説明

ガスタービンエンジンおよびその能動的クリアランス制御方法

【課題】ガスタービンエンジンのコンポーネントの機能を阻害しない、より少数の部品から構成されるクリアランス能動制御を提供する。
【解決手段】本発明のガスタービンエンジン10は、コンプレッサと、燃焼器と、一体型マニホールド14を取付けたタービン12と、を備える。この一体型マニホールド14は、分割板20に対応して配置されたマニホールド18によって形成されるプレナム16を有し、マニホールド18は、複数の開口を含む遮へい板22とは反対側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンに関し、より詳しくは、ガスタービンエンジンのクリアランス能動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
軸流ガスタービンエンジンにおいて、回転しているブレードの先端部と周囲の環状シュラウドとの間の半径方向のクリアランスを制御することは、エンジン効率を改善する公知技術の1つである。ブレード先端部とシュラウドとのクリアランスを減少することにより、設計者は、ブレードをバイパスするタービンの作動流体の量を減少することができ、したがって、所定の燃料量または他のエンジン入力に対するエンジン出力が増加する。
【0003】
「クリアランス能動制御」とは、クリアランス制御システムがある量の作動流体を用いて特定のエンジン構造物の温度を調整し、冷却される構造の熱膨張や収縮によってブレード先端部とシュラウドとの間のクリアランスを制御する、クリアランス制御装置をいう。このようなクリアランス能動制御システムの特徴は、クリアランス制御が最も有利なエンジンの作動出力の範囲内において、様々なエンジンパラメータや、航空パラメータ、または環境パラメータに対応して、ブレード先端部とシュラウドとの間のクリアランスを減少させるように冷却空気を切替または調整できることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなクリアランス能動制御システムは、通常、複数の部品からなる。これらの複数の部品は、エンジンの重量を増加させるだけでなく、過酷な動作環境下において、膨張や収縮をおこす付加的な部品を導入することとなる。これらの付加的な部品が膨張して半径方向内側への力がシュラウドに作用し、ブレード機能を阻害する恐れがあるので、このような付加的な部品の膨張や収縮を、ブレード先端部とシュラウドとのクリアランスを決定する際に考慮する必要がある。
【0005】
したがって、比較的に少数の部品から構成され、かつガスタービンエンジンのコンポーネントの機能を阻害しないような好ましいクリアランス制御を行う、ガスタービンエンジン用のクリアランス能動制御システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガスタービンエンジンは、コンプレッサと、燃焼器と、タービンと、を備え、このタービンはプレナムを有する一体型マニホールドを備え、このプレナムは、分割板と対応するように配置されたマニホールドによって形成され、かつ上記マニホールドは、複数の開口を含む遮へい板とは反対側に配置されている。
【0007】
本発明のガスタービンエンジンは、コンプレッサと、燃焼器と、タービンと、を備え、このタービンはプレナムを有する一体型マニホールドを備え、このプレナムは、分割板と対応するように配置されたマニホールドによって形成され、かつ上記マニホールドは、複数の開口を含む遮へい板とは反対側に配置されており、さらに一体型マニホールドが、タービンに一体的に取付ける取付手段を有する。
【0008】
本発明によれば、ガスタービン内のクリアランスを能動的に制御する方法は、ガスタービンエンジンのタービンに取付けられた一体型マニホールドに、ある量の作動流体を導入するステップと、一体型マニホールドを通してタービンに作動流体を循環するステップと、タービンの2つのコンポーネント間のクリアランス寸法を増大するステップと、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のクリアランス能動制御システムは、作動流体を供給、分配および送るために、ガスタービンと一体化し得る単一構造を用い、重量および費用の双方を最小化する。さらに、この単一構造は、不均一な温度および圧力の過酷な環境からエンジンコンポーネントを遮蔽する。さらに、単一の構造は、空間的に効率がよく、必要であれば、さらなる断熱(insulation)や遮蔽に対応することができる。本発明を説明するために、ここでは「作動流体」は、大気から供給される流体、もしくは1つまたは複数のガスタービンのコンポーネントを介して供給される流体を意味するものとし、これらの流体は、クリアランス能動制御システムに入り、エンジンの運転条件より低い温度もしくは運転条件より高い温度を有している。
【0010】
