説明

ガスバーナ

【課題】緩慢燃焼を行うことができるとともに、低負荷燃焼時における燃焼安定性を向上させることができ、かつ、耐久性を向上させることができるガスバーナを提供すること。
【解決手段】ガスバーナ1は、燃焼用空気Aを通過させる燃焼筒4と、燃焼筒4内に配置され、燃料ガスFを通過させるバーナノズル2とを備えている。バーナノズル2の先端部には、フランジ部3が設けてあり、フランジ部3の先端面30には、環状凹部31によって、中心凸部32と外周凸部34とが形成されている。中心凸部32の内側には、燃料ガスFが流入する内側流入凹部321が形成してあり、中心凸部32には、内側流入凹部321に流入した燃料ガスFを径方向外周側へ噴出させるガス噴出口33が形成してある。外周凸部34には、燃焼用空気Aを軸方向先端側へ噴出させる空気噴出口35A、35Bが形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと燃焼用空気とを燃焼させて火炎を形成するよう構成したガスバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスと燃焼用空気とを噴出・混合させて燃焼を行うガスバーナにおいては、低負荷燃焼時の燃焼安定化、低NOx化等を目標に、種々の構造が開発されている。
例えば、特許文献1においては、燃焼用空気を通す円筒形の燃焼筒と、燃焼筒の中心部分に突出させたパイプ状のガスノズルとを備え、燃焼筒とガスノズルとの間の周縁部にバッフル板を設けてなる先混合式ガスバーナが開示されている。このガスバーナにおいては、ガスノズル先端近くの周部分に形成した複数のメインガス燃料噴出孔から、ガスノズル中心軸に対する直角方向に放射状に燃料ガスを噴出させるとともに、バッフル板に形成した複数の空気口から燃焼用空気を噴出させている。また、メインガス燃料噴出孔と空気口の設置数とを同数とし、これらを互いに逆位相の状態に配置することにより、火炎の安定とNOx発生量の低減を両立させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−337022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガスバーナにおいて、低負荷燃焼時の燃焼安定性と耐久性とを向上させるためには更なる工夫が必要とされる。特許文献1においては、ガスノズルのガス噴出部分を、燃焼用空気が噴出するバッフル板よりも大きく突出させている。そのため、燃料ガスと燃焼用空気との燃焼によって形成される火炎により、ガス噴出部分が高温に加熱され、ガスバーナの耐久性を向上させるためには十分ではない。
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、緩慢燃焼を行うことができるとともに、低負荷燃焼時における燃焼安定性を向上させることができ、かつ、耐久性を向上させることができるガスバーナを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、燃焼用空気を通過させる燃焼筒と、該燃焼筒内に配置され、燃料ガスを通過させるバーナノズルとを備え、
該バーナノズルの先端部には、該先端部を閉塞するとともに該先端部の全周の径方向外周側へ突出するフランジ部が設けてあり、
該フランジ部の先端面には、上記バーナノズルの中心軸線の周りに環状に形成した環状凹部によって、中心部分には中心凸部が形成されるとともに、外周部分には外周凸部が形成されており、
上記中心凸部の内側には、上記燃料ガスが流入する内側流入凹部が形成してあり、
上記中心凸部には、上記内側流入凹部に流入した上記燃料ガスを径方向外周側へ噴出させるガス噴出口が形成してあり、
上記外周凸部には、上記燃焼用空気を軸方向先端側へ噴出させる空気噴出口が形成してあることを特徴とするガスバーナにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0007】
本発明のガスバーナにおいては、フランジ部の先端面には、環状凹部によって中心凸部と外周凸部とが形成されている。そして、ガスバーナにおいて燃焼を行う際には、中心凸部のガス噴出口から径方向外周側へ噴出された燃料ガスは、環状凹部を介して外周凸部へ流れ、外周凸部の空気噴出口から噴出された燃焼用空気と混合される。これにより、燃料ガスは、環状凹部に一旦入ってから燃焼用空気と混合されることになる。そのため、燃料ガスが燃焼用空気と急速に混合されることを緩和し、緩慢燃焼を行うことができる。
