説明

ガス分離膜

本発明は、高分岐ポリマーを少なくとも0.1質量%、線状ポリマーを少なくとも0.5質量%および溶剤を少なくとも30質量%を含有する、膜を製造するための組成物に関する。本発明はさらに、前記組成物から得られる膜および該膜の製造方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜を製造するための組成物に関する。本発明はさらに、該組成物を用いて製造することができる膜に関する。
【0002】
ガスを分離するための膜は以前から知られており、このような膜はたとえばC.E.PowellおよびG.G. Qiaoによる概要を示す論文である"発電所の燃料ガスからの二酸化炭素を補足するためのCO2/N2ガス分離ポリマー膜"、Journal of Membrane Science、279(2006)、第1〜49頁に記載されている。
【0003】
これらには特に、分離層またはフィルター層として特定の高性能ポリマー、たとえばポリイミド、ポリスルホンなどを有する膜が含まれる。このような膜はWO2004/050223に詳細に記載されている。
【0004】
さらに、高分岐ポリマーの使用によって架橋した膜が同様に公知である。これらの膜は特にEP−A1457253、L.Shao等のJournal of Membrane Science、238(2004)、153またはT.S.Chung等、Langmuir 20(2004)、2966に記載されている。架橋のためには、使用される膜を、相応する架橋剤を含有する膨潤剤中に添加する。この刊行物に記載されている架橋法によれば選択係数に関する利点が得られる。しかしガス透過性は著しく低下する。
【0005】
さらにWO2006/046795には、ポリマーブレンドをベースとする膜が記載されており、これらは非晶質の線状ポリマーと半結晶質のポリマーとを含む。さらにWO99/40996には、細孔をポリマーで含浸することによって得られる膜が記載されている。この場合、高分岐ポリマーを含む膜も記載されている。しかしこの刊行物には、高分岐ポリマーと線状ポリマーとからなる混合物は記載されていない。さらに高分岐ポリマーは線状ポリマーよりも低い性能を有する。
【0006】
さらにT.Suzuki等のPolymer 45(2004)、第7167〜7171頁には、高分岐ポリイミドから製造された膜が記載されている。しかしその比較は、線状ポリマーからなる膜の選択係数が、高分岐ポリマーからなる膜の選択係数よりも高いことを示している。このことは特に窒素/酸素の透過係数に関して該当する。線状ポリマーと高分岐ポリマーとの混合物はこの刊行物に記載されていない。
【0007】
前記の膜はすでに良好な性能スペクトルを有している。しかし該膜の性能を改善するための持続的な要求が存在する。
【0008】
従来技術を鑑みると、本発明の課題は、特に良好な特性プロファイルを示す膜および該膜を製造するための組成物を提供することである。
【0009】
特別な問題は特に、高い透過係数で高い選択係数を有する物質および特にガスを分離するための膜を製造することである。もう1つの課題は、特に高い機械的特性と長い耐用期間とを有する膜を提供することに見ることができる。さらに該膜は、多数の異なったガス分離のために使用することができるべきである。さらに該膜は、簡単かつ安価に製造することができるべきである。
【0010】
前記の課題および明示的に記載されてはいないものの、この導入部で議論した関連から容易に導き出すことができるか、推論することができるその他の課題は、高分岐ポリマー0.1〜69.5質量%、線状ポリマー0.5〜69.9質量%および溶剤30〜99.4質量%を含有する(この場合、百分率の記載は、これらの3つの成分の合計に対するものである)膜を製造するための組成物、ならびに該組成物を使用して得ることができる膜によって解決される。
【0011】
膜を製造するための組成物が、高分岐ポリマーを少なくとも0.1質量%、線状ポリマーを少なくとも0.5質量%および溶剤を少なくとも30質量%含有することによって、意外にも、特に良好な特性プロファイルを有する膜が得られる。
【0012】
同時に、本発明による組成物および膜によって、一連のその他の利点を達成することができる。たとえば本発明による膜は、高い透過係数で高い選択係数を有する。さらに、本発明による膜は、特に高い機械的安定性および長い耐用期間を有している。さらに該膜は、多数の異なったガス分離のために使用することができる。さらに該膜は簡単かつ安価に製造することができる。
【0013】
本発明による膜を製造するための組成物は、少なくとも0.1質量%、有利には少なくとも0.5質量%、およびとりわけ有利には少なくとも2質量%の高分岐ポリマーを含んでいる。
【0014】
高分岐状の球状ポリマーは専門文献では「樹状ポリマー」とも呼ばれている。この、多官能価モノマーから合成される樹状のポリマーは、2つの異なった範疇に分類することができるが、これは「デンドリマー」ならびに狭義の「高分岐ポリマー」である。デンドリマーは、極めて規則的な、放射対称の発生構造を有している。デンドリマーは単分散の球状ポリマーであるが、というのも高分岐ポリマーと比較して、多工程の合成において高い合成コストをかけて製造されるからである。この場合、この構造は3つの異なった領域によって特徴付けられている。つまり対称中心である多官能価のコア、繰返単位の種々の、十分に規定された放射対称層(発生)および末端基である。狭義の高分岐ポリマーは、デンドリマーに対して多分散性であり、かつその分岐および構造に関して不規則である。デンドリマーに対して、高分岐ポリマーでは、樹状単位と末端単位以外に線状単位も現れる。デンドリマーおよび、それぞれ3つの結合可能性を有する繰り返し単位から構成された高分岐ポリマーのための例をそれぞれ1つずつ以下の構造で示す:
【化1】

【0015】
デンドリマーおよび狭義の高分岐ポリマーを合成するための異なった可能性に関して、
a)Frechet J.M.J、Tomalia D.A.、Dendrimers and Other Dendritic Polymers、John Wiley & Sons、Ltd.、West Sussex、UK2001ならびに
b)Jikei M.、Kakimoto M.、Hyperbranched polymers:a promising new class of materials、Prog. Polym. Sci.、26(2001)、第1233〜1285頁および/または
c)Gao C.、Yan D.、Hyperbranched Polymers:from synthesis to applications、Prog. Polym. Sci.、29(2004)、第183〜275頁
を参照されたいが、これらを参照として記載することによりここで本願に取り入れ、本発明の開示の一部とする。
【0016】
