説明

ガス分離装置

【課題】温泉水中に溶け込んだ天然ガスを分離することが可能なガス分離装置の提供。
【解決手段】天然ガスを含有する温泉水が導入される容器10と、この容器10内に設けられ、容器10内に導入される温泉水を衝突させて乱流を発生させる複数の攪拌部材11とを備えた乱流式気水分離器1を有することにより、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスを気泡化させて、容易に分離することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温泉水から天然ガスを分離するガス分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害を防止するため、温泉施設には温泉水に含まれる天然ガスを所定濃度以下とすることが義務付けられている。このような温泉水に含まれる天然ガスを分離する技術として、例えば特許文献1,2には、温泉水から比重差を利用して天然ガスを分離するガス分離装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−285583号公報
【特許文献2】特許第2735548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような比重差を利用して天然ガスを分離する装置の場合、温泉水中に気泡として含まれている天然ガスは、ある程度分離することができるものの、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスを除去することができない。
【0005】
そこで、本発明においては、温泉水中に溶け込んだ天然ガスを分離することが可能なガス分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス分離装置は、天然ガスを含有する温泉水が導入される容器と、この容器内に設けられ、容器内に導入される温泉水を衝突させて乱流を発生させる複数の攪拌部材とを備えた乱流式気水分離器を有するものである。
【0007】
本発明のガス分離装置によれば、容器内に導入された温泉水が複数の攪拌部材に衝突することにより激しく攪拌され、乱流が発生する。これにより、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスが気泡化するので、容易に分離することが可能となる。
【0008】
ここで、容器は、この容器内を、上部空間を除いて複数の槽に仕切る仕切板と、温泉水を、容器の上部から仕切板により仕切られた槽に向かって導入する導水口と、この導水口が設けられた槽とは別の槽の下部に設けられた排水口とを備えたものであることが望ましい。
【0009】
これにより、容器内に導入される温泉水は、容器の上部から仕切板により仕切られた槽に向かって導入され、前述のように複数の攪拌部材に衝突することにより激しく攪拌され、乱流が発生するが、この攪拌された温泉水はその槽の上部空間から別の槽に移り、さらにその槽内で複数の攪拌部材に衝突することにより再度激しく攪拌され、乱流となり、その後、排水口から排出される。つまり、容器内に導入される温泉水が複数の攪拌部材に衝突して攪拌される時間をより長くすることができ、攪拌による天然ガスの気泡化をより促進することができる。
【0010】
また、複数の攪拌部材は、容器内に千鳥配列されたものであることが望ましい。これにより、容器内に導入される温泉水が複数の攪拌部材に衝突した際の攪拌効果が高まり、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスの気泡化がさらに促進される。
【0011】
さらに、本発明のガス分離装置は、乱流式気水分離器から排出された温泉水を導入して旋回させる容器を備えた層流式気水分離器を有するものであることが望ましい。前述のように溶け込んだ天然ガスが乱流によって気泡化された温泉水は、この層流式気水分離器の容器内で旋回させることにより層流となる。これにより、温泉水中の天然ガスの気泡が比重差によって上昇し、温泉水と分離される。また、温泉水の旋回によって遠心力が働き、比重が小さい天然ガスの気泡が流れの遅い中心部に集まるので、温泉水から天然ガスを容易に除去することが可能となる。
【0012】