また、本発明においては、ガス噴出口から噴出された燃料ガスと、空気噴出口から噴出された燃焼用空気とによって、フランジ部の先端側の全周にわたって火炎を分散して形成することができる。これにより、低負荷燃焼時における燃焼安定性を向上させることができる。
【0008】
また、本発明においては、ノズル部としての中心凸部をフランジ部に対して直接形成している。これにより、燃料ガスが噴出され火炎が形成される部位において、バーナノズルの先端部が火炎によって過剰に炙られることがない。そのため、バーナノズルの先端部が火炎によって高温に加熱されることを防止することができ、ガスバーナの耐久性を向上させることができる。
【0009】
それ故、本発明のガスバーナによれば、緩慢燃焼を行うことができるとともに、低負荷燃焼時における燃焼安定性を向上させることができ、かつ、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例にかかる、ガスバーナを示す断面説明図。
【図2】実施例にかかる、ガスバーナを示す図で、図1におけるA−A線矢視断面説明図。
【図3】実施例にかかる、バーナノズルのフランジ部の周辺を、側方から見た状態で示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述した本発明のガスバーナにおける好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記ガス噴出口は、上記中心凸部の内周面から外周面に貫通形成して放射状に複数配列してあり、上記空気噴出口は、上記バーナノズルの中心軸線の周りを旋回して軸方向先端側へ上記燃焼用空気を噴出させるよう、上記外周凸部の外周に切り欠いて形成した切欠空気噴出口と、上記軸方向先端側へ上記燃焼用空気を噴出させるよう、上記外周凸部の上記中心軸線の方向に貫通形成した貫通空気噴出口とが、上記外周凸部において放射状に複数配列してあることが好ましい(請求項2)。
【0012】
この場合には、ガス噴出口から噴出された燃料ガスと、切欠空気噴出口及び貫通空気噴出口から噴出された燃焼用空気とによって、フランジ部の先端側の全周にわたって火炎を分散して形成することができる。これにより、低負荷燃焼時における燃焼安定性を向上させることができる。また、バーナノズルの先端部の温度を低下させることができるとともに、NOxの発生量を減少させることができる。
【0013】
また、上記燃焼筒は、輻射熱によって被加熱対象を加熱するラジアントチューブ内に配置されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、燃料ガスが燃焼用空気と急速に混合されることを緩和し、緩慢燃焼を行うことにより、ラジアントチューブ内に燃焼音が発生することを抑制することができる。
【実施例】
【0014】
以下に、本発明のガスバーナにかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例のガスバーナ1は、図1、図2に示すごとく、燃焼用空気Aを通過させる燃焼筒4と、燃焼筒4内に配置され、燃料ガスFを通過させるバーナノズル2とを備えている。バーナノズル2の先端部には、先端部を閉塞するとともに先端部の全周の径方向外周側へ突出するフランジ部3が設けてある。フランジ部3の先端面30には、バーナノズル2の中心軸線の周りに環状に形成した環状凹部31によって、中心部分には中心凸部32が形成されるとともに、外周部分には外周凸部34が形成されている。
中心凸部32の内側(軸方向後端側の中心部分)には、燃料ガスFが流入する内側流入凹部321が形成してあり、中心凸部32には、内側流入凹部321に流入した燃料ガスFを径方向外周側へ噴出させるガス噴出口33が形成してある。外周凸部34には、燃焼用空気Aを軸方向先端側へ噴出させる空気噴出口35A、35Bが形成してある。
【0015】
以下に、本例のガスバーナ1につき、図1〜図3を参照して詳説する。
以下の図1〜図3において、軸方向を矢印Lで示し、周方向を矢印Cで示す。
