説明

ガス化設備緊急停止時のパージ方法及び装置

【課題】ガス化設備における緊急停止時に、安全且つ安価にパージを行えるようにしたガス化設備緊急停止時のパージ方法及び装置を提供する。
【解決手段】スプレー塔20出口の導出管19には緊急遮断弁50を設け、緊急遮断弁50より上流の導出管19には逃がし遮断弁51を介してフレアスタック52を設け、緊急停止時に、スプレー塔20出口を緊急遮断弁50により遮断し且つスプレー塔20の作動を停止し、緊急遮断弁50より上流側位置には水蒸気57を供給し、緊急遮断弁50より上流のガス化ガスを逃がし緊急遮断弁51を開にしてフレアスタック52に排出して緊急遮断弁50より上流を水蒸気57でパージし、緊急遮断弁50出口には不活性ガス65を供給し、下流装置23を不活性ガス65でパージする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化設備における緊急停止時に、安全且つ安価にパージを行えるようにしたガス化設備緊急停止時のパージ方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は従来のガス化設備の一例であり、このガス化設備はガス化炉1(流動層ガス化炉)と燃焼炉8とからなる2塔式と称される循環流動層ガス化設備の場合を示している。このような循環流動層ガス化設備の先行技術文献としては、特許文献1がある。
【0003】
図3のガス化設備を構成するガス化炉1(流動層ガス化炉)は、下部の散気装置2から供給される水蒸気3により流動媒体(硅砂、石灰石等)の流動層4を形成して上部から投入される原料5(石炭、バイオマス、タイヤチップ等)のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分(チャー)とを生成し、ガス化炉1で生成されたチャーと流動媒体との混合物6は導入管7により、ガス化設備を構成する燃焼炉8へ導入するようにしている。
【0004】
ガス化設備を構成する燃焼炉8は、散気装置9の下部から空気又は酸素等の流動用ガス10が供給されて流動層を形成することにより前記導入管7からのチャーを燃焼させて循環媒体を加熱するようになっており、流動によって燃焼炉8の上部から排ガス管11により導出される燃焼排ガス12は、ホットサイクロン等の媒体分離装置13に導入されて流動媒体14と排ガス15とに分離され、分離した流動媒体14はダウンカマー16を介して前記ガス化炉1に供給するようにしており、又、前記媒体分離装置13で流動媒体14が分離された排ガス15は、誘引ファン11aに誘引されて煙突11bから排出されるようになっている。
【0005】
前記ガス化炉1には前記燃焼炉8との間におけるガスの移動を遮断するための機構が備えられている。
【0006】
前記ガス化炉1(流動層ガス化炉)で生成したガス化ガス18は、導出管19により取り出されて例えば図示しない固体分離装置により固形分が分離された後、スプレー塔20に導くようにしている。スプレー塔20ではスプレー21により水Wを噴射して冷却することによりガス化ガス18中の水蒸気(及びタール、微粉等)を除去しており、水蒸気等が除去されたガス化ガス18は、誘引ファン22を有する下流装置23に導くようしている。下流装置23の誘引ファン22で誘引されたガス化ガス18は、ガス精製装置24に導かれてガス化ガスの精製等が行われるようになっている。
【0007】
ここで、前記したようにスプレー塔20を備えたガス化設備では、スプレー塔20で水Wを噴射することによりガス化ガス18を、一般に水蒸気の凝縮温度より低い90℃以下程度に冷却している。これは、スプレー塔20の下流に設置される下流装置23における特に誘引ファン22の耐熱温度が低いために、ガス化ガス18を低温に冷却することによって誘引ファン22を保護している。
【0008】
前述の如きガス化設備における通常運転時は、ガス化炉1において、水蒸気3により流動層4が形成されており、ここに石炭、バイオマス、タイヤチップ等の原料5を投入すると、該原料5は水蒸気ガス化によりガス化され、ガス化ガス18と可燃性固形分(チャー)とが生成され、ガス化炉1で生成したチャーは流動媒体と共に混合物6として導入管7から燃焼炉8へ導入されて、燃焼炉8の下部から供給される流動用ガス10により流動燃焼が行われ、該燃焼炉8からの燃焼排ガス12は、排ガス管11によりホットサイクロン等の媒体分離装置13へ導入され、該媒体分離装置13において、前記燃焼排ガス12より流動媒体14が分離され、該分離された流動媒体14はダウンカマー16を介して前記ガス化炉1に戻され、循環される。
【0009】
