1の出力VOUT1と第2の出力VOUT2との両方が検出され、その後は、第1の出力VOUT1が飽和し、最大電圧maxVOUT1に到達するまで、第1の出力VOUT1のみが上昇する。
本図(a)に示すように、第1の検出部10からの第1の出力VOUT1と第2の検出部20からの第2の出力VOUT2との両方が同時に出力される同時検出期間が存在するため、第1の出力VOUT1と第2の出力VOUT2との有無によって、DPFの破損や、目詰まりの有無等を検出するOBDとしての機能を発揮させることができる。
【0025】
図3(b)を参照し、DPFが破損する等、短時間に多量のPMが排出された場合の効果について説明する、
短時間に多量のPMが排出されると、第1の出力VOUT1、第2の出力VOUT2は共に、立ち上がりの速度が速くなる。
特に検出範囲の狭い第2の検出部20は直ちに飽和状態となるが、一方の、第1の検出部10は、検出範囲が比較的広いため、第2の検出部に比べれば緩やかな立ち上がりとなる。
その結果、図3(b)に示すように、第1の出力VOUT1と第2の出力VOUT2とが同時に検出される期間が極めて短くなるので、第2の出力VOUT2が飽和するタイミングと第1の出力VOUT1の立ち上がりのタイミングとの比較や、所定の時間閾値との比較等によって、DPFの破損等によりPMが多量に排出されていると判定し、警告等を発信することができる。
【0026】
図3(c)を参照し、DPFに目詰まりが生じている場合の効果について説明する。一方、DPFにPMが堆積し、再生が必要な状態となると、ガスセンサ1の検出部に排出されるPMの量が減少するので、本図(c)に示すように、第1の出力VOUT1、第2の出力VOUT2は、共に緩やかな変化となる。
特に第1の検出部10へのPMの堆積が少なくなると、第1の検出部10の不感時間Tdが長くなる。第2の検出部20の検出範囲は、第1の検出部10の検出範囲の1/10〜1/2であるので、状況によっては、第1の検出部10の不感時間Tdが長くなり、第1の検出部10が立ち上がる前に第2の検出部20が飽和状態となる虞もある。
このような場合に、DPFの目詰まりと判断して、DPFの再生制御を開始させたり、DPFの異常を警告したりすることもできる。
検出範囲の異なる第1の検出部10と第2の検出部20とを設けることによって、第1の出力VOUT1と第2の出力VOUT2の立ち上がりの違いから、DPFの異常の検出が可能となる。
【0027】
図4、図5を参照して、第1の検出部10と第2の検出部とを互いの異常を検出するための手段として利用した場合の効果について説明する。
図4(a)に示すように、第2の検出部20に断線異常が発生している場合、第2の出力VOUT2が同時検出期間となっても検出されず、第1の出力VOUT1のみが検出される状態となる。したがって、このような場合は、第2の検出部20に断線異常が発生していると判断して、ガスセンサ1の異常を警告することができる。
図4(b)に示すように、第2の検出部20に劣化異常が発生している場合、第2の検出部20が飽和する量のPMが堆積しているにも拘わらず、第2の出力VOUT2の上昇速度が遅くなり、第1の出力VOUT1と第2の出力VOUT2とが同時に検出される期間が長くなる。
したがって、正常な状態における同時検出期間を超えて第1の出力VOUT1と第2の出力VOUT2とが同時に検出される場合には、第2の検出部20に劣化異常が発生していると判断し、ガスセンサ1の異常を警告することができる。
なお、第1の出力VOUT1及び第2の出力VOUT2の傾き(電流)を検出して、ガスセンサ1の異常を検出することもできる。
【0028】
図5(a)に示すように、第1の検出部10に断線異常が発生している場合、第1の出力VOUT1が同時検出期間となっても検出されず、第2の出力VOUT2が飽和状態となる。したがって、このような場合は、第1の検出部10に断線異常が発生していると判断して、ガスセンサ1の異常を警告することができる。
【0029】
図5(b)に示すように、第1の検出部10に劣化異常が発生している場合、第2の検出部20が飽和する量のPMが堆積しているにも拘わらず、第1の出力VOUT1の上昇速度が遅くなり、第1の出力VOUT1と第2の出力VOUT2とが同時に検出される期間が短くなる。
したがって、正常な状態における同時検出期間となっても第1の出力VOUT1と第2の出力VOUT2とが同時に検出されない場合には、第1の検出部10に劣化異常が発生していると判断し、ガスセンサ1の異常を警告することができる。
【0030】
上記実施形態においては、第1の検出部10と第2の検出部20とをそれぞれ独立の抵抗検出手段50、60によって、検出する場合について説明したが、第2の出力VOUT2が飽和状態となったら第1の出力VOUT1に切り換えて、第1の検出部10に形成される第1の抵抗R10と第2の検出部20に形成される第2の抵抗R20とを一つの検出手段によって検出するように構成しても良い。
