説明

ガス化ガスの浄化装置及び浄化方法

【課題】ガス化ガス中のダイオキシン類及び高沸点炭化水素化合物を効率的に除去し、かつそのガス浄化能力を長期間持続させることのできるガス化ガスの浄化技術を提供すること。
【解決手段】有機性廃棄物又は石炭等の固体有機物を熱分解して得られたガス化ガス中のダイオキシン類及び高沸点炭化水素化合物を除去するカス化ガスの浄化装置において、ガス化ガスの流れ方向の前段にガス化ガス中のミスト状の水分、前記高沸点炭化水素化合物のうちタール分、ダイオキシン類及び固体の煤塵を吸着可能な吸着装置2を設け、この吸着装置2の後段に活性炭式吸着装置3を設け、前段の吸着装置2にて、主にガス化ガス中のミスト状の水分、前記高沸点炭化水素化合物のうちタール分、ダイオキシン類及び固体の煤塵を吸着除去し、後段の活性炭式吸着装置3にて、主に前記高沸点炭化水素化合物のうちタール分以外の軽質油分及びダイオキシン類の残留分を吸着除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチックやバイオマス等の有機性廃棄物又は石炭等の固体有機物を熱分解して得られたガス化ガスの浄化装置及び浄化方法に関し、とくに活性炭式吸着装置を用いたガス化ガスの浄化装置及び浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保全とくに地球温暖化防止の一環として、エネルギーの有効利用が改めて注目されるなかで、廃プラスチックやバイオマス等の有機性廃棄物の持つエネルギーを有効利用する方法として、有機性廃棄物を熱分解し可燃性ガスを得る、いわゆるガス化が注目を集めている。
【0003】
ところが、ガス化によって得られた可燃性ガス、すなわちガス化ガスには有機性廃棄物に含まれる塩素分に起因するダイオキシン類が含まれているので、ガス化ガスの利用にあたってはダイオキシン類の除去が必要である。また、有機性廃棄物のガス化ガスにはダイオキシン類のほか、タール分や軽質油分等の常温常圧で液体若しくは固体である高沸点炭化水素化合物(本願明細書では単に「高沸点炭化水素化合物」という。ここで、「高沸点炭化水素化合物」の沸点は概ね60℃以上である。)が含まれている。これらの高沸点炭化水素化合物は、沸点以下の温度でも高い蒸気圧を持ち、冷却等によって除去することが難しく、ガス中に残存する高沸点炭水素化合物は、ガス化ガスの温度が低下すると凝縮し、ガス配管やその付帯設備に付着して設備トラブルを引き起こす原因となる。したがって、ダイオキシン類と共にガス化ガス中から除去する必要がある。
【0004】
従来、ガス中のダイオキシン類を除去する技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、ダイオキシン類を触媒層により分解し、残分のダイオキシン類を活性炭吸着層により吸着するという技術が確立されている。しかし、この特許文献1の技術は、おもに可燃性物質を燃焼させた後の燃焼排ガスを処理対象とするものであり、特許文献1の技術を有機性廃棄物のガス化ガスの処理に適用すると、触媒層ではダイオキシン類以外の炭化水素ガスも分解され煤が発生するので、すぐに閉塞し失活する。また、活性炭吸着層ではダイオキシン類以外に上述の高沸点炭化水素化合物が吸着され、活性炭の活性を持続させることができない。持続させるためには、常に新しい活性炭を使用する必要があり、運転費が高くなる。
【0005】
また、特許文献2には、バグフィルター等の集塵装置を設け、その前段で粉末状の活性炭を吹き込み、バグフィルターのろ布表面上に活性炭層を形成し、その活性炭にダイオキシン類を吸着させるという技術が開示されている。しかし、この特許文献2の技術においても、これを有機性廃棄物のガス化ガスの処理に適用すると、ガス化ガスに含まれる上述の高沸点炭化水素化合物によって目詰まり等のトラブルが発生し、安定的な運転を継続することができない。
【0006】
一方、特許文献3及び特許文献4には、排気ガス中の溶剤等の炭化水素、軽質油分を除去するために活性炭を用いた浄化技術が開示されている。しかし、活性炭により有機性廃棄物のガス化ガスに含まれる軽質油分を除去する場合には、ガスの原料が廃棄物であることから原料の性状が安定しないのでガス浄化の制御が難しく、また、ガス化ガス中には軽質油分だけでなくタール分が含まれるので、タール分を含むガスを活性炭で浄化すると、タール分が活性炭から離脱しにくいため、活性炭の寿命が短くなる。