上記したように、燃焼炉8でのチャーの燃焼によって流動媒体が高温に加熱されて媒体分離装置13により分離され、高温の流動媒体14が前記ダウンカマー16を介してガス化炉1に供給されることにより、ガス化炉1内はガス化に適した高温に保持され、よってガス化炉1内では、供給される原料5の熱分解によって生成したガスや、その残渣原料が水蒸気と反応することによって、水性ガス化反応[C+H2O=H2+CO]や水素転換反応[CO+H2O=H2+CO2]が起こり、H2やCO等の可燃性のガス化ガスが生成される。
【0010】
ガス化炉1で生成したガス化ガス18は、導出管19により取り出されて例えば図示しない固体分離装置により固形分が分離された後、スプレー塔20に導かれてスプレー21により水Wが噴射されることにより冷却されてガス化ガス18中の水蒸気(及びタール、微粉等)が除去される。水蒸気等が除去されたガス化ガス18は、誘引ファン22及びガス精製装置24等を有する下流装置23に供給される。
【0011】
因みに、前記ガス化設備における通常運転中の熱不足時、即ち前記ガス化炉1において原料5のガス化のための充分な熱が得られないような場合には、図3中、仮想線で示される如く、前記ガス化炉1へ供給される原料と同じ石炭、バイオマス、タイヤチップ等の補助燃料5aを補助的に燃焼炉8へ投入して燃焼を行い、不足する熱を補うようになっている。又、前記ガス化設備における通常運転に到る前段階での予熱運転時には、前記ガス化炉1への原料の投入は行わずに、仮想線で示されるように、前記石炭、バイオマス、タイヤチップ等の補助燃料5aを予熱用として前記燃焼炉8へ投入して燃焼を行い、該燃焼炉8での補助燃料5aの燃焼に伴い高温になった流動媒体は燃焼排ガス12と共に排ガス管11を通り前記媒体分離装置13で分離され、前記ダウンカマー16を介してガス化炉1へ供給されることにより、ガス化設備の循環予熱が行われるようになっている。
【0012】
図3のガス化設備において、前記燃焼炉8の温度が何らかの原因で設定温度以下に下がった場合には、燃焼を継続することができず、よって多量の未燃燃料が燃焼炉8に蓄積してしまうこととなる。
【0013】
又、図3に示すようにスプレー塔20を備えたガス化設備において、スプレー塔20が何らかの原因でトリップした場合には、高温のガス化ガス18が下流装置23に導入されてしまい、これによって誘引ファン22が焼損するといった問題を生じることになる。
【0014】
従って、このような好ましくない状態になることを回避するために、従来のガス化設備においては、燃焼炉8の温度が設定温度以下に下がった場合、或いはスプレー塔20がトリップした場合には全系統燃料緊急遮断(MFT:Master Fuel Trip)が動作されて、ガス化設備を緊急停止するようにしている。
【0015】
上記したように、ガス化設備を緊急停止した場合には、ガス化炉1内部及び導出管19内は高濃度の可燃性のガス化ガス18で満たされているため、この可燃性のガス化ガス18に外部からの空気が混合すると急激な燃焼を起こす虞れがあるため、ガス化炉1内部及び導出管19内を不燃性の不活性ガスで置換するパージを行う必要があり、又、下流装置23は、不燃性の不活性ガスで置換するパージを行うと共に、誘引ファン22を焼損させない低い温度に保持する必要がある。
【0016】
従来、図3に示したようなガス化設備をパージする際は、一般に、ガス化炉1に窒素(N2)或いはアルゴン(Ar)等の不活性ガスを供給することにより、ガス化炉1及び下流装置23を不活性ガスでパージするようにしていた。
【0017】
しかし、上記ガス化設備をパージするには、一般にガス化炉1の容積の約5倍の不活性ガス(N2)が必要であり、このように大量の不活性ガスを必要とするために大型の不活性ガス製造装置が必要になり、パージのための費用が大幅に増大するという問題を有していた。
【0018】
又、上記したように、不活性ガス(N2)によってガス化炉1をパージする方法においては、スプレー塔20がトリップした場合は、高温のガス化ガス18が下流装置23へ導入されてしまうために誘引ファン22を焼損させるという問題がある。
【0019】
一方、部分ガス化・分解装置の運転始動時、及び運転停止時に、装置内のガスを水蒸気によってパージするようにした運転方法は特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開2005−041959号公報
【特許文献2】特許第3881712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、特許文献2に示された水蒸気によるパージ方法を用いて図3に示すガス化設備の緊急停止時のパージを行う場合には、ガス化炉1の流動層4を流動化させてパージするために高温・高圧の水蒸気が必要であるが、このような高温・高圧の水蒸気を補助ボイラで供給しようとしても、補助ボイラは起動してから流動層4を流動化できる高温・高圧の水蒸気を生成するまでに長い時間を要し、このためにガス化設備の緊急停止時にはパージすることができないという問題がある。