この場合、第2の出力VOUT2と第1の出力VOUT1との切り換え時期を計測し、切り換え時期が同時検出時期よりも早い場合には、DPFの破損と判断したり、切り換え時期が同時検出時期よりも遅い場合には、DPFの目詰まりと判断したりするような構成としても良い。
【0031】
図6を参照して本発明の第2の実施形態におけるガスセンサ1aについて説明する。本実施形態においては、上記実施形態と同様第2の検出部20aの検出範囲が第1の検出範囲10aの1/10〜1/2となるように一対の第1の検出電極110a、120a及び第2の検出電極210a、220aが形成されている。
さらに、本実施形態においては、図6(a)に示すように、本実施形態においては第1の検出部10aと第2の検出部20aとをセラミックス基板30の長手方向に対して、第2の検出部20aが高温側となるように上下に配設すると共に、ガスセンサ1aの周囲をカバー体40で覆い、導入孔41を第1の検出部10に対向せしめてある。
カバー体40は、略有底筒状に形成され、その側面及び底面には、被測定ガスをカバー体40の内部に導入、導出する導入孔41、42、43を設けてある。
このような構成とすることにより、PMを含む被測定ガスは、本図(b)に示すように、導入孔41から、カバー体40内に侵入し、第1の検出部10aの表面に衝突するが、このとき、φ10μm以上の比較的大きな粒径の大粒子PMはそのまま第1の検出部10aに、捕集され堆積し、φ10μmより小さい小粒径の小粒子PMは、流速の低下したカバー体40内の温度分布によって発生する上昇気流に乗ってふわふわと漂いながら、第1の検出部10aよりも上方に位置する第2の検出部20aに、捕集され堆積する。
なお、本実施形態においては、第1の検出部10a、第2の検出部20a―を構成する櫛歯状電極をセラミックス基板30の長手方向に対して、直交するように、形成した例を示したが、第1の実施形態と同様、セラミックス基板30の長手方向に対して平行となるように形成しても良い。
【0032】
本実施形態によれば、第2の検出部20aには、小粒子PMのみが堆積するので、図6(c)に示すように、第2の出力VOUT2の上昇速度が緩やかになり、第1の出力VOUT1と第2の出力VOUT2とが同時に検出される同時検出期間が、上記実施形態よりも相対的に長くなる。
また、本実施形態によれば、PMの粒径を分級して第1の検出部10aと第2の検出部20aとで分けて検出することにより、異常発生モードをより細かく分類して判定できるようになる。
【0033】
図7を参照して、本発明の他の実施形態におけるガスセンサの変形例1b、1cについて説明する。
上記実施形態においては、第1の検出部10、10aと第2の検出部20、20aとをセラミックス基板30の長手方向に対して、上下に配設して形成した例を示したが、本図(a)に示す第3の実施形態におけるガスセンサ1bのように、第1の検出部10bと第2の検出部20bとをセラミックス基板30に長手方向に対して左右横並びに配設しても良い。
又、第1の検出部10bのリード部111bと第2の検出部20bのリード部221bとを兼用する構成としても良い。
さらに、本図(c)に示す第4の実施形態におけるガスセンサ1cのように、第1の検出部10cと第2の検出部20cとをセラミックス基板30に長手方向に対して、上下に配設し、第1の検出部10cのリード部111cと第2の検出部20cのリード部221cとを兼用する構成としても良い。
【0034】
図8を参照して、本発明の第5の実施形態おけるガスセンサ1dについて説明する。上記実施形態においては、第1の検出部10、第2の検出部20をそれぞれ一対の櫛歯状電極によって形成し、それぞれの電極間の間隙D、Dの調整により検出範囲を設定した例を示したが、本実施形態においては、第2の検出部20dを電極210d、多孔質導電成層220d、リード部211d、221dによって構成した点が相違する。
本図(b)に示すように、第2の検出部20dは、多孔質導電性層220dは、所定の気孔率を有する多孔質の半導体膜によって構成し、電極110d、電極210dで挟み込むように積層されており、第2の検出部20dの抵抗値が100kΩから100MΩとなるように形成してある。
また、第1の検出部10dを同様の多孔質導電成層110dによって形成し、第1の検出部10dの抵抗値が100MΩとなるように構成しても良い。
なお、第1の検出部10d、第1の検出部20dの抵抗値は、多孔質導電性層の気孔率の調整によって適宜設定可能である。
上記実施形態のように、検出部を櫛歯状電極で構成した場合には、電極間にPMがある程度堆積し、電極間に電導パスを形成しないと出力VOUT1、VOUT2が検出されないが、本実施形態のように、半導体膜によって形成すると、PMが堆積しない状態でも、微量の電流が流れるため、ごく微量のPMが堆積した場合でも連続的に検出することが可能となる。
【0035】
図9を参照して、本発明に適用し得る第1の抵抗検出手段50及び第2の抵抗検出手段60の概要について説明する。
