説明

ガスタービン、ガスタービン制御装置、および発電システム

【課題】バイパス流路を経由してタービンへ供給される空気流量を運転に反映させることを目的とする。
【解決手段】記憶部40には、タービンの入口温度を一定に保つために用いられ、タービンの入口温度に関するパラメータの関係を示した温調特性が格納されている。補正部41は、バイパス流路を流れる空気流量または該空気流量に関するパラメータに基づいて温調特性を補正し、判定部42は、補正部41によって補正された温調特性を用いてタービンの入口温度が一定であるか否かを判定する。タービンの入口温度が一定でないと判定された場合には、燃料調整部43が、燃料流量決定部30によって決定された燃料流量指令CSOを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン、ガスタービン制御装置、および発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスタービンの制御及び運転に関する技術として、例えば、特許文献1に開示される方法が知られている。特許文献1には、燃焼器を迂回して圧縮機からタービンに圧縮空気を供給するためのバイパス流路を有するガスタービンにおいて、出力の上昇が要求された場合に、圧縮機からバイパス流路を経由してタービンに供給される抽気量を最大とし、そのときのガスタービン入口温度が予め設定されているガスタービン入口温度の最大値を超えないように、燃焼器への供給燃料を調整することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−261458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に開示されているように、燃焼器を迂回して圧縮機からタービンに圧縮空気を供給するバイパス流路を有するガスタービンにおいては、バイパス流路を流れる空気流量が変動することにより、ガスタービンのタービン入口温度が変化してしまう。これにより、例えば、バイパスされる空気流量が減少した場合には、燃焼空気に対する燃料量の割合が基準のバイパス空気流量の時と比べて相対的に減少するため、タービン入口温度低下により熱効率が低下する。一方、バイパスされる空気流量が増加した場合には、燃焼空気に対する燃料量の割合が基準のバイパス空気流量の時と比べて相対的に増加するため、燃料過多となり、タービン入口温度が必要以上に上昇し、オーバーファイアリングを起こす。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、燃焼器を迂回して圧縮機からタービンに圧縮空気を供給するバイパス流路を有するガスタービンにおいて、バイパス流路を経由してタービンへ供給される空気流量を運転に反映させることのできるガスタービン、ガスタービン制御装置、および発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、圧縮機と、燃焼器と、タービンとを具備するガスタービンであって、前記圧縮機により圧縮された空気を前記燃焼器を迂回して前記タービンへ供給するバイパス流路と、前記バイパス流路に設けられ、前記バイパス流路を流れる空気流量を調整するための流量調整手段と、前記タービンの入口温度を一定に保つために用いられ、タービンの入口温度に関するパラメータの関係を示した第1情報と、前記バイパス流路を流れる空気流量または該空気流量に関するパラメータに基づいて前記第1情報を補正する補正手段と、前記補正手段によって前記第1情報が補正された場合に、補正後の第1情報を用いて前記タービンの入口温度が一定であるか否かを判定する判定手段とを具備するガスタービンを提供する。
【0007】
本発明によれば、圧縮機により圧縮された空気の一部を燃焼器を迂回してタービンに供給するバイパス流路が設けられており、流量調整手段によってバイパスされる空気流量が調整可能とされている。また、タービンの入口温度を一定に保つために用いられ、タービンの入口温度に関するパラメータの関係を示した第1情報が予め用意されており、補正手段によって、バイパス流路を流れる空気流量または該空気流量に関するパラメータに基づいて第1情報が補正される。補正手段によって第1情報が補正された場合、判定手段により、補正後の第1情報に基づいてタービンの入口温度が一定であるか否かが判定される。このように、バイパス流路を流れる空気流量に基づいて第1情報が補正されるので、バイパスされる空気流量に応じた適切な第1情報に基づいてタービンの入口温度が一定であるか否かを判定することが可能となる。
