説明

ガスバリアフィルムおよびそれを用いた電子機器デバイス

【課題】水蒸気バリア性、耐熱性及び耐湿性が優れ、これら特性が長期に維持可能なガスバリアフィルムを提供すること。
【解決手段】プラスチックフィルム基材の一方の面に、ポリシラザン系化合物を含有する組成物にVUV光照射して形成された第1のガスバリア層を有し、前記プラスチックフィルム基材の他方の面に、第2のガスバリア層を有することを特徴とするガスバリアフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水蒸気透過率の低いガスバリアフィルムおよびそれを用いた電子機器デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックフィルム基材の表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物薄膜を形成したガスバリア性のフィルムは、水蒸気や酸素など各種ガスの遮断を必要とする物品の包装や、食品、工業用品および医薬品等の変質を防止するための包装用途として広く用いられてきた。
【0003】
近年、液晶表示素子や有機EL素子等の分野においては、重くて割れやすいガラス基材に代わって、プラスチックフィルム基材が採用されつつある。プラスチックフィルム基材はロールトゥロール(Roll to Roll)方式に適用可能であることから、コストの点でも有利である。しかし、プラスチックフィルム基材はガラス基板と比較して水蒸気バリア性に劣るという問題と環境温度による寸度変動が大きく劣るという問題がある。
【0004】
このため、プラスチックフィルム基材を液晶表示素子に用いると、水蒸気が液晶セル内に侵入し、表示欠陥が発生する。
【0005】
この問題を解決するために、プラスチックフィルム基材上に水蒸気バリア層を形成したガスバリアフィルムを用いることが知られている。ガスバリアフィルムとしては、プラスチックフィルム基材上に酸化珪素を蒸着したもの(例えば、特許文献1参照)や、酸化アルミニウムを蒸着したもの(例えば、特許文献2参照)が知られており、これらはいずれも水蒸気透過能が1g/m/day程度となるバリア性を有する。
【0006】
しかし、太陽電池用等に用いるための基板にはさらに高い水蒸気バリア性が要求される。かかる要求に応えるための手段として、有機層と無機層の積層体をガスバリア層とすることにより、水蒸気透過率として0.1g/m/day未満を実現する技術(例えば、特許文献3〜5参照)や、さらに有機無機ガスバリア層(バリアスタック)を複数積層することで優れたガスバリア性を実現する技術(特許文献6)が報告されている。しかしながら、ここで開示された有機無機積層型のガスバリアフィルムは、ガスバリア性が必ずしも十分ではない。
【0007】
また、片面のみにガスバリア層を設けた場合、使用条件によるプラスチックフィルムの寸度変動によりガスバリア層の破壊が起こりバリア性能の劣化が起こる。この現象の改善のため両面にバリアを設置することでプラスチックフィルム基材の変動を抑えることが考えられるが、蒸着、CVDで形成されたガスバリア層は、改善が不十分であった。蒸着、CVDでの形成以外の方法として、特許文献7には片面側にポリシラザンをエキシマVUV光にてガラス化して、ガスバリア層を形成する技術が知られている。しかしこの技術も改善が不十分であり、過酷な環境条件下でも、高いガスバリア性を有するガスバリアフィルムが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭53−12953号公報
【特許文献2】特開昭58−217344号公報
【特許文献3】特開2003−335880号公報
【特許文献4】特開2003−335820号公報
【特許文献5】特開2003−327718号公報
【特許文献6】米国特許第6,413,645号明細書
【特許文献7】特開2009−255040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、水蒸気バリア性、耐熱性及び耐湿性が優れ、これら特性が長期に維持可能なガスバリアフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.プラスチックフィルム基材の一方の面に、ポリシラザン系化合物を含有する組成物にVUV光照射して形成された第1のガスバリア層を有し、前記プラスチックフィルム基材の他方の面に、第2のガスバリア層を有することを特徴とするガスバリアフィルム。
【0012】
2.前記プラスチックフィルム基材と前記第1ガスバリア層間、または前記プラスチックフィルム基材と第2ガスバリア層間の少なくとも一方に下地層を設けていることを特徴とする前記1に記載のガスバリアフィルム。
【0013】
3.前記第2のガスバリア層はポリシラザン系化合物を含有する組成物にVUV光照射して形成されたガスバリア層であることを特徴とする前記1または2に記載のガスバリアフィルム。
【0014】
4.前記一方の面に前記第1ガスバリア層が、前記他方の面に第2のガスバリア層がそれぞれ複数形成されていることを特徴とする前記1から3のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
【0015】