上記実施形態においては、第1の検出抵抗R10と分圧抵抗RS1とによって電源電圧+VCCを分圧して第1の出力電圧VOUT1を検出し、第2の検出抵抗R20と分圧抵抗RS2とによって電源電圧+VCCを分圧して第2の出力電圧VOUT2を検出するように構成した例について説明したが、本図(a)に示すように、第1の抵抗検出手段50eとして、第1の定電流電源51eを設け、第1のオペアンプ52eによって、第1の出力電圧VOUT1を検出し、第2の抵抗検出手段60eとして、第2の定電流電源61eを設け、第2のオペアンプ62eによって、第2の出力電圧VOUT2を検出するように構成しても良いし、本図(b)に示すように、第1の検出抵抗R10の上流側に第1の抵抗検出手段50fとして、第1の分圧抵抗51f、第1のオペアンプ52fを設けて第1の出力電圧VOUT1を検出し、第2の検出抵抗R20の第2の分圧抵抗61f、第2のオペアンプ62fを設けて第2の出力電圧VOUT2を検出するように構成しても良い。
なお、これらの実施形態は、上記実施形態にも適宜組み合わせて採用し得るものである。
【0036】
本発明は上記実施形態に限定するものではなく、検出範囲が異なり、互いの検出範囲の一部が重なる検出部を複数設けて、不感期間を解消すると共に、検出範囲のか差なる部分の変化をOBD等に利用する本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、上記実施形態においては、自動車エンジン等の内燃機関に搭載される粒子状物質検出センサを例に説明したが、本発明の粒子状物質検出センサは、車載用に限定されるものではなく、火力発電所等の大規模プラントにおける粒子状物質検出の用途にも利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 ガスセンサ
10 第1の検出部
110、120 第1の電極部
111、121 第1のリード部
20 第2の検出部
210、220 第2の電極部
211、221 第2のリード部
30 電気絶縁性耐熱基板
10 第1の検出抵抗
20 第2の検出抵抗
50 第1の抵抗検出手段
60 第2の抵抗検出手段
第1の間隙
第2の間隙
DR10 第1の検出範囲
DR20 第2の検出範囲
OUT1 第1の出力
OUT2 第2の出力
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開昭59−197847号公報
【特許文献2】国際公開第2008/138661号
【特許文献3】欧州特許出願公開第1925926号明細書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性基板の表面に形成した検出部に捕集、堆積する導電性微粒子の堆積量によって変化する抵抗値を測定して被測定ガス中の導電性微粒子の濃度を検出するガスセンサであって、
検出範囲の異なる複数の検出部を具備すると共に、これらの複数の検出範囲の一部が互いに重なるように設定したことを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
上記複数の検出部を第1の検出部と第2の検出部とで構成し、上記第2の検出部の検出範囲を上記第1の検出部の検出範囲の1/10ないし1/2とした請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
上記第1の検出部は、上記耐熱性基板の表面に所定の間隙を設けて対向する一対の検出電極によって形成し、
上記第2の検出部は、上記耐熱性基板の表面に上記第1の検出部と共に形成され、上記第1の検出部を形成する一対の検出電極の上記所定の間隙の1/10ないし1/2の間隙を設けて対向する一対の検出電極によって形成した請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
少なくとも上記第2の検出部を上記耐熱性基板の表面に形成した所定の気孔率を有する多孔質導電性層と電極とによって構成した請求項1ないし3のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項5】
上記第2の検出部が高温側となるように、上記第1の検出部と上記第2の検出部とを上記耐熱性基板の長手方向に対して、上下に配設した請求項1ないし4のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項6】
上記被測定ガスは、ディーゼル燃焼機関の燃焼排気である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のガスセンサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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