本発明の範囲では、「高分岐ポリマー」の概念を、前記のデンドリマーも、前記の狭義の高分岐ポリマーも含む高分岐ポリマーであると理解する。本発明によれば有利には、多分散性であり、かつその分岐および構造に関して不規則な、狭義の高分岐ポリマーを使用することができる。
【0017】
この関連で、高分岐ポリマーが分子あたり少なくとも3つの繰返単位、有利には分子あたり少なくとも10の繰返単位、さらに有利には分子あたり少なくとも100の繰返単位、さらに有利には少なくとも200の繰り返し単位およびそれよりもさらに有利には少なくとも400の繰返単位を有し、これらはそのつど少なくとも3、有利には少なくとも4の結合可能性を有し、その際、これらの繰返単位の少なくとも3つ、特に有利には少なくとも10、およびさらに有利には少なくとも20がそのつど少なくとも3、有利には少なくとも4の結合可能性を介して、少なくとも3、有利には少なくとも4の別の繰り返し単位と結合していることが好ましい。
【0018】
高分岐ポリマーはしばしば、最大で10000、有利には最大で5000および特に有利には最大で2500の繰り返し単位を有している。
【0019】
有利な実施態様では、高分岐ポリマーは、少なくとも3の繰り返し単位を有しており、これらはそのつど少なくとも3の可能な結合可能性を有しており、その際、これらの繰り返し単位の少なくとも3つは、少なくとも2の可能な結合可能性を有している。
【0020】
ここで、「繰り返し単位」の概念は、有利には高分岐分子中で常に反復する構造であると理解される。「結合可能性」の概念は、有利には、別の繰り返し単位への結合が可能となる繰り返し単位内の機能的な構造であると理解される。前記のデンドリマーもしくは高分岐ポリマーの例に対して、繰り返し単位はそのつど3つの結合可能性(X、Y、Z):
【化2】

を有している構造である。
【0021】
個々の結合単位相互の結合は、縮合重合により、ラジカル重合により、アニオン重合により、カチオン重合により、基間移動重合により、配位重合により、または開環重合により行うことができる。
【0022】
さらに、本発明の範囲における高分岐ポリマーには、くし形ポリマーおよび星形ポリマーが含まれる。「くし形ポリマー」および「星形ポリマー」の概念は、当該分野では公知であり、たとえばRoempp Chemie Lexikon、第2版、CD−ROM版に記載されている。くし形ポリマーは主鎖を有し、該主鎖に側鎖が結合している。有利なくし形ポリマーは、少なくとも5、有利には少なくとも10およびとりわけ有利には少なくとも20の側鎖を有している。主鎖対側鎖の質量比は有利には1:2〜1:200、特に有利には1:4〜1:100の範囲である。この質量比は、製造のために使用される成分から生じる。
【0023】
星形ポリマーは中心を1つ有しており、これはたとえば高分岐ポリマーであってもよい。この中心から、腕とも呼ばれるポリマー鎖が伸びている。有利な星形ポリマーは、少なくとも5、特に有利には少なくとも8およびとりわけ有利には少なくとも15の腕を有する。中心対腕の質量比は、有利には1:2〜1:200、特に有利には1:4〜1:100の範囲である。この質量比は製造のために使用される成分から生じる。
【0024】
高分岐ポリマーは、有利には少なくとも1500g/モル、特に有利には少なくとも3000g/モルの分子量を有している。有利には分子量は最大で100000g/モル、特に有利には最大で50000g/モルである。この数値は、ISO 16014によりゲル透過クロマトグラフィーを用いて測定される分子量(Mw)の平均に対するものであり、この場合、測定はDMF中で行い、かつ標準液としてポリエチレングリコールを使用する(特にBurgath等、Macromol. Chem. Phys.、201(2000)、第782〜791頁を参照のこと)。この場合、ポリスチレン標準液を使用して得られる較正曲線を使用する。
【0025】
有利な高分岐ポリマーの多分散度Mw/Mnは、1.01〜10.0の範囲、特に有利には1.10〜8.0の範囲、およびとりわけ有利には1.2〜5.0の範囲であり、この場合、分子量(Mn)の数平均は同様にISO16014によるゲル透過クロマトグラフィーにより得られる。
【0026】
高分岐ポリマーの粘度は、有利には50mPas〜1000Pasの範囲であり、特に有利には70mPas〜300Pasの範囲であり、その際、これらの値は、30s-1で球体とプレートとの間での振動粘度測定法を使用して測定される。溶融粘度はASTM D4440により測定される。溶融粘度を測定するための温度は、220℃である。高融点ポリマーの場合、この温度は240℃または260℃であり、さらに融点の高いポリマーの場合には、280℃、300℃、320℃、340℃または360℃である。常に選択すべき温度は、ポリマーが十分加工可能である最も低い温度である。従って十分に高い溶融粘度が所望される。というのは、本発明による膜は十分な機械的安定性を有しているべきだからである。
【0027】
高分岐ポリマーの分岐度は、有利には1〜95%、好ましくは2〜75%の範囲である。分岐度は、ポリマーを製造するために使用される成分ならびに反応条件に依存する。分岐度を測定するための方法は、D.Hoelter、A.Burgath、H.Frey、Acta Polymer.、1997年、48、30に記載されている。分岐度はさらに少なくとも5%、少なくとも10%または少なくとも25%であってもよい。
【0028】
高分岐ポリマーは有利には350℃より低い、好ましくは275℃より低い、特に有利には250℃より低い融点を有している。本発明の特別な実施態様では、高分岐ポリマーの融点は、少なくとも100℃、有利には少なくとも150℃、および特に有利には少なくとも170℃である。高分岐ポリマーのガラス転移温度は、有利には175℃より低く、好ましくは150℃より低く、かつ特に有利には125℃より低い。有利には高分岐ポリマーのガラス転移温度は少なくとも0℃、特に有利には少なくとも10℃である。有利には高分岐ポリマーは、ガラス転移温度も融点も有していることができる。融点およびガラス転移温度は、ISO11357−3による示差走査熱量測定(DSC)により測定される。
【0029】
有利には高分岐ポリマーは高い加水分解安定性を有している。
【0030】
有利な高分岐ポリマーには、特にポリアミド、ポリエステルアミド、ポリアミドアミン、ポリイミドアミン、ポリプロピレンアミン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリウレタンおよびポリ尿素が含まれ、これらは特に有利な高分岐ポリマーである。このようなポリマーは自体公知であり、かつ多種多様に記載されている。これらのポリマーは、官能基、たとえばイオン基を有していてもよい。
【0031】
有利な高分岐ポリマーは、極性の末端基、好ましくはカルボキシル基またはアミノ基を有していてもよい。特に有利な高分岐ポリマーは、末端のアミノ基を有しており、その際、第一級および第二級アミノ基が有利である。