なお、温泉水中に含まれる天然ガス量が多い場合には、温泉水中に天然ガスが気泡の状態で多く含まれるため、上記層流式気水分離器を、乱流式気水分離器の上流側に有する構成とすることも可能である。この場合、天然ガスを含有する温泉水は、まず層流式気水分離器によって天然ガスの気泡を除去した後、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスを乱流式気水分離器により気泡化して除去することができる。
【0013】
また、本発明のガス分離装置は、乱流式気水分離器の導水口へ至る導水管の途中に、温泉水を攪拌する攪拌装置を備えたものであることが望ましい。前述の乱流式気水分離器の容器内に導入する温泉水を事前に攪拌装置により攪拌することで、容器内に導入された温泉水が攪拌部材に衝突した際の攪拌効果が高まり、より激しく攪拌されるようになる。また、層流式気水分離器の導水口へ至る導水管の途中に攪拌装置を備えた場合には、層流式気水分離器内に導入する温泉水を事前に攪拌装置により攪拌することで天然ガスの気泡化を促進し、層流式気水分離器により天然ガスをさらに容易に除去することが可能となる。
【0014】
また、この攪拌装置は、導水管内に所定の間隔で配置される複数の羽根板であり、導水管の中心軸の周囲に180°ずらした位置で逆方向に傾斜した複数の羽根板とを備えたものであることが望ましい。これにより、温泉水は、導水管の中心軸の周囲に180°ずらした位置で逆方向に傾斜した複数の羽根板により流れ方向を乱されながら通過し、攪拌される。
【0015】
また、本発明のガス分離装置は、乱流式気水分離器または層流式気水分離器の導水口へ至る導水管の途中に、複数の孔が形成された多孔板を備えたものであることが望ましい。これにより、乱流式気水分離器または層流式気水分離器の導水口へ至る導水管を通過する温泉水が、多孔板の複数の孔を通過する際にキャビテーションが発生し、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスの気泡化がさらに促進される。
【発明の効果】
【0016】
(1)天然ガスを含有する温泉水が導入される容器と、この容器内に設けられ、容器内に導入される温泉水を衝突させて乱流を発生させる複数の攪拌部材とを備えた乱流式気水分離器を有することにより、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスを気泡化させて、容易に分離することが可能となる。
【0017】
(2)容器が、この容器内を、上部空間を除いて複数の槽に仕切る仕切板と、温泉水を、容器の上部から仕切板により仕切られた槽に向かって導入する導水口と、この導水口が設けられた槽とは別の槽の下部に設けられた排水口とを備えたものであることにより、容器内に導入される温泉水が複数の攪拌部材に衝突して攪拌される時間をより長くすることができ、攪拌による天然ガスの気泡化をより促進することができる。
【0018】
(3)複数の攪拌部材が、容器内に千鳥配列されたものであることにより、容器内に導入される温泉水が複数の攪拌部材に衝突した際の攪拌効果が高まり、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスの気泡化がさらに促進される。
【0019】
(4)乱流式気水分離器から排出された温泉水を導入して旋回させる容器を備えた層流式気水分離器をさらに有することにより、溶け込んだ天然ガスが乱流によって気泡化された温泉水は、この層流式気水分離器の容器内で旋回させることにより層流となる。これにより、天然ガスの気泡が比重差によって上昇し、温泉水と分離される。また、温泉水の旋回によって遠心力が働き、比重が小さい天然ガスの気泡が流れの遅い中心部に集まるので、温泉水から天然ガスを容易に除去することが可能となる。
【0020】
(5)温泉水中に含まれる天然ガス量が多い場合には、層流式気水分離器を、乱流式気水分離器の上流側に有する構成とすることにより、温泉水中に気泡の状態で多く含まれる天然ガスを、まず層流式気水分離器によって除去した後、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスを乱流式気水分離器により気泡化してより効率良く除去することが可能となる。
【0021】
(6)乱流式気水分離器の導水口へ至る導水管の途中に、温泉水を攪拌する攪拌装置を備えたことにより、容器内に導入された温泉水が攪拌部材に衝突した際の攪拌効果が高まり、より激しく攪拌されるので、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスの気泡化がさらに促進される。