【0007】
また、特許文献5及び特許文献6には、バイオマスを熱分解して得られたバイオマスガス(ガス化ガス)を活性炭を用いて浄化する技術が開示されている。しかし、この技術ではガス処理温度が高く、分子量が大きくて沸点の高いタール分を吸着除去することは可能であるが、分子量が小さくて沸点が比較的低く、高揮発性であって、常温常圧で液状の炭化水素化合物、いわゆる軽質油分を吸着除去することはできない。軽質油分はガス利用の際に、配管中で冷却され、ドレン化する。このドレンは揮発性のきわめて高い引火性油であるため取り扱いが難しい。また、性状の均一なバイオマス以外を原料としたガス化ガスの場合、タール分の発生量及び性状が変化し、活性炭吸着層が閉塞したり、軽質油分がガス利用設備に流れ、トラブルとなる可能性がある。とくに廃プラスチック、石炭等の化石燃料、あるいは化石燃料を原材料とする固体有機物をガス化する場合には、タール分及び軽質油分の量が多く、上記技術による手法では十分な浄化を行うことができない。
【0008】
このように、従来、活性炭を用いてガスを浄化する技術は種々提案されているが、高沸点炭化水素化合物とくにタール分及び軽質油分を多く含むガス化ガスを浄化する場合、上述のような問題があり、活性炭を用いたガス化ガスの浄化技術は確立されていない。
【0009】
これに対して、活性炭を用いないガス化ガスの浄化技術も提案されている。例えば特許文献7には、有機性廃棄物をガス化後、酸素及び水蒸気と反応させ、1100℃程度の高温での改質反応により、ガス化ガス中のタール分や軽質油分を低減させる技術が提案されている。しかし、このような改質反応を用いたガスの浄化技術では、改質反応に必要な熱源を得るためにガス化ガスの部分燃焼が必要となり、ガス化ガスの持つエネルギーを消費されガスカロリーが低下するという問題がある。また、改質反応に用いる酸素の製造にエネルギーを多く必要とし、廃棄物処理に必要な総エネルギーが大きくなりすぎる。
【0010】
他のガス洗浄技術としては、コース炉ガスの浄化技術に見られるように、低温下でガスを油で洗浄し、ガス中のタール分及び軽質油分等を除去する技術がある。しかし、この技術では、低温下で洗浄を行うにあたり冷熱源を得るためにエネルギーが必要である。また、洗浄後の排水に高度な処理が必要となり、さらに油を再生する工程等が必要となり、再生時に発生するガスの処理等、設備が複雑になる傾向にある。また、ガスの洗浄によってはダイオキシン類を除去することはできない。
【0011】
このように、ガス中のダイオキシン類及びタール分、軽質油分等の高沸点炭化水素化合物を同時に除去してガスを浄化するには、やはり活性炭を用いて乾式処理することが有用かつ簡便であり、活性炭を用いたガス化ガスの浄化技術の確立が望まれている。
【0012】
一方で、有機物を熱分解し可燃性のガス化ガスを得る場合、ガス化ガスの利用にあたってはメタン等の炭化水素ガスを残し、ガスのカロリーを高く保つことが望ましい。但し、その場合、タール分及び軽質油分が副生しガス利用の妨げとなる。したがって、この点からもガス化ガス中のタール分及び軽質油分を除去する浄化技術の確立が望まれている。
【特許文献1】特開2003−112012号公報
【特許文献2】特開平11−230529号公報
【特許文献3】特開平9−215908号公報
【特許文献4】特開2005−66503号公報
【特許文献5】特開2006−16469号公報
【特許文献6】特開2006−16470号公報
【特許文献7】特開2004−238535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、総括的には、活性炭を用いたガス化ガスの浄化技術を確立し、利用可能な高カロリーガスを得ることにある。
【0014】
