説明

ガスハイドレートガス化装置

【課題】効率的にかつ安定的にガスハイドレートをガス化することが可能なガスハイドレートガス化装置を提供する。
【解決手段】固形状のガスハイドレートを収容可能なタンク3と、前記タンク3の上部に設けられガスハイドレートがガス化したガスを送出するガス送出管15と、前記タンク3内の上部に取付けられ、ガスハイドレートに温水を吹掛ける温水噴射手段5と、前記タンク3を上下に仕切るように取付けられ、収容するガスハイドレートを支持する多孔状支持体7と、多孔体で形成され、前記多孔状支持体7の下方と前記タンク3内の上部とを連絡するガス及び水が流通可能な連絡通路を内部に有する連絡管9と、前記連絡管9内部の連絡通路内に取付けられガスハイドレートを加熱する加熱管11と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形状のガスハイドレートをガス化するガスハイドレートガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、天然ガスハイドレート(以下NGHと記す)は、水分子が形成するかご状の結晶構造の空間に天然ガスが取込まれた包接化合物であり、氷状の固体物質である。このNGHは、NGH1m当り約160Nmと多くの天然ガスを包蔵することができる。NGHは、大気圧下、約−80℃の温度で安定的に存在し、さらに約−20℃の温度で分解が抑制される自己保存性も知られており、液化天然ガス(LNG)に比較すると、設備の仕様、取扱い等の点では有利である。これらのことからNGHの製造、運搬、ガス化など各プロセス、装置、システムの実用化に向けた検討がなされ、多くの技術が提案されている。
【0003】
例えば、中小規模のガス田から産出される天然ガスをガス産出地でNGHのペレットとし、これを運搬船で天然ガス消費地に設置された受入基地まで運搬し、貯蔵タンクに貯蔵する。貯蔵タンクに貯蔵されたNGHは、受入基地内に設けられたガス化装置に送られ、ここで天然ガスに再ガス化され発電設備の燃料として使用する。またはタンクローリ等を使用して、さらに別の消費地にNGHを運搬し、そこでNGHをガス化し都市ガスなどに利用することが検討されている。
【0004】
NGHは、固体状の物質ゆえ、天然ガスとして利用するには、NGHをガス化させる必要がある。NGHは加温という簡単な操作で水と天然ガスとに分解することが可能であり、例えばタンク内のNGHに上方から温水を噴射することでNGHをガス化させることができる。NGHを始め、タンク内のガイハイドレートに上方から温水を噴射しガス化させる方法の場合、噴射された温水、ガス化の際に発生する融解水が、ガスハイドレートの隙間を通って流下する際に凍結する恐れがある。これを解決するために、タンク内にタンクを上下2分する多孔板状支持体を設け、多孔板状支持体でガスハイドレートを支持し、多孔板状支持体に上向きに温水を噴射する噴射ノズルを設けたガス化装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−138349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、温水を上向きに噴射することで、噴射した温水、融解水がガスハイドレートの最下部から直に分離するため従来のような凍結の心配がないとする。しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、温水噴射ノズルがガスハイドレートに埋まってしまい、一の温水噴射ノズルから噴射される温水が広範囲に行き渡らない恐れがある。このため多くの温水噴射ノズルを取付ける必要がある。さらに、噴射した温水がガスハイドレートの間を流下しないため凍結の心配はない一方で、温水の有する熱を十分に利用できず効率的とは言えない。これはNGHに限らず、他のガスハイドレートでも同じである。
【0006】
本発明の目的は、効率的にかつ安定的にガスハイドレートをガス化することが可能なガスハイドレートガス化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明は、固形状のガスハイドレートをガス化させるガスハイドレートガス化装置であって、固形状のガスハイドレートを収容可能なタンクと、前記タンクの上部に設けられガスハイドレートがガス化したガスを送出するガス送出管と、前記タンク内の上部に取付けられ、ガスハイドレートに温水を吹掛ける温水噴射手段と、前記タンクを上下に仕切るように取付けられ、収容するガスハイドレートを支持する多孔状支持体と、多孔体で形成され、前記多孔状支持体の下方と前記タンク内の上部とを連絡するガス及び水が流通可能な連絡通路を内部に有する連絡管と、前記連絡管内部の連絡通路内に取付けられガスハイドレートを加熱する加熱管と、を備えることを特徴とするガスハイドレートガス化装置である。