説明

ガスバリア性積層体の製造方法

【課題】基材とガスバリア層との密着強度が高められたガスバリア性積層体を得ることができる、ガスバリア性積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリアルキレンテレフタレートからなる基材に対して、ガスバリア用材料を塗布後、乾燥して、基材とガスバリア層を有するガスバリア性積層体を製造する方法であって、前記ガスバリア用材料が、微細セルロース繊維100質量部に対してポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂0.1〜50質量部を含有する懸濁液であり、前記微細セルロース繊維が、平均繊維径が200nm以下で、前記セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gのものであり、前記乾燥温度が60〜250℃である、ガスバリア性積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素ガス等の透過を抑制できるガスバリア性積層体を得るためのガスバリア性積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現状の酸素、水蒸気等のガスバリア用材料は、主として化石資源から製造されているため、非生分解性であり、焼却処分せざるを得ない。そこで、再生産可能なバイオマスを原料として、生分解性のある酸素バリア材料を製造することが検討されている。
【0003】
特許文献1には、微細セルロースを含有するコーティング剤を基材に塗布乾燥した積層材料が記載されており(請求項15、16,実施例1等)、実施例1では、100℃で10分間乾燥して被膜を形成している。しかし、基材とコーティング層との密着性の試験方法及び評価基準が不明確で、具体的な効果が確認できない。
【0004】
特許文献2には、基材となる成形体に、平均繊維径が200nm以下のセルロース繊維を含み、前記セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gであるガスバリア用材料からなる層を有しているガスバリア性複合成形体の発明が記載されている。実施例2(段落番号0073)では、基材シート(PET製)にガスバリア用材料を塗布した後、23℃で120分間乾燥して、ガスバリア性複合成形体を製造している。この製造方法により得られたガスバリア性複合成形体は、高いガスバリア性を有しているが、基材とガスバリア用材料層との密着強度をより高める点で改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−348522号公報
【特許文献2】特開2009−057552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基材とガスバリア層との密着強度が高められたガスバリア性積層体を得ることができる、ガスバリア性積層体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、課題の解決手段として、下記の各発明を提供する。
(1)ポリアルキレンテレフタレートからなる基材に対して、ガスバリア用材料を塗布後、乾燥して、基材とガスバリア層を有するガスバリア性積層体を製造する方法であって、
前記ガスバリア用材料が、微細セルロース繊維100質量部に対してポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂0.1〜50質量部を含有する懸濁液であり、
前記微細セルロース繊維が、平均繊維径が200nm以下で、前記セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gのものであり、
前記乾燥温度が60〜250℃である、ガスバリア性積層体の製造方法。
(2)前記ポリアルキレンテレフタレートが、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートである、請求項1記載のガスバリア性積層体の製造方法。
(3)ポリアミドからなる基材に対して、ガスバリア用材料を塗布後、乾燥して、基材とガスバリア層を有するガスバリア性積層体を製造する方法であって、
前記ガスバリア用材料が、微細セルロース繊維100質量部に対してポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂5〜50質量部を含有する懸濁液であり、
前記微細セルロース繊維が、平均繊維径が200nm以下で、前記セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gのものであり、
前記乾燥温度が110〜170℃である、ガスバリア性積層体の製造方法。
(4)ポリアミドからなる基材に対して、ガスバリア用材料を塗布後、乾燥して、基材とガスバリア層を有するガスバリア性積層体を製造する方法であって、
前記ガスバリア用材料が、微細セルロース繊維100質量部に対してポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂20〜50質量部を含有する懸濁液であり、
前記微細セルロース繊維が、平均繊維径が200nm以下で、前記セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gのものであり、
前記乾燥温度が80〜170℃である、ガスバリア性積層体の製造方法。
(5)前記ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612である、請求項3又は4記載のガスバリア性積層体の製造方法。
(6)オレフィン系樹脂からなる基材に対して、ガスバリア用材料を塗布後、乾燥して、基材とガスバリア層を有するガスバリア性積層体を製造する方法であって、
前記ガスバリア用材料が、微細セルロース繊維100質量部に対して水性ポリイソシアネート5〜50質量部を含有する懸濁液であり、
前記微細セルロース繊維が、平均繊維径が200nm以下で、前記セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gのものであり、
前記乾燥温度が60〜140℃である、ガスバリア性積層体の製造方法。
(7)前記オレフィン系樹脂が、ポリプロピレン及び/又はポリエチレンである、請求項6記載のガスバリア性積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法により得られたガスバリア性積層体は、高いガスバリア性を有しており、さらに基材とガスバリア層の密着強度が飛躍的に向上されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<基材>
