説明

ガスタンク装置

【課題】水素ガス等を充填するガスタンクと、ガスタンクを収容するケースからなるガスタンク装置において、ガスタンクとケースとの間に形成される空間を、ガスの収容部として利用する。
【解決手段】ガスタンク装置1は、複数個のガスタンク2と、複数個のガスタンク2にガスを供給する共通のガス充填口11と、複数個のガスタンク2からガスを放出する共通のガス放出口13と、複数個のガスタンク2を収容するケース3とを備える。ケース3は、前記ガス充填口11と連絡する外側ガス充填口21と、前記ガス放出口13と連絡する外側ガス放出口22とを有し、外側ガス充填口21には、ガスタンク2内の圧力よりも減圧するレギュレータ24が接続され、外側ガス放出口22には、ガスタンク2内のガスが流入を防止する逆支弁25が接続され、ケース3とガスタンク2との間を、ガスの副収容部23として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス等のガスを充填するガスタンク装置に関し、特に車両等に搭載するガスタンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガス等の気体を充填したガスタンクを、車両に搭載する場合がある。例えば、水素ガスを燃料とする燃料電池を搭載する車両においては、水素ガスを充填した複数個のガスタンクが車両に搭載される。
【0003】
この種のガスタンクは、通常、円筒形状や球状等の丸みを帯びた形状を有する。その為、ガスタンクをそのまま車両等に搭載すると、ガスタンクの安定性が悪い。そこで、特許文献1は、複数個のガスタンクをケースに収容して車両等に搭載するガスタンク装置を開示する。
【0004】
【特許文献1】特開平9−112797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のガスタンク装置においては、ケースの内表面と、ガスタンクの外表面との間に、所定の空間が形成される。この空間は、ガスを充填する空間として利用されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガスタンク装置は、複数個のガスタンクと、複数個のガスタンクを収容するケースと、を備えるガスタンク装置において、ケースとガスタンクとの間を、ガスの副収容部として用いることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るガスタンク装置は、複数個のガスタンクと、複数個のガスタンクにガスを供給する共通のガス充填口と、複数個のガスタンクからガスを放出する共通のガス放出口と、複数個のガスタンクを収容するケースと、を備えるガスタンク装置において、前記ケースは、前記ガス充填口と連絡する外側ガス充填口と、前記ガス放出口と連絡する外側ガス放出口とを有し、外側ガス充填口には、ガスタンク内の圧力よりも減圧するレギュレータが接続され、外側ガス放出口には、ガスタンク内のガスが逆流するのを防止する逆支弁が接続され、ケースとガスタンクとの間を、ガスの副収容部として用いることを特徴とする。
【0008】
前記ガスタンク装置において、連絡するガス充填口と、外側ガス充填口との間であって、レギュレータの接続個所よりも外側ガス充填口側に、供給されるガスの逆流を防止するチェック弁を備えても良い。
【0009】
前記ガスタンク装置において、前記ガスタンクは、ガスタンク内に充填される最大のガス圧から、副収容部内に充填される最大のガス圧を差し引いた分の圧力に、少なくとも耐えられる強度を備えれば良い。
【0010】
本発明の目的は、ガスタンク装置のガスタンクとケースとの間の空間を、ガスの収容部として利用することである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガスタンク装置のガスタンクとケースとの間の空間を、ガスの収容部として利用することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて、本実施形態に係るガスタンク装置1を説明する。図1は、本実施形態に係るガスタンク装置1の主要部分の断面図である。本実施形態に係るガスタンク装置1は、車両搭載用ガスタンク装置であり、燃料電池の燃料として使用する水素ガスを一時的に貯蔵し、必要時に水素ガスを放出する装置である。
【0013】