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のガスハイドレートガス化装置において、前記連絡管は板状の形状を有し、前記多孔状支持体上に複数の区画が形成されるように配置され、さらにガスハイドレートを分配する分配器、前記分配器に接続し前記連絡管で仕切られた区画毎にガスハイドレートを供給するガスハイドレート供給管を備えるガスハイドレート供給装置を有し、前記温水噴射手段は、前記各ガスハイドレート供給管の外周に配置されたシャワーヘッドを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載のガスハイドレートガス化装置において、前記連絡管のうちタンク内壁面と対向する壁面のみ非多孔体とし、前記非多孔体とタンク内壁面とで囲まれた領域にはガスハイドレートを充填することなくガス抜用連絡通路とすることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の本発明は、固形状のガスハイドレートをガス化させるガスハイドレートガス化装置であって、固形状のガスハイドレートを収容可能なタンクと、前記タンクの上部に設けられガスハイドレートがガス化したガスを送出するガス送出管と、多孔体で板状の形状を有し、タンク中間部が複数の区画に区分けされるように配置され、ガス及び水が流通可能な上下方向に伸びる連絡通路を内部に有する連絡管と、前記連絡管内部の連絡通路内に取付けられガスハイドレートを加熱する加熱管と、前記連絡管で仕切られた複数の区画において、一区画毎に下部に絞り部を設け、前記絞り部と僅かな隙間を有し前記絞り部を覆うように設けられた受け体と、前記受け体の外壁面に接触するように設けられた加熱管と、前記受け体の底部に設けられ収容するガスハイドレートを支持する多孔状支持体と、ガスハイドレートを分配する分配器、前記分配器に接続し前記連絡管で仕切られた区画毎にガスハイドレートを供給するガスハイドレート供給管を備えるガスハイドレート供給装置と、前記各ガスハイドレート供給管の外周に配置されたシャワーヘッドを備えるガスハイドレートに温水を吹掛ける温水噴射手段と、を備えることを特徴とするガスハイドレートガス化装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガスハイドレートガス化装置は、多孔体で形成され、多孔状支持体の下方とタンク内の上部とを連絡するガス及び水が流通可能な連絡通路を内部に有する連絡管を有するので、多孔状支持体上にガスハイドレートを充填し、ガスハイドレートの上方から温水を噴射しガスハイドレートをガス化させるとき、ガス化に伴い発生する融解水及び噴射する温水を、連絡管を通じて多孔状支持体の下方に確実に流下させることができる。また多孔状支持体を通過したガスハイドレートが多孔状支持体の下方でガス化しても、発生するガスは連絡管を通じてタンク上部に移動するので、ガスハイドレートを効率的かつ安定的に、また安全にガス化せることができる。また連絡管内部の連絡通路内にガスハイドレートを加熱する加熱管が設けられているので、連絡管表面で水が凍結することがなく、確実に水及びガスを通過させることができる。さらに加熱管は、連絡管内に配置されているので、タンクの上部から固形状のガスハイドレートを充填するとき、ガスハイドレートが加熱管に衝突することがなく、加熱管の破損、変形を防止することができる。装置構成も比較的簡単であり工業的規模で実用化可能なガスハイドレートガス化装置である。
【0012】
また本発明によれば、前記連絡管は板状の形状を有し、前記多孔状支持体上に複数の区画が形成されるように配置され、さらにガスハイドレートを分配する分配器、前記分配器に接続し前記連絡管で仕切られた区画毎にガスハイドレートを供給するガスハイドレート供給管を備えるガスハイドレート供給装置を有し、前記温水噴射手段は、前記各ガスハイドレート供給管の外周に配置されたシャワーヘッドを備えるので、加熱管の加熱面積も広く、より安定的に、また効率的にガスハイドレートをガス化させることができる。
【0013】
また本発明によれば、前記連絡管のうちタンク内壁面と対向する壁面のみ非多孔体とし、前記非多孔体とタンク内壁面とで囲まれた領域にはガスハイドレートを充填することなくガス抜用連絡通路とするので、ガス抜用連絡通路を確実に確保することができる。よって多孔状支持体を通過したガスハイドレートが多孔状支持体の下方でガス化しても、発生するガスは連絡管の他、ガス抜用連絡通路を通じてタンク上部に移動するので、ガスハイドレートをより安全に安定的にガス化せることができる。