5.前記1から4のいずれか一項に記載のガスバリアフィルムを設けたことを特徴とする電子機器デバイス。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、高い水蒸気バリア性を示すと共に耐熱性、耐湿性の優れ、さらにそれら特性を長期に維持したガスバリアフィルムを提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、高い水蒸気バリア性を示すと共に耐熱性、耐湿性に優れ、さらにそれら特性を長期に維持したガスバリアフィルムを得るにいたった。この原理は明らかではないが、次のように考えている。プラスチックフィルム基材の一方の面のみに、ポリシラザン系化合物を含有する組成物にVUV光照射して形成されたガスバリア層を設けたガスバリアフィルムにおいては、基材を中心にしてバリア層を設けた側からのガスバリア性は当然にして得られる。バリア層を設けていない側では、バリアフィルムの構成面から基材を経由して当該バリア層まで、ガスバリア性が低い状態で存在する。ポリシラザン系化合物を含有する組成物にVUV光照射して形成されたガスバリア層の基材側部分では、例えば十分なVUV光が照射されていなかったり、不純物や他の成分の存在により、支持体を通過したガス成分の影響を受けて、変質やガスバリア層内にガスの通過経路を形成してしまう恐れがあると考えられた。また、これらの要因に加えて使用条件によるプラスチックフィルム基材の変質や寸度変動により、基材に近い側からガスバリア層の破壊が起こった場合には、バリア性能の劣化が進むと思われた。これらの現象は、例えば、蒸着バリアを片面に設けたバリアフィルムでは、問題となっておらず、ポリシラザン系化合物由来のガスバリアフィルム固有の問題であると思われた。この改善のため、鋭意検討した結果、ポリシラザン系化合物を含有する組成物にVUV光照射して形成されたガスバリア層を設けた基材の面とは反対側の面にさらにガスバリア層を設けることによって、高い水蒸気バリア性を示すと共に耐熱性、耐湿性の優れたガスバリアフィルムが得られることを見出し、本発明に至った次第である。
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0019】
〔ガスバリアフィルムの層構成〕
本発明のガスバリアフィルムは、プラスチックフィルム基材の一方の面に第1のガスバリア層を有しており、他方の面に第2のガスバリア層を有している。第1のガスバリア層はポリシラザン系化合物を含有する組成物を基材上に付与し、VUV光を照射して、得られる。第1のガスバリア層は多少の有機物が含まれることはあるが、実質的もしくは完全に無機ガスバリア層である。この第1のガスバリア層は、酸化ケイ素が主体の無機層として構成される。
【0020】
本発明のガスバリアフィルムを構成する第1及び第2のガスバリア層は、それぞれ形成された側に複数層形成してよい。また、複数層形成する場合、それぞれのガスバリア層間に中間層を設けても良い。両面に設ける2つのガスバリア層が同一の構成を有するものであっても、異なる構成を有するものであってもよい。
【0021】
また必要に応じ、後述する下地層、アンカーコート層、ブリードアウト防止層や、さらに反射層等の機能層を設けることができる。
【0022】
以下において、ガスバリアフィルムを構成するプラスチックフィルム基材と各層について詳しく説明する。
【0023】
(プラスチックフィルム基材)
本発明で用いられるプラスチックフィルム基材について説明する。
【0024】
プラスチックフィルム基材(支持体ともいう)は、後述のガスバリア性を有するガスバリア層を保持することができる有機材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
【0025】
例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(登録商標)(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられ、また、光学的透明性、耐熱性、無機層、ガスバリア層との密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムが好ましく用いることができる。支持体の厚みは5〜500μm程度が好ましく、更に好ましくは25〜250μmである。
【0026】
また、本発明に係るプラスチックフィルム基材は透明であることが好ましい。支持体が透明であり、支持体上に形成する層も透明であることにより、透明な太陽電池用バックシートとすることが可能となるため、太陽電池素子等の透明基板とすることも可能となるからである。
【0027】
また、上記に挙げた樹脂等を用いた支持体は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
【0028】
本発明に用いられる支持体は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の支持体を製造することができる。また、未延伸の支持体を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、支持体の流れ(縦軸)方向、または支持体の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸支持体を製造することができる。この場合の延伸倍率は、支持体の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0029】