本発明で用いるポリアルキレンテレフタレートからなる基材は、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートからなるフィルムやシート等を用いることができる。
【0010】
本発明で用いるポリアミドからなる基材は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612からなるフィルムやシート等を用いることができる。
【0011】
また本発明では、他の実施形態として、オレフィン系樹脂からなる基材を用いることができる。オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン又はこれらのアロイ等を用いることができる。
【0012】
上記の基材は、公知の樹脂成型加工法である、例えば、Tダイを備えた押出機を用いたフィルムやシートの押出成形法を適用し、必要に応じて延伸処理をして得ることができる。また基材は、市販品のフィルムやシートを用いることもできる。
【0013】
基材には、本発明の課題を解決できる範囲内で、公知の充填剤、顔料等の着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等の樹脂添加剤を含有させることができる。
【0014】
基材の厚みは、用途に応じた強度が得られるように適宜選択すればよく、1〜1000μmの範囲で選択することができる。
【0015】
<ガスバリア用材料>
本発明で用いるガスバリア用材料は、微細セルロース繊維とポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂又は水性ポリイソシアネートを含有する懸濁液である。
【0016】
本発明で用いる微細セルロース繊維は、平均繊維径が200nm以下のものであり、好ましくは1〜200nm、より好ましくは1〜100nm、更に好ましくは1〜50nmのものである。平均繊維径は、実施例に記載の測定方法により、求められるものである。
【0017】
本発明で用いる微細セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量は、高いガスバリア性を得ることができる観点で、0.1〜2mmol/gであり、好ましくは0.4〜2mmol/g、より好ましくは0.6〜1.8mmol/gであり、更に好ましくは0.6〜1.6mmol/gである。カルボキシル基含有量は、実施例に記載の測定方法により、求められるものである。カルボキシル基含有量が0.1mmol/g未満であると、後述の繊維の微細化処理を行っても、セルロース繊維の平均繊維径が200nm以下に微細化されない。
【0018】
なお、本発明で用いる微細セルロース繊維は、セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が上記範囲のものであるが、実際の製造過程における酸化処理等の制御状態によっては、酸化処理後のセルロース繊維中に前記範囲を超えるものが不純物として含まれることもあり得る。
【0019】
本発明で用いる微細セルロース繊維は、平均アスペクト比が10〜1,000、より好ましくは10〜500、さらに好ましくは100〜350のものである。平均アスペクト比は、実施例に記載の測定方法により、求められるものである。
【0020】
本発明で用いる微細セルロース繊維は、例えば、次の方法により製造することができる。まず、原料となる天然繊維(絶対乾燥基準)に対して、約10〜1000倍量(質量基準)の水を加え、ミキサー等で処理して、スラリーにする。
【0021】
原料となる天然繊維としては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、コットン、バクテリアセルロース等を用いることができる。
【0022】
次に、触媒として2,2,6,6,−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(TEMPO)を使用して、前記天然繊維を酸化処理する。触媒としては他に、TEMPOの誘導体である4−アセトアミド−TEMPO、4−カルボキシ−TEMPO、及び4−フォスフォノオキシ−TEMPO等を用いることができる。
【0023】
TEMPOの使用量は、原料として用いた天然繊維(絶対乾燥基準)に対して、0.1〜10質量%となる範囲である。
【0024】
酸化処理時には、TEMPOと共に、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤、臭化ナトリウム等の臭化物を共酸化剤として併用する。
【0025】
酸化剤は次亜ハロゲン酸又はその塩、亜ハロゲン酸又はその塩、過ハロゲン酸又はその塩、過酸化水素、及び過有機酸などが使用可能であるが、好ましくは次亜塩素酸ナトリウムや次亜臭素酸ナトリウムなどのアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩である。酸化剤の使用量は、原料として用いた天然繊維(絶対乾燥基準)に対して、約1〜100質量%となる範囲である。
【0026】
共酸化剤としては、臭化アルカリ金属、例えば臭化ナトリウムを使用することが好ましい。共酸化剤の使用量は、原料として用いた天然繊維(絶対乾燥基準)に対して、約1〜30質量%となる範囲である。
【0027】
スラリーのpHは、酸化反応を効率良く進行させる点から9〜12の範囲で維持されることが望ましい。
【0028】
酸化処理の温度(前記スラリーの温度)は、1〜50℃において任意であるが、室温で反応可能であり、特に温度制御は必要としない。また反応時間は1〜240分間が望ましい。
【0029】
酸化処理後に、使用した触媒等を水洗等により除去する。この段階では反応物繊維は微細化されていないので、水洗とろ過を繰り返す精製法で行うことができる。必要に応じて乾燥処理した繊維状や粉末状の微細セルロース繊維の中間体(後述の微細化処理前のセルロース繊維)を得ることができる。
【0030】
その後、該中間体を水等の溶媒中に分散し、微細化処理をする。微細化処理は、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサーで所望の繊維幅や長さに調整することができる。この工程での固形分濃度は50質量%以下が好ましい。それを超えると分散にきわめて高いエネルギーを必要とすることから好ましくない。
【0031】
このような微細化処理により、平均繊維径が200nm以下の微細セルロース繊維を得ることができ、更に平均アスペクト比が10〜1,000、より好ましくは10〜500、さらに好ましくは100〜350のものである微細セルロース繊維を得ることができる。
