説明

ガスタービン及びガスタービン複合発電設備

【課題】タービン・ローターの冷却空気として使用する圧縮空気からの熱回収効率を向上させたガスタービンを提供する。
【解決手段】圧縮機11と、燃焼器12と、タービン13とを具備し、タービン・ローターを冷却する冷却空気として圧縮機11から燃焼器12に供給される圧縮空気の一部を抽気して使用するガスタービン10Aであって、熱回収流体の燃料ガスがタービン・ローターを冷却する前の冷却空気から吸熱する熱交換により駆動されるスターリング機関30を備えるとともに、該スターリング機関30により駆動される熱回収発電機40を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン及びガスタービン複合発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示す従来のガスタービン10は、圧縮機11と、燃焼器(ガスタービン燃焼器)12と、タービン13とを具備して構成される原動機の一種である。このガスタービン10は、圧縮機11から供給される圧縮空気を用いて燃焼器12で天然ガス等の燃料を燃焼させ、高温の燃焼ガスを生成する。この燃焼ガスがタービン13に導入されると、動翼/静翼間を通過する燃焼ガスが膨張してタービン13を回転させるので、ガスタービン10は、燃料を燃焼させた熱エネルギーを回転運動エネルギーに変換して出力を得る内燃機関となる。
ガスタービン10の出力は、たとえば圧縮機11及びタービン13と同軸に連結された発電機14の駆動原として使用される。
【0003】
上述したガスタービン10は、燃焼器12からタービン13に高温の燃焼ガスを供給して出力を得るため、高温の燃焼ガスからタービン・ローターを保護するための冷却空気が必要となる。この冷却空気には、たとえば燃兼圧車室から抽気した圧縮空気の一部が使用されている。なお、冷却空気を抽気する燃兼圧車室は、圧縮機11から供給される圧縮空気が燃焼器に入る前に滞留する空間である。
【0004】
また、ガスタービン10で使用される冷却空気は、燃兼圧車室から抽気した圧縮空気を外部の冷却装置15で冷却してからタービン13へ供給する。この冷却装置15は、ガスタービン10の熱損失を小さくして発電効率の低下を防ぐため、冷却空気と燃焼器12に供給される燃料ガスとを熱交換させる熱交換器である。このような熱交換器を用いることにより、冷却空気の保有熱を燃料ガスに熱回収することができる。
【0005】
上述したガスタービン10は、たとえば図4に示すように、タービン13で仕事をした後に排気される燃焼排ガスから熱回収することにより、熱効率を向上させたガスタービン複合発電設備(以下、「GTCC」と呼ぶ)20にも使用されている。
GTCC20は、タービン13から排気された高温の燃焼排ガスを排熱回収ボイラ21に導入して蒸気を生成し、この蒸気で蒸気タービン22を駆動して出力を得るように構成されている。蒸気タービン22の出力は、ガスタービン10と共用の発電機14または蒸気タービン22の専用発電機の駆動源として使用される。
【0006】
このようなGTCC20の場合、タービン・ローターを保護する冷却空気の冷却には、排熱回収ボイラ21に供給される水が使用される。すなわち、ガスタービン10の熱損失を小さくして発電効率の低下を防ぐために冷却装置15Aを設置し、冷却空気と排熱回収ボイラに供給されて蒸気となる水とを熱交換させることで、冷却空気の保有熱を水に熱回収することができる。
【0007】
一方、シリンダー内の気体(ガスや空気等)を外部から加熱・冷却して仕事を得る外燃機関として、スターリングエンジンが知られている。
ガスタービン及びスターリングエンジンを組み合わせた従来技術としては、たとえば下記の特許文献1に開示されているスターリングエンジンとガスタービンの複合機関が公知である。この場合、スターリングエンジンの燃焼ガスがガスタービンの駆動に利用され、ガスタービンの迅速な応答性をスターリングエンジンの平均圧力の加減に利用できる。
また、下記の特許文献2は、廃熱源からエネルギーを取り出すエネルギー回収システムに関するものであり、循環作動流体を有するクローズドランキンサイクルを適用したシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−151724号公報
【特許文献2】特表2007−503546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した図3及び図4の従来技術は、冷却空気として使用する圧縮空気からの熱回収を冷却装置15,15Aのような単純な熱交換器で行うため、回収効率が低いという問題を有している。