また、本発明に係るプラスチック基材においてはガスバリア層を形成する前にコロナ処理してもよい。
【0030】
さらに、本発明に係る支持体表面には、ガスバリア層や下地層との密着性の向上を目的としてアンカーコート剤層を形成してもよい。このアンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を、1または2種以上併せて使用することができる。これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により支持体上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0031】
(下地層)
本発明において、突起等が存在するプラスチックフィルム基材の粗面を平坦化し、あるいは、プラスチックフィルム基材に存在する突起により、基材上に設けた層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化する機能を有す下地層を片面あるいは両面に設けていることが好ましい。このような下地層は、基本的には感光性樹脂を硬化させて形成することが好ましい。
【0032】
下地層に用いられる感光性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
【0033】
光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトリキエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、および、上記のアクリレートをメタクリレートに換えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。上記の反応性モノマーは、1種または2種以上の混合物として、あるいは、その他の化合物との混合物として使用することができる。
【0034】
感光性樹脂の組成物は光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−プロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられ、これらの光重合開始剤を1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0035】
下地層の形成方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
【0036】
感光性樹脂を溶媒に溶解または分散させた塗布液を用いて下地層を形成する際に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
【0037】
下地層の平滑性は、JIS B 0601で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。この範囲の下限よりも値が大きい場合には、後述のケイ素化合物を塗布する段階で、ワイヤーバー、ワイヤレスバーなどの塗布方式で、下地層表面に塗工手段が接触する場合に、塗布性が損なわれることがなくて好ましい。また、この範囲の上限よりも小さい場合には、ケイ素化合物を塗布した後の、凹凸を平滑化することができる観点から好ましい。
【0038】
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。例えば原子間力顕微鏡(AFM):Digital Instruments社製DI3100等の測定器で測定することができる。
【0039】
〈下地層への添加剤〉
下地層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、下地層の積層位置に関係なく、いずれの下地層においても、成膜性向上および膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
【0040】
好ましい態様のひとつは、前述の感光性樹脂中に表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」ともいう)を含むものである。ここで光重合性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基などを挙げることができる。また感光性樹脂は、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含むものであってもよい。また感光性樹脂としては、このような反応性シリカ粒子や重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物に適宜汎用の希釈溶剤を混合することによって固形分を調整したものを用いることができる。
【0041】