【0032】
その後、必要に応じて固形分濃度を調整した懸濁液状(目視的に無色透明又は不透明な液)又は必要に応じて乾燥処理した粉末状(但し、微細セルロース繊維が凝集した粉末状物であり、セルロース粒子を意味するものではない)のガスバリア用材料を得ることができる。なお、懸濁液にするときは、水のみを使用したものでもよいし、水と他の有機溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)や界面活性剤、酸、塩基等との混合溶媒を使用したものでもよい。
【0033】
このような酸化処理及び微細化処理により、セルロース構成単位のC6位の水酸基がアルデヒド基を経由してカルボキシル基へと選択的に酸化され、前記カルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gのセルロースからなる、平均繊維径が200nm以下の微細化された高結晶性の微細セルロース繊維を得ることができる。この高結晶性の微細セルロース繊維はセルロースI型結晶構造を有している。これは、このセルロース繊維は、I型結晶構造を有する天然由来のセルロース固体原料が表面酸化されて、微細化された繊維であることを意味する。すなわち、天然セルロース繊維はその生合成の過程において生産されるミクロフィブリルと呼ばれる微細な繊維が多束化して高次な固体構造が構築されているが、そのミクロフィブリル間の強い凝集力(表面間の水素結合)を、アルデヒド基あるいはカルボキシル基の導入によって弱め、さらに微細化処理を経ることで微細セルロース繊維が得られる。
【0034】
そして、酸化処理条件を調整することにより、前記のカルボキシル基含有量を所定範囲内にて増減させ、極性を変化させたり、該カルボキシル基の静電反発や前述の微細化処理したりすることにより、微細セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比等を制御することができる。
【0035】
上記の酸化処理、微細化処理によって得られた微細セルロース繊維は、下記の(I)、(II)、(III)の要件を満たすことができる。
(I):固形分0.1質量%に希釈したセルロース繊維懸濁液中のセルロース繊維質量に対して、目開き16μmのガラスフィルターを通過できるセルロース繊維の質量分率が5%以上であること。
(II):固形分1質量%に希釈したセルロース繊維懸濁液中に、粒子径が1μm以上のセルロースの粒状体を含まないこと。
(III):固形分1質量%に希釈した微細セルロース繊維懸濁液の光透過率が、0.5%以上になること。
【0036】
要件(I):上記の酸化処理、微細化処理によって得られた固形分0.1質量%の懸濁液は、目開き16μmのガラスフィルターを通過させたときに、該ガラスフィルター通過前の懸濁液中に含まれる全セルロース繊維量に対して質量分率5%以上が該ガラスフィルターを通過できるものである(該ガラスフィルターを通過できる微細セルロース繊維の質量分率を微細セルロース繊維含有率とする)。ガスバリア性の観点から、微細セルロース繊維含有率は、好ましくは30%以上、より好ましくは90%以上である。
【0037】
要件(II):上記の酸化処理、微細化処理によって得られた固形分1質量%の懸濁液は、原料として用いた天然繊維が微細化されており、粒子径が1μm以上のセルロースの粒状体は含まないものが好ましい。ここで、粒状体とは、略球状であり、その形状を平面に投影した投影形状を囲む長方形の長軸と短軸の比(長軸/短軸)が最大でも3以下であるものとする。粒状体の粒子径は、長軸と短軸の長さの相加平均値とする。この粒状体の有無の判定は、光学顕微鏡による観察で行うことができる。
【0038】
要件(III):前記の酸化処理、微細化処理によって得られた固形分1質量%のセルロース繊維懸濁液は、光透過率が0.5%以上であることが好ましく、ガスバリア性の観点から、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは60%以上である。
【0039】
そして、上記の酸化処理、微細化処理により得られるガスバリア用材料からなるガスバリア層は、微細セルロース繊維間の水素結合や架橋的な強い相互作用が生まれ、ガスの溶解、拡散を抑制し、高い酸素バリア性等のガスバリア性を発現できるものと考えられる。また、セルロース繊維の巾や長さによって、成形後のセルロース繊維間の細孔サイズや細孔分布を変化させることができるため(即ち、分子篩効果を変化させることができるため)、分子選択的バリア性も期待できる。
【0040】
本発明では、基材としてポリアルキレンテレフタレート又はポリアミドからなるものを用いた場合には、微細セルロース繊維に対してポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂を配合して懸濁液を製造する。
【0041】
本発明で用いるポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂は、ポリアミドアミン中間体に、エピクロロヒドリンを付加し、加温することで、アゼティディニウムクロライド(AZR基)に変換させたものである。
【0042】
本発明では、基材としてオレフィン系樹脂からなるものを用いた場合には、微細セルロース繊維に対して水性ポリイソシアネート(水分散型イソシアネート)を配合して懸濁液を製造する。
【0043】
本発明で用いる水性ポリイソシアネートは、原料ポリイソシアネートに活性水素を有する親水性鎖、親油性鎖等を付加反応させて得ることができる。この水性ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート及びそれから誘導されるポリイソシアネートから選ばれた少なくとも1種に、アルキレンオキサイド鎖を結合させたポリイソシアネートであることが好ましく、必要に応じて親油性鎖を結合させたものであってもよい。
【0044】
上記の製造方法で用いる脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等を用いることができる。
【0045】
本発明で用いる水性ポリイソシアネートは市販品を用いることができ、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体〔旭化成工業(株)製、デュラネートWB40−80D(商品名)〕、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体〔住友バイエルウレタン(株)製、バイヒジュール3100(商品名)〕、〔日本ポリウレタン工業(株)製、アクアネート100、アクアネート200(いずれも商品名)〕等を用いることができる。
【0046】