【0021】
又、水蒸気の供給が可能になったとしても、スプレー塔20がトリップした場合には、高温のガス化ガス18及び水蒸気が下流装置23へ導入されて誘引ファン22を焼損させてしまうという問題がある。
【0022】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、ガス化設備における緊急停止時に、安全且つ安価にパージを行えるようにしたガス化設備緊急停止時のパージ方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、原料とガス化剤をガス化炉に供給して原料のガス化を行い、ガス化炉で生成したガス化ガスを導出管によりスプレー塔に導いて冷却した後、誘引ファンを備えた下流装置に導くようにしているガス化設備緊急停止時のパージ方法であって、
スプレー塔出口の導出管には緊急遮断弁を設け、緊急遮断弁より上流の導出管には逃がし緊急遮断弁を介してフレアスタックを設け、
緊急停止時に、スプレー塔の出口を緊急遮断弁により遮断し且つスプレー塔の作動を停止し、
前記緊急遮断弁より上流側位置には水蒸気を供給し、緊急遮断弁より上流のガス化ガスを前記逃がし緊急遮断弁を開にしてフレアスタックに排出して緊急遮断弁より上流を水蒸気でパージし、
前記緊急遮断弁の下流出口には不活性ガスを供給し、下流装置を不活性ガスでパージする
ことを特徴とするガス化設備緊急停止時のパージ方法、に係るものである。
【0024】
上記ガス化設備緊急停止時のパージ方法において、水蒸気がガス化設備に備えた排熱回収ボイラで生成された水蒸気であることは好ましい。
【0025】
本発明は、原料とガス化剤をガス化炉に供給して原料のガス化を行い、ガス化炉で生成したガス化ガスを導出管によりスプレー塔に導いて冷却した後、誘引ファンを備えた下流装置に導くようにしているガス化設備緊急停止時のパージ装置であって、
スプレー塔出口の導出管に備えた緊急遮断弁と、
緊急遮断弁より上流の導出管に逃がし緊急遮断弁を介して接続したフレアスタックと、
少なくともガス化炉に水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、
緊急遮断弁の下流出口における導出管に接続した不活性ガス供給手段と、
を有することを特徴とするガス化設備緊急停止時のパージ装置、に係るものである。
【0026】
上記ガス化設備緊急停止時のパージ方法において、水蒸気供給手段がガス化設備に備えた排熱回収ボイラであることは好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明のガス化設備緊急停止時のパージ方法及び装置によれば、緊急停止時に、スプレー塔の出口を緊急遮断弁により遮断し且つスプレー塔の作動を停止し、緊急遮断弁より上流側位置には水蒸気を供給して緊急遮断弁より上流のガス化ガスを前記逃がし緊急遮断弁を開にしてフレアスタックに排出すると共に、緊急遮断弁より上流を水蒸気でパージし、遮断弁の出口には不活性ガスを供給して下流装置を不活性ガスでパージするようにしたので、緊急遮断弁より上流側のガス化ガスを水蒸気によって安全且つ迅速にパージすることができ、且つ、緊急遮断弁の出口に不活性ガスを供給して下流装置を不活性ガスでパージすることにより、下流装置には高温のガスが導かれることがなく安全に、しかも僅かな不活性ガスの使用量でパージすることができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0029】
図1は図3のガス化炉に適用した本発明の緊急停止時のパージ装置の一例を示すもので、図3と同一のものには同じ符号を付して説明を省略し、本発明の特徴部分についてのみ説明する。
【0030】
図1に示すパージ装置は、スプレー塔20出口の導出管19に緊急遮断弁50を設置している。更に、緊急遮断弁50より上流の導出管19におけるガス化炉1の出口位置に、逃がし緊急遮断弁51を介してフレアスタック52を接続している。
【0031】
更に、前記導出管19と排ガス管11には夫々熱交換器53,54を配置した排熱回収ボイラ55が設けられており、ポンプ56からの水Wを前記熱交換器53,54に順次導いて水蒸気57を生成させ、この水蒸気57を水蒸気管58を介してガス化炉1の散気装置2の下部に供給し、又、前記水蒸気57を水蒸気遮断弁59を有する水蒸気管60を介してスプレー塔20に供給するようにした水蒸気供給手段61を備えている。尚、前記水蒸気管58によってガス化炉1に供給する水蒸気57は、ガス化炉1が原料5のガス化を行う際のガス化剤として供給することができ、又、緊急停止時にもパージ用としてガス化炉1に供給することができる。一方、ガス化炉1に空気や二酸化炭素等の他のガス化剤62を供給してガス化を行うようにしたガス化炉の場合には、水蒸気管58に水蒸気遮断弁63を備えて緊急停止時にはガス化剤62の供給を停止し、水蒸気遮断弁63を開けて前記水蒸気管58による水蒸気57をガス化炉1に供給することができる。