ここで反応性シリカ粒子の平均粒子径としては、0.001〜0.1μmの平均粒子径であることが好ましい。平均粒子径をこのような範囲にすることにより、後述する平均粒子径1〜10μmの無機粒子からなるマット剤と組合せて用いることによって、防眩性と解像性とをバランス良く満たす光学特性と、ハードコート性とを兼ね備えた下地層を形成し易くなる。尚、このような効果をより得易くする観点からは、更に平均粒子径として0.001〜0.01μmのものを用いることがより好ましい。本発明に用いられる下地層中には、上述の様な無機粒子を質量比として20%以上60%以下含有することが好ましい。20%以上添加することで、ガスバリア層と下地層との密着性が向上する。また60%以下であると、フィルムの湾曲や加熱処理を行った場合のクラック発生の抑制や、太陽電池用バックシートの透明性や屈折率などの光学的物性への影響の抑制の観点から好ましい。
【0042】
本発明では、重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。
【0043】
加水分解性シリル基としては、例えば、アルコキシリル基、アセトキシリル基等のカルボキシリレートシリル基、クロシリル基等のハロゲン化シリル基、アミノシリル基、オキシムシリル基、ヒドリドシリル基等が挙げられる。
【0044】
重合性不飽和基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニイル基、シンナモイル基、マレート基、アクリルアミド基等が挙げられる。
【0045】
本発明における下地層の厚みとしては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより、下地層を有するフィルムとしての平滑性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、下地層をプラスチックフィルム基材の一方の面にのみ設けた場合におけるフィルムのカールを抑え易くすることができるようになる。
【0046】
(ブリードアウト防止層)
ブリードアウト防止層は、下地層を有するプラスチックフィルム基材を加熱した際に、プラスチックフィルム基材中から未反応のオリゴマーなどが表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で、下地層を有する支持体の反対面に設けられる。
【0047】
ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に下地層と同じ構成をとっても構わない。
【0048】
ブリードアウト防止層に含ませることが可能な、ハードコート剤としての重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、あるいは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
【0049】
ここで多価不飽和有機化合物としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
また単価不飽和有機化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
その他の添加剤として、マット剤を含有しても良い。マット剤としては、平均粒子径が0.1〜5μm程度の無機粒子が好ましい。
【0052】
このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種又は2種以上を併せて使用することができる。
【0053】
ここで無機粒子からなるマット剤は、ハードコート剤の固形分100質量部に対して2質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは16質量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
【0054】
また本発明のブリードアウト防止層には、ハードコート剤及びマット剤の他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
【0055】
このような熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、メタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0056】
また熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
【0057】
また電離放射線硬化性樹脂としては、光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーなどの1種又は2種以上を混合した電離放射線硬化塗料に電離放射線(紫外線又は電子線)を照射することで硬化するものを使用することができる。ここで光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート等が使用できる。また光重合性モノマーとしては、上記に記載した多価不飽和有機化合物等が使用できる。
【0058】
また光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾインベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパン、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。
【0059】