上記した本発明で用いる水性ポリイソシアネートは公知のものであり、特開2000−19678号公報の〔0028〕、特開2000−272254号公報の〔0043〕、特開2002−60455号公報の〔0017〕、〔0018〕、特開2005−213411号公報の〔0048〕〜〔0058〕、特開2005−272590号公報の〔0025〕、〔0033〕、特開2005−336644号公報の〔0015〕〜〔0023〕等にも記載されているものである。
【0047】
なお、本発明で用いるガスバリア用材料には、本発明の課題を解決できる種類及び量の範囲内において、公知の充填剤、顔料等の着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、耐水化剤(シランカップリング剤等)、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、架橋剤(エポキシ基、イソシアネート基等の反応性官能基を有する添加剤)、金属塩、コロイダルシリカ、アルミナゾル、酸化チタン等を配合することができる。
【0048】
<塗布・乾燥工程>
本発明のガスバリア性積層体の製造方法は、基材にガスバリア用材料を塗布後に乾燥して、基材上にガスバリア層を有するものを得る方法であり、以下において説明するとおり、使用する基材とガスバリア用材料(特に微細セルロース繊維に対するポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂の使用量)の組み合わせに応じて、乾燥条件を選択することが望ましい。
【0049】
〔塗布工程〕
塗布方法は、バーコーター等を用いた公知の塗布方法を適用することができる。
【0050】
〔乾燥工程〕
(ポリアルキレンテレフタレートからなる基材を用いた実施形態)
ガスバリア用材料が、微細セルロース繊維100質量部に対してポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂0.1〜50質量部を含有する懸濁液であるとき、加熱温度は60〜250℃であり、好ましくは80〜150℃、より好ましくは80〜120℃であり、好ましくは30分間乾燥する。
【0051】
ガスバリア用材料が、微細セルロース繊維100質量部に対してポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂0.1〜10質量部を含有する懸濁液であるとき、加熱温度は60〜250℃であり、好ましくは80〜150℃、より好ましくは80〜120℃であり、好ましくは30分間乾燥する。
【0052】
(ポリアミドからなる基材を用いた実施形態)
ガスバリア用材料が、微細セルロース繊維100質量部に対してポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂5〜50質量部を含有する懸濁液であるとき、加熱温度は110〜170℃であり、好ましくは30分間乾燥する。
【0053】
ガスバリア用材料が、微細セルロース繊維100質量部に対してポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂5質量部以上で、20質量部未満を含有する懸濁液であるとき、加熱温度は150〜170℃、好ましくは30分間乾燥する。
【0054】
ガスバリア用材料が、微細セルロース繊維100質量部に対してポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂20〜50質量部を含有する懸濁液であるとき、加熱温度は80〜170℃、好ましくは110〜170℃、好ましくは30分間乾燥する。
【0055】
(オレフィン系樹脂からなる基材を用いた実施形態)
ガスバリア用材料が、微細セルロース繊維100質量部に対して水性ポリイソシアナート5〜50質量部を含有する懸濁液であるとき、加熱温度は60〜140℃であり、好ましくは80〜120℃、好ましくは30分間乾燥する。
【0056】
<その他の実施形態>
本発明の製造方法は、以下に説明するとおり、基材の種類と微細セルロース繊維を含む懸濁液の組み合わせを変えた実施形態にも、適用することができる。
【0057】
(1)その他の実施形態−1(基材がポリアルキレンテレフタレートで、微細セルロース繊維と水性ポリイソシアネートを含む懸濁液を用いた実施形態)
基材として用いるポリアルキレンテレフタレート、さらに微細セルロース繊維と水性ポリイソシアネートは、上記したものと同じものを用いることができる。
【0058】
微細セルロース繊維と水性ポリイソシアネートの割合は、微細セルロース繊維100質量部に対して水性ポリイソシアネート0.1〜50質量部が好ましく、0.1〜20質量部がより好ましく、0.1〜10質量部がさらに好ましい。
【0059】
乾燥は、加熱温度が好ましくは60〜250℃、より好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは80〜120℃であり、好ましくは30分間乾燥する。
【0060】
(2)その他の実施形態−2(基材がポリアミドで、微細セルロース繊維と水性ポリイソシアネートを含む懸濁液を用いた実施形態)
基材として用いるポリアミド、さらに微細セルロース繊維と水性ポリイソシアネートは、上記したものと同じものを用いることができる。
【0061】
微細セルロース繊維と水性ポリイソシアネートの割合は、微細セルロース繊維100質量部に対して水性ポリイソシアネート0.1〜50質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましく、5〜10質量部がさらに好ましい。
【0062】
乾燥は、加熱温度が好ましくは80〜170℃、より好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは80〜120℃であり、好ましくは30分間乾燥する。
【0063】
(3)その他の実施形態−3(基材がポリアルキレンテレフタレートで、微細セルロース繊維とエポキシ化合物を含む懸濁液を用いた実施形態)
【0064】
基材として用いるポリアルキレンテレフタレート、さらに微細セルロース繊維は、上記したものと同じものを用いることができる。
【0065】
エポキシ化合物は、1分子あたり2個又は3個以上のエポキシ基を有している2官能性又は3官能性以上のものを用いることができる。
【0066】
