説明

ガス収着回収装置及びガス収着回収方法

【課題】収着剤に収着させたガスを確実に脱着して回収できるとともに、回収する際のエネルギ効率が高いガス収着回収装置を提供する。
【解決手段】容器内1に、内部にガスを流動させることができる多孔質収着体11,12,13を充填して構成されるガス収着回収装置100であって、上記多孔質収着体の表面及び/又は内部に、上記ガスが流動させられる連続気孔を有する多孔質発熱体7,8,9,10を設けるとともに、上記多孔質発熱体を発熱させることにより、上記多孔質収着体に収着されたガスを脱着して回収できるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ガス収着回収装置及びガス収着回収方法に関する。詳しくは、し尿処理や堆肥製造工程等において生成されるガスを効率よく収着(吸収あるいは吸着)し、濃縮して回収することができるガス収着回収装置及びガス収着回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、し尿処理や堆肥製造工程において生じる種々のガスは悪臭の原因となる。このため、種々の手法を用いて上記ガスを回収し、処理する装置が提案されている。
【0003】
たとえば、低い濃度で大量のガスを回収する手法として、上記ガスを収着する機能をもった収着剤、たとえば、活性炭やゼオライト等をハニカム状の多孔質体に担持したハニカムロータに、ガスを一旦収着させ、これを少量の加熱空気等のキャリヤガスで脱着させることにより回収し、その後燃焼処理等する手法が採用されることが多い。
【0004】
【特許文献1】特開2001−310110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されているガス収着方法では、収着ロータをその回転方向に対して順に、収着ゾーン、第1脱着ゾーン、第2脱着ゾーンに分割し、第1ヒータで加熱した空気等のキャリヤガスを上記第1脱着ゾーンに通し、第1脱着ゾーンを通ったキャリヤガスを第2ヒータで再度加熱して第2脱着ゾーンに通して収着ガスを収着剤から脱着するように構成されている。
【0006】
上記手法においては、収着ガスを回収する空気等のキャリヤガスを収着ロータの外部で加熱して、上記ロータに保持した収着剤に作用させるように構成されているため、装置が大掛かりになる。また、加熱されたキャリヤガスの温度が、ガス収着剤内部を流動する間に低下するため、収着剤の全体を所定温度に加熱して収着ガスを回収することはできない。このため、ガスの回収効率が低くなる。また、高沸点のガスを回収するには、キャリヤガスを2度加熱して収着剤に作用させる必要があり、エネルギ効率も低い。
【0007】
一方、収着ガスを回収せずに収着剤ごと焼却等する手法が採用されることも多いが、ランニングコストが大きくなる。
【0008】
本願発明は、上記従来の問題を解決し、収着剤に収着させたガスを確実に脱着して回収できるとともに、回収する際のエネルギ効率が高いガス収着回収装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に記載した発明は、容器内に、内部にガスを流動させることができる多孔質収着体を充填して構成されるガス収着回収装置であって、上記多孔質収着体の表面及び/又は内部に、上記ガスが流動させられる連続気孔を有する多孔質発熱体を設けるとともに、上記多孔質発熱体を発熱させることにより、上記多孔質収着体に収着されたガスを脱着して回収できるように構成されている。
【0010】
本願発明に係るガス収着回収装置は、多孔質収着体の表面及び/又は内部に、多孔質発熱体が設けられている。上記構成によって、上記多孔質収着体や脱着用に流動させられるキャリヤガスを容器内で直接加熱することができる。このため、収着されたガスを脱着させる際のエネルギ効率が高い。
【0011】
一方、上記多孔質発熱体は、収着対象となるガスを流動させることができる連続気孔を有する多孔質体から形成されている。このため、多孔質発熱体を多孔質収着体の表面や内部に設けても、上記多孔質発熱体が収着ガスの流動を妨げることがなく、大量のガスを容器内で流動させて収着処理及び脱着処理することが可能となる。
【0012】
また、上記多孔質発熱体へ作用させる電力量を制御することにより、多孔質収着体及び流動するキャリヤガスを所要の温度に加熱することができる。このため、収着体に収着されたガスを確実に脱着させることが可能となる。また、高沸点のガスを容易に脱着させることもできる。
【0013】
さらに、脱着用のキャリヤガスを別途加熱するための加熱装置を設ける必要がないため、装置を小型化することができる。また、多孔質収着剤を繰り返し使用できるため、ランニングコストを低く抑えることも可能となる。
【0014】
