説明

ガスハイドレート粉末のローラ型成形装置

【課題】 原料ガスと水とを水和反応させて製造される粉末状のガスハイドレート粉末を連続的かつ円滑に圧縮成形する装置を提供する。
【解決手段】 成形装置Aは、ガスハイドレート粉末nを収容するホッパー室5と、前記ホッパー室5の開口部5aの下部に配置された一対の圧縮ローラ6a,6bと、前記ホッパー室5内のガスハイドレート粉末nを前記圧縮ローラ6a,6bに供給する送出し装置12から構成されており、前記ホッパー室5の少なくとも一面に加熱手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスハイドレート粉末製造装置における成形装置、より詳しくは、粉末状のガスハイドレート粉末を圧縮成形する成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンなエネルギー源として、メタンやプロパン等を主成分とする天然ガスが注目されている。そして、このような天然ガスの輸送や貯蔵のためにこれを液化して液化天然ガス(LNG)とすることが行われている。しかしながら、このLNGによるガスの輸送および貯蔵には極低温状態(−162℃以下)が必要であり、そのため輸送装置や貯蔵装置が高価なものになっている。
【0003】
かかることから、原料ガスと水とを水和反応させてガスハイドレート粉末を製造し、このガスハイドレート粉末の自己保存性を奏する温度(例えば、−20℃程度)に保持しながら輸送し、また、貯蔵することが提案されている。
【0004】
このガスハイドレート粉末は、所定の圧力と温度条件下(例えば、4〜6MPa、0〜5℃)で天然ガス等と水とを接触させることにより製造され、このガスハイドレート粉末は、粉雪またはかき氷状の所謂粉末状である。
【0005】
ところで、このような粉末状のガスハイドレート粉末は、貯蔵タンクへの充填率(ガスハイドレート粉末の体積/容器の体積)が小さいために、その輸送または貯蔵には、大きな容積を有するタンク等が必要になるばかりでなく、粉末状であるから表面積が大きくなってしまい、天然ガスと水とに分解してしまう分解速度が非常に速いという問題がある。また、大量に貯蔵すると下層のものが岩盤状に硬化してしまい、取出しが困難になるという問題がある。
【0006】
かかることから、本発明者は、この粉末状のガスハイドレート粉末を成形装置により圧縮成形して略球形状等の成形品となし、このガスハイドレート粉末成形品を輸送し、または貯蔵することを先に提案している(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
この成形装置Fは、図3に示す如く、ホッパー室30に供給されたガスハイドレート粉末nを、対向するポケット34(成形凹部)を有する一対の成形ローラ33a,33bに供給し、この成形ローラ33a,33bの回転と共に前記ポケット34内に充填されたガスハイドレート粉末nを圧縮して成形するものである。そして、前記ポケット34内にガスハイドレート粉末nを充填するためのスクリュー型押込み装置31が前記ホッパー室30に配置され、ガスハイドレート粉末の自重に加えて所定の圧力を付与するようになっている。
【0008】
ところで、本発明者の知見によれば、前記したような成形装置Fによれば、粉雪状のガスハイドレート粉末nの略生成条件下(例えば、4〜6MPa、2〜5℃程度)において圧縮成形すると、この粉末nから水が染み出すということが判明した。そして、このガスハイドレート粉末nは、水よりも比重が小さいために、染み出した水がホッパー室30内に溜まると浮き上がるという性質があることと、成形圧力を高圧にすると染み出す水の量が増加するということも判明した。
【0009】
前記ガスハイドレート粉末nを原料として成形装置Fで圧縮成形を行うと、運転初期は染み出した水が溜っていないので順調にペレットpの製造ができるが、両ローラ34a,34bの間隙には圧密状態のガスハイドレートが充填されているので、該両ローラ34a,34bにより絞り出された水(絞水)は、ローラ34a,34bの間隙より排水されることなくホッパー室30内に溜まっていく。
【0010】
かかる状態で運転を続けると、ホッパー室30内の水位が上昇していくこととなり、これに伴ってガスハイドレート粉末に浮力が生じ、送出し装置31で押込まれるガスハイドレート粉末nと、浮上しようとするガスハイドレート粉末nとが該装置31のスクリューの先端付近に次々と滞留するようになり、これが塊となってしまう。
【0011】
そして、送出し装置31より供給された粉末nが、ローラ6a,6bの軸方向に延長する断面略楔形の塊を成長させ、ある程度の大きさに達した塊bとなってホッパー室30の開口部35内や成形ローラ33a,33b間に栓の如く作用してガスハイドレート粉末nが成形ローラ33a,33bに供給できなくなり、ガスハイドレート粉末の成形体p(ペレット)が製造できなくなるという問題があった。
【0012】
