説明

ガスハイドレートの脱水装置

【課題】 簡単な構造であり、かつ小型であるガスハイドレートスラリーの脱水装置を提供する。
【解決手段】 脱水塔は、下端が閉止され中間部に濾過部を有し上端が開放された外筒と、この外筒内に下端が開放され中間部に濾過部を有し上端が閉止された内筒を二重管状に配置し、前記外筒の下方よりガスハイドレートスラリーを導入すると共に、この外筒と内筒の略中間部に設けた排水部にて該スラリーより未反応水を排出し、上端の開放部より脱水されたガスハイドレートを排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水装置、より詳しくは、ガスと水とを反応させて生成したガスハイドレート(スラリー状のガスハイドレート)を、中間部に濾過部を設けた筒状の脱水塔に導入して、この脱水塔の下方から上方に向けて上昇させ、この上昇中に前記濾過部から塔外に未反応水を流出させるようにした所謂重力脱水式の脱水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近来、クリーンなエネルギーとして、天然ガスの利用が盛んになっている。そして、この天然ガスの輸送や貯蔵を効率的に行うため、この天然ガスと水とを反応させてガスハイドレートを生成しすることが注目されている。このガスハイドレートは、所定の圧力(例えば、5.4MPa)と温度(例えば、4℃)でメタン等の天然ガスと水とを接触反応させてガスハイドレートを生成するが、この段階でのガスハイドレートは、未反応の水に含まれる所謂スラリーであり、このスラリーから未反応の水を分離(脱水)することが必要になってくる。
【0003】
このようなことから、ガスハイドレートから未反応の水を脱水するための脱水装置が種々提案されている。その一つとして、本出願人は、濾過部を有する外筒と内筒とより二重管構造の脱水塔として脱水効率を高め、もって脱水装置の小型化を計ることを先に特開2006−257359号として提案した。
【特許文献1】特開2006−257359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した二重管構造の脱水塔においては、外筒と内筒のそれぞれの濾過部で脱水されたガスハイドレートは、この外筒と内筒の上部に達しここから内筒内を破砕装置により破砕されながら落下しその下部から取り出されるようになっているため、構造的に満足できるような小型化を図ることが出来ずまた下部にガスハイドレートの取出装置やスラリーの導入管路また反応水の排出管路等が集中して配置されるため構造が複雑になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記したような従来の問題点を解決するためになされたものであって、その脱水塔は、
1) 下端が閉止され中間部に濾過部を有し上端が開放された外筒と、この外筒内に下端が開放され中間部に濾過部を有し上端が閉止された内筒を二重管状に配置し、前記外筒の下方よりガスハイドレートスラリーを導入すると共に、この外筒と内筒の略中間部に設けた排水部にて該スラリーより未反応水を排出し、上端の開放部より脱水されたガスハイドレートを排出することを特徴とする。
【0006】
2) 前記外筒の外面側または/および内筒の内面側に水を流下させることを特徴とする。
【0007】
そして、本発明に係る脱水装置は、
3) 前記脱水塔を高圧容器の内部に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1にかかる発明によれば、外筒の外側と内側とからガスハイドレートに含まれる未反応水が排水されるようになるので、外筒中心側に位置するガスハイドレートの含水率が低下し、結果、脱水率の高いガスハイドレートが得られる。
【0009】
また、外筒の外側と内側とより未反応水が排水されるので、外側のみで脱水していた従来の脱水塔よりも小型の脱水塔とすることができる。そして、ガスハイドレートスラリーを脱水塔に圧送するスラリーポンプの運転動力も軽減される。
【0010】
請求項2にかかる発明によれば、脱水塔の濾過部にガスハイドレートが目詰まりする前に洗い流されるようになるので、前記濾過部の目詰まりによる脱水効率の低下が防止され、目詰まりをメンテナンスする回数が激減すると共に、メンテナンスによる装置の停止といったことが防止される。よって、脱水効率の低下と生産性の低下が防止され、常に一定の品質のガスハイドレートを一定の量生産し続けることができる。
【0011】
請求項3にかかる発明によれば、原料ガスと原料水とを高圧雰囲気で反応させて生成したガスハイドレートスラリーは、前記高圧状態で脱水塔にスラリーポンプ等を介して導入されているが、脱水塔自体を前記高圧状態に保持された高圧容器内に配置したので、脱水塔自体を耐圧構造とする必要がなくなるので、従来の脱水塔を製作する容量で製作することができ、製作コストが増加することがない。また、脱水塔自体は耐圧性を持たせる必要がないので、運転条件等に合わせて容易に改良することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図1乃至図2に基づき本発明による脱水装置の実施態様について説明する。
【0013】