【0014】
また本発明のガスハイドレートガス化装置は、多孔体で板状の形状を有し、タンク中間部が複数の区画に区分けされるように配置され、ガス及び水が流通可能な上下方向に伸びる連絡通路を内部に有する連絡管で仕切られた複数の区画において、一区画毎に下部に絞り部を有し、絞り部と僅かな隙間を有し絞り部を覆うように設けられた受け体、受け体の外壁面に接触するように設けられた加熱管を有するので、装着された加熱管の量が多く、ガスハイドレートを効率的にかつ安定的に、また安全にガス化せることができる。また連絡管内部の連絡通路内にガスハイドレートを加熱する加熱管が設けられているので、連絡管表面で水が凍結することがなく、確実に水及びガスを通過させることができる。さらに加熱管は、連絡管内及び受け体の外壁面に接触するように配置されているので、タンクの上部から固形状のガスハイドレートを充填するとき、ガスハイドレートが加熱管に衝突することがなく、加熱管の破損、変形を防止することができる。また装置構成も比較的簡単であり工業的規模で実用化可能なガスハイドレートガス化装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態としてのNGHガス化装置1の概略的構成を示す。図2は、NGHガス化装置1の連絡管9の配置を示す平面図である。NGHガス化装置1は、NGHペレット2をガス化し、天然ガスを送出する装置であって、ペレット状のNGHを収容するタンク3、タンク3内に装着されNGHペレット2に温水を噴射する温水噴射手段5、タンク3内を上下に仕切るように取付けられたスクリーン7、スクリーン7の下方とタンク3内の上部とを連絡する複数の連絡管9、連絡管9内に装着された加熱管11を備える。
【0016】
タンク3は、略円柱状の形状を有し壁面は断熱構造となっている。タンク3は、NGHペレット2を収容し、NGHペレット2をガス化させ天然ガスを発生させる際の処理槽となる。タンク3の上部には、NGHペレット2を供給するためのNGH供給管13、汽水分離器14、汽水分離器14を介してNGHペレット2がガス化し発生する天然ガスを送出するガス送出管15が取り着けられている。さらにタンク3内の圧力を検出するための圧力検出器17、タンク3内の圧力が異常に上昇した場合にタンク3内の天然ガスを放出する安全弁19が取付けられている。NGH供給管13、汽水分離器14、ガス送出管15、圧力検出器17及び安全弁19の導管は、内面をテフロン(登録商標)コーティング等で氷が着き難く剥がれ易くする及び/又は凍結防止用の電気ヒータを取付け、凍結防止対策を行うことが好ましい。一方、タンク3の下部は、NGHペレット2をガス化させる際に発生する水を貯留する冷水プール21が設けられ、冷水プール21に貯留する冷水は、図示を省略した冷水送水ポンプを介して、系外の冷却器(図示省略)の冷却媒体として使用される。また冷水プール21の水位を制御する水位制御装置(図示省略)が設けられている。
【0017】
温水噴射手段5は、タンク3内の上方に取付けられたリング状の温水供給管22、温水供給管22に複数装着された温水噴射ノズル24を備え、タンク3内に収容するNGHペレット2にNGHペレット2の上方から温水を吹掛け、NGHペレット2を加熱、ガス化させる。また温水供給管22及び温水噴射ノズル24には、凍結防止用の電気ヒータ(図示を省略)が装着されている。温水噴射ノズル24の数は特に限定されるものではなく、タンク3の横断面全体に温水が吹掛けられるように設ければよい。また温水噴射ノズル24は、温水を高速で噴射させる必要はなく、温水を広角に噴射することができる市販の噴射ノズルを使用することができる。温水を広角に噴射する噴射ノズルを使用することで、温水噴射ノズル24の取付け個数を少なくすることができる。ここで使用する温水は、特定の温度を有する温水に限定されるものではなく、NGHペレット2を加熱可能な温度を有する水であればよく、例えば10℃から30℃程度の水道水、工業用水、河川水などを使用することができる。なお、本実施形態のようにNGHペレット2をガス化させる際に発生する水を系外の冷却器(図示省略)の冷却媒体として使用する場合であって、使用先の冷却器が所定の水質を要求するときは、NGHペレット2を加熱する温水には、この水質を満足させる水を使用する。
【0018】