また、常圧(大気圧)において前記成形装置Fを運転する際も、ポケット34内に確実に充填するために押込み装置31の加圧力を上昇させると、スクリュー先端付近で粉末n同士が固着して塊を生じ、閉止栓として作用するという同様の問題があった。
【0013】
このように塊bを生ずると、成形装置Fの運転を中断し、このガスハイドレート粉末nの塊bを除去する必要があり、装置Fの分解・組立・調整といった作業をしなくてはならず、結果、ガスハイドレート粉末製造装置の運転効率を著しく損なうこととなる。特に、この成形装置Fがガスハイドレート粉末の略生成条件の高圧雰囲気(4〜6MPa)下でガスハイドレート粉末成形品pの製造を行っている場合は、装置全体が200mm以上の厚みのある堅牢な耐圧容器に収容されている関係で、ガスハイドレート粉末の塊bの除去作業は極めて困難であるという問題があり、前記塊bが溶解するまでの長時間(例えば、24時間)成形装置Bは運転を停止することとなり、ついには原料であるガスハイドレート粉末nの製造装置の生産量を極端に低下又は生産を停止しなければならないという問題があった。
【特許文献1】特開2002−220353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、圧縮成形ローラ間に生ずるガスハイドレート粉末自体の塊による閉塞栓を迅速に融解するローラ型成形機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するための本発明に係るローラ型成形装置は、
1)原料ガスと水とを水和反応させて粉末状のガスハイドレート粉末nを生成し、該ガスハイドレート粉末nを略球形等に圧縮成形する圧縮成形機において、前記成形装置は、前記ガスハイドレート粉末nを収容するホッパー室5と、前記ホッパー室5の開口部5aの下部に配置された一対の圧縮ローラ6a,6bと、前記ホッパー室5内のガスハイドレート粉末nを前記圧縮ローラ6a,6bに供給する送出し装置12から構成されており、前記ホッパー室5の少なくとも一面に加熱手段を設けたことを特徴とする。
2)前記加熱手段は、前記ホッパー室5の少なくとも一面の下部より前記一対の圧縮ローラ6a,6bへ温水h1を供給すると共に、他面の下部より排水することを特徴とする。
3)前記ホッパー室5の少なくとも一面の下部に前記温水h1又は水の噴出ノズル3を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る成形装置は、圧縮成形ローラ間に生ずる略楔形状のガスハイドレート粉末の塊(閉塞栓)を温水で直接的に融解させているので、融解速度が速い。従って、成形装置の詰まりによるペレットの製造中断時間を短縮し、特に、ガスハイドレート粉末の略生成条件下の高圧においてペレットを製造する際の閉塞解除操作が著しく改善され、ガスハイドレートペレットの生産量が低下するのを防止する。
【0017】
さらに、前記温水を噴出するようにしたことで、前記塊に集中的に温水が高圧で衝突するので、一層効率よく塊を融解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図1から図2を参照して本発明に係る成形装置Aの実施形態を説明する。
本発明に係る成形装置Aは、図1並びに図2に示す如く、ガスハイドレート粉末nを収容するホッパー室5と、前記ホッパー室5の開口部5aの下部に配置された一対の圧縮ローラ6a,6bと、前記ホッパー室5内のガスハイドレート粉末nを前記圧縮ローラ6a,6bに供給する送出し装置12から構成されており、前記ホッパー室5は、ローラ6a,6bの側面に対向して配置される側板1a,1bと、前記ローラ6aとローラ6bとの間隙に向かって傾斜の形成され対向して配置されるフィーダベース10a,10bとからなり、前記ホッパー室5内にはガスハイドレート粉末nを前記圧縮ローラ6a,6bに供給するスクリュー型の押込み装置12が配置されている。
【0019】
そして、前記ホッパー室5の側板1aの下部より前記一対の圧縮ローラ6a,6bへ温水h1を供給すると共に、他方の側板1bの下部より排水するようになっている。さらに、前記側板1aの下部に前記温水を噴出するノズル3が設けてある。
【0020】
前記温水h1は、前記配水管4より排出されるガスハイドレート粉末の絞水h3や、ガスハイドレート粉末製造装置における未反応水等、またはイオン交換水や純水等の水を、温調装置並びに移送ポンプと貯水タンクと熱交換器からなる恒温槽(不図示)で所定の温度(例えば、60〜80℃の範囲)に保持するようになっており、熱媒体配管13を介して前記ホッパー室5に供給し、かつ、その供給した温水及び前記絞水h3を配水管4を介して前記恒温槽に還流するようになっている。
【0021】
また、場合によって前記側板1aの熱媒体管路2に冷却水(例えば、1℃程度の純水等)を流通させ、側板1a並びにローラ6a,6bを冷却することができるようになっている。
【0022】