本実施形態に係るガスタンク装置1は、水素ガスを充填するための2個のガスタンク2(2A,2B)と、これらのガスタンク2A,2Bを収容するケース3とを備える。
【0014】
本実施形態に係るガスタンク2は、高圧で水素ガスを充填するガスタンクである。ガスタンク2の基本的な構造は、一般的に、高圧ガスタンクと称されるものと同じである。ガスタンク2は、略円筒形状を有した容器であるガスタンク本体部4(4A,4B)と、ガスタンク本体部4A,4Bに取り付けられるバルブ部(説明の便宜上、図示せず)とを備える。バルブ部の基本的な構造は、この種の装置において用いられる容器状のガスタンク本体部を密栓するバルブ部と同様である。
【0015】
ガスタンク本体部4(4A,4B)は、樹脂製またはアルミ等の金属製のライナーからなる内層部5(5A,5B)と、炭素繊維等の繊維強化プラスチックからなる外層部6(6A,6B)との二層構造からなる。内層部5と外層部6とは、一体的に成形され、相互が強固に接着している。ガスタンク本体部4(4A,4B)は、その内部に、水素ガスを充填し、収容する個所である収容部7(7A,7B)を有する。ガスタンク本体部4(4A,4B)の内表面は、主として内層部5(5A,5B)により構成され、ガスタンク本体部4(4A,4B)の外表面は、主として外層部6(6A,6B)により構成される。収容部7の周囲は、主として内層部5の表面により仕切られる。
【0016】
またガスタンク本体部4(4A,4B)は、バルブ部の取り付け個所である口金部8(8A,8B)を備える。口金部8(8A,8B)は、円筒状の開口部9(9A,9B)を有する。開口部9(9A,9B)の内周面は更に雌ねじ部10を有する。この雌ねじ部10(10A,10B)と、バルブ部の有する雄ねじ部(図示せず)とが螺合して、バルブ部が収容部7(7A,7B)を密栓し、ガスタンク本体部4(4A,4B)に固定される。
【0017】
それぞれのガスタンク2A,2Bは、収容部7A,7Bへガスを充填するガス充填口11(11A,11B)を備える。それぞれのガス充填口11(11A,11B)は、共通のガス供給路12を介して連絡している。ガス供給路12の一部は、バルブ部(図示せず)の中を貫通し、ガス充填口11A,11Bと接続している。またガスタンク2A,2Bは、収容部7A,7Bからガスを放出するガス放出口13(13A,13B)を備える。それぞれのガス放出口13A,13Bは、共通のガス放出路14を介して連絡している。ガス放出路14の一部は、バルブ部(図示せず)の中を貫通し、ガス放出口13A,13Bと接続している。
【0018】
ケース3は、容器状のケース本体部15と、ケース本体部15に取り付けられる外側バブル部(説明の便宜上、図示せず)とを備える。本実施形態において、ケース本体部15は、樹脂製またはアルミ等の金属製のライナーからなる内層部16と、炭素繊維等の繊維強化プラスチックからなる外層部17との二層構造からなる。内層部16と外層部17とは、一体的に成形され、相互が強固に接着している。
【0019】
ケース3は、略円筒形状の横列した2個のガスタンク2A,2Bを、長手方向に沿って互いに密接させた状態で、被覆し、収容する。2個のガスタンク2A,2Bは、ケース3(ケース本体部15)内に完全に収容される。図2は、図1において示される一点鎖線X−Xの位置におけるガスタンク装置1の断面図である。図2に示されるガスタンク装置1は、車両の搭載面18(例えば、床面)上に搭載されている。このようにガスタンク2をケース3に収容して車両に搭載すると、ガスタンク2(ガスタンク装置1)を安定させた状態で車両に対し搭載できる。なお、図1において示されるガスタンク装置1は、説明の便宜上、紙面に対して手前部分の構造が省略されているが、図2においては、図1で省略された部分の構造が、一部示されている。
【0020】
ケース本体部15は、外側バルブ部(図示せず)の取り付け個所である外側口金部19を備える。外側口金部19は、円筒状の開口部20を有する。開口部20の内周面は更に雌ねじ部31を有する。この雌ねじ部31と、外側バルブ部の有する雄ねじ部(図示せず)とが螺合して、外側バルブ部が、ケース本体部15の内部を密栓し、ケース本体部15と固定される。
【0021】