タンク3中間部には、タンク3を上下に仕切るようにスクリーン7が取付けられている。このスクリーン7は、供給されるNGHペレット2を支持すると同時に、ガス化に伴い発生する水を分離する。タンク3の下部には、冷水を貯留する冷水プール21が設けられ、ガス化に伴い発生する水は、冷水プール21に貯留される。スクリーン7としては、金網、パンチングメタル(打抜金網)などが例示される。スクリーン7の目開きの大きさは、供給するNGHペレット2が通過しないように、NGHペレット2の平均粒子径の1/3程度の大きさが好ましい。このようにスクリーン7の目開きの大きさを設定することで、供給したNGHペレット2がスクリーン7を通過せず、かつ水を十分に通過させることができる。またNGHペレット2の一部が融解しスクリーン7を通過し、冷水プール21に落下しても、その時点でNGHペレット2の体積は、供給直後のNGHペレット2の体積の1/9程度であり、冷水プール21に落下したNGHペレット2が比較的迅速にガス化しても天然ガス発生量制御への外乱を少なくすることができる。スクリーン7上には、タンク3上部に設けられたNGH供給管13からNGHペレット2が供給されるので、NGHペレット2が衝突しても変形しない強度が必要である。スクリーン7を高い位置に取付けるほど、NGHペレット2の収容量が少なく、NGHペレット2の供給頻度が増えるので、タンク3下部の冷水プール21の高さも考慮しスクリーン7の取付け高さを決定すればよい。
【0019】
連絡管9はスクリーン7の下方とタンク3の上部とを連絡し、NGHペレット2をガス化させる際に発生する水をスクリーン7下方に流下させる一方、NGHペレット2が冷水プール21に落下し、冷水プール21でガス化した天然ガスをタンク3の上部に導く。このため連絡管9は、上面及び側面が金網からなり底面は開放され、内部は空間部25となっており、この空間部25が連絡通路として機能する。連絡管9は下端がスクリーン7に固定され、連絡管9の上端23は、温水噴射ノズル24よりも低い位置である。NGHペレット2は、連絡管9の上端23の高さと収容するNGHペレット2の高さが同じか、連絡管9の上端23の高さが上となるように供給されるので、この点から連絡管9の高さを決める必要がある。連絡管9の内部の空間部25には、加熱管11が配置されるので、加熱管9の本数等を考慮し、大きさを決定すればよい。本実施形態において連絡管9は、タンク3の半径方向に均一に6個、中央部に1個取付けられているけれども、連絡管9の数は特に限定されるものではなく、タンク3の大きさ等を考慮し、適宜決定すればよい。
【0020】
連絡管9の金網の目開きの大きさは、NGHペレット2の落下防止と水の流下をスムーズにするために、高さ方向で目開きの大きさを変え、上部から下部に向かって徐々に目開きの大きさを変化させることが好ましい。例えば、連絡管9の上部ではNGHペレット2の平均粒子径と同程度の大きさ、連絡管9の中央部ではNGHペレット2の平均粒子径の1/2程度の大きさ、連絡管9の下部ではNGHペレット2の平均粒子径の1/3程度の大きさとする。投入されたNGHペレット2が直接、連絡管9を通過して冷水プール21に落下すると、天然ガス発生量がNGHペレット2の供給時に急増し、天然ガス発生量を制御する際の外乱となるが、上部の金網の目開きの大きさをNGHペレット2と同等の大きさとすることで、NGHペレット2が冷水プール21に落下することは殆どない。なお、連絡管9は必ずしも金網で形成する必要はなく、多孔性材料であればよく、パンチングメタル(打抜金網)などを用いてもよい。連絡管9には、スクリーン7と同様、供給されるNGHペレット2が衝突するので、NGHペレット2が衝突しても変形しない強度が必要であり、スクリーン7、連絡管9とも必要に応じて補強材で補強してもよい。
【0021】
各連絡管9は円柱の形状を有し、内部の空間部25には、それぞれ加熱管11が設けられている。加熱管11は、加熱媒体供給管27及び加熱媒体排出管29と接続し、加熱管11の内部を外部から供給される加熱媒体が流れ、NGHペレット2を加熱しNGHペレット2をガス化させると共に、連絡管9が氷で閉塞しないように連絡管9及びその周囲を加熱する。加熱管11は、低温脆性及び加熱媒体により加わる熱応力を考慮し、小口径で薄肉が好ましい。加熱管11は、スクリーン7の裏面を通り、スクリーン7を貫通し連絡管9内に設けられる。加熱管11は、連絡管9の壁面に接触しないように、所定の隙間を持った状態で取付けられている。加熱管11は、連絡管9内に配置され、かつ連絡管9の壁面と所定の距離を有するので、タンク3内にNGHペレット2が供給される際の衝撃を直接受けることがなく、加熱管11の変形、破損を防止することができる。
【0022】