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、マット剤、及び必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を支持体フィルム表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。尚、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
【0060】
本発明におけるブリードアウト防止層の厚みとしては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより、フィルムとしての耐熱性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、下地層をプラスチックフィルム基材の一方の面に設けた場合におけるカールを抑え易くすることができるようになる。
【0061】
(ガスバリア層)
〈第1のガスバリア層〉
本発明の第1のガスバリア層はポリシラザン系化合物を塗布し硬化させた酸化ケイ素を主体とする無機系の層である。第1のガスバリア層は、ポリシラザン系化合物を溶剤に溶解させてコーティング用組成物を調製し、これを塗布後、VUV光照射で改質処理を施すことにより硬化させて得られる。ポリシラザン系化合物は、クラリアントジャパン(株)製ALCEDAR COATなどの調製された市販品を使用してもよく、適宜、溶剤で希釈して用いてもよい。
【0062】
本発明の第1のガスバリア層の膜密度は、ポリシラザン系化合物の性質から、熱反応、光反応、触媒による反応速度加速等の条件を制御することで調整する。第1のガスバリア層の膜密度は1.4(g/cm)程度であることが望ましい。
【0063】
ポリシラザン系化合物の硬化は、ポリシラザン骨格から三次元SiO網状構造への酸化的転化をVUV光子によって直接開始することによって、単一の段階において非常に短い時間で成功裏にこの転化が行われる。この転化プロセスの機序は、VUV光子の浸透深さの範囲において、Si−N結合が切断されそして酸素及び水蒸気の存在下において層の転化が起こる程に強く−SiH−NH−構成要素がVUV光子の吸収によって励起されるということで説明することができる。
【0064】
本発明においてVUV光とは紫外線の中で波長の短い100−260nmの領域の電磁波をいう。好適な放射線源は、約172nmに最大放射を有するエキシマラジエータ、約185nmに輝線を有する低圧水銀蒸気ランプ、並びに230nm以下の波長成分を有する中圧及び高圧水銀蒸気ランプ、及び約222nmに最大放射を有するエキシマランプである。波長100−200nmのVUV光が実用的には好ましく用いられる。
【0065】
180nm以下の波長の放射線成分を有する放射線源、例えば約172nmに最大放射を有するXeエキシマラジエータを使用すると、酸素及び/または水蒸気の存在下において、上記の波長範囲におけるこれらのガスの高い吸光係数の故に光分解によってオゾン並びに酸素ラジカル及びヒドロキシルラジカルが非常に効率よく生じ、これらがポリシラザン層の酸化を促進する。しかし、両機序、すなわちSi−N結合の解裂と、オゾン、酸素ラジカル及びヒドロキシルラジカルの作用は、ポリシラザン層の表面上にもVUV放射線が到達して初めて起こり得る。
【0066】
それゆえ、層表面上にVUV放射線を出来る限り高い線量で適用するためには、場合によってはVUV処理経路を窒素で置換し、そこに酸素及び水蒸気を調整可能な様に供給することによって、上記放射線のパス長の酸素及び水蒸気濃度を相応して目的通りに減少することが上記波長範囲には必要である。
【0067】
ポリシラザン系化合物を含有するコーティング用組成物の塗布方法は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法などの一般的な溶液塗布法を用いることができる。
【0068】
本発明に係る第1のガスバリア層はVUV光照射で改質処理を施すことにより硬化させて得られるが、熱、あるいは湿熱雰囲気下、VUV光照射で改質処理しても良い。また、加熱処理あるいは湿熱処理とVUV光照射を併用して硬化することもできる。例えば、後述するように加熱処理あるいは湿熱処理したあとにVUV光照射することによって硬化することもできる。
【0069】
ポリシラザン系化合物の塗布後、加熱処理をすることにより硬化したシリカ膜(無機層)が得られるが、加熱処理の温度は120℃以下であることが好ましい。加熱処理を120℃以下で加熱処理を行うと、プラスチックフィルム基材が変形したり、その強度が劣化したりするなどの防止の観点から好ましい。しかしながら、この加熱処理温度は、使用するプラスチックフィルム基材の耐熱性によって適宜設定することができる。加熱雰囲気は酸素中、空気中のいずれであってもよい。
【0070】
また、上記ポリシラザン系化合物の硬化は湿熱雰囲気で行うことが好ましい。湿度は特に限定されるものではないが、相対湿度で10〜100%が好ましく、50〜90%がさらに好ましく、60〜80%が特に好ましい。温度は室温以上で効果的であるが、室温〜120℃が好ましく、50〜100℃が特に好ましい。熱処理時間は特に限定されるものではないが、10分〜6時間が好ましく、30分〜4時間が特に好ましい。
【0071】
