説明

ガスタービンエンジンおよびナセル

【課題】厚さを減少させ、重量を軽量化し、かつ抗力を低減させるナセルを設けて、種々の飛行条件でターボファンガスタービンエンジンの性能を最適化する。
【解決手段】ガスタービンエンジン10は、中空の内部空間を有するナセル100を備える。この内部空間は、空気をナセル100の吸気口116からナセル100の上流端部99に位置する排気口104に案内するプレナム120として利用される。排気口104から出る空気流により特定の飛行条件におけるナセル100の有効なリップ幅を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、ガスタービンエンジンに関し、特に、ターボファンガスタービンエンジン用のナセル入口に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボファンエンジンのような航空機のガスタービンエンジンでは、ファンが空気を圧縮機に搬送する。圧縮空気は、高温燃焼ガスを生成する燃焼器において燃料と混合される。高温燃焼ガスは、このガスからエネルギを抽出するタービンステージを通って下流に流れる。タービンは、ファンおよび圧縮機に動力を供給する。
【0003】
燃焼ガスは、コア排気ノズルを通ってターボファンエンジンから排出され、ファン空気は、コアエンジンを取り囲むナセルによって少なくとも部分的に画定される環状のファン排気ノズルを通って排出される。推力の大部分は、ファン排気ノズルを通って排出される圧縮ファン空気から得られ、残りの推力は、コア排気ノズルを通って排出される燃焼ガスから得られる。
【0004】
ガスタービンエンジン航空機の分野において、航空機が遭遇する種々の飛行条件でターボファンエンジンの性能が変化することが知られている。ターボファンナセルの先端部に配置された入口リップ部分は、種々の飛行条件でターボファンエンジンを作動させることを可能にし、ナセルの入口リップ部分からの空気流の剥離を防止するように一般的に設計される。例えば、入口リップ部分は、横風を受ける状況、離陸などの特定の飛行条件でのターボファンの作動を助けるように、「厚い」入口リップ部分の設計が必要である。不利なことに、「厚い」入口リップ部分は、航空機の巡航状態のような他の条件におけるターボファンエンジンの効率を減少させる恐れがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、厚さを減少させ、重量を軽量化し、かつ抗力を低減させるナセルを設けて、種々の飛行条件でターボファンガスタービンエンジンの性能を最適化することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
「厚い」リップをシミュレートするために、ナセルの前側に隣接した場所にブリード空気を選択的に案内することが以前から提案されてきた。厚いリップが必要ない条件(例えば、巡航状態)では、ブリード空気が停止される。連続した導管は、ナセルの下流端部で空気を捕らえ、この空気を上流端部に搬送する。
【0007】
開示された実施例では、ナセルの内部は、ナセルの上流端部付近における排気口に搬送されるブリード空気用のプレナムとして利用される。入口管がバイパス空気流からの空気を捕らえ、この空気をナセルの内部に案内する。空気は、プレナムに案内され、この後、ナセルの上流端部における排気口に続く入口通路に案内される。ブリード空気は、任意のエンジンステージ(ファン、圧縮機、タービンやカスタマブリードポート(customer bleed ports))から得られ、プレナム内の空気温度を制御するために一緒に混合されてもよい。一実施例では、排気口は、ナセルの外側面にある。代替の実施例では、排気口は、内側面にある。入口管は、プレナムによって排気口から離間している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
エンジン中心線つまり軸方向中心軸12を中心に周方向に配置されるターボファンガスタービンエンジンのようなガスタービンエンジン10を図1に示す。エンジン10は、ファン14、圧縮機15,16、燃焼器セクション18およびタービンロータ23,25を備える。本技術分野でよく知られているように、圧縮機15,16で圧縮された空気は、燃料と混合され、燃焼器セクション18で燃焼され、タービンロータ23,25で膨張される。圧縮機で圧縮された空気およびタービンで膨張された燃料混合気は、ともに高温ガス流と呼ばれる。タービンロータ23,25は、ブレード20および固定エアフォイルつまり固定ベーン19を含む。この構造が図1に概略的に示されている。
【0009】
図1に示すように、ナセル100は、ファンからのバイパス空気流を取り囲んでいる。カウル97は、内部の構成要素を取り囲み、ナセル100とともにバイパス通路を画定する。
【0010】
図2に、概ね中空のナセル100を示す。当然のことながら、ナセル内にファン制御ベルト199のような構成要素が含まれる。しかし、ナセル内で下流端部101と上流端部99との間は連通している。図2の実施例では、後方クロージャ112がプレナム120を画定する空間を閉鎖する。ファンカウルドア110が、プレナム120を包囲するようにシールされて示される。ドア110は、様々な目的で開かれてもよい。入口管114は、吸気口116およびディフューザ出口118を備える。バイパス流からの空気は、吸気口116に流入し、ディフューザ出口118から流出し、プレナム120に入る。図2に示されるように、管103の取入口102によって、プレナム内の空気が上流端部99におけるナセル100の外側周縁部に位置する排気口104に案内される。ブリード空気によって、様々な飛行条件における「厚いリップ」をシミュレートするように効果的に境界層が制御される。空気の方向は、図示した方向、これと逆方向、または自由に流れる空気に対して任意の様々な角度をとることができる。このセクションを通る流れを選択的に制御するために、バルブ115のようなバルブが管103に配置されてもよい。このブリード空気を選択的に制御する制御部200を概略的に示す。当業者であれば、より厚いリップが望ましい場合を理解するであろう。