上記多孔質発熱体を設ける位置は、特に限定されることはない。多孔質発熱体の表面に設けて、多孔質収着体に流入する直前のガスを加熱するように構成することができる。また、多孔質収着体の内部に設けて、多孔質収着体自体を加熱するように構成することもできる。
【0015】
請求項2に記載した発明のように、ガスが流動させられる複数の領域に上記多孔質収着体及び上記多孔質発熱体をそれぞれ設けるとともに、選択した領域にガスを流動させて多孔質収着体に収着させるとともに、選択した領域の多孔質発熱体を発熱させて、多孔質収着体に収着されたガスを脱着して回収できるように構成することができる。
【0016】
上記構成を採用することにより、大量のガスを連続して処理することが可能となる。たとえば、上記複数の領域に順次収着させるガスを流動させて多孔質収着体に収着させる一方、ガスが収着された領域の多孔質収着体を順次加熱してガスを脱着することにより、ガス収着回収装置を連続して運転することが可能となる。
【0017】
上記領域を設ける手法は特に限定されることはない。たとえば、一の容器内を複数の領域に区画して、各区画内に多孔質収着体と多孔質発熱体とをそれぞれ収容し、上記領域に順次収着ガスを流動させるとともに、順次脱着させるように構成することができる。
【0018】
また、請求項3に記載した発明のように、上記各領域を、独立した容器を備えて構成するとともに、上記各容器に収着ガスを順次流動させて収着させるとともに、ガスを収着した多孔質収着体を順次加熱してガスを脱着させて回収することもできる。
【0019】
ガス収着作用を発揮できるものであれば、上記多孔質収着体を構成する材料は限定されることはなく、また、収着するガスの種類に応じて選定することができる。たとえば、活性炭やゼオライト等を採用することができる。また、収着ガスを所要の流速で流動させることができれば、形態も限定されることはない。たとえば、一体的に成形されたブロック状の多孔質体から構成される収着体を採用することができる。また、粒状の収着剤を集合させて多孔質収着体を構成することもできる。
【0020】
請求項4に記載した発明は、上記多孔質発熱体が、ガスの流動方向に対して直交する面に沿って設けられた板状に形成されているとともに、上記多孔質収着体をガスの流動方向に配列される複数の層に分割するように設けられており、選択した発熱体を発熱させることにより、所定の層の多孔質収着体に収着されたガスを脱着できるように構成されたものである。
【0021】
上記多孔質収着体に収着されたガスを一度に脱着すると、次の工程において脱着されたガスを処理できない場合がある。たとえば、ガス分解装置等によってガスを処理する場合、ガス分解装置における処理能力に対応してガスの脱着量をコントロールするのが好ましい。
【0022】
多孔質収着体の複数の層に分割して設け、各層のガスを順次脱着することにより、脱着されるガスの量をコントロールすることが可能となる。この構成を採用することにより、ガス処理装置の能力等に応じてガスを脱着することが可能となる。
【0023】
請求項5に記載した発明のように、上記多孔質収着体を、表面に収着剤層を設けた粒状収着剤の集合体から構成するのが好ましい。たとえば、粒状の活性アルミナの表面に、ゼオライトをコーティングして粒状収着剤を形成し、この粒状収着剤を所要の密度で集合させて多孔質収着体を構成することができる。
【0024】
この場合、収着ガスが流動する際の圧力損失が大きくならないように、たとえば、直径2mm以上のアルミナ球体を採用し、気孔率が26%〜32%となるように充填するのが好ましい。なお、異なる粒度を有する粒状収着剤を集合させて所要の気孔率を有する多孔質収着体を構成できる。また、2種以上の異なる収着剤を担持させた複数の粒状収着剤を配合して集合させた多孔質収着体を採用することもできる。
【0025】
球状等の粒状収着剤を集合させた多孔質収着体の形態は不定形である。このため、これを容器に充填して多孔質収着体を構成する場合、これら粒状収着剤を所定形状に保持するための保持手段を設けるのが好ましい。請求項6に記載した発明は、粒状の収着剤を集合させて多孔質収着体を構成する場合、上記多孔質発熱体を、上記粒状収着剤を保持する保持手段として用いたものである。
【0026】
たとえば、板状あるいはシート状の多孔質発熱体を採用するとともに、粒状収着剤から構成される多孔質収着体の外周部に配置することにより、多孔質収着体を所定の形態に保持することができる。これにより、他の部材から形成された保持手段を設ける必要がなくなり、部品点数を削減できるとともに製造コストを低減させることもできる。
【0027】
収着ガスの流動を阻害することがなければ、上記多孔質発熱体の構成も特に限定されることはない。たとえば、請求項7に記載した発明のように、上記多孔質発熱体を、発熱性を有する外殻と、中空又は/及び導電性を有する芯部とを有する骨格を備え、上記骨格が一体的に連続する3次元網目構造を構成するものを採用することができる。