本発明の第1のガスバリア層(ポリシラザンの硬化膜)の厚さとしては、10〜2000nmが好ましく、10〜1000nmがさらに好ましい。この範囲であると、クラック発生が防止される観点から好ましい。
<ポリシラザン系化合物>
本発明に用いられるポリシラザン系化合物は、珪素−窒素結合を持つポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si、および両者の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体ポリマーである。
【0072】
例えば下記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を好ましく用いることができる。
【0073】
【化1】

【0074】
式中、R、R、及びRのそれぞれは、独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基などを表す。
【0075】
なかでも側鎖が全て水素であるペルヒドロポリシラザンが好ましく用いられる。ペルヒドロポリシラザンは直鎖構造と6および8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は、数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体または固体の物質であり、分子量により異なる。有機溶媒としては、ポリシラザン系化合物と容易に反応してしまうようなアルコール系を用いることは好ましくない。具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、メチルペンタン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモホルム、塩化エチレン、塩化エチリデン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ブチルエーテル、ジオキサン、ジメチルジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類などがある。
【0076】
これらの溶剤を使用する場合、ポリシラザン系化合物の溶解度や溶剤の蒸発速度、溶液の濃度上昇を調節するために選択し、目的に合わせ複数の種類の溶剤を混合してもよい。ポリシラザン系化合物含有塗布液中のポリシラザン系化合物の含有量は、目的とするシリカ膜の厚み、塗液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度である。
【0077】
有機ポリシラザン系化合物は、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体であってもよい。アルキル基、特にもっとも分子量の少ないメチル基を有することにより、下地材料との接着性が改善され、かつ硬くて脆いシリカ膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる。前記アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、特にシリカ転化後の非晶質シリカ純度向上とパッシベーション性、熱によるアウトガス発生、熱膨張等のシリカ本来の長所を減ずることが少ない点で炭素数1のものが好ましい。しかしながら、塗布の条件により非水系溶液の粘度を上昇させたり、シリカ膜の厚膜化を図るためには、炭素数4のターシャリーブチル基等も使用できる。
【0078】
このアルキル基による置換率は、ポリシラザン系化合物を、一般式(1)においてR、R、およびRの少なくともいずれかは水素原子で、残りがアルキル基を表したときに、構造単位中の水素原子の20%以下がアルキル基、特にメチル基で置換されていることが好ましく、特に10%以下、さらには0.5〜10%程度が好ましい。
【0079】
本発明で言う膜密度は、X線反射率測定法により、測定し、具体的には、X線発生源は銅をターゲットとし、50kV−300mAで作動させる。多層膜ミラーとGe(111)チャンネルカットモノクロメーターにて単色化したX線を使用する。測定は、ソフトウェアーATX−Crystal Guide Ver.6.5.3.4を用い、半割、アライメント調整後、2θ/ω=0度から1度を0.002度/stepで0.05度/min.で走査する。上記の測定条件で反射率曲線を測定した後、株式会社リガク製GXRR Ver.2.1.0.0解析ソフトウェアを用いて求めることができる。
【0080】
〈第2のガスバリア層〉
第2のガスバリア層は、プラスチックフィルム基材の、第1のガスバリア層が設けられた面と反対側に設けられる。第2のガスバリア層としては、水蒸気透過率が10−1g/m/day以下であるものを設けることが望ましい。この水蒸気透過率としては特に下限はないが10−4g/m/day以上のものを使用することで、十分に機能が発現する。
【0081】
第2のガスバリア層としては、例えば、蒸着やCVDで形成され、シリカもしくはアルミナなどでなるガスバリア層、有機層と無機層の積層体を1ユニットとするガスバリア層や、上述した第1のガスバリア層などを設けることができる。
【0082】
本発明では、第2のガスバリア層として上述した第1のガスバリア層を設けることが最も好ましい。
【0083】
(機能層)