図1において、脱水装置Aは、高圧容器1内に脱水塔2が配置されて構成されている。詳述すれば、脱水塔2は、中間部にそれぞれ濾過部3を有する外筒4と濾過部5を有する内筒6とが、間隔L1を有するように配置して区画7を形成し、あたかも二重管のようになっている。
【0014】
前記区画7の上部は開放されると共に下部には底板8が設けられて閉止されている。そして、この区画7の下部には図1にも示されるようにスラリー供給管9が接続され、このスラリー供給管9からガスハイドレートスラリーSが区画7内に供給されるようになっており、この区画7がガスハイドレートスラリーSの流路となっている。
【0015】
前記外筒4に形成された濾過部3は、ガスハイドレートスラリーに含まれるガスハイドレート結晶が流出しない程度の大きさの小孔が多数設けられており、スラリー中の未反応水が排水されるようになっている。
【0016】
前記濾過部3の外側上部には第一の噴霧ヘッダ10が取り付けられ、この噴霧ヘッダ10に第一の給水管11から水もしくは未反応水の一部の水wが供給され、この水wは濾過部3を流下するときにこの濾過部3に堆積しようとするガスハイドレートhを剥離しその目詰まりを防止するようになっている。
【0017】
内筒6の上端は閉鎖部材12により閉鎖されるとともにその下端は開放して外筒4の外部と内筒6の内部とを連通させて水槽15が形成されている。そして、内筒6の内部でかつ濾過部5の上部には、図3に示されるように第二の噴霧ヘッダ13が取り付けられ、この第二の噴霧ヘッダ13に第二の給水管14から未反応水の一部の水wが供給され、この水wは濾過部5を流下するときにこの濾過部5に堆積しようとするガスハイドレートhを剥離しその目詰まりを防止するようになっている。
【0018】
このように構成された脱水塔2は、高圧容器1内に所定の間隔L2を有し区画16を形成するように図示しない支持部材により取り付けられると共に、その上部においては円環状の閉鎖板17により区画16が区分されている。このようにして、区画16の下部には水槽15の一部が形成されるとともにこの区画16の閉鎖板17より上部は区画18となっている。
【0019】
高圧容器1内に配置された脱水塔2の上部(区画18)には掻出払出装置19が設けられており、この掻出払出装置19は、電動機の如き駆動装置20とスクレーパー21とスクリューコンベア22とにより構成され、脱水塔2の上部に上昇してきたガスハイドレートhをスクレーパー21により掻き出してスクリューコンベア22に供給し、このスクリューコンベア22を図示しない駆動装置により駆動して後流側に配置される例えば成形装置に供給する。
【0020】
水槽15内に流入した未反応の水wは、排水ポンプ23により吸水され排水管24を経て第一の生成器(図示せず)に供給される。もちろんこの排水ポンプ23は、液位検出器25の信号により制御され、水槽15の液面が常に所定の範囲に維持されるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による脱水装置の実施態様を示す側断面概略図である。
【図2】本発明による脱水装置の平断面概略図である。
【符号の説明】
【0022】
1 高圧容器
2 脱水塔
3、5 濾過部
4 外筒
6 内筒
7,16 区画
8 底板
9 スラリー供給管
10 第一の噴霧ヘッダ
11 第一の給水管
12 閉鎖部材
13 第二の噴霧ヘッダ
14 第二の給水管
15 水槽
17 閉鎖板
19 掻出装置
20 駆動装置
21 スクレーパー
22 スクリューコンベア
23 排水ポンプ
24 排水管
25 液位検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスと原料水とを反応させて生成したガスハイドレートの脱水塔であって、
この脱水塔は、下端が閉止され中間部に濾過部を有し上端が開放された外筒と、この外筒内に下端が開放され中間部に濾過部を有し上端が閉止された内筒を二重管状に配置し、
前記外筒の下方よりガスハイドレートスラリーを導入すると共に、この外筒と内筒の略中間部に設けた排水部にて該スラリーより未反応水を排出し、上端の開放部より脱水されたガスハイドレートを排出することを特徴とするガスハイドレートの脱水塔。
【請求項2】
前記外筒の外面側または/および内筒の内面側に水を流下させることを特徴とする請求項1記載のガスハイドレートの脱水塔。
【請求項3】
請求項1又は2記載の脱水塔を高圧容器の内部に配置したことを特徴とするガスハイドレートの脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−248193(P2008−248193A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94026(P2007−94026)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18〜19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、高効率天然ガスハイドレート製造利用システム技術実証研究の委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】