ケース3は、それぞれのガスタンク2A,2Bのガス充填口11A,11Bと連絡する外側ガス充填口21を備える。外側ガス充填口21と、ガス充填口11A,11Bとは、前記ガス供給路12を介して連絡している。本実施形態において、ガス供給路12の一部は、外側バルブ部(図示せず)の中を貫通し、外側ガス充填口21と接続する。またケース3は、それぞれのガスタンク2A,2Bのガス放出口13A,13Bと連絡する外側ガス放出口22を備える。外側ガス放出口22と、ガス放出口13A,13Bとは、前記ガス放出路14を介して連絡している。本実施形態において、ガス放出路14の一部は、外側バルブ部(図示せず)の中を貫通し、外側ガス放出口22と接続する。
【0022】
本実施形態において、ガス供給路12は、一端に外側ガス充填口21を備え、途中二股に分岐し、二つの他端にそれぞれのガスタンク2A,2Bのガス充填口11A,11Bを備える。また、ガス放出路14は、一端に外側ガス放出口22を備え、途中二股に分岐し、二つの他端にそれぞれのガスタンク2A,2Bのガス放出口13A,13Bを備える。ガス供給路12と、ガス放出路14とは互いに独立している。これらは途中で連絡していない。なおそれぞれの端部同士である外側ガス充填口21と外側ガス放出口22、およびガス充填口11A,11Bとガス放出口13A,13Bも独立している。
【0023】
本実施形態のガスタンク装置1において、水素ガスをガスタンク2へ供給し、充填する際、水素ガスは、外側ガス充填口21よりガス供給路12内に進入する。進入した水素ガスは、途中で分流しつつガス供給路12を通過して、ガス充填口11A,11Bよりそれぞれの収容部7A,7Bへ供給され、充填される。それぞれのガス充填口11A,11Bは互いに連絡している為、水素ガスを充填する際、それぞれのガスタンク2A,2Bの収容部7A,7B内の圧力は等しくなる。これに対し、水素ガスをガスタンク2から放出する際、水素ガスは、それぞれのガス放出口13A,13Bよりガス放出路14に進入する。進入した水素ガスは、途中で合流しつつガス放出路14を通過して、外側ガス放出口22より放出される。それぞれのガス放出口13A,13Bは互いに連絡している為、水素ガスを放出する際、それぞれのガスタンク2A,2Bの収容部7A,7B内の水素ガスの圧力は等しくなる。したがって、本実施形態においては、それぞれのガスタンク内2A,2Bの圧力は、水素ガスの充填、放出に、関わりなく等しい。なお本実施形態において、ガス供給時にガス放出路14を利用してガスタンク2にガスを供給することは無く、ガス放出時にガス放出路14を利用してガスタンク2からガスを放出することは行わない。
【0024】
この種のガスタンク装置1において、ケース3の主たる目的は、ガスタンク2を収容することである。その為、ケース3には、本来、高圧のガスを充填する目的は無い。その為、通常、ケース3の強度は、ガスタンク2の強度よりも弱い。
【0025】
本実施形態に係るガスタンク装置1は、ガスタンク2と、ガスタンク2を収容するケース3との間の空間に、水素ガスを収容する副収容部23を備える。この副収容部23は、主として、ガスタンク2の外表面と、ケース3の内表面とにより周囲が仕切られる。副収容部23の一部の周囲が、ガスタンクよりも強度が劣るケースからなる為、副収容部23にはガスタンクと同様の圧力で水素ガスを充填出来ない。したがって、副収容部23内の圧力は、少なくとも、常にガスタンク2内の圧力以下の状態にする必要がある。副収容部23内の圧力を、常にガスタンク2内の圧力以下にするためには、以下に示すように、レギュレータ24および逆支弁25を利用する。
【0026】
本実施形態において、外側ガス充填口21と、ガス充填口11A,11Bとの間を連絡するガス供給路12の途中であって、副収容部23内にレギュレータ24が備えられる。レギュレータ24は、ガス供給路12より供給される水素ガスを、ガスタンク2内へ充填される水素ガスの圧力よりも減圧して副収容部23内に供給するものである。副収容部23へ充填される水素ガスは、ガスタンク2へ充填される水素ガスと共通の外側ガス充填口21より充填される。水素ガスは、外側ガス充填口21よりガス供給路12に進入し、レギュレータ24により減圧されて副収容部23へ供給される。レギュレータ24は、内部に所定の圧力調節機構(図示せず)を備える。この圧力調節機構を調節することにより、副収容部23へ供給し、充填する水素ガスの圧力を調節することができる。
【0027】