【0028】
上記多孔質発熱体の骨格を3次元網目構造に形成することにより、気孔率をきわめて大きく設定することができる。これにより、気孔内におけるガスの流動抵抗が小さくなり、大量のガスを流動させることが可能となる。
【0029】
また、上記骨格は、一体的に連続するように形成されている。このため、繊維状の発熱体を集合させて構成される多孔質発熱体のように、隣接する各繊維間の接触抵抗が生じることがなく、多孔質発熱体内各部における電気抵抗が大きく変化することはない。したがって、多孔質発熱体内の電流の流れに偏在が生じることが少なく、多孔質発熱体の全体を均一に加熱することが可能となる。
【0030】
上記骨格を形成する手法は特に限定されることはない。たとえば、上記骨格を、3次元網目状樹脂の表面にめっき層又は金属コーティング層を設けるとともに、上記樹脂を消失させることにより形成することができる。上記骨格の外殻を金属めっき層又は金属コーティング層から形成することにより、骨格の厚みを非常に薄くかつ均一に設定することが可能となる。これにより、大きな気孔率を備える多孔質発熱体を形成することが可能となる。
【0031】
上記芯部は、製造方法に応じて、中空又は/及び導電性材料から構成される。たとえば、上述したように、上記骨格を、3次元網目状樹脂の表面にめっき層を設けるとともに、上記樹脂を消失させることにより形成する場合、上記樹脂が消失した部分が中空状となる。また、上記メッキ層を設けるために上記3次元網目状樹脂の表面に導電性材料をコーティング等して導電化処理を施した場合には、上記導電性材料からなる表面導電化層が中空芯部の内周面に残存する場合がある。さらに、メッキ処理の後に熱処理等を施した場合は、外殻が収縮して、中空部分がなくなる場合もある。
【0032】
上記多孔質発熱体における上記3次元網目構造は、上記骨格を構成する複数の枝部が結節部に集合して一体的に連続しているとともに、一の結節部に集合する上記各枝部の外殻の厚みがほぼ一定となるように構成するのが好ましい。上記結節部では各骨格(枝部)からの電流が集中するため、一の結節部に集合する各枝部の電気抵抗が異なると、結節部周りの一部の枝部に過大な電流が流れて温度が上昇し、骨格が溶断したり劣化する恐れがある。一の結節部に集合する枝部の外殻の厚みをほぼ一定に設定することにより、一の結節部に集合する各骨格の電気抵抗をほぼ一定にすることが可能となり、一部の骨格に過大な電流が流れることもなくなる。これにより、骨格の溶断や劣化を防止することが可能となる。
【0033】
外殻をめっき層等から形成すると、一の結節部に集合する骨格の外殻の厚みをほぼ一定に形成することが可能となる。これにより、結節部周りの外殻の電気抵抗のばらつきが小さくなり、多孔質発熱体の全域に、均一に電流を流すことができる。
【0034】
上記外殻を、Niを70〜95%と、Crを5〜30%とを含む合金から形成するのが好ましい。上記範囲の配合量に設定することにより、上記多孔質発熱体を効率よく発熱させることができる。なお、上記NiとCrの配合比を保持した状態で他の成分が配合されてもよい。
【0035】
上記多孔質発熱体を、Niを主成分とする金属多孔質体に、Crを拡散させることにより合金化して構成することができる。Ni−Cr合金から、直接所要の気孔率を有する多孔質体を形成するのは困難な場合がある。たとえば、Ni−Cr合金のめっき層を直接形成するのは困難である。
【0036】
このため、まず、Niから多孔質体を形成し、この多孔質体を構成するNiの表面から、Crを拡散させて発熱体として機能するNi−Cr合金層を形成することができる。
【0037】
Niは、めっき処理しやすいため、上記骨格を容易に形成することができる。また、骨格の厚みや気孔率の異なる種々の金属多孔質体を容易に構成できる。そして、このNi多孔質体をCr合金化することによって、所要の電熱特性を備える種々の発熱体を構成できる。
【0038】
上記Ni多孔質体を、Cr合金化する手法は特に限定されることはない。たとえば、上記Ni多孔質体を、Cr源粉末の加熱により発生させた拡散浸透成分ガスと還元性希釈ガスとの混合ガス中で熱処理することにより、Ni多孔質体をNi−Cr合金とすることができる。
【0039】
また、Niによって形成された第1の外殻に、Crで形成された第2の外殻を積層形成し、所定の熱処理を行うことにより、上記第1の外殻と上記第2の外殻とを互いに拡散させて合金化し、上記多孔質発熱体とすることもできる。
【0040】
請求項8に記載した発明は、ガスが流動させられる容器内に、内部でガスを流動させることができる多孔質収着体及び多孔質発熱体を設けたガス収着回収装置におけるガス収着回収方法であって、上記多孔質収着体内にガスを流動させて収着させるガス収着工程と、上記多孔質発熱体を発熱させることにより、上記多孔質収着体内に収着されたガスを脱着するガス脱着工程とを含んで構成されるものである。