このように構成されたガスハイドレート粉末nの圧縮成形装置Aは、ガスハイドレート粉末の略生成条件(例えば、5MPa、3℃程度)下において、図示しないガスハイドレート粉末の製造装置から供給されるガスハイドレート粉末nを一旦ホッパー室5内に保持し、スクリュー型の押込み装置12の作用によりホッパー室5の開口部5aの下部に配置された一対の成形ローラ6a,6bに供給し、該ローラ6a,6bに形成されたポケット34内に前記ガスハイドレート粉末nが確実に充填され、前記ローラ6a,6bの回転と共に圧縮されてペレットpが製造される。
【0023】
前記ローラ6a,6bによる圧縮部分では、ガスハイドレート粉末n中の水分(未反応水)が絞り出されるようして染み出てくることとなる。この絞水h3は、両ローラ6a,6bの成形間隙にガスハイドレートが圧密状態であるので、この間隙から外部に排水されないが、ホッパー室5の側板1bの下部に設けた配水管4を介して常時排水される。
【0024】
ところで、この装置Aを用いてペレットpを製造している際に、押込み装置12の押圧力や原料であるガスハイドレート粉末nの性状等により両ローラ6a,6b間及びホッパー室5の開口部5aに前述の略楔形状の塊b(閉塞栓)を生ずることがある。
【0025】
このような際に前記恒温槽より温水h1(例えば、60℃)を、側板1aの熱媒体管路2を介してホッパー室5内に供給する。
【0026】
この温水h1の供給量や温度は、ホッパー室内の大きさと成形ローラの軸方向の長さ、供給されるガスハイドレート粉末の温度等により、適宜調節するのが好ましい。
【0027】
そして、温水h1を供給されたガスハイドレート粉末の塊による閉塞栓bは、この温水h1の熱を受熱してガス(メタン、プロパン等の天然ガス)を放出しながら短時間(例えば、3〜6分)で融解(分解)する。そして、閉塞栓bに熱を付与した温水h1は排水h2として配水管4を介して排水される。
【0028】
前記発生したガスは、ガス回収管路を介してガスハイドレート粉末製造装置等の原料ガスとして再利用される。
【0029】
本発明に係る成形装置Aにより、成形装置のホッパー室5内に生ずる略楔形状の塊(閉塞栓)を除去する操作にかかる負担が著しく軽減し、かつ、その除去にかかる時間が数時間から数分にまで短縮される。
【0030】
なお、本実施形態ではホッパー室5内に温水を供給するものについて説明したが、ノズル3によって塊bに高圧の噴流を衝突させているので、冷水(例えば、1〜4℃程度)を用いてもよい。
【0031】
また、ホッパー室5の側板1a,1bの下部に複数の可動ノズルを設け、所定の箇所に集中的に高圧の噴流を衝突させることができる。この場合は、さらに効果的に、塊bを溶解させることができる。
【0032】
さらにまた、配水管4のホッパー室5内側の開口部にガスハイドレート粉末が詰まらないように、この管路の設けてある側板1b内の管路周囲に前記温水を流通させる管路を設け、配水管4内に粉末が詰まらないようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る成形装置の一実施態様の概略構成図である。(a)は側面図、(b)は上面図である。
【図2】図1の斜視図である。
【図3】従来の成形装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0034】
A 成形装置
h1 温水
h2 排水
h3 絞水
1、1a,1b 側板
2 熱媒体管路
3 噴出ノズル
4 排水管
5 ホッパー室
6a,6b 成形ローラ
7 ポケット
9a,9b ローラ軸
10a,10b フィーダベース
10c,10d 傾斜面
12 押込み装置
13 熱媒体配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスと水とを水和反応させて粉末状のガスハイドレート粉末を生成し、該ガスハイドレート粉末を略球形等に圧縮成形する圧縮成形機において、
前記成形装置は、前記ガスハイドレート粉末を収容するホッパー室と、前記ホッパー室の開口部の下部に配置された一対の圧縮ローラと、前記ホッパー室内のガスハイドレート粉末を前記圧縮ローラに供給する送出し装置から構成されており、前記ホッパー室の少なくとも一面に加熱手段を設けたことを特徴とする、ローラ型成形装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記ホッパー室の少なくとも一面の下部より前記一対の圧縮ローラへ温水を供給すると共に、他面の下部より排水することを特徴とする、請求項1記載のローラ型圧縮成形装置。
【請求項3】
前記ホッパー室の少なくとも一面の下部に前記温水又は水の噴出ノズルを設けたことを特徴とする、請求項2記載のローラ型圧縮成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−277098(P2007−277098A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101413(P2006−101413)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】