さらに本発明のガスバリアフィルムは、本発明のガスバリア層および下地層以外に、種々の機能層を設置してもよい。該機能層の例としては、反射防止層、偏光層、カラーフィルター、および光取出効率向上層等の光学機能層;ハードコート層や応力緩和層等の力学的機能層;帯電防止層や導電層などの電気的機能層;防曇層;防汚層;被印刷層などが挙げられる。これらの機能層は、プラスチックフィルム基材、本発明のガスバリア層、本発明の下地層のいずれの間、または本発明のガスバリア層が設置されたプラスチックフィルム基材とは反対側の面に本発明の効果が害されない範囲において設置してもよく、本発明の下地層と同様に成膜硬化前の加熱処理工程を含んでもよい。
【0084】
上述した本発明の下地層、ガスバリア層、機能層やその他の層の厚みは、いずれも塗布液濃度や塗布速度を調節することにより任意に調節することができる。
【0085】
〈ガスバリア性フィルムの用途〉
本発明のガスバリア性フィルムは、種々の封止用材料、フィルムとして用いることができる。また、本発明のガスバリア性フィルムは、光電変換素子、EL素子などの電子デバイスに特に有用に用いることができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0087】
実施例1
〈ガスバリアフィルム1の作成〉
(プラスチックフィルム基材)
プラスチックフィルム基材として、両面に易接着加工された50μm厚みの、ポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロン03)を、170℃で30分アニール加熱処理したものを用いた。
【0088】
(下地層の形成)
基材の片面(A面)の易接着面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7501を、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプを用いて、乾燥面に1.0J/cmとなるように露光して硬化を行い、下地層を形成した。
【0089】
このときの表面粗さを表す最大断面高さRt(p)は16nmであった。
【0090】
なお、表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡 AFM:Digital Instruments社製)を用い、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さから求めた。
【0091】
(第2のガスバリア層の形成)
SAMCO社製UVオゾンクリーナー Model UV−1を用いて照射時の雰囲気を窒素置換しながら、オゾン濃度を300ppmとなるように調整して、80℃で5分間、下地層の表面処理を行った。
【0092】
表面処理した下地層表面に、ポリシラザン系化合物を含有する組成物として、パーヒドロポリシラザンの10質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、アクアミカNN120−10、無触媒タイプ)を用い、スピンコート(5000rpm、60秒)にて塗布後、80℃にて10分間乾燥し、ポリシラザン系化合物を含有する膜を形成した。
【0093】
その後、MDエキシマ社製のステージ可動型キセノンエキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200を用いて、照射庫内の雰囲気を窒素と酸素を用いて下記の様に制御しながら、ステージの移動速度を5mm/秒の速さで試料を往復搬送させて、合計5往復照射することにより改質処理を施し硬化させたのち、試料を取り出した。本装置は有効照射幅10mmのXeエキシマランプが1本装着されており、ステージ搬送速度10mm/secで搬送した場合、1秒処理/パスに相当する。尚、改質処理後のバリアのA面での膜厚は60nmであった。
【0094】
(条件)
エキシマ光強度:60mW/cm(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:100℃
(ガスバリアフィルム1の雰囲気条件)
1〜3往復目:酸素濃度0.05%
4〜5往復目:酸素濃度1.5%
(第1のガスバリア層の形成)
次いでA面と反対面のB面にもA面と同じ処理を施し、下地層と第1のガスバリア層を設けた。以上により、基材の一方の面に60nmの膜厚の第1のガスバリア層と他方の面に同じく60nmの膜厚の第2のガスバリア層を有するガスバリアフィルム1を作成した。
【0095】
〈ガスバリアフィルム2〜9の作成〉
パーヒドロポリシラザンの10質量%ジブチルエーテル溶液の量のみを調節して、ガスバリアフィルム1の作成と同様にしてスピンコートにて塗布し、ガスバリア層の膜厚を表1のように変化させ、ガスバリアフィルム2〜9を作成した。なお表中、ガスバリア層または下地層の項において、なしは層を設けなかったことを表す。
【0096】
〈ガスバリアフィルム10の作成〉
ガスバリアフィルム1で用いたものと同じプラスチックフィルム基材を、スパッタ装置の真空槽内にセットし、10−4Pa台まで真空引きし、放電ガスとしてアルゴンを分圧で0.5Pa導入した。雰囲気圧力が安定したところで放電を開始しSiターゲット上にプラズマを発生させ、スパッタリングプロセスを開始した。プロセスが安定したところでシャッターを開きフィルムへの窒化酸化珪素層の形成を開始した。60nmの膜が堆積したところでシャッターを閉じて成膜を終了した。