以上のように、NGHガス化装置1はスクリーン7の下方とタンク3の上部とを連絡し、水及び天然ガスが流通可能な連絡管9を有するので、NGHペレット2の上方から温水を吹掛けても、吹掛けた温水及びNGHペレット2が融解し発生する融解水は、連絡管9を形成する金網を通じて連絡管9の内部の空間部25に入り込み、この空間部25を介してスクリーン7の下方に流下する。一方、NGHペレット2のガス化に伴い、一部が融解し粒子径が小さくなったNGHペレット2がスクリーン7を通過し、冷水プール21に落下しここでガス化され天然ガスが発生しても、天然ガスは連絡管9を通じてタンク3の上部に導かれ、最終的にはガス送出管15から系外に排出されるので、特にスクリーン7下部の圧力が異常に上昇することもなく、安全かつ安定的にNGHペレット2をガス化させることができる。
【0023】
図3は、本発明の第2実施形態としてのNGHガス化装置30の概略的構成を示す。図4は、図3中IV部を拡大した断面図であり、図5は、NGHガス化装置30の連絡管35の配置を示す平面図である。図1及び図2に示すNGHガス化装置1と同一の部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略し、第1実施形態としてのNGHガス化装置1と相違する点を中心に説明する。
【0024】
NGHガス化装置30は、図1に示すNGHガス化装置1と同様に、NGHをガス化し、天然ガスを送出する装置である。図1に示すNGHガス化装置1は、ペレット状のNGHを収容しこれをガス化させたけれども、このNGHガス化装置30は、ガス化を促進するためにNGHペレットを粉砕する装置を備え、NGHペレットを粉砕したNGH粉砕物31をガス化させる。NGHガス化装置30は、NGHペレットを粉砕したNGH粉砕物31を収容するタンク3、タンク3内に装着されNGH粉砕物31に温水を噴射するシャワーヘッド33、タンク3内を上下に仕切るように取付けられたスクリーン7、スクリーン7の下方とタンク3内の上部とを連絡する複数の連絡管35、連絡管35内に装着された加熱管50を備える。さらにタンク3内の複数の場所にNGH粉砕物31を供給可能なNGH供給装置37を備える。
【0025】
タンク3は、略円柱状の形状を有し壁面は断熱構造となっている。タンク3は、NGHペレットが粉砕されたNGH粉砕物31を収容し、NGH粉砕物31をガス化させ天然ガスを発生させる際の処理槽となる。タンク3の上部には、NGH粉砕物31を供給するためのNGH供給装置37、NGH粉砕物31がガス化し発生する天然ガスを送出するガス送出管15、タンク3内の圧力を検出するための圧力検出器(図示省略)、タンク3内の圧力が異常に上昇した場合にタンク3内の天然ガスを放出する安全弁(図示省略)が取付けられている。一方、タンク3の下部は、NGH粉砕物31をガス化させる際に発生する水を貯留する冷水プール21が設けられ、冷水プール21に貯留する冷水は、図示を省略した冷水送水ポンプを介して、系外の冷却器(図示省略)の冷却媒体として使用される。また冷水プール21の水位を制御する水位制御装置(図示省略)が設けられている。
【0026】
NGH供給装置37は、タンク3の外部に位置するNGH入口管39に接続するNGH粉砕機41、タンク3の外部に位置しNGH粉砕機41の下部に連結するNGH分配器43、NGH分配器43に接続し、タンク3内の所定の場所に粉砕したNGH粉砕物31を供給する複数のNGH供給管45を備える。NGH粉砕機41は、NGHのガス化を促進するためにNGH入口管39を通じて送られるNGHペレットを粉砕し、NGH分配器43に送る。NGH分配器43には、複数のNGH供給管45が連結し、粉砕されたNGH粉砕物31は、各NGH供給管45を通じてタンク3内に供給される。各NGH供給管45の先端は、板状の連絡管35が形成する区画47毎にNGH粉砕物31を供給可能なように配置されている。またNGH粉砕機41は、ガス送出管15と接続するガス抜きライン42を有し、粉砕の際に発生する天然ガスは、ガス抜きライン42及びガス送出管15を介して系外に送出又はタンク3内に送られる。ガス抜きライン42をガス送出管15に接続することで、タンク3に直接接続する場合に比べガス抜きライン42が凍結しにくくなる。各NGH供給管45は、内面をテフロン(登録商標)コーティング等で氷が着き難く剥がれ易くする及び/又は凍結防止用の電気ヒータを取付け、凍結防止対策を行うことが好ましい。NGH粉砕機41及びNGH分配器43なども同様である。
【0027】
シャワーヘッド33は、NGH供給管45の外径よりも大きい内径を有し、多数の噴射孔が穿設されている。もちろんシャワーヘッド33に市販の噴射ノズルを取付け、温水を噴射するようにしてもよい。シャワーヘッド33は、各NGH供給管45の先端部近傍に配設され、温水供給管48から送られる温水をNGH粉砕物31に向け吹掛ける。このシャワーヘッド33も、図1に示す温水噴射ノズル24と同様、温水を高速で噴射させる必要はなく、板状の連絡管35が形成する区画47に温水を均一に吹掛けることができればよい。使用可能な温水も図1に示す温水噴射ノズル24と同一である。またシャワーヘッド33及び温水供給管48には、図1に示す温水供給管22及び温水噴射ノズル24と同様に、凍結防止用の電気ヒータ(図示を省略)が装着されている。