【0032】
有利には本発明により使用される高分岐ポリマーは、ポリアミド単位を有している。ポリアミド単位を有する高分岐ポリマーは、特にEP1065236に記載されている。
【0033】
本発明の特に有利な変法の範囲では、以下のモノマー:
a)少なくとも11の窒素原子を有し、かつ少なくとも500g/モルの数平均分子量Mnを有するポリアミンを、グラフトコポリマーに対して0.5〜25質量%、および
b)ポリアミドを形成するモノマー
から誘導されている、少なくとも1のポリアミドグラフトコポリマーを使用することができる。
【0034】
ポリアミンとしてたとえば以下の物質群を使用することができる:
ポリビニルアミン(Roempp Chemie Lexikon、第9版、第6巻、第4921頁、Georg Thieme Verlag Stuttgart、1992年)、
交互に存在するポリケトンから製造されるポリアミン(DE−OS19654058)、
デンドリマー、たとえば((H2N−(CH232N−(CH232−N(CH22−N((CH22−N−((CH23−NH222(DE−A19654179)または3,15−ビス(2−アミノエチル)−6,12−ビス[2−[ビス(2−アミノエチル)アミノ]エチル]−9−[2−[ビス[2−ビス(2−アミノエチル)アミノ)エチル]アミノ]エチル]3,6,9,12,15−ペンタアザヘプタデカン−1,17−ジアミン(J.M.Warakomski、Chem. Mat.1992年、第1000〜1004頁)、
4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾールの重合およびその後の加水分解により製造することができる線状ポリエチレンイミン(Houben−Weyl、Methoden der Organischen Chemie、第E20巻、第1482〜1487頁、Georg Thieme Verlag Stuttgart、1987年)、
アジリジンの重合により得られ(Houben−Weyle、Methoden der Organischen Chemie、第20巻、第1482〜1487頁、Georg Thieme Verlag Stuttgart、1987年)、かつ通常は以下のアミノ基分布を有する分枝鎖状ポリエチレンイミン:
第一級アミノ基25〜46%、
第二級アミノ基30〜45%および
第三級アミノ基16〜40%。
【0035】
有利な高分岐ポリマーを製造するために使用することができるポリアミンは、有利な場合には、最大で20000g/モル、特に有利には最大で10000g/モルおよびとりわけ有利には最大で5000g/モルの数平均分子量Mnを有する。
【0036】
ポリアミド形成モノマーとして、ポリアミドを製造するために使用されるジアミンとジカルボン酸もしくはこれらの誘導体との公知の混合物を使用することができる。本発明の有利な1実施態様によれば、前記のポリアミドグラフトコポリマーを製造するために、ラクタムおよび/またはω−アミノカルボン酸を使用することができる。有利なラクタムおよび/またはω−アミノカルボン酸は、4〜19個、および特に6〜12個の炭素原子を有する。特に有利にはε−カプロラクタム、ε−アミノカプロン酸、カプリルラクタム、ω−アミノカプリル酸、ラウリンラクタム、ω−アミノドデカン二酸および/またはω−アミノウンデカン酸を使用することができる。
【0037】
ポリアミドグラフトコポリマーを製造するためのポリアミン対ポリアミド形成モノマーの質量比は、有利には1:2〜1:200、特に有利には1:4〜1:100の範囲である。この質量比は、製造のために使用される成分から生じる。
【0038】
特別な実施態様によれば、前記のポリアミドグラフトコポリマーは、オリゴカルボン酸から誘導された単位を有していてもよい。
【0039】
オリゴカルボン酸として、6〜24個の炭素原子を有する任意のジカルボン酸またはトリカルボン酸、たとえばアジピン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、トリメシン酸および/またはトリメリット酸を使用することができる。
【0040】
有利にはオリゴカルボン酸は、そのつどラクタムもしくはω−アミノカルボン酸に対して、ジカルボン酸0.015〜約3モル%および/またはトリカルボン酸0.01〜約1.2モル%から選択される。
【0041】
ジカルボン酸を使用する場合には、そのつどラクタムもしくはω−アミノカルボン酸に対して、有利には0.03〜2.2モル%、特に有利には0.05〜1.5モル%、とりわけ有利には0.1〜1モル%および殊には0.15〜0.65モル%を使用し、トリカルボン酸を使用する場合には、そのつどラクタムもしくはω−アミノカルボン酸に対して、有利には0.02〜0.9モル%、特に有利には0.025〜0.6モル%、とりわけ有利には0.03〜0.4モル%および殊には0.04〜0.25モル%を使用する。オリゴカルボン酸を併用することにより、加水分解安定性が改善される。
【0042】
高分岐ポリマーとして使用することができるポリアミドグラフトコポリマーのアミノ基濃度は、有利には100〜2500ミリモル/kgの範囲、特に150〜1500ミリモル/kgの範囲、とりわけ有利には250〜1300ミリモル/kgの範囲および殊に有利には300〜1100ミリモル/kgの範囲である。アミノ基とはここでは、および以下では、アミノ末端基のみではなく、ポリアミンに場合により存在する第二級もしくは第三級アミノ官能基であるとも理解する。
【0043】
さらに、所望の場合には、3〜50個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式、芳香族、アラルキルおよび/またはアルキルアリール置換されたモノカルボン酸、たとえばラウリル酸、不飽和脂肪酸、アクリル酸または安息香酸を、ポリアミドグラフトコポリマーを製造するための調節剤として使用することができる。これらの調節剤を使用して、分子の形状を変えることなくアミノ基の濃度を低下させることができる。さらにこのような方法で、官能基、たとえば二重結合もしくは三重結合などを導入することができる。
【0044】
有利には、ポリアミン、好ましくはポリエチレンイミン0.5質量%〜20質量%、ポリアミド形成モノマー、好ましくはラクタム、たとえばカプロラクタムまたはラウリンラクタム79質量%〜99質量%、およびオリゴカルボン酸0質量%〜1.0質量%(百分率の記載はポリマーの全質量に対する)を含む高分岐ポリアミドグラフトコポリマーを使用する。
【0045】
本発明の組成物は、線状ポリマーを少なくとも0.5質量%、好ましくは少なくとも5質量%、およびとりわけ有利には少なくとも10質量%含有する。線状ポリマーの概念は、当業界では公知であり、この場合、ポリマーとは、主鎖の鎖長が、場合により存在する側鎖の鎖長よりも実質的に長い主鎖を有するものであると理解する。有利には、側鎖中に含まれる炭素原子に対する主鎖中に含まれる炭素原子の質量比は、少なくとも10、特に有利には少なくとも20、およびとりわけ有利には少なくとも30である。