【0041】
請求項9に記載した発明は、上記多孔質収着体及び上記多孔質発熱体をそれぞれ設けた複数の領域を設定したガス収着回収装置におけるガス収着回収方法であって、選択した領域の多孔質収着体にガスを収着させる工程と、選択した領域の多孔質発熱体を発熱させることにより上記多孔質収着体に収着されたガスを脱着するガス脱着工程とを含んで構成されるものである。
【発明の効果】
【0042】
収着剤に収着させたガスを確実に脱着して回収できるとともに、回収する際のエネルギ効率が高いガス収着回収装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1の実施形態に係るガス収着回収装置の軸線に沿う縦断面図である。
【図2】図1に示すガス収着回収装置の要部の拡大断面図である。
【図3】第2の実施形態に係るガス収着回収装置の腰部外観を示す斜視図である。
【図4】図3におけるIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】第3の実施形態を示す断面図である。
【図6】多孔質発熱体の構造の一例を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】図6に示す多孔質発熱体の結節部近傍の断面構造を模式的に示す図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本願発明の実施形態を図に基づいて説明する。
【0045】
図1に第1の実施形態に係るガス収着回収装置100の断面を示す。ガス収着回収装置100は、円筒状の容器1と、この容器1の内部空間1aに充填された多孔質発熱体7,8,9,10及び多孔質収着体11,12,13とを備えて構成されている。
【0046】
上記容器1は、金属等の材料から形成されるとともに、収着ガスを流入させる収着ガス流入口3aと、収着後の残余ガスを排出する排出口3bと、上記多孔質収着体に収着された収着ガスを回収するキャリヤガスを流入させるキャリヤガス流入口4aと、上記多孔質収着体11,12,13から脱着させた脱着ガスを含むキャリヤガスを回収するガス回収口4bとを備えて構成されている。
【0047】
本実施形態に係る上記多孔質発熱体7,8,9,10は、円板ないし短円柱状に一体形成された多孔質体から形成されている。一方、上記多孔質収着体11,12,13は、活性アルミナから形成された球体の表面に収着剤をコーティングして形成された球状収着剤の集合体として構成されている。上記多孔質発熱体7,8,9,10と、上記多孔質収着体11,12,13とは、容器の内部において、ガス流動方向に交互に積層配置されて、一体的な多孔質体6が構成されている。本実施形態では、上記多孔質発熱体7,8,9,10間において、上記球状収着剤の集合体が保持された形態を備え、上記多孔質発熱体7,8,9,10は、球状収着剤の集合体を円板状あるいは円柱状の形態に保持する保持手段として機能するように構成されている。
【0048】
各多孔質発熱体7,8,9,10の側部には、給電を行うためのリード線7a,7b,8a,8b,9a,9b,10a,10bが、上記容器1の側壁2から引き出されている。各リード線は、図示しない電源に接続されている。本実施形態では、各多孔質発熱体の上記リード線に選択的に電流を流し、各多孔質発熱体7,8,9,10を選択的に発熱させることができるように構成されている。
【0049】
上記多孔質発熱体7,8,9,10及び多孔質収着体11,12,13は、連続気孔を備えて構成されており、上記収着ガス流入口3aから流入する収着ガスを所定の流動速度で通過できる気孔率に設定されている。
【0050】
上記多孔質発熱体7,8,9,10は、上記多孔質収着体11,12,13及び流動するキャリヤガスを加熱して、上記多孔質収着体11,12,13に収着されたガスを脱着できる温度に設定するように構成されている。
【0051】
図2に示すように、上記多孔質収着体11,12,13は、球体20aの表面に、収着層20bを設けた球状収着剤20の集合体として構成されている。本実施形態では、直径が4〜6mmの活性アルミナ球体20aの表面にゼオライト収着層20bを設けた球状収着剤20を採用している。上記球状収着剤を、気孔率が26%〜32%となるように充填することにより、各多孔質収着体11,12,13が形成されている。
【0052】
なお、上記球体20aを構成する材料は、所要の耐熱性等を備えていれば、種々の材料を採用することができる。たとえば、多孔質アルミナから形成されるセラミック球体や、ステンレス等の金属球体を採用できる。また、上記収着体の形態も特に限定されることはなく、不定形粒状の形態を備えるものや、所定の気孔率を有する多孔質成形体を採用することもできる。
【0053】