【0032】
更に、前記緊急遮断弁50出口の導出管19には、不活性ガス遮断弁64を介して不活性ガス65を供給するようにした不活性ガス供給手段66を設けている。
【0033】
又、前記下流装置23がトリップした場合にも下流装置23の上流をパージできるようにするために、仮想線で示すように、下流装置23入口の導出管19に下流装置遮断弁67を設けると共に、下流装置遮断弁67入口の導出管19に逃がし緊急遮断弁68を介してフレアスタック69を接続している。このフレアスタック69は、前記フレアスタック52と兼用にすることもできる。
【0034】
次に、図1の形態の作動を説明する。
【0035】
図1のガス化設備の運転時は図3のガス化設備と同様に運転されてガス化ガス18の生成を行っており、この運転状態からガス化設備が緊急停止された場合は、ガス化炉1への原料5の供給は遮断される。同時に、スプレー塔20出口の緊急遮断弁50は閉止し、且つスプレー塔20の作動を停止する。この時、燃焼炉8には流動用ガス10(空気)が供給され、チャーの燃焼と循環媒体の循環は継続される。
【0036】
この状態で、水蒸気供給手段61からの水蒸気57を水蒸気管58によりガス化炉1の下部に供給すると共に、水蒸気遮断弁59を開けて水蒸気供給手段61からの水蒸気57を水蒸気管60によりスプレー塔20に供給する。この時、前記水蒸気管58からの水蒸気57によってガス化炉1でのガス化を行っていた場合には、緊急停止時にもガス化炉1への水蒸気57の供給を継続するようにし、他のガス化剤62をガス化炉1に供給してガス化を行っていた場合には、他のガス化剤62の供給は停止し、水蒸気遮断弁63を開けて水蒸気管58からの水蒸気57をガス化炉1に供給する。
【0037】
更に、不活性ガス遮断弁64を開けることにより、不活性ガス供給手段66からの不活性ガス65を前記緊急遮断弁50の出口に供給することにより、下流装置23を不活性ガス65でパージする。
【0038】
上記したように、水蒸気供給手段61からの水蒸気57が水蒸気管58によってガス化炉1に供給されると、ガス化炉1内に残留する原料は水蒸気57によってガス化され、生成したガス化ガスは逃がし緊急遮断弁51からフレアスタック52に排出されて燃焼される。ガス化炉1内の原料はガス化によって減少すると共にチャーとなって燃焼炉8に導かれることにより減少するので、ガス化ガスの生成は減少し、これによりガス化炉1内は水蒸気57でパージされるようになる。
【0039】
又、前記水蒸気管60によってスプレー塔20に供給された水蒸気57は、導出管19をガス化炉1方向へ逆流して導出管19のガス化ガスがフレアスタック52に排出されることにより、スプレー塔20より上流の導出管19は水蒸気57でパージされる。これにより、ガス化炉1内及びスプレー塔20より上流の導出管19からなるガス化ガス系統は水蒸気57でパージされるようになる。
【0040】
尚、前記緊急停止時も燃焼炉8は作動し続け、燃焼炉8は高い残熱を有しているため、排ガス管11から導出される排ガス15は高い温度を有しているため、前記水蒸気供給手段61からは、ガス化炉1の流動層4を流動化してパージするのに十分な水蒸気57を供給することができる。
【0041】
又、燃焼器8の残熱による水蒸気で十分なパージが行えない場合は、補助燃料5a(図3参照)を投入することによって、パージするのに十分な水蒸気を57を供給することができる。
【0042】
このように、緊急遮断弁50より上流側のガス化ガス18は水蒸気57によりフレアスタック52に排出して水蒸気57で置換するようになるため、緊急遮断弁50より上流側の導出管19及びガス化炉1のガス化ガス系統を安全且つ迅速にパージすることができる。
【0043】
又、不活性ガス供給手段66からの不活性ガス65を緊急遮断弁50の出口に供給して、下流装置23を不活性ガス65でパージするので、下流装置23には高温のガスが導かれることがなく安全に、しかも僅かな不活性ガス65の使用量でパージすることができる。
【0044】
又、図1に仮想線で示すように、下流装置23入口の導出管19に下流装置遮断弁67を設けると共に、下流装置遮断弁67の入口の導出管19に逃がし緊急遮断弁68を介してフレアスタック69を接続した構成にすると、下流装置23がトリップした場合にも下流装置23の上流ガス化ガス系統を不活性ガスでパージすることができる。
【0045】