本例のガスバーナ1は、予混合気を用いず、火炎を形成する直前に燃料ガスFと燃焼用空気Aとを混合させて燃焼を行い、火炎を形成するものである。また、本例のガスバーナ1は、極めて簡単な構造により、低負荷燃焼時の燃焼安定性及び耐久性を向上させ、ラジアントチューブ5に燃焼音が発生することを抑制することができるものである。本例の燃料ガスFは、都市ガス等の可燃性ガスである。
本例の燃焼筒4は、輻射熱によって被加熱対象を加熱するラジアントチューブ5内に配置されている。
【0016】
図1に示すごとく、本例のバーナノズル2は、パイプ形状に形成されており、その開口先端部21は、フランジ部3によって閉塞されている。バーナノズル2は、ガスパイプ25の先端側に螺合して設けられている。バーナノズル2は、パイプ部20に対して溶接等によってフランジ部3を接合して形成されている。
また、バーナノズル2は、旋削加工等を行って、パイプ部20とフランジ部3とを一体的に形成してなることもでき、また、ねじ構造によってパイプ部20に固定することもできる。
図3に示すごとく、フランジ部3は、バーナノズル2の厚みt1の1.5〜3倍の軸方向厚みt2を有している。フランジ部3は、7〜18mmの軸方向厚みt2に形成することができる。ガス噴出口33は、中心凸部32の軸方向高さの1/3〜2/3の大きさ(直径)に形成されている。
【0017】
図1に示すごとく、本例の環状凹部31、中心凸部32、外周凸部34は、いずれも円形状に形成されている。
本例のフランジ部3は、ガス噴出口33の形成を容易にするために、中心凸部32及び環状凹部31を含む内周側部分36と、外周凸部34を含む外周側部分37とに分割形成されている。
本例のガス噴出口33は、中心凸部32の内周面から外周面に貫通形成して放射状に複数配列されている。本例のガス噴出口33は、フランジ部3の径方向に垂直(軸方向に直角)に形成されている。これに対し、ガス噴出口33は、軸中心位置から外周側に向けて、前方側へ傾斜して形成することもできる。
【0018】
本例の燃焼筒4は、円筒形状に形成されている。バーナノズル2は燃焼筒4の内部に配置されており、バーナノズル2におけるフランジ部3は、燃焼筒4の軸方向先端部より奥に引き込まれた位置に配置されている。バーナノズル2内には、燃料ガスFが通過するガス流路24が形成されており、バーナノズル2の外周と燃焼筒4の内周との間には、環形状の空気流路41が形成されている。
【0019】
図2に示すごとく、本例の空気噴出口35は、バーナノズル2の中心軸線の周りを旋回して軸方向先端側へ燃焼用空気Aを噴出させるよう、フランジ部3の外周凸部34の外周に切り欠いて形成した切欠空気噴出口35Aと、軸方向先端側へ燃焼用空気Aを噴出させるよう、外周凸部34の中心軸線の方向に貫通形成した貫通空気噴出口35Bとが、外周凸部34において放射状に複数配列してある。
図3に示すごとく、各切欠空気噴出口35Aは、外周凸部34において、軸方向に対して傾斜して形成されており、周方向の一方側に傾斜して形成されている。また、図2に示すごとく、各切欠空気噴出口35Aは、外周凸部34の外周側から内周側に向けて切り欠いて形成されている。外周凸部34において、切欠空気噴出口35Aと貫通空気噴出口35Bとは、ガス噴出口33の形成位置に合わせて交互に形成されている。
【0020】
また、図2に示すごとく、ガス噴出口33の形成数と切欠空気噴出口35A及び貫通空気噴出口35Bの形成数とは同数であり、各ガス噴出口33から噴出される燃料ガスFと、各空気噴出口35A、35Bから噴出される燃焼用空気Aとは、それぞれ対になって混合されて火炎を形成するようになっている。
図1に示すごとく、複数の切欠空気噴出口35Aから噴出される燃焼用空気Aは、燃焼筒4内において、バーナノズル2の中心軸線の周りを周方向の一方側へ旋回して軸方向先端側へ噴出される。一方、複数の貫通空気噴出口35Bから噴出される燃焼用空気Aは、燃焼筒4内において、バーナノズル2の中心軸線に沿って軸方向先端側へ噴出される。
フランジ部3には、着火用のスパークプラグの先端部を配置するプラグ配置穴36と、火炎が形成されていることを監視するための監視穴37とが形成されている。
【0021】