具体的には、ガス化ガス中のダイオキシン類及び高沸点炭化水素化合物を効率的に除去し、かつそのガス浄化能力を長期間持続させることのできるガス化ガスの浄化装置及び浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、有機性廃棄物又は石炭等の固体有機物を熱分解して得られたガス化ガス中のダイオキシン類及び常温常圧で液体若しくは固体である高沸点炭化水素化合物を吸着除去するために2つ以上の活性炭吸着層を並列に備える活性炭式吸着装置を有し、前記2つ以上の活性炭吸着層を切り替えながら操業し、吸着除去に使用していない活性炭吸着層については、蒸気等の酸素を含まない100℃以上のガスを通すことで吸着した物質を離脱させ吸着性能を維持するカス化ガスの浄化装置において、ガス化ガスの流れ方向の前段にガス化ガス中のミスト状の水分、前記高沸点炭化水素化合物のうちタール分、ダイオキシン類及び固体の煤塵を吸着可能な吸着装置を設け、この吸着装置の後段に前記活性炭式吸着装置を設け、前段の吸着装置にて、主にガス化ガス中のミスト状の水分、前記高沸点炭化水素化合物のうちタール分、ダイオキシン類及び固体の煤塵を吸着除去し、後段の活性炭式吸着装置にて、主に前記高沸点炭化水素化合物のうちタール分以外の軽質油分及びダイオキシン類の残留分を吸着除去することを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、代表的には有機性廃棄物として廃プラスチック、又は固体有機物として石炭をガス化する。
【0017】
有機性廃棄物又は固体有機物のガス化ガス中には、ダイオキシン類及び高沸点炭化水素化合物が含まれる。また、高沸点炭化水素化合物としては、ナフタレン、アントラセン等のタール分(炭素原子数が10以上の高分子炭化水素化合物)とベンゼン、トルエン、キシレン等の軽質油分(炭素原子数が10未満の低分子炭化水素化合物)が含まれる。これらのダイオキシン類及び高沸点炭化水素化合物は、ガス化ガスの有効利用にあたり除去する必要がある。ただし、このようなガス化ガスをいきなり活性炭式吸着装置に通すと、ガス化ガス中のタール分及び固体の煤塵が活性炭吸着層に吸着され、そうすると軽質油分の吸着能力が低下するとともに、再生に必要なエネルギーが大きくなる。そこで、本発明では、活性炭式吸着装置の前段に別の吸着装置を設け、前段の吸着装置にて、先にガス化ガス中のミスト状の水分、高沸点炭化水素化合物のうちタール分、ダイオキシン類及び固体の煤塵を吸着除去し、その後、後段の活性炭式吸着装置にて、高沸点炭化水素化合物のうちタール分以外の軽質油分及びダイオキシン類の残留分を吸着除去するようにしている。すなわち、本発明では吸着装置を直列に2段設け、その機能を分けることで、ガス化ガス浄化の高効率化を図るとともに、ガス浄化能力を長期間持続させるようにしている。
【0018】
このような2段の吸着装置によるガス化ガスの浄化をより高効率化するためには、前段の吸着装置の前段にガス化ガスを冷却する冷却装置を設けるとともに、前段の吸着装置と後段の活性炭式吸着装置との間に、ガス化ガスを加熱する加熱装置を設け、前段の吸着装置にて、主にガス化ガス中のミスト状の水分、高沸点炭化水素化合物のうちタール分、ダイオキシン類及び固体の煤塵を吸着除去した後に、そのガス化ガスを加熱し、後段の活性炭式吸着装置に通すようにすることが好ましい。すなわち、前段の吸着装置にガス化ガスを通す際は、その温度は低め(10〜40℃程度)に設定し、ミスト状の水分及びタール分の凝縮を促進することで前段の吸着装置の吸着効率を高くし、その後、30〜70℃程度に加熱しガス化ガスの相対湿度を低下させガス化ガスのドレン化を抑制することで、後段の活性炭式吸着装置の吸着効率を高くするとともに、活性炭の活性を長期間持続させることができる。
【0019】
また、本発明においては、前段の吸着装置の前段に、電気集塵機等の集塵機を設け、ガス化ガスを前段の吸着装置に通す前に、電気集塵機等の集塵機に通すようにすることもできる。このような構成とすることで、前段の吸着装置の前段でナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン等の分子量の大きな粒子を除去することができ、前段の吸着装置の吸着能力の低下を抑制することができる。
【0020】
この前段の吸着装置における吸着層の吸着剤としては、活性炭又はセラミックボール等の無機材を使用することができる。活性炭を使用する場合は、その活性炭の細孔は、後段の活性炭式吸着装置で使用する活性炭の細孔よりも大きいものを選択することが好ましい。これによって、高沸点炭化水素化合物のうちタール分を優先的に除去することができ、軽質油分による性能劣化を抑制することができる。一方、前段の吸着装置における吸着層の吸着剤としてセラミックボール等の無機材を使用する場合は、再生のための洗浄等の処理が容易になり、再生に必要なエネルギーを減らすことができる。