【0046】
有利には線状ポリマーは、少なくとも1000g/モル、特に有利には少なくとも5000g/モルおよびとりわけ有利には少なくとも10000g/モルの分子量を有する。有利には分子量は、最大で1000000g/モル、特に有利には最大で500000g/モル、およびとりわけ有利には最大で250000g/モルである。この数値は、ISO16014によるゲル透過クロマトグラフィーにより測定される分子量(Mw)の質量平均に対するものである。
【0047】
有利な線状ポリマーの多分散度Mw/Mnは、有利には1.01〜5.0の範囲、特に有利には1.10〜4.0の範囲、およびとりわけ有利には1.2〜3.5の範囲であり、この場合、分子量(Mn)の数平均は同様に、ISO16014によるゲル透過クロマトグラフィーにより得られる。
【0048】
結晶度に応じて、線状ポリマーは、ガラス転移温度および/または融点を有する。線状ポリマーは有利には400℃より低い、有利には370℃より低い融点を有する。本発明の特別な実施態様によれば、線状ポリマーの融点は、少なくとも100℃、有利には少なくとも200℃、および特に有利には少なくとも300℃である。線状ポリマーのガラス転移温度は有利には400℃より低く、好ましくは370℃より低い。有利には線状ポリマーのガラス転移温度は少なくとも0℃、特に有利には少なくとも200℃およびとりわけ有利には少なくとも300℃である。特に有利な線状ポリマーは、ガラス転移温度を有する。融点およびガラス転移温度の測定は、ISO11357−3による示差走査熱分析法(DSC)により測定される。
【0049】
線状ポリマーの粘度は有利には50mPas〜500000Pasの範囲、特に有利には100mPas〜10000Pasの範囲であり、この場合、この数値は、球体およびプレートの間で30s-1において振動粘度測定により測定される。溶融粘度はASTM D4440により測定される。溶融粘度を測定するための温度は、220℃である。融点の高いポリマーの場合、この温度は240℃または260℃であり、これよりもさらに融点の高いポリマーの場合、280℃、300℃、320℃、340℃または360℃である。常に、ポリマーが十分に加工可能である、できる限り低い温度を選択すべきである。従って、十分に高い溶融粘度が所望される。というのも、本発明による膜は、十分な機械的安定性を有しているべきだからである。
【0050】
有利な線状ポリマーには、特にポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアリーレート、ポリエーテルアリレート、ポリカーボネート、ポリピロロン、ポリアセチレン、ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリベンズイミダゾール、ポリオキサジアゾールおよびポリアニリンが含まれる。これらのポリマーは単独で、または混合物として使用することができる。さらに、前記のポリマーから誘導されているコポリマーを使用することもできる。
【0051】
特に有利に使用されるポリイミドは、特にWO2006/075203、WO2004/050223およびC.E.PowellおよびG.G.Qiao、Journal of Membrane Science、279(2006年)、第1〜49頁に記載されている。ポリアミド自体は公知であり、かつ式−CO−NR−CO−の構造単位を有する。これらの構造単位は特に環、有利には5員環の構成部分であってもよい。
【0052】
ポリイミドは有利には、25000〜500000g/モルの範囲の質量平均分子量を有していてよい。
【0053】
有利なポリイミドは、無水物とアミンおよび/またはイソシアネートとの縮合により得ることができる。有利にはこの場合、二官能性の無水物が、二官能性のイソシアネートと、強極性の非プロトン性溶剤、たとえばNMP、DMF、DMAcまたはDMSO中で、CO2を分離しながら反応する。あるいは二官能性の無水物は、二官能性のアミンと反応してもよく、その際、この変法では最初に形成されたポリアミド酸を第二段階でイミド化しなくてはならない。このイミド化は、従来、150℃を越え350℃までの温度で熱により、または水を除去する成分、たとえば無水酢酸と、塩基、たとえばピリジンとを用いて室温で化学的に実施される。
【0054】
ポリイミドを製造するために有利なモノマー成分は特に芳香族ジイソシアネート、特に2,4−ジイソシアナトトルエン(2,4−TDI)、2,6−ジイソシアナトトルエン(2,6−TDI)、1,1′−メチレン−ビス[4−イソシアナトベンゼン](MDI)、1H−インデン−2,3−ジヒドロ−5−イソシアナト−3−(4−イソシアナトフェニル)−1,1,3−トリメチル(CAS42499−87−6)、芳香族の酸無水物、たとえば5,5′−カルボニルビス−1,3−イソベンゾフランジオン(ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、BTDA)、ピロメリット酸無水物(PMDA)である。これらのモノマー成分は単独で、または混合物として使用することができる。
【0055】
本発明の特別な実施態様によれば、ポリイミドとして、5,5′−カルボニルビス−1,3−イソベンゾフランジオン(BTDA)と2,4−ジイソシアナトトルエン(2,4−TDI)、2,6−ジイソシアナトトルエン(2,6−TDI)、1,1′−メチレン−ビス[4−イソシアナトベンゼン](MDI)とを含む混合物の反応から得ることができる。BTDAの割合はこの場合、使用される酸無水物に対して、有利には少なくとも70モル%、特に有利には少なくとも90モル%、および特に有利には約100モル%である。この場合、2,4−TDIの割合は、使用されるジイソシアネートに対して、有利には少なくとも40モル%、特に有利には少なくとも60モル%、およびとりわけ有利には約64モル%である。2,6−TDIの割合は、使用されるジイソシアネートに対してこの実施態様によれば有利には少なくとも5モル%、特に有利には少なくとも10モル%および特に有利には約16モル%である。
【0056】
MDIの割合は、この実施態様によれば使用されるジイソシアネートに対して有利には少なくとも10モル%、特に有利には少なくとも15モル%、および特に有利には少なくとも約20モル%である。
【0057】