一方、ガスタービン10の熱効率を上げるため、タービン入口温度(T1T)を高く設定する動向がある。しかし、タービン入口温度を高く設定すると、その分だけタービン・ローターを保護するために必要となる冷却空気量が増大するため、ガスタービン効率の改善効果を低下させることとなる。
【0010】
このような背景から、ガスタービン及びガスタービン複合発電設備においては、タービン・ローターの冷却空気として使用する圧縮空気から熱回収する効率の向上が望まれる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、タービン・ローターの冷却空気として使用する圧縮空気からの熱回収効率を向上させたガスタービン及びガスタービン複合発電設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係るガスタービンは、圧縮機と、燃焼器と、タービンとを具備し、タービン・ローターを冷却する冷却空気として前記圧縮機から前記燃焼器に供給される圧縮空気の一部を抽気して使用するガスタービンであって、熱回収流体が前記ガスタービンの高温部を冷却する前の前記冷却空気から吸熱する熱交換により駆動されるスターリング機関を備えるとともに、該スターリング機関により駆動される発電機を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明のガスタービンによれば、熱回収流体がガスタービンの高温部を冷却する前の冷却空気から吸熱する熱交換により駆動されるスターリング機関を備えるとともに、該スターリング機関により駆動される発電機を設けたので、スターリング機関の駆動により冷却空気を冷却するとともに、熱回収流体への回収熱及び電気エネルギーとして効率よく熱回収することができる。この場合のスターリング機関は、1台に限定されることはなく、複数台に分割した構成としてもよい。
なお、ガスタービンの熱回収流体としては、燃焼器へ供給する燃料ガスが好ましい。また、ガスタービンの高温部として、タービン・ローター、タービン静翼、燃焼器などが挙げられる。
【0013】
上記の発明において、前記発電機で発電した電力の保存設備を備えていることが好ましく、これにより、発電した電力を必要に応じて使用することができる。
この場合に好適な保存設備としては、蓄電池やコンデンサ等がある。
【0014】
本発明に係るガスタービン複合発電設備は、請求項1または2に記載のガスタービンと、前記タービンから排気された燃焼排ガスを導入して蒸気を生成する排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラから供給される蒸気により駆動される蒸気タービンとを備え、該蒸気タービンの出力で発電機を駆動して発電するとともに、前記スターリング機関の熱回収流体として、前記排熱回収ボイラに供給される蒸気生成用の水が用いられていることを特徴とするものである。
【0015】
本発明のガスタービン複合発電設備によれば、スターリング機関の熱回収流体として、排熱回収ボイラに供給される蒸気生成用の水が用いられているので、排熱回収ボイラの給水予熱源及び電気エネルギーとして、効率よく熱回収することができる。
なお、体積当り熱容量の大きい水を熱回収流体とすることで、スターリング機関の小型化が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明によれば、タービン・ローターの冷却空気として使用する圧縮空気からの熱回収が、高温流体と低温流体との熱交換により回転エネルギーを発生するスターリング機関を使用したので、熱交換による熱回収と同時に発電機の駆動による電力を得ることができる。従って、タービン・ローターの冷却空気として使用する圧縮空気から効率よく熱回収できるようになり、ガスタービン及びガスタービン複合発電設備の効率向上に顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るガスタービンの一実施形態として、構成例を示す系統図である。
【図2】本発明に係るガスタービン複合発電設備の一実施形態として、構成例を示す系統図である。
【図3】ガスタービンの従来例を示す系統図である。
【図4】ガスタービン複合発電設備の従来例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るガスタービン及びガスタービン複合発電設備の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す実施形態のガスタービン10Aは、大気を吸入して圧縮する圧縮機11と、天然ガス等の燃料ガス及び圧縮空気の供給を受けて高温高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器12と、燃焼器12から燃焼ガスを導入して回転するタービン13とを具備して構成される原動機である。すなわち、ガスタービン10Aは、高温高圧の燃焼ガスがタービン13に導入されて動翼/静翼間を通過することにより、燃焼ガスが膨張してタービン13を回転させるので、燃料を燃焼させた熱エネルギーを回転運動エネルギーに変換して出力を得る内燃機関である。