【0008】
上記ガスタービンは、前記タービンの入口温度が一定でないと判定された場合に、前記バイパス流路を流れる空気流量または該空気流量に関するパラメータに基づいて前記燃焼器に供給する燃料量を調整する燃料調整手段を備えることとしてもよい。
【0009】
このような構成によれば、タービンの入口温度が一定でないと判定された場合には、燃焼器に供給される燃料量がバイパス流路の空気流量または該空気流量に関するパラメータに基づいて調整される。これにより、燃焼器に供給される燃料量がタービンの入口温度を一定とする方向に調整されるので、タービンの入口温度を一定に保つことが可能となる。
【0010】
上記ガスタービンにおいて、前記流量調整手段はバルブであり、前記バイパス流路を流れる空気流量は、前記バルブの弁開度および前記バルブ前後の差圧に基づいて推定されることとしてもよい。
【0011】
このような構成によれば、流量調整手段として設けられたバルブの開度およびバルブ前後の差圧によりバイパス流路を流れる空気流量が推定されることとなる。
【0012】
上記ガスタービンにおいて、前記補正手段は、前記バイパス流路を流れる空気流量と予め設定されている基準空気流量との差分を前記圧縮機入口の空気流量で除算した値を用いて前記第1情報を補正することとしてもよい。
【0013】
このような構成によれば、バイパス流路を流れる空気流量と基準空気流量との差分が圧縮機入口の空気流量に占める割合に基づいて第1情報が補正されるので、より適切な第1情報を得ることが可能となる。
【0014】
上記ガスタービンにおいて、前記第1情報は、車室圧力とタービンの最終段よりも後流側における排ガス温度とを関連付けた温調特性であり、前記判定手段は、前記車室圧力と前記排ガス温度の関係が前記温調特性から所定の許容範囲を超えて外れた場合に、前記タービンの入口温度が一定でないと判断することとしてもよい。
【0015】
このような構成によれば、第1情報は、車室圧力と排ガス温度とを関係付けた温調特性とされており、車室圧力の測定値と排ガス温度の測定値とが温調特性から所定の許容範囲を超えて外れていた場合に、タービンの入口温度が一定でないと判断されることとなる。
【0016】
上記ガスタービンにおいて、前記補正手段は、前記バルブの弁開度が変化した場合に、前記第1情報の補正を行うこととしてもよい。
【0017】
このような構成によれば、バルブの弁開度が変化した場合において、第1情報の補正が補正手段によって行われるので、処理を軽減させることが可能となる。
【0018】
本発明は、上記いずれかに記載のガスタービンと、前記ガスタービンにより発電される発電機とを具備する発電システムを提供する。
【0019】
本発明は、圧縮機と、燃焼器と、タービンと、前記圧縮機により圧縮された空気を前記燃焼器を迂回して前記タービンへ供給するバイパス流路と、前記バイパス流路に設けられ、前記バイパス流路を流れる圧縮空気量を調整するための流量調整手段とを具備するガスタービンを制御するガスタービン制御装置であって、前記タービンの入口温度を一定に保つために用いられ、前記タービンの入口温度に関するパラメータの関係を示した第1情報と、前記バイパス流路を流れる空気流量または該空気流量に関するパラメータに基づいて前記第1情報を補正する補正手段と、前記補正手段によって前記第1情報が補正された場合に、補正後の第1情報を用いて前記タービンの入口温度が一定であるか否かを判定する判定手段とを具備するガスタービン制御装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、バイパス流路を経由してタービンへ供給される空気流量を運転に反映させることができ、より安定した運転を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る発電システムの概略構成を示した図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るガスタービン制御装置が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。
【図3】温調特性の一例を示した図である。
【図4】図2に示した補正部が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。
【図5】補正量の求め方を説明するための図である。