有利にはさらにポリイミドとして、5,5′−カルボニルビス−1,3−イソベンゾフランジオン(BTDA)およびピロメリット酸無水物(PMDA)と、2,4−ジイソシアナトトルエン(2,4−TDI)および2,6−ジイソシアナトトルエン(2,6−TDI)を含有する混合物の反応から得ることができるポリマーを使用する。この場合、BTDAの割合は、使用される酸無水物に対して、有利には少なくとも40モル%、特に有利には少なくとも50モル%、および特に有利には約60モル%である。この実施態様ではピロメリット酸無水物(PMDA)の割合は、使用される酸無水物に対して、有利には少なくとも10モル%、特に有利には少なくとも20モル%、および特に有利には約40モル%である。2,4−TDIの割合はこの実施態様によれば、使用されるジイソシアネートに対して少なくとも40モル%、特に有利には少なくとも60モル%、およびとりわけ有利には約64モル%である。2,6−TDIの割合は、この実施態様によれば、使用されるジイソシアネートに対して、有利には少なくとも5モル%、特に有利には少なくとも10モル%、およびとりわけ有利には約16モル%である。
【0058】
ホモポリマー以外にさらに、イミド成分以外に別の官能基を主鎖中に有するコポリマーもポリイミドとして使用することができる。本発明の特別な実施態様によれば、ポリイミドは少なくとも50質量%まで、有利には少なくとも70質量%まで、および特に有利には少なくとも90質量%までが、ポリイミドを生じるモノマー成分から誘導されていてもよい。
【0059】
特に有利に使用すべきポリイミドは、商品名P84でInspec Fibres GmbH(Lenzing/オーストリア在)から、またはHP−Polymer GmbH(Lenzing/オーストリア在)から、および商品名MatrimidでHuntsman Advanced Materials GmbH/Bergkamenから入手することができる。
【0060】
本発明による組成物は、少なくとも30質量%、有利には少なくとも50質量%、および特に有利には少なくとも70質量%の溶剤を含有する。
【0061】
前記の物質のための溶剤は自体公知である。有利な溶剤には、特に極性有機溶剤、特に双極性の非プロトン性溶剤、芳香族アミン、フェノールまたはフッ化炭化水素が挙げられる。有利なフェノールには特にm−クレゾール、チモール、カルバクロールおよび2−t−ブチルフェノールが含まれる。
【0062】
特に有利には、双極性の非プロトン性溶剤を使用することができる。この溶剤は、特にRoempp Chemie Lexikon、第2版、CD−ROMに記載されている。有利な双極性の非プロトン性溶剤には、特にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドが含まれる。
【0063】
さらに本発明による組成物は、少なくとも1の架橋剤を含有していてよい。「架橋剤」の概念は特に、高分岐ポリマーの架橋を生じることができる化合物であると理解される。これらの化合物は相応して、高分岐ポリマーの官能基と反応することができる官能基を、少なくとも2つ、有利には少なくとも3つ、および特に有利には少なくとも4つ有している。
【0064】
有利には架橋剤は、エポキシ基、イソシアネート基および/または酸基を有しており、その際、これらの基の相応する誘導体、たとえば酸ハロゲン化物または酸無水物が含有されていてもよい。
【0065】
有利な架橋剤には特にエポキシ樹脂、たとえばビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応により得られ、たとえば商品名EpikoteでHexion Specialty Chemicals Wessling GmbH/Wesslingから入手することができるものが挙げられる。さらに有利であるのは酸変性された、もしくは無水物変性されたポリマー、たとえばポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンビニルアセテートであり、これらはたとえばDuPont社から、商品名Bynelで市販されている。さらに有利であるのは、ブロックトポリイソシアネートである。さらに有利であるのは、カルボジイミドポリマー、たとえば商品名StabaxolでRhein Chemie Rheinau GmbH(Mannheim在)から市販されている製品である。さらに有利であるのはまた、低分子量の多官能価化合物、たとえば二官能性無水物、たとえばベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、もしくはその他の多官能価酸もしくはこれらの誘導体およびまた多官能価イソシアネートもしくはこれらのブロックされた誘導体である。
【0066】
組成物中での架橋剤の質量割合は、有利には0.01〜5%の範囲であり、かつ特に有利には0.1〜1%の範囲であってよく、その際、この記載は、膜を製造するために使用される組成物に対するものである。
【0067】
架橋剤に対する高分岐ポリマーの質量比は、有利には50〜1の範囲、および特に有利には20〜1の範囲であってよい。
【0068】
本発明による組成物は有利には、その粘度がDIN53019により測定して、特に有利には1〜50Pasの範囲、特に2〜25Pasおよびとりわけ5〜20Pasの範囲にある溶液である。
【0069】
本発明による組成物は特に、たとえばガスのような物質を分離することができる膜を製造するために使用することができる。このために該組成物をたとえば公知の方法によりキャスティングして膜を形成するか、または中空繊維に加工することができる。有利なキャスティング法は特にN. OkuiおよびA. Kubono[Prog. Polym. Sci. 19(1994)、第389〜438頁]、J.D.Swalen[Annu. Rev.Mater.Sci.21(1991)、第373〜408頁]ならびにJ. Xu[J.Appl. Polym. Phys. 73(1999)、第521〜526頁]に記載されている。
【0070】
本発明による膜は、本発明による組成物を使用して得られる少なくとも1のフィルター層を含む。これは有利には溶液拡散メカニズムによって行われる。本発明の有利な膜は、少なくとも1の支持層と、少なくとも1の接着層とを有する。該膜はさらに、フィルター層上に施与された保護層を有していてもよい。相応する膜構造は、Baker、Ind.Eng.Chem.Res.2002、41、第1393〜1411頁に記載されている。その他に、S.Pereira NunesおよびK.V.Peinemann(編)による著書"Membrane Technology in the Chemical Industry"、2001年4月、Wiley−VCH、Weinheimも参照されたい。
【0071】
相応して本発明は、少なくとも1のフィルター層を有し、該フィルター層が、線状ポリマーから誘導される少なくとも1の成分A)と、高分岐ポリマーから誘導される少なくとも1の成分B)とを含んおり、その際、成分A)対成分B)の質量比が、0.05:1〜1.0:0.05の範囲である膜を提供する。有利な実施態様によれば、成分A)対成分B)の質量比は、20:1〜1:1の範囲、特に有利には10:1〜1.5:1の範囲、およびとりわけ有利には5:1〜2:1の範囲であってよい。
【0072】
