説明

ガスハイドレートペレット製造装置

【課題】ブリケッティングマシーンを用いたガスハイドレートペレット製造装置において、製造後のペレットを連続的に排出して、ペレットの製造効率が低下しないガスハイドレートペレット製造装置を提供する
【解決手段】ポケット3の回転位置に同期して、ポケット3からペレット8を押し出す押出手段をロール1に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスハイドレートを圧縮成形してペレット状の成形物を製造するガスハイドレートペレット製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、天然ガス等(以下、「原料ガス」という。)の安全かつ経済的な輸送・貯蔵手段として、原料ガスを水和させて固体状態の水和物としたガスハイドレートを用いる方法が注目されている。
【0003】
一般にガスハイドレートは、原料ガスと原料水を低温・高圧下で反応させることにより製造されるが、このようにして得られるガスハイドレートは水分を含有するスラリー状となる。そのため、輸送及び貯蔵時のハンドリング性を向上させるため、スラリー状又はパウダー状(あるいは微粒のパウダー状)のガスハイドレートを圧縮成形してペレット状の成形物(以下、「ペレット」という。)に加工することが行われている。
【0004】
このペレットの製造には、図5に示すような、いわゆるブリケッティングロール方式のガスハイドレートペレット製造装置が用いられている。
【0005】
この製造装置は、外周面にペレットの成形型となる複数のポケット30を有する金属製の一対のロール31を回転させ、それらのロール31間にホッパ32とスクリューフィーダー33により連続的にガスハイドレート35を供給して、ポケット30内で圧縮成形することによりペレット36を製造するものである。(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0006】
このとき、ペレット36は貯蔵効率及び流動性の観点から、球状又はそれに近い形状に圧縮成形される。そのため、製造後のペレット36はポケット30から容易に抜け難い状態となり、製造後のペレット30がガスハイドレートペレット製造装置から連続的に排出されないため、ペレット製造効率が低下するという課題があった。
【非特許文献1】松尾、外6名、「NGHシステムのプロセス開発(第2報)−NGHによる天然ガス輸送システムを実証−」、三井造船技報、三井造船株式会社、2005年2月、第184号、p.38−45
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ペレットの製造効率が低下しない、ブリケッティングロール方式のガスハイドレートペレット製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の本発明は、外周面に複数の成形型をもつ回転する一対のロールと、前記一対のロール間にガスハイドレートを供給する供給手段とを備え、前記ガスハイドレートを前記成形型内で圧縮成形してペレットを製造するガスハイドレートペレット製造装置において、前記成形型の回転位置に同期して前記成形型内の前記ペレットを外部へ押し出す押出手段を備えることを特徴とするガスハイドレートペレット製造装置である。
【0009】
また、請求項2に記載の本発明は、前記ロールは略同心円状の中空形状を有し、前記押出手段は、前記成形型の底部から前記ロールの内面へ貫通する貫通孔と、前記貫通孔内を摺動自在で前記中空部へ向けて常時付勢され、前記中空部内に突出部を有する押出棒と、
前記内面の垂直下端付近に前記突出部よりも短い距離で近接する固定体とからなり、前記ロールの回転にともなって前記突出部が前記固定体の表面に当接することにより、前記押出棒が前記成形型に向けて摺動することを特徴とする請求項1に記載のガスハイドレートペレット製造装置である。
【0010】
なお、前記突出部が当接する前記固定体の表面は、放物線の形状を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブリケッティングマシーンを用いたガスハイドレートペレット製造装置において、成形型の回転位置に同期して成形型内のペレットを押し出すようにしたことにより、製造後のペレットを連続的に排出することができるので、ペレットの製造効率が低下しないガスハイドレートペレット製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係るガスハイドレートペレット製造装置について、図面を参照して説明する。
【0013】
本発明に係るガスハイドレートペレット製造装置の実施形態を図1に示す。図1は、ガスハイドレートペレット製造装置の構造を示す断面図である。
【0014】
このガスハイドレートペレット製造装置は、一対のロール1とガスハイドレート供給手段2から主に構成される。
【0015】
一対のロール1の外周面には、ペレット8の成形型であるポケット3が複数形成されており、互いに逆方向に回転する。
【0016】
ガスハイドレート供給手段2は、ロール1間にガスハイドレート4を連続的に供給するものであり、ホッパ5とスクリューフィーダー6から構成される。
【0017】
そして特徴的な構造として、上記のロール1にはポケット3の回転位置に同期してポケット3からペレット8を押し出す押出手段が設けられている。
【0018】