【0028】
タンク3の中間部には、タンク3を上下に仕切るようにスクリーン7が取付けられている点は、図1に示すNGHガス化装置1と同一であるが、供給されるNGHはNGHペレットではなくNGH粉砕物31であるので、NGH粉砕物31の平均粒子径を考慮し、第1実施形態に示すスクリーン7と同様の考え方に基づき目開きの大きさ等を決定する。またタンク3の下部には、NGH粉砕物31をガス化させる際に発生する水を貯留する冷水プール21が設けられている点は、図1に示すNGHガス化装置1と同一であるので、説明を省略する。
【0029】
連絡管35は、スクリーン7の下方とタンク3内の上部とを連絡し、NGH粉砕物31のガス化に伴い発生する水をスクリーン7下方に流下させる一方、スクリーン7下方で発生した天然ガスをタンク3の上部に導くと言う機能は図1及び図2に示す連絡管9と同じであるが、形状が大きく異なる。本実施形態に示す連絡管35も金網からなり、下端がスクリーン7に固定され、内部に加熱管50を収容可能な空間部49を備えるが、一の連絡管35は板状の形状を有し、この板状の連絡管35が格子状に配置されている。このためスクリーン7上に連絡管35で仕切られた複数の区画47、本実施形態では24の方形の区画47が形成されている。連絡管35で仕切られた区画47の大きさは、タンク3の中央部が大きく、タンク3の内壁の周辺が小さくなるように連絡管35が配置されている。これは加熱管50に供給する加熱媒体をタンク3の中央部から供給し、タンク3の壁面方向に抜出すため、タンク内壁面55近傍の加熱管50に供給される加熱媒体の温度が低下することによる。このように連絡管35を配置することで、NGH粉砕物31を効率的にガス化させることができる。
【0030】
タンク3の中央部付近の連絡管35は、両側面が金網からなり、上部には、中央部にガス抜き用の孔51を有する傘状のプロテクタ53が取付けられている。プロテクタ53に代え、図1に示す連絡管9と同様、上部を金網としてもよい。タンク内壁面55近傍の連絡管35も上部には、中央部にガス抜き用の孔51を有する傘状のプロテクタ53が取付けられているが、タンク内壁面55と対向する面が板57であり、水及び天然ガスはこの面を通じて出入りすることができない。タンク内壁面55近傍の空間部59は、タンク内壁面55及び連絡管35とで仕切られた空間となっている。
【0031】
加熱管50は、図1に示す加熱管11と同様、連絡管35の内部の空間部49に設けられており、機能は図1に示す加熱管11と同一である。加熱管50は、連絡管35の形状に合わせ、スクリーン7に平行に折り返しながら配置されている。加熱管50は加熱媒体供給管61に接続し、加熱媒体はまずタンク3中央部の加熱管50に供給され中央部の加熱管50を加熱し、中央部の加熱管50を加熱した加熱媒体は、順次タンク内壁面55方向の加熱管50に移動し加熱管50を加熱し、複数の加熱媒体排出管63から排出される。このため中央部の加熱管50に供給される加熱媒体の温度が一番高く、タンク内壁面55に近づくほど加熱媒体の温度の低い。
【0032】
上記NGHガス化装置30を使用しNGH粉砕物31をガス化させるときは、NGH供給装置37からNGH粉砕物31を供給し、NGH粉砕物31に温水を吹掛け、同時に加熱管50を加熱させる。NGHガス化装置30は、図1及び図2に示すNGHガス化装置1に比較し、取付けられた加熱管50が多く、また、加熱管50と加熱管50との間に位置するNGH粉砕物31の量が少ないので、NGH粉砕物31をより効率的にガス化させることができる。連絡管35で仕切られ区画47毎にNGH供給管45が設けられているので、超音波などによりNGH粉砕物31の充填高さを検出可能なレベル計を装着することで、各区画47のNGH粉砕物31のガス化速度に応じてNGH粉砕物31を補給することもできる。また、タンク内壁面55近傍にはNGH粉砕物31は充填されず、この領域の空間部59は、板状体で囲まれているので、スクリーン7下方で発生する天然ガスをタンク3の上部に導くガス抜用連絡通路となり、これを通じて確実に天然ガスをタンク3の上部に導くことができる。なお、本実施形態では、NGHペレットを粉砕してタンク3に供給する例を示したけれども、NGHペレットを粉砕することなく、タンク3に供給してもよい。
【0033】