【0021】
また、前段の吸着装置における吸着層の吸着剤には酸化鉄を含ませることができる。有機性廃棄物をガス化したときに発生する塩化水素ガスは水への溶解度が高く、洗浄処理によって容易に除去することができるが、硫化水素等の硫黄分は洗浄による除去が困難である。また、活性炭への吸着は可能であるが、離脱させることが困難で、活性炭の劣化の原因となる。したがって、吸着剤に酸化鉄を含ませることでガス化ガス中に含まれる硫黄分を効率的に吸着し除去することができる。
【0022】
本発明において、前段の吸着装置の吸着層及び後段の活性炭式吸着装置の活性炭吸着層は、破過時あるいは定期的に再生する必要があり、通常その再生には蒸気を使用するが、本発明においては前段の吸着装置の吸着層の再生には、後段の活性炭式吸着装置で吸着した軽質油分を利用することができる。前段の吸着装置はタール分等の分子量の比較的大きい有機化合物の吸着を目的としている。タール分等の有機化合物はベンゼンをはじめとする軽質油分(有機溶剤)への溶解度が高いため、後段の活性炭式吸着装置で吸着した軽質油分を回収して前段の吸着装置の吸着層に流すことによって、前段の吸着装置の吸着層に吸着されたタール分が軽質油分中に溶け込み、吸着層から容易に離脱させることができる。また、蒸気の使用量が削減できるため、エネルギーロスの低減が図れる。
【0023】
また、前段の吸着装置における吸着層の吸着剤としてセラミックボール等の無機材を使用する場合、その再生にあたっては、吸着層から吸着剤を取り出し、有機性廃棄物又は石炭等の固体有機物を熱分解してガス化するガス化炉、又はガス化炉に熱を供給する燃焼炉にて加熱処理することで再生することができる。このように設備に付随するガス化炉又は燃焼炉での加熱処理によって再生処理を行うことで、再生に使用する蒸気の量を削減又はゼロとすることができ、エネルギーロスが少なくなる。また、吸着剤に付着したタール、煤塵等の有機分をガス化炉又は燃焼炉の燃料として有効利用することもできる。なお、吸着剤はガス化炉又は燃焼炉にて加熱処理された後に、通常はガス化炉又は燃焼炉の焼却灰等と併せて排出されるため、その灰排出機構に吸着剤を分離回収する回収機構を設けることが好ましい。この回収機構としては振動篩、風力選別機を用いることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、前段の吸着装置にて、先にガス化ガス中のミスト状の水分、高沸点炭化水素化合物のうちタール分、ダイオキシン類及び固体の煤塵を吸着除去し、その後、後段の活性炭式吸着装置にて、高沸点炭化水素化合物のうちタール分以外の軽質油分及びダイオキシン類の残留分を吸着除去するので、ガス化ガスを効率的に浄化できるとともに、ガス浄化能力を長期間持続させることができる。
【0025】
また、ガス化ガス中の高沸点炭化水素化合物(タール分及び軽質油分)を安定的に除去できるので、ガス化温度、改質温度を下げた運転が可能となり、高カロリーのガス化ガスを安定的に得ることができる。そして、ガス温度を上昇させるために必要なエネルギー、酸素量等を減らすことが可能で、より安価に高カロリーのガス化ガスを得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は本発明の第1実施例を示す装置構成図である。
【0028】
図1において、有機性廃棄物をガス化するガス化炉1で得られたガス化ガスの浄化処理ラインには、ガス化ガスの流れ方向の前段に吸着装置2が配置され、その後段に活性炭式吸着装置3が配置されている。前段の吸着装置2は2つの活性炭吸着層2a、2bを並列に有し、後段の活性炭式吸着装置3も2つの活性炭吸着層3a、3bを並列に有する。なお、吸着装置2の活性炭吸着層2a、2bには、硫黄分を効率的に吸着するために酸化鉄を20〜100質量%程度含有させてもよい。
【0029】
ガス化炉1としては、シャフト炉、ロータリーキルン炉、流動床炉、固定床炉、噴流炉等、各種の炉を使用することができる。また、ガス化炉1の加熱方式としては、生成したガス化ガスの一部を燃焼させて熱源とする部分燃焼方式と、外部熱源を使用する外熱方式のいずれでもよい。