また外側ガス放出口22と、ガス放出口13A,13Bとの間を連絡するガス放出路14の途中であって、副収容部23内に逆支弁25が備えられる。逆支弁25は、副収容部23内の圧力以上で充填されるガスタンク2内の水素ガスが、副収容部23内へ流入することを防止するものである。換言すれば、逆支弁25は、本来、ガスタンク2内のガス放出口13よりガス放出路14を通って放出される水素ガスが、ガス放出路14の途中で逆流して、副収容部23へ進入するのを防止するものである。本実施形態において水素ガスを放出する際、副収容部23内の圧力がガスタンク2A,2Bの収容部7A,7B内の圧力と等しくなった場合に、副収容部23内の水素ガスはガス放出路14を通って、外側ガス放出口22より放出される。副収容部23内の圧力がガスタンク2A,2Bの収容部7A,7B内の圧力未満の場合には、副収容部23内の水素ガスは放出されない。
【0028】
なおガス供給路12において、レギュレータ24の設置個所よりも上流側(外側ガス充填口21のある側)に、供給する水素ガスの逆流を防止するチェック弁26を設置することが望ましい。チェック弁26を設けることにより、外側ガス充填口21からガス供給路12を通り、供給されるガスが、ガス供給路12内を逆流するのを防止することが出来る。
【0029】
以下、本実施形態に係るガスタンク装置1において、水素ガスを充填していない状態から水素ガスを最大限、充填するまでの手順を説明する。図3は、ガスタンク装置1に水素ガスを充填する際、ガスタンク2の収容部7内の圧力と、副収容部23内の圧力の経時変化を示すグラフである。横軸は時間(t)を示し、縦軸は、ガス圧(MPa)を示す。図3において、実線のグラフは、ガスタンク2の収容部7内の圧力変化を示し、破線のグラフは、副収容部23内の圧力変化を示す。図1および図3を用いて上記手順を説明する。なおガスタンク装置1の条件として、ガスタンク2に充填される水素ガスの最大圧力を70MPaとし、副収容部23へ充填される水素ガスの最大圧力を35MPaとする。またレギュレータ24は、ガスタンク2の収容部7内の圧力が35MPa未満の場合は、水素ガスがガス供給路12を通って副収容部23へ流入するのを防止し、ガスタンク2の収容部7内の圧力が35MPa以上の場合に、水素ガスを副収容部23に対し、ガスタンク2の収容部7内の圧力よりも35MPa減圧して供給するように設定される。
【0030】
ガスタンク装置1において、水素ガスを充填する際、先ず、ガスタンク2(2A,2B)のみに水素ガスが充填される。ガスタンク装置1の外部より供給された水素ガスは、先ず、外側ガス充填口21よりガス供給路12へ進入する。ガス供給路12へ進入した水素ガスは、途中で枝分かれしてガス供給路12を通り、ガス充填口11(11A,11B)よりそれぞれのガスタンク2A,2Bの収容部7A,7Bへ供給される。それぞれのガスタンク2A,2Bの収容部7A,7B内には、圧力が等しくなるように水素ガスが供給される。それぞれのガスタンク2A,2Bの収容部7A,7B内の圧力が35MPaに達するまでガスタンク2A,2Bのみに水素ガスが充填される(図3において、t≦t<t3.5)。この間、副収容部23へ水素ガスは充填されない。
【0031】
ガスタンク2の収容部7内の圧力と、副収容部23内の圧力との差が35MPaとなった時(図3において、t=t3.5)、副収容部23への水素ガスの供給が開始する。この時点より、ガス供給路12を通って供給される水素ガスの一部が、レギュレータ24を介して副収容部23へ供給され、水素ガスの残りの部分がガス充填口11A,11Bよりそれぞれのガスタンク2A,2Bの収容部7A,7Bへ供給される。
【0032】
ガスタンク2の収容部7と副収容部23との双方に対し水素ガスが供給され、充填される間(図3において、t3.5≦t≦t)、ガスタンク2内の圧力(収容部7内の圧力)と、副収容部23内の圧力との差は、レギュレータの機能により常に、一定(この場合は、35MPa)に保持される。一定の圧力差を保持したまま、ガスタンク2の収容部7内の圧力が70MPa、副収容部23の圧力が35MPaとなるまで水素ガスが充填される。以上のようにして、ガスタンク装置1に水素ガスが最大限に充填される。
【0033】