成分A)は、前記の線状ポリマーから、および成分B)は前記の高分岐ポリマーから誘導されている。成分という概念は、線状ポリマーが、高分岐ポリマーとの物理的な混合物(ブレンドとも呼ばれる)として存在するか、または高分岐ポリマーと、たとえばイオン結合もしくは共有結合によって結合していてよいことを明らかにするものである。
【0073】
本発明の特別な1実施態様によれば、膜のフィルター層は、線状ポリマーから誘導されている成分A)を少なくとも5質量%、有利には少なくとも15質量%、およびとりわけ有利には少なくとも20質量%含有していてよい。
【0074】
有利には膜のフィルター層は、高分岐ポリマーから誘導されている成分B)を、1質量%、有利には少なくとも5質量%、およびとりわけ有利には少なくとも10質量%含有していてよい。
【0075】
フィルター層のそのつどの成分の質量割合ならびに成分A)とB)との質量比は、フィルター層を製造するために使用される組成物の質量から生じる。
【0076】
本発明による膜のフィルター層は、有利には25μmより小さい厚さ、特に有利には10μmより小さい厚さ、とりわけ有利には1μmより小さい厚さ、および殊には250nmより小さい厚さを有しており、これは透過型電子顕微鏡により測定することができる。膜厚の下限は、膜の機械的要求と緻密さに対する要求から生じる。
【0077】
吸水率(=水中での膨潤性)は、ISO62(完全な接触における吸水率)により測定することができる。この場合、試験体として、たとえば加熱プレス中でのプレス工程により出発材料から製造される板を使用する。本発明によればたとえば相応する試験体は、キャスティング法により製造することもでき、この場合、特に本発明による組成物を使用することができる。
【0078】
吸水率は重量法により測定される。有利には吸水率は、0.1%〜8%の範囲、好ましくは0.5%〜5%、特に有利には0.7%〜2%の範囲である(質量%)。
【0079】
非水媒体の吸収量を測定するためには、ISO62に記載されているように、23℃での完全な接触において試験される。相応する媒体、たとえばメタノールは、有利には0.1%〜8%、好ましくは0.5%〜5%、特に有利には0.7%〜2%の範囲の質量増加を生じる(質量%)。
【0080】
フィルター層は、高い温度安定性を有している。特別の実施態様によれば、温度安定性は、少なくとも100℃、有利には少なくとも150℃、特に少なくとも200℃である。フィルター層の温度安定性は、ASTM D1434に相応する試験装置により測定される。このためには、試験セルを特定の安定温度、たとえば100℃、特に150℃または有利には200℃に加熱し、かつ一定時間の経過後に、窒素および酸素に対する膜の透過性および選択性を、ASTM D1434により測定する。有利には1000h後に、10%未満、好ましくは5%未満および特に有利には2%未満の透過性の低減が判明した。選択性の低減は、温度150℃で1000hの測定時間の後で、10%未満、有利には5%未満、および特に有利には2%未満である。
【0081】
本発明による膜のフィルター層は、優れた機械的特性を有している。従って有利なフィルター層は、少なくとも500MPa、特に有利には少なくとも750MPa、特に少なくとも1000MPaの弾性率を有している(この場合、弾性率はASTM D882により測定される)。
【0082】
本発明による膜は、ガス混合物を分離するために使用することができる。この混合物は特に酸素、窒素、二酸化炭素、水素、炭化水素ガス、特にメタン、エタン、プロパン、ブタンおよびアンモニアを含んでいてよく、その際、これらの混合物は2種類、3種類またはそれ以上の前記のガスを含んでいてもよい。
【0083】
有利な実施態様によれば本発明による膜は特に、酸素を含有するガス混合物を分離するために使用することができる。有利にはこの場合、膜は高い酸素透過性を有する。有利にはその酸素透過性は、35℃でASTM D1434により測定して、少なくとも0.05Barrer、特に有利には少なくとも0.1Barrer、とりわけ有利には少なくとも0.15Barrerである。とりわけ有利な実施態様によれば、35℃でASTM D1434により測定して、有利に少なくとも0.5Barrer、特に有利には少なくとも1.0Barrerおよびとりわけ有利には少なくとも2.0Barrerの酸素透過性を有する膜が得られる。
【0084】
特別な実施態様によれば、本発明による膜は、特に窒素を含有するガス混合物を分離するために使用することができる。有利には該膜はこの場合、高い窒素透過係数を有する。有利には窒素透過係数は、35℃でASTM D1434により測定して、少なくとも0.001Barrer、特に有利には少なくとも0.01Barrer、とりわけ有利には少なくとも0.015Barrerである。
【0085】
もう1つの特別な実施態様によれば、該膜は低い窒素透過係数を有していてもよく、このことによって高い選択係数を達成してもよい。本発明のこの実施態様によれば、窒素透過性は、35℃でASTM D1434により測定して、有利には最大で0.1Barrer、特に有利には最大で0.05Barrerであってよい。
【0086】
透過性はたとえば高分岐ポリマーの種類と量ならびに線状ポリマーの種類と量によって調整することができ、その際、高分岐ポリマーの割合が高いと、比較的高い透過性につながりうる。線状ポリマーの割合が高い場合には、高い選択係数が生じるが、このことによって限定されるべきではない。
【0087】
本発明による膜は優れた分離能を有しており、この場合、この分離能は特に膜に対するガスの異なった透過性から生じる。窒素対酸素の透過係数の比として定義される、有利な膜の選択係数は、有利には少なくとも2、特に有利には少なくとも5、とりわけ有利には少なくとも7および特に有利には少なくとも15である。
【0088】
本発明の膜は任意の公知の形状で使用することができる。従って該膜は、平坦膜以外に、中空繊維膜の形であってもよい。
【0089】
意外なことに、比較的少量の溶剤を用いて膜を製造することができるので、固体含有率は比較的高い。この利点は特に、高分岐ポリマーの使用により生じる。このことにより、更なる利点を達成することができる。たとえば爆発保護が容易になる。従って膜の製造を実現する際に、同じ安全性を達成するために必要とされる技術的措置が僅かである。さらに、使用される溶剤が少ないことによって、環境保護の観点での利点ならびに膜の製造に関与する人員の安全とが結びつけられる。さらに、同様に溶剤の使用下で行わなくてはならない膨潤工程を省略することができる。
【0090】
以下では実施例により本発明を詳細に説明するが、ただしこのことによって限定されるべきではない。
【0091】
実施例
製造例A(PEI−g−PA6の製造)
10lの攪拌オートクレーブ中に以下の原料を装入した:
カプロラクタム 4.454kg、
脱塩水 0.264kg、
次リン酸(水中50%w/w) 0.006kg。