本発明のクリアランス能動制御は、一般的に、一体型マニホールドを備え、この一体型マニホールドが、遮へい板(shielding plate)の反対側に配置されたマニホールドによって形成されるプレナムを含み、かつ遮へい板とプレナムとの間に分割板(dividing plate)を有する。遮へい板は、エンジンケースに作動流体を通すことができる複数の開口を備える。分割板は、クリアランス能動制御システム内の作動流体を隔離し、圧縮空気の圧力を均一に分配する。一体型マニホールドは、ガスタービンエンジンのタービンセクションに取付けられた1つまたは複数の一体型に取付けるための取付デバイスを備える。代替としては、一体型マニホールドは、タービンセクションに一体的に取付ける手段を含む。
【0011】
図1および図2は、本発明のクリアランス能動制御システム14が取付けられたガスタービンエンジン10を示す。図2は、ガスタービンエンジン10のタービン12に一体型に取付けられたクリアランス能動制御部の断面図を示す。一般的に、ガスタービンエンジン10は、コンプレッサと、燃焼器と、タービンと、を含む。タービン12は、単一のタービン部、あるいは低圧タービン部および高圧タービンエンジン部からなる。本発明のクリアランス能動制御システム14は、高圧側あるいは低圧側のいずれにも使用することができる。たとえば、クリアランス能動制御システム14は、温度や圧力などの運転条件が最も過酷な高圧側タービン部に取付けられる。
【0012】
図1〜図4に示すように、クリアランス能動制御システム14は、プレナム16を有する一体型マニホールドを備え、このプレナム16は、分割板20と対応して配置されたマニホールド18によって形成され、かつ上記マニホールド18は、複数の開口24を有する遮へい板22とは反対側に配置されている。これらの複数の開口24により、作動流体がケース26に衝突する。この作動流体は循環して遮へい板22とケース26との間の大気中に出る。さらに、一体型マニホールドは、タービンのケース26に一体的に取付ける取付手段を有する。例えば、1つまたは複数の一体型取付デバイス28が、システム14をケース26に固定的に取付けるために用いられる。好ましい一体型取付デバイスは、限定する趣旨ではないが、ブラケット、ねじ、ボルト、パンチ、リベット、溶接、クリップ、およびこれらの組み合わせ、などを含む。
【0013】
本発明のクリアランス能動制御システムを用いて、大気、例えば、ラムエア、あるいはガスタービンエンジン10のコンプレッサ部を介して、ある量の作動流体をマニホールド18の開口部13へと導く。このような作動流体は、ガスタービンエンジン10内などの過酷な運転条件にさらされておらず、ガスタービンエンジン10の動作温度よりも低い温度であり、冷却効果を備えている。作動流体は、プレナム16を通過し、遮へい板22全体に存在する複数の開口24を介してタービン12に入る。作動流体は、開口24およびタービン12を循環し、最終的には温度が上昇する。
【0014】
作動流体の温度が、エンジンの動作温度よりも低い温度の場合は、作動流体は、ガスタービンエンジン10の他のコンポーネントとともに、1つまたは複数のロータアッセンブリの複数のブレード先端部30と接触し、ブレード先端部30を冷却する。ブレード先端部30は収縮し、ブレードに生じる熱膨張が低減する。したがって、ブレード先端部とシュラウドとのクリアランスは増加し、シュラウド32の周囲に同心円状に配置された磨耗材料34との、過渡的なクリアランス干渉が排除される。
【0015】
作動流体がエンジンの動作温度より高い温度を保持している場合は、作動流体は、ガスタービンエンジン10の他のコンポーネントとともに、シュラウド32と接触し、シュラウド32を加温する。このシュラウド32は膨張し、シュラウド32に生じる熱膨張が増加する。結果として、シュラウドとブレード先端部とのクリアランス寸法が増大して一過性のクリアランス干渉を排除する。
【0016】
クリアランス寸法が増加することで一過性のクリアランス干渉を排除するこのプロセス全体に亘り、さらなる作動流体が、本発明のクリアランス能動制御システムに継続的に供給される。例えば、エンジンの電子制御システムは、クリアランス能動制御システムに取り込む作動流体の量をスケジュールする。
【0017】
クリアランス能動制御システムは、ガスタービンエンジンの運転環境での使用において好ましい材料から構成される。好ましい材料は、限定する趣旨ではないが、ニッケル基超合金、コバルト基超合金、スチールなどの合金鉄、チタニウム合金、銅合金、またはこれらの組み合わせであっても良い。
【0018】
本発明のクリアランス能動制御システムは、温度を調節し、熱膨張を制御し、つまり、ブレードやブレード先端部、シュラウド、エンジンケース、などのガスタービンエンジンのコンポーネントの膨張や収縮を制御することによって、ブレード先端部とシュラウドとのクリアランスを制御する。本発明のクリアランス能動制御システムは、種々のエンジンパラメータ、飛行パラメータ、もしくは、環境パラメータに対応して、クリアランス制御がもっとも有利なときに、ブレード先端部とシュラウドとのクリアランスを減少させるように、切替または調整することができる。さらに、このクリアランス能動制御システムは、システム自身が、シュラウドに半径方向内側の力が働かず、ブレードと干渉しないように、より少ない部品を用いて設計される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のクリアランス能動制御システムが取付けられたガスタービンエンジンを示す図。