【0019】
圧縮機11はタービン13と同軸に連結され、ガスタービン10Aの起動時を除いてタービン13が発生させる出力の一部で駆動される。
ガスタービン10Aの出力は、たとえば圧縮機11及びタービン13と同軸に連結された発電機14の駆動原として使用される。図示の構成例では、発電機14が圧縮機11側に連結されているが、タービン13側に連結した構成としてもよい。
【0020】
圧縮機11から供給される圧縮空気は、その主流が燃焼器12に導かれる。また、圧縮空気の一部は、高温燃焼ガスに曝されるタービン13のタービン・ローター(不図示)を保護する冷却空気として、たとえばガスタービン10Aの燃兼圧車室(不図示)から抽気される。この冷却空気は、圧縮機11で圧縮されたことなどにより、吸入した大気より温度上昇した状態にある。
そこで、本実施形態では、タービン・ローターの冷却空気から熱回収するため、スターリング機関30を使用する。このスターリング機関30は、熱回収流体がタービン・ローターを冷却する前の冷却空気から吸熱する熱交換により駆動される外燃機関である。この場合の熱回収流体は、燃焼器12に供給される燃料ガスが使用されている。なお、図示のスターリング機関30は1台とされるが、これに限定されることはなく、複数台に分割した構成としてもよい。
【0021】
すなわち、スターリング機関30は、冷却空気を高温側流体とし、燃料ガスを低温側流体とすることにより、燃料ガスが冷却空気から吸熱する熱交換を行うのと同時に、回転エネルギーとして軸出力を発生する。このような熱交換により、高温側流体の冷却空気は、燃料ガスに吸熱されて温度低下したものがタービン13に供給され、低温側流体の燃料ガスは冷却空気から吸熱して温度上昇する。
そして、スターリング機関30の主軸には、スターリング機関30により駆動される発電機として、熱回収発電機40が連結されている。なお、スターリング機関30が複数台に分割されている場合には、各スターリング機関30に対して各々独立した熱回収発電機40を連結することが望ましい。
【0022】
このように、圧縮機11と、燃焼器12と、タービン13とを具備し、タービン・ローターを冷却する冷却空気として圧縮機11から燃焼器12に供給される圧縮空気を抽気して使用するガスタービン10Aにおいては、熱回収流体の燃料ガスがタービン・ローターを冷却する前の冷却空気から吸熱する熱交換により駆動されるスターリング機関30を備えるとともに、このスターリング機関30により駆動される熱回収発電機40を設けたことにより、スターリング機関30の駆動により冷却空気を燃料ガスで冷却するとともに、電気エネルギーを得ることができる。
すなわち、燃料ガスによる冷却空気の冷却と同時に、吸熱側となる燃料ガスに回収した回収熱に加えて、熱回収発電機40により発電した電気エネルギーの電力とを得ることが可能になるので、熱回収の効率が向上する。
【0023】
また、熱回収発電機40で発電した電力は、たとえば蓄電池やコンデンサ等のような保存設備50を設けておき、必要に応じて設備電力等に使用できるようにしておくことが望ましい。
このような保存設備50を備えていると、スターリング機関30の駆動力により発電される発電量が運転状態に応じて変動しても、安定した電源として使用することが可能になる。さらに、保存設備50に保存できる電気容量を大きく設定することで、ガスタービン10Aの停止中や起動時に必要となる電力として使用できるので、外部電源に頼ることなくプラントの必用電力を賄うことができる。
【0024】
次に、上述した構成のガスタービン10Aを備えたガスタービン複合発電設備(以下、「GTCC」と呼ぶ)20Aの構成例として、図2に示す実施形態を参照して説明する。なお、上述したガスタービン10Aと同様の構成部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図示のGTCC20Aは、ガスタービン10Aと、タービン13から排気された燃焼排ガスを導入して蒸気を生成する排熱回収ボイラ21と、排熱回収ボイラ21から供給される蒸気により駆動される蒸気タービン22とを備えている。
【0025】
蒸気タービン22の出力は、発電機14を駆動して発電するために使用される。この場合、発電機14は圧縮機11とも連結されてガスタービン10Aでも駆動されるが、蒸気タービン22が単独で駆動する発電機を設けてもよい。
このように構成された本実施形態のGTCC20Aでは、スターリング機関30Aの熱回収流体として、排熱回収ボイラ21に供給される蒸気生成用の水が用いられている。
【0026】