【0022】
(7)層流式気水分離器の導水口へ至る導水管の途中に攪拌装置を備えたことにより、層流式気水分離器内に導入する温泉水を事前に攪拌装置により攪拌することで、天然ガスの気泡化を促進し、層流式気水分離器により天然ガスをさらに容易に除去することが可能となる。
【0023】
(8)導水管内に所定の間隔で配置される複数の羽根板であり、導水管の中心軸の周囲に180°ずらした位置で逆方向に傾斜した複数の羽根板とを備えたことにより、温泉水は、導水管の中心軸の周囲に180°ずらした位置で逆方向に傾斜した複数の羽根板により流れ方向を乱されながら通過し、攪拌されるので、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスの気泡化がさらに促進される。
【0024】
(9)乱流式気水分離器または層流式気水分離器の導水口へ至る導水管の途中に、複数の孔が形成された多孔板を備えたことにより、導水口へ至る導水管を通過する温泉水が、多孔板の複数の孔を通過する際にキャビテーションが発生し、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスの気泡化がさらに促進される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態におけるガス分離装置の概略構成図である。
【図2】図1の乱流式気水分離器の拡大図である。
【図3】図2の乱流式気水分離器の右側面図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】図1の層流式気水分離器の拡大図である。
【図6】図5の層流式気水分離器の右側面図である。
【図7】図5のB−B断面図である。
【図8】図1の攪拌部材の拡大図である。
【図9】図8のC−C断面図である。
【図10】図8の攪拌部材を構成する羽根板を示す平面図である。
【図11】導水管の途中に設けられる気泡化装置を示す側面図である。
【図12】図11のD−D断面図である。
【図13】図12の多孔板の正面図である。
【図14】図13のE−E断面図である。
【図15】ガス水比計測結果を示す図である。
【図16】ガス水比計測結果を示す図である。
【図17】ガス水比計測結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は本発明の実施の形態におけるガス分離装置の概略構成図、図2は図1の乱流式気水分離器の拡大図、図3は図2の乱流式気水分離器の右側面図、図4は図2のA−A断面図、図5は図1の層流式気水分離器の拡大図、図6は図5の層流式気水分離器の右側面図、図7は図5のB−B断面図、図8は図1の攪拌部材の拡大図、図9は図8のC−C断面図、図10は図8の攪拌部材を構成する羽根板を示す平面図である。
【0027】
図1において、本発明の実施の形態におけるガス分離装置は、主に乱流式気水分離器1と層流式気水分離器2とから構成される。乱流式気水分離器1には、導水管3を通じて天然ガスを含有する温泉水が導入される。また、乱流式気水分離器1と層流式気水分離器2とは、導水管4により接続されている。また、導水管3の途中には、温泉水を攪拌する攪拌装置5が設けられている。
【0028】
図2〜図4に示すように、乱流式気水分離器1は、温泉水が導入される円筒状の容器10と、この容器10内に設けられ、容器10内に導入される温泉水を衝突させて乱流を発生させる複数の攪拌部材11と、容器10内を、上部空間12aを除いて2つの槽12b,12cに仕切る仕切板13と、上部空間12a内のガスを排出するガス抜き弁14とから構成される。
【0029】
また、容器10は、導水管3によって導入される温泉水を容器10の上部から一方の槽12bに向かって導入する導水口15と、他方の槽12cの下部に設けられた排水口16とを有する。また、攪拌部材11は山形綱からなり、槽12b,12cの両方にそれぞれの攪拌部材11の山形の頂点を上方に向けて、仕切板13上に所定間隔で千鳥配列されている。
【0030】
図5〜図7に示すように、層流式気水分離器2は、円筒状の容器20と、この容器10内に中央に立設された円柱状の整流体21と、容器20内の上部空間22内のガスを排出するガス抜き弁23とから構成される。また、容器20は、導水管4によって導入される温泉水を容器20の上部から導入する導水口24と、容器20の下部から排出する排水口25とを有する。なお、導水口24および排水口25は、図7に示すように容器20の中心からオフセットした位置に設けられている。