【0030】
ガス化炉1で得られたガス化ガスは、ガス化ガス供給本管4を通り、その後、吸着装置2の活性炭吸着層2a、2bに通じるガス化ガス供給支管5a、5bを通り、吸着装置2の活性炭吸着層2a、2bにその下部から導入される。
【0031】
吸着装置2の活性炭吸着層2a、2bにガス化ガスが導入されると、主にガス化ガス中のミスト状の水分、高沸点炭化水素化合物のうち特に沸点が150℃以上と高いタール分、ダイオキシン類及び固体の煤塵が活性炭吸着層2a、2b内の活性炭に吸着され除去される。その後、ガス化ガスは、活性炭吸着層2a、2b上部に接続されたガス化ガス排出支管6a、6bから排出され、ガス化ガス搬送本管7に合流し、さらに活性炭式吸着装置3の活性炭吸着層3a、3bに通じるガス化ガス搬送支管8a、8bを通り、活性炭式吸着装置3の活性炭吸着層3a、3bにその下部から導入される。
【0032】
活性炭式吸着装置3の活性炭吸着層3a、3bにガス化ガスが導入されると、主にガス化ガス中の高沸点炭化水素化合物のうち軽質油分及びダイオキシン類の残留分が活性炭吸着層3a、3b内の活性炭に吸着され除去される。その後、ガス化ガスは活性炭吸着層3a、3bの上部に接続されたガス化ガス排出支管9a、9bから排出され、ガス化ガス排出本管10に合流し、ガス利用設備11まで搬送される。
【0033】
ガス化ガスの具体的な利用先としては、加熱炉、コークス炉等の工業炉用の燃料、ガスエンジンやガスタービン用の燃料、ボイラ燃料、熱風炉用の燃料等が挙げられる。
【0034】
このように、本発明では、吸着装置を直列に2段設け、前段の吸着装置2にてガス化ガス中のミスト状の水分、高沸点炭化水素化合物のうちタール分、ダイオキシン類及び固体の煤塵を吸着除去し、後段の活性炭式吸着装置2にて高沸点炭化水素化合物のうちタール分以外の軽質油分及びダイオキシン類の残留分を吸着除去することで、ガス化ガス浄化の高効率化を図るとともに、ガス浄化能力を長期間持続させるようにしている。
【0035】
なお、本実施例では、前段の活性炭吸着層2a、2bと後段の活性炭吸着層3a、3bで用いる活性炭としては、細孔の大きさを変えることにより、前段はタール分の吸着に適した高分子吸着用、後段は軽質油分の吸着に適した低分子吸着用のものを使用した。
【0036】
また、本実施例では、前段の吸着装置2に付随するガス化ガス供給支管5a、5b及びガス化ガス排出支管6a、6bには、それぞれ開閉弁12a、12b及び開閉弁13a、13bが設けられている。また、それぞれの活性炭吸着層2a、2bには、上部に蒸気供給本管14から分岐した蒸気供給支管14a、14bが接続され、下部に廃蒸気排出支管15a、15bが接続されている。蒸気供給支管14a、14b及び廃蒸気排出支管15a、15bには、それぞれ開閉弁16a、16b及び開閉弁17a、17bが設けられている。
【0037】
後段の活性炭式吸着装置3も同様の構成を備えており、活性炭式吸着装置3に付随するガス化ガス搬送支管8a、8b及びガス化ガス排出支管9a、9bには、それぞれ開閉弁18a、18b及び開閉弁19a、19bが設けられている。また、それぞれの活性炭吸着層3a、3bには、上部に蒸気供給本管20から分岐した蒸気供給支管20a、20bが接続され、下部に廃蒸気排出支管21a、21bが接続されている。蒸気供給支管20a、20b及び廃蒸気排出支管21a、21bには、それぞれ開閉弁22a、22b及び開閉弁23a、23bが設けられている。
【0038】
このような構成とすることで、本実施例では、前段の吸着装置2あるいは後段の活性炭式吸着装置3において、いずれかの活性炭吸着層の吸着能力が低下した場合、その活性炭吸着層についてはガス化ガスの通ガスを遮断し、蒸気を通すことで吸着した物質を離脱させ廃蒸気として蒸気側に吐き出させて吸着能力を回復させることができる。
【0039】