これに対し、上記のようにしてガスタンク2に70MPa、副収容部23に35MPaの水素ガスを充填したガスタンク装置1において、水素ガスを順次、放出する手順を説明する。図4は、ガスタンク装置1から水素ガスを放出する際、ガスタンク2A,2Bの収容部7A,7B内の圧力と、副収容部23内の圧力の経時変化を示すグラフである。横軸は時間(t)を示し、縦軸は、ガス圧(MPa)を示す。図4において、実線のグラフは、ガスタンク2の収容部7内の圧力変化を示し、破線のグラフは、副収容部23内の圧力変化を示す。図1および図4を用いて上記手順を説明する。なお逆支弁25は、ガスタンク2の収容部7内の圧力が35MPa以上の場合は、ガスタンク2の収容部7内から放出される水素ガスがガス放出路14を通り、副収容部23へ流入するのを防止するように設定される。また逆支弁25は、ガスタンク2の収容部7内の圧力が35MPa以下となった場合は、副収容部23内の水素ガスをガス放出路14より放出するように設定される。
【0034】
ガスタンク装置1より水素ガスを放出する際、先ず、2個のガスタンク2A,2Bのみより水素ガスが放出される。ガスタンク2A,2Bの収容部7A,7B内の水素ガスは、ガス放出口13A,13Bよりガス放出路14へ進入する。ガス放出路14へ進入した水素ガスは、途中で合流しつつガス放出路14を通り、外側ガス放出口22よりガスタンク装置1の外部へ放出される。それぞれのガスタンク2A,2Bの収容部7A,7B内の圧力が等しくなるように水素ガスの放出が行われる。それぞれのガスタンク2A,2Bの収容部7A,7B内の圧力が35MPaに達するまでガスタンク2A,2Bからのみ水素ガスの放出が行われる(図4において、t≦t<t3.5)。この間、副収容部23の水素ガスは、放出されない。
【0035】
水素ガスが放出し、それぞれのガスタンク2A,2Bの収容部7A,7B内の圧力が35MPaとなった時(図4において、t=t3.5)、副収容部23の水素ガスの放出が開始する。この時点より、ガスタンク2A,2B内の水素ガスがガス放出路14を通って放出されると共に、副収容部23内の水素ガスが逆支弁25を介してガス放出路14内に至り、ガス放出路14内の水素ガスの流れと合流して、ガスタンク装置1の外部へ放出される。
【0036】
ガスタンク2A,2Bの収容部7A,7B内と副収容部23内との双方の水素ガスが放出される間(図4において、t3.5≦t≦t)、ガスタンク2A,2Bの収容部7A,7B内の圧力と、副収容部23内の圧力とは、逆支弁の機能により常に、等しくなるように保持される。この間、ガスタンク2A,2Bの収容部7A,7B内の圧力と、副収容部23内の圧力とが等しくなるように、ガスタンク2A,2Bの収容部7A,7B内および副収容部23内の水素ガスが放出される。以上のようにして、ガスタンク装置1より水素ガスが順次、放出される。
【0037】
ここで、上記ガスタンク装置1におけるガスタンク2の強度について検討する。上記ガスタンク装置1において、最大限に水素ガスを充填している場合、ガスタンク2A,2Bの収容部7A,7B内の圧力は70MPaであり、副収容部23内の圧力は35MPaである。このような場合、ガスタンク2A,2Bは、少なくとも内側から35MPaの圧力に耐えられる強度を備えれば良くなる。以下、この理由について図5を用いて説明する。図5は、図1に示されるガスタンク装置1の断面図の一部を抜き出したものであり、ガスタンク2Aの部分断面図を示す。ガスタンク2Aを三つの領域A、BおよびCに分けて検討する。
【0038】
図5において示される領域Aは、ガスタンク2Aの一部分であって、副収容部23の周囲の一部を構成する個所である。この個所において、ガスタンク2Aの内側から70MPaの圧力が加わり、またガスタンクの2A外側からは35MPaの圧力が加わっている。したがって、この個所においては、見かけ上、ガスタンク2Aの内側より35MPaの圧力が加わっていると見なすことができる。その為、この個所においては、ガスタンク2Aの強度は、少なくとも内側から35MPaの圧力に耐えられる強度を備えれば良いことになる。
【0039】
図5において示される領域Bは、ガスタンク2Aの一部分であって、ガスタンク2Aの外表面が、ケース3の内表面と接触する個所である。この個所において、ガスタンク2Aの内側から70MPaの圧力が加わっている。ここで、仮に、ガスタンク2Aが内側から35MPaの圧力に耐えられる強度を備え、かつガスタンク2Aの外側に接触配置するケース3が、内側から35MPaの圧力に耐えられる強度を備えるとすると、この個所は、ガスタンク2Aの内側から加わる70MPaの圧力に耐えられることになる。したがって、この個所においては、ガスタンク2Aの強度は、少なくとも内側から35MPaの圧力に耐えられる強度を備えれば良いことになる。