【0092】
容器内容物を不活性化し、245℃にし、撹拌下に自ずと調整される圧力下で6時間放置し、かつ90分以内で10バールになるまで放圧した。次いでエアロックを介してLupasol(登録商標)G100(モル質量5100のポリエチレンイミンの50%水溶液、BASF AG社)0.570kgを反応器内容物へと圧入し、かつ自ずと調整される圧力16バールで30分間、溶融液に攪拌導入した。引き続き、反応器を3時間以内に放圧し、かつさらに2時間、25l/hの窒素流下に攪拌した。容器内容物を溶融ポンプ(Schmelzepumpe)によりストランドとして排出し、かつ造粒した。該ポリマーは、以下の分析値を有していた:
相対溶液粘度(m−クレゾール中0.5%、25℃):1.20、
カルボキシ末端基(ベンジルアルコール中でKOHに対するアルカリ滴定) 10ミリモル/kg、
アミノ末端基(m−クレゾール中で過塩素酸に対する酸滴定) 1116ミリモル/kg、
融点:208℃。
【0093】
製造例B(PEI−g−PA6の製造)
製造例Aに相応して、10lの攪拌オートクレーブ中で以下の原料を反応させた:
カプロラクタム 4.535kg、
ドデカン二酸 0.014kg、
脱塩水 0.264kg、
次リン酸(水中50%w/w)0.006kg、
ならびにエアロックを介してLupasol(登録商標)G100を追加で0.387kg。得られた顆粒は以下の特性値を有していた:
相対溶液粘度(m−クレゾール中0.5%、25℃):1.30、
カルボキシ末端基(ベンジルアルコール中でKOHに対するアルカリ滴定) 7ミリモル/kg、
アミノ末端基(m−クレゾール中で過塩素酸に対する酸滴定) 581ミリモル/kg、
融点:214℃。
【0094】
製造例C(PEI−g−PA6の製造)
製造例Aに相応して、10lの攪拌オートクレーブ中で以下の原料を反応させた:
カプロラクタム 4.441kg、
ドデカン二酸 0.014kg、
脱塩水 0.264kg、
次リン酸(水中50%w/w)0.006kg、
ならびにエアロックを介してLupasol(登録商標)G100を追加で0.569kg。得られた顆粒は以下の特性値を有していた:
相対溶液粘度(m−クレゾール中0.5%、25℃):1.22、
カルボキシ末端基(ベンジルアルコール中でKOHに対するアルカリ滴定) 12ミリモル/kg、
アミノ末端基(m−クレゾール中で過塩素酸に対する酸滴定) 775ミリモル/kg、
融点:211℃。
【0095】
比較例1
(a)カルバクロール90gおよび(b)P84(ポリイミド、Inspec Fibres GmbHから入手)10gからなる10%溶液を、成分(a)および(b)の混合によって製造した。この溶液を、フィルム塗布装置(Elcometer社)を用いてガラス板上に施与し、その際、湿潤膜厚は、250μmであった。膜の乾燥は窒素雰囲気下(室温で24時間および引き続き150℃で48時間)行った。製造された膜は、ASTM D1434による装置上で35℃において、ガスとして酸素および窒素に基づいて測定した。
【0096】
該膜は、0.19Barrerの酸素透過係数(O2)と、0.013Barrerの窒素透過係数とを有していた。このことにより、選択係数は14.6である。
【0097】
例1
(a)カルバクロール90gおよび
(b)P84(ポリイミド、Inspec Fibres GmbHから入手)9gおよび
(c)製造例Aからの高分岐ポリマー1g
からなる10%溶液を、成分(a)〜(c)の混合によって製造した。この溶液を、フィルム塗布装置(Elcometer社)を用いてガラス板上に施与し、その際、湿潤膜厚は、250μmであった。膜の乾燥は窒素雰囲気下(室温で24時間および引き続き150℃で48時間)行った。
【0098】
製造された膜は、ASTM D1434による装置上で35℃において、ガスとして酸素および窒素に基づいて測定した。
【0099】
該膜は、0.101Barrerの酸素透過係数(O2)と、0.002Barrerの窒素透過係数とを有していた。このことにより、選択係数は48である。
【0100】
さらにこの膜の温度安定性を試験した。150℃で1000hの測定時間後に、ASTM D1434により測定される透過係数および選択係数の低下は見られなかった。
【0101】
例2
(a)カルバクロール90gおよび(b)P84(ポリイミド、Inspec Fibres GmbHから入手)9gおよび(c)製造例Bからの高分岐ポリマー1gからなる10%溶液を、成分(a)〜(c)の混合によって製造した。この溶液を、フィルム塗布装置(Elcometer社)を用いてガラス板上に施与し、その際、湿潤膜厚は、250μmであった。膜の乾燥は窒素雰囲気下(室温で24時間および引き続き150℃で48時間)行った。
【0102】
製造された膜は、ASTM D1434による装置上で35℃において、ガスとして酸素および窒素に基づいて測定した。
【0103】
該膜は、0.297Barrerの酸素透過係数(O2)と、0.008Barrerの窒素透過係数とを有していた。このことにより、選択係数は37.1である。
【0104】
例3
a)カルバクロール90gおよび(b)P84(ポリイミド、Inspec Fibres GmbHから入手)9gおよび(c)製造例Cからの高分岐ポリマー1gからなる10%溶液を、成分(a)〜(c)の混合によって製造した。この溶液を、フィルム塗布装置(Elcometer社)を用いてガラス板上に施与し、その際、湿潤膜厚は、250μmであった。膜の乾燥は窒素雰囲気下(室温で24時間および引き続き150℃で48時間)行った。
【0105】
製造された膜は、ASTM D1434による装置上で35℃において、ガスとして酸素および窒素に基づいて測定した。
【0106】
該膜は、0.343Barrerの酸素透過係数(O2)と、0.014Barrerの窒素透過係数とを有していた。このことにより、選択係数は24.5である。
【0107】
比較例2
純粋な高分岐PEI−g−PA6((a)カルバクロール90gおよび(b)製造例Aからの高分岐ポリマー10gからなる溶液)から、機械的に安定した膜を製造することはできなかった。
【0108】
比較例3
さらに、(a)カルバクロール90g、(b)P84(ポリイミド、Inspec Fibres GmbHから入手)9gおよび(c)Ultramid B27E(BASF AGのPA6)1gからなる10%溶液から相応して得られる膜は、酸素および窒素に関して<0.005Barrerの透過性を有するのみであることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜を製造するための組成物において、該組成物が、高分岐ポリマー0.1〜69.5質量%、線状ポリマー0.5〜69.9質量%および溶剤30〜99.4質量%を含有する(この場合、百分率の記載は、これらの3つの成分の合計に対する)ことを特徴とする、膜を製造するための組成物。