エポキシ化合物は、エチレングリコールジグリシジルエーテルやポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、炭素数3以上のグリコールのジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリブタジエン等のジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリコールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリエチロールプロピレンポリグリシジルエーテル等の脂肪族系、レソルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型グリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートのような芳香族環や環状化合物等を挙げることができる。
【0067】
エポキシ化合物は市販品を用いることができ、例えば、ナガセケムテックス株式会社製エポキシ化合物、デナコール(登録商標)のEX−611、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−411、EX−421、EX−313、EX−314、EX−321、EX−201、EX−211、EX−212、EX−252、EX−810,EX−811、EX−850、EX−851、EX−821、EX−830、EX−832、EX−841、EX−861、EX−911、EX−941、EX−920、EX−931、デナレックス(登録商標)R−45EPT、EX−721等、エポキシエマルションであるEM−150等を挙げることができる。
【0068】
上記した本発明で用いるエポキシ化合物は公知のものであり、特開2005−219422号公報の〔0011〕〜〔0015〕、特開2008−266415号公報の〔0017〕、特開2009−203351号公報の〔0022〕、〔0023〕、特開平7−26026号公報の〔0027〕、特開平10−88089号公報の〔0025〕、〔0026〕等にも記載されているものである。
【0069】
微細セルロース繊維とエポキシ化合物の割合は、微細セルロース繊維100質量部に対してエポキシ化合物5〜50質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましく、5〜10質量部がさらに好ましい。
【0070】
乾燥は、加熱温度が好ましくは90〜250℃、より好ましくは90〜150℃、さらに好ましくは90〜120℃であり、好ましくは30分間乾燥する。
【0071】
(4)その他の実施形態−4(基材がポリアミドで、微細セルロース繊維とエポキシ化合物を含む懸濁液を用いた実施形態)
【0072】
基材として用いるポリアミド、さらに微細セルロース繊維及びエポキシ化合物は、上記したものと同じものを用いることができる。
【0073】
微細セルロース繊維とエポキシ化合物の割合は、微細セルロース繊維100質量部に対してエポキシ化合物5〜50質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましく、5〜10質量部がさらに好ましい。
【0074】
乾燥は、加熱温度が好ましくは90〜170℃、より好ましくは90〜150℃、さらに好ましくは90〜120℃であり、好ましくは30分間乾燥する。
【0075】
本発明の製造方法では、さらに必要に応じて、ガスバリア層上に防湿性や耐久性を高めるための被覆層(例えば、フィルム又はシート状の被覆層)を形成することもできる。この被覆層の形成方法としては、熱プレス法、接着剤を用いた接着法等を適用することができる。
【実施例】
【0076】
(1)微細セルロース繊維
(1-1)平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比
セルロース繊維の平均繊維径は、0.001質量%に希釈した懸濁液をマイカ上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製,プローブはナノセンサーズ社製Point Probe(NCH)使用)で繊維高さを測定した。セルロース繊維が確認できる画像において、5本以上抽出し、その繊維高さの算術平均を平均繊維径とした。なお、本発明で用いる微細セルロース繊維は、平均繊維径が200nm以下のもので、1〜200nm、1〜100nm、1〜50nmのものである。
【0077】
平均アスペクト比は、セルロース繊維を水で希釈した希薄懸濁液(0.005〜0.04質量%)の粘度から算出した。粘度の測定には、レオメーター(MCR300、DG42(二重円筒)、PHYSICA社製)を用いて、20℃で測定した。セルロース繊維の質量濃度とセルロース繊維懸濁液の水に対する比粘度の関係から、次式でセルロース繊維のアスペクト比を逆算し、セルロース繊維の平均アスペクト比とした。
【数1】

(The Theory of Polymer Dynamics, M.DOI and D.F.EDWARDS, CLARENDON PRESS・OXFORD,1986,P312に記載の剛直棒状分子の粘度式(8.138)を利用した(ここでは、剛直棒状分子=セルロース繊維とした)。(8.138)式と Lb2×ρ0=M/NAの関係から数式1が導出される。ここで、ηspは比粘度、πは円周率、lnは自然対数、Pはアスペクト比(L/b)、γ=0.8、ρsは分散媒の密度(kg/m3)、ρ0はセルロース結晶の密度(kg/m3)、Cはセルロースの質量濃度(C=ρ/ρs)、Lは繊維長、bは繊維幅(セルロース繊維断面は正方形とする)、ρはセルロース繊維の濃度(kg/m3)、Mは分子量、NAはアボガドロ数を表す)。
【0078】
平均繊維長は、上記の方法より測定された繊維径とアスペクト比より算出した。
【0079】
(1-2)カルボキシル基含有量(mmol/g)
酸化したパルプの絶乾重量約0.5gを100mlビーカーにとり、イオン交換水を加えて全体で55mlとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加えてパルプ懸濁液を調製し、パルプが十分に分散するまでスタラーにて攪拌した。そして、0.1M塩酸を加えてpH2.5〜3.0としてから、自動滴定装置(AUT−501、東亜デイーケーケー(株)製)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で注入し、パルプ懸濁液の1分ごとの電導度とpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続けた。そして、得られた電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、カルボキシル基含有量を算出した。
天然セルロース繊維はセルロース分子約20〜1500本が集まって形成される高結晶性ミクロフィブリルの集合体として存在する。本発明で用いる微細セルロース繊維の製造で採用しているTEMPO酸化反応では、この結晶性ミクロフィブリル表面に選択的にカルボキシル基を導入することができる。したがって、現実には結晶表面にのみカルボキシル基が導入されているが、上記測定方法によって定義されるカルボキシル基含有量はセルロース重量あたりの平均値である。