すなわち、スターリング機関30Aは、冷却空気を高温側流体とし、蒸気生成用の水を低温側流体とすることにより、水が冷却空気から吸熱する熱交換を行うのと同時に軸出力を発生する。このような熱交換により、高温側流体の冷却空気は、水に吸熱されて温度低下したものがタービン13に供給され、低温側流体の水は冷却空気から吸熱して温度上昇したものが排熱回収ボイラ21に供給される。
【0027】
このようなGTCC20Aによれば、スターリング機関30Aの熱回収流体として、排熱回収ボイラ21に供給される蒸気生成用の水を使用するので、スターリング機関30Aは排熱回収ボイラ21の給水予熱源として機能し、給水予熱による熱回収と同時に、熱回収発電機40で発電した電力としても熱回収することができ、従って、熱回収の効率が向上する。なお、熱回収流体として体積当り熱容量の大きい水を使用するので、上述したガス燃料を熱回収流体として使用する場合と比較すれば、スターリング機関30Aの小型化が可能となる。
また、この場合においても、熱回収発電機40で発電した電力を保存する保存設備50を設けておくことが望ましい。
【0028】
上述したように、本実施形態のガスタービン10A及びGTCC20Aによれば、タービン・ローターの冷却空気として使用する圧縮空気からの熱回収が、高温流体の冷却空気と低温流体の燃料ガスまたは水との熱交換により回転エネルギーを発生するスターリング機関30,30Aを使用して行われるので、熱交換による熱回収と同時に、スターリング機関30,30Aに駆動される熱回収発電機40で発電した電力を得ることができる。
このため、タービン・ローターの冷却空気として使用する圧縮空気から効率よく熱回収できるようになり、ガスタービン10A及びGTCC20Aの効率を向上させることが可能になる。
【0029】
すなわち、熱回収流体である燃流ガスまたは水への回収熱の他に、熱エネルギーの一部を電気エネルギーとして余分に熱回収することができるので、従来の熱交換器による冷却装置15,15Aからの熱回収と比較すれば、熱エネルギーの回収効率を向上させることができる。
【0030】
さらに、発生した電気エネルギーについては、保存設備50を設けていったん保存するとともに、必要に応じて使用することができるので、ガスタービン10Aの運転状態に応じた給電能力の変動を吸収し、ガスタービン10Aの停止中に必要となる消費電力や、ガスタービン10Aの起動モータを駆動するのに必要な電力を賄うことも可能となる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。たとえば、スターリング機関30,30Aによって熱回収された圧縮空気は、タービン・ローターの冷却空気のみではなく、燃焼器12やタービン静翼の冷却空気としても使用可能であり、圧縮機抽気を利用した冷却システム全般に適用可能であることを付記しておく。
【符号の説明】
【0031】
10,10A ガスタービン
11 圧縮機
12 燃焼器
13 タービン
14 発電機
20,20A ガスタービン複合発電設備(GTCC)
30,30A スターリング機関
40 熱回収発電機
50 保存設備


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、燃焼器と、タービンとを具備し、ガスタービンの高温部を冷却する冷却空気として前記圧縮機から前記燃焼器に供給される圧縮空気の一部を抽気して使用するガスタービンであって、
熱回収流体が前記ガスタービンの高温部を冷却する前の前記冷却空気から吸熱する熱交換により駆動されるスターリング機関を備えるとともに、該スターリング機関により駆動される発電機を設けたことを特徴とするガスタービン。
【請求項2】
前記発電機で発電した電力の保存設備を備えていることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガスタービンと、前記タービンから排気された燃焼排ガスを導入して蒸気を生成する排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラから供給される蒸気により駆動される蒸気タービンとを備え、該蒸気タービンの出力で発電機を駆動して発電するとともに、
前記スターリング機関の熱回収流体として、前記排熱回収ボイラに供給される蒸気生成用の水が用いられていることを特徴とするガスタービン複合発電設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−7324(P2013−7324A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140378(P2011−140378)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】