【0097】
次いでA面の反対面のB面は、ガスバリアフィルム1と同じ処理をして、第1のガスバリア層を設けた。以上により、基材のB面に60nmの膜厚の第1のガスバリア層とA面に同じく60nmの膜厚の第2のガスバリア層を有するガスバリアフィルム10を作成した。
【0098】
〈比較ガスバリアフィルム11の作成〉
ガスバリアフィルム10において、基材の両面に、スパッタリングプロセスにより、おのおの60nmの窒化酸化珪素層の形成を行い、ガスバリアフィルム11を作成した。
【0099】
〈ガスバリアフィルム12〜18の作成〉
スパッタリングプロセスの時間を変えることにより、ガスバリア層の膜厚を表1のように変化させて、ガスバリアフィルム11と同様にしてガスバリアフィルム12〜18を作成した。
【0100】
耐熱性、耐湿性の加速試験として85℃、90%の環境下50日保存後のサンプルのヘイズ値及び水蒸気透過率(WVTR)を上記ガスバリアフィルム1〜18について加速試験の前後で測定した。
【0101】
(水蒸気透過率)
以下の測定方法により評価した。
【0102】
(装置)
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
(原材料)
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)

<蒸気バリア性評価用セルの作製>
真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のバリアフィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
【0103】
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で30日間保存し、特開2005−283561記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐蝕量からセル内に透過した水分量を計算した。
【0104】
(ヘイズ測定)
K−7105に従って、ヘイズメーター(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
【0105】
得られた結果を表1に示す。なおガスバリアフィルムの番号は単に試料番号とした。
【0106】
【表1】

【0107】
表1から、本発明の構成では加速試験後の水蒸気透過率(WVTR)の値の増加が比較試料に比べて少なく、劣化が少ないことがわかる。また水蒸気透過率(WVTR)の値が低く、高い水蒸気バリア性を維持していることが分かる。ヘイズも同様に加速試験後でも劣化が少なく良好な値を維持しているが分かる。
【0108】
実施例2
ガスバリア層が多層積層されて形成されたガスバリアフィルムを作成した。実施例1のガスバリアフィルム1と同様にして本発明のガスバリアフィルム21〜25を、及び実施例1のガスバリアフィルム11と同様にして比較のガスバリアフィルム26、27を、表2で示す膜厚と層の数になるように作成した。尚、積層はガスバリア層の上に更に塗布することでサンプルを作成した。
【0109】
得られた7種の試料を実施例1で示した方法で、加速試験の前後でヘイズ値とWTVRを測定した。結果を表2に示す。
【0110】
【表2】

【0111】
表2から、本発明の構成では加速試験後の水蒸気透過率(WVTR)の値の増加が比較試料に比べて少なく、劣化が少ないことがわかる。また水蒸気透過率(WVTR)の値が低く、高い水蒸気バリア性を維持していることが分かる。ヘイズも同様に加速試験後でも劣化が少なく良好な値を維持していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム基材の一方の面に、ポリシラザン系化合物を含有する組成物にVUV光照射して形成された第1のガスバリア層を有し、前記プラスチックフィルム基材の他方の面に、第2のガスバリア層を有することを特徴とするガスバリアフィルム。
【請求項2】
前記プラスチックフィルム基材と前記第1ガスバリア層間、または前記プラスチックフィルム基材と第2ガスバリア層間の少なくとも一方に下地層を設けていることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項3】
前記第2のガスバリア層はポリシラザン系化合物を含有する組成物にVUV光照射して形成されたガスバリア層であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項4】
前記一方の面に前記第1ガスバリア層が、前記他方の面に第2のガスバリア層がそれぞれ複数形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のガスバリアフィルムを設けたことを特徴とする電子機器デバイス。

【公開番号】特開2012−56101(P2012−56101A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198696(P2010−198696)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】