図2は、本発明の他の例を示したもので、緊急遮断弁50の入口であるスプレー塔20と緊急遮断弁50との間に、逃がし緊急遮断弁70を介してフレアスタック71を接続しており、水蒸気供給手段61からの水蒸気57は水蒸気管58を介してガス化炉1のみに供給するようにしている。その他の構成は図1の場合と同様である。
【0046】
図2の構成において、運転状態からガス化設備が緊急停止された場合には、ガス化炉1への原料5の供給は遮断される。同時に、スプレー塔20出口の緊急遮断弁50は閉止し、且つスプレー塔20の作動は停止する。この時、燃焼炉8には流動用ガス10(空気)が供給されて、チャーの燃焼と循環媒体の循環は行われている。
【0047】
この状態で、水蒸気供給手段61からの水蒸気57を水蒸気管58によりガス化炉1の下部に供給すると、ガス化炉1内に残留する原料は水蒸気57によりガス化され、生成したガス化ガスは導出管19によりスプレー塔に導かれ、更に、逃がし緊急遮断弁70からフレアスタック71に排出されて燃焼される。ガス化炉1内の原料はガス化によって減少すると共にチャーとなって燃焼炉8に導かれることにより減少するので、ガス化ガスの生成は減少し、これによりガス化炉1内及びスプレー塔20より上流の導出管19からなるガス化ガス系統は水蒸気57でパージされるようになる。
【0048】
又、前記スプレー塔20がトリップした場合には、スプレー塔20を停止させる操作が無くなるのみで、前記の場合と全く同様にしてパージを行うことができる。
【0049】
なお、本発明は上記形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の緊急停止時のパージ装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の緊急停止時のパージ装置の他の例を示す概略構成図である。
【図3】従来のガス化設備の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ガス化炉(流動層ガス化炉)
5 原料
8 燃焼炉
18 ガス化ガス
19 導出管
20 スプレー塔
22 誘引ファン
23 下流装置
50 緊急遮断弁
51 逃がし緊急遮断弁
52 フレアスタック
55 排熱回収ボイラ
57 水蒸気
61 水蒸気供給手段
66 不活性ガス供給手段
70 逃がし緊急遮断弁
71 フレアスタック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料とガス化剤をガス化炉に供給して原料のガス化を行い、ガス化炉で生成したガス化ガスを導出管によりスプレー塔に導いて冷却した後、誘引ファンを備えた下流装置に導くようにしているガス化設備緊急停止時のパージ方法であって、
スプレー塔出口の導出管には緊急遮断弁を設け、緊急遮断弁より上流の導出管には逃がし緊急遮断弁を介してフレアスタックを設け、
緊急停止時に、スプレー塔の出口を緊急遮断弁により遮断し且つスプレー塔の作動を停止し、
前記緊急遮断弁より上流側位置には水蒸気を供給し、緊急遮断弁より上流のガス化ガスを前記逃がし緊急遮断弁を開にしてフレアスタックに排出して緊急遮断弁より上流を水蒸気でパージし、
前記緊急遮断弁の下流出口には不活性ガスを供給し、下流装置を不活性ガスでパージする
ことを特徴とするガス化設備緊急停止時のパージ方法。
【請求項2】
水蒸気がガス化設備に備えた排熱回収ボイラで生成された水蒸気である請求項1に記載のガス化設備緊急停止時のパージ方法。
【請求項3】
原料とガス化剤をガス化炉に供給して原料のガス化を行い、ガス化炉で生成したガス化ガスを導出管によりスプレー塔に導いて冷却した後、誘引ファンを備えた下流装置に導くようにしているガス化設備緊急停止時のパージ装置であって、
スプレー塔出口の導出管に備えた緊急遮断弁と、
緊急遮断弁より上流の導出管に逃がし緊急遮断弁を介して接続したフレアスタックと、
少なくともガス化炉に水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、
緊急遮断弁の下流出口における導出管に接続した不活性ガス供給手段と、
を有することを特徴とするガス化設備緊急停止時のパージ装置。
【請求項4】
水蒸気供給手段がガス化設備に備えた排熱回収ボイラである請求項3に記載のガス化設備緊急停止時のパージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−235142(P2009−235142A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79432(P2008−79432)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】