本例のガスバーナ1においては、フランジ部3の先端面30には、環状凹部31によって中心凸部32と外周凸部34とが形成されている。そして、ガスバーナ1において燃焼を行う際には、中心凸部32のガス噴出口33から径方向外周側へ噴出された燃料ガスFは、環状凹部31を介して外周凸部34へ流れ、外周凸部34の空気噴出口35から噴出された燃焼用空気Aと混合される。これにより、燃料ガスFは、環状凹部31に一旦入ってから燃焼用空気Aと混合されることになる。そのため、燃料ガスFが燃焼用空気Aと急速に混合されることを緩和し、緩慢燃焼を行うことができる。また、ラジアントチューブ5内において燃焼を行うときの燃焼音の発生を抑制することができる。
【0022】
また、本例においては、中心凸部32をフランジ部3に対して直接形成している。これにより、燃料ガスFが噴出され火炎が形成される部位において、バーナノズル2の先端部が火炎によって過剰に炙られることがない。そのため、バーナノズル2の先端部が火炎によって高温に加熱されることを防止することができ、ガスバーナ1の耐久性を向上させることができる。
また、ガス噴出口33から噴出された燃料ガスFと、切欠空気噴出口35A及び貫通空気噴出口35Bから噴出された燃焼用空気Aとによって、フランジ部3の先端側の全周にわたって火炎を分散して形成することができる。これにより、低負荷燃焼時における燃焼安定性を向上させることができる。また、バーナノズル2の先端部の過剰な温度上昇を抑制することができるとともに、NOxの発生量を減少させることができる。
【0023】
それ故、本例のガスバーナ1によれば、緩慢燃焼を行うことができるとともに、低負荷燃焼時における燃焼安定性を向上させることができ、かつ、耐久性を向上させることができる。さらに、本例のガスバーナ1によれば、ラジアントチューブ5内において燃焼を行うときの燃焼音の発生を抑制することができる。
また、本例のバーナノズル2を構成するフランジ部3は、円盤状(板形状)であるが故に、コンパクトであるとともに構造が簡単であり、その製造が容易である。
【符号の説明】
【0024】
1 ガスバーナ
2 バーナノズル
3 フランジ部
30 先端面
31 環状凹部
32 中心凸部
321 内側流入凹部
33 ガス噴出口
34 外周凸部
35A 切欠空気噴出口
35B 貫通空気噴出口
4 燃焼筒
5 ラジアントチューブ
A 燃焼用空気
F 燃料ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼用空気を通過させる燃焼筒と、該燃焼筒内に配置され、燃料ガスを通過させるバーナノズルとを備え、
該バーナノズルの先端部には、該先端部を閉塞するとともに該先端部の全周の径方向外周側へ突出するフランジ部が設けてあり、
該フランジ部の先端面には、上記バーナノズルの中心軸線の周りに環状に形成した環状凹部によって、中心部分には中心凸部が形成されるとともに、外周部分には外周凸部が形成されており、
上記中心凸部の内側には、上記燃料ガスが流入する内側流入凹部が形成してあり、
上記中心凸部には、上記内側流入凹部に流入した上記燃料ガスを径方向外周側へ噴出させるガス噴出口が形成してあり、
上記外周凸部には、上記燃焼用空気を軸方向先端側へ噴出させる空気噴出口が形成してあることを特徴とするガスバーナ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスバーナにおいて、上記ガス噴出口は、上記中心凸部の内周面から外周面に貫通形成して放射状に複数配列してあり、
上記空気噴出口は、上記バーナノズルの中心軸線の周りを旋回して軸方向先端側へ上記燃焼用空気を噴出させるよう、上記外周凸部の外周に切り欠いて形成した切欠空気噴出口と、上記軸方向先端側へ上記燃焼用空気を噴出させるよう、上記外周凸部の上記中心軸線の方向に貫通形成した貫通空気噴出口とが、上記外周凸部において放射状に複数配列してあることを特徴とするガスバーナ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスバーナにおいて、上記燃焼筒は、輻射熱によって被加熱対象を加熱するラジアントチューブ内に配置されていることを特徴とするガスバーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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