【図2】図1のガスタービンエンジンの高圧タービン内に一体化されたクリアランス能動制御システム部分の断面図。
【図3】図2の領域3の拡大図。
【図4】図3の領域4の拡大図。
【符号の説明】
【0020】
14…クリアランス能動制御システム
16…プレナム
18…マニホールド
20…分割板
22…遮へい板
26…エンジンケース
28…一体型取付デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサと、燃焼器と、タービンと、を備えるガスタービンエンジンであって、
上記タービンがプレナムを有する一体型マニホールドを備え、上記プレナムは、分割板と対応して配置されるマニホールドによって形成され、かつ上記マニホールドは、複数の開口を有する遮へい板とは反対側に配置されるように構成されているガスタービンエンジン。
【請求項2】
上記一体型マニホールドが、上記タービンに一体的に取付ける取付手段をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項3】
上記一体型マニホールドが、ブラケット、ねじ、ボルト、パンチ、リベット、溶接、クリップおよびこれらを組み合わせたものからなる群から選択された一体型取付デバイスをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項4】
コンプレッサと、燃焼器と、タービンと、を備えるガスタービンエンジンであって、
上記タービンが、プレナムを有する一体型マニホールドを備え、上記プレナムが、分割板と対応するように配置されるマニホールドによって形成され、かつ上記マニホールドは複数の開口を有する遮へい板とは反対側に配置され、さらに一体型マニホールドが、上記タービンに一体的に取付ける取付手段を有するように構成されているガスタービンエンジン。
【請求項5】
ガスタービンエンジンのタービンに取付けた一体型マニホールドに、ある量の作動流体を導入するステップと、
上記一体型マニホールドを通して、上記タービンへと上記作動流体を循環するステップと、
上記タービンの2つのコンポーネント間のクリアランス寸法を増大するステップと、
を備えることを特徴とするガスタービンエンジンの能動的クリアランス制御方法。
【請求項6】
上記クリアランス寸法を増大するステップが、上記タービンの1つまたは複数のロータアッセンブリの複数のブレード先端部と、上記タービンのシュラウドと、の間のクリアランスを増大することを特徴とする請求項5に記載のガスタービンエンジンの能動的クリアランス制御方法。
【請求項7】
上記クリアランス寸法を増大するステップが、上記タービンの1つまたは複数のロータアッセンブリの複数のブレード先端部と、上記タービンのシュラウドの周囲に同心円状に配置された磨耗材料と、の間のクリアランスを増大することを特徴とする請求項5に記載のガスタービンエンジンの能動的クリアランス制御方法。
【請求項8】
上記作動流体を循環するステップが、プレナムおよび上記一体型マニホールドの遮へい板の1つまたは複数の開口に、作動流体を通すことを特徴とする請求項5に記載のガスタービンエンジンの能動的クリアランス制御方法。
【請求項9】
上記作動流体を導入するステップが、上記タービンエンジンの動作温度よりも低い温度を有する、ある量の作動流体を導入することを特徴とする請求項5に記載のガスタービンエンジンの能動的クリアランス制御方法。
【請求項10】
上記作動流体を導入するステップが、上記タービンエンジンの動作温度よりも高い温度を有する、ある量の作動流体を導入することを特徴とする請求項5に記載のガスタービンエンジンの能動的クリアランス制御方法。
【請求項11】
上記作動流体を導入するステップが、上記ガスタービンエンジンの周囲の大気から、上記ある量の作動流体を導入することを特徴とする請求項5に記載のガスタービンエンジン内のクリアランスの能動的クリアランス制御方法。
【請求項12】
上記作動流体を導入するステップが、上記ガスタービンエンジン内から、ある量の作動流体を導入することを特徴とする請求項5に記載のガスタービンエンジン内のクリアランスの能動的クリアランス制御方法。
【請求項13】
上記作動流体を導入するステップが、上記一体型マニホールドの開口に、ある量の作動流体を導入することを特徴とする請求項5に記載のガスタービンエンジン内のクリアランスの能動的クリアランス制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−107528(P2007−107528A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279353(P2006−279353)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】