図6は、本発明の第3実施形態としてのNGHガス化装置70の概略的構成を示す。図7は、図6中VII部の拡大図である。図1から図5に示す第1実施形態としてのNGHガス化装置1、第2実施形態としてのNGHガス化装置30と同一の部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0034】
NGHガス化装置70は、図1に示すNGHガス化装置1、図3に示すNGHガス化装置30と同様に、NGHをガス化し、天然ガスを送出する装置である。NGHガス化装置70は、図3に示すNGHガス化装置30と同様にガス化を促進するためにNGHペレットを粉砕する装置を備え、NGHペレットを粉砕したNGH粉砕物31をガス化させる。NGHガス化装置70は、NGH粉砕物31を収容するタンク3、タンク3内に装着されNGH粉砕物31に温水を噴射するシャワーヘッド33、タンク3の下部とタンク3の上部とを連絡する複数の連絡管72、連絡管72内に装着された加熱管50を備える。さらにタンク3内の複数の場所にNGH粉砕物31を供給可能なNGH供給装置37を備える。NGHガス化装置70は、図3に示すNGHガス化装置30と構成が類似するものの、タンク3内に収容するNGH粉砕物31を支持するスクリーンの取付け要領が大きく異なる。さらに連絡管72の下部の構造も図3に示すNGHガス化装置30の連絡管35と異なる。
【0035】
連絡管72は、図3に示すNGHガス化装置30と同様、金網からなり、内部に加熱管50を収容可能な空間部49を備えるが、タンク3内にはタンク3を上下に仕切るスクリーンが設けられておらず、連絡管72は図示を省略した固定冶具を介してタンク3の中間部に固定されている。一の連絡管72が板状の形状を有し、この板状の連絡管72が格子状に配置されている点などは、図3から図5に示すNGHガス化装置30の連絡管35と同一であり、連絡管72の機能も、NGHガス化装置30の連絡管35と同一である。また以下の点も、NGHガス化装置30の連絡管35と同一である。タンク3の中央部付近の連絡管72は、両側面が金網からなり、上部には、中央部にガス抜き用の孔51を有する傘状のプロテクタ53が取付けられている。プロテクタ53に代え、図1に示す連絡管9と同様、上部を金網としてもよい。タンク内壁面55近傍の連絡管72も上部には、中央部にガス抜き用の孔51を有する傘状のプロテクタ53が取付けられているが、タンク内壁面55と対向する面が板57であり、水及び天然ガスはこの面を通じて出入りすることができない。タンク内壁面55近傍の空間部は、タンク内壁面55及び連絡管72とで仕切られた空間となっている。
【0036】
連絡管72の下部には、外部に向け傾斜した傾斜板74が取付けられている点がNGHガス化装置30の連絡管35と異なる。このため連絡管72で仕切られる一区画は、上方よりも下方が狭くなっている。4つの傾斜板74で形成された絞り部75を覆うように、傾斜板74と僅かな隙間を有した状態で、逆角錐台形状の受け体76が取付けられ、受け体76の底部にNGH粉砕物31を支持するためのスクリーン82が設けられている。このスクリーン82が図1及び図3に示すスクリーン7の役目を果たす。スクリーン82の目開きの大きさは、図3に示すNGHガス化装置30に使用するスクリーン7と同じ考え方に基づき設定する。
【0037】
受け体76の外壁78には、外壁78に接するように加熱管80が設けられ、この加熱管80は、連絡管72内の加熱管50と接続する。供給されるNGH粉砕物31は、受け体76の底部に設けられたスクリーン82上に堆積するので、図3に示すNGHガス化装置30よりもさらに加熱管の設置量が多く、より迅速にNGH粉砕物31をガス化させることができる。受け体76で加熱され発生する天然ガスは、絞り部75と受け体76との隙間を通して連絡管72に導かれ、連絡管72を通じてタンク3の上部に導かれる。なお、タンク内壁面55及び連絡管72とで仕切られた空間には、NGH粉砕物31を充填せず、ガス抜用連絡通路として使用するのでスクリーンを設ける必要はない。なお、本実施形態では、NGHペレットを粉砕してタンク3に供給する例を示したけれども、NGHペレットを粉砕することなく、タンク3に供給してもよい。
【0038】
以上、本実施形態では、NGHペレット及び粉砕したNGHを使用する例を示したけれども、本発明に利用可能なNGHは形状、大きさは特に限定されず固形状のNGHであればよい。さらにNGH以外のガスハイドレート、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、二酸化炭素、あるいはこれら混合物のガスハイドレートのガス化に本発明のガスハイドレートガス化装置を使用することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態としての天然ガスハイドレートガス化装置1の概略的構成を示す。