【図6】ガスタービン制御装置が備える温調制御部によって実行される処理の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係るガスタービン、ガスタービン制御装置、および発電システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る発電システムの概略構成を示した図である。図1に示すように、発電システムは、ガスタービン10と発電機20とを備えている。ガスタービン10は、空気を圧縮する圧縮機11と、この圧縮機11から送られてきた圧縮空気中に燃料を噴射して燃焼させ、高温燃焼ガスを発生させる燃焼器12と、この燃焼器12の下流側に位置し、燃焼器12を出た高温燃焼ガスにより駆動されるタービン13と、燃焼器12に供給される燃料量などを制御するガスタービン制御装置14とを主な構成として備えている。
【0023】
発電機20は、タービン13と同一の回転軸に連結されており、タービン13の回転が伝達されることにより発電する。また、圧縮機11もタービン13の回転軸に連結されており、タービン13の回転により駆動するような構成とされている。圧縮機11、燃焼器12、およびタービン13は、ガスタービン車室(図示略)の内部に収容されている。
【0024】
タービン13において仕事をした燃焼ガスは、排気ラインを介して排出される。圧縮機11の吸気量は、圧縮機11の入口に設けられた入口案内翼(IGV:Inlet Guide Vane)15の開閉によって調整される。入口案内翼15の制御はガスタービン制御装置14により行われる。
【0025】
また、ガスタービン10は、燃焼器12を迂回し、圧縮機11からガスタービン13へ圧縮空気を供給するバイパス流路16を備えている。このバイパス流路16は、例えば、圧縮機11の途中から抽出された圧縮空気をタービン13を構成するタービン静翼の内部に導く流路である。
【0026】
本実施形態では、説明の便宜上、バイパス流路16が1系統設けられた場合を想定しているが、例えば、バイパス流路16は、圧縮機11の低圧段から抽出された圧縮空気をタービン13の低圧段の静翼の内部に導くバイパス流路や、圧縮機11の中圧段から抽出された圧縮空気をタービン13の中圧段の静翼の内部に導くバイパス流路や、圧縮機11の高圧段から抽出された圧縮空気をタービン13の高圧段の静翼の内部に導くバイパス流路など、複数の流路が設けられていてもよい。また、この流路の数については限定されない。
タービン静翼の内部に導かれた抽気された圧縮空気は、タービン動翼が配置されたタービンディスク(図示せず)の強度低下の防止などを目的として、パージ空気としてタービンディスクの冷却や、タービンディスク間(ディスクキャビティ)のシールに用いられる。
【0027】
バイパス流路16には、タービン13へ供給する抽気流量を制御するためのバイパス弁(流量調整手段)18が設けられている。バイパス弁の弁開度は、ガスタービン制御装置14によって制御される。
ガスタービン制御装置14は、例えば、ディスクキャビティの温度を計測し、この温度が制限値よりも高くなった場合は、タービンディスクの強度を維持するために、バイパス弁18の開度を大きくする。これにより、ディスクキャビティのパージ空気が増加され、ディスクキャビティの温度が下がるように制御される。また、ガスタービン制御装置14は、ディスクキャビティの温度と制限値との間に余裕がある場合は、ガスタービン10の熱効率向上のため、バイパス弁18の開度を小さくし、抽気する圧縮空気を減らす。
【0028】
燃焼器12には、燃料を供給するための燃料供給路25が接続されている。燃料供給路25には、流量調節弁26が設けられている。流量調節弁26の開度がガスタービン制御装置14によって制御されることにより、燃焼器12に供給される燃料ガスの供給量が制御される。
【0029】
ガスタービン制御装置14は、例えば、コンピュータであり、CPU(中央演算処理装置)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、補助記憶装置、通信装置などを備えている。
補助記憶装置は、コンピュータ読取可能な記録媒体であり、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。この補助記憶装置には、各種プログラム(例えば、燃料流量決定プログラム、温調制御プログラム等)が格納されており、CPUが補助記憶装置から主記憶装置にプログラムを読み出し、実行することにより種々の処理を実現させる。