上記収着層20bを構成する材料も特に限定されることはない。たとえば、ゼオライト粉末とバインダ及び溶剤とから形成されるペーストを、上記球体にコーティングして収着層20bを形成することができる。また、粉状活性炭を所定の気孔率で充填して多孔質収着体11,12,13を形成できる。また、上記各多孔質収着体11,12,13を、異なる材料から形成された収着層を備える球状収着剤を配合して構成することもできる。
【0054】
一方、上記多孔質発熱体7,8,9,10として、発熱性を有する外殻と、中空又は/及び導電性を有する芯部とを有する骨格を備え、上記骨格が一体的に連続する3次元網目構造を備えるものを採用することができる。たとえば、図6〜図8に示す形態の多孔質発熱体401を採用することができる。
【0055】
図6は、上記多孔質発熱体401の外観構造を示す電子顕微鏡写真である。多孔質発熱体401は、連続気孔401bを有する3次元網目構造を備える。上記3次元網目構造は、三角柱状の骨格410が3次元に連続して連なった形態を備え、上記骨格を構成する複数の枝部412が結節部411に集合して一体的に連続する形態を備える。また、骨格410の各部は、図8に示すように、外殻410aと、中空状の芯部410bとを備えて構成される。なお、図7及び図8に示す実施形態では、上記外殻410aは、後に説明するように、メッキ層412aと表面導電化層412bとが、一体的に合金化されて発熱体として機能するように構成されている。
【0056】
上記多孔質発熱体401は、連続気孔401bを有する多孔質状に形成されているため、上記気孔401b内で収着ガスを流動させることができる。しかも、上記多孔質発熱体401は、3次元網目構造を採用することによって、気孔率をきわめて大きく設定することができる。このため、気孔内におけるガスの流動抵抗が低く、大量のガスを流動させることが可能となる。
【0057】
一方、上記多孔質発熱体に通電することにより、多孔質収着体11,12,13及びキャリヤガスを効率よく加熱して、上記多孔質収着体11,12,13に収着されたガスを脱着して効率よく回収することができる。
【0058】
図7に示すように、上記3次元網目構造における一の結節部411に集合する上記枝部412の外殻410aの厚みtがほぼ一定に形成されている。一の結節部に集合する枝部(骨格)の外殻の厚みtがほぼ一定であるため、一の結節部に集合する各枝部412の電気抵抗もほぼ一定となる。したがって、一の結節部に集合する一部の枝部に過大な電流が流れることもなくなる。これにより、骨格の溶断や劣化を防止することができるとともに、多孔質発熱体の全体を均一に加熱することができる。
【0059】
本実施形態に係る上記多孔質発熱体401は、少なくともNiとCrとを含む合金から形成されている。上記NiとCrの配合量は、所要の発熱量に応じて設定することができる。たとえば、上記多孔質発熱体401の上記外殻410を、Niを70〜95%と、Crを5〜30%とを含む合金から形成することができる。
【0060】
上記多孔質発熱体401は、種々の手法を用いて形成することができる。たとえば、上記骨格をメッキによって形成する場合、3次元網目状樹脂に導電化処理を施す工程と、3次元網目状樹脂に金属めっきを施す工程と、3次元網目状樹脂を除去する工程とを含んで構成することができる。
【0061】
上記3次元網目状樹脂の形態として、樹脂発泡体、不織布、フェルト、織布等を用いることができる。上記3次元網目状樹脂を構成する素材は特に限定されることはないが、金属めっきした後、加熱等によって消失させることができるものを採用するのが好ましい。また、加工性やハンドリング性を確保するため、柔軟性を有するものを採用するのが好ましい。特に、3次元網目状樹脂として樹脂発泡体を採用するのが好ましい。樹脂発泡体は、連続気孔を有する多孔質状であればよく、既知のものを採用できる。たとえば、発泡ウレタン樹脂、発泡スチレン樹脂等を採用することができる。発泡樹脂の気孔の形態や気孔率、寸法等は特に限定されることはなく、用途に応じて適宜設定することができる。
【0062】
上記3次元網目状樹脂を導電化する処理は、各気孔の表面に上記骨格を構成する金属めっき層を設けるために行われるものであり、図7における表面導電化層412bを設けることができれば特に限定されることはない。たとえば、ニッケルを用いる場合には、無電解めっき処理、スパッタリング処理等を採用することができる。また、チタン、ステンレス等の金属やカーボンブラック、黒鉛等を採用する場合には、これらの微粉末にバインダを添加した混合物を、上記3次元網目状樹脂に含浸塗着する処理を採用することができる。
【0063】
上記めっき処理も特に限定されることはなく、公知のめっき法によって処理をすることができる。たとえば、ニッケルめっきを採用する場合、生産性、コスト等の観点から電気めっき法を採用するのが好ましい。電気めっきに用いるめっき浴として、公知あるいは市販のものを採用できる。