【請求項2】
高分岐ポリマーが、1500〜100000g/モルの範囲の分子量を有することを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
高分岐ポリマーが、1〜95%の分岐度を有することを特徴とする、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
高分岐ポリマーが、10〜95%の分岐度を有することを特徴とする、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
高分岐ポリマーが、末端のアミノ基を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
高分岐ポリマーが、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリアミドアミン、ポリイミドアミン、ポリプロピレンアミン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリウレタンおよび/またはポリ尿素であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
高分岐ポリマーが、以下のモノマーから誘導される単位を有するグラフトコポリマー:
a)少なくとも11の窒素原子を有し、かつ少なくとも500g/モルの数平均分子量Mnを有するポリアミンを、グラフトコポリマーに対して0.5〜25質量%、および
b)ポリアミドを形成するモノマー
であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
線状ポリマーが、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルアリレート、ポリカーボネート、ポリピロロン、ポリアセチレン、ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンズイミダゾール、ポリオキサジアゾール、ポリエーテルエーテルケトンおよび/またはポリアニリンであることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
線状ポリマーが、1000〜1000000g/モルの範囲の分子量を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
溶剤が、極性有機溶剤であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
組成物が架橋剤を含むことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
物質を分離するための膜において、該膜が、請求項1から11までのいずれか1項記載の組成物を使用して得ることができる少なくとも1のフィルター層を有していることを特徴とする、物質を分離するための膜。
【請求項13】
フィルター層が、線状ポリマーから誘導されている少なくとも1の成分A)、および高分岐ポリマーから誘導されている少なくとも1の成分B)を含み、成分A)対成分B)の質量比が、0.05:1〜1:0.05の範囲であることを特徴とする、請求項12記載の膜。
【請求項14】
成分A)対成分B)の質量比が、5:1〜2:1の範囲であることを特徴とする、請求項13記載の膜。
【請求項15】
成分A)および成分B)が、相互に結合されていることを特徴とする、請求項13または14記載の膜。
【請求項16】
成分A)が、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルアリレート、ポリカーボネート、ポリピロロン、ポリアセチレン、ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンズイミダゾール、ポリオキサジアゾール、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリアニリンを含む群から選択されている少なくとも1のポリマーを含むことを特徴とする、請求項13から15までのいずれか1項記載の膜。
【請求項17】
成分B)が、少なくとも1の高分岐ポリアミド、ポリエスエルアミド、ポリアミドアミン、ポリイミドアミン、ポリプロピレンアミン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリウレタンおよび/またはポリ尿素を含むことを特徴とする、請求項13から16までのいずれか1項記載の膜。
【請求項18】
成分B)の高分岐ポリマーのモル質量が、少なくとも3000g/モルであることを特徴とする、請求項13から17までのいずれか1項記載の膜。
【請求項19】
膜が、少なくとも0.05Barrerの酸素透過係数を有することを特徴とする、請求項12から18までのいずれか1項記載の膜。
【請求項20】
膜が、少なくとも0.001Barrerの窒素透過係数を有することを特徴とする、請求項12から19までのいずれか1項記載の膜。
【請求項21】
膜が、少なくとも2の窒素/酸素選択係数を有することを特徴とする、請求項12から20までのいずれか1項記載の膜。
【請求項22】
フィルター層が、25μmより小さい厚さを有することを特徴とする、請求項12から21までのいずれか1項記載の膜。
【請求項23】
フィルター層が、少なくとも100℃の温度安定性を有することを特徴とする、請求項12から22までのいずれか1項記載の膜。
【請求項24】
フィルター層が、少なくとも500MPaの弾性率を有することを特徴とする、請求項12から23までのいずれか1項記載の膜。
【請求項25】
膜が、少なくとも1の支持層と少なくとも1の接着層を有することを特徴とする、請求項12から24までのいずれか1項記載の膜。
【請求項26】
請求項12から25までのいずれか1項記載の膜の製造方法において、請求項1から11までのいずれか1項記載の組成物をキャスティングして膜を形成することを特徴とする、請求項12から25までのいずれか1項記載の膜の製造方法。
【請求項27】
請求項12から25までのいずれか1項記載の膜の製造方法において、請求項1から11までのいずれか1項記載の組成物を中空繊維へと加工することを特徴とする、請求項12から25までのいずれか1項記載の膜の製造方法。

【公表番号】特表2010−514848(P2010−514848A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542022(P2009−542022)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064051
【国際公開番号】WO2008/077837
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】