【0030】
図2は、ガスタービン制御装置14が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。図2に示されるように、ガスタービン制御装置14は、燃料流量決定部30と、温調制御部31と、燃料弁開度決定部32とを備えている。
【0031】
燃料流量決定部30は、例えば、目標発電指令値やガスタービン出力などの各種パラメータに基づいて燃料流量を決定する。燃料流量決定部30には、例えば、図示を省略した各種制御部によって算出された負荷制御信号LDCSO、ガバナ制御信号GVCSO、ブレードパス温度制御信号BPCSO、及び排ガス制御信号EXCSOが入力される。
【0032】
負荷制御信号LDCSOは、発電機出力を発電機出力指令に一致させるように燃料流量を制御するための制御信号であり、ガバナ制御信号GVCSOは、タービン13の回転速度又は回転数を目標値に一致させるように燃料流量を制御するための制御信号であり、ブレードパス温度制御信号BPCSOはタービン13のブレードパス温度BPTがブレードパス温度上限値を超えないように燃料流量を制御するための制御信号であり、排ガス制御信号EXCSOは排ガス温度が排ガス温度上限値を超えないように燃料流量を制御するための制御信号である。ここで、排ガス温度とは、タービンの最終段よりも後流側における排ガスの温度を意味する。燃料流量決定部30は、入力された各種制御信号のうち、最も低値の制御信号を選択し、これを燃料流量指令CSOとして出力する。
なお、上述した各制御信号に基づく燃料流量指令CSOの決定手法については、公知の技術であり、例えば、特開2007−71144号公報に開示されている方法を用いることができる。
【0033】
温調制御部31は、記憶部40と、補正部(補正手段)41と、判定部(判定手段)42と、燃料調整部(燃料調整手段)43とを主な構成として備えている。
記憶部40には、タービン13の入口温度を一定に保つために用いられ、タービン13の温度に関するパラメータの関係を示した第1情報が格納されている。第1情報として、例えば、車室圧力と排ガス温度とを関連付けた温調特性が挙げられる。図3は、温調特性の一例を示した図である。図3に示した温調特性において、横軸はガスタービン車室圧力、縦軸は排ガス温度である。ここで、ガスタービン車室圧力に代えて、圧縮機出口圧力を用いてもよい。
【0034】
補正部41は、バイパス流路16を流れる空気流量に基づいて、記憶部40に格納されている温調特性を補正し、記憶部40における温調特性を更新する。なお、補正部41の詳細については、後述する。
【0035】
判定部42は、記憶部40に格納されている温調特性を用いてタービン13の入口温度が一定に保たれているか否かを判定する。具体的には、ガスタービン車室圧力および排ガス温度の計測値が、記憶部40に格納されている温調特性から所定の許容範囲を超えて外れていた場合に、タービン13の入口温度が一定でないと判定する。ここで、許容範囲は、設計により任意に設定することが可能である。
【0036】
燃料調整部43は、判定部42によってタービン13の入口温度が一定でないと判定された場合に、燃料流量決定部30によって決定された燃料流量指令CSOを調整する。
具体的には、図3に示した温調特性において、ガスタービン車室圧力の測定値および排ガス温度の測定値によって決定される点が、温調特性の下側に位置していた場合には、燃料が不足していると判断し、燃料流量指令CSOを所定量増加させる。一方、図3に示した温調特性において、ガスタービン車室圧力の測定値および排ガス温度の測定値によって決定される点が、温調特性の上側に位置していた場合には、燃料が過多であると判断し、燃料流量指令CSOを所定量減少させる。
【0037】
燃料調整部43によって調整された燃料流量指令CSO´は、燃料弁開度決定部32に出力され、燃料流量指令CSO´に応じた弁開度が決定される。これにより、燃料弁開度決定部32によって決定された弁開度に基づいて燃料調節弁26の開度が調節される。
【0038】
次に、上記補正部41について図4を参照して説明する。
図4は、補正部41の機能ブロック図である。図4に示すように、補正部41は、第1処理部51と、第2処理部52と、第3処理部53とを備えている。
【0039】