【0040】
図5において示される領域Cは、ガスタンク2Aの一部分であって、隣接する他方のガスタンク2Bと接触する個所である。この個所において、仮に、ガスタンク2Aが内側から35MPaの圧力に耐えられる強度を備えるとする。ガスタンク2Aの内側から70MPaの圧力が加えられると、ガスタンク2Aには強度を超える力であり、内側からの35MPaの過剰分の圧力が加わっていることになる。しかし、この圧力は、隣接する他方のガスタンク2Bから加えられる圧力であって、対応する逆向きの35MPaの圧力によって打ち消される。したがって、この個所においても、ガスタンク2Aの強度は、少なくとも内側から35MPaの圧力に耐えられる強度を備えれば良いことになる。
【0041】
以上より、上記実施形態に係るガスタンク装置1のガスタンク2の強度は、少なくとも内側から35MPaの圧力に耐えられる強度であれば良いことが言える。したがって、上記実施形態において、副収容部23内の圧力がケース3の許容圧力以下の場合、ガスタンク2は、実際に充填するガスの圧力から、副収容部23内の圧力を差し引いた分の圧力に少なくとも耐えられる強度を備えれば良いことになる。なお図5において示されていないガスタンクの個所においても、上記領域A〜Cの何れかの場合として把握することが出来る。
【0042】
本実施形態においては、水素ガスを充填したが、他の実施形態においては、酸素ガス、メタンガス等の他のガスを充填してもよい。
【0043】
他の実施形態においては、定置用の燃料電池装置に用いる等、車両等の移動体に搭載しないガスタンク装置であっても良い。
【0044】
ケース3と、ガスタンク2との接触個所において、弾性体等からなる部材を介在させてもよい。
【0045】
なお上記実施形態においては、同形状の2個のガスタンクを用いているが、他の実施形態においては、形状の異なるガスタンク2を用いても良い。例えば、円筒形状のガスタンクにおいて、径の大きいガスタンク2と、径の小さいガスタンク2とを組み合わせても良い。
【0046】
上記実施形態のガスタンク装置1は、ガスタンクを2個備えるものであったが、これに限られず、他の実施形態においては、3個以上のガスタンクを備えるものであってもよい。例えば、3個のガスタンクを備えるガスタンク装置の場合、3個のガスタンクを平行に配列させても良い。また図6に示されるガスタンク装置31のように、互いに接触して平行に配列した2個のガスタンク2C,2Bの上に、更に1個のガスタンク2Aを積み上げても良い。図6に示されるガスタンク装置31において、副収容部23は、ケース3とガスタンク2A,2B,2Cとの間に形成される3個所と、3個のガスタンク2A,2B,2Cの間に形成される1個所とがある。これらの4個の副収容部23は、互いにガスが自由に行き来可能な状態、即ち、4個の副収容部23内のガス圧が同じ状態であっても良い。またこれらの4個の副収容部23は互いに独立し、圧力が異なる状態であってもよい。但し、4個の副収容部23を独立して用いる場合には、それぞれの副収容部23において、レギュレータ24と、逆支弁25を設ける必要がある。
【0047】
上記実施形態において、ガスタンク装置1は、車両等の搭載面18上に設置される(例えば図2参照)。搭載面18は、通常、平坦である。平坦な搭載面18上に、複数個の円筒形状のガスタンク2を、搭載面18とガスタンク2の長手方向とが平行となるように、ケース3を介して搭載すると、ガスタンク2とケース3との間に空間が形成される。通常、この空間は、いわゆるデッドスペースであって、特に利用されるものではない。しかし、本実施形態は、このようなデッドスペースをガスを収容する個所として使用するものである。このように、ガスタンク2は、通常、平坦な形状を備える部材上に設置、固定されるものである。本実施形態に係るガスタンク装置1によれば、従来、デッドスペースであった個所を、ガスを収容する個所として利用することが出来る。
【0048】