【0080】
(1-3)セルロース繊維懸濁液中の微細セルロース繊維の質量分率(微細セルロース繊維含有率)(%)
セルロース繊維懸濁液を0.1質量%に調製して、その固形分濃度を測定した。続いて、そのセルロース繊維懸濁液を目開き16μmのガラスフィルター(25G P16,SHIBATA社製)で吸引ろ過した後、ろ液の固形分濃度を測定した。ろ液の固形分濃度(C1)をろ過前の懸濁液の固形分濃度(C2)で除した(C1/C2)値を微細セルロース繊維含有率(%)として算出した。
【0081】
(2)テープ剥離試験
180°剥離試験機(PEELING TESTER,型式 IPT200-5N,測定範囲0.001〜5.0N;株式会社イマダ製)を用いて、下記の方法でテープ剥離試験を行った。
【0082】
まず、A4サイズ(210×297mm)の実施例及び比較例のガスバリア性積層体を用意した。
【0083】
次に、幅15mm、長さ140mmの粘着テープ(商品名 セロテープ;ニチバン(株)製)の一部(40mmの長さ部分)を折り返して互いに貼り合わせ(折り返した貼り合わせ部分の長さは20mm)、粘着部分を残部の100mmの長さ部分としたものを用意した。
【0084】
次に、ガスバリア性積層体に50〜100mmの直線状の切り込みを入れ、その切り込み線上に粘着テープの粘着部分の端を合わせた状態で、100mmの長さの粘着部分をセルロース繊維層に密着して貼り合わせた。
【0085】
その後、密着して貼り合わせた部分を幅15mm、長さ100mmに切断し、微細セルロース繊維層に粘着テープが貼り付けられ、ガスバリア性積層体と粘着テープが一体になったものを試験サンプルとした。
【0086】
まず、幅15mm、長さ120mmの両面テープ(商品名、ナイスタック;ニチバン(株)製)の一面側の粘着面を水平な台上に貼り付けて固定し、他面側の粘着面に試験サンプルの基材部分(ガスバリア性積層体の基材部分)を貼り付けた。
【0087】
その後、粘着テープの折り返してある部分(長さ20mmの部分)をテープ剥離試験機のクリップでしっかりと固定した状態で、剥離角度(ガスバリア性積層体と粘着テープがなす角度)が165〜180°になるようにして、300mm/minの速度で引っ張り、ガスバリア性積層体の基材と微細セルロース繊維層との剥がれを評価した。評価基準は次のとおりである。
【0088】
○:粘着テープ側に微細セルロース繊維層が付着しなかった(基材と微細セルロース繊維層が剥がれなかった)
×:粘着テープ側に微細セルロース繊維層が付着した(基材と微細セルロース繊維層が剥がれた)
【0089】
(3)酸素透過度(等圧法)(×10-5cm3/m2・day・Pa)
JIS K7126−2 付属書Aの測定法に準拠して、酸素透過率測定装置OX−TRAN2/21(型式ML&SL、MODERN CONTROL社製)を用い、23℃、湿度0%RHの条件で測定した。具体的には、23℃、湿度0%RHの酸素ガス、23℃、湿度0%の窒素ガス(キャリアガス)環境下で測定を行った。
【0090】
製造例1<ガスバリア用材料1の製造>
(1)原料、触媒、酸化剤、共酸化剤
天然繊維:針葉樹の漂白クラフトパルプ(製造会社:フレッチャー チャレンジ カナダ、商品名 「Machenzie」、CSF650ml)TEMPO:市販品(製造会社:ALDRICH、Free radical、98%)次亜塩素酸ナトリウム:市販品(製造会社:和光純薬工業(株) Cl:5%)臭化ナトリウム:市販品(製造会社:和光純薬工業(株))。
【0091】
(2)製造手順
まず、上記の針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gを9900gのイオン交換水で十分攪拌後、パルプ質量100gに対し、TEMPO1.25質量%、臭化ナトリウム12.5質量%、次亜塩素酸ナトリウム28.4質量%をこの順で添加し、pHスタッドを用い、0.5M水酸化ナトリウムの滴下にてpHを10.5に保持し、温度20℃で酸化反応を行った。
【0092】
(3)微細化手順
次に、120分の酸化時間で滴下を停止し、酸化パルプを得た。該酸化パルプをイオン交換水にて十分洗浄し、脱水処理を行った。その後、酸化パルプの濃度を1質量%に調整し、ミキサー(Vita−Mix−Blender ABSOLUTE、大阪ケミカル(株)製にて120分間攪拌することにより、繊維の微細化処理を行い、微細セルロース繊維(CSNF)の懸濁液を得た。得られた懸濁液に対して、イソプロピルアルコール(IPA)を30質量%添加した。
【0093】
得られた微細セルロース繊維(CSNF)懸濁液の固形部100質量部に対して、表1、表2に示す割合となるようにポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂(PAE)(商品名:湿潤紙力剤 WS4020;星光PMC(株)社製)を配合して、ガスバリア用材料1を得た。
【0094】
製造例2<ガスバリア用材料2の製造>
製造例1で得た微細セルロース繊維(CSNF)の懸濁液に対して、イソプロピルアルコール(IPA)を30質量%添加した。その後、懸濁液の固形部100質量部に対して、表3〜表5に示す割合となるように水性ポリイソシアネート(商品名:デュラネートWB40−80D,旭化成ケミカルズ(株)社製、商品名:タケネートWD−723,三井化学(株)社製)を配合して、ガスバリア用材料2を得た。
【0095】
製造例3<ガスバリア用材料3の製造>
製造例1で得た微細セルロース繊維(CSNF)の懸濁液に対して、イソプロピルアルコール(IPA)を30質量%添加した。その後、懸濁液の固形部100質量部に対して、表6、表7に示す割合となるようにエポキシ化合物(商品名:デナコールEX−811,ナガセケムテックス(株)社製、商品名:デナコールEX−614B,ナガセケムテックス(株)社製)を配合して、ガスバリア用材料3を得た。
【0096】
実施例1及び比較例1、2
基材となる市販のPETフィルム(商品名:テトロンG2、帝人デュポンフィルム(株)、シート厚み25μm,軟化点250℃)を台上に置き、その上に製造例1で得たガスバリア用材料1をコントロールコータ装置(RK Print-Coat Instruments Ltd.製,Model No.:K202)(塗布条件:コーティングバー No.3,速度5)により塗布した。その後、表1に示すPAE濃度と加熱温度で30分間加熱乾燥して、ガスバリア性積層体を得た。
【0097】
【表1】

【0098】