【図2】図1の天然ガスハイドレートガス化装置1の連絡管9の配置を示す平面図である。
【図3】本発明の第2実施形態としての天然ガスハイドレートガス化装置30の概略的構成を示す。
【図4】図3中IV部を拡大した断面図である。
【図5】図3の天然ガスハイドレートガス化装置30の連絡管35の配置を示す平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態としての天然ガスハイドレートガス化装置70の概略的構成を示す。
【図7】図6中VII部の拡大図である。
【符号の説明】
【0040】
1 天然ガスハイドレートガス化装置
2 天然ガスハイドレートペレット
3 タンク
5 温水噴射手段
7 スクリーン
9 連絡管
11 加熱管
13 天然ガスハイドレート供給管
15 ガス送出管
22 温水供給管
24 温水噴射ノズル
25 連絡管の空間部
30 天然ガスハイドレートガス化装置
31 天然ガスハイドレート粉砕物
33 シャワーヘッド
35 連絡管
37 天然ガスハイドレート供給装置
43 天然ガスハイドレート分配器
45 天然ガスハイドレート供給管
47 区画
49 連絡管の空間部
50 加熱管
55 タンク内壁面
57 板
59 空間部
70 天然ガスハイドレートガス化装置
72 連絡管
74 傾斜板
75 絞り部
76 受け体
78 受けの外壁
80 加熱管
82 スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形状のガスハイドレートをガス化させるガスハイドレートガス化装置であって、
固形状のガスハイドレートを収容可能なタンクと、
前記タンクの上部に設けられガスハイドレートがガス化したガスを送出するガス送出管と、
前記タンク内の上部に取付けられ、ガスハイドレートに温水を吹掛ける温水噴射手段と、
前記タンクを上下に仕切るように取付けられ、収容するガスハイドレートを支持する多孔状支持体と、
多孔体で形成され、前記多孔状支持体の下方と前記タンク内の上部とを連絡するガス及び水が流通可能な連絡通路を内部に有する連絡管と、
前記連絡管内部の連絡通路内に取付けられガスハイドレートを加熱する加熱管と、
を備えることを特徴とするガスハイドレートガス化装置。
【請求項2】
前記連絡管は板状の形状を有し、前記多孔状支持体上に複数の区画が形成されるように配置され、
さらにガスハイドレートを分配する分配器、前記分配器に接続し前記連絡管で仕切られた区画毎にガスハイドレートを供給するガスハイドレート供給管を備えるガスハイドレート供給装置を有し、
前記温水噴射手段は、前記各ガスハイドレート供給管の外周に配置されたシャワーヘッドを備えることを特徴とする請求項1に記載のガスハイドレートガス化装置。
【請求項3】
前記連絡管のうちタンク内壁面と対向する壁面のみ非多孔体とし、前記非多孔体とタンク内壁面とで囲まれた領域にはガスハイドレートを充填することなくガス抜用連絡通路とすることを特徴とする請求項2に記載のガスハイドレートガス化装置。
【請求項4】
固形状のガスハイドレートをガス化させるガスハイドレートガス化装置であって、
固形状のガスハイドレートを収容可能なタンクと、
前記タンクの上部に設けられガスハイドレートがガス化したガスを送出するガス送出管と、
多孔体で板状の形状を有し、タンク中間部が複数の区画に区分けされるように配置され、ガス及び水が流通可能な上下方向に伸びる連絡通路を内部に有する連絡管と、
前記連絡管内部の連絡通路内に取付けられガスハイドレートを加熱する加熱管と、
前記連絡管で仕切られた複数の区画において、一区画毎に下部に絞り部を設け、前記絞り部と僅かな隙間を有し前記絞り部を覆うように設けられた受け体と、
前記受け体の外壁面に接触するように設けられた加熱管と、
前記受け体の底部に設けられ収容するガスハイドレートを支持する多孔状支持体と、
ガスハイドレートを分配する分配器、前記分配器に接続し前記連絡管で仕切られた区画毎にガスハイドレートを供給するガスハイドレート供給管を備えるガスハイドレート供給装置と、
前記各ガスハイドレート供給管の外周に配置されたシャワーヘッドを備えるガスハイドレートに温水を吹掛ける温水噴射手段と、
を備えることを特徴とするガスハイドレートガス化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−215478(P2009−215478A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62112(P2008−62112)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】