例えば、吸着装置2の活性炭吸着層2aの吸着能力が低下した場合は、ガス化ガス供給支管5aの開閉弁12a及びガス化ガス排出支管6aの開閉弁13aを閉にすると共に、蒸気供給支管14aの開閉弁16a及び廃蒸気排出支管15aの開閉弁17aを開にする。これによって、活性炭吸着層2aへのガス化ガスの通ガスが遮断され、代わりに蒸気が通される。この蒸気によって活性炭吸着層2aに吸着していたタール分等が離脱し廃蒸気として蒸気側に排出され、活性炭吸着層2aの吸着能力が回復する。廃蒸気は活性炭吸着層2aの下部より廃蒸気排出支管15aを介して排出され、排蒸気排出本管15に合流後、所定の場所まで搬送される。同時にガス化ガス供給支管5bの開閉弁12b及びガス化ガス排出支管6bの開閉弁13bを開にすることにより、ガス化ガスを連続的に処理することができる。
【0040】
また、活性炭式吸着装置3の活性炭吸着層3aの吸着能力が低下した場合は、ガス化ガス搬送支管8aの開閉弁18a及びガス化ガス排出支管9aの開閉弁19aを閉にすると共に、蒸気供給支管20aの開閉弁22a及び廃蒸気排出支管21aの開閉弁23aを開にする。これによって、活性炭吸着層3aへのガス化ガスの通ガスが遮断され、代わりに蒸気が通される。この蒸気によって活性炭吸着層3aに吸着していたタール分等が離脱し廃蒸気として蒸気側に排出され、活性炭吸着層3aの吸着能力が回復する。廃蒸気は活性炭吸着層3aの下部より廃蒸気排出支管21aを介して排出され、排蒸気排出本管21に合流後、所定の場所まで搬送される。同時にガス化ガス搬送支管8bの開閉弁18b及びガス化ガス排出支管9bの開閉弁19bを開にすることにより、ガス化ガスを連続的に処理することができる。
【0041】
このように、本実施例では、装置の運転を停止することなく、吸着能力の低下した活性炭吸着層を再生させることができ、一定の吸着能力を維持しつつ連続的にガス化ガスの浄化処理を行うことができる。
【0042】
なお、活性炭吸着層の再生に使用する蒸気の温度は、150〜400℃の範囲とすることが好ましい。蒸気の温度が100℃程度の低温である場合、活性炭吸着層中の活性炭に吸着された高沸点炭化水素化合物のうち、分子量が小さく沸点が比較的低いベンゼン、トルエン、キシレン等の軽質油分については離脱させることは可能であるが、ナフタレン、アントラセンといった、分子量が100以上と大きく沸点が高いタール分については離脱させることは困難である。
【0043】
また、本実施例では活性炭吸着層の再生に蒸気を使用したが、蒸気に限らず、酸素を含まない100℃以上のガスであれば使用可能である。この場合も、使用するガスの温度は150〜400℃の範囲とすることが好ましい。
【実施例2】
【0044】
図2は本発明の第2実施例を示す装置構成図である。この実施例は、図1に示した第1実施例の装置構成において、前段の吸着装置2の前段にガス化ガスを冷却する冷却装置としてガス冷却器24aを設けるとともに、前段の吸着装置2と後段の活性炭式吸着装置3との間にガス化ガスを加熱する加熱装置としてガス加熱器24bを設けたものである。
【0045】
この実施例では、前段の吸着装置2にガス化ガスを通す際は、その前にガス冷却器24aで冷却することによりガス化ガスの温度を低め(10〜40℃程度)に設定し、ミスト状の水分及びタール分の凝縮を促進することで前段の吸着装置3の吸着効率を高くし、その後、ガス化ガスをガス加熱器24bによって30〜70℃程度に加熱しガス化ガスの相対湿度を低下させガス化ガスのドレン化を抑制することで、後段の活性炭式吸着装置3の吸着効率を高くするとともに、活性炭の活性を長期間持続させることができる。
【実施例3】
【0046】
図3は本発明の第3実施例を示す装置構成図である。この実施例は、吸着装置3の前段に集塵機として電気集塵機25を設けたものである。この電気集塵機25によって、吸着装置3の前段でナフタレン等の分子量の大きな粒子を除去することができ、吸着装置3の吸着能力の低下を抑制することができる。
【0047】
電気集塵機25は乾式、湿式のいずれでもよく、また、集塵装置としては、電気集塵機25のほか、サイクロン、濾過式、スクラバ式のものを使用してもよい。なお、図3に示すように、電気集塵機25の前段で、前処理として水スクラバや油スクラバによるガス洗浄等のガス処理を行ってもよい。
【0048】
また、この実施例では、活性炭吸着層2a、2b、3a、3bの再生時に排出される廃蒸気あるいは廃蒸気が凝縮した廃ドレンを、廃蒸気排出本管15を介して、ガス化炉1に熱を供給する燃焼炉1aに吹き込むようにしている。これにより、廃蒸気あるいは廃ドレンに含まれる高沸点炭化水素化合物を燃焼炉1aの燃料の一部として有効利用できるとともに、廃蒸気あるいは廃ドレンに含まれる有機性塩素化合物等の有害物を焼却処理し無害化して放散することができる。