【0011】
ブリード空気を生成するために以前に提案されたシステムは、空気を下流端部から上流端部に通流させる導管つまり管を含んでいた。空気を入口管114から管103に通流させるプレナム120を利用することによって、本発明は、必要な管や他の配管構造の多くを排除する。
【0012】
図3に示されるように、代替の実施例では、管105は、取入口106と、ナセル100の内側周縁部に空気を案内する排気口108と、を備えている。これにより、流れの剥離を減少させる、または無くすように境界層を強化する。
【0013】
単一の入口管114、管103および排気口104が図示されているが、実際は、これらの要素が周方向にいくつか離間して存在する。
【0014】
単一の取入口102,106、管103,105、排気口104,108が図示されているが、実際は、(分離または連続した)これらの要素が周方向にいくつか離間して存在する。
【0015】
本発明のいくつかの実施例を開示してきたが、当業者であれば、特定の修正が本発明の範囲に含まれることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ターボファンガスタービンエンジンの概略図である。
【図2】本発明の第1の実施例における断面図である。
【図3】本発明の第2の実施例の一部分を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を画定するナセルと、
前記ナセル内に位置したファンセクション、圧縮機セクションおよびタービンセクションと、
前記圧縮機セクションおよび前記タービンセクションを取り囲む内側カウルと、
空気を捕らえ、かつ該空気を前記ナセルの内部空間に通流させる空気入口と、
を備え、
前記ファンセクションが前記圧縮機セクションに空気に搬送するとともに、前記カウルと前記ナセルの内側面との間にバイパス空気を通流させ、
前記空気入口を通過した前記空気は前記ナセルの前記内部空間を通流し、該空気を前記ナセルの上流端部付近の場所に通流させる通路に流入することを特徴とするガスタービンエンジン。
【請求項2】
前記通路の排気口が、前記空気を前記ナセルの外側周縁部に案内することを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項3】
前記通路が、前記内部空間内に取入口を備える管であることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項4】
前記通路の排出口が、前記空気を前記ナセルの内側面に案内することを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項5】
前記空気入口の出口が、前記空気が該空気入口を通過して前記内部空間に流入する際に拡散するように、ディフューザを備えることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項6】
前記空気入口が、バイパス空気通路内における吸気口端部から延び、かつ前記内部空間内に出口を備える管であることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項7】
前記空気入口の管が、前記ナセル内の壁を貫通して延びるとともに、該空気入口の管の前記出口が前記内部空間と連通することを特徴とする請求項6に記載のガスタービンエンジン。
【請求項8】
流れ制御部が、前記通路からの空気流を選択的に遮断または継続させることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項9】
前記空気が、前記ナセルの前記上流端部において、より厚い境界層を形成するように使用されることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項10】
ガスタービンエンジン用のナセルであって、
内部空間を画定するとともに、バイパス空気通路を形成する中央ボアを備えたナセルボディと、
空気を捕らえ、かつ該空気を前記内部空間に通流させる空気入口と、
を備え、
前記空気入口を通過した前記空気が前記内部空間を通って流れ、前記ナセルボディの上流端部付近の場所に前記空気を通流させる通路に流入することを特徴とするナセル。
【請求項11】
前記通路の排気口が、前記ナセルボディの外側周縁部に前記空気を案内することを特徴とする請求項10に記載のナセル。
【請求項12】
前記通路が、前記内部空間内に取入口を備える管であることを特徴とする請求項10に記載のナセル。
【請求項13】
前記通路の排気口が、内側面に前記空気を案内することを特徴とする請求項10に記載のナセル。
【請求項14】
前記空気入口の出口が、前記空気が前記空気入口を通過して前記内部空間に流入する際に拡散するように、ディフューザを備えることを特徴とする請求項10に記載のナセル。
【請求項15】
前記空気入口が、バイパス空気通路における吸気口端部から延び、かつ前記内部空間内に出口を備える管であることを特徴とする請求項10に記載のナセル。
【請求項16】
前記空気入口の管が、前記ナセルボディ内の壁を貫通して延びるとともに、該空気入口の管の前記出口が前記内部空間と連通することを特徴とする請求項15に記載のナセル。
【請求項17】
流れ制御部が、前記通路からの空気流を選択的に遮断または継続させることを特徴とする請求項10に記載のナセル。
【請求項18】
前記空気が、前記ナセルボディの前記上流端部において、より厚い境界層を形成するように使用されることを特徴とする請求項10に記載のナセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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