ロールの断面図を図2に示す。図2は、ロールの構造を示す径方向の断面図である。
ロール1には略同心円状の形状を有しており、押出手段は各ポケット3の底部からロール内面10へ貫通する貫通孔11と、その貫通孔11内を摺動可能な押出棒12と、ロール1内に設置された固定体13から構成される。
【0019】
この押出手段の詳細構造を図3に示す。図3は、図2におけるX部分の拡大図であり、図1と共通する部分には、同一の符号を付している。
【0020】
押出棒12は、ポケット3の底部から内面10へ略径方向に形成された貫通孔11内に摺動可能に保持されている。押出棒12のポケット3側の一端にはカサ状の押出部14が形成されており、その端面はポケット3の底面の一部を形成するように加工されている。また、押出棒12の他端は、内面10から突出する突出部15となっている。そして、押出棒12が貫通孔11に収納されている部分は、スプリング抑え16に当接するスプリング17により外囲されており、このスプリング17の弾性力により押出棒12はロール1の内側へ向けて常時付勢されている。
【0021】
固定体13は、その表面の少なくとも一部である押出面18がロール内面10の垂直下端付近に近接するようにして設置されている。押出面18の形状は、近接箇所を頂点とした滑らかな曲面であり、例えば曲率の大きい放物線の形状などが好ましい。なお、押出面18とロール内面10が近接する距離は、押出棒12の突出部15よりも小さくする必要がある。
【0022】
このような構造を有するガスハイドレートペレット製造装置の作用を図2〜図4に基づいて説明する。
【0023】
一対のロール1間に供給されたガスハイドレート4は、ポケット3内において位置AからBへ回転移動する間に圧縮成形されてペレット8となる(図2参照)。このとき、押出棒12は図4(a)のように、ロール1の内側へ向けて付勢された状態になっている。
【0024】
次に位置Cまで回転移動する途中で、押出棒12の突出部15が固定体13の押出面18に当接する。そして、そのままの状態でロール1の位置Dに向かって回転移動すると突出部15は押出面18に沿って動き、ロール内面10と押出面18の間が徐々に狭くなるため押出棒12はポケット3へ向けて押し出され、図4(b)のようにスプリング17が縮み、押出部14がポケット3内に突き出て、ポケット3に付着しているペレット8がポケット外へ押し出される。
【0025】
そして、続いて位置Eに向かって回転移動すると、押出棒12の突出部15が押出面18から離れ、スプリング17の復元力により押出棒12が図4(a)の状態に戻るため、ポケット3内で新たにペレット8の製造を行うことができる。
【0026】
また、以上の説明から分かるように、固定体13の設置位置及び押出面18の形状を変えることにより、ポケット3の回転位置とペレット8の排出位置を適宜同期させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るガスハイドレートペレット製造装置を示す断面図である。
【図2】ロールの構造を示す断面図である。
【図3】図2におけるX部分の拡大図である。
【図4】ペレットの押圧手段の作用を説明する断面図であり、(a)は通常の状態を示し、(b)はペレットを押し出す状態を示す。
【図5】従来のガスハイドレートペレット製造装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ロール 2 ガスハイドレート供給手段 3 ポケット
4 ガスハイドレート 5 ホッパ 6 スクリューフィーダー
7 電動機 8 ペレット 10 ロール内面
11 貫通孔 12 押出棒 13 固定体
14 押出部 15 突出部 16 スプリング抑え
17 スプリング 18 押出面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に複数の成形型をもつ回転する一対のロールと、前記一対のロール間にガスハイドレートを供給する供給手段とを備え、前記ガスハイドレートを前記成形型内で圧縮成形してペレットを製造するガスハイドレートペレット製造装置において、
前記成形型の回転位置に同期して前記成形型内の前記ペレットを外部へ押し出す押出手段を備えることを特徴とするガスハイドレートペレット製造装置。
【請求項2】
前記ロールは略同心円状の中空形状を有し、前記押出手段は、前記成形型の底部から前記ロールの内面へ貫通する貫通孔と、前記貫通孔内を摺動自在で前記中空部へ向けて常時付勢され、前記中空部内に突出部を有する押出棒と、前記ロールの内面の垂直下端付近に前記突出部よりも短い距離で近接する固定体とからなり、
前記ロールの回転にともなって前記突出部が前記固定体の表面に当接することにより、前記押出棒が前記成形型に向けて摺動することを特徴とする請求項1に記載のガスハイドレートペレット製造装置。
【請求項3】
前記突出部が当接する前記固定体の表面は、放物線の形状を有することを特徴とする請求項2に記載のガスハイドレートペレット製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−238849(P2007−238849A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65590(P2006−65590)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】