【実施例4】
【0049】
図4は本発明の第4実施例を示す装置構成図である。この実施例は、吸着装置2の活性炭吸着層2a、2bの再生に、活性炭式吸着装置3で吸着した軽質油分を利用するようにしたものである。
【0050】
活性炭式吸着装置3では、上述のとおり高沸点炭化水素化合物のうち主に軽質油分を吸着するので、活性炭式吸着装置3の活性炭吸着層3a、3bの再生時に排出される廃蒸気あるいは廃蒸気が凝縮した廃ドレンには軽質油分が多く含まれる。本実施例では、活性炭吸着層3a、3bの再生時に排出された廃蒸気あるいは廃ドレンを回収タンク26に回収して凝縮させ、これを吸着装置2の活性炭吸着層2a、2bの再生時に上方から流すようにしている。吸着装置2では高沸点炭化水素化合物のうち主にタール分を吸着するが、このタール分は軽質油分への溶解度が高いため、軽質油分を含む廃ドレンを流すことでタール分が軽質油分中に溶け込み、活性炭吸着層2a、2bを容易に再生させることができる。これによって、活性炭吸着層2a、2bの再生に蒸気を使用する必要がなくなり、エネルギーロスの低減が図れる。
【0051】
また、本実施例では、活性炭吸着層2a、2bの再生時に排出される廃ドレンを回収タンク27に回収し、これを先の第3実施例と同様に、ガス化炉1あるいは燃焼炉1aに燃料として吹き込むようにしている。
【実施例5】
【0052】
図5は本発明の第5実施例を示す装置構成図である。この実施例は、吸着装置2の吸着層を、吸着剤としてセラミックボールを充填したセラミックボール吸着層2a’、2b’としたものである。
【0053】
そして本実施例では、セラミックボール吸着層2a’、2b’を再生する際は、セラミックボール吸着層2a’、2b’からセラミックボールを抜き出しコンベア28によって抜き出してガス化炉1あるいは燃焼炉1aに投入し、加熱処理することで再生する。セラミックボールは加熱処理された後にガス化炉1あるいは燃焼炉1aの焼却灰等と併せて排出される。その後、焼却灰等と併せて排出されたセラミックボールは、回収・分離装置29で回収されるとともにセラミックボールのみが分離され、そのセラミックボールは搬送コンベア30によって、セラミックボール吸着層2a’、2b’に戻される。回収・分離装置29としては振動篩、風力選別機を用いることができる。
【0054】
このように、本実施例では、セラミックボール吸着層2a’、2b’の再生をガス化炉1あるいは燃焼炉1aでの加熱処理によって行うようにしている。これによって、セラミックボール吸着層2a’、2b’の再生に蒸気を使う必要がなくなり、エネルギーロスが少なくなる。また、セラミックボールに付着したタール、煤塵等の有機分はガス化炉1あるいは燃焼炉1aの燃料として有効利用できる。
【0055】
また、本実施例では、活性炭式吸着装置3の活性炭吸着層3a、3bの再生時に排出される廃蒸気あるいは廃ドレンを回収タンク26に回収し、これを先の第3実施例と同様に、ガス化炉1あるいは燃焼炉1aに燃料として吹き込むようにしている。
【0056】
以上、各実施例では、有機性廃棄物を熱分解して得られるガス化ガスの浄化方法について説明したが、本発明のガス化ガスの浄化方法は、有機性廃棄物を熱分解して得られるガス化ガスだけでなく、石炭等の固体有機物を熱分解して得られるガス化ガス、例えばコークス炉ガスや石炭ガス化燃料ガスにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施例を示す装置構成図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す装置構成図である。
【図3】本発明の第3実施例を示す装置構成図である。
【図4】本発明の第4実施例を示す装置構成図である。
【図5】本発明の第5実施例を示す装置構成図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ガス化炉
1a 燃焼炉
2 吸着装置
2a、2b 活性炭吸着層
2a’、2b’ セラミックボール吸着層
3 活性炭式吸着装置
3a、3b 活性炭吸着層
4 ガス化ガス供給本管
5a、5b ガス化ガス供給支管
6a、6b ガス化ガス排出支管