【0064】
上記めっき層の厚み(目付量)も特に限定されることはない。所要の気孔率や、強度を勘案して設定することができる。たとえば、100g/m2 〜2000g/m2 の目付量を採用することができる。
【0065】
上記めっき層を形成した後、上記3次元網目状樹脂を除去する工程が行われる。上記3次元網目状樹脂を除去する工程は、たとえば、ステンレスマッフル内で大気等の酸化性雰囲気において、上記めっき層を設けた多孔質体を、600℃〜800℃で熱処理することにより、上記3次元網目状樹脂を焼却除去することができる。
【0066】
高い発熱性能を得るため、Cr成分の配合量が多いNi合金から上記多孔質発熱体を形成するのが好ましい。Ni−Crの合金材料から上記めっき層を直接形成するのは困難である。このため、たとえば、Niめっき層とCrめっき層とを別々に形成し、その後合金化する手法を採用することができる。すなわち、3次元網目状樹脂に、上記手法によってまずNiめっき層を形成し、その上に、Crめっき層を積層形成する。その後、3次元網目状樹脂を除去し、さらに、所定の温度で熱処理することにより、上記Crめっき層とNiめっき層とを互いに拡散させて合金化することができる。
【0067】
上記Crめっき層の厚み(目付量)も特に限定されることはなく、たとえば、10g/m2〜1000g/m2の範囲で設定することができる。
【0068】
上記Crめっき層とNiめっき層とを積層形成した多孔質体を、ステンレスマッフル内でCOやH2等の還元性ガス雰囲気のもとで800℃〜1000℃で熱処理することにより、上記Crめっき層とNiめっき層とを互いに拡散させてNi−Cr合金層を形成することができる。また、N2やAr等の不活性ガス雰囲気では、カーボンマッフル内で1000℃〜1500℃に加熱して上記Crめっき層とNiめっき層とから合金層を形成することもできる。Niによって、図7及び図8に示す表面導電化層412bを設けた場合には、表面導電化層412bも上記合金化工程においてNi−Cr合金化されて全体が発熱体となる。
【0069】
上記工程を採用することにより、外殻のクロム濃度のバラツキが少なく、高い耐蝕性を有するとともに発熱特性の高い多孔質発熱体を形成することができる。また、めっき層によって外殻が構成されるため、外殻の厚み(断面積)を多孔質体内でほぼ均一に設定することが可能となる。このため、多孔質体内における電気抵抗のばらつきが少なくなり、通電することにより、多孔質体の全体を均一に加熱することができる。なお、上述した実施形態は、上記骨格を3次元網目状樹脂にめっきを施すことによって形成したが、粉体金属をコーティングし、その後、熱処理を施すことにより形成することもできる。この場合、Ni粉末とCr粉末とを含む粉体をコーティングすることにより、一度でNi−Cr合金を形成することもできる。
【0070】
図7及び図8に示すように、本実施形態に係る上記芯部は、中空状に形成されるが、これに限定されることはない。すなわち、上述した実施形態は、Niから形成された表面導電化層412bがCr合金化されたため外殻と一体化されたが、上記表面導電化層を別の導電性材料から形成する場合、芯部として残存する場合もある。たとえば、上記表面導電化層をチタンやカーボン等から形成するとともに、Niメッキによって骨格を形成した後Cr合金化した場合、上記表面導電化層412bが合金化されずに芯部として残存することになる。また、Niメッキ層をCr合金化する熱処理工程において、外殻が収縮して、中空の芯部が消失する場合もある。
【0071】
本実施形態では、上記多孔質発熱体7,8,9,10と上記多孔質収着体11,12,13とを、上記容器1内でガスの流動方向に交互に積層配置している。
【0072】
上記多孔質発熱体7,8,9,10と上記多孔質収着体11,12,13とを交互に設けることにより、流動する収着ガス及びキャリヤガスの速度を調整する機能を発揮させることができる。たとえば、上記多孔質収着体11,12,13内の気孔に偏在があった場合、収着ガスの流路が曲げられて偏流が生じ、ガスを多孔質収着体の全域に均一に接触させることができない場合が生じる。上記多孔質収着体をガスの流動方向に配列される複数の層から構成するとともに、これら層の間に多孔質発熱体8,9が配置されているため、気孔が不均一な多孔質収着体あるいは多孔質発熱体を採用した場合にも、ガスの偏流を緩和することができる。これにより、多孔質発熱体内及び多孔質収着体内を流れるガスの流れを均一にすることが可能となり、多孔質収着体の全域に収着ガスを均一に収着させることができるとともに、多孔質収着体内にキャリヤガスを均一に流動させて効率よく脱着ガスを回収することができる。
【0073】