実施例1は、PAE濃度が0.1、0.5、1、5、10質量部、PAE濃度が20質量部、PAE濃度が50質量部のとき、それぞれの濃度について、80、100、120、150℃の異なる温度で加熱処理(乾燥処理)したときの全ての組み合わせ(28通り)の剥離試験の結果が「○」であり、表1に示す酸素透過度であることを示している。
【0099】
比較例1は、PAE濃度が0(ブランク)、0.01、0.02、0.05、0.1、0.5、1、5、10質量部、PAE濃度が20質量部、PAE濃度が50質量部のとき、それぞれの濃度について、23℃で自然乾燥処理したときの全ての組み合わせ(11通り)の剥離試験の結果が「×」であり、表1に示す酸素透過度であることを示している。
【0100】
比較例2は、PAE濃度が0.01、0.02、0.05質量部のとき、それぞれの濃度について、80、100、120℃の異なる温度で加熱処理(乾燥処理)したときの全ての組み合わせ(9通り)の剥離試験の結果が「×」であり、表1に示す酸素透過度であることを示している。
【0101】
表1から明らかなとおり、微細セルロース繊維(CSNF)に対するポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂(PAE)の配合比と乾燥温度を関連づけて組み合わせることにより、高い酸素ガスバリア性を維持したまま、基材とガスバリア層との密着強度を飛躍的に向上させることができる。
【0102】
実施例2、3及び比較例3〜5
基材となる市販のナイロン6フィルム(商品名:エンブレム ON、ユニチカ(株)社製、シート厚み25μm,軟化点180℃)を台上に置き、その上に製造例1で得たガスバリア用材料1をコントロールコータ装置(RK Print-Coat Instruments Ltd.製,Model No.:K202)(塗布条件:コーティングバー No.3,速度5)により塗布した。その後、表2に示すPAE濃度と加熱温度で30分間加熱乾燥して(加熱温度23℃は自然乾燥処理、以下同様)、ガスバリア性積層体を得た。
【0103】
【表2】

【0104】
表2中、PAE濃度、加熱温度、剥離試験の結果の見方は、表1と同じである。実施例2は6通り、実施例3は2通り、比較例3は8通り、比較例4は12通り、比較例5は4通りの剥離試験の結果が示されている。
【0105】
表2から明らかなとおり、微細セルロース繊維(CSNF)に対するポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂(PAE)の配合比と乾燥温度を関連づけて組み合わせることにより、基材とガスバリア層との密着強度を飛躍的に向上させることができる。
【0106】
実施例4〜7、比較例6〜10
基材となる市販のOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルム(商品名:OP M−1、東セロ(株)、シート厚み20μm,軟化点140℃)、市販のLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)フィルム(商品名:FC−D、東セロ(株)、シート厚み25μm,軟化点105℃)を台上に置き、その上に製造例2で得たガスバリア用材料2をコントロールコータ装置(RK Print-Coat Instruments Ltd.製,Model No.:K202)(塗布条件:コーティングバー No.3,速度5)により塗布した。その後、表3に示す水性ポリイソシアネート濃度と加熱温度で30分間加熱乾燥して、ガスバリア性積層体を得た。
【0107】
【表3】

【0108】
表3中、水性ポリイソシアネート濃度、加熱温度、剥離試験の結果の見方は、表1と同じである。実施例4は8通り、実施5は4通り、実施6は2通り、実施7は4通り、比較例6は4通り、比較例7は2通り、比較例8は6通り、比較例9は1通り、比較例10は1通りの剥離試験の結果が示されている。
【0109】
表3から明らかなとおり、微細セルロース繊維(CSNF)に対する水性ポリイソシアネートの配合比と乾燥温度を関連づけて組み合わせることにより、基材とガスバリア層との密着強度を飛躍的に向上させることができる。
【実験例】
【0110】
以下、他の実施形態1〜4に該当する例を含む実験例を示す。
【0111】
実験例A-1、A-2、B-1、B-2
基材となる市販のPETフィルム(商品名:テトロンG2、帝人デュポンフィルム(株)、シート厚み25μm,軟化点250℃)を台上に置き、その上に製造例1で得たガスバリア用材料3をコントロールコータ装置(RK Print-Coat Instruments Ltd.製,Model No.:K202)(塗布条件:コーティングバー No.3,速度5)により塗布した。その後、表4に示す水性ポリイソシアネート濃度と加熱温度で30分間加熱乾燥して、ガスバリア性積層体を得た。
【0112】
【表4】

【0113】
表4中、水性ポリイソシアネート濃度、加熱温度、剥離試験の結果の見方は、表1と同じである。実験例A-1は12通り、実験例A-2は2通り、実験例B-1は6通り、実験例B-2は2通りの剥離試験の結果が示されている。実験例A-1、A-2は、上記した「その他の実施形態−1」に該当する例である。
【0114】
実験例A-3、A-4、A-5、B-3、B-4
基材となる市販のナイロン6フィルム(商品名:エンブレム ON、ユニチカ(株)社製、シート厚み25μm,軟化点180℃)を台上に置き、その上に製造例2で得たガスバリア用材料2をコントロールコータ装置(RK Print-Coat Instruments Ltd.製,Model No.:K202)(塗布条件:コーティングバー No.3,速度5)により塗布した。その後、表5に示す水性ポリイソシアネート濃度と加熱温度で30分間加熱乾燥して、ガスバリア性積層体を得た。
【0115】
【表5】

【0116】
表5中、水性ポリイソシアネート濃度、加熱温度、剥離試験の結果の見方は、表1と同じである。実験例A-3は8通り、実験例A-4は2通り、実験例A-5は2通り、実験例B-3は2通り、実験例B-4は2通りの剥離試験の結果が示されている。実験例A-3、A-4、A-5は、上記した「その他の実施形態−2」に該当する例である。
【0117】
表5から明らかなとおり、微細セルロース繊維(CSNF)に対する水性ポリイソシアネートの配合比と乾燥温度を関連づけて組み合わせることにより、基材とガスバリア層との密着強度を飛躍的に向上させることができる。
【0118】
実験例A-6、A-7、B-5、B-6、B-7
基材となる市販のPETフィルム(商品名:テトロンG2、帝人デュポンフィルム(株)、シート厚み25μm,軟化点250℃)を台上に置き、その上に製造例3で得たガスバリア用材料3をコントロールコータ装置(RK Print-Coat Instruments Ltd.製,Model No.:K202)(塗布条件:コーティングバー No.3,速度5)により塗布した。その後、表6に示すエポキシ化合物濃度と加熱温度で30分間加熱乾燥して、ガスバリア性積層体を得た。