【0031】
図8に示すように、攪拌装置5は、導水管3内に所定の間隔で配置される複数の羽根板50a,50bと軸部材51とからなる。羽根板50a,50bは、図10に示すように略半楕円状の板であり、図8および図9に示すように導水管3の中心に配置される軸部材51の周囲に互いに180°ずらした位置で逆方向に傾斜するように配置されている。すなわち、図9の左半分に配置される羽根板50aの正面の面と右半分に配置される羽根板50bの正面の面とは90°傾きが異なっている。
【0032】
上記構成のガス分離装置では、揚水ポンプ(図示せず。)などにより汲み上げられ、送水される温泉水が、導水管3を通じて乱流式気水分離器1へ導入される。このとき、温泉水は、まず導水管3の途中に設けられた攪拌装置5によって流れ方向を乱されながら通過し、攪拌されて、乱流式気水分離器1へ導入される。
【0033】
乱流式気水分離器1では、容器10上部の導水口15から槽12bに向かって導入され、複数の攪拌部材11に衝突することにより激しく攪拌され、乱流が発生する。これにより、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスが気泡化する。そして、槽12b内の温泉水は、仕切板13の上端を越えて隣の槽12cへ流入し、槽12cの下部の排水口16から排出されるが、このとき温泉水は槽12c内の複数の攪拌部材11に衝突することにより再度激しく攪拌される。
【0034】
こうして排水口16から排出された温泉水は、導水管4を通じて層流式気水分離器2へ導入される。層流式気水分離器2では、容器20上部の導水口24から容器20の内壁面に沿って温泉水が導入されるので、この導入された温泉水は、整流体21の周りを回転しながら層流化され、容器20下部の排水口25から排出される。このとき、整流化された温泉水は、比重差によって温泉水中の天然ガスの気泡が比重差によって上昇し、温泉水と分離される。また、温泉水が旋回することによって遠心力が働き、比重が小さい天然ガスの気泡が流れの遅い容器20の中心部の整流体21の周りに集まる。
【0035】
以上のように、本実施形態におけるガス分離装置では、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスは乱流式気水分離器1によって気泡化され、この気泡化された天然ガスを含む温泉水が層流式気水分離器2によって気泡と温泉水とに分離される。層流式気水分離器2によって分離された天然ガスは、層流式気水分離器2の容器20の上部空間22に溜まり、ガス抜き弁23から排出される。同様に、乱流式気水分離器1の上部空間12aに溜まった天然ガスはガス抜き弁14から排出される。
【0036】
このように、本実施形態におけるガス分離装置では、天然ガスを含有する温泉水が導入される容器10と、この容器10内に設けられ、容器10内に導入される温泉水を衝突させて乱流を発生させる複数の攪拌部材11とを備えた乱流式気水分離器1を有することにより、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスを気泡化させて、容易に分離することが可能である。
【0037】
特に、このガス分離装置では、容器10が、この容器10内を、上部空間12aを除いて複数の槽12b,12cに仕切る仕切板13と、温泉水を、容器10の上部から仕切板13により仕切られた槽12bに向かって導入する導水口15と、この導水口15が設けられた槽12bとは別の槽12cの下部に設けられた排水口16とを備えたものであることにより、容器10内に導入される温泉水が複数の攪拌部材11に衝突して攪拌される時間をより長くすることができ、攪拌による天然ガスの気泡化をより促進することが可能となっている。なお、本実施形態においては、1枚の仕切板13により2つの槽12b,12cに仕切っているが、2枚以上の仕切板により3つ以上に仕切る構成とすることも可能である。
【0038】
また、このガス分離装置では、複数の攪拌部材11が、容器10内に千鳥配列されたものであることにより、容器10内に導入される温泉水が複数の攪拌部材11に衝突した際の攪拌効果が高まり、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスの気泡化がさらに促進される。なお、攪拌部材11の配置は千鳥配列以外の配列とすることも可能である。
【0039】