第1処理部51は、バイパス流路16を流れる空気流量(以下「抽気流量」という。)を推定する。第1処理部51は、例えば、バイパス弁18の入力圧力P、入力差圧ΔP、および弁開度より求まるバルブの容量係数Cvを入力情報として得、これらの情報および予め保有している所定の関数を用いることで、抽気流量を推定する。
【0040】
第2処理部52は、例えば、抽気流量に関するパラメータと補正量とが関連付けられた第2情報を保有しており、第1処理部51によって推定された抽気流量と第2情報とから補正量を求める。
【0041】
例えば、抽気流量が減少した場合、タービン13へ流れる冷たい空気の量が減少することとなるので、同じ車室圧で比較すると排ガス温度は上昇することとなる。また、抽気流量が減少した場合、タービン13を通過する空気(燃焼に使用される空気)流量は増加することとなり、燃料流量や出力も増加することとなる。したがって、抽気流量が減少した場合には、タービン13を通過する空気流量が増加するため、タービン入口温度を一定に保つためには、燃料を増加させる必要がある。したがって、図3に示した温調特性をプラス側、すなわち、同じ車室圧力に対する排ガス温度が上昇する方向に補正する必要がある。
【0042】
抽気流量が増加する場合には、タービンへ流れる冷たい空気の量が増加することとなるので、同じ車室圧で比較すると排ガス温度は低下することとなる。また、抽気流量が増加した場合、タービンを通過する空気(燃焼に使用される空気)流量は減少することとなり、燃料流量や出力も低下することとなる。したがって、抽気流量が増加した場合には、タービンを通過する空気流量が低下するため、タービン入口温度を一定に保つためには、燃料も減少させる必要がある。したがって、図3に示した温調特性をマイナス側、すなわち、同じ車室圧力に対する排ガス温度が低下する方向に補正する必要がある。
【0043】
このような関係から、例えば、第2情報は図5に示すような関係となる。図5において、横軸は抽気流量と予め設定されている基準抽気流量との差分ΔQ、縦軸は補正量である。抽気流量が基準抽気流量よりも少ない場合には、差分ΔQに比例して補正量が増加し、抽気流量が基準抽気流量よりも多い場合には、差分ΔQに比例して補正量が減少する特性とされている。
【0044】
第3処理部53は、記憶部40に格納されている温調特性を第2処理部52によって決定された補正量に基づいて補正し、記憶部40の温調特性を更新する。これにより、記憶部40に格納されている温調特性をその時々のガスタービンの運転に応じて適切な曲線にすることが可能となる。
【0045】
次に、上記構成を備える発電システムのガスタービン制御装置14の作用について図6を参照して説明する。ここでは、本発明の主な特徴の一つである温調制御部31による制御について主に説明する。図6は、温調制御部31により実行される処理の手順を示したフローチャートである。
【0046】
まず、ガスタービンの運転が開始され、ガスタービンの温調制御が開始される条件が満たされると(ステップSA1において「YES」)、バイパス弁18の開度が変化したか否かが判定される(ステップSA2)。この結果、バイパス弁18の開度が変化していた場合には(ステップSA2において「YES」)、バイパス弁18の開度などに基づいて補正量が求められ、この補正量に基づいて温調特性が補正される(ステップSA3)。続いて、補正後の温調特性に基づいて、タービン13の入口温度が一定であるか否かが判定され(ステップSA4)、この結果、タービン13の入口温度が一定でないと判定された場合には(ステップSA4において「NO」)、燃料流量決定部30によって決定された燃料供給量が所定量増加または減少させられる(ステップSA5)。一方、ステップSA4において、タービン13の入口温度が一定であると判定された場合には(ステップSA4において「YES」)、ステップSA6に移行する。ステップSA6では、ガスタービンの運転停止操作がなされたか否かが判定され、なされていなければステップSA2に戻り、ステップSA2以降の処理が再度実行され、一方、運転停止操作がなされた場合には、本処理を終了する。
【0047】
以上説明してきたように、本実施形態に係るガスタービン、ガスタービン制御装置、および発電システムによれば、バイパス流路16を流れる空気流量に基づいて温調特性が補正されるので、バイパスされる空気流量に応じた適切な温調特性を得ることが可能となる。そして、このバイパスされる空気流量が反映された温調特性に基づいてタービン13の入口温度が一定であるか否かの判定がされ、一定ではないと判定された場合には、タービン13の入口温度が一定となるように燃焼器12に供給される燃料流量の調整が行われる。これにより、燃焼器12をバイパスされる抽気流量を運転に反映させることができ、より安定した運転を実現することが可能となる。