7 ガス化ガス搬送本管
8a、8b ガス化ガス搬送支管
9a、9b ガス化ガス排出支管
10 ガス化ガス排出本管
11 ガス利用設備
12a、12b、13a、13b 開閉弁
14 蒸気供給本管
14a、14b 蒸気供給支管
15 廃蒸気排出本管
15a、15b 廃蒸気排出支管
16a、16b、17a、17b、18a、18b、19a、19b 開閉弁
20 蒸気供給本管
20a、20b 蒸気供給支管
21 廃蒸気排出本管
21a、21b 廃蒸気排出支管
22a、22b、23a、23b 開閉弁
24a ガス冷却器
24b ガス加熱器
25 電気集塵機
26、27 回収タンク
28 抜き出しコンベア
29 回収・分離装置
30 搬送コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物又は石炭等の固体有機物を熱分解して得られたガス化ガス中のダイオキシン類及び常温常圧で液体若しくは固体である高沸点炭化水素化合物を吸着除去するために2つ以上の活性炭吸着層を並列に備える活性炭式吸着装置を有し、前記2つ以上の活性炭吸着層を切り替えながら操業し、吸着除去に使用していない活性炭吸着層については、蒸気等の酸素を含まない100℃以上のガスを通すことで吸着した物質を離脱させ吸着性能を維持するガス化ガスの浄化装置において、ガス化ガスの流れ方向の前段にガス化ガス中のミスト状の水分、前記高沸点炭化水素化合物のうちタール分、ダイオキシン類及び固体の煤塵を吸着可能な吸着装置を設け、この吸着装置の後段に前記活性炭式吸着装置を設けたことを特徴とするガス化ガスの浄化装置。
【請求項2】
前段の吸着装置における吸着層の吸着剤が活性炭である請求項1に記載のガス化ガスの浄化装置。
【請求項3】
前段の吸着装置における吸着層の吸着剤がセラミックボール等の無機材である請求項1に記載のガス化ガスの浄化装置。
【請求項4】
前段の吸着装置における吸着層の吸着剤に酸化鉄が含まれている請求項1〜3のいずれかに記載のガス化ガスの浄化装置。
【請求項5】
前段の吸着装置の前段にガス化ガスを冷却する冷却装置を設け、前段の吸着装置と後段の活性炭式吸着装置との間にガス化ガスを加熱する加熱装置を設けた請求項1〜4のいずれかに記載のガス化ガスの浄化装置。
【請求項6】
前段の吸着装置の前段に、集塵機を設けた請求項1〜5のいずれかに記載のガス化ガスの浄化装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のガス化ガスの浄化装置によるガス化ガスの浄化方法において、前段の吸着装置にて、主にガス化ガス中のミスト状の水分、前記高沸点炭化水素化合物のうちタール分、ダイオキシン類及び固体の煤塵を吸着除去し、後段の活性炭式吸着装置にて、主に前記高沸点炭化水素化合物のうちタール分以外の軽質油分及びダイオキシン類の残留分を吸着除去することを特徴とするガス化ガスの浄化方法。
【請求項8】
前段の吸着装置にて、主にガス化ガス中のミスト状の水分、前記高沸点炭化水素化合物のうちタール分、ダイオキシン類及び固体の煤塵を吸着除去した後に、そのガス化ガスを加熱し、後段の活性炭式吸着装置に通す請求項7に記載のガス化ガスの浄化方法。
【請求項9】
ガス化ガスを前段の吸着装置に通す前に、集塵機に通す請求項7又は8に記載のガス化ガスの浄化方法。
【請求項10】
前段の吸着装置の吸着層の再生に、後段の活性炭式吸着装置で吸着した軽質油分を利用する請求項7〜9のいずれかに記載のガス化ガスの浄化方法。
【請求項11】
前段の吸着装置における吸着層の吸着剤としてセラミックボール等の無機材を使用し、この吸着層を再生する際に、吸着層から吸着剤を取り出し、有機性廃棄物又は石炭等の固体有機物を熱分解してガス化するガス化炉、又はガス化炉に熱を供給する燃焼炉にて加熱処理する請求項7〜10のいずれかに記載のガス化ガスの浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−133327(P2008−133327A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319165(P2006−319165)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】