また、多孔質発熱体7,8,9,10の一部に通電して発熱させることにより、選択した多孔質収着体に収着されたガスを脱着させて回収することができる。これにより、一定濃度で回収ガスを排出することが可能となり、後に接続されるガス処理装置の能力等に応じて脱着ガスを供給することが可能となる。
【0074】
〔実施例〕
多孔質発熱体として、Ni−Cr合金の外殻を備え、平均孔径1〜2mm、気孔率98%のものを採用した。一方、ゼオライト粉末とバインダー(PVdF12%NMP)と溶媒(NMP)とを、3:4:5の重量比で混合したペーストを、直径4〜6mmの球状の活性アルミナ多孔体に塗布し、溶媒を加熱除去してガス収着剤を形成し、これを集合させて、気孔率26〜32%の多孔質収着体を構成し、図1に示す形態で円筒状容器に充填してガス収着回収装置100を構成した。
【0075】
上記ガス収着回収装置に、収着ガス流入口3aから200ppmのアンモニアガスを室温、常圧下で線塔線速度8cm/secで流動させた。上記ガス排出口3bのアンモニアガス濃度は、1〜2ppmであった。
【0076】
上記多孔質発熱体9及び多孔質発熱体10に通電して100〜150℃に加熱するとともに、キャリヤガスとしてN2ガスをキャリヤガス流入口4aから線塔線速度4cm/secで流動させて、上記多孔質収着体13に収着されたガスを脱着させたところ、ガス回収口4bから、3000ppmのアンモニアガスを回収できた。
【0077】
上記実施例から、上記多孔質収着体に効率よくガスを収着させることができるとともに、確実に回収できた。
【0078】
図3及び図4に、本願発明の第2の実施形態に係るガス収着回収装置200を示す。なお、本実施形態における多孔質発熱体207a,207b,207c,207d及び多孔質収着体211a,211b,211c,211dの構成は、第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0079】
本実施形態に係るガス収着回収装置200は、円筒状のロータ201を半径方向に延びる隔壁202a,202b,202c,202dで4つの領域A,B,C,Dに区画し、この区画に上記多孔質発熱体207a,207b,207c,207d及び上記多孔質収着体211a,211b,211c,211dを充填して構成されている。
【0080】
上記ロータ201は、図示しないモータによって回転させられ、所定の回転位置にある領域に収着ガスを流動させて多孔質収着体に収着させる一方、所定の回動位置において上記多孔質発熱体に通電して加熱するとともにキャリヤガスを流動させることにより、多孔質収着体に収着させたガスを脱着させて回収できるように構成したものである。
【0081】
図4に示すように、本実施形態では、上記各領域A,B,C,Dにおいて、各2層の多孔質収着体211a,211b,211c,211dを挟むようにして各3層の多孔質発熱体207a,207b,207c,207dが積層して設けられている。上記ロータ201の回転軸212の外周部に各多孔質発熱体207a,207b,207c,207dに導通する第1の電極213a,213b,213c,213dが設けられているとともに、上記ロータ201の外周部に各多孔質発熱体207a,207b,207c,207dに導通する第2の電極214a,214b,214c,214dが設けられている。
【0082】
電源220からの電流が、ロータ201の回転軸212と、上記第2の電極214a,214b,214c,214dに接触しながら回転する通電体215を介して、上記多孔質発熱体207a,207b,207c,207dに順次電流が流される。これにより、上記多孔質発熱体が順次発熱させられて、収着されたガスが脱着させられて回収される。
【0083】
上記構成を採用することにより、発生するガスを連続的に収着し、回収することが可能となる。
【0084】
図5に、本願発明の第3の実施形態を示す。なお、この実施形態においても、多孔質収着体及び多孔質発熱体の構成は、第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0085】
第3の実施形態においては、複数の筒状容器301a,301b,301cに、多孔質発熱体307a,307b,307cと多孔質収着体311a,311b,311cとをそれぞれ層状に充填するとともに、これら容器を2組の切替え弁で接続して、ガス収着回収装置300を構成したものである。
【0086】
各筒状容器301a,301b,301cには、収着ガスを流入させる収着ガス流入口303aと、収着後の残余のガスを排出する排出口303bとが設けられている。上記各筒状容器301a,301b,301cの上記収着ガス流入口303aには、第1の4方弁351及び第2の4方弁352を切り換えることにより、収着ガスを順次流入させることができるとともに収着後の残余のガスを排出できるように構成されている。
【0087】