ここで、図7を用いて、ガスタンク2とケース3との間に形成されるデッドスペースについて更に説明する。図7は、断面が円形等の曲線を有するガスタンク2を、平坦な面上に配置した際に形成されるデッドスペースの説明図である。図7において、断面の輪郭が曲線状である第1領域40と、断面の輪郭が曲線状である第2領域50とが示される。上記実施形態においては、第1領域40は、ガスタンク2Aにより形成される領域に相当し、第2領域50は、ガスタンク2Bにより形成される領域に相当する。図7において、それぞれの領域40,50の輪郭上の共通接線aは、ケース3の一部分に相当し、共通接線bは、ケース3の一部分(搭載面18)に相当する。第1領域40の外周と、第2領域50の外周と、共通接線aと、共通接線bとにより、第3領域60が形成される。この第3領域が従来、デッドスペースとされていた個所である。なお第1領域40の外周と第2領域50の外周とは接触していても良いし、図7に示されるように、離れていても良い。本発明は、第1領域40,第2領域50および第3領域60を、すべてガスや液体等の流体を貯蔵する空間として利用するものである。なおこれらの領域に貯蔵可能な流体の圧力はすべて同じであっても良いし、異なるものであってもよい。通常は、第3領域60を構成する個所(特に、共通接線aおよびbに相当する個所)の強度が、第1領域40および第2領域50を構成する個所の強度よりも劣るため、第3領域60に貯蔵する流体の圧力を低く設定することになる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】ガスタンク装置の主要部分の断面図を示す。
【図2】図1において示されるX−Xにおけるガスタンク装置の断面図を示す。
【図3】ガス充填時のガスタンク装置におけるガスタンク内の圧力と、副収容部内の圧力との経時変化を示すグラフである。
【図4】ガス放出時にガスタンク装置におけるガスタンク内の圧力と、副収容部内の圧力との経時変化を示すグラフである。
【図5】図1に示されるガスタンク装置の一部であって、ガスタンクの部分を示す部分断面図である。
【図6】他の実施形態に係るガスタンク装置の断面図を示す。
【図7】デッドスペースの説明図を示す。
【符号の説明】
【0050】
1 ガスタンク装置、2,2A,2B ガスタンク、3 ケース、4,4A,4B ガスタンク本体部、5,5A,5B 内層部、6,6A,6B 外層部、7,7A,7B 収容部、8,8A,8B 口金部、9,9A,9B 開口部、10,10A,10B 雌ねじ部、11,11A,11B ガス充填口、12 ガス供給路、13,13A,13B ガス放出口、14 ガス放出路、15 ケース本体部、16 内層部、17 外層部、18 搭載面、19 外側口金部、20 開口部、31 雌ねじ部、21 外側ガス充填口、22 外側ガス放出口、23 副収容部、24 レギュレータ、25 逆支弁、26 チェック弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のガスタンクと、
複数個のガスタンクを収容するケースと、
を備えるガスタンク装置において、
ケースとガスタンクとの間を、ガスの副収容部として用いることを特徴とするガスタンク装置。
【請求項2】
複数個のガスタンクと、
複数個のガスタンクにガスを供給する共通のガス充填口と、
複数個のガスタンクからガスを放出する共通のガス放出口と、
複数個のガスタンクを収容するケースと、
を備えるガスタンク装置において、
前記ケースは、
前記ガス充填口と連絡する外側ガス充填口と、
前記ガス放出口と連絡する外側ガス放出口とを有し、
外側ガス充填口には、ガスタンク内の圧力よりも減圧するレギュレータが接続され、
外側ガス放出口には、ガスタンク内のガスが流入を防止する逆支弁が接続され、
ケースとガスタンクとの間を、ガスの副収容部として用いることを特徴とするガスタンク装置。
【請求項3】
請求項2記載のガスタンク装置において、
連絡するガス充填口と、外側ガス充填口との間であって、レギュレータの接続個所よりも外側ガス充填口側に、供給されるガスの逆流を防止するチェック弁を備えることを特徴とするガスタンク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−205470(P2007−205470A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25295(P2006−25295)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】