また、このガス分離装置では、乱流式気水分離器1から排出された温泉水を導入して旋回させる容器20を備えた層流式気水分離器2をさらに有するので、溶け込んだ天然ガスが乱流によって気泡化された温泉水が、この層流式気水分離器2の容器20内で旋回させることにより層流となり、温泉水中の天然ガスの気泡が比重差によって上昇し、温泉水と分離される。また、温泉水の旋回によって遠心力が働き、比重が小さい天然ガスの気泡が流れの遅い中心部に集まるので、温泉水から天然ガスを容易に除去することが可能となっている。
【0040】
なお、本実施形態においては、上流側に乱流式気水分離器1を、下流側に層流式気水分離器2を配置した構成であるが、これとは逆に、上流側に層流式気水分離器2を、下流側に乱流式気水分離器1を配置した構成とすることも可能である。温泉水中に溶け込んでいる天然ガス量が多い場合、層流式気水分離器2を、乱流式気水分離器1の上流側に有する構成とすることにより、温泉水中に気泡の状態で多く含まれる天然ガスを、まず層流式気水分離器2によって除去した後、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスを乱流式気水分離器1により気泡化してより効率良く除去することが可能となる。
【0041】
また、本実施形態におけるガス分離装置では、乱流式気水分離器1の導水口15へ至る導水管3の途中に、温泉水を攪拌する攪拌装置5を備えたことにより、容器10内に導入された温泉水が攪拌部材11に衝突した際の攪拌効果が高まり、より激しく攪拌される。これにより、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスの気泡化がさらに促進される。また、この攪拌装置5は層流式気水分離器2の導水口24へ至る導水管4の途中に備えた構成とすることも可能である。この場合、層流式気水分離器2内に導入する温泉水を事前に攪拌装置5により攪拌することで、天然ガスの気泡化を促進し、層流式気水分離器2により天然ガスをさらに容易に除去することが可能となる。
【0042】
また、この攪拌装置5が、導水管3の中心軸の周囲に180°ずらした位置で逆方向に傾斜した複数の羽根板50a,50bを備えたことにより、温泉水は、この複数の羽根板50a,50bにより流れ方向を乱されながら通過し、攪拌されるので、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスの気泡化がさらに促進されており、温泉水中に溶け込んだ天然ガスの除去効果が高い。
【0043】
また、攪拌装置5に代えて、図11〜図14に示す気泡化装置6を備えた構成とすることも可能である。図11は導水管3の途中に設けられる気泡化装置6を示す側面図、図12は図11のD−D断面図、図13は図12の多孔板の正面図、図14は図13のE−E断面図である。
【0044】
図11に示す気泡化装置6は、導水管3の途中に設けられるものであって、略円筒状のケーシング60内に、温泉水の流れ方向の上流側から順にスリット61、メッシュ押さえリング62およびメッシュ63を備えている。
【0045】
スリット61には複数の多孔板保持孔64が形成されている。この多孔板保持孔64には、それぞれ図13に示す多孔板65が嵌め込まれている。多孔板65は、円板状の板材であり、その中心周りに40°間隔で複数の開孔66が設けられている。開孔66は、図14に示すように、例えば直径3mmの丸孔とし、両面に90°の座繰りが設けられたものとすることが可能であるが、これらは変更可能である。
【0046】
メッシュ63は、例えば#10〜#24メッシュのPVC(ポリ塩化ビニル)製の網である。メッシュ押さえリング62は、このメッシュ63をケーシング60内に保持するためのものである。
【0047】
このような気泡化装置6によれば、導水口15へ至る導水管を通過する温泉水が、スリット61に設けられた多孔板65の複数の開孔66を通過することによってキャビテーションが発生し、温泉水中に溶け込んでいる天然ガスが気泡化する。これにより、次の乱流式気水分離器1内での気泡化がさらに促進され、天然ガスの分離効果が向上する。なお、この気泡化装置6は層流式気水分離器2の導水口へ至る導水管4の途中に設けることも可能である。
【0048】
なお、本実施形態における気泡化装置6では、多孔板65の開孔66の両面に座繰りを設けることによって、より効果的なキャビテーションを発生させることが可能となっており、天然ガスの気泡化を効率良く行える。また、下流側にメッシュ63を備えていることで、多孔板65を通過した温泉水がせん断され、さらに気泡化が促進されている。