また、各筒状容器301a,301b,301cには、キャリヤガスを流入させるキャリヤガス流入口304aと、脱着した脱着ガス及びキャリヤガスを回収する回収口304bがそれぞれ設けられている。上記各筒状容器の上記キャリヤガス流入口304aには、第3の4方弁353を切り換えることにより、キャリヤガスを順次流入させることができるとともに、第4の4方弁354を切り換えて各回収口304bから脱着したガス及びキャリヤガスを回収できるように構成されている。
【0088】
上記構成を採用することにより、収着ガスを連続的に収着できるとともに、脱着回収することが可能となる。
【0089】
本願発明は、種々の過程で生成されるガスに適用できる。また、本願発明の範囲は、上述の実施形態に限定されることはない。今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものでないと考えられるべきである。本願発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0090】
大量のガスを収着できるとともに、効率よく回収することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 容器
7 多孔質発熱体
8 多孔質発熱体
9 多孔質発熱体
10 多孔質発熱体
11 多孔質収着体
12 多孔質収着体
13 多孔質収着体
100 ガス収着回収装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に、内部にガスを流動させることができる多孔質収着体を充填して構成されるガス収着回収装置であって、
上記多孔質収着体の表面及び/又は内部に、上記ガスが流動させられる連続気孔を有する多孔質発熱体を設けるとともに、
上記多孔質発熱体を発熱させることにより、上記多孔質収着体に収着されたガスを脱着して回収できるように構成された、ガス収着回収装置。
【請求項2】
ガスが流動させられる複数の領域に上記多孔質収着体及び上記多孔質発熱体がそれぞれ設けられているとともに、
選択した領域にガスを流動させて多孔質収着体に収着させる一方、
選択した領域の多孔質発熱体を発熱させて、多孔質収着体に収着されたガスを脱着して回収できるように構成されている、請求項1に記載のガス収着回収装置。
【請求項3】
上記各領域は、独立した容器を備えて構成されている、請求項2に記載のガス収着回収装置。
【請求項4】
上記多孔質発熱体は、ガスの流動方向に対して直交する面に沿って設けられた板状に形成されているとともに、
上記多孔質収着体をガスの流動方向に配列される複数の層に分割するように設けられており、
選択した発熱体を発熱させることにより、所定の層の多孔質収着体に収着されたガスを脱着できるように構成された、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガス収着回収装置。
【請求項5】
上記多孔質収着体は、表面に収着剤層を設けた粒状収着剤の集合体から構成されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のガス収着回収装置。
【請求項6】
上記多孔質発熱体が、上記粒状収着剤を保持する保持手段を構成している、請求項5に記載のガス収着回収装置。
【請求項7】
上記多孔質発熱体は、発熱性を有する外殻と、中空又は/及び導電性を有する芯部とを有する骨格を備え、
上記骨格が一体的に連続する3次元網目構造を構成している、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のガス収着回収装置。
【請求項8】
ガスが流動させられる容器内に、内部にガスを流動させることができる多孔質収着体及び多孔質発熱体を設けたガス収着回収装置におけるガス収着回収方法であって、
上記多孔質収着体内にガスを流動させて収着させるガス収着工程と、
上記多孔質発熱体を発熱させることにより、上記多孔質収着体内に収着されたガスを脱着させるガス脱着工程とを含む、ガス収着回収方法。
【請求項9】
上記多孔質収着体及び上記多孔質発熱体をそれぞれ設けた複数の領域を設定したガス収着回収装置におけるガス収着回収方法であって、
選択した領域の多孔質収着体にガスを収着させる工程と、
選択した領域の多孔質発熱体を発熱させることにより上記多孔質収着体に収着されたガスを脱着させるガス脱着工程とを含む、請求項8に記載のガス収着回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−13837(P2013−13837A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146938(P2011−146938)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】