【0048】
なお、本実施形態においては、バイパス流路16を流れる空気流量と基準空気流量との差分に基づいて補正量を得ることとしたが、更に、他のパラメータを考慮して補正量を決定することとしてもよい。例えば、バイパス流路16を流れる空気流量と予め設定されている基準空気流量との差分を圧縮機入口の空気流量で除算した値を用いて補正値を求めることとしてもよい。このように、圧縮機入口の空気流量をも考慮して補正量を決めることで、より適切な温調特性を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
10 ガスタービン
11 圧縮機
12 燃焼器
13 タービン
14 ガスタービン制御装置
16 バイパス流路
18 バイパス弁
20 発電機
30 燃料流量決定部
31 温調制御部
32 燃料弁開度決定部
40 記憶部
41 補正部
42 判定部
43 燃料調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、燃焼器と、タービンとを具備するガスタービンであって、
前記圧縮機により圧縮された空気を前記燃焼器を迂回して前記タービンへ供給するバイパス流路と、
前記バイパス流路に設けられ、前記バイパス流路を流れる空気流量を調整するための流量調整手段と、
前記タービンの入口温度を一定に保つために用いられ、タービンの入口温度に関するパラメータの関係を示した第1情報と、
前記バイパス流路を流れる空気流量または該空気流量に関するパラメータに基づいて前記第1情報を補正する補正手段と、
前記補正手段によって前記第1情報が補正された場合に、補正後の第1情報を用いて前記タービンの入口温度が一定であるか否かを判定する判定手段と
を具備するガスタービン。
【請求項2】
前記タービンの入口温度が一定でないと判定された場合に、前記バイパス流路を流れる空気流量または該空気流量に関するパラメータに基づいて前記燃焼器に供給する燃料量を調整する燃料調整手段を備える請求項1に記載のガスタービン。
【請求項3】
前記流量調整手段はバルブであり、
前記バイパス流路を流れる空気流量は、前記バルブの弁開度および前記バルブ前後の差圧に基づいて推定される請求項1または請求項2に記載のガスタービン。
【請求項4】
前記補正手段は、
前記バイパス流路を流れる空気流量と予め設定されている基準空気流量との差分を前記圧縮機入口の空気流量で除算した値を用いて前記第1情報を補正する請求項1から請求項3のいずれかに記載のガスタービン。
【請求項5】
前記第1情報は、車室圧力とタービンの最終段よりも後流側における排ガス温度とを関連付けた温調特性であり、
前記判定手段は、前記車室圧力と前記排ガス温度の関係が前記温調特性から所定の許容範囲を超えて外れた場合に、前記タービンの入口温度が一定でないと判断する請求項1から請求項4のいずれかに記載のガスタービン。
【請求項6】
前記補正手段は、前記バルブの弁開度が変化した場合に、前記第1情報の補正を行う請求項3に記載のガスタービン。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のガスタービンと、
前記ガスタービンにより発電される発電機と
を具備する発電システム。
【請求項8】
圧縮機と、
燃焼器と、
タービンと、
前記圧縮機により圧縮された空気を前記燃焼器を迂回して前記タービンへ供給するバイパス流路と、
前記バイパス流路に設けられ、前記バイパス流路を流れる圧縮空気量を調整するための流量調整手段と
を具備するガスタービンを制御するガスタービン制御装置であって、
前記タービンの入口温度を一定に保つために用いられ、前記タービンの入口温度に関するパラメータの関係を示した第1情報と、
前記バイパス流路を流れる空気流量または該空気流量に関するパラメータに基づいて前記第1情報を補正する補正手段と、
前記補正手段によって前記第1情報が補正された場合に、補正後の第1情報を用いて前記タービンの入口温度が一定であるか否かを判定する判定手段と
を具備するガスタービン制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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