【実施例】
【0049】
本実施形態におけるガス分離装置による天然ガスの除去効果を確認した。図15〜図17はガス水比の計測結果を示している。図15〜図17において、ガス水比は、温泉水に含まれる天然ガスと、この天然ガスを除いた温泉水との体積比を示している。
【0050】
図15に示す例では、ガス1に対して温泉水209.2であり、ガス分離装置の設置前では%LELが100%LEL以上であったのに対し、ガス分離装置の設置後は19%LEL以上まで減少した。なお、%LELは、可燃性ガスが燃焼爆発を起こす最低濃度(LEL(Lower Explosive Limit):爆発下限界)に対する割合を百分率で表したものである。例えば、メタンガスの爆発下限界は5%なので、メタンガスの濃度が2.5%のとき50%LELとなる。
【0051】
また、図16に示す例では、ガス1に対して温泉水16.6であり、図15の例よりも天然ガスの含有量が多いが、ガス分離装置の設置前では%LELが100%LEL以上であったのに対し、ガス分離装置の設置後は17%LEL以上まで減少した。
【0052】
また、図17に示す例では、ガス1に対して温泉水0.8であり、極めて天然ガスの含有量が多い。そこで、ガス分離装置の乱流式気水分離器1を2つ直列に配置した。この場合、ガス分離装置の設置前では%LELが100%LEL以上であったが、ガス分離装置の設置後は21%LEL以上まで減少した。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のガス分離装置は、健康ランドや温泉センターなどの各種温泉施設において、温泉水から天然ガスを分離する装置として有用である。
【符号の説明】
【0054】
1 乱流式気水分離器
2 層流式気水分離器
3,4 導水管
5 攪拌装置
6 気泡化装置
10 容器
11 攪拌部材
13 仕切板
14 ガス抜き弁
15 導水口
16 排水口
20 容器
21 整流体
23 ガス抜き弁
24 導水口
25 排水口
50a,50b 羽根板
51 軸部材
60 ケーシング
61 スリット
62 メッシュ押さえリング
63 メッシュ
64 多孔板保持孔
65 多孔板
66 開孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ガスを含有する温泉水が導入される容器と、
この容器内に設けられ、前記容器内に導入される温泉水を衝突させて乱流を発生させる複数の攪拌部材と
を備えた乱流式気水分離器を有するガス分離装置。
【請求項2】
前記容器は、
この容器内を、上部空間を除いて複数の槽に仕切る仕切板と、
前記温泉水を、前記容器の上部から前記仕切板により仕切られた槽に向かって導入する導水口と、
この導水口が設けられた槽とは別の槽の下部に設けられた排水口と
を備えたものである請求項1記載のガス分離装置。
【請求項3】
前記複数の攪拌部材は、前記容器内に千鳥配列されたものである請求項1または2に記載のガス分離装置。
【請求項4】
前記乱流式気水分離器から排出された温泉水を導入して旋回させる容器を備えた層流式気水分離器をさらに有する請求項1から3のいずれかに記載のガス分離装置。
【請求項5】
前記乱流式気水分離器の上流側に、前記温泉水を導入して旋回させる容器を備えた層流式気水分離器をさらに有する請求項1から4のいずれかに記載のガス分離装置。
【請求項6】
前記乱流式気水分離器の導水口へ至る導水管の途中に、前記温泉水を攪拌する攪拌装置を備えた請求項1から3のいずれかに記載のガス分離装置。
【請求項7】
前記層流式気水分離器の導水口へ至る導水管の途中に、前記温泉水を攪拌する攪拌装置を備えた請求項4または5に記載のガス分離装置。
【請求項8】
前記攪拌装置は、前記導水管内に所定の間隔で配置される複数の羽根板であり、前記導水管の中心軸の周囲に180°ずらした位置で逆方向に傾斜した複数の羽根板を備えたものである請求項6または7に記載のガス分離装置。
【請求項9】
前記乱流式気水分離器の導水口へ至る導水管の途中に、複数の孔が形成された多孔板を備えた請求項1から8のいずれかに記載のガス分離装置。
【請求項10】
前記層流式気水分離器の導水口へ至る導水管の途中に、複数の孔が形成された多孔板を備えた請求項4、5または7に記載のガス分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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