【0119】
【表6】

【0120】
表6中、エポキシ化合物濃度、加熱温度、剥離試験の結果の見方は、表1と同じである。実施例A-6は12通り、A-7は1通り、実験例B-5は2通り、B-6は1通り、B-7は1通りの剥離試験の結果が示されている。実験例A-6、A-7、B-5は、上記した「その他の実施形態−3」に該当する例である。
【0121】
表6から明らかなとおり、微細セルロース繊維(CSNF)に対するエポキシ化合物の配合比と乾燥温度を関連づけて組み合わせることにより、基材とガスバリア層との密着強度を飛躍的に向上させることができる。
【0122】
実験例A-8、A-9、A-10、A-11、B-8、B-9
基材となる市販のナイロン6フィルム(商品名:エンブレム ON、ユニチカ(株)社製、シート厚み25μm,軟化点180℃)を台上に置き、その上に製造例3で得たガスバリア用材料3をコントロールコータ装置(RK Print-Coat Instruments Ltd.製,Model No.:K202)(塗布条件:コーティングバー No.3,速度5)により塗布した。その後、表6に示すエポキシ化合物濃度と加熱温度で30分間加熱乾燥して、ガスバリア性積層体を得た。
【0123】
【表7】

【0124】
表7中、エポキシ化合物濃度、加熱温度、剥離試験の結果の見方は、表1と同じである。実施例A-8は8通り、実施例A-9は4通り、実施例A-10は1通り、実施例A-11は1通り、実験例B-8は6通り、実験例B-9は1通りの剥離試験の結果が示されている。実験例A-8、A-9、A-10、A-11、B-8は、上記した「その他の実施形態−4」に該当する例である。
【0125】
表7から明らかなとおり、微細セルロース繊維(CSNF)に対するエポキシ化合物の配合比と乾燥温度を関連づけて組み合わせることにより、基材とガスバリア層との密着強度を飛躍的に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の製造方法で得られたガスバリア性積層体は、ガスバリア性が要求される各種包装材料として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキレンテレフタレートからなる基材に対して、ガスバリア用材料を塗布後、乾燥して、基材とガスバリア層を有するガスバリア性積層体を製造する方法であって、
前記ガスバリア用材料が、微細セルロース繊維100質量部に対してポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂0.1〜50質量部を含有する懸濁液であり、
前記微細セルロース繊維が、平均繊維径が200nm以下で、前記セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gのものであり、
前記乾燥温度が60〜250℃である、ガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項2】
前記ポリアルキレンテレフタレートが、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートである、請求項1記載のガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項3】
ポリアミドからなる基材に対して、ガスバリア用材料を塗布後、乾燥して、基材とガスバリア層を有するガスバリア性積層体を製造する方法であって、
前記ガスバリア用材料が、微細セルロース繊維100質量部に対してポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂5〜50質量部を含有する懸濁液であり、
前記微細セルロース繊維が、平均繊維径が200nm以下で、前記セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gのものであり、
前記乾燥温度が110〜170℃である、ガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項4】
ポリアミドからなる基材に対して、ガスバリア用材料を塗布後、乾燥して、基材とガスバリア層を有するガスバリア性積層体を製造する方法であって、
前記ガスバリア用材料が、微細セルロース繊維100質量部に対してポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂20〜50質量部を含有する懸濁液であり、
前記微細セルロース繊維が、平均繊維径が200nm以下で、前記セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gのものであり、
前記乾燥温度が80〜170℃である、ガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項5】
前記ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612である、請求項3又は4記載のガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項6】
オレフィン系樹脂からなる基材に対して、ガスバリア用材料を塗布後、乾燥して、基材とガスバリア層を有するガスバリア性積層体を製造する方法であって、
前記ガスバリア用材料が、微細セルロース繊維100質量部に対して水性ポリイソシアネート5〜50質量部を含有する懸濁液であり、
前記微細セルロース繊維が、平均繊維径が200nm以下で、前記セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gのものであり、
前記乾燥温度が60〜140℃である、ガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項7】
前記オレフィン系樹脂が、ポリプロピレン及び/又はポリエチレンである、請求項6記載のガスバリア性積層体の製造方法。

【公開番号】特開2011−131452(P2011−131452A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291852(P2009−291852)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノテク・先端部材実用化研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】